説明

車両用ドア構造

【課題】ドアの組付け作業性が向上するとともにドア内部に補強パネルなどの取付けを容易にしながら、サッシュからドアガラスが外れるのを防止できる車両用ドア構造を提供する。
【解決手段】昇降自在なドアガラス18をランチャンネルを介して前側サッシュ16のコ字状断面部内でガイドする車両用ドア構造において、ドアでは、ドアガラス18がドア下部に収納された時に、ドアガラス18の前縁部18b又は後縁部と上縁部18aとのコーナー部18cの外側方又は内側方を覆うように、コ字状断面部のドア面中央側の端部よりもドア面中央側に突出する覆い部28bが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ドア構造として、ドア内にサッシュを支持するために、サッシュブラケットと、サッシュ自体から延びるガイド部とを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の図1によれば、ドアインナパネル2及びドアアウタパネル3によってドア内部に空間4が形成され、この空間4内でドアサッシュ15がサッシュブラケット6を介してドアインナパネル2に結合されるとともに、ドアサッシュ15のドアアウタパネル3に対向する部分に、ドアアウタパネル3に接着剤で固定されたガイド部16が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−270667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドアサッシュ15を支持するために、ドアインナパネル2に取付けられるサッシュブラケット6と、ドアアウタパネル3に取付けられるガイド部16とを設けると、ドアサッシュ15を支持するドアサッシュ支持構造が強固になり、ドアサッシュ15からサイドウインドパネル11が外れにくくなるが、サッシュブラケット6及びガイド部16からなるドアサッシュ支持構造が大型になり、ドアサッシュ15及びドアサッシュ支持構造の組付け作業性が低下する。
【0006】
また、上記ドアサッシュ支持構造は、ドアインナパネル2からドアアウタパネル3に亘って設けられているため、例えば、ドアインナパネル2、ドアアウタパネル3間に、これらのドアインナパネル2、ドアアウタパネル3に沿うようにドア補強用パネルを取付けることが困難になる。
【0007】
本発明の目的は、ドアの組付け作業性が向上するとともにドア内部に補強パネルなどの取付けを容易にしながら、サッシュからドアガラスが外れるのを防止できる車両用ドア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、昇降自在なドアガラスをランチャンネルを介してサッシュのコ字状断面部内でガイドする車両用ドア構造において、ドアでは、ドアガラスがドア下部に収納された時に、ドアガラスの前縁部又は後縁部と上縁部とのコーナー部の外側方又は内側方を覆うように、コ字状断面部のドア面中央側の端部よりもドア面中央側に突出する覆い部が配置されていることを特徴とする。
【0009】
ドアガラスがドア下部に収納された状態でドアが開閉された時に、ドアガラスに慣性力等が作用すると、ドアに覆い部が配置されていない場合には、ドアガラスのコーナー部がランチャンネルと一緒にサッシュのコ字状断面部から外れ始めるが、覆い部を設けることで、ドアガラスのコーナー部が覆い部で支持され、サッシュから外れない。
【0010】
ドアガラスのコーナー部を覆い部で覆う簡単な構造であり、例えば、サッシュ支持構造に覆い部を設けても、大型にならない。従って、ドア内部に補強パネル等の部材の配置スペースが容易に確保される。
【0011】
請求項2に係る発明は、ドア下部の上縁で形成されるベルトラインにドアガラスに摺接するベルトラインシールが設けられ、ドアガラスがドア下部に収納された状態では、ドアガラスの前縁部及び後縁部の一方がベルトラインシールに当たるとともに、前縁部及び後縁部の他方のコーナー部の外側方又は内側方に覆い部が配置されることを特徴とする。
【0012】
ドアガラスがドア下部に収納された状態では、ドアガラスの前縁部及び後縁部の一方はベルトラインシールに支持され、前縁部及び後縁部の他方のコーナー部は覆い部で支持可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明は、覆い部が、ランチャンネルのドア面中央側の端部に当接可能に設けられることを特徴とする。
ランチャンネルのドア面中央側の端部に覆い部が当てられているため、ドアガラスがランチェンネルを介してサッシュから外れるのが抑制されるとともにドアガラスが直接にサッシュに当たらず、ドアガラスに傷が付かない。
【0014】
請求項4に係る発明は、コ字状断面部が、底壁と、この底壁の両端からドアに沿ってドアの中央側に延びる車室寄りの内側壁及びこの内側壁の外側方に設けられた外側壁とからなり、ランチャンネルが、コ字状断面部の内側を内側壁又は外側壁に沿って延びる内壁と、この内壁の先端に折り返し部を介してコ字状断面部の外側で内側壁又は外側壁に沿って延びる外壁とを備え、覆い部が折り返し部に当接可能に設けられることを特徴とする。
ランチャンネルの折り返し部が、サッシュ(コ字状断面部)の先端と覆い部との間に挟み込まれ、ランチャンネルがサッシュから外れにくい。
【0015】
請求項5に係る発明は、内側壁又は外側壁と覆い部との間に隙間が設けられ、この隙間に外壁が挿入されることを特徴とする。
内側壁又は外側壁と覆い部との間の隙間にランチャンネルの外壁が配置されて、外壁が、サッシュの外側壁又は内側壁と覆い部との間に挟み込まれ、ランチャンネルがサッシュから外れにくい。
【0016】
請求項6に係る発明は、サッシュは、その下部がブラケットを介してドアパネルに取付けられ、ブラケットに覆い部が設けられることを特徴とする。
ブラケットは、サッシュを支持しているので剛性が高くなるように形成される。従って、このような剛性の高いブラケットに覆い部を設けることで、覆い部が強固に支持されるから、サッシュからドアガラスが外れるのをブラケットに設けられた覆い部でより効果的に防止することが可能になる。また、覆い部はブラケットを介してドアパネルで支持されるため、覆い部の取付け剛性が高められる。
ブラケットは、サッシュと覆い部の両方の支持部材を兼用するから、部品数が少なくなる。
【0017】
請求項7に係る発明は、ブラケットが、コ字状断面部の外面に沿ったコ字状断面に形成されていることを特徴とする。
ブラケットを折り曲げてコ字状断面に形成することで、ブラケットの剛性が高められる。従って、覆い部の支持もより強固になるから、ドアガラスがより一層外れにくくなる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、ドアのドアガラスがドア下部に収納された時に、ドアガラスの前縁部又は後縁部と上縁部とのコーナー部の外側方又は内側方を覆うように、コ字状断面部のドア面中央側の端部よりもドア面中央側に突出する覆い部が配置されているので、ドアガラスのコーナー部を覆い部で覆うことで、ドアガラスがサッシュから外れるのを効果的に防止することができる。
【0019】
この場合、コーナー部を覆い部で覆うだけなので、従来のように、ドアのインナパネルとアウタパネルとの両側からサッシュを支持する必要がなく、サッシュ支持構造の大型化を抑制することができ、サッシュ及びサッシュ支持構造の取付け時の作業性を向上させることができる。
また、サッシュ支持構造の大型化が抑制されて、ドア内に補強用パネル等の部材を取付けることが容易になり、ドアの設計自由度を向上させることができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、ドア下部の上縁で形成されるベルトラインにドアガラスに摺接するベルトラインシールが設けられ、ドアガラスがドア下部に収納された状態では、ドアガラスの前縁部及び後縁部の一方がベルトラインシールに当たるとともに、前縁部及び後縁部の他方のコーナー部の外側方又は内側方に覆い部が配置されるので、ドアガラスの前縁部及び後縁部の両方をベルトラインシール及び覆い部で支持することができ、ドアガラスがサッシュから外れるのを確実に防止することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、覆い部が、ランチャンネルのドア面中央側の端部に当接可能に設けられるので、覆い部がランチャンネルを介してサッシュを支持することができるため、ランチャンネルがサッシュから外れるのを防止することができるとともに、覆い部とドアガラスとが直接に当たることがなく、ドアガラスを傷つける心配がない。
【0022】
請求項4に係る発明では、コ字状断面部が、底壁と、この底壁の両端からドアに沿ってドアの中央側に延びる車室寄りの内側壁及びこの内側壁の外側方に設けられた外側壁とからなり、ランチャンネルが、コ字状断面部の内側を内側壁又は外側壁に沿って延びる内壁と、この内壁の先端に折り返し部を介してコ字状断面部の外側で内側壁又は外側壁に沿って延びる外壁とを備え、覆い部が折り返し部に当接可能に設けられるので、サッシュの外側壁の先端と覆い部との間にランチャンネルの折り返し部を挟み込むことができる。
従って、より確実にランチャンネルがサッシュから外れるのを防ぐことができ、これによって、ドアガラスがサッシュから外れるのも防ぐことができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、内側壁又は外側壁と覆い部との間に隙間が設けられ、この隙間に外壁が挿入されるので、外壁を、外側壁と覆い部との間で挟持できるので、ランチャンネルがサッシュから外れるのを効果的に防止することができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、サッシュでは、その下部がブラケットを介してドアパネルに取付けられ、ブラケットに覆い部が設けられるので、サッシュを支持する剛性の高いブラケットによって覆い部を強固に支持し、この覆い部でより効果的にドアガラスが外れるのを防止することができる。
【0025】
また、サッシュを支持するブラケットに覆い部が設けられることで、ブラケットでサッシュの支持と覆い部の支持とを兼ねることができ、部品数を削減することができて、コスト削減を図ることができる。
【0026】
請求項7に係る発明では、ブラケットが、コ字状断面部の外面に沿ったコ字状断面に形成されているので、ブラケットの剛性をより高めることができるとともに、ブラケットによってコ字状断面部の外面全てを支えることができるためにコ字状断面部の内側壁及び外側壁が撓んでコ字状断面部の開口が広がるような変形を抑制することができる。
従って、ブラケットでコ字状断面部及び覆い部を強固に支持することができ、より一層ドアガラスの外れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る車両用ドア構造を示す側面図である。
【図2】本発明に係る車両用ドアの要部を示す側面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図4のA部拡大図である。
【図6】本発明に係る車両用ドアの作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中の左、右、前、後は車両に乗車した運転者を基準にした向きを示している。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0029】
本発明の実施例を説明する。図中の矢印(FRONT)は車両前方を表している(以下、同じ。)。
図1に示すように、車両用のドア10は、アウタパネル及びこのアウタパネルの内方に設けられたインナパネルからなる閉断面構造のドア下部13と、ドアガラス18の上縁部、前縁部及び後縁部を支持するためにドア下部13に取付けられた上側サッシュ14、前側サッシュ16及び後側サッシュ17と、ドアガラス18と、このドアガラス18を昇降させるためにドア下部13の内側に取付けられた電動モータ付きのウインドレギュレータ21とからなる。
上記の上側サッシュ14、前側サッシュ16及び後側サッシュ17は、ドア10のサッシュ22を構成する部分である。
【0030】
ドア下部13の上縁で形成されるベルトライン13aにベルトラインシール23がベルトライン13aに沿って設けられ、ドアガラス18がドア下部13に収納されて最も低い位置まで下降した状態から最も上方に上昇した状態までのドアガラス18が昇降する全領域で、ドアガラス18はベルトラインシール23に当てられて支持されている。
即ち、ドアガラス18が最も低い位置に下降した状態では、ドアガラス18の車両前後方向に延びる上縁部18aと車両上下方向に延びる後縁部18dとのコーナー部18eはベルトラインシール23に支持されている。
【0031】
図2に示すように、前側サッシュ16は、ドア下部13(図1参照)を構成するインナパネル25に取付ブラケット28を介して取付けられている。なお、符号25a,25bはインナパネル25に開けられた開口部である。
【0032】
取付ブラケット28は、前側サッシュ16の長手方向(車両の上下方向)に沿って取付けられた長尺部28aと、この長尺部28aの上部側部からドア面中央側に延びてドアガラス18(輪郭を太線で示した部分である。)の上縁部18aと前縁部18bとのコーナー部18c及びこのコーナー部18cの下方を覆う覆い部28bと、長尺部28aの下部からインナパネル25側に延びるパネル側取付部28cとからなる。
長尺部28a及び覆い部28bは一体成形され、長尺部28aとは別体のパネル側取付部28cが、長尺部28aに取付けられている。
【0033】
図3に示すように、ドア下部13は、車両の外観面を構成するアウタパネル24と、このアウタパネル24の車体内側に取付けられたインナパネル25と、これらのアウタパネル24及びインナパネル25のそれぞれに取付けられた補強パネル26とからなる。
【0034】
前側サッシュ16は、取付けブラケット28によってインナパネル25にボルト31で取付けられている。符号28eはボルト31とねじ結合するめねじを形成するために取付ブラケット28のパネル側取付部28cに一体に設けられた筒部である。
【0035】
図4に示すように、ドアガラス18を最も低い位置まで下降させてドア下部13に収納した状態では、ドアガラス18の前縁部18b(図2参照)側のコーナー部18cは、その外側方(図の下方)が取付ブラケット28の覆い部28bで覆われている。なお、符号27は、アウタパネル24を補強するためにアウタパネル24の内面24aに接着された補強パネルである。
【0036】
図5に示すように、前側サッシュ16は、底壁35と、この底壁35の両端部からそれぞれ車体後方に延びる内側壁36及び外側壁37とからなる断面コ字状の部材であり、内側壁36及び外側壁37にそれぞれコ字の内側に突出する内方突出部36a,37aが設けられている。
【0037】
前側サッシュ16のコ字状断面の内側には、ドアガラス18の縁部を支持するランチャンネル41が配置されている。
ランチャンネル41は、底壁42と、この底壁42の端部からそれぞれ前側サッシュ16の内側壁36及び外側壁37に沿って延びるコ字内内壁43及びコ字内外壁44とが一体成形されている。
【0038】
コ字内内壁43は、前側サッシュ16の内方突出部36aに係止される内側第1リップ43aと、前側サッシュ16の内側壁36の先端部よりも車体内方に延びる内側第2リップ43bと、ドアガラス18の内面18eに当てられた内側第3リップ43cと、この内側第3リップ43cの車体内方に配置された内側第4リップ43dとが形成されている。
【0039】
コ字内外壁44は、前側サッシュ16の内方突出部37aに係止される外側第1リップ44aと、先端に設けられた折り返し部44Aから延びてドアガラス18の外面18fに当てられた外側第2リップ44bと、前側サッシュ16の外側壁37及び覆い部28bのそれぞれの隙間46に挿入された外側第3リップ44cとを備える。
【0040】
取付ブラケット28は、長手部28a(図2参照)の大部分が、底壁28g、この側壁28gの両端部から折り曲げられた側壁28h,28jからなるコ字状断面に形成され、一方の側壁28jから覆い部28bが延びている。なお、符号28m,28nは側壁28h,28jのそれぞれの端面である。
覆い部28bは、外側第3リップ44cが当てられたストレート部28pと、このストレート部28pの先端からドアガラス18側へ凸状に湾曲する湾曲部28qとからなる。
【0041】
以上に述べた車両用ドア構造の作用を次に説明する。なお、図6(a),(b)では、車両用ドア構造の作用の理解を容易にするためにドアガラス18の移動距離を誇張して描いている。
図6(a)に示すように、例えば、ドアガラス18に白抜き矢印で示すような向き(車室内から車室外への方向)に外力が作用すると、ドアガラス18は、初期の二点鎖線の位置から外側方に移動するとともに、取付ブラケット28に前後方向の撓みが発生することにより前側サッシュ16に対して実線で示す位置まで相対移動する。
【0042】
更に外力が大きくなれば、図6(b)に示すように、ドアガラス18は、更に外側方に移動するとともに、前側サッシュ16に対して実線で示す位置まで前後方向に相対移動する。
【0043】
この結果、ランチャンネル41のコ字内外壁44、外側第2リップ44b及び外側第3リップ44cの各先端部を含む折り返し部44Aは、ドアガラス18と覆い部28bとの間に挟まれ、ドアガラス18は、それ以上の外側方への移動が阻止される。即ち、覆い部28bは、ランチャンネル41を介してドアガラス18を支え、ドアガラス18が前側サッシュ16から外れるのを防止する。
【0044】
また、ドアガラス18は、覆い部28bとは直接に当たらないから、ドアガラス18に傷が付く心配がない。
上記の状態から、外力が無くなる、あるいは外力が小さくなれば、ドアガラス18は、ランチャンネル41の弾性力に押し戻されるとともに弾性変形していたブラケット28の変形が無くなることによって、図5に示した元の位置に復帰する。
【0045】
上記の図1、図2に示したように、昇降自在なドアガラス18をランチャンネル41を介してサッシュとしての前側サッシュ16のコ字状断面部内でガイドする車両用ドア構造において、ドア10では、ドアガラス18がドア下部13に収納された時に、ドアガラス18の前縁部18b又は後縁部18dと上縁部18aとのコーナー部18cの外側方又は内側方を覆うように、コ字状断面部のドア面中央側の端部よりもドア面中央側に突出する覆い部28bが配置されている。
これにより、外れ始めようとするドアガラス18のコーナー部18cを覆い部28bで覆うことで、ドアガラス18が前側サッシュ16から外れるのを効果的に防止することができる。
【0046】
この場合、コーナー部18cを覆い部28bで覆うだけなので、従来のように、ドア10のインナパネルとアウタパネルとの両側からサッシュを支持する必要がなく、サッシュ支持構造の大型化を抑制することができ、前側サッシュ16及びサッシュ支持構造(即ち、ブラケット28)の取付け時の作業性を向上させることができる。
また、サッシュ支持構造の大型化が抑制されて、ドア10内に補強パネル26,27等の部材を取付けることが容易になり、ドア10の設計自由度を向上させることができる。
【0047】
また、ドア下部13の上縁で形成されるベルトライン13aにドアガラス18に摺接するベルトラインシール23が設けられ、ドアガラス18がドア下部13に収納された状態では、ドアガラス18の前縁部18b及び後縁部18dの一方がベルトラインシール23に当たるとともに、前縁部18b及び後縁部18dの他方のコーナー部18cの外側方又は内側方に覆い部28bが配置されるので、ドアガラス18の前縁部18b及び後縁部18dの両方をベルトラインシール23及び覆い部28bで支持することができ、ドアガラス18が前側サッシュ16から外れるのを確実に防止することができる。
【0048】
上記の図5に示したように、覆い部28bが、ランチャンネル41のドア面中央側の端部に当接可能に設けられるので、覆い部28bがランチャンネル41を介して前側サッシュ16を支持することができるため、ランチャンネル41が前側サッシュ16から外れるのを防止することができるとともに、覆い部28bとドアガラス18とが直接に当たることがなく、ドアガラス18を傷つける心配がない。
【0049】
また、前側サッシュ16のコ字状断面部が、底壁35と、この底壁35の両端からドア10に沿ってドア10の中央側に延びる車室寄りの内側壁36及びこの内側壁36の外側方に設けられた外側壁37とからなり、ランチャンネル41が、前側サッシュ16のコ字状断面部の内側を内側壁36又は外側壁37に沿って延びる内壁としてのコ字内外壁44と、このコ字内外壁44の先端に折り返し部44Aを介してコ字状断面部の外側で内側壁36又は外側壁37に沿って延びる外壁としての外側第3リップ44cとを備え、覆い部28bが折り返し部44Aに当接可能に設けられる。
【0050】
これにより、ドアガラス18が外れそうになったときに、前側サッシュ16の外側壁37の先端と覆い部28bとの間にランチャンネル41の折り返し部44Aを挟み込むことができる。従って、より確実にランチャンネル41が前側サッシュ41から外れるのを防ぐことができ、これによって、ドアガラス18が前側サッシュ16から外れるのも防ぐことができる。
【0051】
更に、内側壁36又は外側壁37と覆い部28bとの間に隙間46が設けられ、この隙間46に外側第3リップ44cが挿入されるので、外側第3リップ44cを、外側壁37と覆い部28bとの間で挟持でき、ランチャンネル41が前側サッシュ16から外れるのを効果的に防止することができる。
【0052】
上記の図2、図3に示したように、前側サッシュ16では、その下部がブラケット28を介してドアパネルとしてのインナパネル25に取付けられ、ブラケット28に覆い部28bが設けられるので、前側サッシュ16を支持する剛性の高いブラケット28によって覆い部28bを強固に支持し、この覆い部28bでより効果的にドアガラス18が外れるのを防止することができる。
【0053】
また、前側サッシュ16を支持するブラケット28に覆い部28bが設けられることで、ブラケット28で前側サッシュ16の支持と覆い部28bの支持とを兼ねることができ、部品数を削減することができて、コスト削減を図ることができる。
【0054】
上記の図5に示したように、ブラケット28が、コ字状断面部の外面に沿ったコ字状断面に形成されているので、ブラケット28の剛性をより高めることができるとともに、ブラケット28によってコ字状断面部の外面全てを支えることができるためにコ字状断面部の内側壁36及び外側壁37が撓んでコ字状断面部の開口が広がるような変形を抑制することができる。従って、ブラケット28でコ字状断面部及び覆い部28bを強固に支持することができ、より一層ドアガラス18の外れを防止することができる。
【0055】
尚、実施例では、図2に示したように、ドアガラス18がドア下部に収納された時に、ドアガラス18の前縁部18bと上縁部18aとのコーナー部18cの外側方に、コーナー部18cを覆う覆い部28bを配置したが、これに限らず、ドアガラス18の前縁部18bと後縁部18d(図1参照)とのコーナー部18eの外側方に、コーナー部18eを覆う覆い部を配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のドア構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0057】
10…ドア、13…ドア下部、13a…ベルトライン、16…サッシュ(前側サッシュ)、18…ドアガラス、18a…上縁部、18b…前縁部、18c…コーナー部、18d…後縁部、18e…コーナー部、23…ベルトラインシール、25…ドアパネル(インナパネル)、28…ブラケット(取付ブラケット)、28b…覆い部、35…底壁、36…内側壁、37…外側壁、41…ランチャンネル、42…底壁、44…内壁(コ字内外壁)、44A…折り返し部、44c…外壁(外側第3リップ)、46…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降自在なドアガラスをランチャンネルを介してサッシュのコ字状断面部内でガイドする車両用ドア構造において、
前記ドアは、前記ドアガラスがドア下部に収納された時に、前記ドアガラスの前縁部又は後縁部と上縁部とのコーナー部の外側方又は内側方を覆うように、前記コ字状断面部のドア面中央側の端部よりもドア面中央側に突出する覆い部が配置されていることを特徴とする車両用ドア構造。
【請求項2】
前記ドア下部の上縁で形成されるベルトラインに前記ドアガラスに摺接するベルトラインシールが設けられ、前記ドアガラスが前記ドア下部に収納された状態では、前記ドアガラスの前縁部及び後縁部の一方が前記ベルトラインシールに当たるとともに、前記前縁部及び前記後縁部の他方の前記コーナー部の外側方又は内側方に前記覆い部が配置されることを特徴とする請求項1記載の車両用ドア構造。
【請求項3】
前記覆い部は、前記ランチャンネルのドア面中央側の端部に当接可能に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用ドア構造。
【請求項4】
前記コ字状断面部は、底壁と、この底壁の両端から前記ドアに沿ってドアの中央側に延びる車室寄りの内側壁及びこの内側壁の外側方に設けられた外側壁とからなり、
前記ランチャンネルは、前記コ字状断面部の内側を前記内側壁又は前記外側壁に沿って延びる内壁と、この内壁の先端に折り返し部を介して前記コ字状断面部の外側で前記内側壁又は前記外側壁に沿って延びる外壁とを備え、前記覆い部が前記折り返し部に当接可能に設けられることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の車両用ドア構造。
【請求項5】
前記内側壁又は前記外側壁と前記覆い部との間に隙間が設けられ、この隙間に前記外壁が挿入されることを特徴とする請求項4記載の車両用ドア構造。
【請求項6】
前記サッシュは、その下部がブラケットを介して前記ドア下部を構成するドアパネルに取付けられ、前記ブラケットに前記覆い部が設けられることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の車両用ドア構造。
【請求項7】
前記ブラケットは、前記コ字状断面部の外面に沿ったコ字状断面に形成されていることを特徴とする請求項6記載の車両用ドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−16460(P2011−16460A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162965(P2009−162965)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】