説明

車両用エアバッグ装置

【課題】簡易な構成で、側面衝突時に乗員が衝突側と反衝突側のどちらに着座していても、該乗員をサイドエアバッグ袋体により拘束できるようにすることを目的とする。
【解決手段】車両用シート18の両側部の例えばモジュールケース64,66内に折畳み収納されたサイドエアバッグ袋体を、シートフレーム12内に配設されたインフレータ14により夫々独立して膨張させる。車両の右側面に側面衝突があったときには、車幅方向右側のサイドエアバッグ袋体を膨張させ、車両の左側面に側面衝突があったときには、車幅方向左側のサイドエアバッグ袋体を膨張させることができる。インフレータ14をシートフレーム12内に配設するという簡易な構成でありながら、側面衝突方向に対応したサイドエアバッグ袋体の膨張が可能であり、該サイドエアバッグ袋体により乗員を拘束することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートの側面から車室の側部内面と乗員との間に展開する第1エアバッグ及び第2エアバッグに対し、インフレータが発生させた膨張用のガスを、分岐管を経て供給する構成が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−90906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、側面衝突時に乗員を拘束するための複数のエアバッグ袋体が、車両用シートの片側に設けられているため、乗員が衝突側の車両用シートに着座している場合と反衝突側の車両用シートに着座している場合の双方に対応するには、より大掛かりな構成が必要となる。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、簡易な構成で、側面衝突時に乗員が衝突側と反衝突側のどちらに着座していても、該乗員をサイドエアバッグ袋体により拘束できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車両用シートの骨格を構成すると共に該車両用シートの車幅方向の両側部へ夫々連通した第1ガス流路及び第2ガス流路を有するシートフレームと、該シートフレーム内に配設され、前記第1ガス流路及び前記第2ガス流路の少なくとも一方へ選択的にガスを供給可能なインフレータと、側面衝突時に、該側面衝突の方向に対応して前記インフレータを作動させる制御装置と、前記両側部において夫々折畳み収納されると共に前記第1ガス流路及び前記第2ガス流路に夫々接続され、前記インフレータからのガスの供給を受けて夫々独立して膨張する少なくとも一対のサイドエアバッグ袋体と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車両用エアバッグ装置では、車両が側面衝突を受けると、制御装置がその側面衝突方向に対応して、シートフレーム内のインフレータを作動させて第1ガス流路及び第2ガス流路の少なくとも一方へガスを供給する。車両用シートの車幅方向の両側部において夫々折畳み収納された一対のサイドエアバッグ袋体は、第1ガス流路及び第2ガス流路に夫々接続されており、インフレータからのガスの供給を受けたサイドエアバッグ袋体が膨張することで乗員を拘束し、該乗員の車幅方向の移動を抑制することができる。インフレータをシートフレーム内に配設するという簡易な構成でありながら、側面衝突方向に対応したサイドエアバッグ袋体の膨張が可能であり、側面衝突時に乗員が衝突側と反衝突側のどちらに着座していても、該乗員をサイドエアバッグ袋体により拘束することが可能である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用エアバッグ装置において、前記インフレータは、前記第1ガス流路に対応する第1ガス噴出口と、前記第2ガス流路に夫々対応する第2ガス噴出口とを有していることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車両用エアバッグ装置では、インフレータが、第1ガス流路に対応する第1ガス噴出口と、第2ガス流路に対応する第2ガス噴出口とを有しているので、該第1ガス流路及び第2ガス流路の少なくとも一方への選択的なガスの供給を、より効率的に行うことができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用エアバッグ装置において、ヘッドレストを支持すると共に、該ヘッドレスト側へ連通する第3ガス流路を有するヘッドレストパイプと、前記シートフレームに設けられ、後面衝突時に前記ガスが前記第3ガス流路へ供給されるように前記ガスの経路を切り替える弁機構と、前記ヘッドレストに折畳み収納されると共に前記第3ガス流路に接続され、後面衝突時に前記ガスの供給を受けて膨張するヘッドレストエアバッグ袋体と、を有することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車両用エアバッグ装置では、ヘッドレストに折畳み収納されるヘッドレストエアバッグ袋体が、ヘッドレストパイプの第3ガス流路に接続されており、後面衝突時には、弁機構によりインフレータから供給されるガスの経路が切り替えられ、第3ガス流路を通じてヘッドレストエアバッグ袋体へガスが供給される。該ヘッドレストエアバッグ袋体が膨張することで、乗員の頭部を拘束することが可能である。即ち請求項3に記載の車両用エアバッグ装置では、側面衝突時だけでなく、後面衝突時にも対応することが可能である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両用エアバッグ装置において、前記弁機構は、後面衝突時における乗員の慣性力を利用して作動するように構成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の車両用エアバッグ装置では、弁機構によるガスの経路の切替えが、後面衝突時における乗員の慣性力を利用して行われるので、簡易な構成でタイミングよく乗員の頭部を拘束することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用エアバッグ装置によれば、簡易な構成で、側面衝突時に乗員が衝突側と反衝突側のどちらに着座していても、該乗員をサイドエアバッグ袋体により拘束できる、という優れた効果が得られる。
【0014】
請求項2に記載の車両用エアバッグ装置によれば、第1ガス流路及び第2ガス流路の少なくとも一方への選択的なガスの供給を、より効率的に行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0015】
請求項3に記載の車両用エアバッグ装置によれば、側面衝突時だけでなく、後面衝突時にも対応することができる、という優れた効果が得られる。
【0016】
請求項4に記載の車両用エアバッグ装置によれば、簡易な構成でタイミングよく乗員の頭部を拘束することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1において、本実施の形態に係る車両用エアバッグ装置10は、シートフレーム12と、インフレータ14と、制御装置16と、一対のサイドエアバッグ袋体24(図5),26(図6)とを有している。
【0019】
シートフレーム12は、車両用シート18における例えばシートバック60の骨格を構成すると共に、該車両用シート18の車幅方向の両側部の一例たるサイドパイプ44,46へ夫々連通した第1ガス流路31及び第2ガス流路32を有する、例えばシートバックフレームである。サイドパイプ44,46は、下端が封止されると共に、例えばサイドフレーム54,56に夫々固着されており、該サイドフレーム54,56の下端は、例えば支持軸28を介してシートクッションフレーム30の後部に連結されている。
【0020】
図2に示されるように、サイドパイプ44には、第1ガス流路31内を流れて来たガスをサイドエアバッグ袋体24へ供給するためのガス噴出口44Aが設けられている。同様に、サイドパイプ46にも、第2ガス流路32内を流れて来たガスをサイドエアバッグ袋体26へ供給するためのガス噴出口46Aが設けられている。更にサイドフレーム54,56にも、ガス噴出口44A,46Aに対応する貫通孔54A,56Aが設けられている。サイドエアバッグ袋体24(図5)を折畳み収納するモジュールケース64、及びサイドエアバッグ袋体26(図6)と折畳み収納するモジュールケース66にも、ガス噴出口44A,46Aと対応したガス導入孔64A,66Aが夫々設けられている。
【0021】
なお、サイドフレーム54,56とモジュールケース64,66との接続は、図2に示されるものに限られず、例えば図3に示されるような構成としてもよい。即ち、図3に示される例では、サイドパイプ44の下端において、第1ガス流路31とモジュールケース64とが、L字形の管継手74を用いて接続されており、同様にサイドパイプ46の下端において、第2ガス流路32とモジュールケース66とが、L字形の管継手76を用いて接続されている。管継手74,76は、サイドフレーム54,56を夫々貫通し、モジュールケース64,66に夫々設けられた接続口64B,66Bに夫々接続されている。この例では、図2に示される例と比較して、サイドパイプ44,46が短縮化されており、シートフレーム12の軽量化が図られている。
【0022】
サイドパイプ44,46の上端44B,46Bは、車幅方向に互いに対向するように折り曲げられて終端しており、該上端44B,46B間には、アッパパイプ34が固着されている。アッパパイプ34の両端は、例えば上端44B,46Bに差し込まれ、インフレータ14からのガスが漏れないように、例えばかしめられている。図3に示されるように、アッパパイプ34内には、インフレータ14が配設されている。
【0023】
インフレータ14は、シートフレーム12の一例たるアッパパイプ34内に配設され、第1ガス流路31及び第2ガス流路32の少なくとも一方へ選択的にガスを供給可能なガス供給手段であって、アッパパイプ34内に収まるように、該アッパパイプ34の内径よりもわずかに小さい外形の円筒形状に形成されている。インフレータ14は、アッパパイプ34内に挿入された後、例えば該アッパパイプ34をかしめることにより固定されている。
【0024】
インフレータ14の両端には、各々独立に作動可能な第1イグナイタ21及び第2イグナイタ22が設けられると共に、第1イグナイタ21側には、第1ガス流路31に対応し、第1イグナイタ21が作動した際にインフレータ14内に発生する多量のガスを該第1ガス流路31側へ供給するための第1ガス噴出口41が設けられ、第2イグナイタ22側には、該第2イグナイタ22が作動した際にガスを第2ガス流路32側へ供給するための第2ガス噴出口42が設けられている。即ち第1ガス噴出口41は第1ガス流路31側に配置され、第2ガス噴出口42は第2ガス流路32側に配置されている。第1ガス噴出口41,42間には、インフレータ14とアッパパイプ34との間には、第1ガス噴出口41から噴出したガスが第2ガス流路32に流出したり、また第2ガス噴出口42から噴出したガスが第1ガス流路31に流出したりすることを防止するためのOリング36が、例えば2本配設されている。
【0025】
制御装置16は、側面衝突の方向に対応してインフレータ14を作動させるための例えばエアバッグECUであって、配線38により第1イグナイタ21及び第2イグナイタ22と夫々電気的に接続されている(各接続状態については図示せず)。制御装置16は、該制御装置16に内蔵された加速度センサや車体側部に配設された側突センサ(図示せず)等からの信号により側面衝突及び側突荷重の入力方向を判定して、インフレータ14の第1イグナイタ21及び第2イグナイタ22の少なくとも一方を適宜作動させるようになっている。なお制御装置16は、側面衝突用のエアバッグECUに限られず、前面衝突用のエアバッグECUや後面衝突用のエアバッグECU等を兼ねていてもよい。
【0026】
一対のサイドエアバッグ袋体24(図5),26(図6)は、車両用シート18の両側部において、モジュールケース64,66内に夫々折畳み収納されると共に第1ガス流路31及び第2ガス流路32に夫々接続され、インフレータ14からのガスの供給を受けて夫々独立して膨張するように構成されている。サイドエアバッグ袋体24,26は、乗員40の上半身を側方から拘束できるように、車両上下方向に広い範囲に膨張可能な形状及び容量を有していることが望ましい。
【0027】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、車両用エアバッグ装置10では、車両が側面衝突を受けると、制御装置16がその側面衝突方向に対応して、シートフレーム12内のインフレータ14(図3)を作動させて第1ガス流路31及び第2ガス流路32の少なくとも一方へガスを供給する。
【0028】
具体的には、図5において、車両用エアバッグ装置10を有する車両が、その右側面に矢印A方向に側面衝突を受けると、制御装置16が該右側面に側面衝突があったことを判定し、インフレータ14における車両右側の第1イグナイタ21を作動させて、インフレータ14内に多量のガスを発生させる。そのガスは、第1ガス噴出口41から第1ガス流路31内へ矢印B方向に噴出して行き、該第1ガス流路31に接続されている車両右側のサイドエアバッグ袋体24に供給されて該サイドエアバッグ袋体24を膨張させる。これにより、乗員40を拘束して、該乗員40の衝突側、即ち車両右側への移動を抑制することができる。
【0029】
また図6において、車両用エアバッグ装置10を有する車両が、その左側面に矢印C方向に側面衝突を受けると、制御装置16が該左側面に側面衝突があったことを判定し、インフレータ14における車両左側の第2イグナイタ22を作動させて、インフレータ14内に多量のガスを発生させる。そのガスは、第2ガス噴出口42から第2ガス流路32内へ矢印D方向に噴出して行き、該第2ガス流路32に接続されている車両左側のサイドエアバッグ袋体26へ供給されて該サイドエアバッグ袋体26を膨張させる。これにより、乗員40を拘束して、該乗員40の衝突側、即ち車両左側への移動を抑制することができる。
【0030】
このように、車両用エアバッグ装置10では、インフレータ14をシートフレーム12内に配設するという簡易な構成でありながら、側面衝突方向に対応したサイドエアバッグ袋体24,26の膨張が可能であり、側面衝突時に乗員40が衝突側と反衝突側のどちらに着座していても、該乗員40をサイドエアバッグ袋体24,26により拘束し、該乗員40の車幅方向の移動を抑制することが可能である。
【0031】
また車両用エアバッグ装置10では、インフレータ14が、第1ガス流路31に対応する第1ガス噴出口41と、第2ガス流路32に対応する第2ガス噴出口42とを有しているので、該第1ガス流路31及び第2ガス流路32の少なくとも一方への選択的なガスの供給を、より効率的に行うことができる。
【0032】
更にサイドエアバッグ袋体24,26を、1本のインフレータ14で夫々独立して膨張させることができ、しかも該インフレータ14はアッパパイプ34内に配設されているので、シートバック60内のスペースを余分に消費することがない。このためシートバック60をより薄く設計することが可能となる。
【0033】
[第2実施形態]
図7において、本実施の形態に係る車両用エアバッグ装置20は、第1実施形態の構成に加えて、ヘッドレストパイプ48と、弁機構50(図8)と、ヘッドレストエアバッグ袋体52(図11(A))とを有している。
【0034】
ヘッドレストパイプ48は、ヘッドレスト58を支持すると共に、該ヘッドレスト58側へ連通する第3ガス流路33を有する、ヘッドレスト58の骨格部材であり、例えばパイプをコ字状に折り曲げて、車両上下方向に延びシートバック60に対してヘッドレスト58を支持する脚部48Aと、該脚部48Aの上端間に連なる水平部48Bとを有している。ヘッドレストパイプ48には、ヘッドレストエアバッグ袋体52を折畳み収納するモジュールケース62が取り付けられており、水平部48Bには、モジュールケース62内のヘッドレストエアバッグ袋体52(図11(A))に対してガスを供給するためのガス噴出口48Cが設けられている。
【0035】
シートフレーム12におけるアッパパイプ34の下側には、例えば左右一対の取付けブラケット68が固着されており、該取付けブラケット68にはヘッドレストパイプ48の脚部48Aが固定される支持軸70が枢支されている。脚部48Aの下端は、支持軸70の車両下方に位置しており、該下端には、後面衝突時に乗員40の慣性力を受けて、支持軸70を中心としてヘッドレストパイプ48を揺動させる荷重受け部材72が設けられている。即ちヘッドレストパイプ48は、後面衝突時に支持軸70を中心として揺動するレバーとして構成されており、これにより、後面衝突時にヘッドレスト58を車両前方に揺動させて乗員40の頭部40Hへ接近させると共に、弁機構50によるガスの経路の切替えを行うことができるようになっている。なお通常使用時には、ヘッドレストパイプ48が揺動しないように、取付けブラケット68に対する支持軸70の回動は規制されている。
【0036】
図8において、弁機構50は、シートフレーム12に設けられ、後面衝突時にガスが第3ガス流路33へ供給されるようにガスの経路を切り替えるための機構であって、例えばアッパパイプ34内に配設されたオリフィスプレート78と、第3ガス流路33と連通するようにヘッドレストパイプ48の脚部48Aに設けられ、オリフィスプレート78の下流側近傍に対向するようにアッパパイプ34に差し込まれる弁部82とを有している。
【0037】
図8は、第1ガス流路31側の弁機構50を分解状態で示した図である。同図に示されるように、オリフィスプレート78は、アッパパイプ34の内径に適合する外径を有し、インフレータ14を間に挟むように該アッパパイプ34に一対嵌入された円板状の部材であり、例えば車両上下方向に長く形成されたスリット状の貫通孔78Aが、例えば車両前後方向に離間して2箇所形成されている。図9に示されるように、インフレータ14からのガスは、該貫通孔78Aを通過することで、第1ガス流路31へ流れることができるようになっている。
【0038】
一方アッパパイプ34におけるオリフィスプレート78の車幅方向外側近傍には、弁部82を車両後方から差し込むための差込み孔80が設けられており、弁部82は、該差込み孔80からアッパパイプ34内に常時差し込まれた状態となっている。図9に示されるように、弁部82内は、第3ガス流路33と連通した空洞82Cとなっている。該弁部82には、通常時にオリフィスプレート78の一方の貫通孔78Aと車幅方向に対向し、インフレータ14からのガスをそのまま通過させるスリット状の貫通孔82Aが設けられると共に、図10に示されるように、後面衝突時にヘッドレストパイプ48が揺動した際にオリフィスプレート78の両方の貫通孔78Aと車幅方向に対向し、インフレータ14からのガスを該弁部82内にバイパスさせてヘッドレストパイプ48内の第3ガス流路33へ流すためのガス取込み口82Bが2箇所設けられている。
【0039】
2箇所のガス取込み口82Bは、オリフィスプレート78の貫通孔78Aと同じように車両前後方向に離間して設けられており、該2箇所のガス取込み口82Bの間に1箇所の貫通孔82Aが設けられている。
【0040】
弁部82には、通常使用時にオリフィスプレート78の貫通孔78Aと弁部82の貫通孔82Aとを対向させるための位置決め用のストッパ84と、後面衝突時に該貫通孔78Aとガス取込み口82Bとを対向させるための位置決め用のストッパ86とが設けられている。第2ガス流路32側における弁機構50の構成については、第1ガス流路31側と同様であるので、図示及び説明を省略する。
【0041】
図11(A)において、ヘッドレストエアバッグ袋体52は、ヘッドレスト58内のモジュールケース62に折畳み収納されると共に第3ガス流路33に接続され、図11(B)に示されるように、後面衝突時にインフレータ14(図4)からのガスの供給を受けて膨張するように構成されている。
【0042】
なお本実施形態における弁機構50の構成やヘッドレストパイプ48等については、上記構成及び図示の構成には限られず、後面衝突時にインフレータ14からヘッドレストエアバッグ袋体52へ膨張用のガスを供給できる構成であればよい。
【0043】
他の部分は、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0044】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図9に示されるように、車両に対する後面衝突が生じていない状態では、弁部82は、ストッパ84がアッパパイプ34の内面に当接する位置、即ちアッパパイプ34に対する差込みが浅い状態で保持されており、オリフィスプレート78における車両前方側の貫通孔78Aは第1ガス流路31へ向けて開放され、また車両後方側の貫通孔78Aについても弁部82の貫通孔82Aと車幅方向に対向することで第1ガス流路31へ向けて開放されている。
【0045】
このため、例えば車両がその右側面に対して側面衝突を受けた場合には、制御装置16により第1イグナイタ21が作動して、第1ガス噴出口41からガスが噴出すると、該ガスはオリフィスプレート78における車両前方側の貫通孔78Aを通過すると共に、車両後方側の貫通孔78A及び弁部82の貫通孔82Aを通過して、第1ガス流路31を矢印B方向へ流れて行く。そして図5と同様に、サイドエアバッグ袋体24が該ガスの供給を受けて膨張する。車両がその左側面から側面衝突を受けた場合も同様であり、このようにして乗員40を拘束することで、該乗員40の車幅方向の移動を抑制することが可能である。
【0046】
次に、車両が後面衝突を受けた場合の作用について説明する。図11(A)において、車両が後面衝突を受けると、乗員40はその慣性力により車両後方へ移動しようとするので、該乗員40の背中40Bにより、荷重受け部材72が車両後方へ押される。荷重受け部材72が車両後方へ押されると、ヘッドレストパイプ48が支持軸70を中心として紙面反時計回りに揺動し、ヘッドレスト58が乗員40の頭部40Hに接近すると共に、弁機構50における弁部82がアッパパイプ34内へ深く差し込まれる。このとき、図10に示されるように、弁部82は、ストッパ86がアッパパイプ34に当接するまでアッパパイプ34内に差し込まれ、オリフィスプレート78の2箇所の貫通孔78Aが、いずれも弁部82のガス取込み口82Bと車幅方向と正確に対向した状態となってガスの経路が切り替えられる。
【0047】
一方、制御装置16(図1)は、車両が後面衝突を受けたことを判定すると、例えば第1イグナイタ21及び第2イグナイタ22の両方を作動させ、第1ガス噴出口41及び第2ガス噴出口42の両方からガスを噴出させる(図4)。ここで、第1ガス噴出口41側におけるその後のガスの流れについて説明すると、図10において、該第1ガス噴出口41から噴出したガスは、貫通孔78Aを通過した後、弁部82のガス取込み口82Bから空洞82Cへ矢印E方向に流れ、更に該空洞82Cからヘッドレストパイプ48内の第3ガス流路33へ流れて行く。
【0048】
これにより、図11(B)に示されるように、モジュールケース62内のヘッドレストエアバッグ袋体52にガスが供給されて、該ヘッドレストエアバッグ袋体52がヘッドレスト58と頭部40Hとの間に膨張する。この膨張したヘッドレストエアバッグ袋体52により、頭部40Hを拘束することが可能である。このように、車両用エアバッグ装置20では、側面衝突時だけでなく、後面衝突時にも対応することが可能である。また弁機構50によるガスの経路の切替えが、後面衝突時における乗員40の慣性力を利用して行われるので、簡易な構成でタイミングよく乗員40の頭部40Hを拘束することが可能である。
【0049】
なお本実施形態では、後面衝突時に制御装置16が第1イグナイタ21及び第2イグナイタ22の両方を作動させるとしたが、インフレータ14の作動制御はこれに限られるものではなく、第1イグナイタ21及び第2イグナイタ22の一方を作動させるようにしてもよい。
【0050】
また上記各実施形態において、第1ガス流路31及び第2ガス流路32が、夫々サイドパイプ44,46内に設けられているものとしたが、これに限られるものではなく、第1ガス流路31及び第2ガス流路32は、別のガス配管であってもよい。またインフレータ14が、シートフレーム12におけるアッパパイプ34内に配設されるものとしたが、アッパパイプ34以外のシートフレーム12内に配設するようにしてもよい。例えばサイドエアバッグ袋体24,26をシートクッション側に設ける場合には、シートクッションフレーム30内に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1から図6は、第1実施形態に係り、図1は車両用エアバッグ装置を有する車両用シートの骨格を示す斜視図である。
【図2】シートフレーム及びモジュールケースを示す分解斜視図である。
【図3】シートフレーム及びモジュールケースの変形例を示す分解斜視図である。
【図4】アッパパイプ内に配設されたインフレータを示す拡大断面図である。
【図5】車両がその右方向から側面衝突された際に、車幅方向右側のエアバッグ袋体が膨張して乗員を拘束している状態を示す正面図である。
【図6】車両がその左方向から側面衝突された際に、車幅方向左側のエアバッグ袋体が膨張して乗員を拘束している状態を示す正面図である。
【図7】図7から図11は、第2実施形態に係り、図7は車両用エアバッグ装置を有する車両用シートの骨格を示す斜視図である。
【図8】弁機構を示す拡大分解斜視図である。
【図9】側面衝突時におけるインフレータからのガス流れを示す拡大断面図である。
【図10】後面衝突時におけるインフレータからのガスの流れを示す拡大断面図である。
【図11】(A)通常使用時において、乗員が車両用シートに着座している状態を示す断面図である。(B)後面衝突時にヘッドレストパイプが揺動することでガスの経路が切り替えられ、ヘッドレストエアバッグ袋体52が膨張した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 車両用エアバッグ装置
12 シートフレーム
14 インフレータ
16 制御装置
18 車両用シート
20 車両用エアバッグ装置
24 サイドエアバッグ袋体
26 サイドエアバッグ袋体
31 第1ガス流路
32 第2ガス流路
33 第3ガス流路
40 乗員
41 第1ガス噴出口
42 第2ガス噴出口
48 ヘッドレストパイプ
50 弁機構
52 ヘッドレストエアバッグ袋体
58 ヘッドレスト
60 シートバック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートの骨格を構成すると共に該車両用シートの車幅方向の両側部へ夫々連通した第1ガス流路及び第2ガス流路を有するシートフレームと、
該シートフレーム内に配設され、前記第1ガス流路及び前記第2ガス流路の少なくとも一方へ選択的にガスを供給可能なインフレータと、
側面衝突時に、該側面衝突の方向に対応して前記インフレータを作動させる制御装置と、
前記両側部において夫々折畳み収納されると共に前記第1ガス流路及び前記第2ガス流路に夫々接続され、前記インフレータからのガスの供給を受けて夫々独立して膨張する少なくとも一対のサイドエアバッグ袋体と、
を有することを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記インフレータは、前記第1ガス流路に対応する第1ガス噴出口と、前記第2ガス流路に夫々対応する第2ガス噴出口とを有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
ヘッドレストを支持すると共に、該ヘッドレスト側へ連通する第3ガス流路を有するヘッドレストパイプと、
前記シートフレームに設けられ、後面衝突時に前記ガスが前記第3ガス流路へ供給されるように前記ガスの経路を切り替える弁機構と、
前記ヘッドレストに折畳み収納されると共に前記第3ガス流路に接続され、後面衝突時に前記ガスの供給を受けて膨張するヘッドレストエアバッグ袋体と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記弁機構は、後面衝突時における乗員の慣性力を利用して作動するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−30528(P2008−30528A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203485(P2006−203485)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】