説明

車両停止判定装置

【課題】 精度良く車両停止状態を判断可能な車両停止判定装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の車両停止判定装置にあっては、運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を前記第1所定時間より長い第2所定時間以上継続したときは車両停止と判定する車両停止判定手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両停止の判定を行なう車両停止判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、4輪の全ての車輪速がいずれも0となった場合に車両停止と判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−37404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術にあっては、シフトレバーが走行レンジを選択した状態で車両停止し、エンジンも停止しているアイドルストップ車両やハイブリッド車両の場合、以下に示す問題があった。すなわち、一般に車輪速は各輪に設けられた凹凸歯のパルス信号を検出し、そのパルス信号の周期等に基づいて車輪速を検出している。しかしながら、車両停止中にエンジン再始動を行うと、エンジンと接続された駆動軸が若干回転し、パルス信号を出力することで、車両停止と判断できないという問題が有った。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、精度良く車両停止状態を判断可能な車両停止判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両停止判定装置にあっては、運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を前記第1所定時間より長い第2所定時間以上継続したときは車両停止と判定する車両停止判定手段と、を備えた。
【発明の効果】
【0007】
よって、駆動輪が振動するおそれがある場合には、より長い時間を用いて車両停止を判定することで、精度の高い車両停止状態の判定を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置を搭載した車両の概略図である。
【図2】実施例1のブレーキ液圧制御部の回路図である。
【図3】実施例1の常開リニア電磁弁において指令電流に対する指令差圧の関係を表す特性図である。
【図4】実施例1における走行中のホイルシリンダ液圧目標値のブレーキペダル踏力に対する特性を表す特性図である。
【図5】実施例1における車両停止中のホイルシリンダ液圧目標値のブレーキペダル踏力に対する特性を表す特性図である。
【図6】実施例1のブレーキ液圧制御処理を表すフローチャートである。
【図7】実施例1のMC液圧と目標WC液圧との関係を規定するテーブルである。
【図8】実施例1の前後加速度と路面勾配との関係を規定するテーブルである。
【図9】実施例1の路面勾配と停止維持必要WC液圧との関係を規定するテーブルである。
【図10】実施例1の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
【図11】実施例1の車両におけるデファレンシャルギヤ及び車輪速センサの構成を表す概略図である。
【図12】実施例2の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
【図13】実施例3の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
【図14】実施例4の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
【図15】実施例5の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
【図16】実施例6の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
【図17】実施例7の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
【図18】実施例8の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1のブレーキ制御装置を搭載した車両の概略図である。実施例1の車両は、エンジン1と、駆動モータ2と、トランスミッション3と、プロペラシャフト401を介して接続されたデファレンシャルギヤ4とを有するハイブリッド車両である。そして、エンジン1の駆動力のみを用いて走行するエンジン走行モードと、駆動モータ2の駆動力のみを用いて走行する電気自動車モードと、エンジン1及び駆動モータ2の両方の駆動力を用いて走行するハイブリッドモードと、を有し、走行状態に基づいてこれら走行モードを適宜選択する。
【0010】
ブレーキ制御装置10は、各車輪にブレーキ液圧による摩擦制動力を発生させるブレーキ液圧制御部30を有する。図2は実施例1のブレーキ液圧制御部の回路図である。ブレーキ液圧発生部32は、ブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を発生する。FRブレーキ液圧調整部33,FLブレーキ液圧調整部34,RRブレーキ液圧調整部35,RLブレーキ液圧調整部36及び還流ブレーキ液供給部37は、車輪(FR,FL,RR,RL)にそれぞれ配置されたホイルシリンダWfr,Wfl,Wrr,Wrlに供給するブレーキ液圧をそれぞれ調圧可能に構成されている。
【0011】
ブレーキ液圧発生部32は、ブレーキペダルBPのストロークに応じて作動する負圧ブースタVBと、負圧ブースタVBに連結されたマスタシリンダMCとから構成されている。負圧ブースタVBは、図示しないエンジンの吸気管内の空気圧力(負圧)を利用してブレーキペダルBPの操作力を所定の割合でアシストし、この足すとっされた操作力をマスタシリンダMCに伝達する。マスタシリンダMCは、第1ポート及び第2ポートからなる2系統の出力ポートを有し、リザーバRSからのブレーキ液の供給を受けて、上記アシストされた操作力に応じた第1マスタシリンダ液圧Pmを第1ポートから発生すると共に、第1マスタシリンダ液圧Pmを略同一の液圧である第2マスタシリンダ液圧Pmを第2ポートから発生する。
【0012】
マスタシリンダMCの第1ポートと、FRブレーキ液圧調整部33及びFLブレーキ液圧調整部34の上流部との間には、常開リニア電磁弁PC1が介装されている。同様に、マスタシリンダMCの第2ポートと、RRブレーキ液圧調整部35及びRLブレーキ液圧調整部36の上流部との間には、常開リニア電磁弁PC2が介装されている。
【0013】
FRブレーキ液圧調整部33は、2ポート2位置切り換え型の常開電磁開閉弁である増圧弁PUfrと、2ポート2位置切り換え型の常閉電磁開閉弁である減圧弁PDfrとから構成されている。増圧弁PUfrは、FRブレーキ液圧調整部33の上流部とホイルシリンダWfrとを連通・遮断可能とされている。減圧弁PDfrは、ホイルシリンダWfrとリザーバRS1とを連通・遮断可能に構成されている。これにより、増圧弁PUfr及び減圧弁PDfrを制御することでホイルシリンダWfr内のブレーキ液圧(ホイルシリンダ液圧Pwfr)が増圧・保持・減圧可能とされている。加えて、増圧弁PUfrにはブレーキ液のホイルシリンダWfr側からFRブレーキ液圧調整部33の上流部への一方向の流れのみ許容するチェック弁CV1が並列に配設され、これにより、操作されているブレーキペダルBPが開放されたときWC液圧Pwfrが迅速に減圧される。同様に、FLブレーキ液圧調整部34,RRブレーキ液圧調整部35,RLブレーキ液圧調整部36は、それぞれ増圧弁PUfl及び減圧弁PDfl,増圧弁PUrr及び減圧弁PDrr,増圧弁PUrl及び減圧弁PDrlから構成されており、これらの増圧弁及び減圧弁が制御されることにより、ホイルシリンダWfl,ホイルシリンダWrr及びホイルシリンダWrl内のブレーキ液圧をそれぞれ増圧・保持・減圧可能に構成されている。
【0014】
また、増圧弁PUfl,PUrr及びPUrlのそれぞれにも、チェック弁CV1と同様の機能を達成するチェック弁CV2,CV3及びCV4がそれぞれ並列に配設されている。還流ブレーキ液供給部37は、直流モータMTと、モータMTにより同時に駆動される二つの液圧ポンプ(ギヤポンプ)HP1,HP2とを有する。液圧ポンプHP1は、減圧弁PDfr,PDflから還流されてきたリザーバRS1内のブレーキ液を汲み上げ、汲み上げたブレーキ液を、チェック弁CV8を解してFRブレーキ液圧調整部33及びFLブレーキ液圧調整部34の上流部に供給する。尚、液圧ポンプHP2についても同様に作動するため説明を省略する。尚、液圧ポンプHP1,HP2の吐出圧の脈動を低減するために、チェック弁CV8と常開リニア電磁弁PC1との間の液圧回路及びチェック弁CV11と常開リニア電j費弁PC2との間の液圧回路には、それぞれ、ダンパDM1,DM2が配設されている。
【0015】
常開リニア電磁弁PC1の弁体には、図示しないコイルスプリングからの付勢力に基づく開方向の力が常時作用していると共に、FRブレーキ液圧調整部33及びFLブレーキ液圧調整部34の上流部の圧力から第1MC液圧Pmを減じることで得られる差圧であるリニア弁差圧ΔPdfに基づく開方向の力と、常開リニア電磁弁PC1への通電電流(指令電流Id)に応じて比例的に増加する吸引力に基づく閉方向の力が作用するよう構成されている。
【0016】
図3は実施例1の常開リニア電磁弁において指令電流に対する指令差圧の関係を表す特性図である。図3に示すように、吸引力に相当する指令差圧ΔPdが指令電流Idに応じて比例的に増加するように決定される。ここで、I0はコイルスプリングの付勢力に相当する電流値である。そして、常開リニア電磁弁PC1は、指令差圧ΔPdがリニア弁差圧ΔPdfよりも大きいときに閉弁してマスタシリンダMCの第1ポートと、FRブレーキ液圧調整部33及びFLブレーキ液圧調整部34の上流部との連通を遮断する。
【0017】
一方、常開リニア電磁弁PC1は、指令差圧ΔPdfがリニア弁差圧ΔPdfよりも小さいときに開弁してマスタシリンダMCの第1ポートと、FRブレーキ液圧調整部33及びFLブレーキ液圧調整部34の上流部とを連通する。これにより、液圧ポンプHP1が駆動されている場合、FRブレーキ液圧調整部33及びFLブレーキ液圧調整部34の上流部のブレーキ液が常開リニア電磁弁PC1を介してマスタシリンダMCの第1ポート側に流れることでリニア弁差圧ΔPdfが指令差圧ΔPdに一致するように調整される。尚、マスタシリンダMCの第1ポート側へ流入したブレーキ液はリザーバRS1へと還流される。
【0018】
ブレーキ制御装置10は、対応する車輪(FR,FL,RR,RL)が所定角度回転するごとにパルス信号を出力する車輪速センサ41(FR,FL,RR,RL)と、ブレーキペダルBPの操作の有無に応じて音信号又はオフ信号を選択的に出力するブレーキスイッチ42と、車体前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ43と、マスタシリンダ圧を検出するMC液圧センサ44とを有する。前後加速度センサ43は、車体の車体ピッチング方向の傾き角に応じた値を出力する特性を有する。
【0019】
コントローラ50を有する。コントローラ50は、互いにバスで接続されたCPU51と、CPU51が実行するプログラム、ルックアップテーブル、マップ、定数等を予め記憶したROM52と、CPU51が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM53と、電源が投入された状態でデータを格納すると共に格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM54と、ADコンバータを含むインターフェース55等を有する。インターフェース55は、センサ41〜44と接続され、CPU51にセンサ41〜44と接続され、CPU51にセンサ41〜44からの信号を供給するとともに、CPU51の指示に応じて、ブレーキ液圧制御部30の電磁弁及びモータMTに駆動信号を送出する。
【0020】
次に、実施例1のブレーキ制御装置のホイルシリンダ液圧特性制御の概要について説明する。図4は実施例1における走行中のホイルシリンダ液圧目標値のブレーキペダル踏力に対する特性を表す特性図である。一般にブレーキペダル踏力に対する車両に働く制動力の特性には目標とすべき目標制動力特性が存在する。よって、ブレーキペダル踏力に対する目標ホイルシリンダ液圧Pwtの特性は図4の実線のように設定されている。一方、図4の破線には、マスタシリンダMCが出力するMC液圧Pmのブレーキペダル踏力に対する特性を示している。この実線と破線との比較から明らかなように、実施例1では、ブレーキペダル踏力に対するMC液圧Pmが目標WC液圧Pwtよりも所定量だけ意図的に低い値になるようにバキュームブースタVBの倍力特性が設定されている。そして、車両走行中において、実施例1では、このMC液圧Pm(基本液圧)の目標WC液圧Pwtに対する不足分をリニア弁差圧ΔPd(=ΔPd=ΔPdr)で補填することで、MC液圧Pmにリニア弁差圧ΔPdを加えた液圧であるWC液圧Pw(=Pm+ΔPd)のブレーキペダル踏力に対する特性が図4の実線で示した目標WC液圧Pwtの特性と一致するようになっている。
【0021】
例えば、図4に示したように、ブレーキペダル踏力が値Fp1となっている場合、リニア弁差圧ΔPdが、値Fp1に対応する目標WC液圧Pwt(=Pw1)から値Fp1に対応するMC液圧Pm(=Pm1)を減じた値ΔPd1(=Pw1−Pm1)に一致するように、常開リニア電磁弁PC1,PC2への指令電流Idが制御される。
【0022】
図5は実施例1における車両停止中のホイルシリンダ液圧目標値のブレーキペダル踏力に対する特性を表す特性図である。車両が停止している場合、車両を停止状態に維持するために必要なWC液圧の下限値(以下、停止維持必要WC液圧Pwstop)よりも大きいWC液圧Pw(=Pm+ΔPd)を発生する必要は無い。一方、WC液圧Pwを不必要に大きくすると、常開リニア電磁弁PC1,PC2、液圧ポンプHP1,HP2、ホイルシリンダWへのシール部等への負担が大きくなる。よって、各液圧機器の負担を軽減するため、図5の特性図に示すように、車両停止中にあっては、ブレーキペダル踏力に応じた目標WC液圧Pwtが停止維持必要WC液圧Pwstopを超える場合(図5ではブレーキペダル踏力がαより大きい場合)、WC液圧Pwが停止維持必要WC液圧Pwstopを超えないようにリニア弁差圧ΔPdが制限される。
【0023】
具体的には、例えば、図5に示したように、車両停止中においてブレーキペダル踏力が値Fp2(>α)となっている場合、リニア弁差圧ΔPdが、値Fp2に対応する目標WC液圧Pwt(=Pw2)から値Fp2に対応するMC液圧Pm(=Pm2)を減じた値ΔPd2'(=Pw2−Pm2)に代えて、停止維持必要WC液圧Pwstopから値Fp2に対応するMC液圧Pm(=Pm2)を減じた値ΔPd2(=Pwstop−Pm2)に一致するように、常開リニア電磁弁PC1,PC2への指令電流Idが制御される。このように、車両停止中においてWC液圧Pwが停止維持必要WC液圧Pwstopを超えないように制限されることで、車両停止中において、図5に斜線で示した領域に対応する分だけ、各液圧機器への負荷が軽減される。
【0024】
図6は実施例1のブレーキ液圧制御処理を表すフローチャートである。
ステップ605では、各センサ41〜44の出力値を入力する。
ステップ610では、制動中か否かを判定し、ブレーキスイッチ42がオン信号を出力している場合には制動中であると判定してステップ630に進み、オフ信号を出力している場合には非制動中であると判定してステップ1005へ進む。
【0025】
車両走行中であって、かつ、非制動中の場合には、ステップ1005ではカウンタNを0にリセットし、ステップ615に進んで目標リニア弁差圧ΔPtを0に設定し、ステップ620では、液圧ポンプHP1,HP2を停止する指示をモータMTに対して行なう。更に、ステップ625に進み、リニア弁差圧ΔPd(=ΔPdf=ΔPdr)が設定された目標リニア弁差圧ΔPt(現時点では0)に一致するように、常開リニア電磁弁PC1,PC2への指令電流Idを制御する。これにより、液圧ポンプHP1,HP2が停止すると共に、リニア弁差圧ΔPdが0になる。現時点では制動中ではないからMC液圧Pmも0である。よって、WC液圧Pw(=Pm+ΔPd)も0となり、液圧制動力は発生しない。
【0026】
次に、車両走行中であって、かつ、制動中の場合には、ステップ630に進み、MC液圧センサ44により検出された現時点でのMC液圧Pmと、図7のグラフにより示したMC液圧Pmと目標WC液圧Pwtとの関係を規定するROM52に予め記憶されているテーブルとに基づいて目標WC液圧Pwtを決定する。このテーブルに規定されているMC液圧Pmと目標WC液圧Pwtとの関係は、上述した図4に示したMC液圧Pmと目標WC液圧Pwtとの関係に対応している。これにより、MC液圧Pmが大きい程目標WC液圧Pwtがより大きい値に決定される。続いて、ステップ635では、車両停止中か否かを判定する。尚、この車両停止判定の詳細については後述する。尚、この車両停止判定開始時点では、車両走行中に判定を開始することから、車輪速は0以外であり、最初は停止中ではないと判定される。
【0027】
ステップ635において、停止中ではないと判定されると、ステップ1040に進み、カウンタNを0にリセットし、ステップ640において目標リニア弁差圧ΔPtをPwt−Pmに設定し、ステップ1045において液圧ポンプHP1,Hp2を駆動する指示をモータMTに対して行なった後、ステップ625に進んで常開リニア電磁弁PC1,PC2への指令電流Idを制御する。この結果、WC液圧Pw(=Pm+ΔPd)が目標WC液圧Pwtと一致するように制御されて、目標WC液圧Pwtに対応する液圧制動力が発生する。このような処理は、制動中であり、かつ、停止中ではないと判定される限り繰り返し実行される。
【0028】
次に、車両走行中にブレーキペダルBPが操作され、車両が停止した場合について説明する。この場合、ステップ635において停止中と判定されるためステップ650へ進む。ステップ650では、前後加速度センサ43により検出された現時点での前後加速度Gcと、図8にグラフにより示した前後加速度Gxと路面勾配Gradとの関係を規定するROM52に予め記憶されているテーブルとに基づいて車体ピッチング方向における路面勾配Gradを決定する。これにより、前後加速度Gxが大きい程路面勾配Gradがより大きい値に決定される。尚、このテーブルでは、前後加速度センサ43のうち、その出力特性のばらつきの範囲内において最も小さい出力値(即ち、前後加速度Gx)を発生するものについての前後加速度Gxと路面勾配Gradとの関係が規定されている。これにより、このテーブルと、前後加速度センサ43とに基づいて決定される路面勾配Gradが実際よりも小さい値となることは無い。
【0029】
次に、ステップ655において、上記決定された路面勾配Gradと、図9のグラフにより示す路面勾配Gradと停止維持必要WC液圧Pwstopとの関係を規定するROM52に予め記憶されているテーブルとに基づいて停止維持必要WC液圧Pwstopを決定する。これにより、路面勾配Gradが大きいほど停止維持必要WC液圧Pwstopがより大きい値に決定される。
【0030】
次に、ステップ660に進んで、上記ステップ630にて決定されている目標WC液圧Pwtが停止維持必要WC液圧Pwstopよりも大きいか否かを判定し、Noと判定する場合(図5においてブレーキペダル踏力がα未満の場合)、上述したステップ1040,640に進んでステップ1040,640,1045,625の順に処理を実行する。
【0031】
これにより、制動中であり、かつ、停止中であいと判定される場合と同様、リニア弁差圧ΔPdが値(Pwt−Pm)に一致するように制御されて、WC液圧Pw(=Pm+ΔPd)が目標WC液圧Pwt(≦Pwstop)と一致するように制御される。
【0032】
一方、ステップ660にてYesと判定する場合(図5においてブレーキペダル踏力がα以上の場合)、ステップ1010の処理によりカウンタNは1となり、所定値Nrefに達していない。ステップ1015では、カウンタNが所定値Nref(2以上の整数)に達したか否かを判定する。この所定値Nrefは、リニア弁差圧ΔPdが目標リニア弁差圧ΔPtに収束するのに要する時間(極短時間)に相当する値である。従って、この場合、ステップ1015にてNoと判定されて、ステップ1020に進んで目標リニア弁差圧ΔPtを、上記ステップ655にて決定した停止維持必要WC液圧Pwstopから現時点でのMC液圧Pmを減じた値(=Pwstop−Pm)に設定した後、ステップ1025,625の処理を順に実行する。これにより、リニア弁差圧ΔPdが値(Pwstop−Pm)に一致するように調整される。このような処理は、カウンタNが所定値Nrefに達するまで繰り返し実行される。
【0033】
そして、カウンタNが所定値Nrefに達すると(即ち、リニア弁差圧ΔPdが(Pwstop−Pm)に収束してWC液圧Pwが値Pwstopに収束すると)、ステップ1015にてYesと判定されて、ステップ1030にて目標リニア弁差圧ΔPtが最大値MAXに設定され、続くステップ1035にて液圧ポンプHP1,HP2を停止する指示がモータMTに対して行なわれる。その後、ステップ625の処理が行なわれる。これにより、液圧ポンプHP1,HP2が停止され、かつ、常開リニア電磁弁PC1,PC2が閉弁状態に維持される。この結果、WC液圧Pwが現時点での値Pwstopで一定に維持される。言い換えると、WC液圧Pwが停止維持必要WC液圧Pwstopに制限される。言い換えると、WC液圧Pwが停止維持必要WC液圧Pwstopに制限される。
【0034】
以上のように、図6に示すフローチャートが実行される場合、WC液圧Pwが停止維持必要WC液圧Pwstopに制限される場合(図5においてブレーキペダル踏力がα以上の場合)において、リニア弁差圧ΔPdが値(Pwstop−Pm)に収束した後、液圧ポンプHP1,HP2が停止される。これにより、WC液圧Pwが停止維持必要WC液圧Pwstopに制限されている間における液圧ポンプHP1,HP2の駆動に要するエネルギの消費を無くすことができる。
【0035】
(車両停止判断について)
次に、ステップ635の車両停止判定処理について説明する。図10は実施例1の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
ステップ101では、車両停止中と判定されたか否かを判断し、車両停止中と判定されたときはステップ106へ進み、それ以外のときはステップ102に進む。
ステップ102では、駆動輪車輪速が0か否かを判断し、0のときはステップ102aに進んで駆動輪カウンタのカウントアップを行なう。一方、0以外のときはステップ102bに進んで駆動輪カウンタを0にクリアする。
ステップ103では、従動輪車輪速が0か否かを判断し、0のときはステップ103aに進んで従動輪カウンタのカウントアップを行なう。一方、0以外のときはステップ103bに進んで従動輪カウンタを0にクリアする。
【0036】
ステップ104では、駆動輪カウンタのカウント値が所定値A以上、かつ、従動輪カウンタのカウント値が所定値A以上か否かを判断し、これら条件が成立したときはステップ105に進んで車両停止と判定し、条件が不成立のときはステップ104aに進んで車両停止ではないと判定する。尚、所定値Aは車輪速センサ信号が収束したと判断可能な所定時間であり、適宜設定される値である。
【0037】
一方、車両停止と判定された後は、ステップ106に進み、駆動輪車輪速が0か否かを判断し、0以外のときはステップ106aに進んで駆動輪カウンタのカウントアップを行なう。一方、0のときはステップ106bに進んで駆動輪カウンタを0にクリアする。
ステップ107では、従動輪車輪速が0か否かを判断し、0以外のときはステップ107aに進んで従動輪カウンタのカウントアップを行なう。一方、0のときはステップ107bに進んで従動輪カウンタを0にクリアする。
【0038】
ステップ108では、駆動輪カウンタのカウント値が所定値Aよりも大きな所定値B以上、かつ、従動輪カウンタのカウント値が所定値A以上か否かを判断し、これら条件が成立したときはステップ109に進んで車両停止との判定を継続し、条件が不成立のときはステップ108aに進んで車両停止ではないと判定する。
【0039】
ここで、車両停止判定を上記フローに基づいて判定する理由について説明する。図11は実施例1の車両におけるデファレンシャルギヤ及び車輪速センサの構成を表す概略図である。デファレンシャルギヤ4は、プロペラシャフト401と、右側ドライブシャフト402と、左側ドライブシャフト403が接続されている。右側ドライブシャフト402には、この右側ドライブシャフト402と一体に回転する凹凸外歯を有するセンサロータ402aと、このセンサロータ402aと径方向に対向する位置に設けられたセンサヘッド41RRaとを有し、センサロータ402a及びセンサヘッド41RRaとにより右後輪車輪速センサ41RRを構成している。尚、左側ドライブシャフト402にあっても、同様にセンサロータ403a及びセンサヘッド41RLaにより左後輪車輪速センサ41RLを構成している。
【0040】
ここで、右側ドライブシャフト402に着目して車輪速センサが車輪側を検出する論理を説明する。右側ドライブシャフト402が回転すると、センサロータ402aが回転する。このとき、センサロータ402aの外周に形成された凹凸外歯によってセンサヘッド41RRaとの距離が変化し、この変化による磁束密度変化をパルス信号として出力する。CPU51では、このパルス信号の周期を演算し、この周期から車輪速を演算する。
【0041】
このとき、例えば、電気自動車モードで走行中に車両停止し、その後、エンジン始動要求が出力された場合、車両停止状態のままでエンジン1を始動することになる。このとき、Dレンジ等の走行レンジが選択されていると、トランスミッション3内のクラッチ等は締結されていることから、エンジン始動に伴う振動がプロペラシャフト401に伝達される。この振動は、デファレンシャルギヤ4を介してドライブシャフト402,403を振動させる。すると、ドライブシャフト402は回転しているのではなく、単に振動しているだけであっても、センサヘッド41RRaと凹凸外歯との距離関係が振動に伴って変化することで車輪速センサとしてはパルス信号を出力してしまう。これにより、CPU51側では、車両停止中にも関わらず車両走行中と判断してしまうおそれがあった。このような現象は、ハイブリッド車両に限らず、アイドリングストップ車両のように走行レンジを選択した状態における車両停止中にエンジン始動を行う場合にも生じうる。
【0042】
そこで、実施例1では、一旦車両停止と判断された後の車両停止判断にあっては、車輪速が0でないと判定されたときに駆動輪カウンタをカウントアップし、駆動輪カウンタの判定閾値を、所定値Aよりも大きな所定値Bとして、すなわちエンジン始動の影響の無い従動輪側の所定値Aよりも長い所定値Bとして判定することとした。これにより、エンジン始動等に伴う振動が多少検出されたとしても、誤って車両非停止状態と判定されることがなく、精度良く車両停止状態を判定することができる。
【0043】
以上説明したように、実施例1にあっては、下記の作用効果が得られる。
(1)運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサ41(車輪速検出手段)と、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速が回転停止を所定値A(第1所定時間)以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を所定値Aより長い所定値B(第2所定時間)以上継続したときは車両停止と判定するステップ106〜109(車両停止判定手段)と、を備えた。
よって、エンジン停止中の車両停止時にエンジン始動を行うことで駆動輪への動力伝達経路が振動したとしても、精度良く車両停止状態を判定することができる。
【0044】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では車両停止判定に時間を用いたが、実施例2では車輪速の値を用いる。図12は実施例2の車両停止判定処理を表すフローチャートである。
ステップ111では、停止判定中と判定されたか否かを判断し、車両停止中と判定されたときはステップ115へ進み、それ以外のときはステップ112へ進む。
ステップ112では、駆動輪車輪速が0か否かを判断し、0のときはステップ113へ進み、それ以外のときはステップ112aに進んで非停止状態と判定する。
ステップ113では、従動輪車輪速が0か否かを判断し、0のときはステップ114へ進んで車両停止と判定する。一方、0以外のときはステップ112aに進んで非停止状態と判定する。
【0045】
一方、車両停止と判定された後は、ステップ115に進み、駆動輪車輪速が所定車輪速Aよりも大きいか否かを判定し、所定車輪速Aより大きいときはステップ117に進んで非停止状態と判定する。一方、所定車輪速A以下のときはステップ116に進む。
ステップ116では、従動輪車輪速が0より大きいか否かを判断し、0より大きいときはステップ117に進んで非停止状態と判定する。一方、0のときはステップ116aに進んで停止判定を継続する。
【0046】
以上説明したように、実施例2にあっては下記の作用効果が得られる。
(2)運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサ41(車輪速検出手段)と、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速が0(第1所定値)以下であり、かつ、駆動輪車輪速が0より大きな所定車輪速A(第2所定値)以下のときは車両停止と判定するステップ115〜117(車両停止判定手段)と、を備えた。
よって、エンジン停止中の車両停止時にエンジン始動を行うことで駆動輪への動力伝達経路が振動したとしても、精度良く車両停止状態を判定することができる。更に、例えば、極低μ路などでのクリープトルクでの駆動輪スリップが発生した場合であっても、実施例1のように所定時間を待つことなく短時間に停止判定することができる。
【0047】
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。図13は実施例3の車両停止判定処理を表すフローチャートである。実施例1では、車両停止判定中か否かで駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更した。これに対し、実施例3では、ハイブリッド車両側における走行モードを監視し、走行モードのモード遷移によってエンジン始動が行われるか否かを判断する点が異なる。
ステップ121では、エンジン始動が開始されるか否かを判断し、開始されないと判断したときはステップ102に進み、開始されると判断したときはステップ106に進む。
【0048】
以上説明したように、実施例3にあっては下記の作用効果が得られる。
(3)運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサ41(車輪速検出手段)と、ステップ121(エンジン始動要求検出手段)によりエンジン始動要求が検出されたときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速が回転停止を所定値A(第1所定時間)以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を所定値Aより長い所定値B(第2所定時間)以上継続したときは車両停止と判定し、ステップ121によりエンジン始動要求が検出されていないときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を所定値A以上継続したときに車両停止と判定するステップ106〜109(車両停止判定手段)と、を備えた。
よって、エンジン始動時以外にあっては、所定値Aによって車両停止を判定することで短時間による車両判定ができる。また、エンジン始動時のように駆動輪が振動するおそれがある場合には、所定値Bによって判定することで精度良く車両停止状態を判定することができる。
【0049】
〔実施例4〕
次に、実施例4について説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。図14は実施例4の車両停止判定処理を表すフローチャートである。実施例1では、車両停止判定中か否かで駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更した。これに対し、実施例4では、シフト操作を監視し、シフト操作が開始されたか否かによって駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更する点が異なる。
ステップ131では、シフト操作が開始されたか否かを判断し、開始されないと判断したときはステップ102に進み、開始されたと判断したときはステップ106に進む。
【0050】
以上説明したように、実施例4にあっては下記の作用効果が得られる。
(4)運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサ41(車輪速検出手段)と、ステップ131(シフト操作検出手段)によりシフト操作の開始が検出されたときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速が回転停止を所定値A(第1所定時間)以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を所定値Aより長い所定値B(第2所定時間)以上継続したときは車両停止と判定し、ステップ131によりシフト操作の開始が検出されていないときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を所定値A以上継続したときに車両停止と判定するステップ106〜109(車両停止判定手段)と、を備えた。
よって、シフト操作の開始以外にあっては、所定値Aによって車両停止を判定することで短時間による車両判定ができる。また、PレンジやNレンジのような非動力伝達状態からDレンジやRレンジのような動力伝達状態へのシフト操作開始時のように、動力伝達が開始されることで駆動輪が振動するおそれがある場合には、所定値Bによって判定することで精度良く車両停止状態を判定することができる。
【0051】
〔実施例5〕
次に、実施例5について説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では、ハイブリッド車両に基づいて説明した。これに対し実施例5では、アイドリングストップ車両である点が異なる。尚、アイドリングストップ車両のエンジン再始動条件とは、例えば、ブレーキペダルから足を離す、NレンジやPレンジといった非走行レンジからDレンジやRレンジといった走行レンジにシフト操作する、ステアリングを所定角度以上操舵する、アクセルペダルを操作する、といった条件に基づいて車両停止中であってもエンジン再始動が行われる。また、実施例1では、車両停止判定中か否かで駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更した。これに対し、実施例5では、ブレーキペダルのリリースが行なわれたか否かによって駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更する点が異なる。
【0052】
図15は実施例5の車両停止判定処理を表すフローチャートである。実施例1では、車両停止判定中か否かで駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更した。これに対し、実施例5では、ブレーキペダルがリリース(足離し)されたか否かによって駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更する点が異なる。
ステップ141では、ブレーキペダルがリリースされたか否かを判断し、リリースされていないと判断したときはステップ102に進み、リリースされたと判断したときはステップ106に進む。尚、ブレーキペダルがリリースされたか否かは、所定時間あたりのマスタシリンダ圧減少量を演算し、その減少量が閾値以上であればブレーキリリース中であると判断する。尚、ブレーキペダルストロークセンサやブレーキペダル踏力センサ等を備えている場合には、それらを用いても良いし、ブレーキスイッチのオン・オフ状態に基づいて判断してもよい。
【0053】
以上説明したように、実施例5にあっては下記の作用効果が得られる。
(5)運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサ41(車輪速検出手段)と、ステップ141(ブレーキペダル操作検出手段)によりブレーキペダルのリリースが検出されたときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速が回転停止を所定値A(第1所定時間)以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を所定値Aより長い所定値B(第2所定時間)以上継続したときは車両停止と判定し、ステップ141によりブレーキペダルのリリースが検出されていないときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を所定値A以上継続したときに車両停止と判定するステップ106〜109(車両停止判定手段)と、を備えた。
よって、ブレーキペダルが踏まれている状態にあっては、所定値Aによって車両停止を判定することで短時間による車両判定ができる。また、ブレーキペダルがリリースされ、エンジン再始動が行われ、駆動輪が振動するおそれがある場合には、所定値Bによって判定することで精度良く車両停止状態を判定することができる。
【0054】
〔実施例6〕
次に、実施例6について説明する。基本的な構成は実施例5と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。実施例5では、ブレーキペダルのリリースによって駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更した。これに対し、実施例6ではステアリング操舵が行なわれたか否かによって駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更する点が異なる。
【0055】
図16は実施例6の車両停止判定処理を表すフローチャートである。アイドリングストップ車両にあっては、例えば交差点等で車両停止した場合にエンジンのアイドリングを停止する。ただし、例えば右折する意図等がある場合、交差点内に進入し、車両停止した後にステアリングを右側に操舵した状態で車両停止する場合がある。このときは、アイドリングストップを実施していたとしても、その後、素早い発進が要求される可能性が高いことからエンジンを再始動し、アイドリングストップを中止する。よって、ステアリング操作の有無を検出することは、エンジン再始動が行われるか否かを判断する指標となる。
ステップ151では、ステアリング操舵中か否かを判断し、操舵中でないと判断されたときはステップ102に進み、ステアリング操舵中であると判断されたときはステップ106に進む。尚、ステアリング操舵の有無については、舵角センサを備え、舵角センサ値が所定値以上となった場合、もしくは操舵トルクを検出するトルクセンサを備え、トルクセンサ値が所定値以上となった場合等が挙げられる。
【0056】
以上説明したように、実施例6にあっては下記の作用効果が得られる。
(6)運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサ41(車輪速検出手段)と、ステップ151(ステアリング操舵検出手段)によりステアリング操舵が検出されたときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速が回転停止を所定値A(第1所定時間)以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を所定値Aより長い所定値B(第2所定時間)以上継続したときは車両停止と判定し、ステップ151によりステアリング操舵が検出されていないときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を所定値A以上継続したときに車両停止と判定するステップ106〜109(車両停止判定手段)と、を備えた。
よって、ステアリング非操作状態にあっては、所定値Aによって車両停止を判定することで短時間による車両判定ができる。また、ステアリング操作によりエンジン再始動が行われ、駆動輪が振動するおそれがある場合には、所定値Bによって判定することで精度良く車両停止状態を判定することができる。
【0057】
〔実施例7〕
次に、実施例7について説明する。基本的な構成は実施例5と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。実施例5では、ブレーキペダルのリリースによって駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更した。これに対し、実施例7ではアクセルペダル操作が行なわれたか否かによって駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更する点が異なる。
【0058】
図17は実施例7の車両停止判定処理を表すフローチャートである。アイドリングストップ車両にあっては、例えばブレーキペダルを踏み込んだ状態で車両停止した場合にエンジンのアイドリングを停止する。ただし、ブレーキペダルを踏み込んだままであっても、アクセルペダルが踏み込まれたときは、アイドリングストップを実施していたとしても、その後、素早い発進が要求される可能性が高いことからエンジンを再始動し、アイドリングストップを中止する。よって、アクセルペダル操作の有無を検出することは、エンジン再始動が行われるか否かを判断する指標となる。
ステップ161では、アクセルペダル操作中か否かを判断し、アクセルペダルが踏まれていないと判断されたときはステップ102に進み、アクセルペダルが踏み込まれていると判断されたときはステップ106に進む。尚、アクセルペダル操作の有無については、アクセル開度センサを備え、アクセル開度センサ値が所定値以上となった場合等が挙げられる。
【0059】
以上説明したように、実施例7にあっては下記の作用効果が得られる。
(7)運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサ41(車輪速検出手段)と、ステップ161(アクセルペダル操作検出手段)によりアクセルペダル操作が検出されたときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速が回転停止を所定値A(第1所定時間)以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を所定値Aより長い所定値B(第2所定時間)以上継続したときは車両停止と判定し、ステップ161によりアクセルペダル操作が検出されていないときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を所定値A以上継続したときに車両停止と判定するステップ106〜109(車両停止判定手段)と、を備えた。
よって、アクセルペダルが踏み込まれていない状態にあっては、所定値Aによって車両停止を判定することで短時間による車両判定ができる。また、アクセルペダルが踏み込まれたことによりエンジン再始動が行われ、駆動輪が振動するおそれがある場合には、所定値Bによって判定することで精度良く車両停止状態を判定することができる。これにより、例えブレーキペダルが踏み込まれた状態であっても、エンジン再始動に伴う振動の発生による精度の悪化を回避することができる。
【0060】
〔実施例8〕
次に、実施例8について説明する。基本的な構成は実施例5と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。実施例5では、ブレーキペダルのリリースによって駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更した。これに対し、実施例8では発進クラッチの操作中か否かによって駆動輪カウント値の判定閾値を所定値Bに変更する点が異なる。
【0061】
図18は実施例8の車両停止判定処理を表すフローチャートである。アイドリングストップ車両にあっては、例えばブレーキペダルを踏み込んだ状態で車両停止した場合にエンジンのアイドリングを停止する。そして、所定の条件が成立したときはエンジンを再始動し、アイドリングストップを中止する。このとき、例えエンジン始動中であっても、発進クラッチの操作中、すなわち伝達トルク容量を確保している最中(伝達トルク容量が不十分な状態)は、エンジンからの駆動力が駆動輪に伝達されないため、この場合には駆動輪カウント値の判定閾値を変更する必要はない。そこで、発進クラッチの締結状態に応じて所定値Bに変更する点が異なる。
ステップ171では、エンジン始動中であって、かつ、発進クラッチが締結中か否かを判断し、条件を満たすと判断されたときはステップ102に進み、条件を満たしていないと判断されたときはステップ106に進む。尚、発進クラッチの締結状態は、オートマチックトランスミッションを搭載している車両にあっては自動変速機コントローラにおいて発進クラッチに供給される締結圧の変化状態等を信号として使用できる。また、マニュアルトランスミッションを搭載している車両にあっては、発進クラッチの操作状態を表すクラッチスイッチを有し、このクラッチスイッチの状態により締結容量の有無を判断すればよい。
【0062】
以上説明したように、実施例8にあっては下記の作用効果が得られる。
(8)運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサ41(車輪速検出手段)と、ステップ171(エンジン始動開始判断手段,発進クラッチ操作検出手段)によりエンジン始動中であり、かつ、発進クラッチが締結中であるとの条件を満たしていないと判断されたときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速が回転停止を所定値A(第1所定時間)以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を所定値Aより長い所定値B(第2所定時間)以上継続したときは車両停止と判定し、ステップ171により条件を満たしていると判断されたときは、車輪速センサ41により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を所定値A以上継続したときに車両停止と判定するステップ106〜109(車両停止判定手段)と、を備えた。
よって、エンジン始動中であっても、発進クラッチの伝達トルク容量が確保されていない状態にあっては、所定値Aによって車両停止を判定することで短時間による車両判定ができる。これにより、例えば、電動オイルポンプを備え、車両停止条件に基づいて油圧を発生させて自動変速機に必要な油圧を供給するシステムを備えている場合にあっては、即座に電動オイルポンプの駆動を開始することができ、油圧発生の遅れを抑制することができる。また、エンジン再始動中であって、発進クラッチの伝達トルク容量が確保されたことで駆動輪が振動するおそれがある場合には、所定値Bによって判定することで精度良く車両停止状態を判定することができる。
【0063】
以上、実施例及び変形例に基づいて本発明を説明したが、上記実施形態に限らず、他の構成であっても本発明に含まれる。例えば、実施例1〜4ではハイブリッド車両について、実施例5以降はアイドリングストップ車両について説明したが、いずれの発明であっても、エンジンが運転者の意図とは別に自動的に停止する場合を有する車両であれば適用可能である。この場合、トランスミッションは自動であっても手動であっても構わない。
【符号の説明】
【0064】
1 エンジン
2 駆動モータ
3 トランスミッション
10 ブレーキ制御装置
41 車輪速センサ
42 ブレーキスイッチ
43 前後加速度センサ
44 液圧センサ
50 コントローラ
BP ブレーキペダル
Wfr,Wfl,Wrr,Wrl ホイルシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、
従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を前記第1所定時間より長い第2所定時間以上継続したときは車両停止と判定する車両停止判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両停止判定装置。
【請求項2】
運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、
従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が第1所定値以下であり、かつ、駆動輪車輪速が前記第1所定値より大きな第2所定値以下のときは車両停止と判定する車両停止判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両停止判定装置。
【請求項3】
運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、
従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
エンジン始動要求を検出するエンジン始動要求検出手段と、
前記エンジン始動要求検出手段によりエンジン始動要求が検出されたときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を前記第1所定時間より長い第2所定時間以上継続したときに車両停止と判定し、
エンジン始動要求が検出されていないときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続したときに車両停止と判定する車両停止判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両停止判定装置。
【請求項4】
運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、
従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
シフト操作を検出するシフト操作検出手段と、
前記シフト操作検出手段によりシフト操作の開始が検出されたときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を前記第1所定時間より長い第2所定時間以上継続したときに車両停止と判定し、
シフト操作の開始が検出されていないときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続したときに車両停止と判定する車両停止判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両停止判定装置。
【請求項5】
運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、
従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
ブレーキペダル操作を検出するブレーキペダル操作検出手段と、
前記ブレーキペダル操作検出手段によりブレーキペダルのリリースが検出されたときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を前記第1所定時間より長い第2所定時間以上継続したときに車両停止と判定し、
ブレーキペダルのリリースが検出されていないときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続したときに車両停止と判定する車両停止判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両停止判定装置。
【請求項6】
運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、
従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
ステアリング操舵を検出するステアリング操舵検出手段と、
前記ステアリング操舵検出手段によりステアリング操舵が検出されたときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を前記第1所定時間より長い第2所定時間以上継続したときに車両停止と判定し、
ステアリング操舵が検出されていないときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続したときに車両停止と判定する車両停止判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両停止判定装置。
【請求項7】
運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、
従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
アクセルペダル操作を検出するアクセルペダル操作検出手段と、
前記アクセルペダル操作検出手段によりアクセルペダル操作が検出されたときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を前記第1所定時間より長い第2所定時間以上継続したときに車両停止と判定し、
アクセルペダル操作が検出されていないときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続したときに車両停止と判定する車両停止判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両停止判定装置。
【請求項8】
運転者の操作以外によってエンジンの停止・再始動が行われる動力源と、
従動輪及び駆動輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
エンジン始動が開始されたか否かを判断するエンジン始動開始判断手段と、
発進クラッチが締結中か否かを判断する発進クラッチ操作検出手段と、
前記エンジン始動開始判断手段及び前記発進クラッチ操作検出手段によりエンジン始動中であり、かつ、発進クラッチが締結中であるとの条件を満たしていないと判断されたときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続し、かつ、駆動輪車輪速が回転停止を所定値Aより長い第2所定時間以上継続したときは車両停止と判定し、
前記条件を満たしていると判断されたときは、前記車輪速検出手段により検出された従動輪車輪速及び駆動輪車輪速が回転停止を第1所定時間以上継続したときに車両停止と判定する車両停止判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両停止判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−52697(P2013−52697A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190247(P2011−190247)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】