車両の電子キーシステム及びその設定方法
【課題】スペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用するようにした場合であれ、車両の製造工数の増加を回避しつつ、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保することのできる車両の電子キーシステムを提供する。
【解決手段】この車両の電子キーシステムは、車載装置10と携帯機20との間でリクエスト信号Sre1,Sre2及び応答信号Sanを送受信することにより車載装置10に登録されている認証コードと携帯機20に登録されている認証コードとの照合を行い、この照合を通じて各種車両制御を行う。また、車載装置10及び携帯機20は、応答信号Sanを送受信するにあたり、応答信号Sanを拡散符号によりスペクトラム拡散変調する処理を行ってそのスペクトラム拡散変調された信号を送受信する。ここでは、車載装置10及び携帯機20が、認証コードとしての車両識別コードに基づいて拡散符号をそれぞれ選定する。
【解決手段】この車両の電子キーシステムは、車載装置10と携帯機20との間でリクエスト信号Sre1,Sre2及び応答信号Sanを送受信することにより車載装置10に登録されている認証コードと携帯機20に登録されている認証コードとの照合を行い、この照合を通じて各種車両制御を行う。また、車載装置10及び携帯機20は、応答信号Sanを送受信するにあたり、応答信号Sanを拡散符号によりスペクトラム拡散変調する処理を行ってそのスペクトラム拡散変調された信号を送受信する。ここでは、車載装置10及び携帯機20が、認証コードとしての車両識別コードに基づいて拡散符号をそれぞれ選定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置と携帯機との間の無線通信を通じて車両の各種制御を実行する車両の電子キーシステムにかかり、特に無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した車両の電子キーシステム及びその設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機(電子キー)を所持したユーザが車両ドアに接近することにより車両ドアのアンロックが実行されるとともに、ユーザが車室内に入ることによりエンジンの始動許可などが実行される、いわゆる車両の電子キーシステムが周知である。そして従来、このような電子キーシステムとしては、例えば特許文献1に記載のシステムが知られている。図10に、この特許文献1に記載のシステムも含めて、従来一般に採用されている電子キーシステムの概要を示す。
【0003】
同図10に示されるように、この電子キーシステムでは、携帯機20を所持したユーザが図中の二点鎖線で示すエリア、すなわち車室外に設定された通信エリアR1、あるいは車室内に設定された通信エリアR2に進入したときに、車両に搭載された車載装置10と携帯機20との間で無線通信が行われる。そして、この無線通信を通じて、車載装置10及び携帯機20にそれぞれ登録されている認証コードの照合を行い、この照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として、車両ドアのロック/アンロック制御やエンジン始動許可などの各種車両制御が実行される。なお、認証コードとしては、複数の車両を互いに識別するために車両毎に各別に設定される車両識別コード(車両IDコード)や、複数の携帯機を識別するために携帯機毎に各別に設定される携帯機識別コード(携帯機IDコード)などが用いられる。このような電子キーシステムによれば、ユーザの直接的な手動操作によることなく車両の各種操作が自動的に行われるようになるため、車両の操作にかかる利便性が大きく向上するようになる。
【0004】
一方、こうした車両の電子キーシステムに関しては、近年、例えば特許文献2に記載のように、ノイズの影響を受けやすい環境下での車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保すべく、それらの無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用することが提案されている。ちなみに、スペクトラム拡散変調に基づく通信方式とは、送信側では、送信したい情報信号を所定の拡散符号により拡散した信号(拡散信号)を受信側に送信し、受信側では、受信した拡散信号を受信側の拡散符号と同一の拡散符号を用いて逆拡散することにより元の情報信号に復元する通信方式である。車両の電子キーシステムとしてこうしたスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用すれば、仮に送信側から送信される拡散信号にノイズが混入したとしても、受信側で拡散信号から元の情報信号に復元する際にノイズが拡散されるようになる。したがって、ノイズの影響を軽減することができるようになるため、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−311333号公報
【特許文献2】特開2000−261366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記車両の電子キーシステムにあっては、例えば同一の電子キーシステムを搭載した2つの車両が互いに接近しているような状況下で各車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線通信がそれぞれ行われたような場合に、各車両の電子キーシステムの無線通信が互いに干渉し、無線通信を適切に実行することができなくなるおそれがある。このため、上記スペクトラム拡散変調に基づく通信方式を利用した車両の電子キーシステムでは、こうした無線通信の干渉を回避するために、各車両の電子キーシステムに互いに異なる複数種の拡散符号を割り当てることが望ましい。ちなみに、各車両の電子キーシステムに互いに異なる複数種の拡散符号を割り当てる方法としては、例えば複数種の拡散符号を予め用意するとともに、車両製造時に複数種の拡散符号を各車両にそれぞれ割り当て、この割り当てた拡散符号を車載装置及び携帯機に登録するといった方法が考えられる。
【0007】
ただし、こうした方法を採用したとすると、車両製造時に、車載装置に登録された拡散符号と同一の拡散符号を携帯機に登録させる工程、すなわち車載装置及び携帯機のそれぞれの拡散符号を同期させる工程などが新たに必要になる。このため、車両を製造する上での工数の増加を招き、ひいては生産コストの増大を招くおそれがある。
【0008】
このように、スペクトラム拡散変調に基づく通信方式を利用した車両の電子キーシステムにあっては、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保しようとすると車両の製造工数の増加や生産コストの増大を招いてしまうといった点で、なお改良の余地を残すものとなっている。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した場合であれ、車両の製造工数の増加を回避しつつ、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保することのできる車両の電子キーシステム及びその設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線信号を送受信することにより前記車載装置に登録されている認証コードと前記携帯機に登録されている認証コードとの照合を行い、該照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として前記車載装置による各種車両制御の実行が許可されるとともに、前記車載装置と前記携帯機との間で無線信号を送受信するにあたり、送信側では、該送信側に設定されている拡散符号により前記無線信号をスペクトラム拡散変調する処理を行い、受信側では、該受信側に設定されている拡散符号により前記スペクトラム拡散変調された信号を復調する処理を行う車両の電子キーシステムにおいて、前記車載装置及び前記携帯機は、前記登録されている前記認証コードに基づいて前記拡散符号をそれぞれ決定することを要旨としている。
【0011】
同構成によれば、車載装置に登録されている認証コードと携帯機に登録されている認証コードとが互いに一致することから、車載装置で決定される拡散符号と携帯機で決定される拡散符号とを互いに一致させることができるようになる。すなわち、車載装置及び携帯機のそれぞれの拡散符号の同期を自ずと図ることができるようになる。これにより、車載装置及び携帯機のそれぞれの拡散符号を同期させる工程を車両の製造工程に新たに設ける必要がなくなるため、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。しかも、認証コードは通常、車両毎に互いに異なるため、例えば複数の車両に搭載された車載装置が拡散符号をそれぞれ決定するときに、各車載装置が互いに異なる複数種の拡散符号をそれぞれ決定するようにすることも可能である。そして、このように各車載装置が互いに異なる複数種の拡散符号をそれぞれ決定するようになれば、上述した2つの車両が互いに接近しているような状況下でも、各車両の電子キーシステムにより実行される無線通信の干渉の可能性を低減することができるようになる。このため、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保することができるようにもなる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記車載装置及び前記携帯機は、前記認証コードに所定の演算処理を施すことにより得られる変数値と該変数値により指定される複数種の拡散符号との関係を示す同一のマップをそれぞれ有し、前記認証コードに基づく前記拡散符号の決定が、前記認証コードに所定の演算処理を施して前記変数値を求めた後に、この求めた変数値に基づいて前記マップを用いたマップ演算により前記拡散符号を選定することにより行われることを要旨としている。
【0013】
同構成によれば、仮に認証コード及び拡散符号が互いに類似するものでなかったとしても、車載装置及び携帯機は、それぞれに登録されている認証コードに基づいて所定の演算処理及びマップ演算を行うだけで拡散符号を決定することができるため、認証コードに基づく拡散符号の決定を極めて容易に行うことができるようになる。
【0014】
そして、請求項1又は2に記載の車両の電子キーシステムに関しては、請求項3に記載の発明によるように、複数の車両を互いに識別するために車両毎に各別に設定される車両識別コードを認証コードに含む場合、認証コードに基づく拡散符号の決定を、車両識別コードに基づく拡散符号の決定として行うといった構成を採用することが有効である。こうした構成を採用すれば、上述した各車載装置で互いに異なる複数種の拡散符号をそれぞれ決定するといった構成を容易に実現することができるようになる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の電子キーシステムにおいて、前記車載装置と前記携帯機との間で前記スペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行ったときに該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて、前記車載装置及び前記携帯機で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致していない旨の報知を行う報知手段を更に備えることを要旨としている。
【0016】
ところで、拡散符号を決定する際に、車載装置、あるいは携帯機に何らかの異常が生じてそれらが誤った拡散符号を決定してしまうと、車載装置及び携帯機で決定されるそれぞれの拡散符号が互いに一致しなくなってしまう。そしてこのような異常事態が生じると、車載装置と携帯機との間の無線通信に不具合が生じるおそれがある。この点、上記構成によれば、車載装置及び携帯機でそれぞれ決定される拡散符号が互いに不一致となるような異常事態が生じた場合には、それらの間でスペクトラム拡散変調に基づく無線通信が失敗に終わった旨が検知されて、報知手段による報知が行われるようになる。これにより、車両の製造工程の作業員はこの報知によって異常事態に気付くことができるため、例えば拡散符号を決定する処理を車載装置及び携帯機に再度行わせるなど、所要の対策を施すことができるようになる。したがって、車載装置及び携帯機で決定されるそれぞれの拡散符号が互いに不一致となるような異常事態を好適に回避することができるようになるため、車載装置及び携帯機の間の正常な無線通信を的確に確保することができるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両の電子キーシステムにおいて、前記車載装置、もしくは前記携帯機に前記認証コードを登録する際に使用される登録装置を更に備え、前記報知手段が、前記登録装置に設けられてなることを要旨としている。
【0018】
同構成によれば、車載装置や携帯機に新たに報知手段を設ける必要がないため、車載装置や携帯機の構造の簡素化を図ることができるようになる。
請求項6に記載の発明は、車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線信号を送受信することにより前記車載装置に登録されている認証コードと前記携帯機に登録されている認証コードとの照合を行い、該照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として前記車載装置による各種車両制御の実行が許可されるとともに、前記車載装置と前記携帯機との間で無線信号を送受信するにあたり、送信側では該送信側に設定されている拡散符号により前記無線信号をスペクトラム拡散変調する処理を行い、受信側では該受信側に設定されている拡散符号により前記スペクトラム拡散変調された信号を復調する処理を行う車両の電子キーシステムにおいて、前記認証コード及び前記拡散符号を前記車載装置及び前記携帯機にそれぞれ登録する方法であって、前記車載装置及び前記携帯機に前記認証コードをそれぞれ登録する認証コード登録工程と、前記車載装置及び前記携帯機にそれぞれ登録された認証コードに基づいて前記車載装置及び前記携帯機が前記拡散符号をそれぞれ決定する拡散符号決定工程とを備えることを要旨としている。
【0019】
同車両の電子キーシステムの設定方法によれば、車載装置及び携帯機に認証コードをそれぞれ登録する認証コード登録工程を経た後、それぞれに登録された認証コードに基づいて車載装置及び携帯機が拡散符号をそれぞれ決定するだけで、請求項1に記載の発明の車両の電子キーシステムを容易に実現することができるようになる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両の電子キーシステムの設定方法において、前記拡散符号決定工程の後に前記車載装置と前記携帯機との間で前記スペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行うとともに該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて前記車載装置及び前記携帯機で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致しない旨の報知を報知手段を通じて行う通信確認工程を更に備えることを要旨としている。
【0021】
同車両の電子キーシステムの設定方法によれば、通信確認工程で報知手段による報知が行われなければ、拡散符号決定工程に異常がなかったことを確認することができる。このため、仮に事後的に車載装置と携帯機との間の無線通信に不具合が生じたとしても、拡散符号の決定には問題がなかったことが予めわかっていれば、その不具合の原因を究明し易くなる。また、車載装置及び携帯機に認証コードをそれぞれ登録する工程においてスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を正常に行うことができるか否かを確認することができるため、こうした通信確認工程を車両の製造工程の後工程として別途行う場合と比較すると、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる車両の電子キーシステム及びその設定方法によれば、スペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した場合であれ、車両の製造工数の増加を回避しつつ、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる車両の電子キーシステムの第1実施形態についてそのシステム構成を示すブロック図。
【図2】(a),(b)は、同第1実施形態の携帯機の送信装置、及び車載装置の受信装置についてそれらのシステム構成をそれぞれ示すブロック図。
【図3】同第1実施形態の車両制御装置のメモリ及び携帯機制御装置のメモリにそれぞれ記憶されている変数値xと拡散符号との関係を示すマップ。
【図4】車両識別コードに基づく拡散符号の選定方法の一例を模式的に示す図。
【図5】同第1実施形態の車両制御装置及び携帯機制御装置による拡散符号選定処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図6】同第1実施形態の車両の電子キーシステムについて車両識別コード及び携帯機識別コードを車載装置及び携帯機にそれぞれ登録する工程を示すシーケンスチャート。
【図7】本発明にかかる車両の電子キーシステムの第2実施形態について車両識別コード及び携帯機識別コードを車載装置及び携帯機にそれぞれ登録する工程を示すシーケンスチャート。
【図8】同第2実施形態の車両制御装置による通信確認処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図9】車両識別コードに基づく拡散符号の選定方法の他の例を模式的に示す図。
【図10】電子キーシステムの概要を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明にかかる車両の電子キーシステム、及びその設定方法の第1実施形態について図1〜図6を参照して説明する。なお、本実施形態が適用対象とする電子キーシステムの基本構成は先の図10に例示した電子キーシステムと同様である。図1は、こうした電子キーシステムのシステム構成をブロック図として示したものであり、はじめに、同図1を参照して、この電子キーシステムの構成、動作を説明する。
【0025】
同図1に示されるように、この電子キーシステムでは、車両に搭載された車載装置10とユーザが携帯所持する携帯機20との間で無線通信による各種通信制御が実行される。
ここで、車載装置10には、上記車室外通信エリアR1にリクエスト信号Sre1を送信する第1送信装置11、上記車室内通信エリアR2にリクエスト信号Sre2を送信する第2送信装置12、及び携帯機20から送信される応答信号Sanを受信する受信装置13がそれぞれ設けられている。また、この車載装置10には、車両エンジンを始動する際にユーザがプッシュ操作する部分となるスイッチ操作部14aが設けられたエンジンスタートスイッチ14、及び車両エンジンの始動にかかる制御を統括的に司るエンジン始動装置15がそれぞれ設けられている。これらのうち、エンジンスタートスイッチ14は、携帯機20に駆動電波Sivを所定時間送信するイモビアンプ14cとコイルアンテナ14bとを有し、車室内のステアリング装置付近に配設されている。ちなみに、イモビアンプ14cは、携帯機20から送信されるトランスポンダ信号Strを受信する部分でもある。さらに、この車載装置10には、車両ドアのロック/アンロックにかかる制御を統括的に司るドアロック制御装置17が設けられるとともに、車両ドアの開閉操作を検知するドアカーテシスイッチ18も設けられている。そして、上記第1送信装置11及び第2送信装置12を通じたリクエスト信号Sre1,Sre2の送信制御、受信装置13を通じて受信される応答信号Sanの処理、イモビアンプ14cによる駆動電波Sivの送信制御、並びにイモビアンプ14cにより受信されるトランスポンダ信号Strの処理が、同じく車載装置10に設けられている車両制御装置16を通じて行われる。また、この車両制御装置16は、ドアカーテシスイッチ18を通じた車両ドアの開閉操作の検知処理や、スイッチ操作部14aに対する押圧操作の検知処理を行うとともに、エンジン始動装置15やドアロック制御装置17を制御する部分でもある。ちなみに、この車両制御装置16には不揮発性のメモリ16aが内蔵されており、このメモリ16aに、当該車両固有の車両識別コードIDc、及び携帯機20固有の携帯機識別コードIDkがそれぞれ記憶されている。
【0026】
一方、携帯機20には、車載装置10から送信されるリクエスト信号Sre1,Sre2を受信する受信装置21とともに、リクエスト信号Sre1,Sre2の受信に基づき車載装置10に対して上記応答信号Sanを送信する送信装置22が設けられている。そして、受信装置21を通じて受信されるリクエスト信号Sre1,Sre2に基づく応答信号Sanの生成、並びにこの生成した応答信号Sanの上記送信装置22を通じての送信制御が、同じく携帯機20に設けられている携帯機制御装置23を通じて行われる。ちなみに、この携帯機制御装置23にも不揮発性のメモリ23aが内蔵されており、このメモリ23aに、前述した車両制御装置16のメモリ16aに記憶されている識別コードと同一の識別コード、すなわち車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkがそれぞれ記憶されている。また、この携帯機20には、上記車載装置10から送信される駆動電波Sivを受信することによって駆動電源を得て起動するトランスポンダ24が内蔵されている。このトランスポンダ24は、駆動電波Sivを受信することによって駆動電源を得て起動したときに、車載装置10に対して上記トランスポンダ信号Strを送信する部分である。ちなみに、トランスポンダ24にも不揮発性のメモリ24aが内蔵されており、このメモリ24aにも携帯機識別コードIDkが記憶されている。
【0027】
ちなみに、車載装置10及び携帯機20にはそれぞれ専用の登録装置31,32を接続することができ、これらの登録装置31,32を車載装置10及び携帯機20にそれぞれ接続して所定の操作を行うことで、車載装置10及び携帯機20に識別コードを登録することが可能となる。具体的には、上記車両制御装置16のメモリ16aに携帯機識別コードIDkを記憶させたり、あるいは上記携帯機制御装置23のメモリ23aに車両識別コードIDcを記憶させることが可能となる。
【0028】
そして、こうした構成からなる車両の電子キーシステムにあって、車両制御装置16が、メモリ16aに記憶されている車両識別コードIDcなどの情報を含むリクエスト信号Sre1を生成してこれを上記第1送信装置11を介して上記車室外通信エリアR1に送信しているとする。このとき、ユーザが所持する携帯機20が車室外通信エリアR1に進入したとすると、次のような態様にて車載装置10と携帯機20との間で信号の授受が実行される。
【0029】
まず、このシステムでは、リクエスト信号Sre1が携帯機20の受信装置21によって受信されるとともに、このリクエスト信号Sre1が上記携帯機制御装置23に入力される。携帯機制御装置23では、このリクエスト信号Sre1に含まれる車両識別コードIDcと上記メモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcとの照合を行い、この照合を通じて互いの車両識別コードが一致しているか否かを判断する。そして、携帯機制御装置23は、互いの車両識別コードが一致している旨を判断すると、リクエスト信号Sre1を送信している車両が正規の車両であると判断して、上記応答信号Sanの送信を行う。すなわち、携帯機制御装置23は、メモリ23aに記憶されている携帯機識別コードIDkなどの情報を含む応答信号Sanを生成してこれを上記送信装置22に出力することにより、この応答信号Sanを上記車載装置10に送信する。このようにして応答信号Sanが送信されることにより、上記車載装置10の受信装置13ではこれを受信するとともに、受信した応答信号Sanを上記車両制御装置16に出力する。これにより、車両制御装置16では、入力された応答信号Sanに含まれる携帯機識別コードIDkと上記メモリ16aに記憶されている携帯機識別コードIDkとの照合を行い、この照合を通じて互いの携帯機識別コードが一致しているか否かを判断する。そして車両制御装置16は、互いの携帯機識別コードが一致している旨を判断すると、携帯機20が正規の携帯機であると判断して、ドアロック制御装置17を駆動させて車両ドアのアンロックを行う。
【0030】
次に、ユーザが車室内に乗り込もうとして車両ドアを開けたとすると、車両制御装置16は、ドアカーテシスイッチ18の動作状態からドアの開操作を検知し、リクエスト信号Sre1の送信を中止するとともに、リクエスト信号Sre2を生成してこれを上記第2送信装置12を介して上記車室内通信エリアR2に送信する。ちなみに、このリクエスト信号Sre2にも、上記リクエスト信号Sre1と同様、車両識別コードIDcなどの情報が含まれている。そして、リクエスト信号Sre2が車室内通信エリアR2に送信されているときに、ユーザが所持する携帯機20が車室内通信エリアR2に進入したとすると、上記車室外通信エリアR1で行われた信号授受と同様の信号授受が車載装置10と携帯機20との間で実行される。そして、車両制御装置16は、互いの携帯機識別コードが一致している旨を判断すると、携帯機20が正規の携帯機であると判断してエンジンの始動を許可する。その後、車両制御装置16は、エンジンの始動を許可している状態でユーザによる上記スイッチ操作部14aの押圧操作を検知すると、エンジン始動装置15を通じてエンジンの始動を行う。
【0031】
一方、この電子キーシステムにあっては、仮に携帯機20が電池切れ状態になったとすると、リクエスト信号Sre1,Sre2及び応答信号Sanの授受を行うことができなくなり、車両ドアのアンロックやエンジン始動許可を行うことができなくなってしまう。しかしながら、こうした携帯機20の電池切れの際には、ユーザは、携帯機20に付属の機械鍵(図示略)を使用することにより、車両ドアをロック/アンロックすることが可能である。また、ユーザは、車室内において携帯機20をエンジンスタートスイッチ14にかざすことにより、車載装置10と携帯機20との間で無線通信を行うことが可能であり、車載装置10は、この無線通信を通じてエンジン始動許可を行う。ここで、ユーザが携帯機20をエンジンスタートスイッチ14にかざしたとすると、次のような態様にて車載装置10と携帯機20との間で信号の授受が実行される。
【0032】
まず、このシステムでは、ユーザが機械鍵を使用して車両ドアをアンロックさせた後に車室内に乗り込もうとして車両ドアを開けたとすると、車両制御装置16は、ドアカーテシスイッチ18の動作状態からドアの開操作を検知して、リクエスト信号Sre2を車室内通信エリアR2に送信するとともに、イモビアンプ14cから駆動電波Sivを所定時間発信する。ちなみに、車両制御装置16は、リクエスト信号Sre2の送信と駆動電波Sivの送信とを交互に行うため、リクエスト信号Sre2と駆動電波Sivとが混信することはない。そして、携帯機20では、駆動電波Sivをトランスポンダ24によって受信すると同トランスポンダ24が起動し、トランスポンダ24は、メモリ24aに記憶されている携帯機識別コードIDkを含むトランスポンダ信号Strを生成してこれを上記車載装置10に送信する。そして、車載装置10では、トランスポンダ信号Strをイモビアンプ14cにより受信するとともに、この受信したトランスポンダ信号Strを車両制御装置16に出力する。その後、車両制御装置16では、入力されたトランスポンダ信号Strに含まれる携帯機識別コードIDkと上記メモリ16aに記憶されている携帯機識別コードIDkとの照合を行い、互いの携帯機識別コードが一致していることに基づいてエンジンの始動を許可する。そしてこのときにも、車両制御装置16は、ユーザによる上記スイッチ操作部14aの押圧操作を検知すると、エンジン始動装置15を通じてエンジンの始動を行う。
【0033】
ところで、このような無線通信を通じて信号の授受を行うシステムにあっては、上記通信エリアR1,R2内に車載装置10の受信装置13によって受信可能なノイズ(有害電波)が存在するような場合、上記携帯機から送信される応答信号Sanと共に受信されるノイズの影響が無視できなくなる。すなわち、応答信号Sanに含まれる情報を車載装置10で適切に認識することができなくなるなど、電子キーシステムとして要求される機能に支障をきたすおそれがある。
【0034】
そこで、本実施形態にかかる電子キーシステムでは、携帯機20の送信装置22と車載装置10の受信装置13との間の無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用している。
【0035】
図2(a),(b)は、携帯機20の送信装置22及び車載装置10の受信装置13についてそれらの基本構成をそれぞれ示したものであり、次に、この図2(a),(b)を参照して、送信装置22の構成、並びに動作を詳述する。
【0036】
同図2(a)に示されるように、携帯機20の送信装置22には、携帯機制御装置23から出力される応答信号Sanを取り込んで周波数変位変調(FSK変調)を行う変調器22aが設けられており、この変調器22aでは、FSK変調された応答信号Sanを拡散変調器22bに出力する。また、この送信装置22には、PN(Pseudorandom Noise)符号などの拡散符号を上記拡散変調器22bに与える拡散符号発生器22cも設けられている。そして、拡散変調器22bは、拡散符号発生器22cにより与えられる拡散符号を上記FSK変調された応答信号Sanに乗算することによってその周波数帯域を広帯域の周波数帯域に変換する、いわゆる直接拡散方式のスペクトラム拡散を行う部分である。そして、この送信装置22では、拡散変調器22bを通じてスペクトラム拡散された応答信号Sanをアンテナ22dを介して上記車載装置10に送信する構造となっている。
【0037】
一方、図2(b)に示されるように、車載装置10の受信装置13は、基本的には、アンテナ13aを介して受信される上記スペクトラム拡散された応答信号Sanに対して上記送信装置22で施された処理と逆の処理を施す部分である。すなわち、この受信装置13には、拡散符号発生器13dにより与えられる拡散符号を上記スペクトラム拡散された応答信号Sanに乗算することにより上記FSK変調された応答信号Sanに復調する逆拡散復調器13bとともに、このFSK変調された応答信号Sanを取り込んでFSK復調を行う復調器13cがそれぞれ設けられている。そして、受信装置13では、こうして復調された応答信号Sanを上記車両制御装置16に出力する構造となっている。
【0038】
ところで、このように携帯機20の送信装置22と車載装置10の受信装置13との間の無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した場合には、送信装置22で使用する拡散符号と、受信装置13で使用する拡散符号とを一致させる、いわゆる拡散符号の同期を図る必要がある。
【0039】
そこで、本実施形態にかかる車両の電子キーシステムでは、車両制御装置16のメモリ16aに記憶されている車両識別コードIDcと、携帯機制御装置23のメモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcとが互いに一致していることに着目して、車両識別コードIDcを利用して拡散符号の同期を図るようにしている。
【0040】
次に、車両識別コードIDcを利用して拡散符号の同期を図る方法についてその一例を先の図2(a),(b)と共に、図3及び図4を併せ参照して説明する。
まずは、図2(a)に示されるように、本実施形態では、拡散符号発生器22cが、互いに異なる16種類の拡散符号A〜Pを拡散変調器22bに与えることが可能なように構成されるとともに、上記車両制御装置16により指定される1種類の拡散符号を上記拡散変調器22bに与えるように構成されている。一方、図2(b)に示されるように、拡散符号発生器13dも、同様に、互いに異なる16種類の拡散符号A〜Pを逆拡散復調器13bに与えることが可能なように構成されるとともに、これら16種類の拡散符号A〜Pのうち、車両制御装置16により指定される1種類の拡散符号を逆拡散復調器13bに与えるように構成されている。
【0041】
一方、図3に示すように、車両制御装置16のメモリ16a及び携帯機制御装置23のメモリ23aには、「0〜15」の範囲の整数値で示される変数値xと、上記16種類の拡散符号A〜Pとの関係を示す同一のマップがそれぞれ記憶されている。そして、車両制御装置16及び携帯機制御装置23は、このマップ、及びそれぞれのメモリ16a,23aに記憶されている車両識別コードIDcに基づいて以下の(a1),(a2)で示す処理を順次行うことにより拡散符号を選定する。
【0042】
(a1)車両識別コードIDcの下位の4ビットを抜き出してこれを10進数に変換することにより上記変数値xを求める演算処理を行う。
(a2)変数値xを求めた後、同変数値xに基づいて図3に例示したマップを用いたマップ演算を行うことにより拡散符号を選定する。
【0043】
具体的には、図4に示すように、例えば車両識別コードIDcが16ビットの2進数のコード「0001 0010 0011 0100」として構成されているとする。このとき、車両制御装置16は、メモリ16aに記憶されている車両識別コードIDcの下位の4ビット「0100」を10進数に変換する処理を行うことにより「4」という数値を求めた後、この求めた数値に基づいて先の図3に示したマップを用いてマップ演算を行うことにより拡散符号Eを選定する。一方、携帯機制御装置23のメモリ23aにも、同図に例示するコードと同様の車両識別コードIDcが記憶されているため、携帯機制御装置23は、メモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcに対して同様の演算処理及びマップ演算を行うことにより、同様の拡散符号Eを選定する。このように、車両制御装置16及び携帯機制御装置23がそれぞれのメモリ16a,23aに記憶されている車両識別コードIDcに対して図4に例示する演算処理を行えば、車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号の同期を自ずと図ることができるようになる。
【0044】
また、車両識別コードIDcは通常、車両毎に異なるため、例えば複数の車両に搭載された車載装置が同図4に例示する演算処理をそれぞれ行ったとすると、各車載装置で演算される変数値xが互いに異なった値となる。このため、複数の車両に搭載される各車載装置では、互いに異なる16種類の拡散符号が各別に使用されるようになるため、上述した2つの車両が互いに接近しているような状況下でも、各車両の電子キーシステムにより実行される無線通信の干渉の可能性を低減することができるようになる。このため、車載装置10と携帯機20との間の良好な無線通信を確保することができるようになる。
【0045】
図5は、車両制御装置16及び携帯機制御装置23を通じてそれぞれ実行される、車両識別コードIDcに基づいて拡散符号を選定する処理についてその処理手順を示したものであり、次に、同図5に基づいてこの処理の具体的手順を総括する。
【0046】
同図5に示されるように、この処理では、はじめに、上記車両制御装置16のメモリ16a、あるいは携帯機制御装置23のメモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcを読み込んだ後(ステップS1)、先の図4に例示した演算処理が実行される。すなわち、車両識別コードIDcに基づいて変数値xを求めた後(ステップS2)、求めた変数値xに基づいて先の図3に例示したマップを用いたマップ演算により拡散符号が選定される(ステップS3)。そして、この選定された拡散符号の情報が車両制御装置16のメモリ16a、あるいは携帯機制御装置23のメモリ23aに記憶された後(ステップS4)、この一連の処理が終了される。
【0047】
次に、車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkを車載装置10及び携帯機20にそれぞれ登録する工程において図5に例示した拡散符号選定処理を実行したときの車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号の同期が図られる様子について図6のシーケンスチャートを参照して説明する。なお、この登録工程を実行する前の時点では、車両制御装置16のメモリ16aには車両識別コードIDcのみが、また、携帯機制御装置23のメモリ23aには携帯機識別コードIDkのみがそれぞれ記憶されている。
【0048】
同図6に示されるように、この登録工程では、はじめに、作業員によって上記登録装置31,32が車載装置10及び携帯機20に接続されるとともに、接続された登録装置31,32を所要に操作することによって車載装置10及び携帯機20が登録処理モードにそれぞれ設定される。すなわち、車両制御装置16が携帯機識別コードIDkの登録を受け付ける状態に設定されるとともに、携帯機制御装置23が車両識別コードIDcの登録を受け付ける状態に設定される。なお、車載装置10及び携帯機20は、登録処理モードに設定されたとき、互いの無線通信を可能にすべく、上記16種類の拡散符号のうちのいずれか1種類の同一の拡散符号、例えば拡散符号Aを用いるようにそれぞれ設定されて、それぞれの拡散符号の同期が図られる。
【0049】
そして、車載装置10及び携帯機20が登録処理モードにそれぞれ設定された後、車両側に接続された登録装置31を作業員が再度操作することによって同登録装置31から車載装置10に登録処理開始コマンドが入力されると、一連の登録工程が開始される。この登録工程は、大きくは、車載装置10及び携帯機20に車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkをそれぞれ登録する認証コード登録工程と、登録された車両識別コードIDcに基づいて車載装置10及び携帯機20が拡散符号を決定する拡散符号決定工程とから構成されている。
【0050】
ここで、この登録工程では、まず、車両制御装置16が登録処理開始コマンドの入力を検知すると、イモビアンプ14cから駆動電波Sivを所定時間送信する。このとき、作業員が携帯機20をエンジンスタートスイッチ14にかざすと、携帯機20では、駆動電波Sivがトランスポンダ24によって受信されて同トランスポンダ24が起動し、トランスポンダ24は、メモリ24aに記憶されている携帯機識別コードIDkを含むトランスポンダ信号Strを生成してこれを上記車載装置10に送信する。そして、車載装置10では、このトランスポンダ信号Strをイモビアンプ14cによって受信するとともに、車両制御装置16は、受信したトランスポンダ信号Strに含まれる携帯機識別コードIDkをメモリ16aに記憶させる。
【0051】
次に、車両制御装置16は、内蔵するメモリ16aに記憶される車両識別コードIDcを含むリクエスト信号Sre2を生成するとともに、生成したリクエスト信号Sre2を上記車室内通信エリアR2に送信する。そうすると、携帯機20では、このリクエスト信号Sre2を受信装置21によって受信するとともに、携帯機制御装置23は、このリクエスト信号Sre2に含まれる車両識別コードIDcをメモリ23aに記憶させる。そして、ここまでの一連の登録工程を通じて、車載装置10及び携帯機20に同一の車両識別コードIDc及び同一の携帯機識別コードIDkがそれぞれ登録された状態になる。その後、携帯機制御装置23は、車両識別コードIDcを正常に登録することができた旨の情報を含む応答信号Sanを生成してこれを車載装置10に送信する。
【0052】
その後、携帯機制御装置23は、車両識別コードIDcを正常に登録することができた旨の情報を含む応答信号Sanを生成してこれを車載装置10に送信するとともに、先の図5に例示した処理を実行する。一方、車載装置10は、この応答信号Sanを受信装置13によって受信すると、同応答信号Sanに含まれる情報に基づいて携帯機20が車両識別コードIDcを正常に登録することができた旨を検知し、先の図5に例示した処理を実行する。このとき、車両制御装置16のメモリ16aに記憶されている車両識別コードIDcと、携帯機制御装置23のメモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcとが互いに一致しているため、車載装置10及び携帯機20は同一の拡散符号をそれぞれ選定する。すなわち、車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号の同期を自ずと図ることができるようになる。これにより、車両の製造工程において車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号を同期させる工程を新たに設ける必要がなくなるため、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。
【0053】
ところで、本実施形態にかかる電子キーシステムも含めて、従来のシステムでは、例えば車載装置10や携帯機20に何らかの故障が生じた場合に車両識別コードIDcや拡散符号などの登録情報が消えてしまうことも考えられるため、例えばディーラが車載装置10や携帯機20に拡散符号を再度設定することができるようにしておくことが望ましい。ここで、前述のように、複数種の拡散符号を予め用意するとともに、車両製造時に複数種の拡散符号を各車両にそれぞれ割り当てるようにしたとすると、ディーラは、各車両に割り当てた拡散符号を事後的に特定することができるように、例えば各車両に割り当てた拡散符号を所定のデータベースなどに記憶させて管理する必要がある。ただしこの場合には、車両の数に比例して拡散符号の数も増加することから、データベースの管理が煩雑になるおそれがある。また、ディーラは、拡散符号を車載装置10や携帯機20に再度設定する際に、各車両に対応した拡散符号をデータベースから読み込む作業や、読み込んだ拡散符号を車載装置10及び携帯機20にそれぞれ登録させる作業などを行う必要があり、拡散符号を再度設定する手続きが煩雑になるおそれがある。
【0054】
この点、本実施形態にかかる車両の電子キーシステムでは、車載装置10及び携帯機20に車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkをそれぞれ登録すれば拡散符号を自ずと設定することができるため、拡散符号をデータベースに記憶させて管理しておく必要がなくなり、ひいてはディーラの管理作業を削減することができるようになる。また、ディーラは、車載装置10や携帯機20に拡散符号を再度設定する際に、車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkを車載装置10及び携帯機20にそれぞれ登録する作業、すなわち従来の登録作業を行うだけで拡散符号を車載装置10や携帯機20に再度登録させることができるようになる。このため、拡散符号を再度設定する手続きの複雑化を回避することができるようにもなる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両の電子キーシステム、及びその設定方法によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)車載装置10及び携帯機20が互いに異なる16種類の拡散符号のうちのいずれか1種類の拡散符号を選定して使用する構成とした上で、車両制御装置16及び携帯機制御装置23にそれぞれ登録されている車両識別コードIDcに基づいて拡散符号の選定を行うようにした。これにより、車両の製造工程において車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号の同期を自ずと図ることができるようになるため、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。また、複数の車両に搭載される各車載装置では互いに異なる16種類の拡散符号が各別に使用されるようになるため、2つの車両が互いに接近しているような状況下でも、各車両の電子キーシステムにより実行される無線通信の干渉の可能性を低減することができるようになる。したがって、車載装置10と携帯機20との間の良好な無線通信を確保することができるようになる。さらに、ディーラは、車載装置10や携帯機20に拡散符号を再度設定する状況に備えて拡散符号を所定のデータベースなどに記憶させて管理しておく必要がないため、ディーラの管理作業の削減を図ることができるようにもなる。また、ディーラは、車載装置10や携帯機20に拡散符号を再度設定する際に、各車両に対応した拡散符号をデータベースから読み込む作業などを行う必要がないため、拡散符号を再度設定する手続の複雑化を回避することができるようにもなる。
【0056】
(2)互いに異なる16種類の拡散符号と変数値xの関係を示す同一のマップを車両制御装置16及び携帯機制御装置23に記憶させた上で、車両識別コードIDcに演算処理を施すことにより変数値xを取得した後に、取得した変数値xに基づいたマップ演算を行うことにより拡散符号を選定するようにした。これにより、仮に車両識別コードIDc及び拡散符号が互いに類似するものでなかったとしても、車両制御装置16及び携帯機制御装置23は、それぞれに登録されている車両識別コードIDcに基づいて上述した演算処理及びマップ演算を行うだけで拡散符号を決定することができる。このため、車両識別コードIDcに基づく拡散符号の決定を容易に行うことができるようになる。
[第2実施形態]
続いて、本発明にかかる車両の電子キーシステム、及びその設定方法の第2実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。なお、この第2実施形態も電子キーシステムとしての基本構成は先の図1や図2に示した構成に準ずるものであり、ここでは先の図6に対応する図として、登録工程を図7に示している。なお、以下では、図1や図2に示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛し、以下では両者の相違点を中心に説明する。
【0057】
上述のように、車両識別コードIDcに基づいて拡散符号を決定すれば、基本的には、車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定される拡散符号が互いに一致するようになる。ただし、車載装置10及び携帯機20が先の図6に例示した拡散符号選定処理を実行する際に、何らかの異常が生じてそれらが誤った拡散符号を決定してしまうと、車載装置10及び携帯機20で決定されるそれぞれの拡散符号が互いに一致しなくなってしまう。そしてこのような異常事態が生じると、車載装置10と携帯機20との間の無線通信に不具合が生じるおそれがある。
【0058】
そこで本実施形態では、車載装置10及び携帯機20で上記拡散符号選定処理を行った後に、車載装置10と携帯機20との間でスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を実際に行って、それらの間で無線通信を正常に行うことができるか否かを確認する通信確認工程を設けるようにしている。また、先の図1に示されるように、車載装置10に接続される登録装置31に発行ダイオード(LED)31aを設けた上で、スペクトラム拡散変調に基づく無線通信が失敗に終わった旨が通信確認工程で検知された場合には、LED31aを点灯させてその旨を作業員に報知するようにしている。ちなみに、報知手段であるLED31aを登録装置31に設けることにより、例えば車載装置10や携帯機20に新たに報知手段を設ける必要がなくなるため、車載装置10や携帯機20の構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0059】
図7は、上述のように、登録工程をシーケンスチャートとして示したものである。
同図7に示されるように、この通信確認工程では、上記車載装置10によって上記拡散符号選定処理が実行された後、車両制御装置16が、通信確認要求信号Scdを生成してこれを上記車室内通信エリアR2に送信する。
【0060】
そうすると、携帯機20では、この通信確認要求信号Scdを上記受信装置21によって受信するとともに、この通信確認要求信号Scdが携帯機制御装置23に入力される。携帯機制御装置23では、こうして通信確認要求信号Scdが入力されると、通信確認応答信号Scaを生成してこれを送信装置22を出力する。このとき、送信装置22では、携帯機20で決定された拡散符号に基づいて通信確認応答信号Scaをスペクトラム拡散変調する処理が行われて、スペクトラム拡散変調された通信確認応答信号Scaを車載装置10に送信する。
【0061】
続いて、車載装置10では、このスペクトラム拡散変調された通信確認応答信号Scaを受信装置13によって受信するとともに、受信装置13では、車載装置10で決定された拡散符号に基づいて通信確認応答信号Scaを復調する処理が行われて、復調された通信確認応答信号Scaを車両制御装置16に出力する。車両制御装置16では、こうして通信確認応答信号Scaが入力されると、携帯機20と正常な無線通信を行うことができた旨を判断して、その旨を示す正常受信通知信号Snrを上記車室内通信エリアR2に送信し、一連の登録処理を終了する。
【0062】
一方、携帯機20では、正常受信通知信号Snrを受信装置21によって受信して、この受信した正常受信通知信号Snrが携帯機制御装置23に入力されると、携帯機制御装置23では、車載装置10と正常な無線通信を行うことができた旨を判断して、一連の登録処理を終了する。
【0063】
ところで、上述のように、仮に車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定された拡散符号が互いに不一致となるような異常事態が生じたとすると、携帯機20から送信される通信確認応答信号Scaを車載装置10が受信することができなくなる。そこで、本実施形態では、車載装置10が通信確認要求信号Scdを送信した後に所定時間経過しても通信確認応答信号Scaを受信することができなかった場合には、異常事態が生じた旨を報知するようにしている。具体的には、車両制御装置16から上記登録装置31にLED点灯指令を発信してLED31aを点灯させることで異常事態を報知するようにしている。これにより、車載装置10及び携帯機20で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致していない旨を作業員に対して報知することができるようになる。
【0064】
図8は、車両制御装置16を通じて実行される、通信確認要求信号Scd及び通信確認応答信号Scaの送受信に基づいて携帯機20との通信確認を行う処理についてその処理手順を示したものであり、次に、同図8に基づいて同処理の具体的手順を総括する。
【0065】
同図8に示されるように、この処理では、はじめに、上記通信確認要求信号Scdを車室内通信エリアR2に送信し(ステップS10)、その後、通信確認要求信号Scdを送信してから所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS11)。具体的には、車両制御装置16の内部タイマを通じて通信確認要求信号Scdを送信した時点からの経過時間が計測されるとともに、この経過時間が所定時間以上となったことに基づいて、通信確認要求信号Scdを送信してから所定時間が経過した旨が判断される。またこのとき、ステップS12において通信確認応答信号Scaを受信することができたか否かも併せて監視される。そして、通信確認要求信号Scdを送信してから所定時間が経過しておらず(ステップS11:NO)、且つその期間に通信確認応答信号Scaを受信することができた場合には(ステップS12:YES)、すなわち携帯機20と正常な無線通信を行うことができた旨が検知された場合には、上記正常受信通知信号Snrを車室内通信エリアR2に送信して(ステップS13)、車両制御装置16はこの一連の処理を終了する。
【0066】
一方、通信確認応答信号Scaを受信することができずに(ステップS12:NO)、通信確認要求信号Scdを送信してから所定時間が経過した場合には(ステップS11:YES)、すなわち携帯機20との無線通信が失敗に終わった旨が検知された場合には、LED点灯指令を上記登録装置31に発信して(ステップS14)、車両制御装置16はこの一連の処理を終了する。
【0067】
車両の電子キーシステムとしてのこうした構成によれば、車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定される拡散符号が互いに不一致となるような異常事態が生じた場合には、登録装置31のLED31aが点灯することにより異常事態の報知が行われる。これにより、車両の製造工程の作業員はこの報知によって異常事態に気付くことができるため、例えば先の図7に例示した登録工程を再度行うなど、所要の対策を施すことができるようになる。したがって、車載装置10及び携帯機20で決定されるそれぞれの拡散符号が互いに不一致となるような異常事態を好適に回避することができるようになるため、車載装置10及び携帯機20の間の正常な無線通信を的確に確保することができるようになる。
【0068】
また、車両の製造工程においては、LED31aが点灯しなければ上述した拡散符号決定工程に異常がなかったことを確認することができる。このため、仮に事後的に車載装置10と携帯機20との間の無線通信に不具合が生じたとしても、拡散符号の決定には問題がなかったことが予めわかっていれば、その不具合の原因を究明し易くなる。また、一連の登録工程においてスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を正常に行うことができるか否かを確認することができるため、通信確認工程を車両の製造工程の後工程として別途行う場合と比較すると、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態にかかる電子キーシステム、及びその設定方法によっても、先の第1の実施形態による上記(1)及び(2)の効果と同等、もしくはそれらに準じた効果が得られるとともに、更に以下の効果が得られるようになる。
【0070】
(3)車載装置10と携帯機20との間でスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行うとともに、該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて、登録装置31のLED31aを点灯させるようにした。これにより、車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定される拡散符号が互いに不一致となるような異常事態に作業員が気付いて所要の対策を施すことができるようになるため、車載装置10及び携帯機20の間の正常な無線通信を的確に確保することができるようになる。
【0071】
(4)車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定される拡散符号が互いに一致していない旨を報知する報知手段を、登録装置31に設けたLED31aによって実現するようにした。これにより、車載装置10や携帯機20に新たに報知手段を設ける必要がなくなるため、車載装置10や携帯機20の構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0072】
(5)電子キーシステムの登録工程において、拡散符号決定工程の後に通信確認工程を行うようにした。これにより、拡散符号決定工程に異常がなかったことを確認することができるようになるため、仮に事後的に車載装置10と携帯機20との間の無線通信に不具合が生じたとしても、拡散符号の決定に問題がなかったことが予めわかっていれば、その不具合の原因を究明し易くなる。また、一連の登録工程において通信確認を行うことができるため、通信確認工程を車両の製造工程の後工程として別途行う場合と比較すると、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。
[他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
【0073】
・上記第2実施形態では、スペクトラム拡散変調に基づく無線通信が失敗に終わった旨の報知を、登録装置31のLED31aを点灯させることで行うようにした。これに代えて、例えば車両に搭載されたブザーやホーンを鳴動させたり、あるいはインストルメントパネルに警告灯を点灯させるなどして報知を行うようにしてもよい。また、例えば携帯機20に実装された表示装置、具体的には液晶ディスプレイやLEDなどを利用して報知を行うようにしてもよい。要は、車載装置10及び携帯機20で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致していない旨を報知することができるものであればよい。
【0074】
・車両識別コードIDcに所定の演算処理を施すことにより変数値xを求めた後、この求めた変数値xに基づいてマップ演算を行うことにより1種類の拡散符号を選定する方法として、以下の(b1),(b2)で示す方法を採用してもよい。
【0075】
(b1)車両識別コードIDcのビット列全体を10進数の数値に変換した後、その変換した数値を所定のハッシュ関数により「0〜15」の範囲の変数値xに変換する演算処理を行う。
【0076】
(b2)変数値xを求めた後、同変数値xに基づいて先の図3に例示したマップを用いたマップ演算を行うことにより拡散符号を選定する。
具体的には、図9に示すように、例えば車両識別コードIDcが16ビットの2進数のコード「0001 0010 0011 0100」として構成されているとする。このとき、車両制御装置16及び携帯機制御装置23は、内蔵されるメモリ16a,23aに記憶されている車両識別コードIDcを10進数の数値に変換する演算処理を行うことにより「4660」という整数値をそれぞれ求める。また、車両制御装置16及び携帯機制御装置23は、こうして求めた整数値「4660」をハッシュ関数により変換することにより「4」という数値を求めた後、この求めた数値に基づいて先の図3に例示したマップを用いてマップ演算を行うことにより拡散符号Eをそれぞれ選定する。こうした方法であっても拡散符号を選定することは可能である。要は、車両識別コードIDcに所定の演算処理を施して変数値xを求めた後に、この求めた変数値xに基づいて先の図3に例示したマップを用いたマップ演算により拡散符号を選定するものであればよい。
【0077】
・上記各実施形態では、携帯機20の送信装置22において応答信号SanをFSK変調するようにしたが、これに代えて、例えば携帯機20の送信装置22において応答信号Sanを振幅偏移変調(ASK変調)したり、あるいは位相偏移変調(PSK変調)してもよい。また、これに併せて、車載装置10の受信装置13において応答信号SanをASK復調したり、あるいはPSK復調してもよい。
【0078】
・上記各実施形態では、車載装置10及び携帯機20は、登録処理モードに設定されたとき、16種類の拡散符号のうちのいずれか一種類の同一の拡散符号をそれぞれ用いるようにした。これに代えて、例えば車載装置10及び携帯機20が登録処理モードに設定されている期間、携帯機20の拡散変調器22bによる拡散変調の機能、及び車載装置10の逆拡散復調器13bによる逆拡散復調の機能を一時的に停止するようにしてもよい。
【0079】
・上記各実施形態では、車載装置10の受信装置13及び携帯機20の送信装置22が、互いに異なる16種類の拡散符号A〜Pを設定することができるようにそれぞれ構成されていたが、これに代えて、例えば17種類以上、あるいは2種類〜15種類の拡散符号を設定することができるようにそれぞれ構成されていてもよい。
【0080】
・上記各実施形態では、携帯機20の送信装置22と車載装置10の受信装置13との間の無線通信の方式にスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した。これに加え、例えば携帯機20の受信装置21によって受信可能なノイズの影響も懸念される場合には、車載装置10の第1及び第2送信装置11,12と携帯機20の受信装置21との間の無線通信の方式にもスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用してもよい。あるいは、それらの間の無線通信の方式にのみスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用してもよい。なお、それらの間の無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した場合には、例えば先の図7に例示した登録工程を行った際に、携帯機20が通信確認要求信号Scdを受信することができないときに所定の報知を行うことが有効である。こうした報知を行うことにより、それらの間でスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を正常に行うことができるか否かを確認することができるようにもなる。
【0081】
・上記各実施形態では、車両識別コードIDcから拡散符号を決定する方法として、車両識別コードIDcに演算処理を施して変数値xを求めた後に、この求めた変数値xに基づいて図3に例示したマップを用いたマップ演算により拡散符号を選定する方法を採用した。こうした車両識別コードIDcから拡散符号を決定する方法については、1つの車両識別コードIDcから1つの拡散符号を一義的に決定する方法であればよい。ただし、拡散符号から車両識別コードIDcを特定可能にする必要はない。
【0082】
・上記各実施形態では、認証コードとして使用される車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkのうち、車両識別コードIDcに基づいて拡散符号の選定を行うようにした。これに代えて、携帯機識別コードIDkに基づいて拡散符号の選定を行うようにしてもよい。要は、車載装置10及び携帯機20がそれぞれ有している共通の認証コードに基づいて拡散符号の選定を行う構成であればよい。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0083】
(イ)請求項2に記載の車両の電子キーシステムにおいて、前記所定の演算処理が、前記車両識別コードを構成するビット列の一部を抜き出した後に、その抜き出したビット列の一部を10進数の数値に変換することにより前記複数種の拡散符号を指定する変数値を求める演算処理であることを特徴とする車両の電子キーシステム。同構成によれば、上記車両識別コードと上記複数種の拡散符号を指定するための変数値とが互いに一致していない場合であっても、車両識別コードから上記複数種の拡散符号を指定するための変数値を極めて容易に求めることができるようになるため、上述したマップ演算を極めて容易に行うことができるようになる。
【0084】
(ロ)請求項2に記載の車両の電子キーシステムにおいて、前記所定の演算処理が、前記車両識別コードを構成するビット列全体を10進数の数値に変換した後に、その変換した数値をハッシュ関数により前記複数種の拡散符号を指定する変数値に変換する演算処理であることを特徴とする車両の電子キーシステム。同構成によれば、上記車両識別コードと上記複数種の拡散符号を指定するための変数値とが互いに一致していない場合であっても、車両識別コードから上記複数種の拡散符号を指定するための変数値を極めて容易に求めることができるようになり、ひいては上述したマップ演算を極めて容易に行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0085】
San…応答信号、Sca…通信確認応答信号、Scd…通信確認要求信号、Snr…正常受信通知信号、Siv…駆動電波、Str…トランスポンダ信号、Sre1,Sre2…リクエスト信号、10…車載装置、11,12,22…送信装置、13,21…受信装置、13a,22d…アンテナ、13b…逆拡散復調器、13c…復調器、13d,22c…拡散符号発生器、14…エンジンスタートスイッチ、14a…スイッチ操作部、14b…コイルアンテナ、14c…イモビアンプ、15…エンジン始動装置、16…車両制御装置、16a,23a,24a…メモリ、17…ドアロック制御装置、18…ドアカーテシスイッチ、20…携帯機、22a…変調器、22b…拡散変調器、23…携帯機制御装置、24…トランスポンダ、31,32…登録装置、31a…発行ダイオード(LED)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置と携帯機との間の無線通信を通じて車両の各種制御を実行する車両の電子キーシステムにかかり、特に無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した車両の電子キーシステム及びその設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機(電子キー)を所持したユーザが車両ドアに接近することにより車両ドアのアンロックが実行されるとともに、ユーザが車室内に入ることによりエンジンの始動許可などが実行される、いわゆる車両の電子キーシステムが周知である。そして従来、このような電子キーシステムとしては、例えば特許文献1に記載のシステムが知られている。図10に、この特許文献1に記載のシステムも含めて、従来一般に採用されている電子キーシステムの概要を示す。
【0003】
同図10に示されるように、この電子キーシステムでは、携帯機20を所持したユーザが図中の二点鎖線で示すエリア、すなわち車室外に設定された通信エリアR1、あるいは車室内に設定された通信エリアR2に進入したときに、車両に搭載された車載装置10と携帯機20との間で無線通信が行われる。そして、この無線通信を通じて、車載装置10及び携帯機20にそれぞれ登録されている認証コードの照合を行い、この照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として、車両ドアのロック/アンロック制御やエンジン始動許可などの各種車両制御が実行される。なお、認証コードとしては、複数の車両を互いに識別するために車両毎に各別に設定される車両識別コード(車両IDコード)や、複数の携帯機を識別するために携帯機毎に各別に設定される携帯機識別コード(携帯機IDコード)などが用いられる。このような電子キーシステムによれば、ユーザの直接的な手動操作によることなく車両の各種操作が自動的に行われるようになるため、車両の操作にかかる利便性が大きく向上するようになる。
【0004】
一方、こうした車両の電子キーシステムに関しては、近年、例えば特許文献2に記載のように、ノイズの影響を受けやすい環境下での車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保すべく、それらの無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用することが提案されている。ちなみに、スペクトラム拡散変調に基づく通信方式とは、送信側では、送信したい情報信号を所定の拡散符号により拡散した信号(拡散信号)を受信側に送信し、受信側では、受信した拡散信号を受信側の拡散符号と同一の拡散符号を用いて逆拡散することにより元の情報信号に復元する通信方式である。車両の電子キーシステムとしてこうしたスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用すれば、仮に送信側から送信される拡散信号にノイズが混入したとしても、受信側で拡散信号から元の情報信号に復元する際にノイズが拡散されるようになる。したがって、ノイズの影響を軽減することができるようになるため、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−311333号公報
【特許文献2】特開2000−261366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記車両の電子キーシステムにあっては、例えば同一の電子キーシステムを搭載した2つの車両が互いに接近しているような状況下で各車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線通信がそれぞれ行われたような場合に、各車両の電子キーシステムの無線通信が互いに干渉し、無線通信を適切に実行することができなくなるおそれがある。このため、上記スペクトラム拡散変調に基づく通信方式を利用した車両の電子キーシステムでは、こうした無線通信の干渉を回避するために、各車両の電子キーシステムに互いに異なる複数種の拡散符号を割り当てることが望ましい。ちなみに、各車両の電子キーシステムに互いに異なる複数種の拡散符号を割り当てる方法としては、例えば複数種の拡散符号を予め用意するとともに、車両製造時に複数種の拡散符号を各車両にそれぞれ割り当て、この割り当てた拡散符号を車載装置及び携帯機に登録するといった方法が考えられる。
【0007】
ただし、こうした方法を採用したとすると、車両製造時に、車載装置に登録された拡散符号と同一の拡散符号を携帯機に登録させる工程、すなわち車載装置及び携帯機のそれぞれの拡散符号を同期させる工程などが新たに必要になる。このため、車両を製造する上での工数の増加を招き、ひいては生産コストの増大を招くおそれがある。
【0008】
このように、スペクトラム拡散変調に基づく通信方式を利用した車両の電子キーシステムにあっては、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保しようとすると車両の製造工数の増加や生産コストの増大を招いてしまうといった点で、なお改良の余地を残すものとなっている。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した場合であれ、車両の製造工数の増加を回避しつつ、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保することのできる車両の電子キーシステム及びその設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線信号を送受信することにより前記車載装置に登録されている認証コードと前記携帯機に登録されている認証コードとの照合を行い、該照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として前記車載装置による各種車両制御の実行が許可されるとともに、前記車載装置と前記携帯機との間で無線信号を送受信するにあたり、送信側では、該送信側に設定されている拡散符号により前記無線信号をスペクトラム拡散変調する処理を行い、受信側では、該受信側に設定されている拡散符号により前記スペクトラム拡散変調された信号を復調する処理を行う車両の電子キーシステムにおいて、前記車載装置及び前記携帯機は、前記登録されている前記認証コードに基づいて前記拡散符号をそれぞれ決定することを要旨としている。
【0011】
同構成によれば、車載装置に登録されている認証コードと携帯機に登録されている認証コードとが互いに一致することから、車載装置で決定される拡散符号と携帯機で決定される拡散符号とを互いに一致させることができるようになる。すなわち、車載装置及び携帯機のそれぞれの拡散符号の同期を自ずと図ることができるようになる。これにより、車載装置及び携帯機のそれぞれの拡散符号を同期させる工程を車両の製造工程に新たに設ける必要がなくなるため、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。しかも、認証コードは通常、車両毎に互いに異なるため、例えば複数の車両に搭載された車載装置が拡散符号をそれぞれ決定するときに、各車載装置が互いに異なる複数種の拡散符号をそれぞれ決定するようにすることも可能である。そして、このように各車載装置が互いに異なる複数種の拡散符号をそれぞれ決定するようになれば、上述した2つの車両が互いに接近しているような状況下でも、各車両の電子キーシステムにより実行される無線通信の干渉の可能性を低減することができるようになる。このため、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保することができるようにもなる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記車載装置及び前記携帯機は、前記認証コードに所定の演算処理を施すことにより得られる変数値と該変数値により指定される複数種の拡散符号との関係を示す同一のマップをそれぞれ有し、前記認証コードに基づく前記拡散符号の決定が、前記認証コードに所定の演算処理を施して前記変数値を求めた後に、この求めた変数値に基づいて前記マップを用いたマップ演算により前記拡散符号を選定することにより行われることを要旨としている。
【0013】
同構成によれば、仮に認証コード及び拡散符号が互いに類似するものでなかったとしても、車載装置及び携帯機は、それぞれに登録されている認証コードに基づいて所定の演算処理及びマップ演算を行うだけで拡散符号を決定することができるため、認証コードに基づく拡散符号の決定を極めて容易に行うことができるようになる。
【0014】
そして、請求項1又は2に記載の車両の電子キーシステムに関しては、請求項3に記載の発明によるように、複数の車両を互いに識別するために車両毎に各別に設定される車両識別コードを認証コードに含む場合、認証コードに基づく拡散符号の決定を、車両識別コードに基づく拡散符号の決定として行うといった構成を採用することが有効である。こうした構成を採用すれば、上述した各車載装置で互いに異なる複数種の拡散符号をそれぞれ決定するといった構成を容易に実現することができるようになる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の電子キーシステムにおいて、前記車載装置と前記携帯機との間で前記スペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行ったときに該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて、前記車載装置及び前記携帯機で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致していない旨の報知を行う報知手段を更に備えることを要旨としている。
【0016】
ところで、拡散符号を決定する際に、車載装置、あるいは携帯機に何らかの異常が生じてそれらが誤った拡散符号を決定してしまうと、車載装置及び携帯機で決定されるそれぞれの拡散符号が互いに一致しなくなってしまう。そしてこのような異常事態が生じると、車載装置と携帯機との間の無線通信に不具合が生じるおそれがある。この点、上記構成によれば、車載装置及び携帯機でそれぞれ決定される拡散符号が互いに不一致となるような異常事態が生じた場合には、それらの間でスペクトラム拡散変調に基づく無線通信が失敗に終わった旨が検知されて、報知手段による報知が行われるようになる。これにより、車両の製造工程の作業員はこの報知によって異常事態に気付くことができるため、例えば拡散符号を決定する処理を車載装置及び携帯機に再度行わせるなど、所要の対策を施すことができるようになる。したがって、車載装置及び携帯機で決定されるそれぞれの拡散符号が互いに不一致となるような異常事態を好適に回避することができるようになるため、車載装置及び携帯機の間の正常な無線通信を的確に確保することができるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両の電子キーシステムにおいて、前記車載装置、もしくは前記携帯機に前記認証コードを登録する際に使用される登録装置を更に備え、前記報知手段が、前記登録装置に設けられてなることを要旨としている。
【0018】
同構成によれば、車載装置や携帯機に新たに報知手段を設ける必要がないため、車載装置や携帯機の構造の簡素化を図ることができるようになる。
請求項6に記載の発明は、車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線信号を送受信することにより前記車載装置に登録されている認証コードと前記携帯機に登録されている認証コードとの照合を行い、該照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として前記車載装置による各種車両制御の実行が許可されるとともに、前記車載装置と前記携帯機との間で無線信号を送受信するにあたり、送信側では該送信側に設定されている拡散符号により前記無線信号をスペクトラム拡散変調する処理を行い、受信側では該受信側に設定されている拡散符号により前記スペクトラム拡散変調された信号を復調する処理を行う車両の電子キーシステムにおいて、前記認証コード及び前記拡散符号を前記車載装置及び前記携帯機にそれぞれ登録する方法であって、前記車載装置及び前記携帯機に前記認証コードをそれぞれ登録する認証コード登録工程と、前記車載装置及び前記携帯機にそれぞれ登録された認証コードに基づいて前記車載装置及び前記携帯機が前記拡散符号をそれぞれ決定する拡散符号決定工程とを備えることを要旨としている。
【0019】
同車両の電子キーシステムの設定方法によれば、車載装置及び携帯機に認証コードをそれぞれ登録する認証コード登録工程を経た後、それぞれに登録された認証コードに基づいて車載装置及び携帯機が拡散符号をそれぞれ決定するだけで、請求項1に記載の発明の車両の電子キーシステムを容易に実現することができるようになる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両の電子キーシステムの設定方法において、前記拡散符号決定工程の後に前記車載装置と前記携帯機との間で前記スペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行うとともに該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて前記車載装置及び前記携帯機で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致しない旨の報知を報知手段を通じて行う通信確認工程を更に備えることを要旨としている。
【0021】
同車両の電子キーシステムの設定方法によれば、通信確認工程で報知手段による報知が行われなければ、拡散符号決定工程に異常がなかったことを確認することができる。このため、仮に事後的に車載装置と携帯機との間の無線通信に不具合が生じたとしても、拡散符号の決定には問題がなかったことが予めわかっていれば、その不具合の原因を究明し易くなる。また、車載装置及び携帯機に認証コードをそれぞれ登録する工程においてスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を正常に行うことができるか否かを確認することができるため、こうした通信確認工程を車両の製造工程の後工程として別途行う場合と比較すると、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる車両の電子キーシステム及びその設定方法によれば、スペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した場合であれ、車両の製造工数の増加を回避しつつ、車載装置と携帯機との間の良好な無線通信を確保することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる車両の電子キーシステムの第1実施形態についてそのシステム構成を示すブロック図。
【図2】(a),(b)は、同第1実施形態の携帯機の送信装置、及び車載装置の受信装置についてそれらのシステム構成をそれぞれ示すブロック図。
【図3】同第1実施形態の車両制御装置のメモリ及び携帯機制御装置のメモリにそれぞれ記憶されている変数値xと拡散符号との関係を示すマップ。
【図4】車両識別コードに基づく拡散符号の選定方法の一例を模式的に示す図。
【図5】同第1実施形態の車両制御装置及び携帯機制御装置による拡散符号選定処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図6】同第1実施形態の車両の電子キーシステムについて車両識別コード及び携帯機識別コードを車載装置及び携帯機にそれぞれ登録する工程を示すシーケンスチャート。
【図7】本発明にかかる車両の電子キーシステムの第2実施形態について車両識別コード及び携帯機識別コードを車載装置及び携帯機にそれぞれ登録する工程を示すシーケンスチャート。
【図8】同第2実施形態の車両制御装置による通信確認処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図9】車両識別コードに基づく拡散符号の選定方法の他の例を模式的に示す図。
【図10】電子キーシステムの概要を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明にかかる車両の電子キーシステム、及びその設定方法の第1実施形態について図1〜図6を参照して説明する。なお、本実施形態が適用対象とする電子キーシステムの基本構成は先の図10に例示した電子キーシステムと同様である。図1は、こうした電子キーシステムのシステム構成をブロック図として示したものであり、はじめに、同図1を参照して、この電子キーシステムの構成、動作を説明する。
【0025】
同図1に示されるように、この電子キーシステムでは、車両に搭載された車載装置10とユーザが携帯所持する携帯機20との間で無線通信による各種通信制御が実行される。
ここで、車載装置10には、上記車室外通信エリアR1にリクエスト信号Sre1を送信する第1送信装置11、上記車室内通信エリアR2にリクエスト信号Sre2を送信する第2送信装置12、及び携帯機20から送信される応答信号Sanを受信する受信装置13がそれぞれ設けられている。また、この車載装置10には、車両エンジンを始動する際にユーザがプッシュ操作する部分となるスイッチ操作部14aが設けられたエンジンスタートスイッチ14、及び車両エンジンの始動にかかる制御を統括的に司るエンジン始動装置15がそれぞれ設けられている。これらのうち、エンジンスタートスイッチ14は、携帯機20に駆動電波Sivを所定時間送信するイモビアンプ14cとコイルアンテナ14bとを有し、車室内のステアリング装置付近に配設されている。ちなみに、イモビアンプ14cは、携帯機20から送信されるトランスポンダ信号Strを受信する部分でもある。さらに、この車載装置10には、車両ドアのロック/アンロックにかかる制御を統括的に司るドアロック制御装置17が設けられるとともに、車両ドアの開閉操作を検知するドアカーテシスイッチ18も設けられている。そして、上記第1送信装置11及び第2送信装置12を通じたリクエスト信号Sre1,Sre2の送信制御、受信装置13を通じて受信される応答信号Sanの処理、イモビアンプ14cによる駆動電波Sivの送信制御、並びにイモビアンプ14cにより受信されるトランスポンダ信号Strの処理が、同じく車載装置10に設けられている車両制御装置16を通じて行われる。また、この車両制御装置16は、ドアカーテシスイッチ18を通じた車両ドアの開閉操作の検知処理や、スイッチ操作部14aに対する押圧操作の検知処理を行うとともに、エンジン始動装置15やドアロック制御装置17を制御する部分でもある。ちなみに、この車両制御装置16には不揮発性のメモリ16aが内蔵されており、このメモリ16aに、当該車両固有の車両識別コードIDc、及び携帯機20固有の携帯機識別コードIDkがそれぞれ記憶されている。
【0026】
一方、携帯機20には、車載装置10から送信されるリクエスト信号Sre1,Sre2を受信する受信装置21とともに、リクエスト信号Sre1,Sre2の受信に基づき車載装置10に対して上記応答信号Sanを送信する送信装置22が設けられている。そして、受信装置21を通じて受信されるリクエスト信号Sre1,Sre2に基づく応答信号Sanの生成、並びにこの生成した応答信号Sanの上記送信装置22を通じての送信制御が、同じく携帯機20に設けられている携帯機制御装置23を通じて行われる。ちなみに、この携帯機制御装置23にも不揮発性のメモリ23aが内蔵されており、このメモリ23aに、前述した車両制御装置16のメモリ16aに記憶されている識別コードと同一の識別コード、すなわち車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkがそれぞれ記憶されている。また、この携帯機20には、上記車載装置10から送信される駆動電波Sivを受信することによって駆動電源を得て起動するトランスポンダ24が内蔵されている。このトランスポンダ24は、駆動電波Sivを受信することによって駆動電源を得て起動したときに、車載装置10に対して上記トランスポンダ信号Strを送信する部分である。ちなみに、トランスポンダ24にも不揮発性のメモリ24aが内蔵されており、このメモリ24aにも携帯機識別コードIDkが記憶されている。
【0027】
ちなみに、車載装置10及び携帯機20にはそれぞれ専用の登録装置31,32を接続することができ、これらの登録装置31,32を車載装置10及び携帯機20にそれぞれ接続して所定の操作を行うことで、車載装置10及び携帯機20に識別コードを登録することが可能となる。具体的には、上記車両制御装置16のメモリ16aに携帯機識別コードIDkを記憶させたり、あるいは上記携帯機制御装置23のメモリ23aに車両識別コードIDcを記憶させることが可能となる。
【0028】
そして、こうした構成からなる車両の電子キーシステムにあって、車両制御装置16が、メモリ16aに記憶されている車両識別コードIDcなどの情報を含むリクエスト信号Sre1を生成してこれを上記第1送信装置11を介して上記車室外通信エリアR1に送信しているとする。このとき、ユーザが所持する携帯機20が車室外通信エリアR1に進入したとすると、次のような態様にて車載装置10と携帯機20との間で信号の授受が実行される。
【0029】
まず、このシステムでは、リクエスト信号Sre1が携帯機20の受信装置21によって受信されるとともに、このリクエスト信号Sre1が上記携帯機制御装置23に入力される。携帯機制御装置23では、このリクエスト信号Sre1に含まれる車両識別コードIDcと上記メモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcとの照合を行い、この照合を通じて互いの車両識別コードが一致しているか否かを判断する。そして、携帯機制御装置23は、互いの車両識別コードが一致している旨を判断すると、リクエスト信号Sre1を送信している車両が正規の車両であると判断して、上記応答信号Sanの送信を行う。すなわち、携帯機制御装置23は、メモリ23aに記憶されている携帯機識別コードIDkなどの情報を含む応答信号Sanを生成してこれを上記送信装置22に出力することにより、この応答信号Sanを上記車載装置10に送信する。このようにして応答信号Sanが送信されることにより、上記車載装置10の受信装置13ではこれを受信するとともに、受信した応答信号Sanを上記車両制御装置16に出力する。これにより、車両制御装置16では、入力された応答信号Sanに含まれる携帯機識別コードIDkと上記メモリ16aに記憶されている携帯機識別コードIDkとの照合を行い、この照合を通じて互いの携帯機識別コードが一致しているか否かを判断する。そして車両制御装置16は、互いの携帯機識別コードが一致している旨を判断すると、携帯機20が正規の携帯機であると判断して、ドアロック制御装置17を駆動させて車両ドアのアンロックを行う。
【0030】
次に、ユーザが車室内に乗り込もうとして車両ドアを開けたとすると、車両制御装置16は、ドアカーテシスイッチ18の動作状態からドアの開操作を検知し、リクエスト信号Sre1の送信を中止するとともに、リクエスト信号Sre2を生成してこれを上記第2送信装置12を介して上記車室内通信エリアR2に送信する。ちなみに、このリクエスト信号Sre2にも、上記リクエスト信号Sre1と同様、車両識別コードIDcなどの情報が含まれている。そして、リクエスト信号Sre2が車室内通信エリアR2に送信されているときに、ユーザが所持する携帯機20が車室内通信エリアR2に進入したとすると、上記車室外通信エリアR1で行われた信号授受と同様の信号授受が車載装置10と携帯機20との間で実行される。そして、車両制御装置16は、互いの携帯機識別コードが一致している旨を判断すると、携帯機20が正規の携帯機であると判断してエンジンの始動を許可する。その後、車両制御装置16は、エンジンの始動を許可している状態でユーザによる上記スイッチ操作部14aの押圧操作を検知すると、エンジン始動装置15を通じてエンジンの始動を行う。
【0031】
一方、この電子キーシステムにあっては、仮に携帯機20が電池切れ状態になったとすると、リクエスト信号Sre1,Sre2及び応答信号Sanの授受を行うことができなくなり、車両ドアのアンロックやエンジン始動許可を行うことができなくなってしまう。しかしながら、こうした携帯機20の電池切れの際には、ユーザは、携帯機20に付属の機械鍵(図示略)を使用することにより、車両ドアをロック/アンロックすることが可能である。また、ユーザは、車室内において携帯機20をエンジンスタートスイッチ14にかざすことにより、車載装置10と携帯機20との間で無線通信を行うことが可能であり、車載装置10は、この無線通信を通じてエンジン始動許可を行う。ここで、ユーザが携帯機20をエンジンスタートスイッチ14にかざしたとすると、次のような態様にて車載装置10と携帯機20との間で信号の授受が実行される。
【0032】
まず、このシステムでは、ユーザが機械鍵を使用して車両ドアをアンロックさせた後に車室内に乗り込もうとして車両ドアを開けたとすると、車両制御装置16は、ドアカーテシスイッチ18の動作状態からドアの開操作を検知して、リクエスト信号Sre2を車室内通信エリアR2に送信するとともに、イモビアンプ14cから駆動電波Sivを所定時間発信する。ちなみに、車両制御装置16は、リクエスト信号Sre2の送信と駆動電波Sivの送信とを交互に行うため、リクエスト信号Sre2と駆動電波Sivとが混信することはない。そして、携帯機20では、駆動電波Sivをトランスポンダ24によって受信すると同トランスポンダ24が起動し、トランスポンダ24は、メモリ24aに記憶されている携帯機識別コードIDkを含むトランスポンダ信号Strを生成してこれを上記車載装置10に送信する。そして、車載装置10では、トランスポンダ信号Strをイモビアンプ14cにより受信するとともに、この受信したトランスポンダ信号Strを車両制御装置16に出力する。その後、車両制御装置16では、入力されたトランスポンダ信号Strに含まれる携帯機識別コードIDkと上記メモリ16aに記憶されている携帯機識別コードIDkとの照合を行い、互いの携帯機識別コードが一致していることに基づいてエンジンの始動を許可する。そしてこのときにも、車両制御装置16は、ユーザによる上記スイッチ操作部14aの押圧操作を検知すると、エンジン始動装置15を通じてエンジンの始動を行う。
【0033】
ところで、このような無線通信を通じて信号の授受を行うシステムにあっては、上記通信エリアR1,R2内に車載装置10の受信装置13によって受信可能なノイズ(有害電波)が存在するような場合、上記携帯機から送信される応答信号Sanと共に受信されるノイズの影響が無視できなくなる。すなわち、応答信号Sanに含まれる情報を車載装置10で適切に認識することができなくなるなど、電子キーシステムとして要求される機能に支障をきたすおそれがある。
【0034】
そこで、本実施形態にかかる電子キーシステムでは、携帯機20の送信装置22と車載装置10の受信装置13との間の無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用している。
【0035】
図2(a),(b)は、携帯機20の送信装置22及び車載装置10の受信装置13についてそれらの基本構成をそれぞれ示したものであり、次に、この図2(a),(b)を参照して、送信装置22の構成、並びに動作を詳述する。
【0036】
同図2(a)に示されるように、携帯機20の送信装置22には、携帯機制御装置23から出力される応答信号Sanを取り込んで周波数変位変調(FSK変調)を行う変調器22aが設けられており、この変調器22aでは、FSK変調された応答信号Sanを拡散変調器22bに出力する。また、この送信装置22には、PN(Pseudorandom Noise)符号などの拡散符号を上記拡散変調器22bに与える拡散符号発生器22cも設けられている。そして、拡散変調器22bは、拡散符号発生器22cにより与えられる拡散符号を上記FSK変調された応答信号Sanに乗算することによってその周波数帯域を広帯域の周波数帯域に変換する、いわゆる直接拡散方式のスペクトラム拡散を行う部分である。そして、この送信装置22では、拡散変調器22bを通じてスペクトラム拡散された応答信号Sanをアンテナ22dを介して上記車載装置10に送信する構造となっている。
【0037】
一方、図2(b)に示されるように、車載装置10の受信装置13は、基本的には、アンテナ13aを介して受信される上記スペクトラム拡散された応答信号Sanに対して上記送信装置22で施された処理と逆の処理を施す部分である。すなわち、この受信装置13には、拡散符号発生器13dにより与えられる拡散符号を上記スペクトラム拡散された応答信号Sanに乗算することにより上記FSK変調された応答信号Sanに復調する逆拡散復調器13bとともに、このFSK変調された応答信号Sanを取り込んでFSK復調を行う復調器13cがそれぞれ設けられている。そして、受信装置13では、こうして復調された応答信号Sanを上記車両制御装置16に出力する構造となっている。
【0038】
ところで、このように携帯機20の送信装置22と車載装置10の受信装置13との間の無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した場合には、送信装置22で使用する拡散符号と、受信装置13で使用する拡散符号とを一致させる、いわゆる拡散符号の同期を図る必要がある。
【0039】
そこで、本実施形態にかかる車両の電子キーシステムでは、車両制御装置16のメモリ16aに記憶されている車両識別コードIDcと、携帯機制御装置23のメモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcとが互いに一致していることに着目して、車両識別コードIDcを利用して拡散符号の同期を図るようにしている。
【0040】
次に、車両識別コードIDcを利用して拡散符号の同期を図る方法についてその一例を先の図2(a),(b)と共に、図3及び図4を併せ参照して説明する。
まずは、図2(a)に示されるように、本実施形態では、拡散符号発生器22cが、互いに異なる16種類の拡散符号A〜Pを拡散変調器22bに与えることが可能なように構成されるとともに、上記車両制御装置16により指定される1種類の拡散符号を上記拡散変調器22bに与えるように構成されている。一方、図2(b)に示されるように、拡散符号発生器13dも、同様に、互いに異なる16種類の拡散符号A〜Pを逆拡散復調器13bに与えることが可能なように構成されるとともに、これら16種類の拡散符号A〜Pのうち、車両制御装置16により指定される1種類の拡散符号を逆拡散復調器13bに与えるように構成されている。
【0041】
一方、図3に示すように、車両制御装置16のメモリ16a及び携帯機制御装置23のメモリ23aには、「0〜15」の範囲の整数値で示される変数値xと、上記16種類の拡散符号A〜Pとの関係を示す同一のマップがそれぞれ記憶されている。そして、車両制御装置16及び携帯機制御装置23は、このマップ、及びそれぞれのメモリ16a,23aに記憶されている車両識別コードIDcに基づいて以下の(a1),(a2)で示す処理を順次行うことにより拡散符号を選定する。
【0042】
(a1)車両識別コードIDcの下位の4ビットを抜き出してこれを10進数に変換することにより上記変数値xを求める演算処理を行う。
(a2)変数値xを求めた後、同変数値xに基づいて図3に例示したマップを用いたマップ演算を行うことにより拡散符号を選定する。
【0043】
具体的には、図4に示すように、例えば車両識別コードIDcが16ビットの2進数のコード「0001 0010 0011 0100」として構成されているとする。このとき、車両制御装置16は、メモリ16aに記憶されている車両識別コードIDcの下位の4ビット「0100」を10進数に変換する処理を行うことにより「4」という数値を求めた後、この求めた数値に基づいて先の図3に示したマップを用いてマップ演算を行うことにより拡散符号Eを選定する。一方、携帯機制御装置23のメモリ23aにも、同図に例示するコードと同様の車両識別コードIDcが記憶されているため、携帯機制御装置23は、メモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcに対して同様の演算処理及びマップ演算を行うことにより、同様の拡散符号Eを選定する。このように、車両制御装置16及び携帯機制御装置23がそれぞれのメモリ16a,23aに記憶されている車両識別コードIDcに対して図4に例示する演算処理を行えば、車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号の同期を自ずと図ることができるようになる。
【0044】
また、車両識別コードIDcは通常、車両毎に異なるため、例えば複数の車両に搭載された車載装置が同図4に例示する演算処理をそれぞれ行ったとすると、各車載装置で演算される変数値xが互いに異なった値となる。このため、複数の車両に搭載される各車載装置では、互いに異なる16種類の拡散符号が各別に使用されるようになるため、上述した2つの車両が互いに接近しているような状況下でも、各車両の電子キーシステムにより実行される無線通信の干渉の可能性を低減することができるようになる。このため、車載装置10と携帯機20との間の良好な無線通信を確保することができるようになる。
【0045】
図5は、車両制御装置16及び携帯機制御装置23を通じてそれぞれ実行される、車両識別コードIDcに基づいて拡散符号を選定する処理についてその処理手順を示したものであり、次に、同図5に基づいてこの処理の具体的手順を総括する。
【0046】
同図5に示されるように、この処理では、はじめに、上記車両制御装置16のメモリ16a、あるいは携帯機制御装置23のメモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcを読み込んだ後(ステップS1)、先の図4に例示した演算処理が実行される。すなわち、車両識別コードIDcに基づいて変数値xを求めた後(ステップS2)、求めた変数値xに基づいて先の図3に例示したマップを用いたマップ演算により拡散符号が選定される(ステップS3)。そして、この選定された拡散符号の情報が車両制御装置16のメモリ16a、あるいは携帯機制御装置23のメモリ23aに記憶された後(ステップS4)、この一連の処理が終了される。
【0047】
次に、車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkを車載装置10及び携帯機20にそれぞれ登録する工程において図5に例示した拡散符号選定処理を実行したときの車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号の同期が図られる様子について図6のシーケンスチャートを参照して説明する。なお、この登録工程を実行する前の時点では、車両制御装置16のメモリ16aには車両識別コードIDcのみが、また、携帯機制御装置23のメモリ23aには携帯機識別コードIDkのみがそれぞれ記憶されている。
【0048】
同図6に示されるように、この登録工程では、はじめに、作業員によって上記登録装置31,32が車載装置10及び携帯機20に接続されるとともに、接続された登録装置31,32を所要に操作することによって車載装置10及び携帯機20が登録処理モードにそれぞれ設定される。すなわち、車両制御装置16が携帯機識別コードIDkの登録を受け付ける状態に設定されるとともに、携帯機制御装置23が車両識別コードIDcの登録を受け付ける状態に設定される。なお、車載装置10及び携帯機20は、登録処理モードに設定されたとき、互いの無線通信を可能にすべく、上記16種類の拡散符号のうちのいずれか1種類の同一の拡散符号、例えば拡散符号Aを用いるようにそれぞれ設定されて、それぞれの拡散符号の同期が図られる。
【0049】
そして、車載装置10及び携帯機20が登録処理モードにそれぞれ設定された後、車両側に接続された登録装置31を作業員が再度操作することによって同登録装置31から車載装置10に登録処理開始コマンドが入力されると、一連の登録工程が開始される。この登録工程は、大きくは、車載装置10及び携帯機20に車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkをそれぞれ登録する認証コード登録工程と、登録された車両識別コードIDcに基づいて車載装置10及び携帯機20が拡散符号を決定する拡散符号決定工程とから構成されている。
【0050】
ここで、この登録工程では、まず、車両制御装置16が登録処理開始コマンドの入力を検知すると、イモビアンプ14cから駆動電波Sivを所定時間送信する。このとき、作業員が携帯機20をエンジンスタートスイッチ14にかざすと、携帯機20では、駆動電波Sivがトランスポンダ24によって受信されて同トランスポンダ24が起動し、トランスポンダ24は、メモリ24aに記憶されている携帯機識別コードIDkを含むトランスポンダ信号Strを生成してこれを上記車載装置10に送信する。そして、車載装置10では、このトランスポンダ信号Strをイモビアンプ14cによって受信するとともに、車両制御装置16は、受信したトランスポンダ信号Strに含まれる携帯機識別コードIDkをメモリ16aに記憶させる。
【0051】
次に、車両制御装置16は、内蔵するメモリ16aに記憶される車両識別コードIDcを含むリクエスト信号Sre2を生成するとともに、生成したリクエスト信号Sre2を上記車室内通信エリアR2に送信する。そうすると、携帯機20では、このリクエスト信号Sre2を受信装置21によって受信するとともに、携帯機制御装置23は、このリクエスト信号Sre2に含まれる車両識別コードIDcをメモリ23aに記憶させる。そして、ここまでの一連の登録工程を通じて、車載装置10及び携帯機20に同一の車両識別コードIDc及び同一の携帯機識別コードIDkがそれぞれ登録された状態になる。その後、携帯機制御装置23は、車両識別コードIDcを正常に登録することができた旨の情報を含む応答信号Sanを生成してこれを車載装置10に送信する。
【0052】
その後、携帯機制御装置23は、車両識別コードIDcを正常に登録することができた旨の情報を含む応答信号Sanを生成してこれを車載装置10に送信するとともに、先の図5に例示した処理を実行する。一方、車載装置10は、この応答信号Sanを受信装置13によって受信すると、同応答信号Sanに含まれる情報に基づいて携帯機20が車両識別コードIDcを正常に登録することができた旨を検知し、先の図5に例示した処理を実行する。このとき、車両制御装置16のメモリ16aに記憶されている車両識別コードIDcと、携帯機制御装置23のメモリ23aに記憶されている車両識別コードIDcとが互いに一致しているため、車載装置10及び携帯機20は同一の拡散符号をそれぞれ選定する。すなわち、車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号の同期を自ずと図ることができるようになる。これにより、車両の製造工程において車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号を同期させる工程を新たに設ける必要がなくなるため、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。
【0053】
ところで、本実施形態にかかる電子キーシステムも含めて、従来のシステムでは、例えば車載装置10や携帯機20に何らかの故障が生じた場合に車両識別コードIDcや拡散符号などの登録情報が消えてしまうことも考えられるため、例えばディーラが車載装置10や携帯機20に拡散符号を再度設定することができるようにしておくことが望ましい。ここで、前述のように、複数種の拡散符号を予め用意するとともに、車両製造時に複数種の拡散符号を各車両にそれぞれ割り当てるようにしたとすると、ディーラは、各車両に割り当てた拡散符号を事後的に特定することができるように、例えば各車両に割り当てた拡散符号を所定のデータベースなどに記憶させて管理する必要がある。ただしこの場合には、車両の数に比例して拡散符号の数も増加することから、データベースの管理が煩雑になるおそれがある。また、ディーラは、拡散符号を車載装置10や携帯機20に再度設定する際に、各車両に対応した拡散符号をデータベースから読み込む作業や、読み込んだ拡散符号を車載装置10及び携帯機20にそれぞれ登録させる作業などを行う必要があり、拡散符号を再度設定する手続きが煩雑になるおそれがある。
【0054】
この点、本実施形態にかかる車両の電子キーシステムでは、車載装置10及び携帯機20に車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkをそれぞれ登録すれば拡散符号を自ずと設定することができるため、拡散符号をデータベースに記憶させて管理しておく必要がなくなり、ひいてはディーラの管理作業を削減することができるようになる。また、ディーラは、車載装置10や携帯機20に拡散符号を再度設定する際に、車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkを車載装置10及び携帯機20にそれぞれ登録する作業、すなわち従来の登録作業を行うだけで拡散符号を車載装置10や携帯機20に再度登録させることができるようになる。このため、拡散符号を再度設定する手続きの複雑化を回避することができるようにもなる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両の電子キーシステム、及びその設定方法によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)車載装置10及び携帯機20が互いに異なる16種類の拡散符号のうちのいずれか1種類の拡散符号を選定して使用する構成とした上で、車両制御装置16及び携帯機制御装置23にそれぞれ登録されている車両識別コードIDcに基づいて拡散符号の選定を行うようにした。これにより、車両の製造工程において車載装置10及び携帯機20のそれぞれの拡散符号の同期を自ずと図ることができるようになるため、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。また、複数の車両に搭載される各車載装置では互いに異なる16種類の拡散符号が各別に使用されるようになるため、2つの車両が互いに接近しているような状況下でも、各車両の電子キーシステムにより実行される無線通信の干渉の可能性を低減することができるようになる。したがって、車載装置10と携帯機20との間の良好な無線通信を確保することができるようになる。さらに、ディーラは、車載装置10や携帯機20に拡散符号を再度設定する状況に備えて拡散符号を所定のデータベースなどに記憶させて管理しておく必要がないため、ディーラの管理作業の削減を図ることができるようにもなる。また、ディーラは、車載装置10や携帯機20に拡散符号を再度設定する際に、各車両に対応した拡散符号をデータベースから読み込む作業などを行う必要がないため、拡散符号を再度設定する手続の複雑化を回避することができるようにもなる。
【0056】
(2)互いに異なる16種類の拡散符号と変数値xの関係を示す同一のマップを車両制御装置16及び携帯機制御装置23に記憶させた上で、車両識別コードIDcに演算処理を施すことにより変数値xを取得した後に、取得した変数値xに基づいたマップ演算を行うことにより拡散符号を選定するようにした。これにより、仮に車両識別コードIDc及び拡散符号が互いに類似するものでなかったとしても、車両制御装置16及び携帯機制御装置23は、それぞれに登録されている車両識別コードIDcに基づいて上述した演算処理及びマップ演算を行うだけで拡散符号を決定することができる。このため、車両識別コードIDcに基づく拡散符号の決定を容易に行うことができるようになる。
[第2実施形態]
続いて、本発明にかかる車両の電子キーシステム、及びその設定方法の第2実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。なお、この第2実施形態も電子キーシステムとしての基本構成は先の図1や図2に示した構成に準ずるものであり、ここでは先の図6に対応する図として、登録工程を図7に示している。なお、以下では、図1や図2に示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛し、以下では両者の相違点を中心に説明する。
【0057】
上述のように、車両識別コードIDcに基づいて拡散符号を決定すれば、基本的には、車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定される拡散符号が互いに一致するようになる。ただし、車載装置10及び携帯機20が先の図6に例示した拡散符号選定処理を実行する際に、何らかの異常が生じてそれらが誤った拡散符号を決定してしまうと、車載装置10及び携帯機20で決定されるそれぞれの拡散符号が互いに一致しなくなってしまう。そしてこのような異常事態が生じると、車載装置10と携帯機20との間の無線通信に不具合が生じるおそれがある。
【0058】
そこで本実施形態では、車載装置10及び携帯機20で上記拡散符号選定処理を行った後に、車載装置10と携帯機20との間でスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を実際に行って、それらの間で無線通信を正常に行うことができるか否かを確認する通信確認工程を設けるようにしている。また、先の図1に示されるように、車載装置10に接続される登録装置31に発行ダイオード(LED)31aを設けた上で、スペクトラム拡散変調に基づく無線通信が失敗に終わった旨が通信確認工程で検知された場合には、LED31aを点灯させてその旨を作業員に報知するようにしている。ちなみに、報知手段であるLED31aを登録装置31に設けることにより、例えば車載装置10や携帯機20に新たに報知手段を設ける必要がなくなるため、車載装置10や携帯機20の構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0059】
図7は、上述のように、登録工程をシーケンスチャートとして示したものである。
同図7に示されるように、この通信確認工程では、上記車載装置10によって上記拡散符号選定処理が実行された後、車両制御装置16が、通信確認要求信号Scdを生成してこれを上記車室内通信エリアR2に送信する。
【0060】
そうすると、携帯機20では、この通信確認要求信号Scdを上記受信装置21によって受信するとともに、この通信確認要求信号Scdが携帯機制御装置23に入力される。携帯機制御装置23では、こうして通信確認要求信号Scdが入力されると、通信確認応答信号Scaを生成してこれを送信装置22を出力する。このとき、送信装置22では、携帯機20で決定された拡散符号に基づいて通信確認応答信号Scaをスペクトラム拡散変調する処理が行われて、スペクトラム拡散変調された通信確認応答信号Scaを車載装置10に送信する。
【0061】
続いて、車載装置10では、このスペクトラム拡散変調された通信確認応答信号Scaを受信装置13によって受信するとともに、受信装置13では、車載装置10で決定された拡散符号に基づいて通信確認応答信号Scaを復調する処理が行われて、復調された通信確認応答信号Scaを車両制御装置16に出力する。車両制御装置16では、こうして通信確認応答信号Scaが入力されると、携帯機20と正常な無線通信を行うことができた旨を判断して、その旨を示す正常受信通知信号Snrを上記車室内通信エリアR2に送信し、一連の登録処理を終了する。
【0062】
一方、携帯機20では、正常受信通知信号Snrを受信装置21によって受信して、この受信した正常受信通知信号Snrが携帯機制御装置23に入力されると、携帯機制御装置23では、車載装置10と正常な無線通信を行うことができた旨を判断して、一連の登録処理を終了する。
【0063】
ところで、上述のように、仮に車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定された拡散符号が互いに不一致となるような異常事態が生じたとすると、携帯機20から送信される通信確認応答信号Scaを車載装置10が受信することができなくなる。そこで、本実施形態では、車載装置10が通信確認要求信号Scdを送信した後に所定時間経過しても通信確認応答信号Scaを受信することができなかった場合には、異常事態が生じた旨を報知するようにしている。具体的には、車両制御装置16から上記登録装置31にLED点灯指令を発信してLED31aを点灯させることで異常事態を報知するようにしている。これにより、車載装置10及び携帯機20で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致していない旨を作業員に対して報知することができるようになる。
【0064】
図8は、車両制御装置16を通じて実行される、通信確認要求信号Scd及び通信確認応答信号Scaの送受信に基づいて携帯機20との通信確認を行う処理についてその処理手順を示したものであり、次に、同図8に基づいて同処理の具体的手順を総括する。
【0065】
同図8に示されるように、この処理では、はじめに、上記通信確認要求信号Scdを車室内通信エリアR2に送信し(ステップS10)、その後、通信確認要求信号Scdを送信してから所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS11)。具体的には、車両制御装置16の内部タイマを通じて通信確認要求信号Scdを送信した時点からの経過時間が計測されるとともに、この経過時間が所定時間以上となったことに基づいて、通信確認要求信号Scdを送信してから所定時間が経過した旨が判断される。またこのとき、ステップS12において通信確認応答信号Scaを受信することができたか否かも併せて監視される。そして、通信確認要求信号Scdを送信してから所定時間が経過しておらず(ステップS11:NO)、且つその期間に通信確認応答信号Scaを受信することができた場合には(ステップS12:YES)、すなわち携帯機20と正常な無線通信を行うことができた旨が検知された場合には、上記正常受信通知信号Snrを車室内通信エリアR2に送信して(ステップS13)、車両制御装置16はこの一連の処理を終了する。
【0066】
一方、通信確認応答信号Scaを受信することができずに(ステップS12:NO)、通信確認要求信号Scdを送信してから所定時間が経過した場合には(ステップS11:YES)、すなわち携帯機20との無線通信が失敗に終わった旨が検知された場合には、LED点灯指令を上記登録装置31に発信して(ステップS14)、車両制御装置16はこの一連の処理を終了する。
【0067】
車両の電子キーシステムとしてのこうした構成によれば、車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定される拡散符号が互いに不一致となるような異常事態が生じた場合には、登録装置31のLED31aが点灯することにより異常事態の報知が行われる。これにより、車両の製造工程の作業員はこの報知によって異常事態に気付くことができるため、例えば先の図7に例示した登録工程を再度行うなど、所要の対策を施すことができるようになる。したがって、車載装置10及び携帯機20で決定されるそれぞれの拡散符号が互いに不一致となるような異常事態を好適に回避することができるようになるため、車載装置10及び携帯機20の間の正常な無線通信を的確に確保することができるようになる。
【0068】
また、車両の製造工程においては、LED31aが点灯しなければ上述した拡散符号決定工程に異常がなかったことを確認することができる。このため、仮に事後的に車載装置10と携帯機20との間の無線通信に不具合が生じたとしても、拡散符号の決定には問題がなかったことが予めわかっていれば、その不具合の原因を究明し易くなる。また、一連の登録工程においてスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を正常に行うことができるか否かを確認することができるため、通信確認工程を車両の製造工程の後工程として別途行う場合と比較すると、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態にかかる電子キーシステム、及びその設定方法によっても、先の第1の実施形態による上記(1)及び(2)の効果と同等、もしくはそれらに準じた効果が得られるとともに、更に以下の効果が得られるようになる。
【0070】
(3)車載装置10と携帯機20との間でスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行うとともに、該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて、登録装置31のLED31aを点灯させるようにした。これにより、車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定される拡散符号が互いに不一致となるような異常事態に作業員が気付いて所要の対策を施すことができるようになるため、車載装置10及び携帯機20の間の正常な無線通信を的確に確保することができるようになる。
【0071】
(4)車載装置10及び携帯機20でそれぞれ決定される拡散符号が互いに一致していない旨を報知する報知手段を、登録装置31に設けたLED31aによって実現するようにした。これにより、車載装置10や携帯機20に新たに報知手段を設ける必要がなくなるため、車載装置10や携帯機20の構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0072】
(5)電子キーシステムの登録工程において、拡散符号決定工程の後に通信確認工程を行うようにした。これにより、拡散符号決定工程に異常がなかったことを確認することができるようになるため、仮に事後的に車載装置10と携帯機20との間の無線通信に不具合が生じたとしても、拡散符号の決定に問題がなかったことが予めわかっていれば、その不具合の原因を究明し易くなる。また、一連の登録工程において通信確認を行うことができるため、通信確認工程を車両の製造工程の後工程として別途行う場合と比較すると、車両の製造工数の低減を図ることができるようになる。
[他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
【0073】
・上記第2実施形態では、スペクトラム拡散変調に基づく無線通信が失敗に終わった旨の報知を、登録装置31のLED31aを点灯させることで行うようにした。これに代えて、例えば車両に搭載されたブザーやホーンを鳴動させたり、あるいはインストルメントパネルに警告灯を点灯させるなどして報知を行うようにしてもよい。また、例えば携帯機20に実装された表示装置、具体的には液晶ディスプレイやLEDなどを利用して報知を行うようにしてもよい。要は、車載装置10及び携帯機20で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致していない旨を報知することができるものであればよい。
【0074】
・車両識別コードIDcに所定の演算処理を施すことにより変数値xを求めた後、この求めた変数値xに基づいてマップ演算を行うことにより1種類の拡散符号を選定する方法として、以下の(b1),(b2)で示す方法を採用してもよい。
【0075】
(b1)車両識別コードIDcのビット列全体を10進数の数値に変換した後、その変換した数値を所定のハッシュ関数により「0〜15」の範囲の変数値xに変換する演算処理を行う。
【0076】
(b2)変数値xを求めた後、同変数値xに基づいて先の図3に例示したマップを用いたマップ演算を行うことにより拡散符号を選定する。
具体的には、図9に示すように、例えば車両識別コードIDcが16ビットの2進数のコード「0001 0010 0011 0100」として構成されているとする。このとき、車両制御装置16及び携帯機制御装置23は、内蔵されるメモリ16a,23aに記憶されている車両識別コードIDcを10進数の数値に変換する演算処理を行うことにより「4660」という整数値をそれぞれ求める。また、車両制御装置16及び携帯機制御装置23は、こうして求めた整数値「4660」をハッシュ関数により変換することにより「4」という数値を求めた後、この求めた数値に基づいて先の図3に例示したマップを用いてマップ演算を行うことにより拡散符号Eをそれぞれ選定する。こうした方法であっても拡散符号を選定することは可能である。要は、車両識別コードIDcに所定の演算処理を施して変数値xを求めた後に、この求めた変数値xに基づいて先の図3に例示したマップを用いたマップ演算により拡散符号を選定するものであればよい。
【0077】
・上記各実施形態では、携帯機20の送信装置22において応答信号SanをFSK変調するようにしたが、これに代えて、例えば携帯機20の送信装置22において応答信号Sanを振幅偏移変調(ASK変調)したり、あるいは位相偏移変調(PSK変調)してもよい。また、これに併せて、車載装置10の受信装置13において応答信号SanをASK復調したり、あるいはPSK復調してもよい。
【0078】
・上記各実施形態では、車載装置10及び携帯機20は、登録処理モードに設定されたとき、16種類の拡散符号のうちのいずれか一種類の同一の拡散符号をそれぞれ用いるようにした。これに代えて、例えば車載装置10及び携帯機20が登録処理モードに設定されている期間、携帯機20の拡散変調器22bによる拡散変調の機能、及び車載装置10の逆拡散復調器13bによる逆拡散復調の機能を一時的に停止するようにしてもよい。
【0079】
・上記各実施形態では、車載装置10の受信装置13及び携帯機20の送信装置22が、互いに異なる16種類の拡散符号A〜Pを設定することができるようにそれぞれ構成されていたが、これに代えて、例えば17種類以上、あるいは2種類〜15種類の拡散符号を設定することができるようにそれぞれ構成されていてもよい。
【0080】
・上記各実施形態では、携帯機20の送信装置22と車載装置10の受信装置13との間の無線通信の方式にスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した。これに加え、例えば携帯機20の受信装置21によって受信可能なノイズの影響も懸念される場合には、車載装置10の第1及び第2送信装置11,12と携帯機20の受信装置21との間の無線通信の方式にもスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用してもよい。あるいは、それらの間の無線通信の方式にのみスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用してもよい。なお、それらの間の無線通信の方式としてスペクトラム拡散変調に基づく通信方式を採用した場合には、例えば先の図7に例示した登録工程を行った際に、携帯機20が通信確認要求信号Scdを受信することができないときに所定の報知を行うことが有効である。こうした報知を行うことにより、それらの間でスペクトラム拡散変調に基づく無線通信を正常に行うことができるか否かを確認することができるようにもなる。
【0081】
・上記各実施形態では、車両識別コードIDcから拡散符号を決定する方法として、車両識別コードIDcに演算処理を施して変数値xを求めた後に、この求めた変数値xに基づいて図3に例示したマップを用いたマップ演算により拡散符号を選定する方法を採用した。こうした車両識別コードIDcから拡散符号を決定する方法については、1つの車両識別コードIDcから1つの拡散符号を一義的に決定する方法であればよい。ただし、拡散符号から車両識別コードIDcを特定可能にする必要はない。
【0082】
・上記各実施形態では、認証コードとして使用される車両識別コードIDc及び携帯機識別コードIDkのうち、車両識別コードIDcに基づいて拡散符号の選定を行うようにした。これに代えて、携帯機識別コードIDkに基づいて拡散符号の選定を行うようにしてもよい。要は、車載装置10及び携帯機20がそれぞれ有している共通の認証コードに基づいて拡散符号の選定を行う構成であればよい。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0083】
(イ)請求項2に記載の車両の電子キーシステムにおいて、前記所定の演算処理が、前記車両識別コードを構成するビット列の一部を抜き出した後に、その抜き出したビット列の一部を10進数の数値に変換することにより前記複数種の拡散符号を指定する変数値を求める演算処理であることを特徴とする車両の電子キーシステム。同構成によれば、上記車両識別コードと上記複数種の拡散符号を指定するための変数値とが互いに一致していない場合であっても、車両識別コードから上記複数種の拡散符号を指定するための変数値を極めて容易に求めることができるようになるため、上述したマップ演算を極めて容易に行うことができるようになる。
【0084】
(ロ)請求項2に記載の車両の電子キーシステムにおいて、前記所定の演算処理が、前記車両識別コードを構成するビット列全体を10進数の数値に変換した後に、その変換した数値をハッシュ関数により前記複数種の拡散符号を指定する変数値に変換する演算処理であることを特徴とする車両の電子キーシステム。同構成によれば、上記車両識別コードと上記複数種の拡散符号を指定するための変数値とが互いに一致していない場合であっても、車両識別コードから上記複数種の拡散符号を指定するための変数値を極めて容易に求めることができるようになり、ひいては上述したマップ演算を極めて容易に行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0085】
San…応答信号、Sca…通信確認応答信号、Scd…通信確認要求信号、Snr…正常受信通知信号、Siv…駆動電波、Str…トランスポンダ信号、Sre1,Sre2…リクエスト信号、10…車載装置、11,12,22…送信装置、13,21…受信装置、13a,22d…アンテナ、13b…逆拡散復調器、13c…復調器、13d,22c…拡散符号発生器、14…エンジンスタートスイッチ、14a…スイッチ操作部、14b…コイルアンテナ、14c…イモビアンプ、15…エンジン始動装置、16…車両制御装置、16a,23a,24a…メモリ、17…ドアロック制御装置、18…ドアカーテシスイッチ、20…携帯機、22a…変調器、22b…拡散変調器、23…携帯機制御装置、24…トランスポンダ、31,32…登録装置、31a…発行ダイオード(LED)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線信号を送受信することにより前記車載装置に登録されている認証コードと前記携帯機に登録されている認証コードとの照合を行い、該照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として前記車載装置による各種車両制御の実行が許可されるとともに、前記車載装置と前記携帯機との間で無線信号を送受信するにあたり、送信側では、該送信側に設定されている拡散符号により前記無線信号をスペクトラム拡散変調する処理を行い、受信側では、該受信側に設定されている拡散符号により前記スペクトラム拡散変調された信号を復調する処理を行う車両の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置及び前記携帯機は、前記登録されている前記認証コードに基づいて前記拡散符号をそれぞれ決定する
ことを特徴とする車両の電子キーシステム。
【請求項2】
前記車載装置及び前記携帯機は、前記認証コードに所定の演算処理を施すことにより得られる変数値と該変数値により指定される複数種の拡散符号との関係を示す同一のマップをそれぞれ有し、前記認証コードに基づく前記拡散符号の決定が、前記認証コードに所定の演算処理を施して前記変数値を求めた後に、この求めた変数値に基づいて前記マップを用いたマップ演算により前記拡散符号を選定することにより行われる
請求項1に記載の車両の電子キーシステム。
【請求項3】
前記認証コードは、複数の車両を互いに識別するために車両毎に各別に設定される車両識別コードを含み、前記認証コードに基づく前記拡散符号の決定が、前記車両識別コードに基づく前記拡散符号の決定として行われる
請求項1又は2に記載の車両の電子キーシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置と前記携帯機との間で前記スペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行ったときに該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて、前記車載装置及び前記携帯機で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致していない旨の報知を行う報知手段を更に備える
ことを特徴とする車両の電子キーシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置、もしくは前記携帯機に前記認証コードを登録する際に使用される登録装置を更に備え、前記報知手段が、前記登録装置に設けられてなる
ことを特徴とする車両の電子キーシステム。
【請求項6】
車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線信号を送受信することにより前記車載装置に登録されている認証コードと前記携帯機に登録されている認証コードとの照合を行い、該照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として前記車載装置による各種車両制御の実行が許可されるとともに、前記車載装置と前記携帯機との間で無線信号を送受信するにあたり、送信側では、該送信側に設定されている拡散符号により前記無線信号をスペクトラム拡散変調する処理を行い、受信側では、該受信側に設定されている拡散符号により前記スペクトラム拡散変調された信号を復調する処理を行う車両の電子キーシステムにおいて、前記認証コード及び前記拡散符号を前記車載装置及び前記携帯機にそれぞれ登録する方法であって、
前記車載装置及び前記携帯機に前記認証コードをそれぞれ登録する認証コード登録工程と、
前記車載装置及び前記携帯機にそれぞれ登録された認証コードに基づいて前記車載装置及び前記携帯機が前記拡散符号をそれぞれ決定する拡散符号決定工程と、
を備える車両の電子キーシステムの設定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の電子キーシステムの設定方法において、
前記拡散符号決定工程の後に前記車載装置と前記携帯機との間で前記スペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行うとともに、該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて前記車載装置及び前記携帯機で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致しない旨の報知を報知手段を通じて行う通信確認工程を更に備える
車両の電子キーシステムの設定方法。
【請求項1】
車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線信号を送受信することにより前記車載装置に登録されている認証コードと前記携帯機に登録されている認証コードとの照合を行い、該照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として前記車載装置による各種車両制御の実行が許可されるとともに、前記車載装置と前記携帯機との間で無線信号を送受信するにあたり、送信側では、該送信側に設定されている拡散符号により前記無線信号をスペクトラム拡散変調する処理を行い、受信側では、該受信側に設定されている拡散符号により前記スペクトラム拡散変調された信号を復調する処理を行う車両の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置及び前記携帯機は、前記登録されている前記認証コードに基づいて前記拡散符号をそれぞれ決定する
ことを特徴とする車両の電子キーシステム。
【請求項2】
前記車載装置及び前記携帯機は、前記認証コードに所定の演算処理を施すことにより得られる変数値と該変数値により指定される複数種の拡散符号との関係を示す同一のマップをそれぞれ有し、前記認証コードに基づく前記拡散符号の決定が、前記認証コードに所定の演算処理を施して前記変数値を求めた後に、この求めた変数値に基づいて前記マップを用いたマップ演算により前記拡散符号を選定することにより行われる
請求項1に記載の車両の電子キーシステム。
【請求項3】
前記認証コードは、複数の車両を互いに識別するために車両毎に各別に設定される車両識別コードを含み、前記認証コードに基づく前記拡散符号の決定が、前記車両識別コードに基づく前記拡散符号の決定として行われる
請求項1又は2に記載の車両の電子キーシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置と前記携帯機との間で前記スペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行ったときに該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて、前記車載装置及び前記携帯機で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致していない旨の報知を行う報知手段を更に備える
ことを特徴とする車両の電子キーシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置、もしくは前記携帯機に前記認証コードを登録する際に使用される登録装置を更に備え、前記報知手段が、前記登録装置に設けられてなる
ことを特徴とする車両の電子キーシステム。
【請求項6】
車両に搭載された車載装置と携帯機との間で無線信号を送受信することにより前記車載装置に登録されている認証コードと前記携帯機に登録されている認証コードとの照合を行い、該照合を通じて互いの認証コードが一致している旨が判断されることを条件として前記車載装置による各種車両制御の実行が許可されるとともに、前記車載装置と前記携帯機との間で無線信号を送受信するにあたり、送信側では、該送信側に設定されている拡散符号により前記無線信号をスペクトラム拡散変調する処理を行い、受信側では、該受信側に設定されている拡散符号により前記スペクトラム拡散変調された信号を復調する処理を行う車両の電子キーシステムにおいて、前記認証コード及び前記拡散符号を前記車載装置及び前記携帯機にそれぞれ登録する方法であって、
前記車載装置及び前記携帯機に前記認証コードをそれぞれ登録する認証コード登録工程と、
前記車載装置及び前記携帯機にそれぞれ登録された認証コードに基づいて前記車載装置及び前記携帯機が前記拡散符号をそれぞれ決定する拡散符号決定工程と、
を備える車両の電子キーシステムの設定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の電子キーシステムの設定方法において、
前記拡散符号決定工程の後に前記車載装置と前記携帯機との間で前記スペクトラム拡散変調に基づく無線通信を行うとともに、該無線通信が失敗に終わった旨が検知されることに基づいて前記車載装置及び前記携帯機で決定されたそれぞれの拡散符号が互いに一致しない旨の報知を報知手段を通じて行う通信確認工程を更に備える
車両の電子キーシステムの設定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−280368(P2010−280368A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173296(P2009−173296)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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