車両用サスペンション装置
【課題】電磁アクチュエータに電力を供給する配線を容易に配設し得るサスペンション装置を得る。
【解決手段】電磁アクチュエータへ電力を供給する複数の電力供給路形成体230を、アッパサポート22を貫通して配設する。車体側部材32,アッパサポート22のマウントラバー112,当接板110,スタッドボルト114を貫通する穴を複数設け、それらの各々に電力供給路形成体230を通して配設する。マウントラバー112を貫通する部分は並列コード部238にされ、マウントラバー112の変形に応じて小径コード236が容易に変形するようにされている。また、ロングピン付接続端子290がスタッドボルト114を貫通して設けられ、スタッドボルト114先端に取り付けられたモータ側コネクタ232の一部を構成し、電源側コネクタ224と容易に接続可能にされている。
【解決手段】電磁アクチュエータへ電力を供給する複数の電力供給路形成体230を、アッパサポート22を貫通して配設する。車体側部材32,アッパサポート22のマウントラバー112,当接板110,スタッドボルト114を貫通する穴を複数設け、それらの各々に電力供給路形成体230を通して配設する。マウントラバー112を貫通する部分は並列コード部238にされ、マウントラバー112の変形に応じて小径コード236が容易に変形するようにされている。また、ロングピン付接続端子290がスタッドボルト114を貫通して設けられ、スタッドボルト114先端に取り付けられたモータ側コネクタ232の一部を構成し、電源側コネクタ224と容易に接続可能にされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション装置に関し、特に、電磁アクチュエータを備えたサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁アクチュエータを備えた車両用サスペンション装置が検討されている。例えば、電磁アクチュエータによって車体と車輪とを接近離間させる向きの力を発生させることにより、車体の姿勢変化や振動を、より適切に抑制すること等ができる。下記特許文献1には、電磁アクチュエータを備えたサスペンション装置の一例が記載されている。また、下記特許文献2〜4には、荷重センサ等を備えたサスペンション装置の一例が記載されている。
【特許文献1】特開平2−120113号公報
【特許文献2】特開平8−313372号公報
【特許文献3】特開昭63−43241号公報
【特許文献4】実開平5−12209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電磁アクチュエータには、比較的大きな電流が供給される場合が多く、比較的太い電線や大きなコネクタが必要になる。そうすると、配線の取り回し、接続等をどうするかが問題となるのであるが、上記特許文献1には、電磁アクチュエータに電力を供給するための配線が記載されていない。上記特許文献2〜4には、荷重センサの信号線、減衰力変更装置の電線の取り回しが記載されている。しかしながら、荷重センサの信号線等は比較的細いのに対して、電磁アクチュエータに接続される電線は、比較的太く、接続コネクタも大きいため、荷重センサ等の信号線と同様に配設できるとは限らないという問題がある。
このような問題は、従来のサスペンション装置の実用性を向上させる上で障害となり得る問題の一例であり、サスペンション装置には種々の観点からの改良の余地がある。すなわち、従来のサスペンション装置に改良を加えることによって、電磁アクチュエータへの配線を容易に配設できる等、サスペンション装置をより実用的なものとすることが可能である。本発明は、そういった実情に鑑みてなされたものであり、サスペンション装置の実用性を向上させることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明のサスペンション装置は、電磁アクチュエータによって車輪側連結体と車体側連結体とを接近離間させる向きの力を発生させる電磁連結装置と、車体内部の電源から供給される電力を電磁アクチュエータに導く複数の導電路形成体と、車体側連結体を貫通して設けられ、対応する1以上ずつの導電路形成体を貫通させる複数の導電路貫通部とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のサスペンション装置において、複数の導電路貫通部が設けられており、電磁アクチュエータに電力を供給する複数の導電路形成体が、複数の集合に分けて配線される。そのため、複数の導電路形成体を1つに纏める態様と比較して、各集合体が曲がりやすくなり、配設が比較的容易になる。すなわち、本発明によれば、実用性の高いサスペンション装置が得られるのである。なお、本発明のサスペンション装置の各種態様およびそれらの作用および効果については、下記〔発明の態様〕の項において詳しく説明する。
【発明の態様】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から一部の構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項と(4)項とを合わせたものが請求項1に、(2)項と(3)項とを合わせたものが請求項2に、(5)項と(6)項とを合わせたものが請求項3に、(7)項と(8)項とを合わせたものが請求項4に、(9)項と(10)項とを合わせたものが請求項5に、(11)項が請求項6に、(14)項と(15)項とを合わせたものが請求項7に、(16)項が請求項8に、(19)項が請求項9に、それぞれ相当する。
【0008】
(1)車輪保持部に連結される車輪側連結体と、
車体の一部に連結される車体側連結体と、
電磁アクチュエータを有し、前記車輪側連結体と前記車体側連結体とを接近離間可能に連結するとともに、前記電磁アクチュエータによってそれらを接近離間させる向きの力を発生させる電磁連結装置と、
車体内部の電源から供給される電力を前記電磁アクチュエータに導く導電路を形成する複数の導電路形成体と、
前記車体側連結体を貫通して設けられ、前記複数の導電路形成体のうちの対応する1以上のものを貫通させる1以上の導電路貫通部と
を含むことを特徴とする車両用サスペンション装置。
本項の電磁連結装置は、電磁アクチュエータによって車輪保持部と車体の一部とを接近離間させる向き(以後、接近離間方向と称する)の力である接近離間力を発生させることができる。なお、車輪保持部は、例えば、ステアリングナックル,アーム等の車輪を回転可能に保持する部材を含む部分である。また、車輪側連結体は、例えば、ロアサポートと称されるものであり、ステアリングナックル、アーム等に連結される部分である。車体の一部は、例えば、サスペンションタワー等と称される場合があり、車体のうちの車輪に対応する部分であって、車体側連結体が取り付けられる部分(例えば、連結体取付部と称することができる)である。また、車体側連結体は、例えば、アッパサポート,マウントインシュレータ等と称され、多くの場合、車体の一部に締結される。
本項の電磁連結装置は、接近離間力を発生させることによって、例えば、路面入力に起因する車体の振動を抑制したり、車体の姿勢変化を抑制したりすることができる。電磁アクチュエータは、例えば、導電路形成体を介して電力が供給されることよって、あるいは、導電路形成体を含む回路において発電することによって、接近離間力を発生させることができる。なお、サスペンション装置が、コイルスプリングやガススプリングを備えている場合には、それらスプリングおよび電磁アクチュエータによって接近離間力を発生させるものとすることができる。
導電路形成体は、例えば、電線,接続端子等を含むものとすることができ、導電性を有する金属(例えば、銅,アルミ,鉄,銀,あるいはそれらの合金等)その他の導電性材料によって形成することができる。電線は、例えば、絶縁被覆がなされた被覆電線や、被覆のない裸電線とすることができる。さらに、電線の導電部分が、例えば、比較的太い1本の導電素線によって導通を生じさせるものであってもよいし、比較的細い複数の導電素線が並列に並べられて、あるいは撚り合わされて1本の電線にされたものでもよい。
なお、裸電線が含まれている場合は、裸電線の周囲が絶縁体であることや、他の導電体との離間距離が確保されていることが望ましい。導電路形成体は、電線以外に、例えば、金属製の接続端子等のように比較的柔軟性に乏しい部材を含むものとすることができる。なお、それらの導電性材料が、絶縁体によって車体の一部や車体側連結体と電気的に絶縁されることが望ましい。絶縁体は、例えば、ゴム,ゴムの類似物,樹脂,セラミックス等のうちの少なくとも1つを含むものとすることができる。なお、ゴムの類似物については後述する。
本項の態様において、複数の導電路形成体がサスペンション装置の上側に配設される。この場合、前記従来技術のように、車体側連結体を迂回するように複数の導電路形成体を配線することが想起されるが、配設スペースの制約の中で、それらより太い電線を迂回させることが容易ではない場合が多い。例えば、本項の態様を、後述する態様のように、車体側連結体を、電磁連結装置の一部を接近離間方向に貫通させる穴である連結装置貫通穴が設けられた態様とすることができる。その場合に、連結装置貫通穴と電磁連結装置の外周部との間に隙間が設けられるのであるが、比較的太い電線を通すことができるほど広くない場合が多い。また、例えば、その連結装置貫通穴に電磁連結装置が有するロッドが通されている場合であっても、複数の電線等を通し得る大きさの穴を設けることが困難な場合がある。
それに対して、本項の態様において、導電路貫通部が設けられており、複数の導電路形成体が車体側連結体を貫通するように配設される。そのため、車体側連結体を迂回する際の制約を受けずに済み、複数の導電路形成体を配設しやすくなるのである。すなわち、本項の態様によれば、実用性の高いサスペンション装置が得られるのである。
導電路貫通部は、例えば、単純なものでは、車体側連結体を貫通する貫通穴とすることができ、その貫通穴に導電路集合体を通すことができる。また、例えば、車体側連結体を貫通して形成された導電性の部分である導電部にすることもできる。その導電部は、導電路形成体の一部を構成するものとすることができる。なお、車体側連結体のうちの導電部の周囲の部分が導電性である場合には、上記導電部とその他の部分とが電気的に絶縁されていることが望ましい。
(2)前記複数の導電路形成体の各々が、車体内部の電源と電気的に接続された複数の電源側接続端子のうちの対応するものと接続されるアクチュエータ側接続端子を含む(1)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、各導電路形成体の端部にアクチュエータ側接続端子が接続されたものである。そのアクチュエータ側接続端子と嵌合する電源側接続端子が、電源に接続された電源線の端部に設けられていれば、サスペンション装置の組み付け時に各導電路形成体と電源線とを容易に接続することができる。
アクチュエータ側接続端子は、例えば、後述する態様のように、車体側連結体に固定することができる。この場合、車体側連結体が車体の一部に固定された後に、電源側接続端子をアクチュエータ側接続端子に接続することにより、容易に各導電路形成体と電源線とを電気的に接続することができる。このアクチュエータ側接続端子を車体側連結体に固定する態様には、電源側接続端子が、車体側から電磁連結装置側に車体側連結体を貫通する態様も含まれる。その場合には、導電路形成体が、電源側接続端子のうちの少なくとも車体側連結体を貫通する部分を含むものとすることができる。
また、例えば、導電路形成体(電線等)を車体側連結体の貫通穴(導電路貫通部)に通し、その導電路形成体の車体側に延び出した部分の先端部にアクチュエータ側接続端子を設けることができる。その場合には、例えば、予め電源側接続端子を車体内に固定しておくことができ、その電源側接続端子にアクチュエータ側接続端子を接続することにより、容易に各導電路形成体と電源線とを電気的に接続することができる。
なお、複数の導電路形成体のうち、互いに同相の電力が供給されるものが複数ある場合には、それら同相の電力が供給される複数の導電路形成体の各々に設けられたアクチュエータ側接続端子が別個のものとして形成されていてもよいし、一体のものとして形成されていてもよい。
(3)前記1以上の導電路貫通部の各々が、それらに対応する前記1以上ずつの導電路形成体の各々の前記アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部を含む(2)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部が導電路貫通部に設けられ、アクチュエータ側接続端子が車体側連結体に固定される態様である。すなわち、車体側連結体に、アクチュエータ側接続端子と端子保持部とを含むアクチュエータ側の接続具が設けられた態様である。
本項の態様によれば、サスペンション装置が車両に組み付けられる前の段階でアクチュエータ側接続端子が固定されており、サスペンション装置の保管,輸送,組み付け等の際に、電線が変形したり、アクチュエータ側接続端子がみだりに動いたりすることを防止することができる。また、前述のように、車体側連結体が車体の一部に固定された後に、電源側接続端子をアクチュエータ側接続端子に接続することにより、容易に各導電路形成体と電源線とを電気的に接続することができる。
本項の態様においては、例えば、アクチュエータ側接続端子を車体側連結体の車体側の部分に固定することができ、その場合には、例えば、貫通穴(導電路貫通部の一態様である)に導電路形成体を通して配設することができる。また、例えば、アクチュエータ側接続端子を車体側連結体内またはそれの電磁連結装置側の部分に固定することもでき、その場合には、例えば、前述のように電源側接続端子の少なくとも一部を車体側連結体の車体側から貫通穴に挿入してアクチュエータ側接続端子に接続することにより、容易に各導電路形成体と電源線とを接続することができる。さらにまた、例えば、アクチュエータ側接続端子の長さ寸法を、車体側連結体を貫通し得る長さとし、そのアクチュエータ側接続端子が車体側連結体を貫通した状態で保持することもできる。
端子保持部は、絶縁性を有していることが望ましく、例えば、樹脂,ゴム,ゴムの類似物(後述する),セラミックス等の材料から形成することができる。
なお、本項の態様では、車体側連結体が車体の一部に固定された状態において、車体の一部のうちの導電路貫通部と対応する部分に、導電路集合体,電源側接続端子等を貫通させる穴が設けられていることが望ましい。
(4)前記1以上の導電路貫通部が、複数の導電路貫通部とされ、
前記複数の導電路形成体が、それら複数の導電路貫通部に対応する複数の集合に分けられ、それら複数の集合同士が、それらの配線経路のうちの少なくとも一部において互いに別個に変形可能である(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
前述のように、電磁アクチュエータは比較的大きな電流を消費するため、電力を供給するために比較的太い電線が必要となる。また、通常、電力を供給するために、互いに絶縁された複数の電線(例えば、3本)が纏められて1本の電線にされる。しかし、比較的太い複数の電線を1本に纏めると、剛性が高くなり、曲げにくいため、配設の自由度が比較的低くなる。また、その太い電線を接続するコネクタ等の接続具も比較的大きなものが必要となり、配設場所の制約が大きくなる。
それに対して、本項の態様において、電磁アクチュエータに電力を供給する複数の導電路形成体が、それぞれ1以上ずつの導電路形成体を含む複数の集合(各集合を導電路集合体と称する場合がある)に分けて配線される。そのため、複数の導電路形成体を1つに纏める態様と比較して、各導電路集合体が曲がりやすくなり、配設が比較的容易になる。また、複数の集合の各々に接続具が設けられる場合には、その接続具を小さくすることができる。さらにまた、本項の態様では、複数の集合がそれぞれ別々の導電路貫通部を通るようにされており、各集合の配設場所を広くすることができる。また、接続具が設けられる場合には、接続具が互いに干渉しにくくすることができる。以上に述べたように、本項の態様によれば、複数の導電路形成体を1つに纏める態様と比較して各集合を曲がりやすくして配設を比較的容易にすることができる。
なお、1つの集合が複数の導電路形成体を含む場合に、それら複数の導電路形成体が、配線経路のうちの少なくとも一部において、互いに別個に変形可能にされている場合には、より変形が容易となる。
また、1つの集合が複数の導電路形成体を含む場合に、それら複数の導電路形成体が互いに、電源の複数の相のうちの同じ相に接続されてもよいし、異なる相に接続されてもよい。例えば、電磁アクチュエータに供給される電力の、(i)各相に複数ずつの導電路形成体を接続するとともに、各導電路貫通部に互いに同相の複数ずつの導電路形成体を対応させることや、(ii)各相に電力の相数の倍数(例えば、3の倍数)ずつの導電路形成体を接続するとともに、各導電路貫通部毎に各相1以上ずつの導電路形成体を対応させることができる。これらの態様では、電力の各相毎に複数ずつの導電路形成体が設けられており、一部の導電路形成体が断線した場合に、例えば、出力を下げて電磁アクチュエータを作動させることができるため、フェールセーフ性を向上させることができる。
(5)前記1以上の導電路貫通部が、複数の導電路貫通部とされ、
前記車体側連結体が、車体側に突出して車体の一部を貫通する複数の雄ねじ部材であって各々軸方向の貫通穴を有し、前記複数の導電路貫通部の各々の少なくとも一部を形成するものを含む(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様において、サスペンション装置の車両への取付時に、車体の一部を雄ねじ部材が貫通した状態でそれにナット等の雌ねじ部材が螺合させられて、車体側連結体が車体の一部に締結される。そして、雄ねじ部材は筒状を成しており、内側に導電路形成体を通すことができる。車体の一部には、通常、雄ねじ部材を通す締結用の穴が予め配設されているため、本項の態様には、配線用に別の穴を設けなくても済むというメリットがある。
(6)前記複数の導電路形成体の各々が、車体内部の電源と電気的に接続された電源側接続端子と接続されるアクチュエータ側接続端子を含み、
前記複数の導電路貫通部の各々が、前記複数の雄ねじ部材の各々に設けられて前記アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部を含む(5)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様によれば、端子保持部を雄ねじ部材に取り付けることにより、比較的容易にアクチュエータ側接続端子を車体側連結体に固定することができる。その場合、端子保持部およびアクチュエータ側接続端子の両者の各々の外径を、雄ねじ部材の内径以下にして端子保持部等を雄ねじ部材の内側に設けることや、雄ねじ部材の外径以下にして端子保持部等を雄ねじ部材の先端に設けることができ、車体の一部に設けられる締結用の穴が必要以上に大きくなることを抑制することができる。なお、本項のアクチュエータ側接続端子は上記(2)項に記載のものと同様であり、本項の端子保持部は上記(3)項に記載のものと同様である。
(7)前記車体側連結体が、車体の一部を支持する支持体と、ゴムまたはその類似物によって形成されて前記支持体と前記電磁連結装置との間に介在させられる弾性連結部とを含む(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様では、弾性連結部の存在により、電磁連結装置の端部と車体の一部との相対移動がある程度許容される。この態様において、それらの相対移動に伴って導電路形成体が変形させられるため(後述する)、各導電路形成体あるいはそれの集合が変形しやすくされることが望ましい。
本項の弾性連結部は、例えば、サポートゴム,マウントラバー等と称される場合があり、通常、多くのサスペンション装置に設けられている。なお、ゴムの類似物は、例えば、合成ゴム(例えば、熱可塑性エラストマー),ゴムと合成ゴムの混合物等とすることができる。支持体は、金属、硬質合成樹脂等、ゴムに比較して硬質の材料で形成される。
(8)前記1以上の導電路貫通部の各々が、前記支持体および前記弾性連結部を貫通するものである(7)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様では、導電路集合体が弾性連結部を貫通した状態で配設される。そのため、例えば、弾性連結部が、電源線と電磁アクチュエータとの間を横切る状態で配設されている場合に、弾性連結部を迂回する場合と比較して、電磁アクチュエータと電源線とを比較的短い距離で接続することができる。
本項の態様には、導電路形成体と弾性連結部との間に隙間が存在する態様(例えば、導電路貫通部が導電路形成体に比して大きめの貫通穴にされた場合)と、導電路形成体と弾性連結部とが隙間無く密着する態様(例えば、ゴム等によって電線等が鋳包まれた態様)とが含まれる。導電路形成体と弾性連結部との間に隙間が存在する態様では、弾性連結部の変形に伴い導電路形成体が比較的容易に変形することができる。一方、導電路形成体と弾性連結部とが互いに密着する態様では、導電路形成体の絶縁性において比較的優れている。なお、導電路形成体と弾性連結部とが互いに密着する態様では、導電路形成体に被覆が成され、その被覆に弾性連結部が密着することが望ましい。弾性連結部が変形した場合に、導電路形成体と被覆との間で滑りが生じることで、導電路形成体の変形が比較的容易になるからである。
また、本項の態様が、上記(5)項または(6)項に従属する態様において、雄ねじ部材の電磁連結装置側に弾性連結部が配設されている場合に好適である。
【0009】
(9)前記複数の導電路形成体の各々が、設定された2点間を結ぶ変形容易導電部を含み、それら変形容易導電部の各々が、前記2点間を結ぶ1本の電線であってその電線の中心線が各変形容易導電部の中心線と一致するとともに許容伝導電力が各変形容易導電部の許容伝導電力と同じである標準単一電線を想定した場合よりも、容易に変形するものである(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様において、導電路形成体の少なくとも一部が変形容易にされており、導電路形成体の配設が一層容易になる。
変形容易導電部の比較対象となる上記標準単一電線は仮想的な電線であり、変形容易導電部の中心線に沿うように配設されるものとされる。変形容易導電部の中心線は、例えば、それらの中央位置,重心位置等を通る線とすることができる。なお、標準単一電線は仮想的な電線であるが、障害物を通り抜けるような非現実的なものを想定するのではなく、その状況に応じて障害物を迂回する等、現実的な経路を通るものを想定することが望ましい。
また、標準単一電線は、変形容易導電部と同じ許容伝導電力になる太さであると想定される。上記許容伝導電力は、導電体が継続して伝導することが許容される電力であり、例えば、許容電流や電流容量の値とすることや、それらを決定する方法と類する方法で決定することができる。なお、変形容易導電部が電線である場合には、標準単一電線の材質(導電材料等)は変形容易導電部のものと同じにされる。また、被覆はないものとして比較することが簡便であるが、被覆の有無を同じにすることもできる。
変形容易導電部が電線でない場合には、導電路形成体に含まれる電線や、電源線の材質、あるいは一般的な導電材料(銅,銅合金等)とすることができる。なお、標準単一電線の許容伝導電力を、例えば、それと対応する導電路形成体と同じにすることもできる。
変形が容易であることは、導電路形成体の耐久性の点においても有利となる場合が多い。例えば、本項の態様が上記(7)項または(8)項に従属する場合には、本項のサスペンション装置が車両に搭載され、その車両が走行する状態において、電磁連結装置と車体の一部との若干の相対移動が許容される。そして、それらの相対移動に伴い、導電路形成体の、車体側に固定された部分と、電磁連結装置側に固定された部分とが相対移動させられ、導電路形成体、特に電線の部分が変形(伸縮変形,曲げ変形等)させられることとなる。このような変形によって、あるいはその変形の繰り返しによって、電線が断線する虞が生じる。また、電線自体は断線しない場合であっても、電線と接続端子との、ハンダ付け、ねじ締め、かしめ付け等による電気的な接続が不完全になる虞がある。それに対して、本項の態様によれば、変形容易導電部において容易に変形できるため、車体側に固定された部分と電磁連結装置側に固定された部分との相対移動を無理なく吸収することができ、断線等の虞を低減させることができる。すなわち、本項の態様は、変形容易導電部の両端部が互いに相対移動させられる場合に、特に好適である。
また、本項の態様が、変形容易導電部が電線で構成されるとともに、上記(7)項または(8)項に従属する場合には、例えば、電線の長さを、車体の一部と電磁連結装置とが相対移動によって最大限離間し得る状態の上記設定された2点間を電気的に接続するために必要な長さ以上とすることができる。このようにすれば、車体の一部と電磁連結装置とが相対移動しても、電線が過度に引き伸ばされることを抑制することができ、電線の断線等の虞を低減させることができる。
本項ないし下記(19)項の特徴は、上記(1)項ないし(8)項の特徴とは独立に採用可能である。
(10)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と比較して、(a)前記2点を互いに接近または離間させる向きに相対移動させる同じ力が加わった場合の前記2点の相対移動量が1.5倍以上であることと、(b)前記2点の接近離間方向における弾性変形可能量が1.5倍以上であることと、(c)前記2点を互いに接近または離間させた場合に発生する最大歪みが75%以下であることとの少なくとも1つを満たすものとされた(9)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、変形容易導電部の変形の容易さを具体的に規定するものである。(a)は、簡単に言えば、伸縮のし易さであり、上記相対移動量が2倍以上,3倍以上と大きい方が、より変形が容易になる。(b)は、弾性変形領域における相対移動可能な量であり、簡単に言えば、壊れずに伸縮可能な量の大きさであり、上記弾性変形可能量が2倍以上,3倍以上と大きい方が、より変形が容易になる。(c)は、簡単に言えば、曲がり易さであり、上記最大歪みが65%以下、60%以下,55%以下と小さくなる方が、より変形が容易になる。
(11)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線よりも直径の小さい複数の小径電線の各々が別個に変形し得る状態で互いに並列に配線された並列小径電線部を含む(9)項または(10)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、複数の小径電線(並列小径電線部)によって、変形容易導電部が形成された態様である。小径電線は、単一電線に比べて剛性が低いため、変形が容易になる。また、小径であることから、例えば、湾曲による最大歪みが小さくなる点において、耐久性の点で有利である。なお、小径電線の直径は、例えば、小径電線を2本にした場合には、単純には、標準単一電線の71%程度になり、3本にした場合には58%程度になる。また、前述の(c)最大歪みは、直径に比例し、上記の例では、概ね71%程度、58%程度になる。すなわち、並列小径電線部を設けることによって、変形が一層容易になり、配設の自由度を大きくすることと、変形に対する耐久性を大きくすることとの少なくとも一方が可能となるのである。
なお、小径電線には、湾曲(螺旋状にすることも含む)させて緩みを持たせることが容易であるというメリットもある。湾曲,螺旋等については後述する態様の特徴を採用することができる。
複数の小径電線の太さの決定において、標準単一電線と小径電線との材質が同じであると想定し、例えば、複数の小径電線の断面積(導電体の部分)の総和を、標準単一電線の断面積(導電体の部分)と等しくすることができる。なお、放熱等の影響も考慮することが望ましい。また、両者の面積を厳密に等しくすることは不可欠ではないが、材質が同じであれば比較的近い大きさになりやすいと考えられる。
小径電線は、単一電線と同様に、例えば、比較的太い1本の導電素線によって導通を生じさせるものであってもよいし、比較的細い複数の導電素線が1本の電線にされたものでもよい。また、裸電線とすることや、絶縁被覆された被覆電線とすることができる。また、複数の小径電線は、単一電線等に、互いに別個の小径電線が複数接続されたものとすることや、複数の小径電線が纏めて被覆されて1本の単一電線にされたものが、それの一部の被覆が除去され、その被覆がない部分において複数の小径電線が露出させられて互いに別個に変形可能にされたものとすることができる。
なお、本項の特徴は、上記(1)項ないし(10)項の特徴と独立に採用することができる。その場合には、例えば、上記標準単一電線を、単に、許容伝導電力が変形容易導電部(あるいは導電路形成体)と同じ電線(標準電線)とし、変形容易導電部を、その標準電線よりも容易に変形するものとすることができる。また、例えば、小径電線を連結装置貫通穴と電磁連結装置との隙間を通す態様とすることもできる。単一電線を通すことができない隙間でも、小径電線であれば通すことができる場合があるからである。また、小径電線の変形の容易さ、径の小ささから、車体連結部の外側を迂回して配設することも容易になる。それらの態様の場合には、変形容易導電部と称するよりも、小径電線が並列に配設された並列小径電線部と称することが望ましい。本項の態様を、複数の小径電線を導電路に接続して導電路を分岐させる導電路分岐具を含むものとすることができる。
(12)前記変形容易導電部が、導電性を有する弾性体によって形成された弾性体製導電部を含む(9)項ないし(11)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
ばね材,ゴム,それの類似物等の弾性体によれば、変形容易導電部を単一電線に比べて容易に変形可能とすることができる。導電性を有するばね材は、例えば、ベリリウム銅等の銅合金,ステンレス鋼、ピアノ線等を用いることができる。そのばね材の形状は、例えば、コイルスプリング状、板ばね状、U字状等、種々の形状にすることができる。導電性を有するゴム等については、次項に記載する。
(13)前記弾性体が、導電性を有するゴムまたはその類似物によって形成された(12)項に記載の車両用サスペンション装置。
導電性を有するゴムまたはその類似物は、例えば、ゴム,合成ゴム,それらの混合物等に、粉末、短繊維状の、カーボンブラック,金属等を混合したものとすることができる。なお、本項の態様によれば、前記(7)項の態様における弾性連結部の一部を導電性を有するゴム等に置き換えることによって、弾性連結部を貫通する導電路形成体を配設することができる。
(14)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が複数回湾曲させられて形成されたS字形部を1つ以上備えたつづら折れ部を含む(9)項ないし(13)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、例えば、直線的に接続可能な2点間を接続する電線を、湾曲させることによって意図的に緩みを生じさせ、あるいは撓み代を増やすことにより、電線が容易に変形できるようにしたものである。標準単一電線と同等の1本の電線は、例えば、標準単一電線と同じ太さで同じ材質(導電材料等)で構成された電線とすることができる。なお、本項ないし(17)項の態様は、配線作業によって電線が若干曲がっているようなものまで含むものではない。例えば、上記(10)項の基準や、次項の基準に適合するものとすることができる。なお、本項ないし(17)項の態様において、電線が自由状態で湾曲,螺旋等の状態を維持するものとすることができる。
(15)前記1以上のS字形部の各々が、そのS字形部自体の中心線とそのS字形部を構成する電線の中心線との離間距離の最大値を前記S字形部自体の中心線の長さで除した値が、0.3以上である(14)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、S字形部の形状を具体的に規定するものである。なお、上記値が、0.4以上,0.5以上,0.6以上と大きい方が、より変形が容易になる。
(16)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が螺旋状に1回転以上巻かれた螺旋部を含む(9)項ないし(15)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、電線がコイル状に巻かれて、容易に変形できるようにしたものである。螺旋部は、伸縮変形および曲げ変形が容易であり、断線等の虞をより一層低減させることができる。標準単一電線と同等の1本の電線は、例えば、標準単一電線と同じ太さで同じ材質で構成された電線とすることができる。本項の態様は、湾曲の一態様と考えることができる。なお、上記の態様と同様に、例えば、螺旋の1単位(1回転分)について、螺旋自体の中心線と螺旋を構成する電線の中心線との離間距離の最大値を、螺旋自体の中心線の長さで除した値を、0.2以上,0.3以上,0.4以上,0.5以上とすることができ、その値を大きくする方が変形が容易になる。
(17)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が複数回湾曲させられて、前記標準単一電線の1.5倍以上の長さにされた湾曲部を含む(9)項ないし(16)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、湾曲(螺旋も含む)の程度を電線の長さで規定するものである。電線が長いほど緩み,撓み量が大きくなり、変形が容易になる。また、上記長さを、標準単一電線の2倍以上,3倍以上,4倍以上とすることができる。なお、一般的に、1本の電線の太さは均一であるので、重量によって長さを規定することもできる。例えば、重量が1.5倍であれば、長さが1.5倍になっているとみなすことができる。
(18)前記複数の導電路形成体の各々が、前記変形容易導電部と許容伝導電力が同じ1本の電線である標準電線と、その標準電線と直列に接続された前記変形容易導電部とを含む(9)項ないし(17)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様によれば、電線を変形させる必要性が比較的小さい部分に標準電線を配設し、電線を変形させる必要性が比較的大きい部分に変形容易導電部を配設することができ、効果的に導電路形成体の変形を容易にすることができる。なお、本項の態様において、前述の標準単一電線の太さや材質を本項の標準電線と同じものとすることができる。
(19)前記1以上の導電路貫通部の各々が、少なくとも前記弾性連結部を貫通する弾性連結部貫通穴を含み、
変形容易導電部が、その前記弾性連結部貫通穴を貫通した状態で配設されたものである(9)項ないし(18)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、弾性連結部貫通穴を貫通する部分が変形容易導電部とされている。弾性連結部は、車両の走行中に伸縮変形,剪断変形等させられるが、その変形に応じて変形容易導電部が容易に変形するため断線等の虞を低減することができる。なお、本項の弾性連結部を、絶縁性を有するものとすることができ、その場合には、例えば、変形容易導電部が絶縁被覆されていない裸電線によって構成された態様とすることができる。そうすることによって、変形容易導電部に絶縁被覆がされている場合と比較して、変形容易導電部の変形が一層容易になる。
【0010】
(20)前記電磁アクチュエータが、前記車輪側連結体と前記車体側連結体とを接近させる向きと、離間させる向きとの少なくとも一方の向きの力を発生させるものである(1)項ないし(19)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
車輪保持部と車体の一部とを接近させる向きと離間させる向きとの一方の向きの力だけでも、車体あるいは車輪の振動をある程度抑制すること等が可能である。例えば、車輪保持部と車体の一部との接近速度に応じて、それらを離間させる向きの力を発生させることによって振動を抑制することができる。しかしながら、振動の抑制や、車体の姿勢変化の抑制を効果的なものとするためには、接近と離間との両方の向きの力を発生させることが望ましい。
(21)前記電磁アクチュエータが、前記車輪側連結体と前記車体側連結体とを接近離間させる駆動力源となる電動モータを含む(1)項ないし(20)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
電動モータは、例えば、回転式モータ、直動式モータ(リニアモータ)等とすることができる。また、ブラシ付モータ、ブラシレスモータのいずれでもよい。
(22)前記電動モータが、3相交流の供給を受けて駆動力を発生させる3相モータであり、
前記複数の導電路貫通部が、それぞれ3相交流の各々に対応する3つの導電路貫通部である(21)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、駆動力源として3相モータ(例えば、DCブラシレスモータ)を備えた態様である。この場合、例えば、少なくとも3つの導電路形成体が必要になるが、それらが個別に変形可能とされ、別々の導電路貫通部に通されるため、配設が容易となる。本項の3相交流には、インバータによって供給される擬似的な交流も含まれる。
(23)前記電磁連結装置が、
一端部が前記車輪側連結体と前記車体側連結体との一方に連結されたロッドと、
そのロッドを軸方向に相対移動可能かつ軸方向と直交する方向に相対移動不能に保持するとともに、そのロッドと反対側の端部において前記車輪側連結体と前記車体側連結体との他方に連結された筒状のハウジングと
を含む(1)項ないし(22)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、電磁連結装置の構成の一例である。本項の態様によれば、ロッドとハウジングとを相対移動可能にすることにより、電磁連結装置の骨格となる部分を比較的容易に構成することができる。なお、ロッドおよびハウジングは、接近離間方向(例えば、上下方向)において相対移動させられる。
(24)前記電動モータが、前記ロッドの軸線回りに回転するロータと、前記ハウジングに固定されたステータとを含み、
前記電磁アクチュエータが、前記ロータの回転方向の出力を前記ロッドと前記ハウジングとを軸線方向に相対移動させる力に変換する運動変換装置とを含む(23)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、電動モータが回転式モータとされたものである。そして、運動変換装置により、モータの回転駆動力が軸方向の駆動力に変換される。運動変換装置は、例えば、後述する「ボールねじ」を含むものとすることができる。
(25)当該サスペンション装置が、車輪保持部と車体の一部とを離間させる向きの力を発生させるスプリングを含む(1)項ないし(24)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、例えば、圧縮コイルスプリング,エアスプリング等のスプリングを含むものである。スプリングを用いずに電磁アクチュエータだけで車体を支えることも可能であるが、スプリングを併用することにより、あるいは、主としてスプリングによって車体を支えることにより、電磁アクチュエータの出力および電力消費を減少させることができる。この態様において、例えば、電磁アクチュエータを、主として、車体および車輪の振動を減衰させる減衰力を発生させるものや、車体の姿勢変化を抑制する力(姿勢制御力と称する場合がある)を発生させるものとすることができる。なお、電磁連結装置がスプリングを含むものとすることもできる。
(26)前記車体側連結体が、前記電磁連結装置の一部を貫通させる連結装置貫通穴を含み、
前記1以上の導電路貫通部の各々が、前記車体側連結体のうち、その連結装置貫通穴と異なる部分を貫通して設けられた(1)項ないし(25)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、例えば、電動モータが連結装置貫通穴を貫通する状態で配設されるといった態様とすることができる。本項の態様では、車体側連結体は、例えば、環状を成すものとすることができ、その環状の部分を導電路貫通部が貫通して設けられたものとすることができる。また、導電路貫通部が貫通穴とされた態様では、その貫通穴は連結装置貫通穴と別個に設けられることとなる。なお、本項の態様が前記(7)項,(8)項,(19)項に従属する場合には、連結装置貫通穴が支持体および弾性連結部を貫通して設けられたものとなる。
【実施例】
【0011】
以下、請求可能発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0012】
図1に、請求可能発明の一実施例であるサスペンション装置10の正面図を示す。なお、図中の括弧内には、特に断らない限り、発明の態様における名称を記載する。
サスペンション装置10は、車輪保持部と車体の一部であるサスペンションタワー14との間に設けられており、それらを接近離間させる向きの力を発生させる接近離間力発生装置20(電磁連結装置の一種である)と、その接近離間力発生装置20をサスペンションタワー14に連結する車体側連結体たるアッパサポート22と、接近離間力発生装置20を車輪保持部に連結する車輪側連結体たるロアサポート24とを備えている。なお、車輪保持部(図示省略)は、車輪を回転可能に保持するステアリングナックル等の車輪保持部材,車体に連結されて車輪保持部材を上下に移動可能に支持するアーム部材等を含む。
【0013】
接近離間力発生装置20は、ハウジング30を備えており、そのハウジング30内に充填された圧縮空気の弾性力によって車体を支えるものとされている。ハウジング30は、一端部が開口した桶状の形状にされた車体側部材32(チャンバと称される場合がある)と、その車体側部材32の開口部と対向して開口した筒状を成す車輪側部材34(エアピストンと称される場合がある)と、それらの開口間の隙間を気密に覆うとともにそれらを接近離間可能に連結する連結膜36(ダイヤフラムと称される場合がある)とを含む。それら車体側部材32と車輪側部材34とが接近離間させられると、ハウジング30内の容積が変化して圧縮空気の弾性力が変化させられる。すなわち、接近離間力発生装置20は、エアスプリングを含むものとされており、主として圧縮空気の弾性力によって車体を支持する離間力を発生させるのである。
なお、本実施例において、接近離間力発生装置20の軸方向、つまり、アッパサポート22とロアサポート24とが接近離間する方向を「接近離間方向」と称する。
【0014】
また、接近離間力発生装置20は、電磁アクチュエータ40を備えており、車輪と車体とを接近離間させる向きの力(接近離間力)を発生させ得るものとされている。電磁アクチュエータ40は、駆動力源たる電動モータ42と、電動モータ42の回転駆動力を軸方向の力に変換する運動変換装置たるボールねじ装置44とを含む。
電動モータ42は、ハウジング30の車体側部材32の閉塞された側(上側)の壁面にそれを貫通した状態で固定された筒状のモータハウジング50と、そのモータハウジング50の内周部に配設されたステータ52と、モータハウジング50に回転可能に保持された中空のモータ軸54と、モータ軸54の外周部にステータ52に対向して配設されたロータ56とを含む。この電動モータ42は、DCブラシレスモータとされており、インバータから3相交流の供給を受けて作動する。また、ステータ52は3相交流の各相毎に対応する電磁石を備えている。また、ステータ52の下方には、ステータ52に設けられた各電磁石のコイルに電力を供給するコイル接続部58が配設されている。なお、電動モータ42には、ロータ56の回転位置を検出する回転位置センサ(図示を省略する)が設けられている。
【0015】
ボールねじ装置44は、内周部に多数のベアリングボールを保持するナット60と、外周部にそれらベアリングボールが嵌り込む雄ねじが形成された駆動ロッド62とを含むものであり、それらナット60と駆動ロッド62とがベアリングボールを介して螺合させられている。ナット60はモータ軸54の下部の内周部に相対回転不能に嵌合させられている。つまり、ナット60の外周部にキー64が設けられており、そのキー64がモータ軸54の内周部に形成されたキー溝に嵌められて、モータ軸54とナット60との相対回転が禁止されている。
また、ボールねじ装置44は、駆動ロッド62の下端部に相対回転不能に取り付けられたスライド部材70と、モータハウジング50の下端部に固定されるとともにロアサポート24側に向かって延び、スライド部材70を接近離間方向にガイドする筒状ガイド体72とを備えている。その筒状ガイド体72の上部において、モータ軸54の下部が軸受けを介して回転可能に保持されている。また、筒状ガイド体72の下側の内周部には、接近離間方向に延びる複数のガイド溝74が周方向において等間隔に形成されている。それらガイド溝74の各々にスライド部材70の外周部に取り付けられたキー76が嵌められており、スライド部材70の回転が禁止されるとともに接近離間方向の移動が許容されている。そのスライド部材70の上側中央部には、セレーションが形成された嵌合穴78が接近離間方向に設けられており、駆動ロッド62の下端部に形成されたセレーションと嵌合させられている。そのため、駆動ロッド62の軸回りの回転がスライド部材70によって禁止され、ナット60の回転に伴い駆動ロッド62が軸方向、つまり、接近離間方向に駆動される。
なお、筒状ガイド体72の外周には、車輪側部材34が滑らかに相対移動可能に嵌合させられており、接近離間力発生装置20が伸縮する際に、筒状ガイド体72と車輪側部材34とが相対移動させられる。
【0016】
スライド部材70の下側には、ばね下振動緩和部80が設けられている。ばね下振動緩和部80は、車輪側部材34の下部に固定されたショックアブソーバ82を備えている。ショックアブソーバ82は、流体抵抗式とされており、作動油が充填されたシリンダ84と、そのシリンダ84内に配設されたピストンと、一端部にピストンが取り付けられるとともに他端部がスライド部材70に固定されたピストンロッド86とを含む。ピストンには絞り,開閉弁等の抵抗力付与部が設けられており、ピストンがシリンダ84内を移動する際に作動油が抵抗力付与部を通過する際の流動抵抗によって、シリンダ84とピストンロッド86(およびピストン)との相対移動に対する減衰力が発生させられる。
シリンダ84の下端部にはロアサポート24が取り付けられており、ショックアブソーバ82は、スライド部材70とロアサポート24との相対移動に対する抵抗力を発生させるものとされている。そのため、電磁アクチュエータ40によって接近離間力が発生させられている場合に、例えば、路面の凹凸によって車輪が上下に細かく振動した場合等に、ショックアブソーバ82が伸縮するとともに減衰力を発生させることによってそのばね下振動が緩和される。
ばね下振動緩和部80は、シリンダ84の上側端面とスライド部材70の下側端面との間に挟まれて配設された圧縮コイルスプリング90を備えており、シリンダ84に対するピストンロッド86の下降が抑制されている。
【0017】
本実施例において、電磁連結装置たる接近離間力発生装置20は、ハウジング30に軸方向に移動可能に保持された前記「ロッド」が、振動減衰装置たるショックアブソーバ82を介して車輪側連結体たるロアサポート24と連結された態様とされている。その「ロッド」は、駆動ロッド62,スライド部材70およびピストンロッド86によって構成されている。なお、「ロッド」が、それら駆動ロッド62等にショックアブソーバ82を加えたものによって構成されていると考えることもでき、その場合は、「ロッド」自身がある程度伸縮可能にされた態様となる。
【0018】
電磁アクチュエータ40は、後述する電子制御ユニットによって制御され、走行状態に応じた接近離間力を発生させ、接近離間力発生装置20全体の離間力である車体支持力を増減させる。例えば、車体の上下振動を抑制する減衰力を発生させる。また、例えば、旋回時に車体の姿勢変化を抑制すべく、旋回外輪側に配設されたものは離間力を発生させて車体支持力を増加させ、旋回内輪側に配設されたものは接近力を発生させて車体支持力を減少させる。さらにまた、例えば、比較的大きな路面の隆起や窪みを通過する際に接近力や離間力を発生させて車体支持力を変化させ、路面からの入力に起因する振動を効果的に吸収する。
【0019】
図2にアッパサポート22の拡大図を示す。
本実施例において、アッパサポート22は、車体の一部であるサスペンションタワー14に下方から取り付けられるアッパサポート本体100(連結部本体)を備えている。そのアッパサポート本体100は、サスペンションタワー14に当接する当接板110(支持体の一種である)と、当接板110と車体側部材32とを弾性的に連結する弾性連結部たるマウントラバー112とを備えている。また、アッパサポート22には、当接板110を貫通して車体側に延び出す複数のスタッドボルト114(雄ねじ部材の一種である)が設けられている。
当接板110は、環状を成しており、モータ軸54と交差して(本実施例において、直角に交差して)配設された平板状の平板部120と、その平板部120の外周端から垂下して設けられた外周壁部122とを含む。平板部120にはモータハウジング50の外径よりも大きな穴124が形成されており、平板部120は、その内周部がモータハウジング50の外周面と全周に渡って設定された間隔を保った状態で配置されている。
平板部120には、各スタッドボルト114を接近離間方向に貫通させる複数のボルト穴130(本実施例において3つ)が、周方向において等間隔に設けられている。なお、各ボルト穴130の内周部には、スタッドボルト114の回転を禁止するためのセレーションが形成されている。
【0020】
図3にスタッドボルト114の断面を示す。複数のスタッドボルト114(本実施例において3つ)の各々は、軸方向の中空穴136を有する中空軸部132と、中空軸部132のマウントラバー112側の端部から外周に広がる円板部134とを含む。中空軸部132の外周部には、それの大部分に雄ねじが形成され、また、円板部134に近接する部分に、ボルト穴130の内周部のセレーションと嵌合するセレーション135が形成されている。中空軸部132先端部付近において、中空穴136の径が大きくされており、後述するコネクタが嵌入する嵌入穴138が形成されている。本サスペンション装置10が車体に取り付けられる際には、スタッドボルト114がサスペンションタワー14に設けられた車体貫通穴142を貫通した状態でナット144(図1参照)と螺合させられ、サスペンションタワー14と当接板110とが締結される。
【0021】
マウントラバー112は、合成ゴム製であり、環状を成している。また、マウントラバー112は、その上側および外周側の部分において当接板110に、その下側および内周側の部分において車体側部材32の上側の面に接着等によって接合されている。このように、当接板110と車体側部材32とが、マウントラバー112によって弾性的に連結されており、サスペンションタワー14に対する接近離間力発生装置20(詳細には、車体側部材32)の相対移動(接近離間方向,その方向と直交する方向の相対移動)がある程度許容されている。
なお、本実施例において、電動モータ42に電力を供給する配線が、アッパサポート22を貫通して配設されているが、マウントラバー112には、その配線を通すための貫通穴150が設けられている。その配線について以下に詳述する。
【0022】
図4に、電磁アクチュエータ40への電力の供給の配線を模式的に示す。
本サスペンション装置10が搭載される車両には、電磁アクチュエータ40の出力を制御する電子制御ユニット200(以後、「ECU200」と略記する),蓄電器たるバッテリ210,電磁アクチュエータ40に駆動電力を供給する駆動回路たるインバータ220が設けられている。なお、この図において、駆動電力の供給を受ける電動モータ42のステータ52の、3相交流の各相(U,V,W)に対応するコイルが模式的に示されている。
ECU200は、コンピュータを主体として構成されている。ECU200には、インバータ220が接続されており、ECU200の指令に応じた駆動電力がインバータ220からステータ52に供給される。また、ECU200には、ばね上加速度センサ,車体−車輪間距離センサ等の各種のセンサ(図示を省略する)が接続されており、それらの検出結果に基づいて、走行状態に応じて必要な駆動電力が決定される。
インバータ220は、6つのスイッチング素子のON/OFF制御によってPWM(pulse-width modulation、パルス幅変調)を行い、バッテリ210から供給される直流の電力から、擬似的な3相交流を発生させ、指令に応じた駆動電力を各相に供給する。なお、インバータ220を介して電動モータ42とバッテリ210との導通が存在する状態において、接近離間力発生装置20の伸縮に伴い電動モータ42が強制的に回転させられる場合には、電動モータ42によって発電された電力がインバータ220を介してバッテリ210に蓄えられる場合がある。そして、電動モータ42によって発電する際にも接近離間力が発生させられる。
【0023】
インバータ220には、3相交流の各相に対応する3本の電源側コード222(電源線の一種である)が電気的に接続されている。それら3本の電源側コード222の端部には電源側コネクタ224が取り付けられている。
一方、ステータ52には、コイル接続部58を介して、3相交流の各相に対応して電力を供給する導電路を形成する3つの電力供給路形成体230(導電路形成体の一種である)が電気的に接続されている。電力供給路形成体230は、簡単に説明すると、電線,接続端子等の導電体が互いに電気的に導通させられて、電源側コード222とコイル接続部58との間に導電路を形成するものである。本実施例において、3つの電力供給路形成体230は、別個に変形可能に配設されている。したがって、3つの電力供給路形成体230が纏めて配設されている場合、例えば、3つの電線が被覆によって1本に纏められているような場合と比較して変形が容易であり、配設の自由度が大きくなる。
3つの電力供給路形成体230の各々の端部にはモータ側コネクタ232(接続具の一種である)が設けられている。そのモータ側コネクタ232に電源側コネクタ224(接続具の一種である)が接続されることで、各電源側コード222と各電力供給路形成体230とが電気的に接続される。なお、電源側コネクタ224およびモータ側コネクタ232については後に詳述する。
【0024】
各電力供給路形成体230は、複数の導電素線が纏められ、絶縁被覆されて1本の導電線に形成された単一コード234(単一電線の一種)と、その単一コード234と同様の構造であって直径が小さくされた複数本の小径コード236(小径電線の一種)が並列に接続された並列コード部238(並列小径電線部の一種)とが直列に配設されている。そして、並列コード部238に属する複数本の小径コード236の各々は、個別に絶縁被覆され、別個に変形し得るようにされている。すなわち、各電力供給路形成体230は、並列コード部238において、単一コード234においてよりも変形しやすくされているのである。
【0025】
図2,図3に戻り、電動モータ42に電力を供給する配線について詳述する。
本実施例において、電動モータ42は、ハウジング30の上端部である車体側部材32に、その底面を貫通した状態で固定されている。そして、電動モータ42への電力の供給は、ステータ52の下方に設けられたコイル接続部58を介して行われる。つまり、本実施例のサスペンション装置10において、電動モータ42に電力を供給するには、車体内部のインバータ220とハウジング30内部のコイル接続部58とを電気的に接続する必要がある。その際に、本実施例において、各電力供給路形成体230がハウジング30の壁(詳細には、車体側部材32の底面壁)、マウントラバー112、当接板110、スタッドボルト114、および、サスペンションタワー14を貫通するように配設されている。このような構造において、3つの問題がある。すなわち、(a)ハウジング30内の気密性を保ちつつ各電力供給路形成体230を貫通させること、(b)前述のようにマウントラバー112を介して連結されたサスペンションタワー14と車体側部材32とが相対移動する際に、各電力供給路形成体230を容易に変形し得るものとすること、(c)各電力供給路形成体230と各電源側コード222とを容易に接続することである。
【0026】
(a)ハウジング30内の気密性を保ちつつ各電力供給路形成体230を貫通させるために、本実施例において、ハウジング30に、気密保持接続部250が設けられている(図3)。その気密保持接続部250は、車体側部材32のスタッドボルト114に対応する部分に設けられた配線穴252と、その配線穴252を貫通するピン付接続端子254(電力供給路形成体230の一部を構成する部材である)と、配線穴252とピン付接続端子254との隙間を気密に塞ぐシール部材256とを含む。
図5、図6に、ピン付接続端子254の断面、平面を示す。なお、図中の括弧内の記載については後述する。ピン付接続端子254には、車体側部材32の壁面を貫通してハウジング30内部に延びる導電ピン258が設けられており、その導電ピン258と配線穴252との隙間をシール部材256によって気密に塞ぐことによって、ハウジング30内の気密性を保ちつつ各電力供給路形成体230を貫通させることができる。
【0027】
導電ピン258の先端部には、筒状接続金具260の上部が嵌められ、締結用金具262によって固定されている。また、筒状接続金具260の下部が、単一コード234の先端部264が挿入された状態で、かしめられ、ピン付接続端子254と単一コード234とが電気的に接続されている。一方、単一コード234の基端部266は、筒状ガイド体72の上部に設けられた配線穴274に挿入され、ステータ52の下方に設けられたコイル接続部58に接続されている。
ピン付接続端子254の基端部には、電力供給路を分岐させる電力供給路分岐部280(導電路分岐具の一種である)が設けられている。電力供給路分岐部280は、概ねモータ軸54の軸線を中心とする円弧に沿う形状とされ、その中央から導電ピン258が接近離間方向に延び出したものとされている。その電力供給路分岐部280は、接近離間方向の挿入穴282を3つ備えており、それら3つの挿入穴282の各々に小径コード236の一端部が挿入された状態でかしめられることにより、固定されるとともに、小径コード236と電気的に接続される。
なお、電力供給路分岐部280は、車体側部材32に形成された凹部284(図7参照)に配設されている。また、シール部材256は、電力供給路分岐部280と車体側部材32の壁面との間にも配設されており、ピン付接続端子254と車体側部材32との間を電気的に絶縁する役割も果たしている。なお、電力供給路分岐部280は、電力が供給される向きからすると、分岐した電力供給路を一つに集約する分岐路集約部と称することもできる。
【0028】
(b)サスペンションタワー14と車体側部材32との相対移動に応じて各電力供給路形成体230を容易に変形させるために、本実施例において、各電力供給路形成体230のマウントラバー112を貫通する部分が、前述の並列コード部238とされている。
図7に、並列コード部238を、駆動ロッド62の軸線を中心とする円の直径方向において眺めた図を示す。本実施例において、複数本の小径コード236は3本とされ、それら3本の小径コード236が含む複数の導電素線の断面積の合計は、単一コード234の複数の導電素線の断面積の合計と等しくされている。つまり、並列コード部238の許容電流(許容伝導電力の一種である)と、単一コード234の許容電流とが等しくされているのである。なお、並列コード部238および単一コード234の許容電流は、電力供給路形成体230の許容電流と等しくされている。この場合には、放熱性を考慮していないが、放熱性を考慮し、3本の小径コード236が含む複数の導電素線の断面積の合計を、単一コード234の複数の導電素線の断面積の合計よりも小さくすることもできる。
なお、本実施例において、前記「許容伝導電力が導電路形成体と同じ1本の電線である標準電線」が、単一コード234と同じ材質で同じ太さの電線であると想定される。また、前記「標準単一電線」は、単一コード234と同じ材質で同じ太さの電線であって、並列コード部238によって結ばれる2点間を結ぶ電線であると想定される。なお、図中に、標準単一電線の中心線Sを一点鎖線にて示す。なお、標準単一電線の中心線Sは並列コード部238自体の中心線と一致する。
各小径コード236の外径は、単一コード234の60%以下とされている。つまり、各小径コード236は、当接板110と車体側部材32との相対移動によって変形させられた際の最大歪みが、標準単一電線の60%以下とされており、変形しやすく、また、変形によって断線する虞が比較的低いものとされている。すなわち、並列コード部238によって、電力供給路形成体230の配設が容易にされているのである。
なお、各小径コード236の外径が単一コード234の75%以下であれば、3本の小径コード236が含む複数の導電素線の断面積の合計が、単一コード234のそれよりも大きくされていてもよい。しかしながら、各小径コード236の外径が小さいほど変形が容易になる。また、複数本の小径コード236を2本、あるいは4本以上のものとすることもできる。
【0029】
並列コード部238の各小径コード236は、下端部が前述のピン付接続端子254の電力供給路分岐部280に接続されている。一方、上端部は、前述の図5,図6において、ピン付接続端子254と同様な構造であって導電ピンが長くされたロングピン付接続端子290(電力供給路形成体230の一部を構成する部材である)に接続されている。なお、括弧内にロングピン付接続端子290等の名称,符号を記載した。また、図5において、ロングピン付接続端子290の上下が逆であり、図6において、視点の向きがロングピン付接続端子290を上側から眺めた図になっている。
そのロングピン付接続端子290は、ピン付接続端子254の電力供給路分岐部280と同様に構成された電力供給路分岐部291(導電路分岐具の一種である)を備えており、それの挿入穴292に各小径コード236が挿入された状態でかしめられ、各小径コード236が固定されるとともに電気的に接続されている。
【0030】
本実施例では、並列コード部238は、各小径コード236が自然状態において螺旋状になるように予め変形させられた態様とされている。図8に、並列コード部238についての標準単一電線の中心線Sを示す。本実施例において、小径コード236の長さは、標準単一電線の1.5倍以上の長さとされている。すなわち、各小径コード236は、単一コード234よりも細くされており、比較的容易に変形するが、さらに、各小径コード236を螺旋状にして緩みを持たせることによって、単に径を小さくするよりも、一層変形が容易にされている。そのため、車両の走行振動によってマウントラバー112が弾性変形させられ、当接板110と車体側部材32とが相対移動しても、その相対移動に追随して変形することが容易である。そして、変形の繰り返しに対する耐久性も向上させられており、各電力供給路分岐部280の電気的な導通が途切れる虞が低減されている。
なお、小径コード236の螺旋部に着目し、小径コード236の中心線上の2点であって、螺旋の1回転分を挟む点A,Bを示す。それら点A,Bを結ぶ直線と、点A,Bの間にある小径コード236の中心線との距離が最大値Wmaxとなる点をCとする。本実施例において、最大値Wmaxを点A,Bの間にある小径コード236の中心線の長さZ(螺旋部の中心線の長さ)で除した値が0.4以上にされている。
【0031】
(c)各電力供給路形成体230と各電源側コード222とを容易に接続するために、本実施例において、各電力供給路形成体230がスタッドボルト114の中空穴136を貫通する構造とされ、スタッドボルト114の先端部にモータ側コネクタ232が配設されている(図3,図7,図9)。
具体的に説明する。ロングピン付接続端子290には、比較的長い寸法のロング導電ピン294が設けられており、そのロング導電ピン294は、スタッドボルト114の中空穴136を貫通し、その先端部側に設定量延び出す長さとされている。なお、ロングピン付接続端子290は絶縁性を有する被覆部材296で覆われており、ロングピン付接続端子290と、スタッドボルト114や車体側部材32との導通が遮断されている。
スタッドボルト114の中空穴136は、先端側において径が大きくされて前述の嵌入穴138が形成されている。その嵌入穴138に、絶縁性を有してロング導電ピン294を保持するピン側保持ケース300(保持部材の一種である)の一部が嵌入させられている。ピン側保持ケース300は、概して円筒状を成しており、嵌入穴138に嵌入して固定される固定部302と、固定部302よりも径が大きくされるとともに電源側コネクタ224と嵌合する嵌合凹部304が設けられた接続部305とを含む。
固定部302は、周方向において複数に分割されており、径方向に動きやすくされている。そして、分割された各々の部分の先端部の内周には、断面が鋸歯状の爪部306が形成されている。一方、嵌入穴138は若干テーパ状にされており、開口側(スタッドボルト114の先端部側)よりも奥側(スタッドボルト114の基端部側)の径が小さくされている。そのため、固定部302は嵌入穴138に嵌入させられるのに伴い圧縮変形させられ、爪部306がロング導電ピン294を覆う被覆部材296に食い込み、ロング導電ピン294および被覆部材296の軸方向の移動を禁止する。すなわち、ロング導電ピン294がピン側保持ケース300に保持されるのである。
ロング導電ピン294の先端部は、被覆部材296に覆われておらず、モータ側コネクタ232の接続端子(アクチュエータ側接続端子)を構成する。すなわち、モータ側コネクタ232が、ロング導電ピン294およびピン側保持ケース300によって構成されているのである。
【0032】
図9に、上述のモータ側コネクタ232と接続される電源側コネクタ224を示す。
電源側コネクタ224は、電源側コード222に取り付けられた電源側コンタクト310(電源側接続端子の一種である)と、それらを保持する電源側保持ケース312(電源側端子保持部の一種)とを含む。電源側コンタクト310は、概して円筒状をなし、電源側コード222が挿入された状態でかしめられてそれを把持するリング部314と、そのリング部314の端部からモータ側コネクタ232に向かって延びる複数の接触片部316(図の例では8つ)とを含む。複数の接触片部316は周方向に並んで形成され、その内側の面においてロング導電ピン294の外周に接触するようにされている。また、複数の接触片部316の外周部に環状のゴムベルト318が嵌められており、そのゴムベルト318によって複数の接触片部316がロング導電ピン294の外周に押し付けられるようにされている。
【0033】
電源側保持ケース312は、概して円筒状を成し、その内側に電源側コード222の端部と電源側コンタクト310とを貫通させた状態で保持するものとされている。電源側保持ケース312の電源側コード222側の部分は、外径が小さくされ、電源側コード222を把持するコード把持部320が形成されている。そのコード把持部320には、外周部に雄ねじが形成され、先端部に内側向きの爪322が形成されている。また、コード把持部320は、周方向において複数に分割されており、爪322が径方向に動きやすくされている。
また、電源側コネクタ224は、コード把持部320に螺合してそれの先端部を内側に絞る絞りナット324を備えている。その絞りナット324の内径は、奥側の部分、つまり、電源側保持ケース312と反対側の部分において小さくされており、電源側コード222がコード把持部320に挿入された状態で絞りナット324が螺合させられると、コード把持部320の先端部が内側に押されて爪322が電源側コード222を把持するようにされている。
電源側保持ケース312のモータ側コネクタ232側の部分には、外径が小さくされ、モータ側コネクタ232の嵌合凹部304に挿入される嵌合筒部330が設けられている。その嵌合筒部330が嵌合凹部304に挿入されると、電源側コンタクト310の複数の接触片部316がロング導電ピン294の外周に接触させられて、電源側コード222と電力供給路形成体230とが電気的に導通させられる。すなわち、各電力供給路形成体230と各電源側コード222とを容易に接続することができるのである。
【0034】
さらに、本実施例において、電源側コネクタ224とモータ側コネクタ232との接続を強固なものとするために、電源側コネクタ224を固定する固定ナット340がスタッドボルト114に取り付けられている。なお、本実施例において、電源側コネクタ224と固定ナット340とは、別個の独立した構成部品とされているが、例えば、一体的に組み付けられたものとすることや、一体的に形成されたものとすることもできる。固定ナット340は、概して円筒状を成しており、モータ側コネクタ232側の内周部に雌ねじ342が形成され、スタッドボルト114と螺合するようにされている。一方、電源側コード222側の端部は、内周側に向かって折り曲げられて、電源側保持ケース312の外周部に係合するようにされている。したがって、電源側コネクタ224とモータ側コネクタ232とが、固定ナット340とスタッドボルト114との間に挟まれ、締結されるのである。なお、固定ナット340の電源側コード222側の端部の内径は、絞りナット324の外径よりも大きくされている。
本実施例において、締結具たる固定ナット340とスタッドボルト114とによって、電源側コネクタ224とモータ側コネクタ232との接続が外れることを防ぐ離脱防止部が構成されている。その離脱防止部により、車両の振動等に起因して電源側コネクタ224にそれを引き抜く向きの力が加わった場合でも、電源側コネクタ224が抜けることを防止することができるのである。
以上に述べた離脱防止部は、スタッドボルト114を利用しない態様とすることもできる。しかしながら、本実施例のように、スタッドボルト114の先端部にモータ側コネクタ232を取り付けて固定ナット340を螺合させる態様とすることにより、容易に電源側コネクタ224を固定することができる。すなわち、各電力供給路形成体230と各電源側コード222とが確実に接続されるのである。
以上に述べた構成により、本サスペンション装置10において、上記(a)〜(c)の問題が解決されている。また、電磁アクチュエータ40に電力を供給する配線を比較的容易に配設することができる。
【0035】
本実施例において、前記「導電路形成体」たる電力供給路形成体230が、ロングピン付接続端子290,3本の小径コード236,ピン付接続端子254,筒状接続金具260および単一コード234によって構成されている。なお、本実施例において、並列コード部238が、3本の小径コード236によって構成されている。
また、本実施例において、前記「複数の導電路形成体が分けられた複数の集合」の各々は、1つの電力供給路形成体230を含む態様とされている。また、前記「車体側連結体に設けられ、複数の導電路集合体の各々を貫通させる複数の導電路貫通部」が、スタッドボルト114の中空穴136と、マウントラバー112の貫通穴150とによって構成されている。なお、本実施例における導電路貫通部は、貫通穴(中空穴136と貫通穴150とによって構成される)とされた態様であり、その貫通穴を導電路形成体たる電力供給路形成体230が貫通することによって導電路が車体側連結体を貫通した状態にされている。なお、電力供給路形成体230のうち、連結部本体たるアッパサポート本体100を貫通しているのは、ロングピン付接続端子290と並列コード部238とである。
本実施例において、前記「車体内部の電源」が、インバータ220とバッテリ210とによって構成されている。また、本実施例において、アッパサポート22が、電磁連結装置の一部たる電動モータ42がアッパサポート本体100を貫通した状態で、電動モータ42に連結されており、アッパサポート本体100の電動モータ42を貫通させる穴が前記「連結装置貫通穴」に該当する。なお、本実施例は、電磁連結装置と連結装置貫通穴との間に隙間が設けられていない態様とされている。
【0036】
本実施例において、マウントラバー112には、並列コード部238よりも大きな貫通穴150が設けられており、マウントラバー112と小径コード236との間に隙間が存在する態様とされている。それに対し、例えば、マウントラバー112を加硫成形する際に、マウントラバー112と小径コード236とを互いに隙間無く密着させることもできる。その場合には、小径コード236の導電線を被覆する材質を、例えば、フッ素ゴムやシリコーンゴム等の耐熱性に優れたものとすることが望ましい。
【0037】
本実施例において、電動モータ42への電力供給路形成体230(詳細には、単一コード234)が、電動モータ42下部(詳細には、コイル接続部58)に接続されていた。それに対し、電動モータ42上面に電力供給路形成体を接続する態様が想起されるが、電動モータ42上方に障害物がある場合には、その態様を採用することは困難である。例えば、サスペンション装置10の上方は、ボンネット(フードパネルと呼ばれる場合もある)によって覆われるが、電動モータ42上部とボンネットとの隙間がわずかである場合には、電動モータ42上面に単一コード234を接続することは困難である。また、本サスペンション装置10のように、電磁アクチュエータ40を備えたものは、全長が長くなる傾向があり、電動モータ42の上方に充分なスペースを確保することが難しい場合が多い。
また、別の態様として、電動モータ42の側面に単一コード234を接続する態様も想起されるが、サスペンション装置10をサスペンションタワー14に取り付ける際に、サスペンションタワー14に設けられた車体貫通穴142の周囲の部分に単一コード234が干渉し易いという問題がある。その問題を解決するには、車体貫通穴142を拡張する等の対策が必要となるが、強度やスペースの制約があり、容易ではない場合が多い。
すなわち、本サスペンション装置10は、電力供給路形成体230が電動モータ42下部に接続されたものとされており、電動モータ42上部のスペースを充分に確保することが困難である場合や、サスペンションタワー14に設けられた車体貫通穴142の拡張が難しい場合等に好適なのである。また、本実施例において、電力供給路形成体230がハウジング30内に収容されるとともに、端部がスタッドボルト114に固定されていることから、本サスペンション装置10は、電動モータ42の上部,側面に接続される態様と比較して、保管,輸送,組み付け等の際に、電力供給路形成体230がみだりに動いたり、不適切な変形が生じたりする虞が小さいという利点がある。
【0038】
上記実施例において、単一コード234,小径コード236等の各コードと、ピン付接続端子等の接続端子との接続が、かしめによって成されていたが、ハンダ付け,締結等、かしめ以外の接続手段を用いることもできる。また、かしめ,ハンダ付け,締結等のうち複数のものを併用することもできる。
上記実施例において、電磁アクチュエータ40と車体側部材32とが、相対移動不能にされていたが、電磁アクチュエータ40と車体側部材32との間に弾性部材を介在させ、それらの相対移動をある程度許容する態様とすることもできる。その態様において、気密保持接続部250とコイル接続部58との間に変形容易導電部を設けることができる。変形容易導電部は、例えば、上記並列コード部238と同様なものとすることができ、変形容易導電部において電磁アクチュエータ40と車体側部材32との相対移動に伴う変形が容易になる。
【0039】
上記とは別の実施例について説明する。
上記実施例において、変形容易導電部が、並列コード部238にされていたが、「導電性を有するゴムまたはその類似物」である導電性ゴム部材とすることもできる。
図10に、変形容易導電部が導電性ゴム部材400にされたサスペンション装置のアッパサポート410を示す。なお、本サスペンション装置の構成は、変形容易導電部以外は上記実施例とほぼ同様であるため、説明を省略する。
導電性ゴム部材400は、断面が平行四辺形状を成し、また、図11に示すように、上下の底面が概して矩形を成し、それの2つの対向する辺がやや円弧状(概ね駆動ロッド62の軸線を中心とする円弧)に反った形状を成している。その導電性ゴム部材400は、合成ゴム(例えば、シリコンゴム)中に導電性のカーボンや金属の粉末や短繊維を混合したものとされ、許容電流が単一コード234と同じにされている。
図12に、ピン付接続端子420を示す。ピン付接続端子420は、前述と同様の導電ピン258と、その導電ピン258の基端部に設けられた導電性ゴム部材400の底面と同じ形状の導電板422とを備えている。なお、この図において、括弧内にロングピン付接続端子430の符号、名称を示す。ロングピン付接続端子430も同様に、前述のロング導電ピン294と、そのロング導電ピン294の基端部に設けられた導電性ゴム部材400の底面と同じ形状の導電板422とを備えている。それらピン付接続端子420およびロングピン付接続端子430は、それぞれの導電板422の面が導電性ゴム部材400の底面と密着させられ、導電性ゴム部材400と電気的な導通を生じさせるものとされている。
この導電性ゴム部材400は、接近離間方向における弾性変形可能量が、標準単一電線の3倍以上にされている。また、導電性ゴム部材400は、上下の導電板422と接触する2つの端部を接近離間方向に相対移動させる同じ力が加わった場合の相対移動量が、標準単一電線の3倍以上とされている。なお、標準単一電線は、図示を省略するが、単一コード234と同じ材質(導電材料等)で同じ太さの電線であって、前出の図8に示した中心線Sとなる電線が想定される。また、導電性ゴム部材400の弾性変形可能量は、マウントラバー112と同様あるいはそれ以上にされている。
このように、導電路形成体のうち、マウントラバー112を貫通する部分を弾性変形容易な導電性ゴム部材400にすることにより、当接板110と車体側部材32との相対移動を容易に許容することができ、また、その相対移動によって導電路形成体の電気的な導通が途切れる虞を低減することができる。
【0040】
上記とはさらに別の実施例について説明する。
上記実施例において、変形容易導電部が、並列小径電線部(並列コード部238)にされていたが、標準電線たる単一コード234が湾曲させられた湾曲電線部とすることもできる。図12に、湾曲電線部500(つづら折れ部の一種である)を備えたアッパサポート502を示す。なお、本実施例において、前記アッパサポート22と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。なお、本アッパサポート502は、マウントラバーの接近離間方向の厚さ寸法が、前記実施例のものの2倍とされている。
本実施例において、湾曲電線部500を構成する電線は、絶縁被覆がない裸電線510とされており、単一コード234と同様の導電線が用いられている。裸電線510を用いることにより、被覆のあるものより変形が容易になる。その裸電線510は、絶縁性のゴム製の被覆部材506で覆われており、裸電線の絶縁が図られている。
湾曲電線部500は、裸電線510が3回湾曲させられて形成されており、湾曲部512を3つ含むつづら折れ状を成している。この湾曲電線部500は、概ねモータ軸54を中心とする円の周方向に沿って配置されており、アッパサポート512の半径方向の寸法が小さい場合に好適である。
【0041】
この図に、湾曲電線部500自体の中心線520(一点鎖線)を示す。なお、本実施例において、湾曲電線部500は、裸電線510の点Aを始点とし、点C,Bを経由して点Dを終点とする部分によって構成されている。この湾曲電線部500の裸電線510(AD間)の長さは、中心線520の長さLの2倍以上とされている。
また、湾曲電線部500は、設定された2点であるAD間を接近離間方向に相対移動させる同じ力が加わった場合の相対移動量が、中心線520を通る標準単一電線の3倍以上とされている。さらにまた、湾曲電線部500は、AD間の接近離間方向における弾性変形可能量が、上記標準単一電線の3倍以上とされている。なお、本実施例において、標準単一電線は、裸電線510と同様の材質、太さの電線であって、AD間を直線的に接続するものが想定される。
この湾曲電線部500には、つづら折れの一単位となるS字形部が1.5個分含まれている。そして、3つの湾曲部512のうち、スタッドボルト114側のものと中央のものとを含むS字形部522(AB間)に着目すると、そのS字形部522自体の中心線と裸電線510の中心線との離間距離の最大値Wmaxを、S字形部522自体の中心線の長さZ(点A,Bの間の距離)で除した値が0.5以上にされている。
以上のように、湾曲電線部500は、当接板110と車体側部材32との相対移動に伴い容易に変形することが可能にされており、電力供給路形成体230の電気的な導通が途切れる虞が低減する。すなわち、電磁アクチュエータ40への配線が容易になるのである。
【0042】
なお、本実施例において、マウントラバー112と湾曲電線部500とが互いに密着した態様とすることができる。その態様において、マウントラバー112の絶縁性が充分である場合は裸電線510のままにすることができ、絶縁性が不充分である場合は裸電線510をフッ素ゴムやシリコーンゴム等の耐熱性に優れた部材で絶縁被覆された被覆電線に変更することが望ましい。
【0043】
前記実施例において、ピン付接続端子254の電力供給路分岐部280と、ロングピン付接続端子290の電力供給路分岐部291とには、接近離間方向の挿入穴282,292が設けられていた。それに対し、本実施例において、ピン付接続端子530とロングピン付接続端子532との挿入穴534が接近離間方向と交差する方向(本実施例において、直交する方向)に設けられている。
図14,15に、ピン付接続端子530をモータ軸54を中心とする円の周方向から眺めた図と、下側から眺めた図を示す。なお、ロングピン付接続端子532も同様の形状(導電ピン258がロング導電ピン294にされている)であるので、それの符号を括弧内に付す。ピン付接続端子530には、導電ピン258と、交差方向接続部たる交差穴形成部540とが設けられている。交差穴形成部540は筒状を成しており、その交差穴形成部540の外周部からそれの軸線と交差する方向に導電ピン258,292が延びる構造とされている。また、交差穴形成部540は、それの軸線が周方向に沿う方向に配置されている。
このように、挿入穴534が接近離間方向と交差する方向に配されることで、湾曲電線部500の両端部の離間距離が比較的小さい場合でも、配線経路を長く取りやすいという利点がある。そして、配線経路を長くすることで、当接板110と車体側部材32との相対移動に伴う変形が容易になるのである。なお、挿入穴534に裸電線510の端部が挿入された状態で、交差穴形成部540がかしめられる等によってピン付接続端子254と裸電線510とが接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】請求可能発明の実施例であるサスペンション装置を示す図である。
【図2】上記サスペンション装置のアッパサポートを示す図である。
【図3】上記アッパサポートに設けられたスタッドボルトを示す図である。
【図4】上記サスペンション装置の電磁アクチュエータ(ステータ)に電力を供給する配線を模式的に示す図である。
【図5】上記アッパサポートに設けられたピン付接続端子を示す図である。
【図6】上記ピン付接続端子の電力供給路分岐部を示す図である。
【図7】上記アッパサポートに設けられた並列コード部を示す図である。
【図8】上記並列コード部の標準単一電線の中心線等を模式的に示す図である。
【図9】上記サスペンション装置において電源側コネクタとモータ側コネクタとを示す図である。
【図10】上記とは別の実施例において、アッパサポートの断面を示す図である。
【図11】上記アッパサポートに設けられた導電性ゴム部材を示す図である。
【図12】上記実施例において、ピン付接続端子の導電板を示す図である。
【図13】上記とはさらに別の実施例において、アッパサポートの断面を示す図である。
【図14】上記アッパサポートに設けられたピン付接続端子の側面図である。
【図15】上記ピン付接続端子の平面図である。
【符号の説明】
【0045】
10:サスペンション装置 14:サスペンションタワー(車体の一部) 20:接近離間力発生装置(電磁連結装置) 22:アッパサポート(車体側連結部) 24:ロアサポート(車輪側連結部) 40:電磁アクチュエータ 42:電動モータ 44:ボールねじ装置(運動変換装置) 52:ステータ 54:モータ軸 56:ロータ 58:コイル接続部 62:駆動ロッド 80:ばね下振動緩和部 82:ショックアブソーバ 90:圧縮コイルスプリング(スプリング) 100:アッパサポート本体(連結部本体) 110:当接板(支持体) 112:マウントラバー(弾性部材) 114:スタッドボルト(雄ねじ部材) 142:車体貫通穴 150:貫通穴 200:ECU(電子制御装置) 220:インバータ 222:電源側コード(電源線) 224:電源側コネクタ(接続具) 230:電力供給路形成体(導電路形成体) 232:モータ側コネクタ(接続具) 234:単一コード(単一電線) 236:小径コード(小径電線) 238:並列コード部(並列小径電線部) 254:ピン付接続端子(接続端子) 258:導電ピン 270:配線穴[筒状ガイド体] 280:電力供給路分岐部 290:ロングピン付接続端子(接続端子) 291:電力供給路分岐部 294:ロング導電ピン 300:モータ側保持ケース(端子保持部材) 310:電源側コンタクト(電源側接続端子) 312:電源側保持ケース(端子保持部) <変形例1> 400:導電性ゴム部材 410:アッパサポート(車体側連結部) 420:ピン付接続端子 422:導電板 430:ロングピン付接続端子 <変形例2> 500:湾曲電線部 502:アッパサポート(車体側連結部) 510:裸電線 512:湾曲部 520:中心線 522:S字形部 530:ピン付接続端子 532:ロングピン付接続端子 540:交差穴形成部 A,B,C,D:点 Wmax:距離の最大値 Z:螺旋部,S字形部の中心線の長さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション装置に関し、特に、電磁アクチュエータを備えたサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁アクチュエータを備えた車両用サスペンション装置が検討されている。例えば、電磁アクチュエータによって車体と車輪とを接近離間させる向きの力を発生させることにより、車体の姿勢変化や振動を、より適切に抑制すること等ができる。下記特許文献1には、電磁アクチュエータを備えたサスペンション装置の一例が記載されている。また、下記特許文献2〜4には、荷重センサ等を備えたサスペンション装置の一例が記載されている。
【特許文献1】特開平2−120113号公報
【特許文献2】特開平8−313372号公報
【特許文献3】特開昭63−43241号公報
【特許文献4】実開平5−12209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電磁アクチュエータには、比較的大きな電流が供給される場合が多く、比較的太い電線や大きなコネクタが必要になる。そうすると、配線の取り回し、接続等をどうするかが問題となるのであるが、上記特許文献1には、電磁アクチュエータに電力を供給するための配線が記載されていない。上記特許文献2〜4には、荷重センサの信号線、減衰力変更装置の電線の取り回しが記載されている。しかしながら、荷重センサの信号線等は比較的細いのに対して、電磁アクチュエータに接続される電線は、比較的太く、接続コネクタも大きいため、荷重センサ等の信号線と同様に配設できるとは限らないという問題がある。
このような問題は、従来のサスペンション装置の実用性を向上させる上で障害となり得る問題の一例であり、サスペンション装置には種々の観点からの改良の余地がある。すなわち、従来のサスペンション装置に改良を加えることによって、電磁アクチュエータへの配線を容易に配設できる等、サスペンション装置をより実用的なものとすることが可能である。本発明は、そういった実情に鑑みてなされたものであり、サスペンション装置の実用性を向上させることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明のサスペンション装置は、電磁アクチュエータによって車輪側連結体と車体側連結体とを接近離間させる向きの力を発生させる電磁連結装置と、車体内部の電源から供給される電力を電磁アクチュエータに導く複数の導電路形成体と、車体側連結体を貫通して設けられ、対応する1以上ずつの導電路形成体を貫通させる複数の導電路貫通部とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のサスペンション装置において、複数の導電路貫通部が設けられており、電磁アクチュエータに電力を供給する複数の導電路形成体が、複数の集合に分けて配線される。そのため、複数の導電路形成体を1つに纏める態様と比較して、各集合体が曲がりやすくなり、配設が比較的容易になる。すなわち、本発明によれば、実用性の高いサスペンション装置が得られるのである。なお、本発明のサスペンション装置の各種態様およびそれらの作用および効果については、下記〔発明の態様〕の項において詳しく説明する。
【発明の態様】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から一部の構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項と(4)項とを合わせたものが請求項1に、(2)項と(3)項とを合わせたものが請求項2に、(5)項と(6)項とを合わせたものが請求項3に、(7)項と(8)項とを合わせたものが請求項4に、(9)項と(10)項とを合わせたものが請求項5に、(11)項が請求項6に、(14)項と(15)項とを合わせたものが請求項7に、(16)項が請求項8に、(19)項が請求項9に、それぞれ相当する。
【0008】
(1)車輪保持部に連結される車輪側連結体と、
車体の一部に連結される車体側連結体と、
電磁アクチュエータを有し、前記車輪側連結体と前記車体側連結体とを接近離間可能に連結するとともに、前記電磁アクチュエータによってそれらを接近離間させる向きの力を発生させる電磁連結装置と、
車体内部の電源から供給される電力を前記電磁アクチュエータに導く導電路を形成する複数の導電路形成体と、
前記車体側連結体を貫通して設けられ、前記複数の導電路形成体のうちの対応する1以上のものを貫通させる1以上の導電路貫通部と
を含むことを特徴とする車両用サスペンション装置。
本項の電磁連結装置は、電磁アクチュエータによって車輪保持部と車体の一部とを接近離間させる向き(以後、接近離間方向と称する)の力である接近離間力を発生させることができる。なお、車輪保持部は、例えば、ステアリングナックル,アーム等の車輪を回転可能に保持する部材を含む部分である。また、車輪側連結体は、例えば、ロアサポートと称されるものであり、ステアリングナックル、アーム等に連結される部分である。車体の一部は、例えば、サスペンションタワー等と称される場合があり、車体のうちの車輪に対応する部分であって、車体側連結体が取り付けられる部分(例えば、連結体取付部と称することができる)である。また、車体側連結体は、例えば、アッパサポート,マウントインシュレータ等と称され、多くの場合、車体の一部に締結される。
本項の電磁連結装置は、接近離間力を発生させることによって、例えば、路面入力に起因する車体の振動を抑制したり、車体の姿勢変化を抑制したりすることができる。電磁アクチュエータは、例えば、導電路形成体を介して電力が供給されることよって、あるいは、導電路形成体を含む回路において発電することによって、接近離間力を発生させることができる。なお、サスペンション装置が、コイルスプリングやガススプリングを備えている場合には、それらスプリングおよび電磁アクチュエータによって接近離間力を発生させるものとすることができる。
導電路形成体は、例えば、電線,接続端子等を含むものとすることができ、導電性を有する金属(例えば、銅,アルミ,鉄,銀,あるいはそれらの合金等)その他の導電性材料によって形成することができる。電線は、例えば、絶縁被覆がなされた被覆電線や、被覆のない裸電線とすることができる。さらに、電線の導電部分が、例えば、比較的太い1本の導電素線によって導通を生じさせるものであってもよいし、比較的細い複数の導電素線が並列に並べられて、あるいは撚り合わされて1本の電線にされたものでもよい。
なお、裸電線が含まれている場合は、裸電線の周囲が絶縁体であることや、他の導電体との離間距離が確保されていることが望ましい。導電路形成体は、電線以外に、例えば、金属製の接続端子等のように比較的柔軟性に乏しい部材を含むものとすることができる。なお、それらの導電性材料が、絶縁体によって車体の一部や車体側連結体と電気的に絶縁されることが望ましい。絶縁体は、例えば、ゴム,ゴムの類似物,樹脂,セラミックス等のうちの少なくとも1つを含むものとすることができる。なお、ゴムの類似物については後述する。
本項の態様において、複数の導電路形成体がサスペンション装置の上側に配設される。この場合、前記従来技術のように、車体側連結体を迂回するように複数の導電路形成体を配線することが想起されるが、配設スペースの制約の中で、それらより太い電線を迂回させることが容易ではない場合が多い。例えば、本項の態様を、後述する態様のように、車体側連結体を、電磁連結装置の一部を接近離間方向に貫通させる穴である連結装置貫通穴が設けられた態様とすることができる。その場合に、連結装置貫通穴と電磁連結装置の外周部との間に隙間が設けられるのであるが、比較的太い電線を通すことができるほど広くない場合が多い。また、例えば、その連結装置貫通穴に電磁連結装置が有するロッドが通されている場合であっても、複数の電線等を通し得る大きさの穴を設けることが困難な場合がある。
それに対して、本項の態様において、導電路貫通部が設けられており、複数の導電路形成体が車体側連結体を貫通するように配設される。そのため、車体側連結体を迂回する際の制約を受けずに済み、複数の導電路形成体を配設しやすくなるのである。すなわち、本項の態様によれば、実用性の高いサスペンション装置が得られるのである。
導電路貫通部は、例えば、単純なものでは、車体側連結体を貫通する貫通穴とすることができ、その貫通穴に導電路集合体を通すことができる。また、例えば、車体側連結体を貫通して形成された導電性の部分である導電部にすることもできる。その導電部は、導電路形成体の一部を構成するものとすることができる。なお、車体側連結体のうちの導電部の周囲の部分が導電性である場合には、上記導電部とその他の部分とが電気的に絶縁されていることが望ましい。
(2)前記複数の導電路形成体の各々が、車体内部の電源と電気的に接続された複数の電源側接続端子のうちの対応するものと接続されるアクチュエータ側接続端子を含む(1)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、各導電路形成体の端部にアクチュエータ側接続端子が接続されたものである。そのアクチュエータ側接続端子と嵌合する電源側接続端子が、電源に接続された電源線の端部に設けられていれば、サスペンション装置の組み付け時に各導電路形成体と電源線とを容易に接続することができる。
アクチュエータ側接続端子は、例えば、後述する態様のように、車体側連結体に固定することができる。この場合、車体側連結体が車体の一部に固定された後に、電源側接続端子をアクチュエータ側接続端子に接続することにより、容易に各導電路形成体と電源線とを電気的に接続することができる。このアクチュエータ側接続端子を車体側連結体に固定する態様には、電源側接続端子が、車体側から電磁連結装置側に車体側連結体を貫通する態様も含まれる。その場合には、導電路形成体が、電源側接続端子のうちの少なくとも車体側連結体を貫通する部分を含むものとすることができる。
また、例えば、導電路形成体(電線等)を車体側連結体の貫通穴(導電路貫通部)に通し、その導電路形成体の車体側に延び出した部分の先端部にアクチュエータ側接続端子を設けることができる。その場合には、例えば、予め電源側接続端子を車体内に固定しておくことができ、その電源側接続端子にアクチュエータ側接続端子を接続することにより、容易に各導電路形成体と電源線とを電気的に接続することができる。
なお、複数の導電路形成体のうち、互いに同相の電力が供給されるものが複数ある場合には、それら同相の電力が供給される複数の導電路形成体の各々に設けられたアクチュエータ側接続端子が別個のものとして形成されていてもよいし、一体のものとして形成されていてもよい。
(3)前記1以上の導電路貫通部の各々が、それらに対応する前記1以上ずつの導電路形成体の各々の前記アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部を含む(2)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部が導電路貫通部に設けられ、アクチュエータ側接続端子が車体側連結体に固定される態様である。すなわち、車体側連結体に、アクチュエータ側接続端子と端子保持部とを含むアクチュエータ側の接続具が設けられた態様である。
本項の態様によれば、サスペンション装置が車両に組み付けられる前の段階でアクチュエータ側接続端子が固定されており、サスペンション装置の保管,輸送,組み付け等の際に、電線が変形したり、アクチュエータ側接続端子がみだりに動いたりすることを防止することができる。また、前述のように、車体側連結体が車体の一部に固定された後に、電源側接続端子をアクチュエータ側接続端子に接続することにより、容易に各導電路形成体と電源線とを電気的に接続することができる。
本項の態様においては、例えば、アクチュエータ側接続端子を車体側連結体の車体側の部分に固定することができ、その場合には、例えば、貫通穴(導電路貫通部の一態様である)に導電路形成体を通して配設することができる。また、例えば、アクチュエータ側接続端子を車体側連結体内またはそれの電磁連結装置側の部分に固定することもでき、その場合には、例えば、前述のように電源側接続端子の少なくとも一部を車体側連結体の車体側から貫通穴に挿入してアクチュエータ側接続端子に接続することにより、容易に各導電路形成体と電源線とを接続することができる。さらにまた、例えば、アクチュエータ側接続端子の長さ寸法を、車体側連結体を貫通し得る長さとし、そのアクチュエータ側接続端子が車体側連結体を貫通した状態で保持することもできる。
端子保持部は、絶縁性を有していることが望ましく、例えば、樹脂,ゴム,ゴムの類似物(後述する),セラミックス等の材料から形成することができる。
なお、本項の態様では、車体側連結体が車体の一部に固定された状態において、車体の一部のうちの導電路貫通部と対応する部分に、導電路集合体,電源側接続端子等を貫通させる穴が設けられていることが望ましい。
(4)前記1以上の導電路貫通部が、複数の導電路貫通部とされ、
前記複数の導電路形成体が、それら複数の導電路貫通部に対応する複数の集合に分けられ、それら複数の集合同士が、それらの配線経路のうちの少なくとも一部において互いに別個に変形可能である(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
前述のように、電磁アクチュエータは比較的大きな電流を消費するため、電力を供給するために比較的太い電線が必要となる。また、通常、電力を供給するために、互いに絶縁された複数の電線(例えば、3本)が纏められて1本の電線にされる。しかし、比較的太い複数の電線を1本に纏めると、剛性が高くなり、曲げにくいため、配設の自由度が比較的低くなる。また、その太い電線を接続するコネクタ等の接続具も比較的大きなものが必要となり、配設場所の制約が大きくなる。
それに対して、本項の態様において、電磁アクチュエータに電力を供給する複数の導電路形成体が、それぞれ1以上ずつの導電路形成体を含む複数の集合(各集合を導電路集合体と称する場合がある)に分けて配線される。そのため、複数の導電路形成体を1つに纏める態様と比較して、各導電路集合体が曲がりやすくなり、配設が比較的容易になる。また、複数の集合の各々に接続具が設けられる場合には、その接続具を小さくすることができる。さらにまた、本項の態様では、複数の集合がそれぞれ別々の導電路貫通部を通るようにされており、各集合の配設場所を広くすることができる。また、接続具が設けられる場合には、接続具が互いに干渉しにくくすることができる。以上に述べたように、本項の態様によれば、複数の導電路形成体を1つに纏める態様と比較して各集合を曲がりやすくして配設を比較的容易にすることができる。
なお、1つの集合が複数の導電路形成体を含む場合に、それら複数の導電路形成体が、配線経路のうちの少なくとも一部において、互いに別個に変形可能にされている場合には、より変形が容易となる。
また、1つの集合が複数の導電路形成体を含む場合に、それら複数の導電路形成体が互いに、電源の複数の相のうちの同じ相に接続されてもよいし、異なる相に接続されてもよい。例えば、電磁アクチュエータに供給される電力の、(i)各相に複数ずつの導電路形成体を接続するとともに、各導電路貫通部に互いに同相の複数ずつの導電路形成体を対応させることや、(ii)各相に電力の相数の倍数(例えば、3の倍数)ずつの導電路形成体を接続するとともに、各導電路貫通部毎に各相1以上ずつの導電路形成体を対応させることができる。これらの態様では、電力の各相毎に複数ずつの導電路形成体が設けられており、一部の導電路形成体が断線した場合に、例えば、出力を下げて電磁アクチュエータを作動させることができるため、フェールセーフ性を向上させることができる。
(5)前記1以上の導電路貫通部が、複数の導電路貫通部とされ、
前記車体側連結体が、車体側に突出して車体の一部を貫通する複数の雄ねじ部材であって各々軸方向の貫通穴を有し、前記複数の導電路貫通部の各々の少なくとも一部を形成するものを含む(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様において、サスペンション装置の車両への取付時に、車体の一部を雄ねじ部材が貫通した状態でそれにナット等の雌ねじ部材が螺合させられて、車体側連結体が車体の一部に締結される。そして、雄ねじ部材は筒状を成しており、内側に導電路形成体を通すことができる。車体の一部には、通常、雄ねじ部材を通す締結用の穴が予め配設されているため、本項の態様には、配線用に別の穴を設けなくても済むというメリットがある。
(6)前記複数の導電路形成体の各々が、車体内部の電源と電気的に接続された電源側接続端子と接続されるアクチュエータ側接続端子を含み、
前記複数の導電路貫通部の各々が、前記複数の雄ねじ部材の各々に設けられて前記アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部を含む(5)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様によれば、端子保持部を雄ねじ部材に取り付けることにより、比較的容易にアクチュエータ側接続端子を車体側連結体に固定することができる。その場合、端子保持部およびアクチュエータ側接続端子の両者の各々の外径を、雄ねじ部材の内径以下にして端子保持部等を雄ねじ部材の内側に設けることや、雄ねじ部材の外径以下にして端子保持部等を雄ねじ部材の先端に設けることができ、車体の一部に設けられる締結用の穴が必要以上に大きくなることを抑制することができる。なお、本項のアクチュエータ側接続端子は上記(2)項に記載のものと同様であり、本項の端子保持部は上記(3)項に記載のものと同様である。
(7)前記車体側連結体が、車体の一部を支持する支持体と、ゴムまたはその類似物によって形成されて前記支持体と前記電磁連結装置との間に介在させられる弾性連結部とを含む(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様では、弾性連結部の存在により、電磁連結装置の端部と車体の一部との相対移動がある程度許容される。この態様において、それらの相対移動に伴って導電路形成体が変形させられるため(後述する)、各導電路形成体あるいはそれの集合が変形しやすくされることが望ましい。
本項の弾性連結部は、例えば、サポートゴム,マウントラバー等と称される場合があり、通常、多くのサスペンション装置に設けられている。なお、ゴムの類似物は、例えば、合成ゴム(例えば、熱可塑性エラストマー),ゴムと合成ゴムの混合物等とすることができる。支持体は、金属、硬質合成樹脂等、ゴムに比較して硬質の材料で形成される。
(8)前記1以上の導電路貫通部の各々が、前記支持体および前記弾性連結部を貫通するものである(7)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様では、導電路集合体が弾性連結部を貫通した状態で配設される。そのため、例えば、弾性連結部が、電源線と電磁アクチュエータとの間を横切る状態で配設されている場合に、弾性連結部を迂回する場合と比較して、電磁アクチュエータと電源線とを比較的短い距離で接続することができる。
本項の態様には、導電路形成体と弾性連結部との間に隙間が存在する態様(例えば、導電路貫通部が導電路形成体に比して大きめの貫通穴にされた場合)と、導電路形成体と弾性連結部とが隙間無く密着する態様(例えば、ゴム等によって電線等が鋳包まれた態様)とが含まれる。導電路形成体と弾性連結部との間に隙間が存在する態様では、弾性連結部の変形に伴い導電路形成体が比較的容易に変形することができる。一方、導電路形成体と弾性連結部とが互いに密着する態様では、導電路形成体の絶縁性において比較的優れている。なお、導電路形成体と弾性連結部とが互いに密着する態様では、導電路形成体に被覆が成され、その被覆に弾性連結部が密着することが望ましい。弾性連結部が変形した場合に、導電路形成体と被覆との間で滑りが生じることで、導電路形成体の変形が比較的容易になるからである。
また、本項の態様が、上記(5)項または(6)項に従属する態様において、雄ねじ部材の電磁連結装置側に弾性連結部が配設されている場合に好適である。
【0009】
(9)前記複数の導電路形成体の各々が、設定された2点間を結ぶ変形容易導電部を含み、それら変形容易導電部の各々が、前記2点間を結ぶ1本の電線であってその電線の中心線が各変形容易導電部の中心線と一致するとともに許容伝導電力が各変形容易導電部の許容伝導電力と同じである標準単一電線を想定した場合よりも、容易に変形するものである(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様において、導電路形成体の少なくとも一部が変形容易にされており、導電路形成体の配設が一層容易になる。
変形容易導電部の比較対象となる上記標準単一電線は仮想的な電線であり、変形容易導電部の中心線に沿うように配設されるものとされる。変形容易導電部の中心線は、例えば、それらの中央位置,重心位置等を通る線とすることができる。なお、標準単一電線は仮想的な電線であるが、障害物を通り抜けるような非現実的なものを想定するのではなく、その状況に応じて障害物を迂回する等、現実的な経路を通るものを想定することが望ましい。
また、標準単一電線は、変形容易導電部と同じ許容伝導電力になる太さであると想定される。上記許容伝導電力は、導電体が継続して伝導することが許容される電力であり、例えば、許容電流や電流容量の値とすることや、それらを決定する方法と類する方法で決定することができる。なお、変形容易導電部が電線である場合には、標準単一電線の材質(導電材料等)は変形容易導電部のものと同じにされる。また、被覆はないものとして比較することが簡便であるが、被覆の有無を同じにすることもできる。
変形容易導電部が電線でない場合には、導電路形成体に含まれる電線や、電源線の材質、あるいは一般的な導電材料(銅,銅合金等)とすることができる。なお、標準単一電線の許容伝導電力を、例えば、それと対応する導電路形成体と同じにすることもできる。
変形が容易であることは、導電路形成体の耐久性の点においても有利となる場合が多い。例えば、本項の態様が上記(7)項または(8)項に従属する場合には、本項のサスペンション装置が車両に搭載され、その車両が走行する状態において、電磁連結装置と車体の一部との若干の相対移動が許容される。そして、それらの相対移動に伴い、導電路形成体の、車体側に固定された部分と、電磁連結装置側に固定された部分とが相対移動させられ、導電路形成体、特に電線の部分が変形(伸縮変形,曲げ変形等)させられることとなる。このような変形によって、あるいはその変形の繰り返しによって、電線が断線する虞が生じる。また、電線自体は断線しない場合であっても、電線と接続端子との、ハンダ付け、ねじ締め、かしめ付け等による電気的な接続が不完全になる虞がある。それに対して、本項の態様によれば、変形容易導電部において容易に変形できるため、車体側に固定された部分と電磁連結装置側に固定された部分との相対移動を無理なく吸収することができ、断線等の虞を低減させることができる。すなわち、本項の態様は、変形容易導電部の両端部が互いに相対移動させられる場合に、特に好適である。
また、本項の態様が、変形容易導電部が電線で構成されるとともに、上記(7)項または(8)項に従属する場合には、例えば、電線の長さを、車体の一部と電磁連結装置とが相対移動によって最大限離間し得る状態の上記設定された2点間を電気的に接続するために必要な長さ以上とすることができる。このようにすれば、車体の一部と電磁連結装置とが相対移動しても、電線が過度に引き伸ばされることを抑制することができ、電線の断線等の虞を低減させることができる。
本項ないし下記(19)項の特徴は、上記(1)項ないし(8)項の特徴とは独立に採用可能である。
(10)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と比較して、(a)前記2点を互いに接近または離間させる向きに相対移動させる同じ力が加わった場合の前記2点の相対移動量が1.5倍以上であることと、(b)前記2点の接近離間方向における弾性変形可能量が1.5倍以上であることと、(c)前記2点を互いに接近または離間させた場合に発生する最大歪みが75%以下であることとの少なくとも1つを満たすものとされた(9)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、変形容易導電部の変形の容易さを具体的に規定するものである。(a)は、簡単に言えば、伸縮のし易さであり、上記相対移動量が2倍以上,3倍以上と大きい方が、より変形が容易になる。(b)は、弾性変形領域における相対移動可能な量であり、簡単に言えば、壊れずに伸縮可能な量の大きさであり、上記弾性変形可能量が2倍以上,3倍以上と大きい方が、より変形が容易になる。(c)は、簡単に言えば、曲がり易さであり、上記最大歪みが65%以下、60%以下,55%以下と小さくなる方が、より変形が容易になる。
(11)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線よりも直径の小さい複数の小径電線の各々が別個に変形し得る状態で互いに並列に配線された並列小径電線部を含む(9)項または(10)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、複数の小径電線(並列小径電線部)によって、変形容易導電部が形成された態様である。小径電線は、単一電線に比べて剛性が低いため、変形が容易になる。また、小径であることから、例えば、湾曲による最大歪みが小さくなる点において、耐久性の点で有利である。なお、小径電線の直径は、例えば、小径電線を2本にした場合には、単純には、標準単一電線の71%程度になり、3本にした場合には58%程度になる。また、前述の(c)最大歪みは、直径に比例し、上記の例では、概ね71%程度、58%程度になる。すなわち、並列小径電線部を設けることによって、変形が一層容易になり、配設の自由度を大きくすることと、変形に対する耐久性を大きくすることとの少なくとも一方が可能となるのである。
なお、小径電線には、湾曲(螺旋状にすることも含む)させて緩みを持たせることが容易であるというメリットもある。湾曲,螺旋等については後述する態様の特徴を採用することができる。
複数の小径電線の太さの決定において、標準単一電線と小径電線との材質が同じであると想定し、例えば、複数の小径電線の断面積(導電体の部分)の総和を、標準単一電線の断面積(導電体の部分)と等しくすることができる。なお、放熱等の影響も考慮することが望ましい。また、両者の面積を厳密に等しくすることは不可欠ではないが、材質が同じであれば比較的近い大きさになりやすいと考えられる。
小径電線は、単一電線と同様に、例えば、比較的太い1本の導電素線によって導通を生じさせるものであってもよいし、比較的細い複数の導電素線が1本の電線にされたものでもよい。また、裸電線とすることや、絶縁被覆された被覆電線とすることができる。また、複数の小径電線は、単一電線等に、互いに別個の小径電線が複数接続されたものとすることや、複数の小径電線が纏めて被覆されて1本の単一電線にされたものが、それの一部の被覆が除去され、その被覆がない部分において複数の小径電線が露出させられて互いに別個に変形可能にされたものとすることができる。
なお、本項の特徴は、上記(1)項ないし(10)項の特徴と独立に採用することができる。その場合には、例えば、上記標準単一電線を、単に、許容伝導電力が変形容易導電部(あるいは導電路形成体)と同じ電線(標準電線)とし、変形容易導電部を、その標準電線よりも容易に変形するものとすることができる。また、例えば、小径電線を連結装置貫通穴と電磁連結装置との隙間を通す態様とすることもできる。単一電線を通すことができない隙間でも、小径電線であれば通すことができる場合があるからである。また、小径電線の変形の容易さ、径の小ささから、車体連結部の外側を迂回して配設することも容易になる。それらの態様の場合には、変形容易導電部と称するよりも、小径電線が並列に配設された並列小径電線部と称することが望ましい。本項の態様を、複数の小径電線を導電路に接続して導電路を分岐させる導電路分岐具を含むものとすることができる。
(12)前記変形容易導電部が、導電性を有する弾性体によって形成された弾性体製導電部を含む(9)項ないし(11)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
ばね材,ゴム,それの類似物等の弾性体によれば、変形容易導電部を単一電線に比べて容易に変形可能とすることができる。導電性を有するばね材は、例えば、ベリリウム銅等の銅合金,ステンレス鋼、ピアノ線等を用いることができる。そのばね材の形状は、例えば、コイルスプリング状、板ばね状、U字状等、種々の形状にすることができる。導電性を有するゴム等については、次項に記載する。
(13)前記弾性体が、導電性を有するゴムまたはその類似物によって形成された(12)項に記載の車両用サスペンション装置。
導電性を有するゴムまたはその類似物は、例えば、ゴム,合成ゴム,それらの混合物等に、粉末、短繊維状の、カーボンブラック,金属等を混合したものとすることができる。なお、本項の態様によれば、前記(7)項の態様における弾性連結部の一部を導電性を有するゴム等に置き換えることによって、弾性連結部を貫通する導電路形成体を配設することができる。
(14)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が複数回湾曲させられて形成されたS字形部を1つ以上備えたつづら折れ部を含む(9)項ないし(13)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、例えば、直線的に接続可能な2点間を接続する電線を、湾曲させることによって意図的に緩みを生じさせ、あるいは撓み代を増やすことにより、電線が容易に変形できるようにしたものである。標準単一電線と同等の1本の電線は、例えば、標準単一電線と同じ太さで同じ材質(導電材料等)で構成された電線とすることができる。なお、本項ないし(17)項の態様は、配線作業によって電線が若干曲がっているようなものまで含むものではない。例えば、上記(10)項の基準や、次項の基準に適合するものとすることができる。なお、本項ないし(17)項の態様において、電線が自由状態で湾曲,螺旋等の状態を維持するものとすることができる。
(15)前記1以上のS字形部の各々が、そのS字形部自体の中心線とそのS字形部を構成する電線の中心線との離間距離の最大値を前記S字形部自体の中心線の長さで除した値が、0.3以上である(14)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、S字形部の形状を具体的に規定するものである。なお、上記値が、0.4以上,0.5以上,0.6以上と大きい方が、より変形が容易になる。
(16)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が螺旋状に1回転以上巻かれた螺旋部を含む(9)項ないし(15)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、電線がコイル状に巻かれて、容易に変形できるようにしたものである。螺旋部は、伸縮変形および曲げ変形が容易であり、断線等の虞をより一層低減させることができる。標準単一電線と同等の1本の電線は、例えば、標準単一電線と同じ太さで同じ材質で構成された電線とすることができる。本項の態様は、湾曲の一態様と考えることができる。なお、上記の態様と同様に、例えば、螺旋の1単位(1回転分)について、螺旋自体の中心線と螺旋を構成する電線の中心線との離間距離の最大値を、螺旋自体の中心線の長さで除した値を、0.2以上,0.3以上,0.4以上,0.5以上とすることができ、その値を大きくする方が変形が容易になる。
(17)前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が複数回湾曲させられて、前記標準単一電線の1.5倍以上の長さにされた湾曲部を含む(9)項ないし(16)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、湾曲(螺旋も含む)の程度を電線の長さで規定するものである。電線が長いほど緩み,撓み量が大きくなり、変形が容易になる。また、上記長さを、標準単一電線の2倍以上,3倍以上,4倍以上とすることができる。なお、一般的に、1本の電線の太さは均一であるので、重量によって長さを規定することもできる。例えば、重量が1.5倍であれば、長さが1.5倍になっているとみなすことができる。
(18)前記複数の導電路形成体の各々が、前記変形容易導電部と許容伝導電力が同じ1本の電線である標準電線と、その標準電線と直列に接続された前記変形容易導電部とを含む(9)項ないし(17)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様によれば、電線を変形させる必要性が比較的小さい部分に標準電線を配設し、電線を変形させる必要性が比較的大きい部分に変形容易導電部を配設することができ、効果的に導電路形成体の変形を容易にすることができる。なお、本項の態様において、前述の標準単一電線の太さや材質を本項の標準電線と同じものとすることができる。
(19)前記1以上の導電路貫通部の各々が、少なくとも前記弾性連結部を貫通する弾性連結部貫通穴を含み、
変形容易導電部が、その前記弾性連結部貫通穴を貫通した状態で配設されたものである(9)項ないし(18)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、弾性連結部貫通穴を貫通する部分が変形容易導電部とされている。弾性連結部は、車両の走行中に伸縮変形,剪断変形等させられるが、その変形に応じて変形容易導電部が容易に変形するため断線等の虞を低減することができる。なお、本項の弾性連結部を、絶縁性を有するものとすることができ、その場合には、例えば、変形容易導電部が絶縁被覆されていない裸電線によって構成された態様とすることができる。そうすることによって、変形容易導電部に絶縁被覆がされている場合と比較して、変形容易導電部の変形が一層容易になる。
【0010】
(20)前記電磁アクチュエータが、前記車輪側連結体と前記車体側連結体とを接近させる向きと、離間させる向きとの少なくとも一方の向きの力を発生させるものである(1)項ないし(19)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
車輪保持部と車体の一部とを接近させる向きと離間させる向きとの一方の向きの力だけでも、車体あるいは車輪の振動をある程度抑制すること等が可能である。例えば、車輪保持部と車体の一部との接近速度に応じて、それらを離間させる向きの力を発生させることによって振動を抑制することができる。しかしながら、振動の抑制や、車体の姿勢変化の抑制を効果的なものとするためには、接近と離間との両方の向きの力を発生させることが望ましい。
(21)前記電磁アクチュエータが、前記車輪側連結体と前記車体側連結体とを接近離間させる駆動力源となる電動モータを含む(1)項ないし(20)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
電動モータは、例えば、回転式モータ、直動式モータ(リニアモータ)等とすることができる。また、ブラシ付モータ、ブラシレスモータのいずれでもよい。
(22)前記電動モータが、3相交流の供給を受けて駆動力を発生させる3相モータであり、
前記複数の導電路貫通部が、それぞれ3相交流の各々に対応する3つの導電路貫通部である(21)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、駆動力源として3相モータ(例えば、DCブラシレスモータ)を備えた態様である。この場合、例えば、少なくとも3つの導電路形成体が必要になるが、それらが個別に変形可能とされ、別々の導電路貫通部に通されるため、配設が容易となる。本項の3相交流には、インバータによって供給される擬似的な交流も含まれる。
(23)前記電磁連結装置が、
一端部が前記車輪側連結体と前記車体側連結体との一方に連結されたロッドと、
そのロッドを軸方向に相対移動可能かつ軸方向と直交する方向に相対移動不能に保持するとともに、そのロッドと反対側の端部において前記車輪側連結体と前記車体側連結体との他方に連結された筒状のハウジングと
を含む(1)項ないし(22)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、電磁連結装置の構成の一例である。本項の態様によれば、ロッドとハウジングとを相対移動可能にすることにより、電磁連結装置の骨格となる部分を比較的容易に構成することができる。なお、ロッドおよびハウジングは、接近離間方向(例えば、上下方向)において相対移動させられる。
(24)前記電動モータが、前記ロッドの軸線回りに回転するロータと、前記ハウジングに固定されたステータとを含み、
前記電磁アクチュエータが、前記ロータの回転方向の出力を前記ロッドと前記ハウジングとを軸線方向に相対移動させる力に変換する運動変換装置とを含む(23)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、電動モータが回転式モータとされたものである。そして、運動変換装置により、モータの回転駆動力が軸方向の駆動力に変換される。運動変換装置は、例えば、後述する「ボールねじ」を含むものとすることができる。
(25)当該サスペンション装置が、車輪保持部と車体の一部とを離間させる向きの力を発生させるスプリングを含む(1)項ないし(24)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、例えば、圧縮コイルスプリング,エアスプリング等のスプリングを含むものである。スプリングを用いずに電磁アクチュエータだけで車体を支えることも可能であるが、スプリングを併用することにより、あるいは、主としてスプリングによって車体を支えることにより、電磁アクチュエータの出力および電力消費を減少させることができる。この態様において、例えば、電磁アクチュエータを、主として、車体および車輪の振動を減衰させる減衰力を発生させるものや、車体の姿勢変化を抑制する力(姿勢制御力と称する場合がある)を発生させるものとすることができる。なお、電磁連結装置がスプリングを含むものとすることもできる。
(26)前記車体側連結体が、前記電磁連結装置の一部を貫通させる連結装置貫通穴を含み、
前記1以上の導電路貫通部の各々が、前記車体側連結体のうち、その連結装置貫通穴と異なる部分を貫通して設けられた(1)項ないし(25)項のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
本項の態様は、例えば、電動モータが連結装置貫通穴を貫通する状態で配設されるといった態様とすることができる。本項の態様では、車体側連結体は、例えば、環状を成すものとすることができ、その環状の部分を導電路貫通部が貫通して設けられたものとすることができる。また、導電路貫通部が貫通穴とされた態様では、その貫通穴は連結装置貫通穴と別個に設けられることとなる。なお、本項の態様が前記(7)項,(8)項,(19)項に従属する場合には、連結装置貫通穴が支持体および弾性連結部を貫通して設けられたものとなる。
【実施例】
【0011】
以下、請求可能発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0012】
図1に、請求可能発明の一実施例であるサスペンション装置10の正面図を示す。なお、図中の括弧内には、特に断らない限り、発明の態様における名称を記載する。
サスペンション装置10は、車輪保持部と車体の一部であるサスペンションタワー14との間に設けられており、それらを接近離間させる向きの力を発生させる接近離間力発生装置20(電磁連結装置の一種である)と、その接近離間力発生装置20をサスペンションタワー14に連結する車体側連結体たるアッパサポート22と、接近離間力発生装置20を車輪保持部に連結する車輪側連結体たるロアサポート24とを備えている。なお、車輪保持部(図示省略)は、車輪を回転可能に保持するステアリングナックル等の車輪保持部材,車体に連結されて車輪保持部材を上下に移動可能に支持するアーム部材等を含む。
【0013】
接近離間力発生装置20は、ハウジング30を備えており、そのハウジング30内に充填された圧縮空気の弾性力によって車体を支えるものとされている。ハウジング30は、一端部が開口した桶状の形状にされた車体側部材32(チャンバと称される場合がある)と、その車体側部材32の開口部と対向して開口した筒状を成す車輪側部材34(エアピストンと称される場合がある)と、それらの開口間の隙間を気密に覆うとともにそれらを接近離間可能に連結する連結膜36(ダイヤフラムと称される場合がある)とを含む。それら車体側部材32と車輪側部材34とが接近離間させられると、ハウジング30内の容積が変化して圧縮空気の弾性力が変化させられる。すなわち、接近離間力発生装置20は、エアスプリングを含むものとされており、主として圧縮空気の弾性力によって車体を支持する離間力を発生させるのである。
なお、本実施例において、接近離間力発生装置20の軸方向、つまり、アッパサポート22とロアサポート24とが接近離間する方向を「接近離間方向」と称する。
【0014】
また、接近離間力発生装置20は、電磁アクチュエータ40を備えており、車輪と車体とを接近離間させる向きの力(接近離間力)を発生させ得るものとされている。電磁アクチュエータ40は、駆動力源たる電動モータ42と、電動モータ42の回転駆動力を軸方向の力に変換する運動変換装置たるボールねじ装置44とを含む。
電動モータ42は、ハウジング30の車体側部材32の閉塞された側(上側)の壁面にそれを貫通した状態で固定された筒状のモータハウジング50と、そのモータハウジング50の内周部に配設されたステータ52と、モータハウジング50に回転可能に保持された中空のモータ軸54と、モータ軸54の外周部にステータ52に対向して配設されたロータ56とを含む。この電動モータ42は、DCブラシレスモータとされており、インバータから3相交流の供給を受けて作動する。また、ステータ52は3相交流の各相毎に対応する電磁石を備えている。また、ステータ52の下方には、ステータ52に設けられた各電磁石のコイルに電力を供給するコイル接続部58が配設されている。なお、電動モータ42には、ロータ56の回転位置を検出する回転位置センサ(図示を省略する)が設けられている。
【0015】
ボールねじ装置44は、内周部に多数のベアリングボールを保持するナット60と、外周部にそれらベアリングボールが嵌り込む雄ねじが形成された駆動ロッド62とを含むものであり、それらナット60と駆動ロッド62とがベアリングボールを介して螺合させられている。ナット60はモータ軸54の下部の内周部に相対回転不能に嵌合させられている。つまり、ナット60の外周部にキー64が設けられており、そのキー64がモータ軸54の内周部に形成されたキー溝に嵌められて、モータ軸54とナット60との相対回転が禁止されている。
また、ボールねじ装置44は、駆動ロッド62の下端部に相対回転不能に取り付けられたスライド部材70と、モータハウジング50の下端部に固定されるとともにロアサポート24側に向かって延び、スライド部材70を接近離間方向にガイドする筒状ガイド体72とを備えている。その筒状ガイド体72の上部において、モータ軸54の下部が軸受けを介して回転可能に保持されている。また、筒状ガイド体72の下側の内周部には、接近離間方向に延びる複数のガイド溝74が周方向において等間隔に形成されている。それらガイド溝74の各々にスライド部材70の外周部に取り付けられたキー76が嵌められており、スライド部材70の回転が禁止されるとともに接近離間方向の移動が許容されている。そのスライド部材70の上側中央部には、セレーションが形成された嵌合穴78が接近離間方向に設けられており、駆動ロッド62の下端部に形成されたセレーションと嵌合させられている。そのため、駆動ロッド62の軸回りの回転がスライド部材70によって禁止され、ナット60の回転に伴い駆動ロッド62が軸方向、つまり、接近離間方向に駆動される。
なお、筒状ガイド体72の外周には、車輪側部材34が滑らかに相対移動可能に嵌合させられており、接近離間力発生装置20が伸縮する際に、筒状ガイド体72と車輪側部材34とが相対移動させられる。
【0016】
スライド部材70の下側には、ばね下振動緩和部80が設けられている。ばね下振動緩和部80は、車輪側部材34の下部に固定されたショックアブソーバ82を備えている。ショックアブソーバ82は、流体抵抗式とされており、作動油が充填されたシリンダ84と、そのシリンダ84内に配設されたピストンと、一端部にピストンが取り付けられるとともに他端部がスライド部材70に固定されたピストンロッド86とを含む。ピストンには絞り,開閉弁等の抵抗力付与部が設けられており、ピストンがシリンダ84内を移動する際に作動油が抵抗力付与部を通過する際の流動抵抗によって、シリンダ84とピストンロッド86(およびピストン)との相対移動に対する減衰力が発生させられる。
シリンダ84の下端部にはロアサポート24が取り付けられており、ショックアブソーバ82は、スライド部材70とロアサポート24との相対移動に対する抵抗力を発生させるものとされている。そのため、電磁アクチュエータ40によって接近離間力が発生させられている場合に、例えば、路面の凹凸によって車輪が上下に細かく振動した場合等に、ショックアブソーバ82が伸縮するとともに減衰力を発生させることによってそのばね下振動が緩和される。
ばね下振動緩和部80は、シリンダ84の上側端面とスライド部材70の下側端面との間に挟まれて配設された圧縮コイルスプリング90を備えており、シリンダ84に対するピストンロッド86の下降が抑制されている。
【0017】
本実施例において、電磁連結装置たる接近離間力発生装置20は、ハウジング30に軸方向に移動可能に保持された前記「ロッド」が、振動減衰装置たるショックアブソーバ82を介して車輪側連結体たるロアサポート24と連結された態様とされている。その「ロッド」は、駆動ロッド62,スライド部材70およびピストンロッド86によって構成されている。なお、「ロッド」が、それら駆動ロッド62等にショックアブソーバ82を加えたものによって構成されていると考えることもでき、その場合は、「ロッド」自身がある程度伸縮可能にされた態様となる。
【0018】
電磁アクチュエータ40は、後述する電子制御ユニットによって制御され、走行状態に応じた接近離間力を発生させ、接近離間力発生装置20全体の離間力である車体支持力を増減させる。例えば、車体の上下振動を抑制する減衰力を発生させる。また、例えば、旋回時に車体の姿勢変化を抑制すべく、旋回外輪側に配設されたものは離間力を発生させて車体支持力を増加させ、旋回内輪側に配設されたものは接近力を発生させて車体支持力を減少させる。さらにまた、例えば、比較的大きな路面の隆起や窪みを通過する際に接近力や離間力を発生させて車体支持力を変化させ、路面からの入力に起因する振動を効果的に吸収する。
【0019】
図2にアッパサポート22の拡大図を示す。
本実施例において、アッパサポート22は、車体の一部であるサスペンションタワー14に下方から取り付けられるアッパサポート本体100(連結部本体)を備えている。そのアッパサポート本体100は、サスペンションタワー14に当接する当接板110(支持体の一種である)と、当接板110と車体側部材32とを弾性的に連結する弾性連結部たるマウントラバー112とを備えている。また、アッパサポート22には、当接板110を貫通して車体側に延び出す複数のスタッドボルト114(雄ねじ部材の一種である)が設けられている。
当接板110は、環状を成しており、モータ軸54と交差して(本実施例において、直角に交差して)配設された平板状の平板部120と、その平板部120の外周端から垂下して設けられた外周壁部122とを含む。平板部120にはモータハウジング50の外径よりも大きな穴124が形成されており、平板部120は、その内周部がモータハウジング50の外周面と全周に渡って設定された間隔を保った状態で配置されている。
平板部120には、各スタッドボルト114を接近離間方向に貫通させる複数のボルト穴130(本実施例において3つ)が、周方向において等間隔に設けられている。なお、各ボルト穴130の内周部には、スタッドボルト114の回転を禁止するためのセレーションが形成されている。
【0020】
図3にスタッドボルト114の断面を示す。複数のスタッドボルト114(本実施例において3つ)の各々は、軸方向の中空穴136を有する中空軸部132と、中空軸部132のマウントラバー112側の端部から外周に広がる円板部134とを含む。中空軸部132の外周部には、それの大部分に雄ねじが形成され、また、円板部134に近接する部分に、ボルト穴130の内周部のセレーションと嵌合するセレーション135が形成されている。中空軸部132先端部付近において、中空穴136の径が大きくされており、後述するコネクタが嵌入する嵌入穴138が形成されている。本サスペンション装置10が車体に取り付けられる際には、スタッドボルト114がサスペンションタワー14に設けられた車体貫通穴142を貫通した状態でナット144(図1参照)と螺合させられ、サスペンションタワー14と当接板110とが締結される。
【0021】
マウントラバー112は、合成ゴム製であり、環状を成している。また、マウントラバー112は、その上側および外周側の部分において当接板110に、その下側および内周側の部分において車体側部材32の上側の面に接着等によって接合されている。このように、当接板110と車体側部材32とが、マウントラバー112によって弾性的に連結されており、サスペンションタワー14に対する接近離間力発生装置20(詳細には、車体側部材32)の相対移動(接近離間方向,その方向と直交する方向の相対移動)がある程度許容されている。
なお、本実施例において、電動モータ42に電力を供給する配線が、アッパサポート22を貫通して配設されているが、マウントラバー112には、その配線を通すための貫通穴150が設けられている。その配線について以下に詳述する。
【0022】
図4に、電磁アクチュエータ40への電力の供給の配線を模式的に示す。
本サスペンション装置10が搭載される車両には、電磁アクチュエータ40の出力を制御する電子制御ユニット200(以後、「ECU200」と略記する),蓄電器たるバッテリ210,電磁アクチュエータ40に駆動電力を供給する駆動回路たるインバータ220が設けられている。なお、この図において、駆動電力の供給を受ける電動モータ42のステータ52の、3相交流の各相(U,V,W)に対応するコイルが模式的に示されている。
ECU200は、コンピュータを主体として構成されている。ECU200には、インバータ220が接続されており、ECU200の指令に応じた駆動電力がインバータ220からステータ52に供給される。また、ECU200には、ばね上加速度センサ,車体−車輪間距離センサ等の各種のセンサ(図示を省略する)が接続されており、それらの検出結果に基づいて、走行状態に応じて必要な駆動電力が決定される。
インバータ220は、6つのスイッチング素子のON/OFF制御によってPWM(pulse-width modulation、パルス幅変調)を行い、バッテリ210から供給される直流の電力から、擬似的な3相交流を発生させ、指令に応じた駆動電力を各相に供給する。なお、インバータ220を介して電動モータ42とバッテリ210との導通が存在する状態において、接近離間力発生装置20の伸縮に伴い電動モータ42が強制的に回転させられる場合には、電動モータ42によって発電された電力がインバータ220を介してバッテリ210に蓄えられる場合がある。そして、電動モータ42によって発電する際にも接近離間力が発生させられる。
【0023】
インバータ220には、3相交流の各相に対応する3本の電源側コード222(電源線の一種である)が電気的に接続されている。それら3本の電源側コード222の端部には電源側コネクタ224が取り付けられている。
一方、ステータ52には、コイル接続部58を介して、3相交流の各相に対応して電力を供給する導電路を形成する3つの電力供給路形成体230(導電路形成体の一種である)が電気的に接続されている。電力供給路形成体230は、簡単に説明すると、電線,接続端子等の導電体が互いに電気的に導通させられて、電源側コード222とコイル接続部58との間に導電路を形成するものである。本実施例において、3つの電力供給路形成体230は、別個に変形可能に配設されている。したがって、3つの電力供給路形成体230が纏めて配設されている場合、例えば、3つの電線が被覆によって1本に纏められているような場合と比較して変形が容易であり、配設の自由度が大きくなる。
3つの電力供給路形成体230の各々の端部にはモータ側コネクタ232(接続具の一種である)が設けられている。そのモータ側コネクタ232に電源側コネクタ224(接続具の一種である)が接続されることで、各電源側コード222と各電力供給路形成体230とが電気的に接続される。なお、電源側コネクタ224およびモータ側コネクタ232については後に詳述する。
【0024】
各電力供給路形成体230は、複数の導電素線が纏められ、絶縁被覆されて1本の導電線に形成された単一コード234(単一電線の一種)と、その単一コード234と同様の構造であって直径が小さくされた複数本の小径コード236(小径電線の一種)が並列に接続された並列コード部238(並列小径電線部の一種)とが直列に配設されている。そして、並列コード部238に属する複数本の小径コード236の各々は、個別に絶縁被覆され、別個に変形し得るようにされている。すなわち、各電力供給路形成体230は、並列コード部238において、単一コード234においてよりも変形しやすくされているのである。
【0025】
図2,図3に戻り、電動モータ42に電力を供給する配線について詳述する。
本実施例において、電動モータ42は、ハウジング30の上端部である車体側部材32に、その底面を貫通した状態で固定されている。そして、電動モータ42への電力の供給は、ステータ52の下方に設けられたコイル接続部58を介して行われる。つまり、本実施例のサスペンション装置10において、電動モータ42に電力を供給するには、車体内部のインバータ220とハウジング30内部のコイル接続部58とを電気的に接続する必要がある。その際に、本実施例において、各電力供給路形成体230がハウジング30の壁(詳細には、車体側部材32の底面壁)、マウントラバー112、当接板110、スタッドボルト114、および、サスペンションタワー14を貫通するように配設されている。このような構造において、3つの問題がある。すなわち、(a)ハウジング30内の気密性を保ちつつ各電力供給路形成体230を貫通させること、(b)前述のようにマウントラバー112を介して連結されたサスペンションタワー14と車体側部材32とが相対移動する際に、各電力供給路形成体230を容易に変形し得るものとすること、(c)各電力供給路形成体230と各電源側コード222とを容易に接続することである。
【0026】
(a)ハウジング30内の気密性を保ちつつ各電力供給路形成体230を貫通させるために、本実施例において、ハウジング30に、気密保持接続部250が設けられている(図3)。その気密保持接続部250は、車体側部材32のスタッドボルト114に対応する部分に設けられた配線穴252と、その配線穴252を貫通するピン付接続端子254(電力供給路形成体230の一部を構成する部材である)と、配線穴252とピン付接続端子254との隙間を気密に塞ぐシール部材256とを含む。
図5、図6に、ピン付接続端子254の断面、平面を示す。なお、図中の括弧内の記載については後述する。ピン付接続端子254には、車体側部材32の壁面を貫通してハウジング30内部に延びる導電ピン258が設けられており、その導電ピン258と配線穴252との隙間をシール部材256によって気密に塞ぐことによって、ハウジング30内の気密性を保ちつつ各電力供給路形成体230を貫通させることができる。
【0027】
導電ピン258の先端部には、筒状接続金具260の上部が嵌められ、締結用金具262によって固定されている。また、筒状接続金具260の下部が、単一コード234の先端部264が挿入された状態で、かしめられ、ピン付接続端子254と単一コード234とが電気的に接続されている。一方、単一コード234の基端部266は、筒状ガイド体72の上部に設けられた配線穴274に挿入され、ステータ52の下方に設けられたコイル接続部58に接続されている。
ピン付接続端子254の基端部には、電力供給路を分岐させる電力供給路分岐部280(導電路分岐具の一種である)が設けられている。電力供給路分岐部280は、概ねモータ軸54の軸線を中心とする円弧に沿う形状とされ、その中央から導電ピン258が接近離間方向に延び出したものとされている。その電力供給路分岐部280は、接近離間方向の挿入穴282を3つ備えており、それら3つの挿入穴282の各々に小径コード236の一端部が挿入された状態でかしめられることにより、固定されるとともに、小径コード236と電気的に接続される。
なお、電力供給路分岐部280は、車体側部材32に形成された凹部284(図7参照)に配設されている。また、シール部材256は、電力供給路分岐部280と車体側部材32の壁面との間にも配設されており、ピン付接続端子254と車体側部材32との間を電気的に絶縁する役割も果たしている。なお、電力供給路分岐部280は、電力が供給される向きからすると、分岐した電力供給路を一つに集約する分岐路集約部と称することもできる。
【0028】
(b)サスペンションタワー14と車体側部材32との相対移動に応じて各電力供給路形成体230を容易に変形させるために、本実施例において、各電力供給路形成体230のマウントラバー112を貫通する部分が、前述の並列コード部238とされている。
図7に、並列コード部238を、駆動ロッド62の軸線を中心とする円の直径方向において眺めた図を示す。本実施例において、複数本の小径コード236は3本とされ、それら3本の小径コード236が含む複数の導電素線の断面積の合計は、単一コード234の複数の導電素線の断面積の合計と等しくされている。つまり、並列コード部238の許容電流(許容伝導電力の一種である)と、単一コード234の許容電流とが等しくされているのである。なお、並列コード部238および単一コード234の許容電流は、電力供給路形成体230の許容電流と等しくされている。この場合には、放熱性を考慮していないが、放熱性を考慮し、3本の小径コード236が含む複数の導電素線の断面積の合計を、単一コード234の複数の導電素線の断面積の合計よりも小さくすることもできる。
なお、本実施例において、前記「許容伝導電力が導電路形成体と同じ1本の電線である標準電線」が、単一コード234と同じ材質で同じ太さの電線であると想定される。また、前記「標準単一電線」は、単一コード234と同じ材質で同じ太さの電線であって、並列コード部238によって結ばれる2点間を結ぶ電線であると想定される。なお、図中に、標準単一電線の中心線Sを一点鎖線にて示す。なお、標準単一電線の中心線Sは並列コード部238自体の中心線と一致する。
各小径コード236の外径は、単一コード234の60%以下とされている。つまり、各小径コード236は、当接板110と車体側部材32との相対移動によって変形させられた際の最大歪みが、標準単一電線の60%以下とされており、変形しやすく、また、変形によって断線する虞が比較的低いものとされている。すなわち、並列コード部238によって、電力供給路形成体230の配設が容易にされているのである。
なお、各小径コード236の外径が単一コード234の75%以下であれば、3本の小径コード236が含む複数の導電素線の断面積の合計が、単一コード234のそれよりも大きくされていてもよい。しかしながら、各小径コード236の外径が小さいほど変形が容易になる。また、複数本の小径コード236を2本、あるいは4本以上のものとすることもできる。
【0029】
並列コード部238の各小径コード236は、下端部が前述のピン付接続端子254の電力供給路分岐部280に接続されている。一方、上端部は、前述の図5,図6において、ピン付接続端子254と同様な構造であって導電ピンが長くされたロングピン付接続端子290(電力供給路形成体230の一部を構成する部材である)に接続されている。なお、括弧内にロングピン付接続端子290等の名称,符号を記載した。また、図5において、ロングピン付接続端子290の上下が逆であり、図6において、視点の向きがロングピン付接続端子290を上側から眺めた図になっている。
そのロングピン付接続端子290は、ピン付接続端子254の電力供給路分岐部280と同様に構成された電力供給路分岐部291(導電路分岐具の一種である)を備えており、それの挿入穴292に各小径コード236が挿入された状態でかしめられ、各小径コード236が固定されるとともに電気的に接続されている。
【0030】
本実施例では、並列コード部238は、各小径コード236が自然状態において螺旋状になるように予め変形させられた態様とされている。図8に、並列コード部238についての標準単一電線の中心線Sを示す。本実施例において、小径コード236の長さは、標準単一電線の1.5倍以上の長さとされている。すなわち、各小径コード236は、単一コード234よりも細くされており、比較的容易に変形するが、さらに、各小径コード236を螺旋状にして緩みを持たせることによって、単に径を小さくするよりも、一層変形が容易にされている。そのため、車両の走行振動によってマウントラバー112が弾性変形させられ、当接板110と車体側部材32とが相対移動しても、その相対移動に追随して変形することが容易である。そして、変形の繰り返しに対する耐久性も向上させられており、各電力供給路分岐部280の電気的な導通が途切れる虞が低減されている。
なお、小径コード236の螺旋部に着目し、小径コード236の中心線上の2点であって、螺旋の1回転分を挟む点A,Bを示す。それら点A,Bを結ぶ直線と、点A,Bの間にある小径コード236の中心線との距離が最大値Wmaxとなる点をCとする。本実施例において、最大値Wmaxを点A,Bの間にある小径コード236の中心線の長さZ(螺旋部の中心線の長さ)で除した値が0.4以上にされている。
【0031】
(c)各電力供給路形成体230と各電源側コード222とを容易に接続するために、本実施例において、各電力供給路形成体230がスタッドボルト114の中空穴136を貫通する構造とされ、スタッドボルト114の先端部にモータ側コネクタ232が配設されている(図3,図7,図9)。
具体的に説明する。ロングピン付接続端子290には、比較的長い寸法のロング導電ピン294が設けられており、そのロング導電ピン294は、スタッドボルト114の中空穴136を貫通し、その先端部側に設定量延び出す長さとされている。なお、ロングピン付接続端子290は絶縁性を有する被覆部材296で覆われており、ロングピン付接続端子290と、スタッドボルト114や車体側部材32との導通が遮断されている。
スタッドボルト114の中空穴136は、先端側において径が大きくされて前述の嵌入穴138が形成されている。その嵌入穴138に、絶縁性を有してロング導電ピン294を保持するピン側保持ケース300(保持部材の一種である)の一部が嵌入させられている。ピン側保持ケース300は、概して円筒状を成しており、嵌入穴138に嵌入して固定される固定部302と、固定部302よりも径が大きくされるとともに電源側コネクタ224と嵌合する嵌合凹部304が設けられた接続部305とを含む。
固定部302は、周方向において複数に分割されており、径方向に動きやすくされている。そして、分割された各々の部分の先端部の内周には、断面が鋸歯状の爪部306が形成されている。一方、嵌入穴138は若干テーパ状にされており、開口側(スタッドボルト114の先端部側)よりも奥側(スタッドボルト114の基端部側)の径が小さくされている。そのため、固定部302は嵌入穴138に嵌入させられるのに伴い圧縮変形させられ、爪部306がロング導電ピン294を覆う被覆部材296に食い込み、ロング導電ピン294および被覆部材296の軸方向の移動を禁止する。すなわち、ロング導電ピン294がピン側保持ケース300に保持されるのである。
ロング導電ピン294の先端部は、被覆部材296に覆われておらず、モータ側コネクタ232の接続端子(アクチュエータ側接続端子)を構成する。すなわち、モータ側コネクタ232が、ロング導電ピン294およびピン側保持ケース300によって構成されているのである。
【0032】
図9に、上述のモータ側コネクタ232と接続される電源側コネクタ224を示す。
電源側コネクタ224は、電源側コード222に取り付けられた電源側コンタクト310(電源側接続端子の一種である)と、それらを保持する電源側保持ケース312(電源側端子保持部の一種)とを含む。電源側コンタクト310は、概して円筒状をなし、電源側コード222が挿入された状態でかしめられてそれを把持するリング部314と、そのリング部314の端部からモータ側コネクタ232に向かって延びる複数の接触片部316(図の例では8つ)とを含む。複数の接触片部316は周方向に並んで形成され、その内側の面においてロング導電ピン294の外周に接触するようにされている。また、複数の接触片部316の外周部に環状のゴムベルト318が嵌められており、そのゴムベルト318によって複数の接触片部316がロング導電ピン294の外周に押し付けられるようにされている。
【0033】
電源側保持ケース312は、概して円筒状を成し、その内側に電源側コード222の端部と電源側コンタクト310とを貫通させた状態で保持するものとされている。電源側保持ケース312の電源側コード222側の部分は、外径が小さくされ、電源側コード222を把持するコード把持部320が形成されている。そのコード把持部320には、外周部に雄ねじが形成され、先端部に内側向きの爪322が形成されている。また、コード把持部320は、周方向において複数に分割されており、爪322が径方向に動きやすくされている。
また、電源側コネクタ224は、コード把持部320に螺合してそれの先端部を内側に絞る絞りナット324を備えている。その絞りナット324の内径は、奥側の部分、つまり、電源側保持ケース312と反対側の部分において小さくされており、電源側コード222がコード把持部320に挿入された状態で絞りナット324が螺合させられると、コード把持部320の先端部が内側に押されて爪322が電源側コード222を把持するようにされている。
電源側保持ケース312のモータ側コネクタ232側の部分には、外径が小さくされ、モータ側コネクタ232の嵌合凹部304に挿入される嵌合筒部330が設けられている。その嵌合筒部330が嵌合凹部304に挿入されると、電源側コンタクト310の複数の接触片部316がロング導電ピン294の外周に接触させられて、電源側コード222と電力供給路形成体230とが電気的に導通させられる。すなわち、各電力供給路形成体230と各電源側コード222とを容易に接続することができるのである。
【0034】
さらに、本実施例において、電源側コネクタ224とモータ側コネクタ232との接続を強固なものとするために、電源側コネクタ224を固定する固定ナット340がスタッドボルト114に取り付けられている。なお、本実施例において、電源側コネクタ224と固定ナット340とは、別個の独立した構成部品とされているが、例えば、一体的に組み付けられたものとすることや、一体的に形成されたものとすることもできる。固定ナット340は、概して円筒状を成しており、モータ側コネクタ232側の内周部に雌ねじ342が形成され、スタッドボルト114と螺合するようにされている。一方、電源側コード222側の端部は、内周側に向かって折り曲げられて、電源側保持ケース312の外周部に係合するようにされている。したがって、電源側コネクタ224とモータ側コネクタ232とが、固定ナット340とスタッドボルト114との間に挟まれ、締結されるのである。なお、固定ナット340の電源側コード222側の端部の内径は、絞りナット324の外径よりも大きくされている。
本実施例において、締結具たる固定ナット340とスタッドボルト114とによって、電源側コネクタ224とモータ側コネクタ232との接続が外れることを防ぐ離脱防止部が構成されている。その離脱防止部により、車両の振動等に起因して電源側コネクタ224にそれを引き抜く向きの力が加わった場合でも、電源側コネクタ224が抜けることを防止することができるのである。
以上に述べた離脱防止部は、スタッドボルト114を利用しない態様とすることもできる。しかしながら、本実施例のように、スタッドボルト114の先端部にモータ側コネクタ232を取り付けて固定ナット340を螺合させる態様とすることにより、容易に電源側コネクタ224を固定することができる。すなわち、各電力供給路形成体230と各電源側コード222とが確実に接続されるのである。
以上に述べた構成により、本サスペンション装置10において、上記(a)〜(c)の問題が解決されている。また、電磁アクチュエータ40に電力を供給する配線を比較的容易に配設することができる。
【0035】
本実施例において、前記「導電路形成体」たる電力供給路形成体230が、ロングピン付接続端子290,3本の小径コード236,ピン付接続端子254,筒状接続金具260および単一コード234によって構成されている。なお、本実施例において、並列コード部238が、3本の小径コード236によって構成されている。
また、本実施例において、前記「複数の導電路形成体が分けられた複数の集合」の各々は、1つの電力供給路形成体230を含む態様とされている。また、前記「車体側連結体に設けられ、複数の導電路集合体の各々を貫通させる複数の導電路貫通部」が、スタッドボルト114の中空穴136と、マウントラバー112の貫通穴150とによって構成されている。なお、本実施例における導電路貫通部は、貫通穴(中空穴136と貫通穴150とによって構成される)とされた態様であり、その貫通穴を導電路形成体たる電力供給路形成体230が貫通することによって導電路が車体側連結体を貫通した状態にされている。なお、電力供給路形成体230のうち、連結部本体たるアッパサポート本体100を貫通しているのは、ロングピン付接続端子290と並列コード部238とである。
本実施例において、前記「車体内部の電源」が、インバータ220とバッテリ210とによって構成されている。また、本実施例において、アッパサポート22が、電磁連結装置の一部たる電動モータ42がアッパサポート本体100を貫通した状態で、電動モータ42に連結されており、アッパサポート本体100の電動モータ42を貫通させる穴が前記「連結装置貫通穴」に該当する。なお、本実施例は、電磁連結装置と連結装置貫通穴との間に隙間が設けられていない態様とされている。
【0036】
本実施例において、マウントラバー112には、並列コード部238よりも大きな貫通穴150が設けられており、マウントラバー112と小径コード236との間に隙間が存在する態様とされている。それに対し、例えば、マウントラバー112を加硫成形する際に、マウントラバー112と小径コード236とを互いに隙間無く密着させることもできる。その場合には、小径コード236の導電線を被覆する材質を、例えば、フッ素ゴムやシリコーンゴム等の耐熱性に優れたものとすることが望ましい。
【0037】
本実施例において、電動モータ42への電力供給路形成体230(詳細には、単一コード234)が、電動モータ42下部(詳細には、コイル接続部58)に接続されていた。それに対し、電動モータ42上面に電力供給路形成体を接続する態様が想起されるが、電動モータ42上方に障害物がある場合には、その態様を採用することは困難である。例えば、サスペンション装置10の上方は、ボンネット(フードパネルと呼ばれる場合もある)によって覆われるが、電動モータ42上部とボンネットとの隙間がわずかである場合には、電動モータ42上面に単一コード234を接続することは困難である。また、本サスペンション装置10のように、電磁アクチュエータ40を備えたものは、全長が長くなる傾向があり、電動モータ42の上方に充分なスペースを確保することが難しい場合が多い。
また、別の態様として、電動モータ42の側面に単一コード234を接続する態様も想起されるが、サスペンション装置10をサスペンションタワー14に取り付ける際に、サスペンションタワー14に設けられた車体貫通穴142の周囲の部分に単一コード234が干渉し易いという問題がある。その問題を解決するには、車体貫通穴142を拡張する等の対策が必要となるが、強度やスペースの制約があり、容易ではない場合が多い。
すなわち、本サスペンション装置10は、電力供給路形成体230が電動モータ42下部に接続されたものとされており、電動モータ42上部のスペースを充分に確保することが困難である場合や、サスペンションタワー14に設けられた車体貫通穴142の拡張が難しい場合等に好適なのである。また、本実施例において、電力供給路形成体230がハウジング30内に収容されるとともに、端部がスタッドボルト114に固定されていることから、本サスペンション装置10は、電動モータ42の上部,側面に接続される態様と比較して、保管,輸送,組み付け等の際に、電力供給路形成体230がみだりに動いたり、不適切な変形が生じたりする虞が小さいという利点がある。
【0038】
上記実施例において、単一コード234,小径コード236等の各コードと、ピン付接続端子等の接続端子との接続が、かしめによって成されていたが、ハンダ付け,締結等、かしめ以外の接続手段を用いることもできる。また、かしめ,ハンダ付け,締結等のうち複数のものを併用することもできる。
上記実施例において、電磁アクチュエータ40と車体側部材32とが、相対移動不能にされていたが、電磁アクチュエータ40と車体側部材32との間に弾性部材を介在させ、それらの相対移動をある程度許容する態様とすることもできる。その態様において、気密保持接続部250とコイル接続部58との間に変形容易導電部を設けることができる。変形容易導電部は、例えば、上記並列コード部238と同様なものとすることができ、変形容易導電部において電磁アクチュエータ40と車体側部材32との相対移動に伴う変形が容易になる。
【0039】
上記とは別の実施例について説明する。
上記実施例において、変形容易導電部が、並列コード部238にされていたが、「導電性を有するゴムまたはその類似物」である導電性ゴム部材とすることもできる。
図10に、変形容易導電部が導電性ゴム部材400にされたサスペンション装置のアッパサポート410を示す。なお、本サスペンション装置の構成は、変形容易導電部以外は上記実施例とほぼ同様であるため、説明を省略する。
導電性ゴム部材400は、断面が平行四辺形状を成し、また、図11に示すように、上下の底面が概して矩形を成し、それの2つの対向する辺がやや円弧状(概ね駆動ロッド62の軸線を中心とする円弧)に反った形状を成している。その導電性ゴム部材400は、合成ゴム(例えば、シリコンゴム)中に導電性のカーボンや金属の粉末や短繊維を混合したものとされ、許容電流が単一コード234と同じにされている。
図12に、ピン付接続端子420を示す。ピン付接続端子420は、前述と同様の導電ピン258と、その導電ピン258の基端部に設けられた導電性ゴム部材400の底面と同じ形状の導電板422とを備えている。なお、この図において、括弧内にロングピン付接続端子430の符号、名称を示す。ロングピン付接続端子430も同様に、前述のロング導電ピン294と、そのロング導電ピン294の基端部に設けられた導電性ゴム部材400の底面と同じ形状の導電板422とを備えている。それらピン付接続端子420およびロングピン付接続端子430は、それぞれの導電板422の面が導電性ゴム部材400の底面と密着させられ、導電性ゴム部材400と電気的な導通を生じさせるものとされている。
この導電性ゴム部材400は、接近離間方向における弾性変形可能量が、標準単一電線の3倍以上にされている。また、導電性ゴム部材400は、上下の導電板422と接触する2つの端部を接近離間方向に相対移動させる同じ力が加わった場合の相対移動量が、標準単一電線の3倍以上とされている。なお、標準単一電線は、図示を省略するが、単一コード234と同じ材質(導電材料等)で同じ太さの電線であって、前出の図8に示した中心線Sとなる電線が想定される。また、導電性ゴム部材400の弾性変形可能量は、マウントラバー112と同様あるいはそれ以上にされている。
このように、導電路形成体のうち、マウントラバー112を貫通する部分を弾性変形容易な導電性ゴム部材400にすることにより、当接板110と車体側部材32との相対移動を容易に許容することができ、また、その相対移動によって導電路形成体の電気的な導通が途切れる虞を低減することができる。
【0040】
上記とはさらに別の実施例について説明する。
上記実施例において、変形容易導電部が、並列小径電線部(並列コード部238)にされていたが、標準電線たる単一コード234が湾曲させられた湾曲電線部とすることもできる。図12に、湾曲電線部500(つづら折れ部の一種である)を備えたアッパサポート502を示す。なお、本実施例において、前記アッパサポート22と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。なお、本アッパサポート502は、マウントラバーの接近離間方向の厚さ寸法が、前記実施例のものの2倍とされている。
本実施例において、湾曲電線部500を構成する電線は、絶縁被覆がない裸電線510とされており、単一コード234と同様の導電線が用いられている。裸電線510を用いることにより、被覆のあるものより変形が容易になる。その裸電線510は、絶縁性のゴム製の被覆部材506で覆われており、裸電線の絶縁が図られている。
湾曲電線部500は、裸電線510が3回湾曲させられて形成されており、湾曲部512を3つ含むつづら折れ状を成している。この湾曲電線部500は、概ねモータ軸54を中心とする円の周方向に沿って配置されており、アッパサポート512の半径方向の寸法が小さい場合に好適である。
【0041】
この図に、湾曲電線部500自体の中心線520(一点鎖線)を示す。なお、本実施例において、湾曲電線部500は、裸電線510の点Aを始点とし、点C,Bを経由して点Dを終点とする部分によって構成されている。この湾曲電線部500の裸電線510(AD間)の長さは、中心線520の長さLの2倍以上とされている。
また、湾曲電線部500は、設定された2点であるAD間を接近離間方向に相対移動させる同じ力が加わった場合の相対移動量が、中心線520を通る標準単一電線の3倍以上とされている。さらにまた、湾曲電線部500は、AD間の接近離間方向における弾性変形可能量が、上記標準単一電線の3倍以上とされている。なお、本実施例において、標準単一電線は、裸電線510と同様の材質、太さの電線であって、AD間を直線的に接続するものが想定される。
この湾曲電線部500には、つづら折れの一単位となるS字形部が1.5個分含まれている。そして、3つの湾曲部512のうち、スタッドボルト114側のものと中央のものとを含むS字形部522(AB間)に着目すると、そのS字形部522自体の中心線と裸電線510の中心線との離間距離の最大値Wmaxを、S字形部522自体の中心線の長さZ(点A,Bの間の距離)で除した値が0.5以上にされている。
以上のように、湾曲電線部500は、当接板110と車体側部材32との相対移動に伴い容易に変形することが可能にされており、電力供給路形成体230の電気的な導通が途切れる虞が低減する。すなわち、電磁アクチュエータ40への配線が容易になるのである。
【0042】
なお、本実施例において、マウントラバー112と湾曲電線部500とが互いに密着した態様とすることができる。その態様において、マウントラバー112の絶縁性が充分である場合は裸電線510のままにすることができ、絶縁性が不充分である場合は裸電線510をフッ素ゴムやシリコーンゴム等の耐熱性に優れた部材で絶縁被覆された被覆電線に変更することが望ましい。
【0043】
前記実施例において、ピン付接続端子254の電力供給路分岐部280と、ロングピン付接続端子290の電力供給路分岐部291とには、接近離間方向の挿入穴282,292が設けられていた。それに対し、本実施例において、ピン付接続端子530とロングピン付接続端子532との挿入穴534が接近離間方向と交差する方向(本実施例において、直交する方向)に設けられている。
図14,15に、ピン付接続端子530をモータ軸54を中心とする円の周方向から眺めた図と、下側から眺めた図を示す。なお、ロングピン付接続端子532も同様の形状(導電ピン258がロング導電ピン294にされている)であるので、それの符号を括弧内に付す。ピン付接続端子530には、導電ピン258と、交差方向接続部たる交差穴形成部540とが設けられている。交差穴形成部540は筒状を成しており、その交差穴形成部540の外周部からそれの軸線と交差する方向に導電ピン258,292が延びる構造とされている。また、交差穴形成部540は、それの軸線が周方向に沿う方向に配置されている。
このように、挿入穴534が接近離間方向と交差する方向に配されることで、湾曲電線部500の両端部の離間距離が比較的小さい場合でも、配線経路を長く取りやすいという利点がある。そして、配線経路を長くすることで、当接板110と車体側部材32との相対移動に伴う変形が容易になるのである。なお、挿入穴534に裸電線510の端部が挿入された状態で、交差穴形成部540がかしめられる等によってピン付接続端子254と裸電線510とが接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】請求可能発明の実施例であるサスペンション装置を示す図である。
【図2】上記サスペンション装置のアッパサポートを示す図である。
【図3】上記アッパサポートに設けられたスタッドボルトを示す図である。
【図4】上記サスペンション装置の電磁アクチュエータ(ステータ)に電力を供給する配線を模式的に示す図である。
【図5】上記アッパサポートに設けられたピン付接続端子を示す図である。
【図6】上記ピン付接続端子の電力供給路分岐部を示す図である。
【図7】上記アッパサポートに設けられた並列コード部を示す図である。
【図8】上記並列コード部の標準単一電線の中心線等を模式的に示す図である。
【図9】上記サスペンション装置において電源側コネクタとモータ側コネクタとを示す図である。
【図10】上記とは別の実施例において、アッパサポートの断面を示す図である。
【図11】上記アッパサポートに設けられた導電性ゴム部材を示す図である。
【図12】上記実施例において、ピン付接続端子の導電板を示す図である。
【図13】上記とはさらに別の実施例において、アッパサポートの断面を示す図である。
【図14】上記アッパサポートに設けられたピン付接続端子の側面図である。
【図15】上記ピン付接続端子の平面図である。
【符号の説明】
【0045】
10:サスペンション装置 14:サスペンションタワー(車体の一部) 20:接近離間力発生装置(電磁連結装置) 22:アッパサポート(車体側連結部) 24:ロアサポート(車輪側連結部) 40:電磁アクチュエータ 42:電動モータ 44:ボールねじ装置(運動変換装置) 52:ステータ 54:モータ軸 56:ロータ 58:コイル接続部 62:駆動ロッド 80:ばね下振動緩和部 82:ショックアブソーバ 90:圧縮コイルスプリング(スプリング) 100:アッパサポート本体(連結部本体) 110:当接板(支持体) 112:マウントラバー(弾性部材) 114:スタッドボルト(雄ねじ部材) 142:車体貫通穴 150:貫通穴 200:ECU(電子制御装置) 220:インバータ 222:電源側コード(電源線) 224:電源側コネクタ(接続具) 230:電力供給路形成体(導電路形成体) 232:モータ側コネクタ(接続具) 234:単一コード(単一電線) 236:小径コード(小径電線) 238:並列コード部(並列小径電線部) 254:ピン付接続端子(接続端子) 258:導電ピン 270:配線穴[筒状ガイド体] 280:電力供給路分岐部 290:ロングピン付接続端子(接続端子) 291:電力供給路分岐部 294:ロング導電ピン 300:モータ側保持ケース(端子保持部材) 310:電源側コンタクト(電源側接続端子) 312:電源側保持ケース(端子保持部) <変形例1> 400:導電性ゴム部材 410:アッパサポート(車体側連結部) 420:ピン付接続端子 422:導電板 430:ロングピン付接続端子 <変形例2> 500:湾曲電線部 502:アッパサポート(車体側連結部) 510:裸電線 512:湾曲部 520:中心線 522:S字形部 530:ピン付接続端子 532:ロングピン付接続端子 540:交差穴形成部 A,B,C,D:点 Wmax:距離の最大値 Z:螺旋部,S字形部の中心線の長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪保持部に連結される車輪側連結体と、
車体の一部に連結される車体側連結体と、
電磁アクチュエータを有し、前記車輪側連結体と前記車体側連結体とを接近離間可能に連結するとともに、前記電磁アクチュエータによってそれらを接近離間させる向きの力を発生させる電磁連結装置と、
車体内部の電源から供給される電力を前記電磁アクチュエータに導く導電路を形成する複数の導電路形成体と、
前記車体側連結体を貫通して設けられ、前記複数の導電路形成体のうちの対応する1以上ずつのものを貫通させる複数の導電路貫通部と
を含み、
前記複数の導電路形成体が、前記複数の導電路貫通部に対応する複数の集合に分けられ、それら複数の集合同士が、それらの配線経路のうちの少なくとも一部において互いに別個に変形可能であることを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項2】
前記複数の導電路形成体の各々が、車体内部の電源と電気的に接続された複数の電源側接続端子のうちの対応するものと接続されるアクチュエータ側接続端子を含み、前記複数の導電路貫通部の各々が、それらに対応する前記1以上ずつの導電路形成体の各々の前記アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部を含む請求項1に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項3】
前記車体側連結体が、車体側に突出して車体の一部を貫通する複数の雄ねじ部材であって各々軸方向の貫通穴を有し、前記複数の導電路貫通部の各々の少なくとも一部を形成するものを含み、
前記複数の導電路形成体の各々が、車体内部の電源と電気的に接続された電源側接続端子と接続されるアクチュエータ側接続端子を含み、
前記複数の導電路貫通部の各々が、前記複数の雄ねじ部材の各々に設けられて前記アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部を含む請求項1または2に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項4】
前記車体側連結体が、車体の一部を支持する支持体と、ゴムまたはその類似物によって形成されて前記支持体と前記電磁連結装置との間に介在させられる弾性連結部とを含み、
前記複数の導電路貫通部の各々が、前記支持体および前記弾性連結部を貫通するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
【請求項5】
前記複数の導電路形成体の各々が、設定された2点間を結ぶ変形容易導電部を含み、それら変形容易導電部の各々が、前記2点間を結ぶ1本の電線であってその電線の中心線が各変形容易導電部の中心線と一致するとともに許容伝導電力が各変形容易導電部の許容伝導電力と同じである標準単一電線を想定した場合よりも、容易に変形するものであり、その標準単一電線と比較して、(a)前記2点を互いに接近または離間させる向きに相対移動させる同じ力が加わった場合の前記2点の相対移動量が1.5倍以上であることと、(b)前記2点の接近離間方向における弾性変形可能量が1.5倍以上であることと、(c)前記2点を互いに接近または離間させた場合に発生する最大歪みが75%以下であることとの少なくとも1つを満たすものとされた請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
【請求項6】
前記変形容易導電部が、前記標準単一電線よりも直径の小さい複数の小径電線の各々が別個に変形し得る状態で互いに並列に配線された並列小径電線部を含む請求項5に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項7】
前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が複数回湾曲させられて形成されたS字形部を1つ以上備えたつづら折れ部を含み、
前記1以上のS字形部の各々が、そのS字形部自体の中心線とそのS字形部を構成する電線の中心線との離間距離の最大値を前記S字形部自体の中心線の長さで除した値が、0.3以上である請求項5または6に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項8】
前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が螺旋状に1回転以上巻かれた螺旋部を含む請求項5ないし7のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
【請求項9】
前記複数の導電路貫通部の各々が、少なくとも前記弾性連結部を貫通する弾性連結部貫通穴を含み、
変形容易導電部が、その前記弾性連結部貫通穴を貫通した状態で配設されたものである請求項5ないし8のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
【請求項1】
車輪保持部に連結される車輪側連結体と、
車体の一部に連結される車体側連結体と、
電磁アクチュエータを有し、前記車輪側連結体と前記車体側連結体とを接近離間可能に連結するとともに、前記電磁アクチュエータによってそれらを接近離間させる向きの力を発生させる電磁連結装置と、
車体内部の電源から供給される電力を前記電磁アクチュエータに導く導電路を形成する複数の導電路形成体と、
前記車体側連結体を貫通して設けられ、前記複数の導電路形成体のうちの対応する1以上ずつのものを貫通させる複数の導電路貫通部と
を含み、
前記複数の導電路形成体が、前記複数の導電路貫通部に対応する複数の集合に分けられ、それら複数の集合同士が、それらの配線経路のうちの少なくとも一部において互いに別個に変形可能であることを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項2】
前記複数の導電路形成体の各々が、車体内部の電源と電気的に接続された複数の電源側接続端子のうちの対応するものと接続されるアクチュエータ側接続端子を含み、前記複数の導電路貫通部の各々が、それらに対応する前記1以上ずつの導電路形成体の各々の前記アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部を含む請求項1に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項3】
前記車体側連結体が、車体側に突出して車体の一部を貫通する複数の雄ねじ部材であって各々軸方向の貫通穴を有し、前記複数の導電路貫通部の各々の少なくとも一部を形成するものを含み、
前記複数の導電路形成体の各々が、車体内部の電源と電気的に接続された電源側接続端子と接続されるアクチュエータ側接続端子を含み、
前記複数の導電路貫通部の各々が、前記複数の雄ねじ部材の各々に設けられて前記アクチュエータ側接続端子を保持する端子保持部を含む請求項1または2に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項4】
前記車体側連結体が、車体の一部を支持する支持体と、ゴムまたはその類似物によって形成されて前記支持体と前記電磁連結装置との間に介在させられる弾性連結部とを含み、
前記複数の導電路貫通部の各々が、前記支持体および前記弾性連結部を貫通するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
【請求項5】
前記複数の導電路形成体の各々が、設定された2点間を結ぶ変形容易導電部を含み、それら変形容易導電部の各々が、前記2点間を結ぶ1本の電線であってその電線の中心線が各変形容易導電部の中心線と一致するとともに許容伝導電力が各変形容易導電部の許容伝導電力と同じである標準単一電線を想定した場合よりも、容易に変形するものであり、その標準単一電線と比較して、(a)前記2点を互いに接近または離間させる向きに相対移動させる同じ力が加わった場合の前記2点の相対移動量が1.5倍以上であることと、(b)前記2点の接近離間方向における弾性変形可能量が1.5倍以上であることと、(c)前記2点を互いに接近または離間させた場合に発生する最大歪みが75%以下であることとの少なくとも1つを満たすものとされた請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
【請求項6】
前記変形容易導電部が、前記標準単一電線よりも直径の小さい複数の小径電線の各々が別個に変形し得る状態で互いに並列に配線された並列小径電線部を含む請求項5に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項7】
前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が複数回湾曲させられて形成されたS字形部を1つ以上備えたつづら折れ部を含み、
前記1以上のS字形部の各々が、そのS字形部自体の中心線とそのS字形部を構成する電線の中心線との離間距離の最大値を前記S字形部自体の中心線の長さで除した値が、0.3以上である請求項5または6に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項8】
前記変形容易導電部が、前記標準単一電線と同等の1本の電線が螺旋状に1回転以上巻かれた螺旋部を含む請求項5ないし7のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
【請求項9】
前記複数の導電路貫通部の各々が、少なくとも前記弾性連結部を貫通する弾性連結部貫通穴を含み、
変形容易導電部が、その前記弾性連結部貫通穴を貫通した状態で配設されたものである請求項5ないし8のいずれかに記載の車両用サスペンション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−222073(P2008−222073A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64106(P2007−64106)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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