説明

車両及び車線認識装置

【課題】路面に予期できないブレーキ痕や道路補修跡が存在する場合にも、カメラ等の撮像手段を介して取得された道路の画像を処理すると共に、GPS等と地図データとから道路の情報を取得して、車線を検出し得る機会を可能な限り高めつつ、車線を精度良く検出することができる車両及び車線認識装置を提供する。
【解決手段】撮像手段8を介して取得した道路の画像を処理して道路の車線を推定する処理を実行し、処理の結果を第1車線情報として出力する画像処理手段2と、道路の地図データを保持する保持手段3と、車両の現在の位置情報を取得する位置情報取得手段4と、地図データと現在の位置情報とを用いて道路の車線を推定する処理を実行し、処理の結果を第2車線情報として出力する車線推定手段5と、第1車線情報と第2車線情報とに基づいて、道路の実際の車線を認識する実車線認識手段6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の撮像手段を介して取得された道路の画像を処理すると共に、GPS等と地図データにより道路の情報を取得して、道路の車線を認識する車両及び車線認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両にCCDカメラ等の撮像手段を搭載して、走行している道路の路面を撮像し、得られた画像を処理して道路上の白線等のレーンマークを検出し、検出した結果から認識される車両の走行する車線(走行レーン)の情報に基づいて、車両の制御や運転者への情報の提示を行う技術が知られている。このような技術において、道路の画像から画像処理によって車線を認識する際に、GPSや地図データ等から取得される道路情報に基づいた前方の道路状況に応じて画像処理を行い、車線を精度良く認識する技術が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。また、画像処理によって認識した車線の情報に基づいて車両の制御や運転者への情報の提示を行う際に、画像処理結果をGPSや地図データ等から取得される道路情報で補足して制御や情報の提示を行う技術が提案されている(例えば特許文献3,4参照)。
【0003】
特許文献1の走行レーン認識装置は、カメラからの画像情報を処理して前方道路上の左右の白線位置を認識する画像情報処理手段と、この画像情報処理手段による白線位置画像情報から走行レーンの位置や特徴及び自車両との位置関係を推定する走行レーン推定手段とを備える。さらに、前方道路上に通常の白線とは異なる特殊な特定道路領域(例えば、縞模様又はゼブラ模様の白線のある特殊な白線領域)が存在するか否かを判別する道路状況判別手段を備える。道路状況判別手段は、GPSから取得される車両の位置情報に、ROMに記憶された特定道路領域に関するデータを対応させながら、前方道路上に特定道路領域が存在するか否かを判別する。画像情報処理手段は、通常の白線の場合、白線の両エッジ部分の中点を白線の道路幅方向位置と認識するが、道路状況判別手段により車両の前方の道路に特定道路領域が存在すると判別された場合には、白線領域の特定部分(認識可能な白線領域の本線側エッジ部分)を白線の道路幅方向位置として白線位置の認識を行なう。そして、走行レーン推定手段は、抽出された左右の道路白線で規定される領域、又は抽出された左右の道路白線の一方と予め認識されているレーン幅とから規定される領域を、走行レーンと推定する。
【0004】
特許文献2の走行レーン認識装置は、カメラで撮像した道路画像を画像処理して走行レーンを検出する画像処理手段を備える。画像処理手段は、白線、道路鋲、ポストコーン等の複数種類のレーンマークに応じた異なる複数の画像処理アルゴリズムを有する。このとき、GPS受信手段により衛星から車両が現在走行している道路の位置情報を受信し、道路毎のレーンマーク種類が格納されている道路地図データファイルから、現在走行している道路前方のレーンマークの種類を判定する。そして、前方のレーンマークに適した画像処理アルゴリズムを複数の画像処理アルゴリズムの中から選択して、走行レーンを検出する。
【0005】
特許文献3の車両用警報装置は、カメラから取得した画像から車両が走行している道路の車線の左右の区画線(白線)を画像処理により認識する白線認識系統と、車両挙動を得るためのセンサ群(車速センサ等)とを備える。さらに、GPSから取得する自車位置に基づいて、CD−ROMから読み出した地図データと比較することで、車両が走行している道路の位置情報、道路情報を取得するナビゲーション系統を備える。車両用警報装置は、認識した車線の左右の区画線とセンサ群により得られた車両挙動とから、車両のレーン逸脱を予測した場合に、運転者に対して警報を発する。このとき、取得した道路情報から、車両が所定の道路区間(過去に誤警報が発生したと判定された道路区間)を走行している場合には、警報を発する条件を他の場合に比べて警報が発生し難い条件に変更する。
【0006】
特許文献4の車両用運転支援装置は、カメラで撮影した車両前方の画像を処理して車線を示す白線等を認識する周辺監視手段と、周辺監視手段からの情報に基づいて、レーン逸脱警告制御等により運転者の運転操作を支援する運転支援手段とを備える。さらに、複数の人工衛星からの電波情報に基づき求められる車両の現在位置と、DVD−ROM等の記憶媒体に格納された地図情報と、道路インフラから路車間通信により取得される前方道路情報とから、車両の前方道路状況(分岐路等)を認識すると共に、前方道路状況によって運転支援制御に支障が生じるか否かを判定する道路状況認識手段を備える。そして、道路状況認識手段からの情報に基づいて、運転支援手段の作動信頼性の低下が予測される場合には、運転者に事前に情報を提供する。
【0007】
しかしながら、道路上には、予期できないブレーキ痕や道路補修跡が存在する場合がある。このような場合に、ブレーキ痕や道路補修跡が存在することは、予め記憶された道路情報からは取得することができない。また、ブレーキ痕や道路補修跡があるため、道路の画像から画像処理によって車線を精度良く認識することが困難となる。よって、このような場合には、特許文献1,2のもののように、GPSや地図データ等から取得される道路情報に基づいて前方の道路状況を考慮して画像処理を行っても、車線を精度良く認識することが困難であるという不都合がある。また、特許文献3,4のものでも、このような場合には、画像処理による車線の検出自体が困難であり、さらにGPSや地図データ等から取得される道路情報で補足することもできないため、車両の制御や運転者への情報の提示を適切に行うことができないという不都合がある。
【特許文献1】特開平11−72337号公報
【特許文献2】特開2003−123058号公報
【特許文献3】特開2002−92794号公報
【特許文献4】特開2003−205805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、路面に予期できないブレーキ痕や道路補修跡が存在する場合にも、カメラ等の撮像手段を介して取得された道路の画像を処理すると共に、GPS等と地図データとから道路の情報を取得して、車線を検出し得る機会を可能な限り高めつつ、車線を精度良く検出することができる車両及び車線認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の第1態様の車両は、撮像手段と、前記撮像手段を介して道路の画像を取得し、取得した該画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する画像処理手段と、前記道路の地図データを保持する保持手段と、車両の現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記地図データと前記現在の位置情報とを用いて前記道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する車線推定手段と、前記第1車線情報と、前記第2車線情報とに基づいて、前記道路の実際の車線を認識する実車線認識手段とを有する。
【0010】
また、本発明の第1態様の車線認識装置は、車両に搭載された撮像手段を介して取得する道路の画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する画像処理手段と、前記道路の地図データを保持する保持手段と、車両の現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記地図データと前記現在の位置情報とを用いて前記道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する車線推定手段と、前記第1車線情報と、前記第2車線情報とに基づいて、前記道路の実際の車線を認識する実車線認識手段とを有する。
【0011】
前記本発明の第1態様の車両及び車線認識装置によれば、前記画像処理手段は、前記撮像手段を介して取得する前記道路の画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する。これにより、車両の走行する車線の情報が取得される。しかし、画像処理により車線を推定する際に、例えば、道路上に予期できないブレーキ痕や道路補修跡等がある場合には、車線を適切に推定することが困難となる。そして、このような場合でも、実際の車線が可能な限り適切に認識されることが望ましい。このとき、前記車線推定手段は、前記地図データと前記車両の現在の位置情報とを用いて前記車両の走行する車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する。これにより、画像処理による車線の推定とは異なる方法で、車線の情報を取得することができる。そして、前記実車線認識手段は、前記第1車線情報と、前記第2車線情報との両方に基づいて、実際の車線を認識するので、画像処理により車線が適切に推定されない場合でも、実際の車線を示す情報として、地図データ及び位置情報により推定された車線の情報を用いることができる。このため、実際の車線を検出し得る機会を可能な限り高めつつ、実際の車線を精度良く検出することができる。
【0012】
次に、本発明の第2態様の車両は、撮像手段と、前記撮像手段を介して道路の画像を取得し、取得した該画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する画像処理手段と、前記道路の地図データを保持する保持手段と、車両の現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記地図データと前記現在の位置情報とを用いて前記道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する車線推定手段と、前記第1車線情報が示す前記車線の形状と、前記第2車線情報が示す前記車線の形状とが類似する度合である車線類似度を算出する手段と、前記第1車線情報と、前記第2車線情報と、前記車線類似度を所定の閾値と比較した結果とに基づいて、前記道路の実際の車線を認識する実車線認識手段とを有する。
【0013】
また、本発明の第2態様の車線認識装置は、車両に搭載された撮像手段を介して取得する道路の画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する画像処理手段と、前記道路の地図データを保持する保持手段と、車両の現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記地図データと前記現在の位置情報とを用いて前記道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する車線推定手段と、前記第1車線情報が示す前記車線の形状と、前記第2車線情報が示す前記車線の形状とが類似する度合である車線類似度を算出する手段と、前記第1車線情報と、前記第2車線情報と、前記車線類似度を所定の閾値と比較した結果とに基づいて、前記道路の実際の車線を認識する実車線認識手段とを有する。
【0014】
前記本発明の第2態様の車両及び車線認識装置によれば、前記第1態様のものと同様に、前記画像処理手段は、前記撮像手段を介して取得する前記道路の画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する。これにより、車両の走行する車線の情報が取得される。しかし、画像処理により車線を推定する際に、例えば、道路上に予期できないブレーキ痕や道路補修跡等がある場合には、車線を適切に推定することが困難となる。そして、このような場合でも、実際の車線が可能な限り適切に認識されることが望ましい。このとき、前記車線推定手段は、前記地図データと前記車両の現在の位置情報とを用いて前記車両の走行する車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する。これにより、画像処理による車線の推定とは異なる方法で、車線の情報を取得することができる。
【0015】
そして、前記実車線認識手段は、前記第1車線情報と、前記第2車線情報との両方に基づいて、実際の車線を認識するので、画像処理により車線が適切に推定されない場合でも、実際の車線を示す情報として、地図データ及び位置情報により推定された車線の情報を用いることができる。このため、実際の車線を検出し得る機会を可能な限り高めつつ、実際の車線を精度良く検出することができる。このとき、前記実車線認識手段は、前記第1車線情報と、前記第2車線情報とに加えて、前記第1車線情報が示す前記車線の形状と、前記第2車線情報が示す前記車線の形状とが類似する度合である車線類似度を所定の閾値と比較した結果に基づいて、前記実際の車線を認識する。これにより、画像処理による推定の処理と、地図データ及び位置情報による推定の処理との両者によって車線の推定がなされた場合に、両者が推定した車線の形状の類似の度合により、画像処理により推定した車線の情報と、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報との、それぞれの信頼性を把握することができるので、実際の車線をより適切に認識することができる。
【0016】
このとき、画像処理により推定した車線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状とが、それぞれ実際の車線の形状を精度良く推定している場合には、両者の推定した車線の形状は類似の度合が高いものとなると考えられる。さらに、画像処理による車線の推定が精度良く行われている場合には、GPS等の測位精度や地図データのデータ密度を考慮すると、実際の車両前方の道路の画像を処理する方が、より局所的な処理を行っているので、画像処理によって推定した車線の形状の方が、地図データ及び位置情報によって推定した車線の形状より位置の精度が高いと考えられる。よって、前記本発明の第2態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記車線類似度が前記所定の閾値より大きいときには、前記第1車線情報に基づいて、前記実際の車線を認識することが好ましい。
【0017】
これによれば、前記車線類似度が前記所定の閾値より大きいときには、前記第1車線情報に基づいて、前記実際の車線が認識されるので、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報によって、画像処理による車線の推定の信頼性が検証され、画像処理により車線が精度良く推定されているとみなせるときには、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状より精度が高いと考えられる画像処理によって推定した車線の形状の情報が、実際の車線を示す情報として用いられ、実際の車線が適切に認識される。
【0018】
また、画像処理により推定した車線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状とが相違しているときには、画像処理による車線の推定と、地図データ及び位置情報による車線の推定とのいずれか、もしくは両方において、実際の車線が適切に推定されていない可能性がある。例えば、前方の道路に分岐等がある場合には、車線の形状がいずれの方法からも適切に推定できないことが考えられる。よって、前記本発明の第2態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記車線類似度が前記所定の閾値以下のときには、前記実際の車線が認識されなかった旨を示す情報を出力することが好ましい。
【0019】
これによれば、前記車線類似度が前記所定の閾値以下のときには、前記実際の車線が認識されなかった旨を示す情報が出力されるので、画像処理による車線の推定と、地図データ及び位置情報による車線の推定とのいずれか、もしくは両方において、実際の車線が適切に推定されていない可能性があるときには、実際の車線が認識されなかった旨が適切に把握される。
【0020】
さらに、画像処理により車線を推定する処理を実行した際に、例えば、道路上に予期できないブレーキ痕や道路補修跡等が存在する場合には、車線が精度良く推定されないことや、さらには車線の推定がなされないことが考えられる。また、地図データ及び位置情報により車線を推定する処理を実行した際にも、例えば、前記位置情報取得手段が、GPS等の走行情報提供設備から信号や通信によって車両の位置情報を取得するものであるとき、信号や通信の不良等により、現在の車両の位置情報を取得することができず、車線の推定がなされないことが考えられる。
【0021】
よって、前記本発明の第2態様の車両及び車線認識装置において、前記第1車線情報は、前記画像処理手段の処理によって前記車線が推定されたか否かを示す第1推定有無情報と、該車線が推定された場合における該推定された車線の形状を示す第1車線形状情報とを有し、前記第2車線情報は、前記車線推定手段の処理によって前記車線が推定されたか否かを示す第2推定有無情報と、該車線が推定された場合における該推定された車線の形状を示す第2車線形状情報とを有し、前記車線類似度を算出する手段は、前記車線類似度を算出する際に、前記第1車線形状情報と前記第2車線形状情報とを用い、前記実車線認識手段は、前記実際の車線が認識されたか否かを示す実車線認識有無情報を、前記第1推定有無情報と、前記第2推定有無情報と、前記車線類似度を前記所定の閾値と比較した結果とに基づいて決定して出力する手段と、該車線が認識された場合における該認識された車線の形状を示す実車線形状情報を、前記第1車線形状情報と、前記第2車線形状情報とから決定して出力する手段とを備えることが好ましい。
【0022】
これによれば、前記実際の車線が認識されたか否かを示す実車線認識有無情報が、前記第1推定有無情報と、前記第2推定有無情報と、前記車線類似度を前記所定の閾値と比較した結果とに基づいて決定されると共に、該車線が認識された場合における該認識された車線の形状を示す実車線形状情報が、前記第1車線形状情報と、前記第2車線形状情報とから決定される。このとき、前記車線類似度は、前記第1車線形状情報と前記第2車線形状情報とを用いて算出される。これにより、画像処理によって車線の推定がなされなかった場合や、地図データ及び位置情報によって車線の推定がなされなかった場合でも、実際の車線を示す情報が適切に決定される。このため、実際の車線を検出し得る機会を可能な限り高めつつ、実際の車線を精度良く検出することができる。さらに、画像処理による推定の処理と、地図データ及び位置情報による推定の処理との両者によって車線の推定がなされた場合に、両者が推定した車線の形状の類似の度合により、画像処理により推定した車線の情報と、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報との、それぞれの信頼性を把握することができるので、実際の車線をより適切に認識することができる。
【0023】
また、前記本発明の第2態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合には、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識された旨を設定すると共に、前記実車線形状情報に前記第2車線形状情報を設定することが好ましい。
【0024】
これによれば、前記実車線認識手段は、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合には、前記実車線形状情報に前記第2車線形状情報を設定する。よって、画像処理により車線が推定できなかった場合にも、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報で補完するので、実際の車線を検出し得る機会を可能な限り高めることができる。
【0025】
また、前記本発明の第2態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示す場合において、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示すときには、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識された旨を設定すると共に、前記実車線形状情報に前記第1車線形状情報を設定し、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示すときには、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識されなかった旨を設定することが好ましい。
【0026】
これによれば、前記実車線認識手段は、地図データ及び位置情報により車線が推定されなかった場合において、画像処理により車線が推定されているときには、画像処理による車線の推定の結果を、そのまま実際の車線を示す情報として用いることができる。さらに、地図データ及び位置情報と、画像処理とのいずれによっても車線が推定されなかったときには、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識されなかった旨が設定されるので、実際の車線が認識されなかった旨が明確に把握される。
【0027】
さらに、前記本発明の第2態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合において、前記車線類似度が前記所定の閾値より大きいときには、前記実車線認識有無情報に、前記車線が認識された旨を設定すると共に、前記実車線形状情報に前記第1車線形状情報を設定し、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合には、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識された旨を設定すると共に、前記実車線形状情報に前記第2車線形状情報を設定し、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示す場合には、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識された旨を設定すると共に、前記実車線形状情報に前記第1車線形状情報を設定するものであり、前記実車線認識手段は、前記実際の車線が認識されたときには、該認識の信頼度を設定して出力する手段を備え、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合において、前記車線類似度が前記所定の閾値より大きいときには、前記信頼度を最も高いレベルである第1レベルに設定し、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示す場合には、前記信頼度を前記第1レベルより低いレベルである第2レベルに設定し、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合には、前記信頼度を前記第2レベルより低いレベルである第3レベルに設定することが好ましい。
【0028】
これによれば、前記実際の車線が認識されたときには、該認識の信頼度が出力される。このとき、前記車線類似度が前記所定の閾値より大きい場合には、前記信頼度が最も高いレベルである第1レベルに設定されるので、画像処理により推定した車線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状とが、類似の度合が高く、実際の車線が精度良く推定されているとみなせるときには、前記信頼度は最も高く設定される。また、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示す場合は、画像処理によってのみ車線の推定がなされた場合であり、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報を用いて、画像処理による車線の推定の信頼性を検証することができないので、前記信頼度は前記第1レベルより低い第2レベルに設定される。また、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合は、地図データ及び位置情報によってのみ車線の推定がなされた場合であり、GPS等の測位精度や地図データのデータ密度を考慮すると、地図データ及び位置情報による車線の推定は、より局所的な処理を行う画像処理による車線の推定より精度が低いとみなせるので、前記信頼度は前記第2レベルより低い第3レベルに設定される。このように前記信頼度を設定して出力することにより、認識された実際の車線を示す情報の信頼性を明確に把握することができる。そして、このように設定された信頼度を、実際の車線を示す情報と共に、車両の制御や運転者への報知に使用することができる。
【0029】
ここで、車両の走行する車線は、一般的に、該車線の左側を規定する左側線と右側を規定する右側線とによって構成されるものである。よって、前記本発明の第1態様の車両及び車線認識装置において、前記画像処理手段によって出力される第1車線情報は、該画像処理手段の処理によって前記車線の左側を規定する左側線が推定されたか否かを示す第1左推定有無情報と、該左側線が推定された場合における該推定された左側線の形状を示す第1左側線形状情報と、該画像処理手段の処理によって前記車線の右側を規定する右側線が推定されたか否かを示す第1右推定有無情報と、該右側線が推定された場合における該推定された右側線の形状を示す第1右側線形状情報とを有し、前記車線推定手段によって出力される第2車線情報は、該車線推定手段の処理によって前記左側線及び右側線の両方が推定されたか否かを示す第2推定有無情報と、該左側線が推定された場合における該推定された左側線の形状を示す第2左側線形状情報と、該右側線が推定された場合における該推定された右側線の形状を示す第2右側線形状情報とを有し、前記実車線認識手段は、前記第1左推定有無情報が前記左側線の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされたことを示す場合に、前記第1左側線形状情報と前記第2左側線形状情報とが類似する度合である左側線類似度を算出する手段と、前記第1推定有無情報が前記右側線の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされたことを示す場合に、前記第1右側線形状情報と前記第2右側線形状情報とが類似する度合である右側線類似度を算出する手段と、前記実際の車線の左側を規定する実左側線が認識されたか否かを示す実左認識有無情報と、該実左側線が認識された場合における該認識された実左側線の形状を示す実左側線形状情報と、前記実際の車線の右側を規定する実右側線が認識されたか否かを示す実右認識有無情報と、該実右側線が認識された場合における該認識された実右側線の形状を示す実右側線形状情報とを、該算出された左側線類似度及び右側線類似度を所定の閾値と比較した結果に応じて決定して出力する手段とを備えることが好ましい。
【0030】
これによれば、前記実左認識有無情報と、前記実左側線形状情報と、前記実右認識有無情報と、前記実右側線形状情報とが、前記算出された左側線類似度及び右側線類似度を所定の閾値と比較した結果に応じて決定される。これにより、画像処理による推定の処理と、地図データ及び位置情報による推定の処理との両者によって左側線及び右側線の推定がなされた場合には、両者が推定した左側線及び右側線のそれぞれの形状の類似の度合により、画像処理により推定した左側線及び右側線の情報と、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の情報との、それぞれの信頼性を把握することができるので、実際の左側線及び右側線をより適切に認識することができる。
【0031】
このとき、画像処理により推定した左側線及び右側線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の形状とが、それぞれ実際の左側線及び右側線の形状を精度良く推定している場合には、両者の推定した左側線及び右側線の形状は、それぞれ類似の度合が高いものとなると考えられる。さらに、画像処理による左側線及び右側線の推定が精度良く行われている場合には、GPS等の測位精度や地図データのデータ密度を考慮すると、実際の車両前方の道路の画像を処理する方が、より局所的な処理を行っているので、画像処理によって推定した左側線及び右側線の形状の方が、地図データ及び位置情報によって推定した左側線及び右側線の形状より位置の精度が高いと考えられる。よって、前記本発明の第1態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記左側線類似度と前記右側線類似度との一方又は両者が算出され、且つ該算出された左側線類似度と右側線類似度との一方又は両者が前記所定の閾値より大きい場合には、前記実左認識有無情報及び実右認識有無情報にそれぞれ前記実左側線及び実右側線が認識された旨を設定すると共に、前記第1左推定有無情報が前記左側線の推定がなされたことを示すときには、前記実左側線形状情報に前記第1左側線形状情報を設定し、該第1左推定有無情報が該左側線の推定がなされなかったことを示すときには、該実左側線形状情報に前記第2左側線形状情報を設定し、前記第1右推定有無情報が前記右側線の推定がなされたことを示すときには、前記実右側線形状情報に前記第1右側線形状情報を設定し、該第1右推定有無情報が該右側線の推定がなされなかったことを示すときには、該実右側線形状情報に前記第2左側線形状情報を設定することが好ましい。
【0032】
これによれば、前記実車線認識手段は、前記左側線類似度と前記右側線類似度との一方又は両者が算出され、且つ該算出された左側線類似度と右側線類似度との一方又は両者が前記所定の閾値より大きい場合には、前記実左認識有無情報及び実右認識有無情報にそれぞれ前記実左側線及び実右側線が認識された旨を設定するので、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の情報によって、画像処理による左側線及び右側線の推定の信頼性が検証され、画像処理により左側線及び右側線が精度良く推定されているとみなせるときには、車線が認識された旨が実際の左側線及び右側線の情報に適切に設定される。これと共に、前記実車線認識手段は、前記第1左推定有無情報が前記左側線の推定がなされたことを示すときには、前記実左側線形状情報に前記第1左側線形状情報を設定し、前記第1右推定有無情報が前記右側線の推定がなされたことを示すときには、前記実右側線形状情報に前記第1右側線形状情報を設定するので、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の形状より精度が高いと考えられる画像処理によって推定した左側線及び右側線の形状の情報が、実際の左側線及び右側線の形状の情報として適切に設定される。また、前記実車線認識手段は、前記第1左推定有無情報が前記左側線の推定がなされなかったことを示すときには、前記実左側線形状情報に前記第2左側線形状情報を設定し、前記第1右推定有無情報が前記右側線の推定がなされなかったことを示すときには、前記実右側線形状情報に前記第2左側線形状情報を設定する。よって、画像処理により左側線及び右側線が推定できなかった場合にも、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の情報で補完するので、実際の左側線及び右側線を検出し得る機会を可能な限り高めることができる。
【0033】
また、画像処理により推定した左側線及び右側線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の形状とが相違しているときには、画像処理による左側線及び右側線の推定と、地図データ及び位置情報による左側線及び右側線の推定とのいずれか、もしくは両方において、実際の左側線及び右側線が適切に推定されていない可能性がある。よって、前記本発明の第1態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記左側線類似度と前記右側線類似度との両者が算出され、且つ該算出された左側線類似度と右側線類似度との少なくともいずれかが前記所定の閾値以下である場合と、前記左側線類似度と前記右側線類似度との一方が算出され、且つ該算出された左側線類似度と右側線類似度との一方が前記所定の閾値以下である場合とには、前記実左認識有無情報及び実右認識有無情報に、それぞれ前記実左側線及び実右側線が認識されなかった旨を設定することが好ましい。
【0034】
これによれば、前記実車線認識手段は、前記左側線類似度と前記右側線類似度との両者が算出され、且つ該算出された左側線類似度と右側線類似度との少なくともいずれかが前記所定の閾値以下である場合と、前記左側線類似度と前記右側線類似度との一方が算出され、且つ該算出された左側線類似度と右側線類似度との一方が前記所定の閾値以下である場合とには、前記実左認識有無情報及び実右認識有無情報に、それぞれ前記実左側線及び実右側線が認識されなかった旨を設定するので、画像処理による左側線及び右側線の推定と、地図データ及び位置情報による左側線及び右側線の推定とのいずれか、もしくは両方において、実際の左側線及び右側線が適切に推定されていない可能性があるときには、左側線及び右側線が認識されなかった旨が実際の左側線及び右側線の情報に適切に設定される。
【0035】
また、前記本発明の第1態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記第1左推定有無情報及び第1右推定有無情報が、それぞれ前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされたことを示す場合には、前記実左認識有無情報及び実右認識有無情報に、それぞれ前記実左側線及び実右側線が認識された旨を設定すると共に、前記実左側線形状情報に前記第2左側線形状情報を設定し、前記実右側線形状情報に前記第2右側線形状情報を設定することが好ましい。
【0036】
これによれば、前記実車線認識手段は、前記第1左推定有無情報及び第1右推定有無情報が、それぞれ前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされたことを示す場合には、前記実左側線形状情報に前記第2左側線形状情報を設定し、前記実右側線形状情報に前記第2右側線形状情報を設定する。よって、画像処理により左側線及び右側線が推定できなかった場合にも、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の情報で補完するので、実際の左側線及び右側線を検出し得る機会を可能な限り高めることができる。
【0037】
また、前記本発明の第1態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示す場合において、前記第1左推定有無情報が前記左側線の推定がなされたことを示すときには、前記実左認識有無情報に前記実左側線が認識された旨を設定すると共に、前記実左側線形状情報に前記第1左側線形状情報を設定し、前記第1左推定有無情報が前記左側線の推定がなされなかったことを示すときには、前記実左認識有無情報に前記実左側線が認識されなかった旨を設定し、前記第1右推定有無情報が前記右側線の推定がなされたことを示すときには、前記実右認識有無情報に前記実右側線が認識された旨を設定すると共に、前記実右側線形状情報に前記第1右側線形状情報を設定し、前記第1右推定有無情報が前記右側線の推定がなされなかったことを示すときには、前記実右認識有無情報に前記実右側線が認識されなかった旨を設定することが好ましい。
【0038】
これによれば、前記実車線認識手段は、地図データ及び位置情報により左側線及び右側線が推定されなかった場合において、画像処理により左側線又は右側線が推定されているときには、画像処理による左側線又は右側線の推定の結果を、そのまま実際の左側線又は右側線を示す情報として用いることができる。さらに、地図データ及び位置情報と、画像処理とのいずれによっても左側線又は右側線が推定されなかったときには、前記実左認識有無情報又は実右認識有無情報にそれぞれ前記左側線又は右側線が認識されなかった旨が設定されるので、実際の左側線又は右側線が認識されなかった旨が明確に把握される。
【0039】
さらに、前記本発明の第1態様の車両及び車線認識装置において、前記実車線認識手段は、前記左側線類似度と前記右側線類似度との一方又は両者が算出され、且つ該算出された左側線類似度と右側線類似度との一方又は両者が前記所定の閾値より大きい場合には、前記実左認識有無情報及び実右認識有無情報にそれぞれ前記実左側線及び実右側線が認識された旨を設定すると共に、前記左推定有無情報が前記左側線の推定がなされたことを示すときには、前記実左側線形状情報に前記第1左側線形状情報を設定し、該第1左推定有無情報が該左側線の推定がなされなかったことを示すときには、該実左側線形状情報に前記第2左側線形状情報を設定し、前記第1右推定有無情報が前記右側線の推定がなされたことを示すときには、前記実右側線形状情報に前記第1右側線形状情報を設定し、該第1右推定有無情報が該右側線の推定がなされなかったことを示すときには、該実右側線形状情報に前記第2左側線形状情報を設定し、前記第1左推定有無情報及び第1右推定有無情報がそれぞれ前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合には、前記実左認識有無情報及び実右認識有無情報にそれぞれ前記実左側線及び実右側線が認識された旨を設定すると共に、前記実左側線形状情報に前記第2左側線形状情報を設定し、前記実右側線形状情報に前記第2右側線形状情報を設定し、前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示す場合において、前記第1左推定有無情報が前記左側線の推定がなされたことを示すときには、前記実左認識有無情報に前記実左側線が認識された旨を設定すると共に、前記実左側線形状情報に前記第1左側線形状情報を設定し、前記第1左推定有無情報が前記左側線の推定がなされなかったことを示すときには、前記実左認識有無情報に前記実左側線が認識されなかった旨を設定し、前記第1右推定有無情報が前記右側線の推定がなされたことを示すときには、前記実右認識有無情報に前記実右側線が認識された旨を設定すると共に、前記実右側線形状情報に前記第1右側線形状情報を設定し、前記第1右推定有無情報が前記右側線の推定がなされなかったことを示すときには、前記実右認識有無情報に前記実右側線が認識されなかった旨を設定するものであり、前記実車線認識手段は、前記実左側線及び実右側線の少なくともいずれか一方が認識されたときには、該認識の信頼度を設定して出力する手段を備え、前記左側線類似度と前記右側線類似度との両者が算出され、且つ該算出された左側線類似度と右側線類似度との両者が前記所定の閾値より大きい場合には、前記信頼度を最も高いレベルである第1レベルに設定し、前記左側線類似度と前記右側線類似度のいずれか一方が算出され、且つ該算出された左側線類似度と前記右側線類似度とのいずれか一方が前記所定の閾値より大きい場合と、前記第1左推定有無情報及び第1右推定有無情報がそれぞれ前記左側線及び右側線の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示す場合とには、前記信頼度を前記第1レベルより低いレベルである第2レベルに設定し、前記第1左推定有無情報及び第1右推定有無情報のいずれか一方が、それぞれ前記左側線及び右側線のいずれか一方の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示す場合と、前記第1左推定有無情報及び第1右推定有無情報がそれぞれ前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされたことを示す場合とには、前記信頼度を前記第2レベルより低いレベルである第3レベルに設定することが好ましい。
【0040】
これによれば、前記実左側線及び実右側線の少なくともいずれか一方が認識されたときには、該認識の信頼度が出力される。このとき、前記左側線類似度と前記右側線類似度との両者が算出され、且つ該算出された左側線類似度と右側線類似度との両者が前記所定の閾値より大きい場合には、前記信頼度が最も高いレベルである第1レベルに設定されるので、画像処理により推定した左側線及び右側線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の形状とが、左右とも類似の度合が高く、実際の左側線及び右側線が精度良く推定されているとみなせるときには、前記信頼度は最も高く設定される。また、前記左側線類似度と前記右側線類似度のいずれか一方が算出され、且つ該算出された左側線類似度と前記右側線類似度とのいずれか一方が前記所定の閾値より大きい場合は、左側線及び右側線の一方のみについて、精度良く推定されているとみなせる場合であるので、前記信頼度は前記第1レベルより低い第2レベルに設定される。また、前記第1左推定有無情報及び第1右推定有無情報がそれぞれ前記左側線及び右側線の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示す場合は、画像処理によってのみ左側線及び右側線の推定がなされた場合であり、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の情報を用いて、画像処理による左側線及び右側線の推定の信頼性を検証できないので、前記信頼度は前記第1レベルより低い第2レベルに設定される。さらに、前記第1左推定有無情報及び第1右推定有無情報のいずれか一方が、それぞれ前記左側線及び右側線のいずれか一方の推定がなされたことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示す場合は、画像処理によってのみ左側線及び右側線について推定がなされた場合であり、地図データ及び位置情報により推定した左側線及び右側線の情報を用いて、画像処理による左側線及び右側線の推定の信頼性を検証できず、さらに左側線及び右側線の一方のみしか推定がなされていないので、前記信頼度は前記第2レベルよりも低い第3レベルに設定される。また、前記第1左推定有無情報及び第1右推定有無情報がそれぞれ前記左側線及び右側線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記左側線及び右側線の推定がなされたことを示す場合は、地図データ及び位置情報によってのみ左側線及び右側線の推定がなされた場合であり、GPSの測位精度等を考慮して、画像処理によってのみ推定がなされた場合よりも精度が低いとみなせるので、前記信頼度は前記第2レベルより低い第3レベルに設定される。このように前記信頼度を設定して出力することにより、認識された実際の車線を示す情報の信頼性を明確に把握することができる。そして、このように設定された信頼度を、実際の車線を示す情報と共に、車両の制御や運転者への報知に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の一実施形態を添付の図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態による車線認識装置の機能ブロック図であり、図2〜図4は、図1の車線認識装置における車線認識処理のフローチャートである。また、図5は、図1の車線認識装置における車線認識処理の認識対象である車線の例示図であり、図6〜図8は、図1の車線認識装置における車線認識処理の説明図である。なお、本第1実施形態は、本発明の第1態様に対応する実施形態である。
【0042】
図1を参照して、車線認識装置1は、マイクロコンピュータ等により構成された電子ユニットであり、その処理機能として、道路の画像を取得して車線を推定する処理を実行する画像処理手段2と、地図データを保持する地図データ記憶媒体3と、GPSにより車両の現在の位置情報を取得するGPSユニット4と、地図データと車両の現在の位置情報とから車線を推定する処理を実行する車線推定手段5と、画像処理手段2による処理の結果と車線推定手段5による処理の結果とに基づいて実際の車線を認識する処理を実行する実車線認識手段6とを備え、車両7に搭載されている。
【0043】
画像処理手段2は、車両7のフロント部分に取り付けられて車両7の前方の画像を撮像するビデオカメラ8(CCDカメラ等、本発明の撮像手段)を介して道路の画像を取得する。そして、画像処理手段2は、取得した道路の画像を処理して、車両7が走行する車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する。なお、ビデオカメラ8と車線認識装置1とを備えることにより、本発明の車両が構成される。
【0044】
地図データ記憶媒体3(本発明の保持手段)は、地図データが記録されているCD−ROM、DVD、HDD等の記憶媒体である。地図データ記憶媒体3には、地図データとして、道路の位置、道路の車線幅等が記録されている。
【0045】
GPSユニット4(本発明の位置情報取得手段)は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星から送信される情報を受信し、該受信した情報に基づいて車両7の現在の位置情報(緯度、経度、進行方向)を取得する。
【0046】
車線推定手段5は、地図データ記憶媒体3から読み出される地図データと、GPSユニット4によって取得される現在の車両7の位置情報とを用いて、車両7が現在走行する道路の情報を特定する。そして、車線推定手段5は、特定した道路の情報から車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する。
【0047】
実車線認識手段6は、画像処理手段2から出力される第1車線情報と、車線推定手段5から出力される第2車線情報とに基づいて、実際の車線の情報を認識する処理を実行し、該処理の結果を実際の車線を示す情報(以下、実車線情報という)として出力する。さらに、実車線認識手段6は、実際の車線が認識された場合には、該認識の信頼度を設定し、実車線情報と共に出力する。信頼度は、認識の精度を示す指標であり、該認識の結果に応じて、レベル1〜レベル3の3段階に設定される。レベル1は、認識の信頼度が最も高いことを示し(高精度)、レベル2は、信頼度がレベル1より低いことを示し(中精度),レベル3は、さらに信頼度がレベル2より低いことを示す(低精度)。
【0048】
次に、本実施形態の車線認識装置1の作動を、図2〜図4に示したフローチャートに従って説明する。図2は車線認識処理の全体的な作動(車線認識装置1のメインルーチン処理)を示すフローチャート、図3は画像処理により車線を推定する処理(サブルーチン処理)を示すフローチャート、図4は地図データ及び位置情報から車線を推定する処理(サブルーチン処理)を示すフローチャートである。なお、以下では、図5に示したように、車両7の進行方向が矢示方向であり、車両7の走行している道路の車線の左側がレーンマークA0で規定され、車線の右側がレーンマークA1で規定される場合を例にして説明する。レーンマークA0,A1は、一例として、例えば白線とする。
【0049】
図2を参照して、まず、画像処理手段2は、ビデオカメラ8から出力される映像信号が入力され、道路の画像を取得する(STEP001)。
【0050】
次に、画像処理手段2は、取得した道路の画像から車線を推定する処理(以下、第1車線推定処理という)を実行し、第1車線情報を出力する(STEP002)。出力される第1車線情報は、第1車線推定処理によってレーンマークA0が推定されたか否かを示す第1左推定有無情報と、レーンマークA0が推定された場合における該推定されたレーンマークA0の形状を示す第1左側線形状情報と、第1車線推定処理によってレーンマークA1が推定されたか否かを示す第1右推定有無情報と、レーンマークA1が推定された場合における該推定されたレーンマークA1の形状を示す第1右側線形状情報とを有する。第1左推定有無情報には、レーンマークA0が推定された場合には「有」が設定され、推定されなかった場合には「無」が設定される。第1右推定有無情報にも、同様に、レーンマークA1が推定された場合には「有」が設定され、推定されなかった場合には「無」が設定される。
【0051】
第1車線推定処理は、図3に示す如く実行される。まず、画像処理手段2は、取得された画像から白線を検出するためのエッジ検出の処理を行う(STEP101)。次に、エッジ検出の出力データをハフ変換する(STEP102)。次に、ハフ空間で直線成分を探索して抜き出す(STEP103)。次に、抜き出された直線成分のデータを、ハフ空間から画像空間へ射影変換し、さらに画像空間から実空間(車両に固定された座標空間)へ射影変換する(STEP104)。
【0052】
次に、STEP105に進み、実空間へ変換された直線成分のデータのうちから、レーンマークA0であると推定される直線成分のデータを選抜し、選抜した直線成分のデータに含まれる複数の点の座標を点列データA2とする。同様に、レーンマークA1であると推定される直線成分のデータを選抜し、その選抜した直線成分のデータに含まれる複数の点の座標を点列データA3とする。選抜された点列データA2,A3は、図6に例示されるようなものである。図6において、座標系は、x軸,y軸を座標軸とする平面直角座標系であり、車両7の中心位置を原点とし、車両7の進行方向をx軸方向とするように設定されている。次に、図6に示すように、点列データA2を近似する2次式F2(y=ax*x+bx+c)と、点列データA3を近似する2次式F3(y=dx*x+ex+f)とを求める(a,b,c,d,e,fは所定の係数)。このとき、近似方法としては最小二乗法を用いる。
【0053】
そして、STEP106に進み、第1車線情報を設定する。このとき、2次式F2が適切に求められている場合には、第1推定有無情報に「有」を設定すると共に、第1左側線形状情報にy=ax*x+bx+cを設定する。点列データA2が得られなかった場合や、点列データA2に十分なデータ数がなく2次式F2が求められなかった場合や、求めた2次式F2が点列データA2を近似する度合が低い(2次式F2に対する点列データA2のばらつきが大きい)場合等、2次式F2が適切に求められなかった場合には、第1左推定有無情報に「無」を設定する。また、2次式F3が適切に求められている場合には、第1右推定有無情報に「有」を設定すると共に、第1右側線形状情報にy=dx*x+ex+fを設定する。点列データA3が得られなかった場合や、点列データA3に十分なデータ数がなく2次式F3が求められなかった場合や、求めた2次式F3が点列データA3を近似する度合が低い(2次式F3に対する点列データA3のばらつきが大きい)場合等、2次式F3が適切に求められなかった場合には、第1右推定有無情報に「無」を設定する。
【0054】
次に、図2に戻り、GPSユニット4は、車両7の現在の位置情報を取得する処理を実行する(STEP003)。取得される車両7の現在の位置情報は、位置(緯度x0,経度y0)と進行方位θである。これらの情報は、球面座標系で示されており、進行方位θは、北方向を0度とし、時計回りを正とするように設定されている。次に、車線推定手段5は、地図データ記憶媒体3から地図データを読み込む(STEP004)。読み込まれる地図データは、道路における車線(車両の走行レーン)の中心線上の点列の座標(X,Y)と、各点(X,Y)での車線幅wであり、これらのデータは、南北方向にx軸に設定し、東西方向にy軸を設定した平面直角座標系で示されている。
【0055】
次に、車線推定手段5は、地図データ及び位置情報により車線を推定する処理(以下、第2車線推定処理という)を実行し、第2車線情報を出力する(STEP005)。出力される第2車線情報は、第2車線推定処理によってレーンマークA0及びレーンマークA1が推定されたか否かを示す第2推定有無情報と、レーンマークA0が推定された場合における該推定されたレーンマークA0の形状を示す第2左側線形状情報と、レーンマークA1が推定された場合における該推定されたレーンマークA1の形状を示す第2右側線形状情報とを有する。第2推定有無情報には、レーンマークA0及びレーンマークA1が推定された場合には「有」が設定され、推定されなかった場合には「無」が設定される。
【0056】
第2車線推定処理は、図4に示す如く実行される。まず、車線推定手段5は、GPSユニット4により現在の車両7の位置情報が取得されているか否かを確認する(STEP201)。GPS衛星からの受信不良等により、現在の車両7の位置情報が取得されていなかった場合は、STEP202に進み、第2推定有無情報に「無」を設定する。
【0057】
STEP201において、現在の車両7の位置情報が取得されていた場合には、STEP203に進み、車線推定手段5は、取得した車両7の位置(緯度x0,経度y0)を、球面座標系から地図データにおける平面直角座標系に座標変換する。座標変換して得られた車両7の位置P0は、図7(a),(b)に例示するようなものとなる。図7(a),(b)において、x軸,y軸,原点Oは、読み込まれた地図データの座標系xyを示している。次に、STEP204で、図7(a)に示すように、地図データの座標系xyを、車両7の位置P0を原点としx'軸,y'軸を座標軸とする座標系x'y'へ座標変換(平行移動)する。このとき、車両7の進行方向は矢示方向であり、x'軸から進行方位θ度だけ回転した方向として示される。次に、STEP205で、図7(b)に示すように、座標系x'y'を、車両7の進行方向をx"軸方向としx"軸,y"軸を座標軸とする座標系x"y"へ回転変換する(θ度回転させる)。これにより、地図データが座標系x"y"に座標変換される。以後のSTEP206〜208の処理は、この座標系x"y"で行われる。
【0058】
次に、STEP206で、原点に最も近い地図データ上の点(基準点P1)を探索し、基準点P1の座標(x1,y1)と、基準点P1における車線幅wとを取得する。次に、STEP207で、基準点P1から車両の進行方向に所定の距離X先までの複数の点(P2,...,Pn)を抽出する(nは3以上の整数)。所定の距離Xは、例えば100m程度とする。そして、基準点P1及び抽出した点(P2,...,Pn)の座標データ{(x1,y1),(x2,y2),...,(xn,yn)}を点列データA4とする。点列データA4は、図8に例示されるようなものである。次に、STEP207で、図8に示すように、点列データA4を近似する2次式F4(y=gx*x+hx+i)を求める(g,h,iは所定の係数)。このとき、近似方法としては最小二乗法を用いる。
【0059】
次に、STEP208で、図8に示すように、求めた2次式F4と車線幅wとから、レーンマークA0,A1を推定する。このとき、レーンマークA0は2次式F5(y=gx*x+hx+i-w/2)により推定し、レーンマークA1は2次式F6(y=gx*x+hx+i+w/2)により推定する。そして、STEP209で、第2推定有無情報に「有」を設定すると共に、第2左側線形状情報にy=gx*x+hx+i-w/2、第2右側線形状情報にy=gx*x+hx+i+w/2を設定する。
【0060】
次に、図2に戻り、実車線認識手段6は、第1車線情報と第2車線情報とから、実際の車線を認識する処理(以下、実車線認識処理という)を実行し、実車線情報と信頼度とを出力する(STEP006)。出力される実車線情報は、実車線認識処理によってレーンマークA0が認識されたか否かを示す実左認識有無情報と、レーンマークA0が認識された場合における該認識されたレーンマークA0の形状を示す実左側線形状情報と、実車線認識処理によってレーンマークA1が認識されたか否かを示す実右認識有無情報と、レーンマークA1が認識された場合における該認識されたレーンマークA1の形状を示す実右側線形状情報とを有する。実左認識有無情報には、レーンマークA0が認識された場合には「有」が設定され、認識されなかった場合には「無」が設定される。実右認識有無情報にも、同様に、レーンマークA1が認識された場合には「有」が設定され、認識されなかった場合には「無」が設定される。
【0061】
まず、実車線認識手段6は、第1左推定有無情報、第1右推定有無情報、第2推定有無情報の設定値を確認する。そして、前記3つの設定値の組み合わせに応じて、以下の(a)〜(h)に示す8通りの場合に分けて実車線認識処理を実行する。
【0062】
(a)第1左推定有無情報=「有」,かつ第1右推定有無情報=「有」,かつ第2推定有無情報=「有」の場合
この場合は、まず、実車線認識手段6は、第1左側線形状情報と第2左側線形状情報との類似する度合を示す左側線類似度指標値L1を算出する。左側線類似度指標値L1としては、次式(1)で示される比較関数F1の値が用いられる。
【0063】
【数1】

【0064】
実車線認識手段6は、式(1)の右辺のf1(x)にax*x+bx+c(第1左側線形状情報)を用い、f2(x)にgx*x+hx+i-w/2(第2左側線形状情報)を用いて算出される左辺の値を左側線類似度指標値L1とする。なお、算出される左側線類似度指標値L1は、f1(x)とf2(x)との類似の度合(類似度)が高いほど小さくなるものである。また、式(1)の右辺のNは、予め定めたf1(x),f2(x)の値のサンプリング数であり、例えばN=50である。
【0065】
次に、左側線類似度指標値L1と同様に、式(1)を用いて、第1右側線形状情報と第2右側線形状情報との類似する度合を示す右側線類似度指標値R1を算出する。実車線認識手段6は、式(1)の右辺のf1(x)にdx*x+ex+f(第1右側線形状情報)を用い、f2(x)にgx*x+hx+i+w/2(第2右側線形状情報)を用いて算出される左辺の値を右側線類似度指標値R1とする。算出される右側線類似度指標値R1は、左側線類似度指標値L1と同様、f1(x)とf2(x)との類似の度合(類似度)が高いほど小さくなるものである。
【0066】
次に、左側線類似度指標値L1と右側線類似度指標値R1とをそれぞれ所定の閾値S1と比較する。そして、比較の結果に応じて、以下の(a1),(a2)の2通りの場合に分けて実車線情報と信頼度とを設定する。
【0067】
(a1)L1<S1 かつ R1<S1の場合
この場合は、実左認識有無情報に「有」を設定し、実左側線形状情報に第1左側線形状情報を設定する。また、実右認識有無情報に「有」を設定し、実右側線形状情報に第1右側線形状情報を設定する。これにより、画像処理により推定した車線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状とが、類似の度合が高く、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報によって、画像処理による車線の推定の信頼性が検証され、画像処理により車線が精度良く推定されているとみなせるときには、車線が認識された旨が実車線情報に適切に設定される。このとき、レーンマークA0,A1について、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状情報より精度が高いと考えられる画像処理によって推定した車線の形状情報が、実車線情報に設定される。
【0068】
また、この場合は、信頼度をレベル1に設定する。これにより、レーンマークA0,A1の両方について、精度良く推定されているとみなせるときには、信頼度は最も高いレベルに設定される。
【0069】
(a2)L1≧S1 または R1≧S1の場合
この場合は、実左認識有無情報および実右認識有無情報に、それぞれ「無」を設定する。これにより、画像処理により推定した車線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状とが相違しており、画像処理による車線の推定と地図データ及び位置情報による車線の推定とのいずれか、もしくは両方において、実際の車線が適切に推定されていない可能性があるときには、車線が認識されなかった旨が実車線情報に適切に設定される。
【0070】
(b)第1左推定有無情報=「有」,かつ第1右推定有無情報=「有」,かつ第2推定有無情報=「無」の場合
この場合は、実左認識有無情報に「有」を設定し、実左側線形状情報に第1左側線形状情報を設定する。また、実右認識有無情報に「有」を設定し、実右側線形状情報に第1右側線形状情報を設定する。これにより、地図データ及び位置情報により車線が推定されなかった場合において、画像処理により車線が推定されているときには、画像処理による車線の推定の結果が、そのまま実車線情報として用いられる。
【0071】
また、この場合は、信頼度をレベル2に設定する。これにより、画像処理によってのみ車線の推定がなされ、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報を用いて、画像処理による車線の推定の信頼性を検証できなかった場合には、信頼度はレベル1より低く設定される。
【0072】
(c)第1左推定有無情報=「有」,かつ第1右推定有無情報=「無」,かつ第2推定有無情報=「有」の場合
この場合は、まず、実車線認識手段6は、第1左側線形状情報と、第2左側線形状情報とから、式(1)を用いて左側線類似度指標値L1を算出する。次に、左側線類似度指標値L1を所定の閾値S1と比較する。そして、比較の結果に応じて、以下の(c1),(c2)の2通りの場合に分けて実車線情報と信頼度とを設定する。
【0073】
(c1)L1<S1の場合
この場合は、実左認識有無情報に「有」を設定し、実左側線形状情報に第1左側線形状情報を設定する。また、実右認識有無情報に「有」を設定し、実右側線形状情報に第2右側線形状情報を設定する。これにより、画像処理により推定した車線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状とが、類似の度合が高く、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報によって、画像処理による車線の推定の信頼性が検証され、画像処理により車線が精度良く推定されているとみなせるときには、車線が認識された旨が実車線情報に適切に設定される。このとき、レーンマークA0については、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状情報より精度が高いと考えられる画像処理によって推定した車線の形状情報が、実車線情報に設定される。また、画像処理によって車線が推定できなかったレーンマークA1については、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報で補完するので、車線を検出し得る機会を可能な限り高めることができる。
【0074】
また、この場合は、信頼度をレベル2に設定する。これにより、レーンマークA0,A1の一方のみについて、精度良く推定されているとみなせるときには、信頼度はレベル1より低く設定される。
【0075】
(c2)L1≧S1の場合
この場合は、実左認識有無情報および実右認識有無情報に、それぞれ「無」を設定する。これにより、画像処理により推定した車線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状とが相違しており、画像処理による車線の推定と地図データ及び位置情報による車線の推定とのいずれか、もしくは両方において、実際の車線が適切に推定されていない可能性があるときには、車線が認識されなかった旨が実車線情報に適切に設定される。
【0076】
(d)第1左推定有無情報=「有」,かつ第1右推定有無情報=「無」,かつ第2推定有無情報=「無」の場合
この場合は、実左認識有無情報に「有」を設定し、実左側線形状情報に第1左側線形状情報を設定する。また、実右認識有無情報に「無」を設定する。これにより、地図データ及び位置情報により車線が推定されなかった場合において、画像処理により車線が推定されているときには、画像処理による車線の推定の結果が、そのまま実車線情報として用いられる。
【0077】
また、この場合は、信頼度をレベル3に設定する。これにより、画像処理によってのみ車線の推定がなされ、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報を用いて、画像処理による車線の推定の信頼性を検証できなかった場合には、信頼度はレベル1より低く設定される。さらに、このとき、画像処理によってレーンマークA0,A1の一方のみについて推定がなされているので、信頼度はレベル2よりも低く設定される。
【0078】
(e)第1左推定有無情報=「無」,かつ第1右推定有無情報=「有」,かつ第2推定有無情報=「有」の場合
この場合は、まず、実車線認識手段6は、第1右側線形状情報と、第2右側線形状情報とから、式(1)を用いて右側線類似度指標値R1を算出する。次に、右側線類似度指標値R1を所定の閾値S1と比較する。そして、比較の結果に応じて、以下の(e1),(e2)の2通りの場合に分けて実車線情報と信頼度とを設定する。
【0079】
(e1)R1<S1の場合
この場合は、実左認識有無情報に「有」を設定し、実左側線形状情報に第2左側線形状情報を設定する。また、実右認識有無情報に「有」を設定し、実右側線形状情報に第1右側線形状情報を設定する。これにより、画像処理により推定した車線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状とが、類似の度合が高く、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報によって、画像処理による車線の推定の信頼性が検証され、画像処理により車線が精度良く推定されているとみなせるときには、車線が認識された旨が実車線情報に適切に設定される。このとき、レーンマークA1については、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状情報より精度が高いと考えられる画像処理によって推定した車線の形状情報が、実車線情報に設定される。また、画像処理によって車線が推定できなかったレーンマークA0については、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報で補完するので、車線を検出し得る機会を可能な限り高めることができる。
【0080】
また、この場合は、信頼度をレベル2に設定する。これにより、レーンマークA0,A1の一方のみについて、精度良く推定されているとみなせるときには、信頼度はレベル1より低く設定される。
【0081】
(e2)R1≧S1の場合
この場合は、実左認識有無情報および実右認識有無情報に、それぞれ「無」を設定する。これにより、画像処理により推定した車線の形状と、地図データ及び位置情報により推定した車線の形状とが相違しており、画像処理による車線の推定と地図データ及び位置情報による車線の推定とのいずれか、もしくは両方において、実際の車線が適切に推定されていない可能性があるときには、車線が認識されなかった旨が実車線情報に適切に設定される。
【0082】
(f)第1左推定有無情報=「無」,かつ第1右推定有無情報=「有」,かつ第2推定有無情報=「無」の場合
この場合は、実左認識有無情報に「無」を設定する。また、実右認識有無情報に「有」を設定し、実右側線形状情報に第1右側線形状情報を設定する。これにより、地図データ及び位置情報により車線が推定されなかった場合において、画像処理により車線が推定されているときには、画像処理による車線の推定の結果が、そのまま実車線情報として用いられる。
【0083】
また、この場合は、信頼度をレベル3に設定する。これにより、画像処理によってのみ車線の推定がなされ、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報を用いて、画像処理による車線の推定の信頼性を検証できなかった場合には、信頼度はレベル1より低く設定される。さらに、このとき、画像処理によってレーンマークA0,A1の一方のみについて推定がなされているので、信頼度はレベル2よりも低く設定される。
【0084】
(g)第1左推定有無情報=「無」,かつ第1右推定有無情報=「無」,かつ第2推定有無情報=「有」の場合
この場合は、実左認識有無情報に「有」を設定し、実左側線形状情報に第2左側線形状情報を設定する。また、実右認識有無情報に「有」を設定し、実右側線形状情報に第2右側線形状情報を設定する。これにより、画像処理によって車線が推定できなかった場合にも、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報で補完するので、車線を検出し得る機会を可能な限り高めることができる。
【0085】
また、この場合は、信頼度をレベル3に設定する。これにより、地図データ及び位置情報によってのみ車線の推定がなされた場合には、GPSの測位精度等を考慮して、画像処理によってのみ推定がなされた場合よりも精度が低いとみなして、信頼度はレベル2より低く設定される。
【0086】
(h)第1左推定有無情報=「無」,かつ第1右推定有無情報=「無」,かつ第2推定有無情報=「無」の場合
この場合は、実左認識有無情報および実右認識有無情報に、それぞれ「無」を設定する。このとき、実左側線形状情報および実右側線形状情報には何も設定されない。これにより、実際の車線が認識されなかった旨が明確に把握される。
【0087】
以上の処理により、画像処理により推定した車線の情報と、地図データ及び位置情報により推定した車線の情報とを用いて、車線を検出し得る機会を可能な限り高めつつ、車線を精度良く検出することができる。そして、本実施形態においては、出力された実車線情報と信頼度とに基づいて、車両の制御や、運転者への報知を行う。このとき、例えば、信頼度がレベル1の場合には、実車線形状情報に基づいて車両のステアリング制御を行い、また、信頼度がレベル2とレベル3との場合には、車両のステアリング制御は行わず、車両が車線を逸脱する恐れがある際に運転者に報知を行うようにする。
【0088】
なお、前記第1実施形態においては、車線は左側線及び右側線によって規定されるものとしたが、第2実施形態として、例えば、車線は左側線又は右側線のいずれか一方のみによって規定されるものとすることも可能である(これは本発明の第2態様に対応する)。このようにした場合でも、前述のように車線が左側線及び右側線で規定される場合と同様の作用効果を奏する。
【0089】
また、前記第1実施形態及び第2実施形態においては、位置情報取得手段として、GPSユニット4を用いたが、車両の位置情報をGPSから取得する代わりに、自律航法にて得られる位置情報を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1実施形態による車線認識装置の機能ブロック図。
【図2】図1の車線認識装置の車線認識処理を示すフローチャート。
【図3】図1の車線認識装置の車線認識処理における画像処理による車線推定処理を示すフローチャート。
【図4】図1の車線認識装置の車線認識処理におけるGPS情報及び地図データによる車線推定処理を示すフローチャート。
【図5】図1の車線認識装置の認識対象である道路の車線の例示図。
【図6】図1の車線認識装置の画像処理による車線推定処理の説明図。
【図7】図1の車線認識装置のGPS情報及び地図データによる車線推定処理の説明図。
【図8】図1の車線認識装置のGPS情報及び地図データによる車線推定処理の説明図。
【符号の説明】
【0091】
1…車線認識装置、2…画像処理手段、3…地図データ記憶媒体(保持手段)、4…GPSユニット(位置情報取得手段)、5…車線推定手段、6…実車線認識手段、7…車両、8…ビデオカメラ(撮像手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段と、
前記撮像手段を介して道路の画像を取得し、取得した該画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する画像処理手段と、
前記道路の地図データを保持する保持手段と、
車両の現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記地図データと前記現在の位置情報とを用いて前記道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する車線推定手段と、
前記第1車線情報と、前記第2車線情報とに基づいて、前記道路の実際の車線を認識する実車線認識手段とを有する車両。
【請求項2】
撮像手段と、
前記撮像手段を介して道路の画像を取得し、取得した該画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する画像処理手段と、
前記道路の地図データを保持する保持手段と、
車両の現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記地図データと前記現在の位置情報とを用いて前記道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する車線推定手段と、
前記第1車線情報が示す前記車線の形状と、前記第2車線情報が示す前記車線の形状とが類似する度合である車線類似度を算出する手段と、
前記第1車線情報と、前記第2車線情報と、前記車線類似度を所定の閾値と比較した結果とに基づいて、前記道路の実際の車線を認識する実車線認識手段とを有する車両。
【請求項3】
前記実車線認識手段は、前記車線類似度が前記所定の閾値より大きいときには、前記第1車線情報に基づいて、前記実際の車線を認識することを特徴とする請求項2記載の車両。
【請求項4】
前記実車線認識手段は、前記車線類似度が前記所定の閾値以下のときには、前記実際の車線が認識されなかった旨を示す情報を出力することを特徴とする請求項2記載の車両。
【請求項5】
前記第1車線情報は、前記画像処理手段の処理によって前記車線が推定されたか否かを示す第1推定有無情報と、該車線が推定された場合における該推定された車線の形状を示す第1車線形状情報とを有し、
前記第2車線情報は、前記車線推定手段の処理によって前記車線が推定されたか否かを示す第2推定有無情報と、該車線が推定された場合における該推定された車線の形状を示す第2車線形状情報とを有し、
前記実車線認識手段は、前記実際の車線が認識されたか否かを示す実車線認識有無情報を、前記第1推定有無情報と、前記第2推定有無情報と、前記車線類似度を前記所定の閾値と比較した結果とに基づいて決定して出力する手段と、該車線が認識された場合における該認識された車線の形状を示す実車線形状情報を、前記第1車線形状情報と、前記第2車線形状情報とから決定して出力する手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の車両。
【請求項6】
前記実車線認識手段は、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合には、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識された旨を設定すると共に、前記実車線形状情報に前記第2車線形状情報を設定することを特徴とする請求項5記載の車両。
【請求項7】
前記実車線認識手段は、前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示す場合において、
前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示すときには、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識された旨を設定すると共に、前記実車線形状情報に前記第1車線形状情報を設定し、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示すときには、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識されなかった旨を設定することを特徴とする請求項5記載の車両。
【請求項8】
車両に搭載された撮像手段を介して取得する道路の画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する画像処理手段と、
前記道路の地図データを保持する保持手段と、
車両の現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記地図データと前記現在の位置情報とを用いて前記道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する車線推定手段と、
前記第1車線情報と、前記第2車線情報とに基づいて、前記道路の実際の車線を認識する実車線認識手段とを有する車線認識装置。
【請求項9】
車両に搭載された撮像手段を介して取得する道路の画像を処理して該道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第1車線情報として出力する画像処理手段と、
前記道路の地図データを保持する保持手段と、
車両の現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記地図データと前記現在の位置情報とを用いて前記道路の車線を推定する処理を実行し、該処理の結果を第2車線情報として出力する車線推定手段と、
前記第1車線情報が示す前記車線の形状と、前記第2車線情報が示す前記車線の形状とが類似する度合である車線類似度を算出する手段と、
前記第1車線情報と、前記第2車線情報と、前記車線類似度を所定の閾値と比較した結果とに基づいて、前記道路の実際の車線を認識する実車線認識手段とを有する車線認識装置。
【請求項10】
前記実車線認識手段は、前記車線類似度が前記所定の閾値より大きいときには、前記第1車線情報に基づいて、前記実際の車線を認識することを特徴とする請求項9記載の車線認識装置。
【請求項11】
前記実車線認識手段は、前記車線類似度が前記所定の閾値以下のときには、前記実際の車線が認識されなかった旨を示す情報を出力することを特徴とする請求項9記載の車線認識装置。
【請求項12】
前記第1車線情報は、前記画像処理手段の処理によって前記車線が推定されたか否かを示す第1推定有無情報と、該車線が推定された場合における該推定された車線の形状を示す第1車線形状情報とを有し、
前記第2車線情報は、前記車線推定手段の処理によって前記車線が推定されたか否かを示す第2推定有無情報と、該車線が推定された場合における該推定された車線の形状を示す第2車線形状情報とを有し、
前記実車線認識手段は、前記実際の車線が認識されたか否かを示す実車線認識有無情報を、前記第1推定有無情報と、前記第2推定有無情報と、前記車線類似度を前記所定の閾値と比較した結果とに基づいて決定して出力する手段と、該車線が認識された場合における該認識された車線の形状を示す実車線形状情報を、前記第1車線形状情報と、前記第2車線形状情報とから決定して出力する手段とを備えることを特徴とする請求項9記載の車線認識装置。
【請求項13】
前記実車線認識手段は、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示し、且つ前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示す場合には、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識された旨を設定すると共に、前記実車線形状情報に前記第2車線形状情報を設定することを特徴とする請求項12記載の車線認識装置。
【請求項14】
前記実車線認識手段は、前記第2推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示す場合において、
前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされたことを示すときには、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識された旨を設定すると共に、前記実車線形状情報に前記第1車線形状情報を設定し、前記第1推定有無情報が前記車線の推定がなされなかったことを示すときには、前記実車線認識有無情報に前記車線が認識されなかった旨を設定することを特徴とする請求項12記載の車線認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−4669(P2007−4669A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186383(P2005−186383)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】