説明

車両用ブレーキ制御装置

【課題】電源系失陥時にキャパシタに基づいてW/Cの加圧を行う場合において、電源系失陥時でない通常ブレーキ時と比べて電力消費量を低減できるようにする。
【解決手段】電源系失陥時に、一方の配管系統に対してのみモータを駆動するようにする。これにより、電源系失陥時にもモータを用いたW/C圧の加圧によって制動力を発生させることができるため、通常ブレーキ時と比べて電力消費量を低減しつつ、できるだけ大きな制動力を発生させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプによる加圧によりホイールシリンダ(以下、W/Cという)に圧力(以下、W/C圧という)を発生させられる車両用ブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、各車輪に対応して1つずつポンプを設けると共に、各配管系統毎に1つずつモータを設け、各モータによって各配管系統の2つのポンプを駆動するように構成したブレーキバイワイヤ式の車両用ブレーキ制御装置が提案されている。
【特許文献1】特開平10−203338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなブレーキバイワイヤ式の車両用ブレーキ制御装置では、基本的にバッテリからの電力供給に基づき、各配管系統に備えられた制御弁やポンプを駆動するためのモータを駆動する。
【0004】
そして、何らかの異常(例えば、バッテリ上がり等)が発生してバッテリからの電力供給が行えなくなったとき(以下、このような状態を電源系失陥時という)には、バックアップ用のキャパシタに充電された電圧に基づいて電力供給を行い、各配管系統に備えられた制御弁やポンプを駆動するためのモータを駆動する。
【0005】
このようにすれば、電源系失陥時にモータ駆動によるW/Cの加圧から徐々にドライバのブレーキペダル操作に基づくW/Cの加圧に変化させることができる。
【0006】
しかしながら、電源系失陥時にバッテリからの電力供給が行えるときと同様の動作を行ったのでは、キャパシタ容量を大きくしなければならなくなる。このため、電力消費量をできる限り少なくすることが望まれる。特に、車両用ブレーキ制御装置を構成する2つの配管系統それぞれに備えられるポンプを2つの異なるモータで駆動するような場合には、モータでの電力消費が大きく、電力消費量の低減の必要性が高い。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、電源系失陥時にキャパシタに基づいてW/Cの加圧を行う場合において、電源系失陥時でない通常ブレーキ時と比べて電力消費量を低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、第1、第2ポンプ(7、8)により加圧される系統を第1配管系統として、該第1配管系統に備えられた第1、第2ポンプ(7、8)を第1モータ(11)で駆動すると共に、第3、第4ポンプ(9、10)により加圧される系統を第2配管系統として、該第2配管系統に備えられた第3、第4ポンプ(9、10)を第2モータ(12)で駆動することで、第1、第2配管系統に備えられた前輪用第1、第2および後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FL〜6RR)を加圧し、リザーバ(3f)へブレーキ液を返流する管路となる第1〜第4調圧回路(H1〜H4)および第1〜第4調圧回路(H1〜H4)にそれぞれ対応して配置された第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)にて、各ホイールシリンダ圧の調圧を行う車両用ブレーキ制御装置に適用され、制御手段(100)にて、操作量センサ(2)に基づいてブレーキ操作部材(1)が操作されたことを検出したときに、操作量センサ(2)にて求められる操作量に対応する目標制動力を求め、該目標制動力を発生させるべく、バッテリ(20)もしくはキャパシタ(21)からの電力供給に基づいて、第1、第2モータ(11、12)および調圧手段(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)の駆動を行い、さらに、バッテリ(20)からの電力供給が行えない電源系失陥時に、キャパシタ(21)の電力供給に基づき、第1、第2配管系統のうちのいずれか一方の配管系統のみに関して、第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧することを特徴としている。
【0009】
このように、電源系失陥時に、一方の配管系統に対してのみモータを駆動するようにしている。このため、電源系失陥時にもモータを用いたホイールシリンダ圧の加圧により、制動力を発生させることができるため、通常ブレーキ時と比べて電力消費量を低減しつつ、できるだけ大きな制動力を発生させることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、プライマリピストン(3c)およびセカンダリピストン(3d)と、これらによって区画されるプライマリ室(3a)とセカンダリ室(3b)と、プライマリ室(3a)とセカンダリ室(3b)に連通するブレーキ液を貯留したリザーバに相当するマスタリザーバ(3f)を有し、ブレーキ操作部材(1)が操作されることにより、該ブレーキ操作部材(1)に連結されたプッシュロッドを介してプライマリピストン(3c)およびセカンダリピストン(3d)が押されることでプライマリ室(3a)とセカンダリ室(3b)に対してマスタシリンダ圧を発生させるように構成されたマスタシリンダ(3)と、プライマリ室(3a)を前輪用第1ホイールシリンダ(6FR)に前輪用第1ポンプ(7)よりも下流側においてつなぐ第1補助管路(A、E)と、第1補助管路(A、E)に備えられ、該第1補助管路(A、E)の連通・遮断を制御する第1制御弁(SNO1)と、セカンダリ室(3b)を前輪用第2ホイールシリンダ(6FL)に前輪用第2ポンプ(9)よりも下流側においてつなぐ第2補助管路(B、F)と、第2補助管路(B、F)に備えられ、該第2補助管路(B、F)の連通・遮断を制御するた第2制御弁(SNO2)とを備えることで、マスタシリンダ(3)に発生させるマスタシリンダ圧にて各ホイールシリンダ(6FL〜6RL)が加圧できる構成としている。
【0011】
このような構成において、制御手段(100)にて、第1、第2配管系統のうち第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧する方の配管系統に関しては第1、第2制御弁(SNO1、SNO2)を遮断状態とし、ポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関しては第1、第2制御弁(SNO1、SNO2)を連通状態として、第1、第2配管系統のうち第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧する方の配管系統に関しては、第1補助管路(A、E)もしくは第2補助管路(B、F)を通じて、ブレーキ操作部材(1)の操作に基づいて発生するマスタシリンダ圧によりホイールシリンダ圧が加圧されるようにすることを特徴としている。
【0012】
このように、もう一方の配管系統については、ブレーキ操作部材(1)の操作量に基づくマスタシリンダ圧により制動力が発生させられるようにしている。このため、もう一方の配管系統に対して制動力を発生させない場合と比べて、より大きな制動力を発生させることが可能となる。
【0013】
この場合、請求項3に示すように、第1、第2配管系統のうち第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関して、特に制動力が要求される前輪用ホイールシリンダ(6FR、6FL)のみをマスタシリンダ圧により加圧する形態とすることができる。
【0014】
例えば、請求項4に示すように、第1調圧用管路(H1)に、第1リニア弁(SLFR)とマスタリザーバ(3f)の間の連通・遮断を制御する第3制御弁(SWC1)を備えると共に、第3調圧用管路(H3)は、第3リニア弁(SLFL)とマスタリザーバ(3f)の間の連通・遮断を制御する第4制御弁(SWC2)を備え、制御手段(100)にて、第1、第2配管系統のうち第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧する方の配管系統に関しては第3、第4制御弁(SWC1、SWC2)を連通状態とし、ポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関しては第3、第4制御弁(SWC1、SWC2)を遮断状態とする。これにより、前輪用ホイールシリンダ(6FR、6FL)のみをマスタシリンダ圧により加圧する形態とすることができる。
【0015】
また、請求項5に示すように、第1、第2配管系統のうち第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関して、前輪用ホイールシリンダ(6FR、6FL)と後輪用ホイールシリンダ(6RL、6RR)の双方をマスタシリンダ圧により加圧する形態とすることもできる。
【0016】
例えば、請求項6に示すように、主管路(C、G、G1〜G4)のうち、第1〜第4調圧回路(H1〜H4)との接続点よりも上流側において、マスタリザーバ(3f)と第1配管系統における第1前輪用および第1後輪用ホイールシリンダ(6FR、6RL)の間の連通・遮断を制御する第3制御弁(SWC1)を備えると共に、マスタリザーバ(3f)と第2配管系統における第2前輪用および第2後輪用ホイールシリンダ(6FL、6RR)の間の連通・遮断を制御する第3制御弁(SWC2)を備え、第1、第2配管系統のうち第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧する方の配管系統に関しては第3、第4制御弁(SWC1、SWC2)を連通状態とし、ポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関しては第3、第4制御弁(SWC1、SWC2)を遮断状態とする。これにより、前輪用ホイールシリンダ(6FR、6FL)と後輪用ホイールシリンダ(6RL、6RR)の双方をマスタシリンダ圧により加圧する形態とすることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、制御手段(100)にて、電源系失陥時に、第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)による差圧を制御することにより、左側車輪(FL、RL)に発生させられるトータルの制動力と右側車輪(FR、RR)に発生させられるトータルの制動力を一致ないし近似させるように、前輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR、6FL)および後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6RL、6RR)に発生させられるホイールシリンダ圧を調圧することを特徴としている。
【0018】
このように、左側車輪(FL、RL)に発生させられるトータルの制動力と右側車輪(FR、RR)に発生させられるトータルの制動力を一致させるように近づければ、ヨーモーメントを0に近づけることができるため、車両の姿勢の安定化を図ることができる。
【0019】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態を適用した車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を図1に示す。また、図2に、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の制御系を司るブレーキECU100の信号の入出力の関係を示す。以下、これらの図を参照して、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の構成について説明する。ここでは右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の油圧回路を構成する車両に本実施形態の車両用ブレーキ制御装置を適用した例について説明する。
【0022】
図1に示されるように、車両用ブレーキ制御装置には、上述したブレーキECU100(図2参照)に加えて、ブレーキペダル1、踏力センサ2、マスタシリンダ(以下、M/Cという)3、ストローク制御弁SCSS、ストロークシミュレータ4、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5、W/C6FR、6FL、6RL、6RRが備えられている。
【0023】
ドライバによってブレーキ操作部材に相当するブレーキペダル1が踏み込まれると、ブレーキペダル1に加えられる踏力が踏力センサ2に入力され、踏力センサ2から加えられた踏力に応じた検出信号が出力されるように構成されている。この検出信号はブレーキECU100に入力され、ブレーキECU100でブレーキペダル1に加えられた踏力が検出される。なお、ここではブレーキ操作部材の操作量を検出するための操作量センサとして踏力センサ2を例に挙げているが、ストロークセンサ等であっても良い。また、ストロークセンサの検出信号や後述するM/C圧を検出するための圧力センサ17、18の検出信号に基づいてドライバによるブレーキペダル1の操作状態を検出できるようにしても構わない。
【0024】
ブレーキペダル1には、加えられた踏力をM/C3に伝達するプッシュロッド等が接続されており、このプッシュロッド等が押されることでM/C3に備えられるプライマリ室3aおよびセカンダリ室3bにM/C圧が発生させられるようになっている。
【0025】
M/C3には、プライマリ室3aとセカンダリ室3bを構成するプライマリピストン3cおよびセカンダリピストン3dが備えられ、これらがスプリング3eの弾性力を受けることで、ブレーキペダル1が踏み込まれていないときには各ピストン3c、3dを押してブレーキペダル1を初期位置側に戻すように構成されている。
【0026】
M/C3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bからそれぞれブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に伸びる管路A、Bが備えられている。
【0027】
また、M/C3には、マスタリザーバ3fが備えられている。マスタリザーバ3fは、ブレーキペダル1が初期位置のときに、プライマリ室3aおよびセカンダリ室3bのそれぞれと図示しない通路を介して接続されるもので、M/C3内にブレーキ液を供給したり、M/C3内の余剰ブレーキ液を貯留する。
【0028】
このマスタリザーバ3fからは、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に向けて直接管路Cが延設されている。
【0029】
ストロークシミュレータ4は、管路Bに繋がる管路Dに接続されており、セカンダリ室3b内のブレーキ液を収容する役割を果たす。管路Dには、管路Dの連通・遮断状態を制御できる常閉型の二位置弁により構成されたストローク制御弁SCSSが備えられ、このストローク制御弁SCSSにより、ストロークシミュレータ4へのブレーキ液の流動が制御できるように構成されている。
【0030】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5は、以下のように構成されている。
【0031】
M/C3のプライマリ室3aと前輪FRに対応するW/C(前輪用第1W/C)6FRを接続するように、管路Aに繋げられる管路Eが備えられている。この管路Eには、第1常開弁SNO1が備えられている。第1常開弁SNO1は、非通電時には連通状態、通電時には遮断状態となる二位置弁であり、この第1常開弁SNO1によって管路Eの連通・遮断状態が制御される。
【0032】
また、M/C3のセカンダリ室3bと前輪FLに対応するW/C(前輪用第2W/C)6FLを接続するように、管路Bが繋げられる管路Fが備えられている。この管路Fには、第2常開弁SNO2が備えられている。第2常開弁SNO2は、非通電時には連通状態、通電時には遮断状態となる二位置弁であり、この第2常開弁SNO2によって管路Fの連通・遮断状態が制御される。
【0033】
また、マスタリザーバ3fから延設された管路Cが接続される管路Gが設けられている。この管路Gは、管路G1、G2、G3、G4という4本の管路に分岐して、上述した前輪FR、FLに対応するW/C6FR、6FL、および、後輪RL、RRに対応するW/C(後輪用第1、第2W/C)6RL、6RRに接続される。
【0034】
各管路G1〜G4には、それぞれ1つずつポンプ(第1〜第4ポンプ)7、8、9、10が備えられている。各ポンプ7〜10は、例えば静寂性に有効なトロコイドポンプにより構成されている。ポンプ7〜10のうち、ポンプ7、8は、第1モータ11によって駆動され、ポンプ9、10は、第2モータ12によって駆動される。第1、第2モータ11、12としてどのようなモータを用いても良いが、立上りが早いブラシレスモータを用いると好ましい。
【0035】
また、ポンプ7〜10のそれぞれには、並列的に調圧回路を構成する管路H1、H2、H3、H4が備えられている。
【0036】
ポンプ7に対して並列的に接続された管路H1には、直列的に接続された第1常閉弁SWC1と第1リニア弁SLFRが備えられ、第1常閉弁SWC1がポンプ7の吸入ポート側(上流側)に第1リニア弁SLFRが吐出ポート側(下流側)に位置するように配置されている。つまり、第1常閉弁SWC1により、管路H1を通じてマスタリザーバ3f側へのブレーキ液の返流を制御できる構成とされている。
【0037】
ポンプ8に対して並列的に接続された管路H2には、第2リニア弁SLRLが備えられている。
【0038】
ポンプ9に対して並列的に接続された管路H3には、直列的に接続された第2常閉弁SWC2と第3リニア弁SLFLが備えられ、第2常閉弁SWC2がポンプ9の吸入ポート側(上流側)に第3リニア弁SLFLが吐出ポート側(下流側)に位置するように配置されるている。つまり、第2常閉弁SWC2により、管路H3を通じてマスタリザーバ3f側へのブレーキ液の返流を制御できる構成とされている。
【0039】
ポンプ10に対して並列的に接続された管路H4には、第4リニア弁SLRRが備えられている。
【0040】
そして、管路G1〜G4のうち、各ポンプ7〜10と各W/C6FR〜6RRの間に圧力センサ(第1〜第4圧力センサ)13、14、15、16が配置されることで、各W/C圧が検出できるように構成されていると共に、管路E、Fのうち第1、第2常開弁SNO1、SNO2よりも上流側(M/C3側)にも圧力センサ17、18が配置されることで、M/C3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bに発生しているM/C圧を検出できるように構成されている。
【0041】
さらに、前輪FRに対するW/C6FRを加圧するためのポンプ7の吐出ポートおよび前輪FLに対するW/C6FLを加圧するためのポンプ9の吐出ポートには、それぞれ、逆止弁20、21が備えられている。これら逆止弁20、21は、W/C6FR、6FL側からポンプ7、9側へのブレーキ液の流動を禁止するために備えられている。このような構造により、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5が構成されている。
【0042】
このような車両用ブレーキ制御装置では、上述した管路A、管路Eを通じてプライマリ室3aとW/C6FRを繋ぐ油圧回路(第1補助管路)と、管路C、管路G、G1、G2を通じてマスタリザーバ3fとW/C6FR、6RLを繋ぐ油圧回路(主管路)、および、ポンプ7、8に並列的に接続された管路H1、H2の油圧回路(第1、第2調圧回路)が第1配管系統を構成するものとなる。
【0043】
また、管路B、管路Fを通じてセカンダリ室3bとW/C6FRを繋ぐ油圧回路(第2補助管路)と、管路C、管路G、G3、G4を通じてマスタリザーバ3fとW/C6FL、6RRを繋ぐ油圧回路(主管路)、および、ポンプ9、10に並列的に接続された管路H3、H4の油圧回路(第3、第4調圧回路)が第2配管系統を構成するものとなる。
【0044】
そして、図2に示されるように、上記した踏力センサ2や各圧力センサ13〜18の検出信号がブレーキECU100に入力される。
【0045】
ブレーキECU100は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種処理を実行する。このブレーキECU100には、例えば、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12への電力供給ラインのON/OFFもしくはこのラインに流す電流値を制御する半導体スイッチング素子(図示せず)が備えられており、この半導体スイッチング素子のON/OFFを制御すること等により、電力供給のON/OFFや供給する電流量(つまり消費電力量)を制御できるようになっている。
【0046】
例えば、ブレーキECU100は、入力された踏力センサ2の検出信号からブレーキ操作量に相当する踏力の物理値を求め、それに対応する目標制動力を求めると共に、求めた目標制動力を発生させるべく、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12を駆動するための制御信号を出力させる。そして、ブレーキECU100は、各圧力センサ13〜18の検出信号からW/C圧およびM/C圧を求めることで、実際に発生させられている制動力(実制動力)をフィードバックし、目標制動力に近づけるようにする。
【0047】
図2に示すブレーキECU100や各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12を駆動するための制御信号の出力は、図2に示すように基本的には車載のバッテリ20からの電力供給に基づいて行われる。ただし、電源系失陥時には、バッテリ20からの電力供給が行えなくなるため、補助バッテリとして機能するキャパシタ21から電力供給が行われる。
【0048】
キャパシタ21は、一般的にブレーキバイワイヤ方式のブレーキ制御装置が搭載されるような車両に搭載されているもので、バッテリ20からの電力供給により充電された状態となっている。そして、キャパシタ21は、バッテリ20と同様に、ブレーキECU100に接続され、バッテリ20の発生させる電位が0もしくは所定値以下になったときに、バッテリ20に代わってブレーキECU100への電力供給を行うと共に、ブレーキECU100を通じて各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12への電力供給を行う。
【0049】
続いて、上記のように構成される車両用ブレーキ制御装置の作動について、通常ブレーキ時と車両用ブレーキ制御装置に異常が発生した場合(以下、異常時という)および電源系失陥時に分けて説明する。なお、ここでいう異常時とは、例えば制御弁のいずれかが故障した等、電源系失陥とは異なる異常のことを意味している。
【0050】
図3は、通常ブレーキ時と異常時および電源系失陥時の各部の駆動状態を示した模式図である。なお、異常が発生したか否かに関しては、従来より行われているイニシャルチェックなどに基づいてブレーキECU100で判定され、一旦異常が発生するとそれが解除されるまでは異常時のブレーキ動作が行われることになる。
【0051】
(1)通常ブレーキ時の動作
通常ブレーキ時には、ブレーキペダル1が踏み込まれ、踏力センサ2の検出信号がブレーキECU100に入力されると、ブレーキECU100が図3に示すような駆動形態となるように各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12を駆動する。
【0052】
すなわち、第1、第2常開弁SNO1、SNO2への通電は共にONされ、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電も共にONされる。これにより、第1、第2常開弁SNO1、SNO2は共に遮断状態、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2は共に連通状態とされる。
【0053】
また、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRは、通電のON/OFFがデューティ制御(もしくはPWM制御)されることで、単位時間当たりの通電量が調整され、上下流間に発生させる差圧量がリニアに制御される。ストローク制御弁SCSSに関しては、通電がONされる。このため、管路B、Dを通じて、ストロークシミュレータ4がセカンダリ室3bと連通状態となり、ブレーキペダル1が踏み込まれたときに、各ピストン3c、3dが移動しても、セカンダリ室3b内のブレーキ液がストロークシミュレータ4に移動することになる。したがって、ドライバがブレーキペダル1を踏み込んだときに踏み込みに応じた反力が得られ、かつ、M/C圧が高圧になり過ぎることでブレーキペダル1に対して硬い板を踏み込むような感覚(板感)が発生することなく、ブレーキペダル1が踏み込めるようになっている。
【0054】
さらに、第1、第2モータ11、12への通電が共にONされ、ポンプ7〜10によるブレーキ液の吸入・吐出が行われる。このようにして、ポンプ7〜10によるポンプ動作が行われると、各W/C6FR〜6RRに対してブレーキ液が供給される。
【0055】
このとき、第1、第2常開弁SNO1、SNO2が遮断状態とされているため、ポンプ7〜10の下流側のブレーキ液圧、つまり各W/C6FR〜6RRのW/C圧が増加させられることになる。そして、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2が連通状態とされ、かつ、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRへの単位時間当たりの通電量がデューティ制御されているため、デューティ比に応じて各W/C6FR〜6RRのW/C圧が調整される。
【0056】
そして、ブレーキECU100にて、各圧力センサ13〜16の検出信号に基づいて各車輪FR〜RRのW/C6FR〜6RRに発生しているW/C圧をモニタリングし、第1、第2モータ11、12の通電量を調整することで第1、第2モータ11、12の回転数を制御すると共に、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRへの通電のON/OFFのデューティ比を制御することで、各W/C圧が所望の値となるようにする。
【0057】
これにより、ブレーキペダル1に加えられた踏力に応じた目標制動力となるように、制動力が発生させられることになる。
【0058】
(2)異常時のブレーキ動作
異常時には、ブレーキECU100から制御信号が出力できなくなるか、もしくは、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12が正常に駆動されない可能性がある。このため、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12すべてに関して、図3に示されるように通電がOFFされる。
【0059】
すなわち、第1、第2常開弁SNO1、SNO2への通電が共にOFFとなるため、これらは共に連通状態となる。第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電も共にOFFとなるため、これらは共に遮断状態とされる。
【0060】
また、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRも、すべて通電がOFFとなるため、すべて連通状態となる。ストローク制御弁SCSSも通電がOFFとなるため、ストロークシミュレータ4とセカンダリ室3bの間が遮断状態となる。
【0061】
さらに、第1、第2モータ11、12への通電が共にOFFとなり、ポンプ7〜10によるブレーキ液の吸入・吐出も停止される。
【0062】
このような状態になると、M/C3におけるプライマリ室3aは、管路A、E、G1を介して右前輪FRにおけるW/C6FRとつながった状態となり、セカンダリ室3bは、管路B、F、G3を通じて左前輪FLにおけるW/C6FLとつながった状態となる。
【0063】
このため、ブレーキペダル1が踏み込まれ、加えられた踏力に応じてプッシュロッド等が押されることで、M/C3におけるプライマリ室3aおよびセカンダリ室3bにM/C圧が発生させられると、それが両前輪FR、FLのW/C6FR、6FLに伝えられる。これにより、両前輪FR、FLに対して制動力が発生させられることになる。
【0064】
なお、このような異常時の作動において、前輪側の各W/C6FR、6FLのW/C圧が管路G1、G3に発生することになるが、逆止弁20、21を備えているため、このW/C圧がポンプ7、9に加わることによってポンプ7、9でのブレーキ液漏れが発生し、W/C圧が低下してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0065】
(3)電源系失陥時の動作
電源系失陥時の動作は、ブレーキECU100によってバッテリ20からの電力供給が行われなくなった、もしくは、電力供給が不十分になったとが判定されたときに実行される。この判定は、ブレーキECU100において一般的に行われているものであり、例えばバッテリ20から印加される電圧をブレーキECU100でモニタすることで行われる。なお、この判定に関しては周知の事項であるので、詳細等については省略する。
【0066】
この電源系失陥時には、基本的に、一方の配管系統では通常ブレーキ時と同様の動作が行われるが、他方の配管系統では異常時と同様の動作が行われる。ブレーキバイワイヤ方式の車両用ブレーキ制御装置において、電力消費が最も大きいのが第1、第2モータ11、12であるため、これらへの通電の手法を通常ブレーキ時と異ならせることで電力消費低減を図るのである。
【0067】
具体的には、図3に示されるように、ブレーキペダル1の踏み込みが行われると、各種制御弁SNO2、SWC2、SLFL、SLRRの駆動形態は通常ブレーキ時と同様とされ、各種制御弁SCSS、SNO1、SWC1、SLFR、SLRLの駆動形態は異常時と同様とされる。そして、第1、第2モータ11、12に関しては、第1モータ11はOFF、第2モータ12はONとされる。また、このときストローク制御弁SCSSは、OFFとされる。
【0068】
したがって、第2配管系統に関しては通常ブレーキ時と同様の動作が行われ、左前輪FLと右後輪RRに対応するW/C6FL、6RRに対しては、第2モータ12を駆動することでポンプ9、10の吐出するブレーキ液圧によりW/C圧が発生させられる。また、第1配管系統に関しては異常時と同様の動作が行われ、右前輪FRと左後輪RLに対応するW/C6FR、6RLに対しては、第1モータ11が駆動されないため、M/C3に発生させられたM/C圧によりW/C6FRにのみW/C圧が発生させられる。
【0069】
このようにして、電源系失陥時にも制動力を発生させることができ、一方の配管系統に関しては第2モータ12を駆動することによって通常ブレーキ時と同等の制動力を発生させることが可能となるため、通常ブレーキ時と比べて電力消費量を低減しつつ、できるだけ大きな制動力を発生させることが可能となる。
【0070】
このとき、左前輪FLと右後輪RRに対応するW/C6FL、6RRに対しては、左側2輪FL、RLに発生させられるトータルの制動力と右側2輪FR、RRに発生させられるトータルの制動力が同等になるように、調圧回路を利用してW/C圧を調圧すると好ましい。
【0071】
すなわち、上記のように、第2配管系統に関しては第2モータ12を駆動することによって通常ブレーキ時と同等の制動力が発生させられ、第1配管系統に関してはブレーキペダル1への踏力に基づく異常時と同等の制動力が発生させられることになる。このため、第2配管系統における左前輪FLと右後輪RRに対応するW/C6FL、6RRに対して、発生させるW/C圧を通常ブレーキ時と同様にしたのでは、左側2輪FL、RLに発生させられるトータルの制動力と右側2輪FR、RRに発生させられるトータルの制動力が一致しない。
【0072】
この場合における各車輪FL〜RRに発生させられる制動力の関係を示すと、図4のようになる。図中、矢印の大きさが制動力の大きさを表しており、車両左右に発生する制動力がアンバランスとなるためにヨーモーメントが発生し、車両の姿勢の安定化を図る上で好ましくない。
【0073】
したがって、第2配管系統における左前輪FLと右後輪RRに対応するW/C6FL、6RRに対して、発生させるW/C圧を調圧すれば、左側2輪FL、RLに発生させられるトータルの制動力と右側2輪FR、RRに発生させられるトータルの制動力を同等とすることができる。
【0074】
この場合における各車輪FL〜RRに発生させられる制動力の関係を示すと、図5のようになる。図中、矢印の大きさが制動力の大きさを表しており、車両左右に発生する制動力をバランスさせられるためヨーモーメントを0に近づけることができ、車両の姿勢の安定化を図ることが可能となる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置では、電源系失陥時に、一方の配管系統に対してのみモータを駆動するようにしている。このため、電源系失陥時にもモータを用いたW/C圧の加圧により、制動力を発生させることができるため、通常ブレーキ時と比べて電力消費量を低減しつつ、できるだけ大きな制動力を発生させることが可能となる。
【0076】
また、もう一方の配管系統については、ブレーキペダル1への踏力に基づく異常時と同等の制動力が発生させられるようにしている。このため、もう一方の配管系統に対して制動力を発生させない場合と比べて、より大きな制動力を発生させることが可能となる。
【0077】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、第2配管系統に関しては第2モータ12を駆動することによって通常ブレーキ時と同等の制動力が発生させられ、第1配管系統に関してはブレーキペダル1への踏力に基づく異常時と同等の制動力が発生させられることになる。このため、第1配管系統に関しては、右前輪FRに対応するW/C6FRにのみW/C圧が発生させられることになる。これに対して、本実施形態では、左後輪RLに対応するW/C6RLにもW/C圧が発生させられるようにする。
【0078】
異常時には、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5のどの箇所に異常が発生しているか判らないため、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12が正常に駆動されない可能性があることを前提として、これらが全く駆動されない。
【0079】
しかしながら、電源系失陥時には、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に異常が発生したわけではないため、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRを駆動しても構わない。
【0080】
このため、第1実施形態で説明した電源系失陥時の駆動形態に対して、第1常閉弁SWC1を駆動することでプライマリ室3aで発生したM/C圧が第1配管系統のW/C6FR、6RLに伝わらないようにしても構わない。この場合には、第2配管系統のW/C6FL、6RRのみに関して第2モータ12を駆動することによるポンプ加圧によりW/C圧を加圧する形態にできる。
【0081】
なお、本実施形態の場合、左前輪FLと右後輪RRに対してのみ制動力が発生させられることになる。しかしながら、一般的に、車両では前輪FR、FLの方が後輪RL、RRよりも高い制動力が発生させられるように設定されるため、W/C6FL、6RLに同じW/C圧を発生させた場合、第1実施形態で説明したように、左前輪FLと右後輪RRに発生する制動力がアンバランスとなり、ヨーモーメントが発生することになる。このため、左前輪FLと右後輪RRに発生する制動力がバランスするように、W/C6RRの方がW/C6FLよりも高い圧力となるように、第3、第4リニア弁SLFL、SLRRでの調圧を行うようにするのが好ましい。
【0082】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。上記第1実施形態では、M/C圧により加圧するのが前輪側のW/C6FRのみであったが、前輪側と後輪側双方のW/C6FR、6RLの双方がM/C圧により加圧するようにしても良い。ただし、この場合には、第1実施形態と異なる油圧回路が用いられる。図6は、本実施形態に用いられる車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示したものである。
【0083】
この図に示されるように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置では、管路Gが2つの管路Ga、Gbに分岐されており、管路Ga(つまり、分岐点よりも下流かつ管路H1、H2の上流側)に第1常閉弁SWC1が備えられ、管路Gb(つまり、分岐点よりも下流かつ管路H3、H4の上流側)に第2常閉弁SWC2が備えられた構成としてある。
【0084】
このような構成によれば、異常時に第1常閉弁SWC1が遮断状態となっても、管路H1、H2の上流側が遮断状態となるだけであるため、ブレーキペダル1の踏み込みによってM/C3のプライマリ室3aにM/C圧が発生させられると、それが右前輪FRのW/C6FRだけでなく左後輪RLのW/C6RLにも伝えられるようにできる。同様に、異常時に第2常閉弁SWC2が遮断状態となっても、管路H3、H4の上流側が遮断状態となるだけであるため、ブレーキペダル1の踏み込みによってM/C3のセカンダリ室3bにM/C圧が発生させられると、それが左前輪FLのW/C6FLだけでなく右後輪RRのW/C6RRにも伝えられるようにできる。
【0085】
このような配管構成においては、電源系失陥時に、ポンプ加圧によってW/C圧が加圧されない方となる第1配管系統に関してはM/C圧により双方のW/C6FR、6RLを加圧することが可能となる。これにより、4輪すべてに関して制動力を発生させられるため、よりバランス良い制動力を発生させることができる。ただし、よりバランス良い制動力が発生させられるように、本実施形態においても、左側2輪FL、RLに発生させられるトータルの制動力と右側2輪FR、RRに発生させられるトータルの制動力が同等になるように、調圧回路を利用してW/C圧を調圧すると好ましい。
【0086】
なお、本実施形態では、第1実施形態に示した逆止弁20、21を設けていないが、仮にポンプ7、9からブレーキ液漏れが発生したとしても、各ポンプ7、9の上流に位置する第1、第2常閉弁SWC1、SWC2によってブレーキ液が止められることになるため、W/C圧の低下は起こらない。
【0087】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、電源系失陥時を例に挙げて説明したが、電源系失陥時以外にも、故障部位が特定できた場合、例えば第1モータ11のみが作動不良となった場合にも、上記と同様に一方の配管系統に対してのみモータを駆動することで、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【0088】
図1に示した車両用ブレーキ制御装置は、本発明を適用できるブレーキ構成例として示したものであり、図1に示したものに限定されるものではなく、様々な形態で変更可能である。
【0089】
また、上記各実施形態では、右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の油圧回路を構成する車両に本実施形態の車両用ブレーキ制御装置を適用した例について説明したが、前後配管など他の系統にも本発明を適用可能である。
【0090】
また、上記各実施形態では、電源系失陥時に第2モータ12を駆動することで、第2配管系統に関してはW/C圧がポンプ加圧され、第1配管系統に関してはW/C圧がブレーキペダル1の操作によって発生したM/C圧に基づいて加圧される形態として説明した。しかしながら、これも単なる一例を説明したものであり、第1配管系統に関してW/C圧がポンプ加圧され、第2配管系統に関してW/C圧がブレーキペダル1の操作によって発生したM/C圧に基づいて加圧される形態としても構わない。
【0091】
また、上記各実施形態では、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2を常閉型としたが常開型の制御弁としても良い。第1、第2常開弁SNO1、SNO2も常開型としたが、これらを常閉型の制御弁としても構わない。
【0092】
なお、ブレーキ操作部材としてブレーキペダル1を例に挙げたが、ブレーキレバーなどであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示す図である。
【図2】図1に示す車両用ブレーキ制御装置の制御系を司るブレーキECUの信号の入出力の関係を示すブロック図である。
【図3】通常ブレーキ時と異常時および電源系失陥時の各部の駆動状態を示した模式図である。
【図4】左側2輪FL、RLに発生させられるトータルの制動力と右側2輪FR、RRに発生させられるトータルの制動力が一致しない場合に各車輪FL〜RRに発生させられる制動力の関係を示した図である。
【図5】左側2輪FL、RLに発生させられるトータルの制動力と右側2輪FR、RRに発生させられるトータルの制動力を一致させる場合に各車輪FL〜RRに発生させられる制動力の関係を示した図である。
【図6】本発明の第3実施形態における車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1…ブレーキペダル、2…踏力センサ、3…M/C、3a…プライマリ室、3b…セカンダリ室、3c…プライマリピストン、3d…セカンダリピストン、3e…スプリング、3f…マスタリザーバ、4…ストロークシミュレータ、5…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、6FR、6FL、6RL、6RR…W/C、7〜10…ポンプ、11、12…モータ、13〜18…圧力センサ、20、21…逆止弁、100…ブレーキECU、A、B、C、D、E、F、G1〜G4、H1〜H4…管路、FR、FL、RL、RR…車輪、SCSS…ストローク制御弁、SLFL、SLFR、SLRR、SLRR…第1〜第4リニア弁、SNO1、SNO2…第1、第2常開弁、SWC…常閉弁、SWC1、SWC2…第1、第2常閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバによって操作されるブレーキ操作部材(1)と、
前記ブレーキ操作部材(1)の操作量を検出するブレーキ操作量センサ(2)と、
2つの前輪(FR、FL)それぞれに対応して設けられた前輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR、6FL)、および、2つの後輪(RL、RR)それぞれに対応して設けられた後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6RL、6RR)と、
ブレーキ液を貯留しているリザーバ(3f)と、
前記リザーバ(3f)と前記前輪用第1、第2および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR〜6RR)をつなぎ、前記前輪用第1、第2および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR〜6RR)それぞれに接続されるように4つに分岐された主管路(C、G、G1〜G4)と、
前記主管路(C、G、G1〜G4)のうち4つに分岐された部位(G1〜G4)それぞれに対して1つずつ配置され、前記リザーバ(3f)に貯留されたブレーキ液を吸入・吐出して、前記前輪用第1ホイールシリンダ(6FR)を加圧する第1ポンプ(7)、前記後輪用第1ホイールシリンダ(6RL)を加圧する第2ポンプ(8)、前記前輪用第2ホイールシリンダ(6FL)を加圧する第3ポンプ(9)および前記後輪用第2ホイールシリンダ(6RR)を加圧する第4ポンプ(10)と、
前記第1、第2ポンプ(7、8)により加圧される系統を第1配管系統として、該第1配管系統に備えられた前記第1、第2ポンプ(7、8)を駆動するための第1モータ(11)と、
前記第3、第4ポンプ(9、10)により加圧される系統を第2配管系統として、該第2配管系統に備えられた前記第3、第4ポンプ(9、10)を駆動するための第2モータ(12)と、
前記第1〜第4ポンプ(7〜10)に並列的に配置され、前記リザーバ(3f)へブレーキ液を返流する管路となる第1〜第4調圧回路(H1〜H4)と、
前記第1〜第4調圧回路(H1〜H4)にそれぞれ対応して配置された第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)と、
前記ブレーキ操作量センサ(2)の検出信号に基づいて、前記第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)および前記第1、第2モータ(11、12)の駆動を行う制御手段(100)と、
前記制御手段(100)、前記調圧手段(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)および前記モータ(11、12)を駆動するための電力供給を行うバッテリ(20)と、
前記バッテリ(20)からの電力供給が行えないときの補助電源となるキャパシタ(21)と、を備え、
前記制御手段(100)は、
前記操作量センサ(2)に基づいて前記ブレーキ操作部材(1)が操作されたことを検出したときに、前記操作量センサ(2)にて求められる操作量に対応する目標制動力を求め、該目標制動力を発生させるべく、前記バッテリ(20)もしくは前記キャパシタ(21)からの電力供給に基づいて、前記第1、第2モータ(11、12)および前記調圧手段(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)の駆動を行い、
さらに、前記バッテリ(20)からの電力供給が行えない電源系失陥時には、前記キャパシタ(21)の電力供給に基づき、前記第1、第2配管系統のうちのいずれか一方の配管系統のみに関して、前記第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧することを特徴とする車両用ブレーキ制御装置。
【請求項2】
プライマリピストン(3c)およびセカンダリピストン(3d)と、これらによって区画されるプライマリ室(3a)とセカンダリ室(3b)と、前記プライマリ室(3a)と前記セカンダリ室(3b)に連通するブレーキ液を貯留した前記リザーバに相当するマスタリザーバ(3f)を有し、前記ブレーキ操作部材(1)が操作されることにより、該ブレーキ操作部材(1)に連結されたプッシュロッドを介して前記プライマリピストン(3c)および前記セカンダリピストン(3d)が押されることで前記プライマリ室(3a)と前記セカンダリ室(3b)に対してマスタシリンダ圧を発生させるように構成されたマスタシリンダ(3)と、
前記プライマリ室(3a)を前記前輪用第1ホイールシリンダ(6FR)に前記前輪用第1ポンプ(7)よりも下流側においてつなぐ第1補助管路(A、E)と、
前記第1補助管路(A、E)に備えられ、該第1補助管路(A、E)の連通・遮断を制御する第1制御弁(SNO1)と、
前記セカンダリ室(3b)を前記前輪用第2ホイールシリンダ(6FL)に前記前輪用第2ポンプ(9)よりも下流側においてつなぐ第2補助管路(B、F)と、
前記第2補助管路(B、F)に備えられ、該第2補助管路(B、F)の連通・遮断を制御するた第2制御弁(SNO2)とを備え、
前記制御手段(100)は、
前記第1、第2配管系統のうち前記第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧する方の配管系統に関しては前記第1、第2制御弁(SNO1、SNO2)を遮断状態とし、
前記ポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関しては前記第1、第2制御弁(SNO1、SNO2)を連通状態として、前記第1、第2配管系統のうち前記第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧する方の配管系統に関しては、前記第1補助管路(A、E)もしくは前記第2補助管路(B、F)を通じて、前記ブレーキ操作部材(1)の操作に基づいて発生する前記マスタシリンダ圧によりホイールシリンダ圧が加圧されるようにすることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記制御手段(100)は、前記第1、第2配管系統のうち前記第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関して、前記前輪用ホイールシリンダ(6FR、6FL)のみを前記マスタシリンダ圧により加圧することを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記第1調圧用管路(H1)には、前記第1リニア弁(SLFR)と前記マスタリザーバ(3f)の間の連通・遮断を制御する第3制御弁(SWC1)が備えられ、
前記第3調圧用管路(H3)には、前記第3リニア弁(SLFL)と前記マスタリザーバ(3f)の間の連通・遮断を制御する第4制御弁(SWC2)が備えられており、
前記制御手段(100)は、前記第1、第2配管系統のうち前記第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧する方の配管系統に関しては前記第3、第4制御弁(SWC1、SWC2)を連通状態とし、前記ポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関しては前記第3、第4制御弁(SWC1、SWC2)を遮断状態とすることを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記制御手段(100)は、前記第1、第2配管系統のうち前記第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関して、前記前輪用ホイールシリンダ(6FR、6FL)と前記後輪用ホイールシリンダ(6RL、6RR)の双方を前記マスタシリンダ圧により加圧することを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記主管路(C、G、G1〜G4)のうち、前記第1〜第4調圧回路(H1〜H4)との接続点よりも上流側において、前記マスタリザーバ(3f)と前記第1配管系統における前記第1前輪用および前記第1後輪用ホイールシリンダ(6FR、6RL)の間の連通・遮断を制御する第3制御弁(SWC1)が備えられていると共に、前記マスタリザーバ(3f)と前記第2配管系統における前記第2前輪用および前記第2後輪用ホイールシリンダ(6FL、6RR)の間の連通・遮断を制御する第3制御弁(SWC2)が備えられており、
前記制御手段(100)は、前記第1、第2配管系統のうち前記第1、第2モータ(11、12)のブレーキ液の吐出によるポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧する方の配管系統に関しては前記第3、第4制御弁(SWC1、SWC2)を連通状態とし、前記ポンプ加圧によりホイールシリンダ圧を加圧しない方の配管系統に関しては前記第3、第4制御弁(SWC1、SWC2)を遮断状態とすることを特徴とする請求項5に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記制御手段(100)は、電源系失陥時に、前記第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)による差圧を制御することにより、左側車輪(FL、RL)に発生させられるトータルの制動力と右側車輪(FR、RR)に発生させられるトータルの制動力を一致ないし近似させるように、前記前輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR、6FL)および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6RL、6RR)に発生させられるホイールシリンダ圧を調圧することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−216767(P2007−216767A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37991(P2006−37991)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】