説明

車両姿勢制御装置

【課題】所定の乗車位置における乗り心地の向上に貢献する車両姿勢制御装置を提供する。
【解決手段】車両姿勢制御装置4は、車両1の姿勢を制御する前輪制御装置6および後輪制御装置7を備える。前輪制御装置6および後輪制御装置7の少なくとも一方は、車両1に乗っている乗員の数である乗員数および車両1に乗っている乗員の位置である乗車位置を検出する乗車センサ47の出力に基づいて車両1の姿勢を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の姿勢を制御する姿勢制御部を備える車両姿勢制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両運動制御装置は、ハンドル操作角および車速に基づいて車両の目標旋回量および目標姿勢角を決定する目標挙動決定手段と、目標旋回量に基づいて左右輪駆動力差を設定する駆動力配分決定手段と、左右輪駆動力差および前後輪駆動力配分を制御することによって車両挙動を制御する車両挙動制御手段とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−349887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、車両の操縦性を向上させるために、車両姿勢制御装置は、車体すべり角を0に近づけることにより、車両の進行方向と車両の前方とが一致するように車両の姿勢を制御する。
【0005】
ところで、特許文献1は、乗り心地を向上させるための車両の姿勢制御について特に言及していない。運転者の乗車位置における乗り心地を考慮して車両姿勢制御装置が車両の姿勢を制御する場合には、運転者の乗車位置から離れた後部の乗車位置における乗り心地が良くないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、所定の乗車位置における乗り心地の向上に貢献する車両姿勢制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、車両の姿勢を制御する姿勢制御部を備える車両姿勢制御装置において、前記姿勢制御部は、前記車両に乗っている乗員の数である乗員数および前記車両に乗っている乗員の位置である乗車位置を検出するセンサの出力に基づいて前記車両の姿勢を制御することを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、車両の姿勢が、乗員数および乗車位置に応じて変化するため、車両姿勢制御装置は、車両のヨー回転中心位置を乗員数および乗車位置に応じて変化させることができる。そのため、車両姿勢制御装置が、乗員数および乗車位置に依存せずに車両のヨー回転中心位置を変化させる場合に比べて、所定の乗車位置における乗り心地を向上することが可能となる。
【0009】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、請求項1に記載の車両姿勢制御装置において、乗員が乗る乗車位置を通り、かつ、前記車両の左右方向に延びる列を「乗車列」とし、前記車両が有する複数の乗車列のいずれか1列に乗員が乗っていることを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記1列に近づけることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、複数の乗車列のうち1列のみに乗員が乗っているとき、車両のヨー回転中心位置が上記1列に近づくため、同1列における乗り心地を向上することが可能である。
【0011】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、請求項2に記載の車両姿勢制御装置において、所定の乗員が乗る乗車位置を通る前記乗車列を「第1列」とし、前記第1列よりも前記車両の後方側に位置する前記乗車列を「第2列」とし、前記第1列および前記第2列に乗員が乗っていることを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記第1列と前記第2列の中間に移動させることを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、第1列の乗員数と第2列の乗員数とが同じであるとき、車両のヨー回転中心位置が第1列と第2列の中間に移動する。このため、例えば、ヨー回転中心位置が第1列に位置する場合に比べ、第2列における乗り心地を向上することが可能である。
【0013】
(4)第4の手段は、請求項4に記載の発明すなわち、請求項3に記載の車両姿勢制御装置において、前記第1列の乗員数と前記第2列の乗員数とが同じであることを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記1列と前記第2列の中間に位置する中間部に近づけることを要旨とする。
【0014】
(5)第5の手段は、請求項5に記載の発明すなわち、請求項4に記載の車両姿勢制御装置において、前記第1列の乗員数が前記第2列の乗員数に比べて多いことを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記中間部よりも前記車両の前方側に位置する前側中間部に近づけることを要旨とする。
【0015】
この発明によれば、第1列の乗員数が第2列の乗員数に比べて多いとき、車両のヨー回転中心位置が前側中間部に近づく。このため、例えば、ヨー回転中心位置を中間部に近づける場合に比べ、多数の乗員が乗っている第1列における乗り心地を向上することが可能である。
【0016】
(6)第6の手段は、請求項6に記載の発明すなわち、請求項4または5に記載の車両姿勢制御装置において、前記第1列の乗員数が前記第2列の乗員数に比べて少ないことを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記中間部よりも前記車両の後方側に位置する後側中間部に近づけることを要旨とする。
【0017】
この発明によれば、第2列の乗員数が第1列の乗員数に比べて多いとき、車両のヨー回転中心位置が後側中間部に近づく。このため、例えば、ヨー回転中心位置を中間部に近づける場合に比べ、多数の乗員が乗っている第2列における乗り心地を向上することが可能である。
【0018】
(7)第7の手段は、請求項7に記載の発明すなわち、請求項2に記載の車両姿勢制御装置において、所定の乗員が乗る乗車位置を通る前記乗車列を「第1列」とし、前記第1列よりも前記車両の後方側に位置する前記乗車列を「第2列」とし、前記第2列よりも前記車両の後方側に位置する前記乗車列を「第3列」とし、前記第1列の乗員数と前記第3列の乗員数とが同じであることを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記第1列と前記第3列の中間に位置する中間部に移動させることを要旨とする。
【0019】
この発明によれば、第1列の乗員数と第3列の乗員数とが同じであるとき、車両のヨー回転中心位置が第1列と第3列の中間に移動する。このため、例えば、ヨー回転中心位置が第1列に位置する場合に比べ、第3列における乗り心地を向上することが可能である。
【0020】
(8)第8の手段は、請求項8に記載の発明すなわち、請求項7に記載の車両姿勢制御装置において、前記第1列の乗員数が前記第3列の乗員数に比べて多いことを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記中間部よりも前記車両の前方側に位置する前側中間部に近づけることを要旨とする。
【0021】
この発明によれば、第1列の乗員数が第3列の乗員数に比べて多いとき、車両のヨー回転中心位置が前側中間部に近づく。このため、例えば、ヨー回転中心位置を中間部に近づける場合に比べて、多数の乗員が乗っている第1列における乗り心地を向上することが可能である。
【0022】
(9)第9の手段は、請求項9に記載の発明すなわち、請求項7または8に記載の車両姿勢制御装置において、前記第1列の乗員数が前記第3列の乗員数に比べて少ないことを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記中間部よりも前記車両の後方側に位置する後側中間部に近づけることを要旨とする。
【0023】
この発明によれば、第3列の乗員数が第1列の乗員数に比べて多いとき、車両のヨー回転中心位置が後側中間部に移動する。このため、例えば、ヨー回転中心位置を中間部に近づける場合に比べ、多数の乗員が乗っている第3列における乗り心地を向上することが可能である。
【0024】
(10)第10の手段は、請求項10に記載の発明すなわち、請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両姿勢制御装置において、前記センサは、乗員が着座する座席に設けられた荷重センサであることを要旨とする。
【0025】
この発明によれば、センサは、乗員が座席に着座することによって、乗員が乗っていることを検出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、所定の乗車位置における乗り心地を向上することに貢献する車両姿勢制御装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態の車両姿勢制御装置について、その全体構成を模式的に示す構成図。
【図2】同実施形態の車両姿勢制御装置について、乗員が可能な位置を示す車両の模式図。
【図3】同実施形態の車両姿勢制御装置について、車体の横すべり角およびヨー回転中心位置を示す模式図。
【図4】同実施形態の車両姿勢制御装置により実行される車両姿勢制御処理について、その手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態の車両姿勢制御装置により実行される目標回転中心位置設定処理について、その手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態の車両姿勢制御装置について、目標回転中心位置を第一列部に設定するときの乗員の乗車態様を示す模式図。
【図7】同実施形態の車両姿勢制御装置について、目標回転中心位置を中間部にするときの乗員の乗車態様を示す模式図。
【図8】同実施形態の車両姿勢制御装置について、目標回転中心位置を前側中間部にするときの乗員の乗車態様を示す模式図。
【図9】同実施形態の車両姿勢制御装置について、目標回転中心位置を後側中間部にするときの乗員の乗車態様を示す模式図。
【図10】本発明の第2実施形態の車両姿勢制御装置ついて、乗員が可能な位置を示す車両の模式図。
【図11】同実施形態の車両姿勢制御装置により実行される目標回転中心位置設定処理について、その手順を示すフローチャート。
【図12】同実施形態の車両姿勢制御装置について、目標回転中心位置を第一列部にするときの乗員の乗車態様を示す模式図。
【図13】同実施形態の車両姿勢制御装置について、目標回転中心位置を中間部にするときの乗員の乗車態様を示す模式図。
【図14】同実施形態の車両姿勢制御装置について、目標回転中心位置を前側中間部にするときの乗員の乗車態様を示す模式図。
【図15】同実施形態の車両姿勢制御装置について、目標回転中心位置を後側中間部にするときの乗員の乗車態様を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。なお、図中の矢印Xは、車両1の前方および後方を含む前後方向を示す。また、図中の矢印Yは、車両1の左方および右方を含む左右方向を示す。前後方向と左右方向は互いに直交する直線方向である。前後方向および左右方向に直交する直線方向を、上方および下方を含む上下方向とする。前後方向、左右方向、および上下方向は、車両1に固定された座標系の方向を示している。
【0029】
図1に、車体2と車輪3と車両姿勢制御装置4とを有する車両1の全体構成を示す。
前側の車輪3である前輪31,32は、前側の車軸Aである前軸AFを回転中心軸として回転する。左前輪31は、車体2の左前側部位に位置する。右前輪32は、車体2の右前側部位に位置する。
【0030】
後側の車輪3である後輪33,34は、後側の車軸Aである後軸ARを回転中心軸として回転する。左後輪33は、車体2の左後側部位に位置する。右後輪34は、車体2の右後側部位に位置する。
【0031】
ステアリング装置12は、前輪31,32と、前輪31,32の舵角を制御するための操舵ハンドル11とを接続する。前輪31,32の舵角は、操舵ハンドル11が操作されることによって変化する。
【0032】
車両姿勢制御装置4は、車体すべり角推定装置5と、車輪速センサ41〜44と、加速度センサ45と、ヨーレートセンサ46と、乗車センサ47と、メモリ48と、演算装置49と、前輪制御装置6と、後輪制御装置7とを有する。なお、車両1の姿勢を制御する前輪制御装置6および後輪制御装置7は「姿勢制御部」に相当する。
【0033】
車体すべり角推定装置5は、車体2の横すべり角を推定する。車体2の横すべり角は、例えば、車両1のヨーレートおよび加速度と、路面の摩擦係数とに基づいて算出される。なお、路面の摩擦係数はその推定精度が低ければ、横すべり角の推定精度が低くなるため、路面の摩擦係数に代えて車輪3に作用する横力に基づいて横すべり角が算出されることが好ましい。車輪3に作用する横力はタイヤ横力センサ(図示略)が検出する。
【0034】
車輪速センサ41は、左前輪31の車輪速を検出する。車輪速センサ42は、右前輪32の車輪速を検出する。車輪速センサ43は、左後輪33の車輪速を検出する。車輪速センサ44は、右後輪34の車輪速を検出する。
【0035】
加速度センサ45は、前後方向および左右方向および上下方向の加速度を検出する。
ヨーレートセンサ46は、上下方向を回転の中心とする車両1の回転の角速度であるヨーレートを検出する。
【0036】
乗車センサ47は、乗員数および乗員位置を検出する。乗員数は、車両1に乗っている乗員の数である。また、乗員位置は、車両1に乗っている乗員の位置である。
メモリ48は、演算装置49が実行するプログラムと、同プログラムに用いる情報を記憶する。
【0037】
演算装置49は、ECU(Electronic Control Unit)により構成される集積回路である。演算装置49は、メモリ48に記憶されているプログラムに基づいて車両姿勢制御処理および目標回転中心位置設定処理を実行する。
【0038】
車両姿勢制御処理において、演算装置49は、乗車センサ47による乗員数および乗車位置の検出結果に基づいて、車両1の姿勢を所定の目標姿勢に近づけるための制御量を算出する。演算装置49は算出した制御量を前輪制御装置6および後輪制御装置7の少なくとも一方に出力する。前輪制御装置6および後輪制御装置7は、演算装置49が算出した制御量に基づいて動作する。
【0039】
前輪制御装置6は、操舵ハンドル11の舵角と連動せずに前輪31,32の舵角を制御することが可能なアクティブステアリング装置である。前輪制御装置6は、前輪31,32を制御して車両1の姿勢を制御する。上下方向を回転の中心とする車両1について、その回転の中心の位置(以下、「ヨー回転中心位置」)が、後軸ARよりも前軸AFに近い位置にあるときは、前輪31,32の横すべり角は、後輪33,34の横すべり角よりも小さく、前輪31,32は後輪33,34に比べて路面をグリップしている。よって、このとき、前輪制御装置6は、前輪31,32を制御することによって、車両1の姿勢を効果的に制御する。
【0040】
後輪制御装置7は、駆動輪である後輪33,34について、左後輪33の駆動力と右後輪34の駆動力の配分比率を制御することが可能な左右駆動力配分装置である。後輪制御装置7は、後輪33,34を制御して車両1の姿勢を制御する。ヨー回転中心位置が、前軸AFよりも後軸ARに近い位置にあるときは、後輪33,34の横すべり角は、前輪31,32の横すべり角よりも小さく、後輪33,34は前輪31,32に比べて路面をグリップしている。よって、このとき、後輪制御装置7は、後輪33,34を制御することによって、車両1の姿勢を効果的に制御する。
【0041】
図2を参照して、車両1において乗車可能な位置を説明する。
車両1は、乗員が着座する座席として、車両1の運転者が着座する運転席61と、左右方向において運転席61の隣に位置する助手席62と、運転席61および助手席62の後方に位置する後席63とを有する。
【0042】
車両1は、乗員が乗る乗車位置(すなわち座席位置)を通り、かつ、車両1の左右方向に延びる列を「乗車列」として、1列目の乗車列である第1列と、2列目の乗車列である第2列とを有する。第1列は、運転席61および助手席62を乗車位置とする乗車列である。第2列は、後席63を乗車位置とする乗車列である。なお、座席位置は、乗員の操作により変位しうるが、予め乗車列の位置が定められていてもよい。本実施形態では、車両1の前後方向における乗車列の位置は予め決められており、乗員の数や位置によらず変化しないものとする。
【0043】
運転席61は、荷重センサ47Aを内蔵している。また、助手席62は、荷重センサ47Bを内蔵している。後席63は、左右方向において間隔をあけて位置する荷重センサ47C,47Dを内蔵している。
【0044】
荷重センサ47A〜47Dは、乗車センサ47を構成している。図1の演算装置49は、各荷重センサ47A〜47Dの出力に基づいて、第1列における乗員数と、第2列における乗員数を検出する。
【0045】
図3を参照して、車両1の姿勢の制御により移動するヨー回転中心位置について説明する。
車両1が旋回しながら走行しているとき、車両1にはヨーレートが発生する。このとき、車両1が旋回している矢印γが示す方向をヨーレートの正の方向とし、矢印γの反対側方向をヨーレートの負の方向とする。
【0046】
角βfは、前軸AFにおける車体2の横すべり角(以下、「横すべり角βf」)を示している。横すべり角βfは、車両1の左右中心軸Cと、車両1の前側部位である前軸AFが進む方向とのなす角度を示す。前軸AFが進む方向が、車両1の左右中心軸Cに対して車両1の旋回方向、すなわちヨーレートの正の方向を向いているときには、横すべり角βfを正の数により表す。また、前軸AFが進む方向が、車両1の左右中心軸Cに対して車両1の旋回方向の反対側、すなわちヨーレートの負の方向を向いているとき、横すべり角βfを負の数により表す。
【0047】
角βrは、後軸ARにおける車体2の横すべり角(以下、「横すべり角βr」)を示している。横すべり角βrは、車両1の左右中心軸Cと、車両1の後側部位である後軸ARが進む方向とのなす角度を示す。後軸ARが進む方向が、車両1の左右中心軸Cに対して車両1の旋回方向、すなわちヨーレートの正の方向を向いているときには、横すべり角βrを正の数により表す。また、後軸ARが進む方向が、車両1の左右中心軸Cに対して車両1の旋回方向の反対側、すなわちヨーレートの負の方向を向いているとき、横すべり角βrを負の数により表す。
【0048】
点Nは、車両1のヨー回転中心位置を示している。ヨー回転中心位置は、ヨー回転中心位置から前軸AFまでの距離Lfと、ヨー回転中心位置から後軸ARまでの距離Lrにより決まる。距離Lfは、下記数式(1)から算出できる。距離Lrは、下記数式(2)から算出できる。
【0049】
【数1】

【0050】
【数2】

【0051】
数式においては、距離Lfを「Lf」とし、ホイールベースを「L」とし、横すべり角βfを「βf」としている。ホイールベースは、前後方向において前軸AFから後軸ARまでの距離に相当する。「Lf」が正の数であれば、ヨー回転中心位置は前軸AFよりも後方に位置することを示す。「Lf」が負の数であれば、ヨー回転中心位置は前軸AFよりも前方に位置することを示す。
【0052】
ヨー回転中心位置は、横すべり角が「0」となる位置であって、上記(1)および(2)から算出されるように、横すべり角βfと横すべり角βrと距離Lfと距離Lrは、「Lf・βr=−βf・Lr」の関係を有する。
【0053】
なお、横すべり角βf,βrは、車両1の任意の点の横すべり角に基づいて算出できる。すなわち、車体すべり角推定装置5が推定した任意の一点における横すべり角に基づいて横すべり角βf,βrを算出することができる。車体すべり角推定装置5が、車両1の重心における横すべり角を推定した場合には、横すべり角βfは、下記数式(3)から算出できる。また、横すべり角βrは、下記数式(4)から算出できる。
【0054】
【数3】

【0055】
【数4】

【0056】
数式においては、車両1の重心における横すべり角を「β」とし、車速を「V」とし、ヨーレートを「γ」とし、前後方向における重心から前軸AFまでの距離を「Cf」とし、前後方向における重心から後軸ARまでの距離を「Cr」としている。
【0057】
図1の前輪制御装置6および後輪制御装置7が、前輪31,32および後輪33,34を制御することにより、横すべり角βf,βrは変化するため、前輪制御装置6および後輪制御装置7は、車両1の姿勢を制御することにより、ヨー回転中心位置を移動させる。このとき、前輪制御装置6および後輪制御装置7は、所定の目標回転中心位置に近づくようにヨー回転中心位置を移動させる。
【0058】
図4を参照して、車両姿勢制御処理について説明する。図4に示す一連の処理は、ステップS1およびS4を除いて、演算装置49が行う。
ステップS1では、車体すべり角推定装置5が車体2の横すべり角を推定する。横すべり角の推定結果は車体すべり角推定装置5から演算装置49に入力される。演算装置49は、横すべり角に基づいて走行中の車両1の姿勢を検出する。
【0059】
ステップS2では、乗車センサ47を用いて、乗員数および乗車位置を検出する。
ステップS10では、ステップS3において検出した乗員数および乗員位置に基づいて、目標回転中心位置設定処理を行う。目標回転中心位置設定処理において決まる目標回転中心位置はメモリ48が記憶する。
【0060】
ステップS3では、ステップS2で検出された車両1の姿勢から取得できるヨー回転中心位置と、ステップS10で設定された目標回転中心位置とに基づいて、車両1のヨー回転中心位置を所定の目標回転中心位置に近づけるための制御量を算出する。制御量は、前輪制御装置6による前輪31,32の制御量、後輪制御装置7による後輪33,34の制御量に相当する。前輪31,32の制御量は、前輪31,32の舵角の変化量に相当する。また、後輪33,34の制御量は、左後輪33の駆動力と右後輪34の駆動力の差に相当する。
【0061】
ステップS4では、演算装置49が算出した制御量に基づいて、前輪制御装置6および後輪制御装置7の少なくとも一方が、車両1の姿勢を制御する。すなわち、車両1のヨー回転中心位置がステップS10で設定された目標回転中心位置に近づく。
【0062】
図5を参照して、目標回転中心位置設定処理について説明する。図5に示す一連の処理は、演算装置49が行う。また、ステップS11,S13,S15での判断は、乗車センサ47を用いて行う。
【0063】
ステップS11では、乗員が車両1の第1列のみに乗車しているか否かを判定する。ステップS11において、乗員が第1列のみに乗車していると判定したとき、すなわち、乗員が第2列に乗車していないと判定したとき、ステップS12の処理に進む。一方、ステップS11において、乗員が第1列のみに乗車していないと判定したとき、すなわち、乗員が第2列に乗車していると判定したとき、ステップS13の処理に進む。
【0064】
ステップS12では、車両1の目標回転中心位置を、第1列部(以下、「第1列部F」)に設定する。第1列部Fは第1列上に位置する。こうして、目標回転中心位置を第1列部Fに設定することにより、目標回転中心位置設定処理が終了する。
【0065】
ステップ13では、第1列の乗員数と第2列の乗員数は同じであるか否かを判定する。ステップS13において、第1列の乗員数と第2列の乗員数は同じであると判定したとき、ステップS14の処理に進む。一方、ステップS13において、第1列の乗員数と第2列の乗員数は異なると判定したとき、ステップS15の処理に進む。
【0066】
ステップS14では、車両1の目標回転中心位置を、第1列と第2列の中間に位置する中間部(以下、「中間部M」)に設定する。中間部Mは、第1列よりも後方に位置し、かつ、第2列よりも前方に位置する。こうして、目標回転中心位置を中間部Mに設定することにより、目標回転中心位置設定処理が終了する。
【0067】
ステップ15では、第1列の乗員数は第2列の乗員数よりも多いか少ないかを判定する。ステップS15において、第1列の乗員数は第2列の乗員数よりも多いと判定したとき、すなわち、第2列の乗員数は第1の乗員数よりも少ないと判定したとき、ステップS16の処理に進む。一方、ステップS15において、第1列の乗員数は第2列の乗員数よりも少ない、すなわち、第2列の乗員数は第1の乗員数よりも多いと判定したとき、ステップS17の処理に進む。
【0068】
ステップS16では、車両1の目標回転中心位置を、第1列と第2列の中間に位置する前側中間部(以下、「前側中間部Mf」)に設定する。前側中間部Mfは、第1列よりも後方に位置し、かつ、中間部Mよりも前方に位置する。こうして、目標回転中心位置を前側中間部Mfに設定することにより、目標回転中心位置設定処理が終了する。
【0069】
ステップS17では、車両1の目標回転中心位置を、第1列と第2列の中間に位置する後側中間部(以下、「後側中間部Mr」)に設定する。後側中間部Mrは、第2列よりも前方に位置し、かつ、中間部Mよりも後方に位置する。こうして、目標回転中心位置を後側中間部Mrに設定することにより、目標回転中心位置設定処理が終了する。
【0070】
図6〜9を参照して、車両姿勢制御装置4の作用について説明する。図6〜9中の点Tは、ヨー回転中心位置の目標となる目標回転中心位置を示している。図8,9中の丸Mは、中間部Mを示している。本実施形態では、目標回転中心位置は、車両1の左右方向に対する中心を通る線上、すなわち左右中心軸C上に設定される。
【0071】
図6に示されるように、次のとき演算装置49は目標回転中心位置を第1列部Fに設定する。すなわち、図6中の点Tは第1列部Fを示している。
(a)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に乗員が乗車していないとき。
(b)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に乗員が乗車していないとき。
【0072】
第1列部Fが目標回転中心位置であるとき、車両姿勢制御装置4は、ヨー回転中心位置を第1列部Fに近づける。その結果、ヨー回転中心位置は乗員P1の近くに移動して、第1列における車体2の横すべり角は「0」に近づく。
【0073】
図7に示されるように、次のとき演算装置49は目標回転中心位置を中間部Mに設定する。すなわち、図7中の点Tは中間部Mを示している。
(a)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に1人の乗員P2が乗車しているとき。
(b)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に2人の乗員P2が乗車しているとき。
【0074】
中間部Mが目標回転中心位置であるとき、車両姿勢制御装置4は、ヨー回転中心位置を中間部Mに近づける。その結果、ヨー回転中心位置は乗員P1と乗員P2との間に移動する。
【0075】
図8に示されるように、次のとき演算装置49は目標回転中心位置を前側中間部Mfに設定する。すなわち、図8中の点Tは前側中間部Mfを示している。
・第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に1人の乗員P2が乗車しているとき。
【0076】
前側中間部Mfが目標回転中心位置であるとき、車両姿勢制御装置4は、ヨー回転中心位置を前側中間部Mfに近づける。その結果、ヨー回転中心位置は中間部Mよりも乗員P1に近い位置に移動する。
【0077】
図9に示されるように、次のとき演算装置49は目標回転中心位置を後側中間部Mrに設定する。すなわち、図9中の点Tは後側中間部Mrを示している。
・第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に2人の乗員P2が乗車しているとき。
【0078】
後側中間部Mrが目標回転中心位置であるとき、車両姿勢制御装置4は、ヨー回転中心位置を後側中間部Mrに近づける。その結果、ヨー回転中心位置は中間部Mよりも乗員P2に近い位置に移動する。
【0079】
(実施形態の効果)
本実施形態の車両姿勢制御装置4は、以下の効果を奏する。
(1)前輪制御装置6および後輪制御装置7は、車両1に乗っている乗員の数である乗員数および車両1に乗っている乗員の位置である乗車位置を検出する乗車センサ47の出力に基づいて車両1の姿勢を制御する。よって、車両1の姿勢が、乗員数および乗車位置に応じて変化するため、車両姿勢制御装置4は、車両1のヨー回転中心位置を乗員数および乗車位置に応じて変化させることができる。そのため、車両姿勢制御装置4が、乗員数および乗車位置に依存せずに車両1のヨー回転中心位置を変化させる場合に比べて、所定の乗車位置における乗り心地を向上することが可能となる。
【0080】
(2)車両1が有する複数の乗車列のいずれか1列、すなわち第1列のみに乗員が乗っていることを乗車センサ47が検出したとき、前輪制御装置6および後輪制御装置7は、車両1の姿勢を制御して、車両1のヨー回転中心位置を第1列に近づける。このため、第1列における乗り心地を向上することが可能である。
【0081】
(3)第1列および第2列に乗員が乗っていることを乗車センサ47が検出したとき、前輪制御装置6および後輪制御装置7は、車両1の姿勢を制御して、車両1のヨー回転中心位置を第1列と第2列の中間である中間部Mに移動させる。このため、例えば、ヨー回転中心位置が第1列に位置する場合に比べ、第2列における乗り心地を向上することが可能である。
【0082】
(4)第1列の乗員数が第2列の乗員数に比べて多いことを乗車センサ47が検出したとき、前輪制御装置6および後輪制御装置7は、車両1の姿勢を制御して、車両1のヨー回転中心位置を中間部Mよりも車両1の前方側に位置する前側中間部Mfに近づける。このため、例えば、ヨー回転中心位置を中間部Mに近づける場合に比べ、多数の乗員が乗っている第1列における乗り心地を向上することが可能である。
【0083】
(5)第1列の乗員数が第2列の乗員数に比べて少ないことを乗車センサ47が検出したとき、前輪制御装置6および後輪制御装置7は、車両1の姿勢を制御して、車両1のヨー回転中心位置を中間部Mよりも車両1の後方側に位置する後側中間部Mrに近づける。このため、例えば、ヨー回転中心位置を中間部Mに近づける場合に比べ、多数の乗員が乗っている第2列における乗り心地を向上することが可能である。
【0084】
(6)乗車センサ47は、乗員が着座する座席に設けられた荷重センサ47A〜47Dを有する。このため、乗車センサ47を、乗員が座席に着座することによって、乗員が乗っていることを検出することができる。
【0085】
(第2実施形態)
図10〜図15を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、車両1に乗員可能な人数が第1実施形態と異なり、第1実施形態の車両姿勢制御処理を変更したものである。以下では第1実施形態の車両姿勢制御装置4と異なる部分について詳細に説明するとともに、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明の一部または全部を省略する。
【0086】
図10を参照して、第2実施形態の車両1において乗車可能な位置を説明する。
車両1は、乗員が着座する座席として、車両1の運転者が着座する運転席71と、左右方向において運転席71の隣に位置する助手席72と、運転席71および助手席72の後方に位置する2列目シート73と、2列目シート73の後方に位置する3列目シート74とを有する。
【0087】
車両1は、乗員が乗る乗車位置を通り、かつ、車両1の左右方向に延びる列を「乗車列」として、1列目の乗車列である第1列と、2列目の乗車列である第2列と、3列目の乗車列である第3列とを有する。第1列は、運転席71および助手席72を乗車位置とする乗車列である。第2列は、2列目シート73を乗車位置とする乗車列である。第3列は、3列目シート74を乗車位置とする乗車列である。なお、座席位置は、乗員の操作により変位しうるが、予め乗車列の位置が定められていてもよい。本実施形態においても、車両1の前後方向における乗車列の位置は予め決められており、乗員の数や位置によらず変化しないものとする。
【0088】
運転席71は、荷重センサ47Aを内蔵している。助手席72は、荷重センサ47Bを内蔵している。2列目シート73は、左右方向において間隔をあけて位置する荷重センサ47C,47Dを内蔵している。また、3列目シート74は、左右方向において間隔をあけて位置する荷重センサ47E,47Fを内蔵している。
【0089】
荷重センサ47A〜47Fは、乗車センサ47を構成している。図1の演算装置49は、各荷重センサ47A〜47Dの出力に基づいて、第1列における乗員数と、第2列における乗員数と、第3列における乗員数とを検出する。
【0090】
図11を参照して、第2実施形態の目標回転中心位置設定処理について説明する。図11に示す一連の処理は、演算装置49が行う。また、ステップS21,S23,S24,S26での判断は、乗車センサ47を用いて行う。
【0091】
ステップS21では、乗員が車両1の第1列のみに乗車しているか否かを判定する。ステップS21において、乗員が第1列のみに乗車していると判定したとき、すなわち、乗員が第2列および第3列に乗車していないと判定したとき、ステップS22の処理に進む。一方、ステップS21において、乗員が第1列のみに乗車していないと判定したとき、すなわち、乗員が第2列および第3列の少なくとも一方に乗車していると判定したとき、ステップS23の処理に進む。
【0092】
ステップS22では、車両1の目標回転中心位置を、第1列部Fに設定する。こうして、目標回転中心位置を第1列部Fに設定することにより、目標回転中心位置設定処理が終了する。
【0093】
ステップ23では、第1列の乗員数と第3列の乗員数は同じであるか否かを判定する。ステップS23において、第1列の乗員数と第3列の乗員数は異なると判定したとき、ステップS24の処理に進む。一方、ステップS23において、第1列の乗員数と第3列の乗員数は同じであると判定したとき、ステップS25の処理に進む。
【0094】
ステップS24では、乗員が第2列に乗車しているか否かを判定する。ステップS24において、乗員が第2列に乗車していないと判定したとき、ステップS25の処理に進む。一方、ステップS24において、乗員が第2列に乗車していると判定したとき、ステップS26の処理に進む。
【0095】
ステップS25では、車両1の目標回転中心位置を、第1列と第3列の中間に位置する中間部Mに設定する。中間部Mは、第1列よりも後方に位置し、かつ、第3列よりも前方に位置する。こうして、目標回転中心位置を中間部Mに設定することにより、目標回転中心位置設定処理が終了する。
【0096】
ステップ26では、第1列の乗員数は第3列の乗員数よりも多いか少ないかを判定する。ステップS25において、第1列の乗員数は第3列の乗員数よりも多いと判定したとき、すなわち、第3列の乗員数は第1の乗員数よりも少ないと判定したとき、ステップS27の処理に進む。一方、ステップS26において、第1列の乗員数は第3列の乗員数よりも少ない、すなわち、第3列の乗員数は第1の乗員数よりも多いと判定したとき、ステップS28の処理に進む。
【0097】
ステップS27では、車両1の目標回転中心位置を、第1列よりも後方に位置し、かつ、中間部Mよりも前方に位置する前側中間部Mfに設定する。こうして、目標回転中心位置を前側中間部Mfに設定することにより、目標回転中心位置設定処理が終了する。
【0098】
ステップS28では、車両1の目標回転中心位置を、第3列よりも前方に位置し、かつ、中間部Mよりも後方に位置する後側中間部Mrに設定する。こうして、目標回転中心位置を後側中間部Mrに設定することにより、目標回転中心位置設定処理が終了する。
【0099】
図12〜15を参照して、本実施形態の車両姿勢制御装置4の作用について説明する。図12〜15中の点Tは、ヨー回転中心位置の目標となる目標回転中心位置を示している。図14,15中の丸Mは、中間部Mを示している。本実施形態においても、目標回転中心位置は、車両1の左右方向に対する中心を通る線上、すなわち左右中心軸C上に設定される。
【0100】
図12に示されるように、次のとき演算装置49は目標回転中心位置を第1列部Fに設定する。すなわち、図12中の点Tは第1列部Fを示している。
(a)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列および第3列に乗員が乗車していないとき。
(b)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列および第3列に乗員が乗車していないとき。
【0101】
第1列部Fが目標回転中心位置であるとき、車両姿勢制御装置4は、ヨー回転中心位置を第1列部Fに近づける。その結果、ヨー回転中心位置は乗員P1の近くに移動して、第1列における車体2の横すべり角は「0」に近づく。
【0102】
図13に示されるように、次のとき演算装置49は目標回転中心位置を中間部Mに設定する。すなわち、図13中の点Tは中間部Mを示している。
(a)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に乗員が乗車していないとき、かつ第3列に1人の乗員P3が乗車しているとき。
(b)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に1人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に1人の乗員P3が乗車しているとき。
(c)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に乗員が乗車していないとき、かつ第3列に2人の乗員P3が乗車しているとき。
(d)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に2人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に1人の乗員P3が乗車しているとき。
(e)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に1人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に2人の乗員P3が乗車しているとき。
(f)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に2人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に2人の乗員P3が乗車しているとき。
(g)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に乗員が乗車していないとき、かつ第3列に1人の乗員P3が乗車しているとき。
(h)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に乗員が乗車していないとき、かつ第3列に2人の乗員P3が乗車しているとき。
【0103】
中間部Mが目標回転中心位置であるとき、車両姿勢制御装置4は、ヨー回転中心位置を中間部Mに近づける。その結果、ヨー回転中心位置は乗員P1と乗員P3との間に移動する。
【0104】
図14に示されるように、次のとき演算装置49は目標回転中心位置を前側中間部Mfに設定する。すなわち、図14中の点Tは前側中間部Mfを示している。
(a)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に1人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に乗員が乗車していないとき。
(b)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に1人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に乗員が乗車していないとき。
(c)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に2人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に乗員が乗車していないとき。
(d)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に2人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に乗員が乗車していないとき。
(e)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に1人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に1人の乗員P3が乗車しているとき。
(f)第1列に2人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に2人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に1人の乗員P3が乗車しているとき。
【0105】
前側中間部Mfが目標回転中心位置であるとき、車両姿勢制御装置4は、ヨー回転中心位置を前側中間部Mfに近づける。その結果、ヨー回転中心位置は中間部よりも乗員P1に近い位置に移動する。
【0106】
図15に示されるように、次のとき演算装置49は目標回転中心位置を後側中間部Mrに設定する。すなわち、図15中の点Tは後側中間部Mrを示している。
(a)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に1人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に2人の乗員P3が乗車しているとき。
(b)第1列に1人の乗員P1が乗車しているとき、かつ第2列に2人の乗員P2が乗車しているとき、かつ第3列に2人の乗員P3が乗車しているとき。
【0107】
後側中間部Mrが目標回転中心位置であるとき、車両姿勢制御装置4は、ヨー回転中心位置を後側中間部Mrに近づける。その結果、ヨー回転中心位置は中間部よりも乗員P3に近い位置に移動する。
【0108】
(実施形態の効果)
本実施形態の車両姿勢制御装置4は、上記(1),(2)に加え以下の効果を奏する。
(7)第1列の乗員数と第3列の乗員数とが同じであることを乗車センサ47が検出したとき、前輪制御装置6および後輪制御装置7は、車両1の姿勢を制御して、車両1のヨー回転中心位置を第1列と第3列の中間に位置する中間部Mに移動させる。このため、例えば、ヨー回転中心位置が第1列に位置する場合に比べ、第3列における乗り心地を向上することが可能である。
【0109】
(8)第1列の乗員数が第3列の乗員数に比べて多いことを乗車センサ47が検出したとき、前輪制御装置6および後輪制御装置7は、車両1の姿勢を制御して、車両1のヨー回転中心位置を中間部Mよりも車両1の前方側に位置する前側中間部Mfに近づける。このため、例えば、ヨー回転中心位置を中間部Mに近づける場合に比べて、多数の乗員が乗っている第1列における乗り心地を向上することが可能である。
【0110】
(9)第1列の乗員数が第3列の乗員数に比べて少ないことを乗車センサ47が検出したとき、前輪制御装置6および後輪制御装置7は、車両1の姿勢を制御して、車両1のヨー回転中心位置を中間部Mよりも車両1の後方側に位置する後側中間部Mrに近づける。このため、例えば、ヨー回転中心位置を中間部Mに近づける場合に比べ、多数の乗員が乗っている第3列における乗り心地を向上することが可能である。
【0111】
(10)乗車センサ47は、乗員が着座する座席に設けられた荷重センサ47A〜47Fを有する。このため、乗車センサ47を、乗員が座席に着座することによって、乗員が乗っていることを検出することができる。
【0112】
(その他の実施形態)
本発明は、第1および第2実施形態以外の実施形態を含む。以下、本発明のその他の実施形態としての上記第1および第2実施形態の変形例を示す。なお、以下の各変形例は、互いに組み合わせることもできる。
【0113】
・第1および第2実施形態(図1)の車両姿勢制御装置4は、目標回転中心位置を第1列部F、中間部M、前側中間部Mf、または後側中間部Mrに設定する。一方、変形例において、車両姿勢制御装置4は、車両1の前側部位における乗員数と、車両1の後側部位における乗員数との割合に応じて、目標回転中心位置を設定する。すなわち、目標回転中心位置は第1および第2実施形態の4つに限定されない。
【0114】
・車両姿勢制御装置4は、車両1の左右方向における乗員の分布、あるいは車両1の前後方向および左右方向における乗員の分布に応じて、目標回転中心位置を前記車両の左右方向の中心からずらしてもよい。
【0115】
・第1および第2実施形態(図1)の乗車センサ47は、荷重センサ47A〜47Fを有する。一方、変形例において、乗車センサ47は、例えば、車内を撮影する車載カメラ(図示略)を有する。この場合、乗車センサ47は、車載カメラで撮影された画像を解析して、乗車数および乗車位置を検出する。すなわち、乗車数および乗車位置を検出することができれば、乗車センサ47は第1および第2実施形態のものに限定されない。
【0116】
・第1および第2実施形態(図1)の車両姿勢制御装置4は、2つまたは3つの乗車列を有する車両1の姿勢を制御する。一方、変形例において、車両姿勢制御装置4は、4つ以上の乗車列を有する車両(図示略)の姿勢を制御する。すなわち、車両姿勢制御装置4が行う目標回転中心位置設定処理は、第1および第2実施形態の図5および図11で示す処理に限定されない。
【0117】
・第1および第2実施形態(図1)の前輪制御装置6は、アクティブステアリング装置である。一方、変形例において、前輪制御装置6は、独立駆動装置または左右駆動力配分装置である。すなわち、前輪制御装置6は、前輪31,32の舵角を制御する差動機構装置またはステアバイワイヤ装置等のアクティブステアリング装置に限定されない。
【0118】
・第1および第2実施形態(図1)の後輪制御装置7は、左右駆動力配分装置である。一方、変形例において、後輪制御装置7は、独立駆動装置、または後輪33,34の舵角を制御することが可能な後輪ステアリング装置である。すなわち、後輪制御装置7は、後輪33,34の駆動力の比率を制御する駆動力配分装置に限定されない。
【符号の説明】
【0119】
1…車両、2…車体、3…車輪、4…車両姿勢制御装置、5…車体すべり角推定装置、6…前輪制御装置(姿勢制御部)、7…後輪制御装置(姿勢制御部)、11…操舵ハンドル、12…パワーステアリング装置、31…左前輪、32…右前輪、33…左後輪、34…右後輪、41〜44…車輪速センサ、45…加速度センサ、46…ヨーレートセンサ、47…乗車センサ(センサ)、48…メモリ、49…演算装置、A…車軸、AF…前軸、AR…後軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の姿勢を制御する姿勢制御部を備える車両姿勢制御装置において、
前記姿勢制御部は、前記車両に乗っている乗員の数である乗員数および前記車両に乗っている乗員の位置である乗車位置を検出するセンサの出力に基づいて前記車両の姿勢を制御する
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両姿勢制御装置において、
乗員が乗る乗車位置を通り、かつ、前記車両の左右方向に延びる列を「乗車列」とし、
前記車両が有する複数の乗車列のいずれか1列に乗員が乗っていることを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記1列に近づける
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両姿勢制御装置において、
所定の乗員が乗る乗車位置を通る前記乗車列を「第1列」とし、
前記第1列よりも前記車両の後方側に位置する前記乗車列を「第2列」とし、
前記第1列および前記第2列に乗員が乗っていることを前記センサが検出したとき、
前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記第1列と前記第2列の中間に移動させる
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両姿勢制御装置において、
前記第1列の乗員数と前記第2列の乗員数とが同じであることを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記1列と前記第2列の中間に位置する中間部に近づける
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両姿勢制御装置において、
前記第1列の乗員数が前記第2列の乗員数に比べて多いことを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記中間部よりも前記車両の前方側に位置する前側中間部に近づける
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の車両姿勢制御装置において、
前記第1列の乗員数が前記第2列の乗員数に比べて少ないことを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記中間部よりも前記車両の後方側に位置する後側中間部に近づける
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の車両姿勢制御装置において、
所定の乗員が乗る乗車位置を通る前記乗車列を「第1列」とし、
前記第1列よりも前記車両の後方側に位置する前記乗車列を「第2列」とし、
前記第2列よりも前記車両の後方側に位置する前記乗車列を「第3列」とし、
前記第1列の乗員数と前記第3列の乗員数とが同じであることを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記第1列と前記第3列の中間に位置する中間部に移動させる
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両姿勢制御装置において、
前記第1列の乗員数が前記第3列の乗員数に比べて多いことを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記中間部よりも前記車両の前方側に位置する前側中間部に近づける
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の車両姿勢制御装置において、
前記第1列の乗員数が前記第3列の乗員数に比べて少ないことを前記センサが検出したとき、前記姿勢制御部は、前記車両の姿勢を制御して、前記車両のヨー回転中心位置を前記中間部よりも前記車両の後方側に位置する後側中間部に近づける
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両姿勢制御装置において、
前記センサは、乗員が着座する座席に設けられた荷重センサを有する
ことを特徴とする車両姿勢制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−112079(P2013−112079A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258286(P2011−258286)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】