説明

車両周辺物体検知装置およびシステム

【課題】 静止物を正確に検知することができる「車両周辺物体検知装置およびシステム」を提供すること。
【解決手段】 車両周辺物体検知装置には、車両周辺の物体を検出するレーダ処理モジュール10、位置算出部12と、車両の走行状態を含む車両情報を取得する車両情報取得部14と、検出された物体の検出履歴情報を車両情報とともに格納する検出履歴DB20と、新たに物体が検出されたときに、そのときの車両情報を検索キーとして、この検出された物体と一致する物体が存在するか否かを検出履歴情報に基づいて検索し、一致する物体の存在が確認されたときにこの物体を静止物として判定する静止物判定部30とが備わっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の静止物あるいは移動物を検知する車両周辺物体検知装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両周辺の物体を検知し、その物体が道路上の静止物か否かを判定する障害物検知方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この従来方法では、車載用レーダ装置を用いて車両周辺の物体を検知し、自車からこの物体までの距離を微分して求めた相対的な速度に基づいて静止物か否かを判定するとともに、自車前方を撮影した画像に基づいてこの物体が道路上に存在するか否かを判定している。
【特許文献1】特開2004−171295号公報(第3−5頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示された従来方法では、レーダ装置を用いた検知結果に基づいて、検知された物体が静止物であるか否かを判定しているが、この判定を正確に行う前提としてレーダ装置の検知精度が高く、距離を微分して得られる物体の速度が正確である必要がある。しかし、実際にはレーダ装置の検知精度を考えると、物体の速度を正確に得ることは難しく、車両から見た物体の速度が完全に0になることはあまり期待できず、静止物を正確に検知することができないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、静止物を正確に検知することができる車両周辺物体検知装置およびシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の車両周辺物体検知装置は、車両周辺の物体を検出する物体検出手段と、車両の走行状態を含む車両情報を取得する車両情報取得手段と、物体検出手段によって検出された物体の検出履歴情報を、検出時に車両情報取得手段によって取得された車両情報とともに格納する検出履歴格納手段と、新たに物体検出手段によって物体が検出されたときに、そのときの車両情報を検索キーとして、この検出された物体と一致する物体が存在するか否かを検出履歴情報に基づいて検索する検出履歴検索手段と、検出履歴検索手段によって、一致する物体の存在が確認されたときに、この物体を静止物として判定する静止物判定手段とを備えている。道路上あるいは道路周辺に静止物があったときに、この道路を複数回走行すると、毎回同じ状況でこの静止物の検出が行われるはずである。したがって、この静止物の検出履歴情報を格納しておいて、次にその位置を走行し、同じ検出動作が繰り返されたときにその検出された物体を静止物として判定することにより、精度の高い正確な静止物の検知を行うことが可能になる。
【0006】
また、上述した物体検出手段によって検出された物体であって、静止物判定手段によって静止物として判定された物体以外を移動物として判定する移動物判定手段をさらに備えることが望ましい。検出された物体から、正確に検知された静止物を除くことにより、移動物検知の精度も上げることができる。
【0007】
また、上述した静止物判定手段によって静止物として判定された物体に関する情報を静止物情報として格納する静止物情報格納手段をさらに備え、移動物判定手段は、静止物判定手段による判定結果に代えて、あるいはこの判定結果とともに静止物情報格納手段に格納されている静止物情報を用いて移動物の判定を行うことが望ましい。これにより、静止物として判定された物体については再度この判定を行うことなく移動物の判定を行うことができるため、移動物判定の手順を簡略化することができる。
【0008】
また、上述した移動物判定手段によって移動物であると判定された物体の存在を車両の運転者に通知する通知手段をさらに備えることが望ましい。これにより、車両周辺の移動物の存在を運転者に知らせることができ、注意を喚起することができる。
【0009】
また、上述した物体検出手段は、車両周辺を探知範囲とするレーダ装置であることが望ましい。これにより、車両周辺に存在する物体の有無を容易に検出することができる。
【0010】
また、上述した車両情報取得手段は、車両の現在位置と進行方向を車両情報として取得し、車両情報取得手段によって取得された車両情報を用いて、検出履歴格納手段による検出履歴情報の格納動作と、検出履歴検索手段による検索動作とを行うことが望ましい。具体的には、上述した検出履歴検索手段は、車両の現在位置と進行方向とに基づいて、新たに物体検出手段によって検出された物体が、検出履歴情報が格納された時点において同じ位置に存在するか否かを確認することにより、この検出された物体と一致する物体が存在するか否かを検索することが望ましい。これにより、道路に沿って同じ位置、同じ向きに走行した場合に物体検出の再現性があるときにこの物体を静止物として確実に判定することができる。
【0011】
また、上述した車両情報取得手段は、車両の走行位置に対応する道路状態と車両の進行方向を車両情報として取得し、車両情報取得手段によって検出された車両情報を用いて、検出履歴格納手段による検出履歴情報の格納動作と、検出履歴検索手段による検索動作とを行うことが望ましい。これにより、信号機や道路標識等のように道路状態にあわせて設置されている静止物が存在する場合に、道路周辺の静止物を正確に検知することが可能になる。
【0012】
また、車両の走行位置に対応する道路形状が格納されている地図データ格納手段をさらに備えることが望ましい。これにより、過去の走行回数とは関係なく道路についても道路状態を知ることができるため、始めて走行する道路についても道路周辺の静止物を検知することが可能になる。
【0013】
また、本発明の車両周辺物体検知システムは、上述した検出履歴格納手段、検出履歴検索手段、静止物判定手段を車両外部に配置するとともに、物体検出手段、車両情報取得手段、移動物判定手段、静止物情報格納手段を車両内部に配置している。これにより、静止物であるか否かの判定を車両外部のパーソナルコンピュータ等を用いて行うことが可能になるため、車載機において行う移動物検知を、処理能力が比較的低い処理装置を用いて行うことができる。
【0014】
また、本発明の車両周辺物体検知システムは、上述した検出履歴格納手段、検出履歴検索手段、静止物判定手段を車両外部に配置するとともに、物体検出手段、車両情報取得手段、移動物判定手段、静止物情報格納手段を車両内部に配置し、車両外部と車両内部との間の情報の入出力を通信によって行っている。具体的には、上述した車両外部に配置された検出履歴格納手段、検出履歴検索手段、静止物判定手段はネットワークに接続されたサーバに備わっており、物体検出手段、車両情報取得手段、移動物判定手段、静止物情報格納手段が備わった複数の車両とサーバとの間でネットワークを介して情報の入出力を行うことが望ましい。これにより、静止物であるか否かの判定を車両外部において行うことが可能になるため、車載機において行う移動物検知を、処理能力が比較的低い処理装置を用いて行うことができる。また、車両外部のサーバ等において複数の車両から送られてくる情報に基づいて静止物判定を行い、その結果を各車両に配信することが可能になるため、より精度の高い静止物検知および移動物検知を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両周辺物体検知装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態の車両周辺物体検知装置の構成を示す図である。図1に示す車両周辺物体検知装置は、レーダ処理モジュール10、位置算出部12、車両情報取得部14、検索履歴DB(データベース)20、検索履歴更新部22、静止物判定部30、静止物DB32、移動物判定部40、出力制御部50、表示装置52を含んで構成されている。
【0016】
レーダ処理モジュール10は、自車両の前後左右の複数箇所に設置されており、所定の探知範囲に含まれる他の物体(主に他の車両)を探知する。位置算出部12は、レーダ処理モジュール10の出力信号に基づいて、他の物体が存在する方向と他の物体までの距離とをこの他の物体の位置として算出する。例えば、レーダ処理モジュール10は、周波数が時間とともに変化するミリ波帯のFM信号を複数の送受信アンテナから送信するとともに、探知範囲にある他の物体からの反射波を受信し、これらの送信信号と受信信号とを合成した信号を出力する。位置算出部12は、レーダ処理モジュール10の出力信号に含まれるビート成分の周波数を解析することにより、他の物体までの距離を算出する。この距離の算出や合成信号のレベル比較を、向きが異なる複数の送受信アンテナのそれぞれについて行うことにより、他の物体の方向を知ることができる。なお、レーダ処理モジュール10および位置算出部12の動作原理等については、使用される探知信号の波長やアンテナの構造等によって異なるが、本実施形態では、他の物体までの方向と距離がわかればよいため、この目的を達成可能などのような種類のレーダ処理モジュール等を用いてもよい。また、レーダ処理モジュール10内に位置算出部12を設けるようにしてもよい。
【0017】
車両情報取得部14は、車両の現在位置と進行方向を車両情報として取得する。例えば、GPS装置が接続されており、車両情報取得部14は、このGPS装置から車両の現在位置と進行方向を取得する。あるいは、ナビゲーション装置が接続されており、ナビゲーション装置から車両の現在位置と進行方向を取得するようにしてもよい。ナビゲーション装置を用いた場合には、マップマッチング処理等による自車位置修正がなされた後の車両の現在位置を取得することができるため、取得する車両情報の精度を向上させることができる。上述した位置算出部12は、レーダ処理モジュール10を用いた検出結果(物体の相対位置)を、車両情報取得部14から入力された車両情報とともに出力する。
【0018】
検出履歴DB20は、レーダ処理モジュール10を用いた物体の検出履歴情報を検出時に取得された車両情報とともに、すなわち、位置算出部12から出力された物体の相対位置と車両情報の両方を格納する。以後、物体の相対位置とその時点における車両情報とを合わせて検出履歴情報として説明を行う。
【0019】
検出履歴更新部22は、位置算出部12から新たに検出履歴情報が出力されたときに検出履歴DB20の更新処理を行う。具体的には、検出履歴DB20に同じ車両情報に対応する検出履歴情報が存在する場合には、新たに出力された検出履歴情報を上書きする処理が行われ、同じ車両情報に対応する検出履歴情報が存在しない場合には、新たに出力された検出履歴情報が追加される。
【0020】
静止物判定部30は、位置算出部12から新たに検出履歴情報が出力されたときに、そのときの車両情報を検索キーとして、新たに検出された物体と一致する物体が存在するか否かを検出履歴DB20に既に格納されている検出履歴情報に基づいて検索する。
【0021】
静止物DB32は、静止物判定部30によって静止物として判定された物体に関する情報を静止物情報として格納する。この静止物情報は、後に車両情報を検索キーとして同一の物品を検索するためのものであり、検出履歴情報と同一内容(車両情報、静止物の相対位置)が含まれている。
【0022】
移動物判定部40は、静止物DB32に格納されている静止物情報を用いて移動物の判定を行う。具体的には、移動物判定部40は、位置算出部12から新たな検索履歴情報が出力されたときに、この検索履歴情報に含まれる車両情報を検索キーとして、静止物DB32に同じ内容を有する静止物情報が格納されているか否かを検索する。その結果、同じ内容の静止物情報が格納されていないことが確認された場合には、新たな検索履歴情報で特定される物体が移動物と判定される。なお、新たな検索履歴情報に基づいて静止物判定部30によって静止物と判定された物体は、この判定の時点で移動物でないことが明らかとなるため、移動物判定部40は、静止物判定部30による判定結果も加味して移動物判定を行うことが望ましい。
【0023】
出力制御部50は、移動物判定部40によって移動物であると判定された物体の存在を車両の運転者に通知する。具体的には、出力制御部50は、自車両位置を中心にしてどの方向に移動物(車両走行中の場合を想定しているので車両)が接近しているかを示す通知画像を表示装置52に表示することにより、警報出力を行う。なお、この表示動作と並行して、所定の通知音をスピーカ(図示せず)から出力するようにしてもよい。
【0024】
上述したレーダ処理モジュール10、位置算出部12が物体検出手段に、車両情報取得部14が車両情報取得手段に、検出履歴DB20が検出履歴格納手段に、静止物判定部30が検出履歴検索手段、静止物判定手段に、移動物判定部40が移動物判定手段に、静止物DB32が静止物情報格納手段に、出力制御部50、表示装置52が通知手段にそれぞれ対応する。
【0025】
本実施形態の車両周辺物体検知装置はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。図2は、走行中に車両周辺の静止物および移動物を検知する動作手順を示す流れ図である。位置算出部12は、レーダ処理モジュール10の探知範囲において物体を検出したか否かを判定しており(ステップ100)、検出しない場合には否定判断を行ってこの判定を繰り返す。また、物体を検出した場合にはステップ100の判定において肯定判断が行われる。この物体の検出動作の後、あるいは並行して、車両情報取得部14は、車両情報を取得し(ステップ101)、位置算出部12は、物体の位置とともにこの取得した車両情報を合わせた検出履歴情報を出力する(ステップ102)。
【0026】
次に、静止物判定部30は、この出力された検出履歴情報と、検出履歴DB20に格納されている検出履歴情報とに基づいて、検出された物体が静止物か否かの判定を行う(ステップ103)。静止物の場合には肯定判断が行われ、静止物判定部30は、静止物DB32の内容を更新する(ステップ104)。また、検出履歴更新部22は、位置算出部12から出力された検出履歴情報を用いて検出履歴DB20の内容を更新する(ステップ105)。
【0027】
次に、移動物判定部40は、位置算出部12から出力されて検出履歴情報と、静止物DB32に格納されている静止物情報とに基づいて、新たに検出された物体が移動物であるか否かを判定する(ステップ106)。移動物でない場合には否定判断が行われ、ステップ100に戻って物体検出判定動作が行われる。また、移動物である場合にはステップ106の判定において肯定判断が行われ、次に、出力制御部50は、検出した移動物に関する警報出力を行う(ステップ107)。その後、ステップ100に戻って物体検出判定動作が行われる。
【0028】
図3は、始めて走行した道路において物体を検出した場合の検出履歴情報の内容を示す図である。図3において、Gは自車位置を、Gから延びる矢印は自車両の進行方向をそれぞれ示している。位置算出部12から、図3(A)に示す検出履歴情報が出力された場合を考える。A、B、Cのそれぞれは車両周辺で検出された物体を示している。始めて走行した道路の場合には、同じ自車位置および進行方向(同じ車両情報)に対応する検出履歴情報が検出履歴DB20には格納されていない(図3(B))。この場合には、検出履歴更新部22は、図3(A)に示した内容の検出履歴情報を検出履歴DB20に追加する(図3(C))。
【0029】
図4は、複数回走行した道路において物体を検出した場合の検出履歴情報の内容と静止物判定の結果を示す図である。図3に示した場合と同じ道路の同じ箇所を2回目に通過する場合について示されている。位置算出部12から、図4(A)に示す検出履歴情報が出力された場合を考える。今回は、車両周辺でA、C、Eで示す3つの物体が検出された。この時点では、図4(B)に示すように、車両周辺にA、B、Cで示す3つの物体が含まれる検出履歴情報が検出履歴DB20に格納されている。静止物判定部30は、新たに検出された検出履歴情報(図4(A))と、検出履歴DB20に格納された同じ車両情報を有する検出履歴情報(図4(B))とを比較し、同じ位置に検出された物体A、Cを静止物として判定する(図4(C))。この判定結果は、静止物情報として静止物DB32に格納される。なお、検出履歴情報を検出履歴DB20に格納する場合と同様に、車両情報とともに物体A、Cの相対位置を含む静止物情報が静止物DB32に格納される。
【0030】
図5は、複数回走行した道路において物体を検出した場合の移動物判定の結果を示す図である。なお、図5を用いて説明する移動物判定は、図4に示した静止物判定を行った直後に続けて行われる。図5(A)に示したように、車両周辺でA、C、Eで示す3つの物体が検出されてこれを内容とする検出履歴情報が位置算出部12から出力されると、移動物判定部40は、その時点で静止物DBに格納された同じ車両情報を有する静止物情報を読み出し(図5(B))、これらの新たに出力された検出履歴情報と読み出した静止物情報とを比較し、位置が一致しない物体Eを移動物として判定する(図5(C))。
【0031】
道路上あるいは道路周辺に静止物があったときに、この道路を複数回走行すると、毎回同じ状況でこの静止物の検出が行われるはずである。したがって、この静止物の検出履歴情報を検出履歴DB20に格納しておいて、次にその位置を走行し、同じ検出動作が繰り返されたときにその検出された物体を静止物として判定することにより、精度の高い正確な静止物の検知を行うことが可能になる。特に、車両の現在位置と進行方向を車両情報とすることにより、道路に沿って同じ位置、同じ向きに走行した場合に物体検出の再現性があるときに、この物体を静止物として確実に判定することができる。また、静止物判定部30によって静止物として判定された物体以外を、移動物判定部40によって移動物として判定している。これにより、検出された物体から、正確に検知された静止物を除くことにより、移動物検知の精度も上げることができる。
【0032】
また、静止物判定部30によって静止物として判定された物体に関する情報を静止物情報として格納する静止物DB32を備えることにより、静止物として判定された物体については再度この判定を行うことなく移動物の判定を行うことができるため、移動物判定の手順を簡略化することができる。また、出力制御部50によって車両周辺の移動物の存在を運転者に知らせることにより、注意を喚起することができる。
【0033】
図6は、図1に示した車両周辺物体検知装置の変形例を示す図である。図6に示す車両周辺物体検知装置は、図1に示した構成に対して、地図DB(データベース)60が追加された点が異なっている。地図DB60には、交差点等の道路状態に関する情報を含む地図データが格納されている。位置算出部12は、レーダ処理モジュール10を用いた検出結果(物体の相対位置)に、車両情報取得部14によって取得した車両の進行方向と、地図DB60から取得した道路状態に関する情報とを付加した検出履歴情報を出力する。すなわち、図1に示した構成では、車両情報として車両の現在位置と進行方向を含んでいたのに対し、図6に示した構成では、車両情報として車両の進行方向とそのときの道路状態を含む点が異なっており、検出履歴情報の内容が変更されている。車両情報と検索キーとして静止物判定部30による静止物判定、静止物情報の更新、移動物判定部40による移動物判定を行う点は同じである。
【0034】
このように、車両情報に道路状態を含ませることにより、信号機や道路標識等のように交差点等の道路状態(道路形状)にあわせて設置されている静止物が存在する場合に、道路周辺の静止物を正確に検知することが可能になる。特に、地図DB60に格納されている地図データに基づいて道路状態を判定する場合には、車両情報取得部14によって取得される車両の現在位置から進行方向前方のこれから走行する道路の道路状態を走行前に知ることができるため、過去の走行回数とは関係なく全く走行したことのない道路についても道路上あるいは道路周辺の静止物を検知することが可能になる。
【0035】
図7は、他の実施形態の車両周辺物体検知システムの構成を示す図である。図7に示す車両周辺物体検知システムは、車両周辺物体検知装置100と、静止物DB更新装置200を備えている。車両周辺物体検知装置100は、図1に示した車両周辺物体検知装置から検出履歴DB20、検出履歴更新部22、静止物判定部30を取り除くとともに、メモリカードIF(インタフェース)部70を追加した構成を有している。また、静止物DB更新装置200は、これらの取り除いた構成(検出履歴DB20、検出履歴更新部22、静止物判定部30)と、静止物DB32A、メモリカードIF部80とを備えている。2つの静止物DB32、32Aには、同じ内容の静止物情報が格納される。静止物DB更新装置200は、車両の外部に設置されており、例えばパーソナルコンピュータを用いて実現することができる。
【0036】
車両周辺物体検知装置100と静止物DB更新装置200の間では、メモリカードIF部70、80に装着可能な共通のメモリカード90を用いて情報の入出力が行われる。車両周辺物体検知装置100において、位置算出部12から新たに検出された物体についての検出履歴情報が出力されると、この検出履歴情報はメモリカード90を介して静止物DB更新装置200内の検出履歴更新部22と静止物判定部30に入力される。また、静止物判定部30による静止物判定が行われ、その結果として静止物DB32に格納された静止物情報の更新が行われると、この更新結果がメモリカード90を介して車両周辺物体検知装置100内の静止物DB32に送られ、この更新結果が反映される。
【0037】
このように、静止物であるか否かの判定を車両外部のパーソナルコンピュータ等を用いた静止物DB更新装置200によって行うことが可能になるため、車載機において行う移動物検知を、処理能力が比較的低い処理装置を用いた車両周辺物体検知装置100によって行ったり、移動物検出の処理時間を短縮することが可能になる。なお、車両周辺物体検知装置100と静止物DB更新装置200との間の情報の入出力をメモリカード90を用いて行う場合について説明したが、MD(ミニディスク)やCD−RW等の他の記録メディアを用いて行うようにしてもよい。この場合には、メモリカードIF部70、80の変わりにこれらの記録メディア用の読み書き装置を備えればよい。
【0038】
図8は、図7に示した車両周辺物体検知システムの変形例を示す図である。図8に示す車両周辺物体検知システムは、車両周辺物体検知装置100Aと静止物DB更新サーバ200Aとを備え、これらの間をネットワーク300を介した通信回線で接続するものである。車両周辺物体検知装置100Aは、図7に示した車両周辺物体検知装置100に対して、メモリカードIF部70を通信処理部72に置き換えた構成を有している。この通信処理部72は、携帯電話(図示せず)等の無線通信によってネットワーク300との間で回線接続を行う。また、静止物DB更新サーバ200Aは、図7に示した静止物DB更新装置200に対して、メモリカードIF部80を通信処理部82に置き換えた構成を有している。この通信処理部82は、専用回線あるいは汎用回線を介してネットワーク300との間で回線接続を行う。
【0039】
図8に示した車両周辺物体検知システムは、車両周辺物体検知装置100Aから送られてくる検出履歴情報を用いて静止物DB更新サーバ200Aにおいて静止物判定、静止物情報の更新を行う点は、図7に示したシステムと基本的に同じである。しかも、静止物DB更新サーバ200Aは、複数の車両のそれぞれに備わった車両周辺物体検知装置100Aから送られてくる多くの検出履歴情報を用いて静止物判定、静止物情報の更新を行っている。
【0040】
このように、静止物であるか否かの判定を車両外部において静止物DB更新サーバ200Aによって行うことが可能になるため、車載機において行う移動物検知を、処理能力が比較的低い処理装置を用いた車両周辺物体検知装置100Aによって行ったり、移動物検出の処理時間を短縮することが可能になる。また、車両外部の静止物DB更新サーバ200Aにおいて、複数の車両から送られてくる検出履歴情報に基づいて静止物判定を行い、その結果を各車両に配信することが可能になるため、より精度の高い静止物検知および移動物検知を行うことが可能になる。また、自車両が走行したことのない道路であっても他の車両が走行することにより静止物情報の蓄積が行われるため、全く走行したことのない道路であっても移動物判定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態の車両周辺物体検知装置の構成を示す図である。
【図2】走行中に車両周辺の静止物および移動物を検知する動作手順を示す流れ図である。
【図3】始めて走行した道路において物体を検出した場合の検出履歴情報の内容を示す図である。
【図4】複数回走行した道路において物体を検出した場合の検出履歴情報の内容と静止物判定の結果を示す図である。
【図5】複数回走行した道路において物体を検出した場合の移動物判定の結果を示す図である。
【図6】図1に示した車両周辺物体検知装置の変形例を示す図である。
【図7】他の実施形態の車両周辺物体検知システムの構成を示す図である。
【図8】図7に示した車両周辺物体検知システムの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10 レーダ処理モジュール
12 位置算出部
14 車両情報取得部
20 検出履歴DB(データベース)
22 検出履歴更新部
30 静止物判定部
32、32A 静止物DB
40 移動物判定部
50 出力制御部
52 表示装置
60 地図DB
70、80 メモリカードIF(インタフェース)部
72、82 通信処理部
90 メモリカード
100、100A 車両周辺物体検知装置
200 静止物DB更新装置
200A 静止物DB更新サーバ
300 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の物体を検出する物体検出手段と、
車両の走行状態を含む車両情報を取得する車両情報取得手段と、
前記物体検出手段によって検出された物体の検出履歴情報を、検出時に前記車両情報取得手段によって取得された車両情報とともに格納する検出履歴格納手段と、
新たに前記物体検出手段によって物体が検出されたときに、そのときの前記車両情報を検索キーとして、この検出された物体と一致する物体が存在するか否かを前記検出履歴情報に基づいて検索する検出履歴検索手段と、
前記検出履歴検索手段によって、一致する物体の存在が確認されたときに、この物体を静止物として判定する静止物判定手段と、
を備えることを特徴とする車両周辺物体検知装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記物体検出手段によって検出された物体であって、前記静止物判定手段によって静止物として判定された物体以外を移動物として判定する移動物判定手段をさらに備えることを特徴とする車両周辺物体検知装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記静止物判定手段によって静止物として判定された物体に関する情報を静止物情報として格納する静止物情報格納手段をさらに備え、
前記移動物判定手段は、前記静止物判定手段による判定結果に代えて、あるいはこの判定結果とともに前記静止物情報格納手段に格納されている静止物情報を用いて移動物の判定を行うことを特徴とする車両周辺物体検知装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記移動物判定手段によって移動物であると判定された物体の存在を車両の運転者に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする車両周辺物体検知装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記物体検出手段は、車両周辺を探知範囲とするレーダ装置であることを特徴とする車両周辺物体検知装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記車両情報取得手段は、車両の現在位置と進行方向を前記車両情報として取得し、
前記車両情報取得手段によって取得された車両情報を用いて、前記検出履歴格納手段による前記検出履歴情報の格納動作と、前記検出履歴検索手段による検索動作とを行うことを特徴とする車両周辺物体検知装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記検出履歴検索手段は、車両の現在位置と進行方向とに基づいて、新たに前記物体検出手段によって検出された物体が、前記検出履歴情報が格納された時点において同じ位置に存在するか否かを確認することにより、この検出された物体と一致する物体が存在するか否かを検索することを特徴とする車両周辺物体検知装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記車両情報取得手段は、車両の走行位置に対応する道路状態と車両の進行方向を前記車両情報として取得し、
前記車両情報取得手段によって検出された車両情報を用いて、前記検出履歴格納手段による前記検出履歴情報の格納動作と、前記検出履歴検索手段による検索動作とを行うことを特徴とする車両周辺物体検知装置。
【請求項9】
請求項8において、
車両の走行位置に対応する道路形状が格納されている地図データ格納手段をさらに備えることを特徴とする車両周辺物体検知装置。
【請求項10】
請求項3に記載された前記検出履歴格納手段、前記検出履歴検索手段、前記静止物判定手段を車両外部に配置するとともに、前記物体検出手段、前記車両情報取得手段、前記移動物判定手段、前記静止物情報格納手段を車両内部に配置することを特徴とする車両周辺物体検知システム。
【請求項11】
請求項3に記載された前記検出履歴格納手段、前記検出履歴検索手段、前記静止物判定手段を車両外部に配置するとともに、前記物体検出手段、前記車両情報取得手段、前記移動物判定手段、前記静止物情報格納手段を車両内部に配置し、前記車両外部と前記車両内部との間の情報の入出力を通信によって行うことを特徴とする車両周辺物体検知システム。
【請求項12】
請求項11において、
前記車両外部に配置された前記検出履歴格納手段、前記検出履歴検索手段、前記静止物判定手段はネットワークに接続されたサーバに備わっており、
前記物体検出手段、前記車両情報取得手段、前記移動物判定手段、前記静止物情報格納手段が備わった複数の車両と前記サーバとの間で前記ネットワークを介して情報の入出力を行うことを特徴とする車両周辺物体検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−65703(P2007−65703A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246965(P2005−246965)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】