説明

車両接地検出装置及びその方法並びに車両

【課題】車両の接地状態を検出することの可能な車両接地検出装置を提供する。
【解決手段】車両の車体と電気的に接続され且つ車両軌道に設置された接地部材に対して接触可能に配置された主導電部材と、前記主導電部材と並列に且つ前記接地部材に対して接触可能に配置された副導電部材と、前記主導電部材及び副導電部材を介して電流が流れるか否かを検出することにより、前記車両の接地状態を検出する電流検出回路とを用いて車両接地検出装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接地検出装置及びその方法並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、新交通システムとは、人口の比較的密集した都市空間において鉄道とバスとの中間の輸送力を持つ公共交通機関として開発されたものであり、近年では大規模空港内における旅客移動手段としても利用されている。このような新交通システムでは、専用の軌道をゴムタイヤで支持された車両が案内軌条(ガイドレール)にガイドされて走行する方式を採用しているため、快適性・低公害性・安全性に優れた輸送システムとして注目されている。
【0003】
その車両下部には車体をアースするためのアースブラシが設けられており、駅停車時にはこのアースブラシが駅軌道上に設置されたアースプレートに接触することで車体がアースされ、乗客が乗車または降車する際に感電することを防止している。また、ガイドレールをアースしておき、アースブラシをガイドレールに接触するように配置することで常に車体をアースする方式を採用する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−139764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、上記のアースブラシがアースプレート、或いはガイドレールに確実に接触しているか否かを判断する術がなかったため、摩耗などの経年劣化によりアースブラシがアースプレート、或いはガイドレールに接触しなくなった場合、車体がアースされなくなり、乗車または降車する際に乗客が感電してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両の接地状態を検出することの可能な車両接地検出装置及びその方法、並びにその車両接地検出装置を備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両接地検出装置は、車両の車体と電気的に接続され且つ車両軌道に設置された接地部材に対して接触可能に配置された主導電部材と、前記主導電部材と並列に且つ前記接地部材に対して接触可能に配置された副導電部材と、前記主導電部材及び副導電部材を介して電流が流れるか否かを検出することにより、前記車両の接地状態を検出する電流検出回路とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る車両接地検出装置において、前記電流検出回路は、直流電源と、継電器と、前記継電器の接点の開閉状態を前記車両の接地状態として検出する接点状態検出回路とを備え、前記直流電源の負極端子は前記車体と接続され、正極端子は前記継電器におけるコイルの一端と接続されており、前記継電器におけるコイルの他端は前記副導電部材と接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る車両接地検出装置において、前記主導電部材及び副導電部材は導電材料からなるブラシであることを特徴とする。
一方、本発明に係る車両接地検出方法は、車両の車体と電気的に接続され且つ車両軌道に設置された接地部材に対して接触可能に配置された主導電部材と、前記主導電部材と並列に且つ前記接地部材に対して接触可能に配置された副導電部材とを介して電流が流れるか否かを検出することにより、前記車両の接地状態を検出することを特徴とする。
さらに、本発明に係る車両は、中央司令所に設置された運行管理装置によって運行状況を管理された車両であって、車上無線機と、上記の車両接地検出装置と、前記車両接地検出装置によって検出された前記車両の接地状態を車両情報の一つとして前記車上無線機を介して前記運行管理装置に報告する車両制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両接地検出装置及びその方法によれば、車両の接地状態を検出することが可能となるため、感電事故が発生する前に点検・修理を行うことができるようになり、感電事故を未然に防ぐことができる。さらに、本発明に係る車両接地検出装置を備えた車両によれば、車両の接地状態を中央司令所に設置された運行管理装置に報告することが可能となり、中央司令所において各車両の接地状態の把握と、その対応作業を迅速に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る新交通システムの構成概略図である。
【図2】本実施形態の新交通システムで使用される車両1の構成概略図である。
【図3】車両1の機能ブロック構成図である。
【図4】車両1に設けられた車両接地検出装置30におけるアースブラシ31a及びダミーアースブラシ31bの配置説明図である。
【図5】車両接地検出装置30における電流検出回路32の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る新交通システムの構成概略図である。この図1に示すように、本実施形態に係る新交通システムは、例えば大規模空港内或いは市街地等に敷設された軌道W上を自動走行する車両1、2と、各駅A、Bに設置された駅装置3と、駅間の軌道W上に沿って設定された複数の閉塞区間毎に設置された位置検出用地上子4、地上無線アンテナ5及び地上無線機6と、駅間に設置された地上ATP(Automatic Train Protection)装置7と、中央司令所Cに設置された運行管理装置8とから構成されている。
【0011】
駅装置3は、駅軌道上の車両定点域停止位置に配置された駅地上子3aと、駅ATO(Automatic Train Operation)装置3b及び駅管理装置3cとから構成されている。また、運行管理装置8は、手動操作盤8a、運行表示盤8b及びATS(Automatic Train Supervision)装置8cから構成されている。上記の駅ATO装置3b、駅管理装置3c、地上無線機6及び地上ATP装置7などのウェイサイド装置と、センター装置であるATS装置8cとは光ファイバを用いて構築された光ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。
【0012】
なお、新交通システムには、車両1、2や各種の地上装置に電力を供給するための電力設備も含まれるが、図1では省略している。また、図1では紙面の都合上、軌道W上に2台の車両1、2が存在している状況を図示しているが、編成数はこれに限定されるものではない。また、1編成中の車両数も1台に限定されるものではなく、複数台の車両を連結して1編成としても良い。駅数も2つに限らない。
【0013】
車両1、2は、駅停車中においては駅地上子3aを介して駅ATO装置3bと通信可能であり、駅ATO装置3bからの指示に応じて車両ドアの開閉動作や出発動作を自動で行う。また、これら車両1、2は、走行中に位置検出用地上子4から受信した位置信号を基に絶対位置を認識し、以降は車体に設置されたエンコーダを用いて絶対位置を起点とする走行距離を積算することで現在位置を算出する位置決め機能を備えている。
【0014】
また、これら車両1、2は、走行中においては地上無線アンテナ5及び地上無線機6を介して地上ATP装置7と通信可能であり、上述した現在位置の算出結果を地上ATP装置7に報告(送信)する一方、地上ATP装置7から現在位置の算出結果を基に閉塞区間毎に指示される制限速度を超過しないように自動運転を行う。
【0015】
また、これら車両1、2は、地上無線アンテナ5及び地上無線機6を介して中央司令所CのATS装置8cとも通信可能であり、車両情報(現在位置や走行速度、異常発生履歴など)をATS装置8cに報告する一方、緊急時にはATS装置8cからの遠隔操作指令に従って走行する。なお、このような車両1、2の詳細な構成については後述する。
【0016】
駅装置3において、駅地上子3aは、駅停車中の車両1、2と通信するために駅軌道上の車両定点域停止位置に配置された有電源地上子であり、例えば誘導ループコイルなどによって構成されている。駅ATO装置3bは、駅地上子3aを介して車両1、2と通信可能であると共に、光ネットワークNWを介して中央司令所CのATS装置8cと通信可能であり、ATS装置8cからの指示に応じて車両1、2の車両ドア及び駅ホームドアの連動開閉制御、車両1、2の出発制御など駅内における車両1、2の自動運転に必要な制御を行う一方、車両1、2のブレーキ状態や車両ドア及び駅ホームドアの開閉状態などをATS装置8cに報告する。
【0017】
駅管理装置3cは、光ネットワークNWを介して中央司令所CのATS装置8cと通信可能であり、ATS装置8cからの指示に応じて駅ホーム及び駅構内の放送装置や案内表示装置、監視カメラ等の制御、自動発券機や自動改札機の管理など駅業務に必要な各種装置の制御・管理を行う装置であり、これら各種装置の状況や監視カメラによる監視映像などを駅情報としてATS装置8cに報告する。
【0018】
位置検出用地上子4は、車両1、2の現在位置を検出するために、駅間の軌道W上における閉塞区間毎に設置された無電源地上子であり、例えば誘導ループコイルなどによって構成されている。この位置検出用地上子4は、車両1、2がその上を走行する際に誘導方式による通信によって絶対位置を示す位置信号を車両1、2に送信する。
【0019】
地上無線アンテナ5は、走行中の車両1、2と通信を行うために、閉塞区間毎に設置されたアンテナである。地上無線機6は、地上無線アンテナ5を介して車両1、2から受信した無線信号に周波数変換処理、復調処理及び復号化処理を施すことにより地上ATP装置7及びATS装置8cで処理可能な受信データを生成し、この受信データを光ネットワークNWを介して地上ATP装置7またはATS装置8cに送信する。つまり、この受信データが現在位置を示すデータであれば地上ATP装置7に送信され、車両情報を示すデータであればATS装置8cに送信される。
【0020】
また、この地上無線機6は、光ネットワークNWを介して地上ATP装置7またはATS装置8cから入力される送信データ(地上ATP装置7であれば制限速度、ATS装置8cであれば遠隔操作指令)に符号化処理、変調処理及び周波数変換処理を施すことで送信用の無線信号を生成し、この無線信号を地上無線アンテナ5を介して車両1、2に送信する。
【0021】
地上ATP装置7は、地上無線アンテナ5、地上無線機6及び光ネットワークNWを介して車両1、2と通信可能であり、車両1、2から報告される現在位置と、先行車両の位置情報及び各閉塞区間の軌道情報(カーブや勾配の状態など)に基づいて現在位置に対応する閉塞区間における制限速度を決定し、その決定した制限速度を地上無線機6を介して車両1、2に送信する。
【0022】
運行管理装置8において、手動操作盤8aは、緊急時に車両1、2を手動によって遠隔操作するための操作盤であり、管理者による操作に応じた操作信号をATS装置8cに出力する。運行表示盤8bは、ATS装置8cの制御によって各車両1、2の運行状況や各駅A、Bの状況を表示する表示装置である。
【0023】
ATS装置8cは、予め設定された運行ダイヤに基づいて各車両1、2の運行及び各駅A、Bの業務を統括的に管理・監視する装置であり、光ネットワークNWを介して得られる各車両1、2の車両情報や各駅A、Bの駅情報を基に各車両1、2の運行状況や各駅A、Bの状況を運行表示盤8bに表示させる一方、緊急時には必要に応じて手動操作盤8aから入力される操作信号を遠隔操作指令として車両1、2に送信する。
【0024】
続いて、図2〜図5を参照して車両1、2の構成について詳細に説明する。なお、車両1、2の構成は同一なので、以下では車両1を代表的に用いて説明する。図2は、車両1の概略構成図であり、図2(a)は軌道W上を走行する車両1の正面図、図2(b)は車両1の台車の構造を説明するための概略平面図である。
【0025】
これら図2(a)及び(b)に示すように、車両1は、乗客を収容するための本体部である車体10と、4輪のゴムタイヤ11に支持された台車12とを備えている。台車12には集電装置13及び後述の走行装置24(駆動モータ24a、駆動インバータ24b、速度検出器24c、ブレーキ装置24d:図2では駆動モータ24aのみ図示)が設置されており、車両1は、軌道Wの側壁に沿って設置された電車線14から電力(例えば3相交流電力)供給を受けて走行するようになっている。
【0026】
また、台車12には、ゴムタイヤ11の操舵手段として、前輪側及び後輪側の2箇所に案内バー15が取り付けられている。案内バー15の両側には案内輪16が取り付けられており、軌道側壁に設けられたガイドレール17に案内輪16をガイドさせて走行することにより、軌道Wのカーブに追従して曲がることができるようになっている。なお、このガイドレール17はアース(接地)されている。
【0027】
また、案内バー15には、案内輪16の下方に分岐案内輪18が取り付けられている。この分岐案内輪18は、軌道Wの分岐部横に設置された電気転轍機の可動案内板(図示略)にフックして車両1を所望の方向に分岐させるものであり、直進するときには電気転轍機の直進側の可動案内板がせり出してきて車両1の進路を直進方向に維持し、分岐するときには分岐側の可動案内板がせり出してきて車両1の進路を分岐方向に変更するようになっている。なお、図2(a)に示すように、駅間の軌道W上の中央には位置検出用地上子4が配置されている。
【0028】
図3は、車両1の機能ブロック構成図である。この図3に示すように、車両1は、下部アンテナ20、トランスポンダ21、車上無線アンテナ22、車上無線機23、走行装置24、ドア制御装置25、ドア開閉装置26、案内表示装置27、録音放送装置28、車両制御装置29及び車両接地検出装置30を備えている。
【0029】
下部アンテナ20は、軌道W上に配置された各地上子(駅地上子3a、位置検出用地上子4)と誘導方式による通信を行うためのアンテナであり、車両1の前端下部に配置されている。トランスポンダ21は、下部アンテナ20を介して各地上子から受信した信号を車両制御装置29で処理可能な受信データに変換して車両制御装置29に出力する。また、このトランスポンダ21は、車両制御装置29から入力される送信データを地上子(この場合、駅地上子3aのみ)で受信可能な送信信号に変換し、この送信信号を下部アンテナ20を介して送信する。
【0030】
車上無線アンテナ22は、図1に示す地上無線アンテナ5を介して地上無線機6と無線通信を行うためのアンテナである。車上無線機23は、車上無線アンテナ22を介して受信した無線信号に周波数変換処理、復調処理及び復号化処理を施すことにより車両制御装置29で処理可能な受信データ(例えば制限速度や遠隔操作指令を示すデータ)を生成し、この受信データを車両制御装置29に出力する。また、この車上無線機23は、車両制御装置29から入力される送信データ(例えば現在位置や車両情報を示すデータ)に符号化処理、変調処理及び周波数変換処理を施すことで送信用の無線信号を生成し、この無線信号を車上無線アンテナ22を介して地上無線アンテナ5に送信する。
【0031】
走行装置24は、駆動モータ24a、駆動インバータ24b、速度検出器24c、エンコーダ24d及びブレーキ装置24eから概略構成されている。駆動モータ24aは、例えば3相交流誘導機であり、駆動インバータ24bから供給される3相交流電力によって回転することで後輪側のゴムタイヤ11を回転駆動する。駆動インバータ24bは、例えば回生ブレーキ機能を有するVVVFインバータであり、車両制御装置29の制御によって車両1を所定の速度で走行させるための3相交流電力を生成して駆動モータ24aに供給する。
【0032】
速度検出器24cは、車両1の走行速度を検出し、その検出結果を示す速度信号を車両制御装置29に出力する。エンコーダ24dは、駆動モータ24a或いはゴムタイヤ11の回転軸に取り付けられており、回転軸の回転に応じたパルス信号を車両制御装置29に出力する。ブレーキ装置24eは、例えば空気ブレーキであり、車両制御装置29の制御によってブレーキ動作を行う。
【0033】
ドア制御装置25は、車両制御装置29による制御に応じて、ドア開閉装置26によるドアの開閉、案内表示装置27による案内表示、及び録音放送装置28による車内放送の連動制御を行う。ドア開閉装置26は、ドア制御装置25の制御によってドアの開閉を行う。案内表示装置27は、ドア制御装置25の制御によってドア開閉時における案内用画面を表示する。録音放送装置28は、ドア制御装置25の制御によってドア開閉時における車内放送を行う。
【0034】
車両制御装置29は、トランスポンダ21及び車上無線機23から入力される受信データと、速度検出器24cから入力される速度信号とに基づいて車両1の走行、減速、停止、車両ドアの開閉など自動運転に必要な各種制御を行う装置であり、車上ATO装置29a及び車上ATP装置29bを備えている。
【0035】
車上ATO装置29aは、駅停車中においてはトランスポンダ21を介して駅ATO装置3bから受けた指示に応じてドア制御装置25を制御することで、車両ドアの開閉、案内表示及び車内放送を制御すると共に、走行装置24を制御することで車両1の出発制御を行う。また、この車上ATO装置29aは、走行中においては速度検出器24cから入力される速度信号から現在の走行速度を把握し、この走行速度が車上ATP装置29bから通知される制限速度を超過しないように走行装置24を制御することで自動運転を行う。
さらに、この車上ATO装置29aは、緊急時には車上無線機23を介してATS装置8cから受信した遠隔操作指令に従って走行装置24を制御する。
【0036】
また、この車上ATO装置29aは、走行中において位置検出用地上子4上を通過した際にトランスポンダ21を介して位置検出用地上子4から受信した位置信号を基に車両1の絶対位置を認識し、以降はエンコーダ24dから入力されるパルス信号を基に絶対位置を起点とする走行距離を積算することで現在位置を算出する位置決め機能を備えている。なお、この位置決め機能には、位置検出用地上子4を通過する毎に得られる絶対位置を基に現在位置を補正することで、エンコーダによる走行距離の積算誤差をリセットする機能もある。
【0037】
車上ATP装置29bは、走行中においてトランスポンダ21を介して位置検出用地上子4から受信した位置信号を基に現在位置を検出し、その検出結果を車上無線機23を介して地上ATP装置7に送信する一方、地上ATP装置7からその現在位置に対応する閉塞区間毎に指示される制限速度を車上ATO装置29aに通知する。
また、このような車両制御装置29は、車上無線機23を介して車両情報(現在位置や走行速度、異常発生履歴など)をATS装置8cに送信する機能も有する。
【0038】
さらに、本実施形態の特徴として、車両1は車両接地検出装置30を備えている。この車両接地検出装置30は、車両1の接地状態を検出する装置であり、図3及び図4に示すように、車両1の左側面の前後と右側面の前後との計4箇所に設置されたアースブラシ固定具31によって固定されたアースブラシ31a(主導電部材)及びダミーアースブラシ31b(副導電部材)と、電流検出回路32とから構成されている。
【0039】
図3及び図4に示すように、各アースブラシ31aは、銅線などの導電材料からなるブラシ状の導電部材であり、車両1の車体10と電気的に接続され且つ軌道Wに沿って設置されたガイドレール17(接地部材)に対して接触可能に配置されている。一方、各ダミーアースブラシ31bは、銅線などの導電材料からなるブラシ状の導電部材であり、アースブラシ31aと並列に且つガイドレール17に対して接触可能に配置されている。
【0040】
また、隣り合うアースブラシ31aとガイドレール17とが導通しないように、アースブラシ固定具31はプラスチックやゴム等の絶縁材料で構成されている。
電流検出回路32は、アースブラシ31a及びダミーアースブラシ31bを介して電流が流れるか否かを検出することにより、車両1の接地状態を検出する回路である。
【0041】
図5は、電流検出回路32の等価回路図である。この図5に示すように、電流検出回路32は、直流電源32aと、電磁継電器32bと、電磁継電器32bにおける接点の開閉状態を車両1の接地状態として検出する接点状態検出回路32cとから構成されている。直流電源32aの負極端子は車体10と接続(フレーム接地)され、正極端子は電磁継電器32bにおけるコイルの一端と接続されている。また、電磁継電器32bにおけるコイルの他端は各ダミーアースブラシ31bと接続されている。
【0042】
このような構成の車両接地検出装置30において、1箇所でもアースブラシ31aとダミーアースブラシ31bとの両方がガイドレール17に接触している場合には、電磁継電器32bのコイルに電流が流れ励磁されて接点が閉じる。接点状態検出回路32cは、このように電磁継電器32bの接点が閉じられた状態を、正常に車両1が接地された状態として検出し、その接地状態検出結果を車両制御装置29に出力する。
【0043】
一方、1箇所もアースブラシ31aとダミーアースブラシ31bとの両方がガイドレール17に接触していない場合には、電磁継電器32bのコイルに電流が流れず接点は開いた状態となる。接点状態検出回路33cは、このように電磁継電器32bの接点が開いた状態を、車両1が接地されていない状態として検出し、その接地状態検出結果を車両制御装置29に出力する。
車両制御装置29は、上記のように車両接地検出装置30(接点状態検出回路32c)から入力される接地状態検出結果を車両情報の1つとして、車上無線機23を介してATS装置8cに送信する。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る車両接地検出装置30によれば、車両1、2の接地状態を検出することが可能となるため、感電事故が発生する前に点検・修理を行うことができるようになり、感電事故を未然に防ぐことができる。さらに、車両接地検出装置30を備えた車両1、2によれば、車両1の接地状態を中央司令所Cに設置された運行管理装置8(ATS装置8c)に報告することが可能となり、中央司令所Cにおいて各車両1、2の接地状態の把握と、その対応作業を迅速に行うことができるようになる。
【0045】
例えば、走行中に車両1が接地されていないと検出された場合、感電を防止するための手法として、車両1を次駅まで移動し終わった後で停止させ、車両ドアを開けずに係員を呼び出し、安全確認後に車両ドアを開けて乗客の乗降を行うことが考えられるが、乗客を車内に閉じ込めてしまい、また、車両1を止めることでAvailabilityが低下するため、あまり好ましい手法とは言えない。
【0046】
そこで、接地されていなくとも、車体10と充電部は絶縁されているので直ちに感電の危険があるというわけではないため、中央司令所Cの運行表示盤8bに各車両1、2の接地状態を表示して警告を出す程度にしておき運転は継続する。そして、運転終了後の車庫または検収庫でアースブラシ31aが断線していないか、または摩耗していないかを検査することが望ましい。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、ガイドレール17を接地部材として用い、このガイドレール17に車両接地検出装置30のアースブラシ31a及びダミーアースブラシ31bを接触させて車両1を常時接地する場合を例示して説明したが、例えば各駅A、Bの軌道W上にアースプレートを設置しておき、駅停車時にこのアースプレートにアースブラシ31a及びダミーアースブラシ31bを接触させて車両1の接地状態を検出するような構成としても良い。
【0048】
(2)上記実施形態では、導電材料からなるブラシを車両接地検出装置30における主導電部材及び副導電部材として用いる場合を例示して説明したが、必ずしもブラシ状のものを用いる必要はなく、ある程度の耐摩耗性を有し、接地部材との接触性が良好であればどのようなものを用いても良い。また、上記実施形態は、車両1の4箇所にアースブラシ31a及びダミーアースブラシ31bを配置した場合を例示したが、各アースブラシの配置箇所数はこれに限定されない。
【0049】
(3)上記実施形態では、アースブラシ31a及びダミーアースブラシ31bを介して電流が流れるか否かを検出する電流検出回路32を、直流電源32a、電磁継電器32b及び接点状態検出回路32cによって構成した場合を例示したが、このような構成に限らず、電流が流れるか否かを検出する回路であればどのような回路を用いても良い。
【符号の説明】
【0050】
1、2…車両、3…駅装置、3a…駅地上子と、3b…駅ATO装置、3c…駅管理装置、4…位置検出用地上子、5…地上無線アンテナ、6…地上無線機、7…地上ATP装置、8…運行管理装置、8a…手動操作盤、8b…運行表示盤、8c…ATS装置、NW…光ネットワーク、10…車体、11…ゴムタイヤ、12…台車、17…ガイドレール、20…下部アンテナ、21…トランスポンダ、22…車上無線アンテナ、23…車上無線機、24…走行装置、25…ドア制御装置、26…ドア開閉装置、27…案内表示装置、28…録音放送装置、29…車両制御装置、29a…車上ATO装置、29b…車上ATP装置、30…車両接地検出装置、31…アースブラシ固定具、31a…アースブラシ、31b…ダミーアースブラシ、32…電流検出回路、32a…直流電源、32b…電磁継電器、32c…接点状態検出回路、A、B…駅、C…中央司令所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体と電気的に接続され且つ車両軌道に設置された接地部材に対して接触可能に配置された主導電部材と、
前記主導電部材と並列に且つ前記接地部材に対して接触可能に配置された副導電部材と、
前記主導電部材及び副導電部材を介して電流が流れるか否かを検出することにより、前記車両の接地状態を検出する電流検出回路と、
を備えることを特徴とする車両接地検出装置。
【請求項2】
前記電流検出回路は、
直流電源と、
継電器と、
前記継電器の接点の開閉状態を前記車両の接地状態として検出する接点状態検出回路と、
を備え、
前記直流電源の負極端子は前記車体と接続され、正極端子は前記継電器におけるコイルの一端と接続されており、
前記継電器におけるコイルの他端は前記副導電部材と接続されていることを特徴とする請求項1記載の車両接地検出装置。
【請求項3】
前記主導電部材及び副導電部材は導電材料からなるブラシであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両接地検出装置。
【請求項4】
車両の車体と電気的に接続され且つ車両軌道に設置された接地部材に対して接触可能に配置された主導電部材と、前記主導電部材と並列に且つ前記接地部材に対して接触可能に配置された副導電部材とを介して電流が流れるか否かを検出することにより、前記車両の接地状態を検出することを特徴とする車両接地検出方法。
【請求項5】
中央司令所に設置された運行管理装置によって運行状況を管理された車両であって、
車上無線機と、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両接地検出装置と、
前記車両接地検出装置によって検出された前記車両の接地状態を車両情報の一つとして前記車上無線機を介して前記運行管理装置に報告する車両制御装置と、
を備えることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−254040(P2010−254040A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104279(P2009−104279)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】