説明

車両内装部品用のレーザー加飾装置及び方法

【課題】車両内装部品の表面に、位置ズレがなく正確に絵柄を描画することができる車両内装部品用のレーザー加飾装置を提供すること。
【解決手段】レーザー加飾装置1において、CCDカメラ6は、部品設置用治具の認識マーク9を撮影してその位置を検出する。形状センサ7は、受け治具4に設置されている車両内装部品2の形状を検出する。CPU11は、CCDカメラ6による認識マーク9の検出結果に基づいて受け治具4に設置されている車両内装部品2の仮想形状を算出し、その仮想形状と形状センサ7による検出形状とのズレ量を求める。CPU11は、ズレ量に基づいてロボット5を駆動し、仮想形状と検出形状とが一致するよう受け治具4を移動させる。CPU11はレーザーマーカー3を駆動して車両内装部品2にレーザーを照射し、その表面2aに絵柄を描画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な形状を有する車両内装部品の表面に、レーザーを照射して絵柄を描く車両内装部品用のレーザー加飾装置及びレーザー加飾方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために樹脂成形体の表面に装飾を加えるようにした加飾部品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。このような加飾部品に装飾を加える従来の加飾方法としては、水圧転写が一般的に用いられている。水圧転写とは、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄(木目模様や幾何学模様などの絵柄)を水圧によって樹脂成形体の表面に転写する技術である。この技術によれば、三次元曲面への印刷を行うことができる。
【0003】
ところが、水圧転写を行う場合、樹脂成形体への絵柄の転写時に、絵柄が伸びたり歪んだりすることが多い。この結果、絵柄を正確に付加することができず、絵柄のバラツキが生じてしまうため、製品の歩留まりが悪化して製造コストが嵩んでしまう。従って、水圧転写とは異なる手法で樹脂成形体の表面上に絵柄を付加して装飾する新たな技術の開発が望まれている。
【0004】
そこで、本発明者らは、車両内装部品の加飾方法として、レーザー描画によって部品表面に絵柄を描画する方法を検討している。レーザー描画は、部品表面にレーザーを照射し、レーザーによって与えられた熱により部品表面の状態を変化させて、絵柄を描くようにした加飾方法である。
【0005】
車両内装部品は、立体的な形状を有する部品であり、その表面にレーザー描画を行う場合、レーザーの焦点距離がずれると、描画不良(意匠のかすれや継ぎ目のずれ等)が生じる。このため、部品表面の三次元的な位置を正確に把握する必要がある。従来、位置センサと距離センサとを利用して三次元位置を検出する検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図5には、その三次元位置検出装置を用いて構成したレーザー加飾装置21の具体例を示している。図5に示されるように、レーザー加飾装置21は、車両内装部品22の表面にレーザーを照射するためのレーザーマーカー23と、レーザーマーカー23の位置を移動させるロボット24と、部品表面の位置を検出する位置センサ25と、部品表面の距離を測定する距離センサ26とを備えている。
【0007】
レーザーマーカー23は、レーザー出力部23aが車両内装部品22と対向するように配置されている。そのレーザーマーカー23において、レーザー出力部23aの近傍の異なる位置に位置センサ25と距離センサ26とが配置されている。そして、位置センサ25と距離センサ26とが検出した情報に基づいて、部品表面の三次元形状を把握し、レーザーマーカー23により、部品表面にレーザーを照射することで部品表面に絵柄が描画される。
【0008】
現在、一般的に使用されるレーザーマーカー23では、レーザーの走査が可能な照射領域は30cm角程度の比較的小さな領域となっている。従って、車両内装部品22のサイズが大きく、部品表面に絵柄を描く描画領域がレーザーの照射領域よりも大きくなる場合がある。この場合、図6に示されるように、ロボット24によってレーザーマーカー23の姿勢を変更した後に、レーザー描画が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3515657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、レーザーマーカー23の姿勢を変更すると、位置センサ25の検出結果と距離センサ26の検出結果とが一致しない状況になる。この場合、部品表面の三次元形状を正確に測定することができず、レーザーの焦点距離にズレが生じ、正確な絵柄を部品表面に描画できなくなる。車両内装部品22の表面に描画される絵柄は、比較的微細な模様(例えば、幾何学模様や木目模様など)であり、模様の位置ズレが100μm程度生じた場合でも、その位置ズレが目視で認識されてしまう。このため、車両内装部品22に要求される描画意匠性を十分に確保することができなくなる。
【0011】
この問題を回避するために、図7に示されるように、距離センサ26の個数を増やして部品表面の正確な距離を把握する手法が考えられる。しかしながら、距離センサ26を増やす場合でも、車両内装部品22の大きさに応じて、距離センサ26の間隔や取り付け位置等を調整しないと、部品表面の正確な距離を把握することが困難となる。この場合、距離センサ26の部品コストが増大することに加え、部品変更時等の作業が煩雑となりコストアップの要因となってしまう。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両内装部品の表面に、位置ズレがなく正確に絵柄を描画することができる車両内装部品用のレーザー加飾装置及びレーザー加飾方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、立体的な形状を有する車両内装部品の表面に、レーザーを照射して絵柄を描くレーザー加飾装置であって、前記レーザーの照射点を走査して前記絵柄を描くためのレーザー照射手段と、前記レーザー照射手段と対向する位置に配置される治具であって、前記車両内装部品が設置可能であるとともに、位置検出用の認識部を有する部品設置用治具と、前記部品設置用治具を移動させる治具移動手段と、前記認識部の位置を検出する位置検出手段と、前記部品設置用治具に設置されている前記車両内装部品の形状を検出する形状検出手段と、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記部品設置用治具に設置されている前記車両内装部品の仮想形状を算出し、その仮想形状と前記形状検出手段が検出した検出形状とのズレ量を求めるとともにそのズレ量を補正して前記絵柄を描くための処理を行う補正手段とを備えることを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置をその要旨とする。
【0014】
手段1に記載の発明によると、部品設置用治具における車両内装部品の設置ズレや部品設置用治具の位置ズレが生じた場合、位置検出手段や形状検出手段を利用して、そのズレ量を正確に求めることができる。そして、補正手段によってズレ量に応じた補正を行うことにより、車両内装部品の表面に絵柄を正確に描画することができる。
【0015】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記補正手段は、前記ズレ量に基づいて前記治具移動手段を駆動し、前記仮想形状と前記検出形状とが一致するよう前記部品設置用治具を移動させることをその要旨とする。
【0016】
手段2に記載の発明によると、部品設置用治具における車両内装部品の設置ズレや部品設置用治具の位置ズレが生じている場合、補正手段によって治具移動手段が駆動され、レーザー照射手段の照射領域に対応した所定の位置に車両内装部品を移動させることができる。この結果、レーザー照射手段によって、車両内装部品の表面に絵柄を効率よく正確に描画することができる。
【0017】
手段3に記載の発明は、手段1において、前記補正手段は、前記ズレ量に基づいて前記レーザー照射手段によるレーザーの照射領域を補正することをその要旨とする。
【0018】
手段3に記載の発明によると、部品設置用治具における車両内装部品の設置ズレや部品設置用治具の位置ズレが生じている場合、そのズレ量に基づいてレーザー照射手段によるレーザーの照射領域が補正されるので、車両内装部品の表面に絵柄を正確に描画することができる。またこの場合、治具移動手段によって部品設置用治具を移動させる必要がないため、ズレ量に応じた補正を迅速に行うことができる。
【0019】
手段4に記載の発明は、手段1乃至3のいずれかにおいて、前記治具移動手段は、前記部品設置用治具を上下方向、左右方向及び回転方向に移動可能なロボットであることをその要旨とする。
【0020】
手段4に記載の発明によると、治具移動手段としてロボットを使用することにより、部品設置用治具の姿勢を自由に調整することができる。このため、補正手段が求めたズレ量に応じて、部品設置用治具を迅速かつ正確に移動させることができる。
【0021】
手段5に記載の発明は、手段1乃至4のいずれかにおいて、前記認識部は、前記部品設置用治具において、前記車両内装部品の設置面に対して反対側となる裏面側に設けられた認識マークであることをその要旨とする。
【0022】
手段5に記載の発明によると、部品設置用治具の裏面側に認識部としての認識マークが設けられているので、レーザー照射手段の反対側に設置した位置検出手段によって、部品設置用治具の認識マークの位置を確実に検出することができる。具体的には、車両内装部品のサイズや形状によって、異なる種類の部品設置用治具が用いられた場合でも、各部品設置用治具の裏面側の所定位置に認識マークを設けることにより、車両内装部品が邪魔になることがなく、部品設置用治具の位置を正確に検出することができる。従って、車両内装部品のサイズや形状が異なる場合でも、ズレ量に応じた補正を確実に行うことができ、車両内装部品の表面に絵柄を正確に描画することができる。
【0023】
手段6に記載の発明は、立体的な形状を有する車両内装部品の表面に、レーザーを照射して絵柄を描くレーザー加飾方法であって、前記車両内装部品を設置している部品設置用治具に設けられた認識部の位置を検出する位置検出ステップと、前記部品設置用治具に設置されている前記車両内装部品の形状を検出する形状検出ステップと、前記認識部の検出結果に基づいて、前記部品設置用治具に設置されている前記車両内装部品の仮想形状を算出し、その仮想形状と前記形状検出ステップで検出した検出形状とのズレ量を求めるとともにそのズレ量を補正して前記絵柄を描くための処理を行う補正ステップとを含むことを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾方法をその要旨とする。
【0024】
手段6に記載の発明によると、部品設置用治具における車両内装部品の設置ズレや部品設置用治具の位置ズレが生じた場合、そのズレ量を正確に求めることができる。そして、ズレ量に応じた補正を行うことにより、車両内装部品の表面に絵柄を正確に描画することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳述したように、手段1〜6に記載の発明によると、車両内装部品の表面に、位置ズレがなく正確に絵柄を描画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一実施の形態のレーザー加飾装置を示す概略構成図。
【図2】形状センサのラインビームを示す斜視図。
【図3】受け治具の移動方向を示す斜視図。
【図4】レーザー加飾方法を示す説明図。
【図5】従来のレーザー加飾装置を示す概略構成図。
【図6】従来のレーザー加飾装置を示す概略構成図。
【図7】従来のレーザー加飾装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を車両内装部品用のレーザー加飾装置に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0028】
図1に示されるように、レーザー加飾装置1は、立体的な形状を有する車両内装部品2の表面に、レーザーを照射して絵柄を描く装置である。本実施の形態の車両内装部品2は、例えばABS樹脂を用いて略半円柱形状に成形された樹脂成形品であり、幅60cm×長さ100cm程度のサイズを有している。また、車両内装部品2における湾曲した外側の表面2aに塗装膜が形成されており、レーザー加飾装置によって、その表面2aの塗装膜上に所定の絵柄(例えば、幾何学模様の絵柄)が描画される。
【0029】
本実施の形態のレーザー加飾装置1は、レーザーを照射するレーザーマーカー3、車両内装部品2が設置可能な受け治具4、受け治具4を移動させるためのロボット5、受け治具4の位置を検出するためのCCDカメラ6、車両内装部品2の形状を検出するための形状センサ7、及び制御装置8等を備えている。
【0030】
レーザーマーカー3は、高さ方向であるZ方向の焦点を調整しつつ、水平方向であるX−Y方向にレーザーの焦点を走査して、車両内装部品2の表面2aに絵柄を描くためのレーザー照射手段である。本実施の形態におけるレーザーマーカー3は、装置上部に移動不能に固定されている。また、レーザーマーカー3の走査可能なレーザーの照射領域は、例えば、X方向30cm、Y方向30cmの領域である。
【0031】
受け治具4は、レーザーマーカー3と対向する位置に配置された部品設置用治具であり、その上面4aの中央部に車両内装部品2を設置している。受け治具4において、車両内装部品2の設置面4a(図1では上面)の反対側となる裏面4b(図1では下面)側に、認識マーク9(認識部)が設けられている。本実施の形態の認識マーク9としては、受け治具4の位置検出用のマーク(例えば、トンボのマーク)や受け治具4の傾き角度に対応したマークが設けられている。
【0032】
CCDカメラ6は、受け治具4の下方に設けられた位置検出手段であり、受け治具4の下方側から認識マーク9の画像を撮影する。そして、CCDカメラ6が撮影した画像に基づいて、認識マーク9の位置、すなわち受け治具4の位置が検出される。
【0033】
形状センサ7は、レーザー照射によって部品形状を非接触で測定する形状検出手段であり、レーザーマーカー3におけるレーザー出力部3aの近傍に設けられている。本実施の形態の形状センサ7には、図2に示されるように、X方向及びY方向に幅広のラインビームを照射する2つの測定センサ7a,7bが設けられており、これらセンサ7a,7bの検出結果に基づいて、受け治具4に設置されている車両内装部品2の形状を検出する。
【0034】
ロボット5は、受け治具4に接続されたアーム5aを駆動することで、受け治具4を上下方向、左右方向及び回転方向に移動させる。具体的には、本実施の形態のロボット5は、図3に示されるように、車両内装部品2を設置した受け治具4を、水平方向であるX方向及びY方向、高さ方向であるZ方向に移動させる機構を備えている。また、このロボット5は、受け治具4をX方向、Y方向及びZ方向を軸として回転させる機構を備えている。
【0035】
制御装置8は、CPU11、HDD12(ハードディスクドライブ)、RAM13等からなる周知のコンピュータにより構成されている。制御装置8は、レーザーマーカー3、ロボット5、CCDカメラ6及び形状センサ7に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
【0036】
HDD12には、車両内装部品2の三次元形状を示す形状データ、車両内装部品2に描画する絵柄に応じた柄データなどのデータ、レーザーマーカー3及びロボット5を制御するための制御プログラムなどが記憶されている。RAM13は、CPU11のワークエリアとして使用されるメモリである。CPU11は、RAM13を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。
【0037】
次に、本実施の形態のレーザー加飾装置1を用いた車両内装部品2の加飾方法について説明する。
【0038】
先ず、作業者によって車両内装部品2が受け治具4に設置された後、制御装置8に設けられている処理開始ボタン(図示略)が操作されることにより、レーザー加飾装置1による処理が開始される。
【0039】
具体的には、制御装置8のCPU11は、CCDカメラ6を駆動して、受け治具4の認識マーク9を撮影する。そして、CPU11は、認識マーク9の画像データをCCDカメラ6から受け取り、その画像データに基づいて認識マーク9の位置、すなわち受け治具4の位置を検出する(位置検出ステップ)。その後、CPU11は、形状センサ7を駆動し、受け治具4に設置されている車両内装部品2の形状を検出する(形状検出ステップ)。
【0040】
また、補正手段としてのCPU11は、車両内装部品22の形状データをHDD12からRAM13に読み出し、その形状データと認識マーク9の位置検出結果とに基づいて、受け治具4に設置されている車両内装部品2の仮想形状を算出する。さらに、CPU11は、その仮想形状と形状検出ステップで検出した検出形状とのズレ量を求め、ズレ量を補正するための処理を行う。具体的には、CPU11は、ズレ量に基づいてロボット5を駆動し、仮想形状と検出形状とが一致するよう受け治具4を移動させる(補正ステップ)。
【0041】
その後、CPU11は、絵柄に応じた柄データをHDD12からRAM13に読み出し、その柄データに基づいてレーザーマーカー3を駆動する(レーザー描画ステップ)。この結果、柄データに応じてレーザーの照射点が走査され、車両内装部品2の表面2aに絵柄が描画される。
【0042】
本実施の形態では、レーザーマーカー3が走査可能なレーザーの照射領域は、車両内装部品2の表面2aに絵柄を描く描画領域よりも小さい領域である。つまり、車両内装部品2の表面2aの描画領域は複数の照射領域からなり、照射領域毎に分割してレーザーマーカー3による描画処理が行われる。具体的には、レーザーマーカー3による所定の照射領域へのレーザー照射を終了した後、別の照射領域へのレーザー照射の移行時に、CPU11は、ロボット5を駆動して受け治具4を移動させる(図4参照)。なお、図4の具体例では、ロボット5によって受け治具4を回転させて、車両内装部品2の側面(図4では左側面)をレーザーマーカー3に対向させる。
【0043】
ここで、CPU11は、上述したCCDカメラ6による位置検出ステップ、形状センサ7による形状検出ステップ、及び補正ステップを行い、車両内装部品2の仮想形状と検出形状とのズレ量を求める。そして、位置ズレがある場合には、CPU11はロボット5を駆動して、仮想形状と検出形状とが一致するよう受け治具4を移動させる。
【0044】
その後、CPU11は、レーザーマーカー3を駆動し、側面側の照射領域へのレーザー照射を行って、車両内装部品2に絵柄を描画する。そして、照射領域毎に上述した位置検出ステップ、形状検出ステップ、補正ステップ及びレーザー描画ステップを繰り返し行い、全ての照射領域に対するレーザー照射の終了後に、本実施の形態の処理を終了する。この結果、車両内装部品2の表面2aに絵柄が描かれ、意匠性に優れた車両内装部品2が製造される。
【0045】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0046】
(1)本実施の形態のレーザー加飾装置1では、受け治具4における車両内装部品2の設置ズレ(着荷ミス)や受け治具4の位置ズレ等が生じた場合、そのズレ量を正確に検出することができる。また、ズレ量に応じてロボット5が駆動されることで位置ズレが補正され、ロボット5の座標系とレーザーマーカー3の座標系とを一致させることができる。そして、ロボット5による位置ズレの補正後に、レーザーマーカー3によってレーザー照射を行うことで、車両内装部品2の表面2aに絵柄を正確に描画することができる。
【0047】
(2)本実施の形態のレーザー加飾装置1では、治具移動手段としてロボット5を使用しているため、受け治具4の姿勢を自由に調整することができる。このため、ズレ量に応じて、受け治具4を迅速かつ正確に移動させることができる。
【0048】
(3)本実施の形態のレーザー加飾装置1では、受け治具4において車両内装部品2の設置面4aに対して反対側となる裏面4b側に認識マーク9が設けられている。この場合、レーザーマーカー3の反対側に設置したCCDカメラ6によって、受け治具4の認識マーク9の位置を確実に検出することができる。具体的には、車両内装部品2のサイズや形状によって、異なる種類の受け治具4が用いられた場合でも、各受け治具4の裏面4b側の所定位置(本実施の形態では中央位置)に認識マーク9を設けることにより、車両内装部品2が邪魔になることがなく、受け治具4の位置を正確に検出することができる。従って、車両内装部品2のサイズや形状が異なる場合でも、ズレ量に応じた補正を確実に行うことができ、車両内装部品2の表面2aに絵柄を正確に描画することができる。
【0049】
(4)本実施の形態のレーザー加飾装置1では、車両内装部品2の表面2aの描画領域が複数の照射領域に分割され、照射領域毎にロボット5を駆動して受け治具4を移動させている。そして、照射領域毎に車両内装部品2の仮想形状と検出形状との位置ズレが検出され、ロボット5を駆動してその位置ズレが補正される。このようにすれば、各照射領域間の継ぎ目のズレを確実に防止することができるため、車両内装部品2に要求される描画意匠性を十分に確保することができる。
【0050】
(5)本実施の形態のレーザー加飾装置1では、従来技術のように比較的重いレーザーマーカー3を移動させるのではなく、受け治具4側をロボット5で移動させている。この場合、可搬重量の小さなロボット5を使用することができるため、装置コストを低く抑えることができる。
【0051】
(6)本実施の形態のレーザー加飾装置1では、微細な位置精度が要求されるレーザーマーカー3を固定しているので、レーザー描画時の位置ズレを確実に防止することができる。
【0052】
(7)本実施の形態のレーザー加飾装置1では、レーザー照射によって部品形状を非接触で測定する形状センサ7を用いているので、形状測定時に部品表面に傷を付けることがなく、車両内装部品2の外観品質を良好に保つことができる。
【0053】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0054】
・上記実施の形態のレーザー加飾装置1では、仮想形状と検出形状とで位置ズレが生じていた場合、ロボット5を駆動して受け治具4を移動させていたが、これに限定されるものではない。例えば、仮想形状と検出形状とのズレ量が所定値(例えば、1mm)より小さい場合には、レーザーマーカー3によるレーザーの照射領域を補正するように構成してもよい。この場合、ロボット5によって受け治具4を移動させる必要がないため、ズレ量に応じた補正を迅速に行うことができる。因みに、ズレ量が大きい場合に照射領域を補正すると、レーザーマーカー3の照射領域を有効に利用できなくなるため、描画効率が低下してしまう。従って、ズレ量が大きい場合には、上記実施の形態のように、ロボット5を駆動して受け治具4を移動させる。この場合、レーザーマーカー3の照射領域を最大限利用することができ、絵柄を効率よく描画することができる。
【0055】
・上記実施の形態のレーザー加飾装置1では、固定式のレーザーマーカー3を使用したが、平面方向や高さ方向に移動可能な可動式のレーザーマーカー3を使用してもよい。この場合、レーザー加飾装置1において、仮想形状と検出形状とのズレ量に応じて、レーザーマーカー3の位置を調整する補正を行うように構成してもよい。
【0056】
・上記実施の形態のレーザー加飾装置1において、受け治具4には、位置検出用の認識部として認識マーク9が設けられていたが、マークのほか凸部や穴部のように必ずしもマークでないもの(平面的でないもの)を認識部として設けてもよい。
【0057】
・上記実施の形態のレーザー加飾装置1では、形状検出手段として形状センサ7を用いて車両内装部品2の形状を検出していたが、CCDカメラなどの他の形状検出手段を用いて車両内装部品2の形状を検出してもよい。
【0058】
・上記実施の形態のレーザー加飾装置1では、受け治具4の裏面4bに認識マーク9を設け、受け治具4の裏面4b側からCCDカメラ6を用いて認識マーク9の位置を検出していたが、これに限定されるものではない。例えば、受け治具4の上面4aや側面に認識マーク9を設けて、受け治具4の上面4a側や側面側からCCDカメラ6を用いて認識マーク9の位置を検出するように構成してもよい。
【0059】
・上記実施の形態のレーザー加飾装置1では、治具移動手段としてロボット5を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、水平方向に二次元的に移動させるX−Yテーブルや、Z方向の高さ調整機構などを組み合わせた治具移動手段を使用してもよい。
【0060】
・上記実施の形態では、車両内装部品2の描画領域が複数の照射領域に分割され、照射領域毎に位置ズレの補正を行うように構成していたが、これに限定されるものではない。例えば、別の照射領域への移行時に、ロボット5によって受け治具4を正確に移動できる場合、ロボット5の座標系とレーザーマーカー3の座標系との位置ズレが生じることがない。この場合には、処理開始時の初期設定として位置ズレの補正を1回のみ行うように構成してもよい。
【0061】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0062】
(1)手段1乃至5のいずれか1項において、前記レーザー照射手段が走査可能な前記レーザーの照射領域が、前記車両内装部品の表面に絵柄を描く描画領域よりも小さい領域であることを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【0063】
(2)手段1乃至5のいずれか1項において、前記車両内装部品の表面に絵柄を描く描画領域は、前記レーザー照射手段によってレーザー照射が行われる複数の照射領域からなり、前記レーザー照射手段による所定の照射領域へのレーザー照射を終了した後に、別の照射領域へのレーザー照射の移行時には、前記治具移動手段が前記部品設置用治具を移動させるとともに、前記補正手段が前記ズレ量を補正する処理を行うようにしたことを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【0064】
(3)手段1乃至5のいずれか1項において、前記形状検出手段は、レーザー照射によって部品形状を非接触で測定する形状センサであることを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【0065】
(4)手段1乃至5のいずれか1項において、前記位置検出手段は、前記認識マークの画像を撮像し、その画像に基づいて前記認識マークの位置を検出するためのCCDカメラであることを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【0066】
(5)手段1乃至5のいずれか1項において、前記形状検出手段は、前記レーザー照射手段におけるレーザー出力部の近傍に設けられていることを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【0067】
(6)手段1乃至5のいずれか1項において、前記認識部は、前記部品設置用治具の傾き角に対応した認識マークであることを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【0068】
(7)手段1乃至5のいずれか1項において、前記レーザー照射手段は、固定式のレーザーマーカーであることを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【0069】
(8)手段1において、前記補正手段は、前記ズレ量が所定値よりも大きい場合、前記ズレ量に基づいて前記治具移動手段を駆動し、前記仮想形状と前記検出形状とが一致するよう前記部品設置用治具を移動させ、前記ズレ量が所定値よりも小さい場合、前記ズレ量に基づいて前記レーザー照射手段によるレーザーの照射領域を補正するようにしたことを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【符号の説明】
【0070】
1…レーザー加飾装置
2…車両内装部品
2a…車両内装部品の表面
3…レーザー照射手段としてのレーザーマーカー
4…部品設置用治具としての受け治具
4a…設置面としての上面
4b…裏面
5…治具移動手段としてのロボット
6…位置検出手段としてのCCDカメラ
7…形状検出手段としての形状センサ
11…補正手段としてのCPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的な形状を有する車両内装部品の表面に、レーザーを照射して絵柄を描くレーザー加飾装置であって、
前記レーザーの照射点を走査して前記絵柄を描くためのレーザー照射手段と、
前記レーザー照射手段と対向する位置に配置される治具であって、前記車両内装部品が設置可能であるとともに、位置検出用の認識部を有する部品設置用治具と、
前記部品設置用治具を移動させる治具移動手段と、
前記認識部の位置を検出する位置検出手段と、
前記部品設置用治具に設置されている前記車両内装部品の形状を検出する形状検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記部品設置用治具に設置されている前記車両内装部品の仮想形状を算出し、その仮想形状と前記形状検出手段が検出した検出形状とのズレ量を求めるとともにそのズレ量を補正して前記絵柄を描くための処理を行う補正手段と
を備えることを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記ズレ量に基づいて前記治具移動手段を駆動し、前記仮想形状と前記検出形状とが一致するよう前記部品設置用治具を移動させることを特徴とする請求項1に記載の車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記ズレ量に基づいて前記レーザー照射手段によるレーザーの照射領域を補正することを特徴とする請求項1に記載の車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【請求項4】
前記治具移動手段は、前記部品設置用治具を上下方向、左右方向及び回転方向に移動可能なロボットであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【請求項5】
前記認識部は、前記部品設置用治具において、前記車両内装部品の設置面に対して反対側となる裏面側に設けられた認識マークであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両内装部品用のレーザー加飾装置。
【請求項6】
立体的な形状を有する車両内装部品の表面に、レーザーを照射して絵柄を描くレーザー加飾方法であって、
前記車両内装部品を設置している部品設置用治具に設けられた認識部の位置を検出する位置検出ステップと、
前記部品設置用治具に設置されている前記車両内装部品の形状を検出する形状検出ステップと、
前記認識部の検出結果に基づいて、前記部品設置用治具に設置されている前記車両内装部品の仮想形状を算出し、その仮想形状と前記形状検出ステップで検出した検出形状とのズレ量を求めるとともにそのズレ量を補正して前記絵柄を描くための処理を行う補正ステップと
を含むことを特徴とする車両内装部品用のレーザー加飾方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111635(P2013−111635A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261904(P2011−261904)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】