説明

車両用ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】 コストアップを避けながら虚像の輝度低下を抑制することが可能な車両用ヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 出射光L2を発する発光体72を少なくとも有する発光ユニット70と、表示光L1を発する液晶表示器20と、表示光L1を反射させる凹面鏡41と、発光ユニット70と液晶表示器20と凹面鏡41とを収容するハウジング80とを備え、発光体72から発せられる出射光L2並びに凹面鏡41によって反射された表示光L1は透光性カバー85を通じてフロントガラス13に照射され、この照射によって得られた虚像Vを運転者14に視認させる車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、発光ユニット70は、透光性カバー85を挟んでフロントガラス13と向かい合うようにハウジング80の内部に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光体から発せられる出射光を投影部材である車両のフロントガラスに照射し、この照射によって得られた虚像を車両の利用者に視認させる車両用ヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の車両用ヘッドアップディスプレイ装置にあっては、例えば下記特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、車両のインストルメントパネル(以下、インパネと言う)内部に取り付けられており、車両の走行に係る走行情報等を表示光として発する液晶表示器(表示器)と、この液晶表示器と隣接するように配設されるLEDからなる発光体(発光装置)と、発光体を実装するための配線パターンが形成されたプリント配線板と、液晶表示器が発する表示光と発光体から発せられる出射光(照明光)とを反射させる反射ミラー(反射部材)と、液晶表示器と発光体とプリント配線板と反射ミラーとを収容するユニットケース(ハウジング)とを備え、このユニットケースの上端側には反射ミラーによって反射された前述した表示光並びに出射光が透過する透光部が形成され、ユニットケースの下端側には液晶表示器と発光体の実装されたプリント配線板とが配置されている。
【0003】
そして、上述のように構成された車両用ヘッドアップディスプレイ装置によれば、反射ミラーによって反射された液晶表示器からの表示光と発光体からの出射光とがユニットケースに設けられた透光部を通じて投影部材である車両のフロントガラスに照射され、この照射によって得られた虚像をフロントガラス越しに運転者(車両の利用者)に視認させる構成となっている。
【0004】
なお、この場合、車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、液晶表示器を表示動作させるとともに発光体を点灯動作させるマイクロコンピュータからなる制御手段がプリント配線板に実装されており、かかる制御手段は、例えば燃料残量が僅かであることを示す状態信号を受信したとき、液晶表示器に走行情報(車速表示)に加えて「CHECK」なる文字をも表示させるべく液晶表示器を表示動作させると同時に、後述する円形状の警告表示を前記虚像の一部として表示させるべく発光体を点灯動作させる。
【0005】
そして、車速表示光と「CHECK」なる文字表示光とが液晶表示器から発せられると同時に発光体が点灯し、車速表示光と文字表示光と発光体から発せられる出射光は、反射ミラー、ユニットケースの透光部並びにフロントガラスを通じて運転者側へと反射され、これにより運転者は、車速表示と「CHECK」なる文字表示と円形状の警告表示とでなる虚像を風景と重畳させて観察することができる。この虚像の一部として表示される前記警告表示は、「CHECK」なる文字表示が表示されていることを運転者に対し確実に報知するために表示されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−184481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ装置の場合、LEDからなる発光体の実装されたプリント配線板がユニットケースの下端側に配置され、発光体から発せられる出射光は、反射ミラーを通じてユニットケースの上端側に位置する透光部、フロントガラスを経て運転者の方向へと反射され、運転者は、この反射によって得られた円形の警告表示からなる虚像を視認することができる。
【0008】
しかしながら、上述のように出射光を反射ミラーにて反射させる構成では、反射ミラーによって反射された後の出射光の発光効率が低下することに起因して、運転者が視認する円形の警告表示からなる虚像の輝度が低下する虞がある。
【0009】
そこで、この虚像の輝度低下を防止するためには、発光体として高輝度型LEDを採用すればよいが、発光体として高輝度型LEDを採用すると、高輝度型LEDから発せられる熱をユニットケース外部に逃がすための専用の放熱部材が別途、必要となるため、部品費や組付費が嵩み、コストアップになるという問題点がある。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、コストアップを避けながら虚像の輝度低下を抑制することが可能な車両用ヘッドアップディスプレイ装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、出射光を発する発光体を少なくとも有する発光装置と、表示光を発する表示器と、前記表示光を反射させる反射部材と、前記発光装置と前記表示器と前記反射部材とを収容するハウジングとを備え、前記発光体から発せられる前記出射光並びに前記反射部材によって反射された前記表示光は前記ハウジングに形成された透光部を通じて所定の投影部材に照射され、この照射によって得られた虚像を車両の利用者に視認させる車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、前記発光装置は、前記透光部を挟んで前記投影部材と向かい合うように前記ハウジングの内部に配設されてなることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記発光体は、その発光面が前記透光部側を向くように、所定の固定手段を用いて前記反射部材に固定されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、初期の目的を達成でき、コストアップを避けながら虚像の輝度低下を抑制することが可能な車両用ヘッドアップディスプレイ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による車両用ヘッドアップディスプレイ装置の概略図。
【図2】同実施形態による表示装置と投影部材を示す断面図。
【図3】図2において第2反射器及び発光装置を拡大した拡大断面図。
【図4】同実施形態による車両用ヘッドアップディスプレイ装置の電気的構成を示すブロック図。
【図5】同実施形態による投影部材の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図5に基づいて、本発明を車両用のヘッドアップディスプレイ装置に適用した一実施形態を説明する。
【0015】
車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、図1に示すように車両10のインパネ11内部に配設された表示装置12が投射(照射)する照射光Lを所定の投影部材である車両10のフロントガラス13で車両10の運転者(利用者)14の方向に反射させ、虚像Vの表示を行うものである。換言すれば、車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、表示装置12に備えられる後述する液晶表示器から発せられる表示光L1並びに表示装置12に備えられる後述する発光体から発せられる出射光L2とでなる照射光Lをフロントガラス13(前記投影部材)に照射し、この照射によって得られた虚像(表示像)Vを運転者14に視認させるものである。これにより運転者14は、虚像Vを風景と重畳させて観察することができる。
【0016】
表示装置12は、図2に示すように液晶表示器(表示器)20と、第1反射器30と、第2反射器40と、プリント配線板50と、覆い部材60と、発光ユニット(発光装置)70と、ハウジング80とから主に構成されている。
【0017】
液晶表示器20は、配線基板21に実装されたLEDからなる光源22と、この光源22からの照明光を透過して表示光L1を形成するように光源22の前方側(真上)に位置するTFT型の液晶表示素子(表示素子)23と、配線基板21と光源22と液晶表示素子23とを収納する合成樹脂からなる筐体(図示せず)とから主に構成される。このことは、液晶表示素子23の背後(直下)に光源22が配設され、液晶表示素子23は、光源22から発せられる光により、所定情報(後述する表示すべき情報)を表示することを意味している。
【0018】
なお、前記筐体には、液晶表示素子23の表示領域(図示せず)を臨ませるための窓部が形成されている。そして、液晶表示素子23から発せられる表示光L1は、前記窓部を通過して第1反射器30側に導かれる構成となっている。
【0019】
このように構成された液晶表示器20は、表示光L1の出射側の面が第1反射器30に備えられる後述するコールドミラーに対向するようにしてハウジング80内に設けられ、表示光L1の光軸が前記コールドミラーに交わるような位置や向きにて固定保持される。
【0020】
また液晶表示素子23は、後述する液晶駆動回路によって表示すべき情報(例えば車速)を、数値等で発光表示する。液晶表示器20は、可視波長域の光からなる表示光L1を出力するもので、例えば赤色光(主に発光波長域610〜640nm)を発する光源22を適用することができる。なお、前記表示すべき情報は、車速に限らず、エンジン回転数等のあらゆる表示形態を採用できることは言うまでもない。
【0021】
第1反射器30は、コールドミラー31と、このコールドミラー31を所定の取付手段を用いて取付固定するための取付部材32とを有している。
【0022】
コールドミラー31は、略矩形状のガラス基板31aと、このガラス基板31aの片面(第2反射器40の後述する凹面鏡と向かい合う面)に形成された第1の反射層31bとからなり、かかる第1の反射層31bは、膜厚が異なる多層の干渉膜からなるものであり、蒸着等の方法で形成されている。またコールドミラー31は、液晶表示器20(液晶表示素子23)から発せられる表示光L1を、第2反射器40(前記凹面鏡)側へ反射させるような位置に傾斜状態にて配設される。
【0023】
なお、コールドミラー31は、液晶表示器20の発光波長域を含む可視波長域(450〜750nm)の光を高い反射率(例えば80%以上)で反射し、前記可視波長域以外の光を低い反射率で反射するものである。この場合、コールドミラー31は、前記可視波長域以外の特に赤外波長域の光(赤外線あるいは太陽光の熱線)を低い反射率(例えば15%以下)にて反射するものが適用される。なお、第1の反射層31bにて反射されない光は、コールドミラー31を透過するように構成される。
【0024】
また本実施形態の場合、コールドミラー31並びに液晶表示器20は、ハウジング80の後述する透光性カバーから直接、臨めない位置に配設され、前記太陽光等の外部からの光(外光)が直接、当たらない構造となっている。なお、取付部材32は、例えば黒色の合成樹脂材料からなり、ハウジング80に固定されている。
【0025】
第2反射器40は、図3に詳しく示すように凹面鏡(反射部材)41、保持部材42及びステッピングモータ43を有している。凹面鏡41は、凹面を有するポリカーボネートからなる樹脂基板に第2の反射層41aを蒸着形成してなるものである。かかる凹面鏡41は、その第2の反射層41aがコールドミラー31並びに前記透光性カバーに対向し、前記透光性カバーから臨める位置に傾斜状態にて配設される。
【0026】
また凹面鏡41は、コールドミラー31からの表示光L1を拡大しつつ、前記透光性カバー(車両10のフロントガラス13)側へ反射(照射)させるものである。このことは、凹面鏡41が、コールドミラー31によって反射された表示光L1を拡大し、この拡大された表示光L1を前記透光性カバーを通じてフロントガラス13に照射することを意味している。
【0027】
このように凹面鏡41によって反射された表示光L1は、前記透光性カバーを透過してフロントガラス13(フロントガラス13における運転者14側の面)に照射され、虚像を表示してなる。これにより運転者14は、虚像Vを風景と重畳させて視認することができる。
【0028】
また、この場合、凹面鏡41は、保持部材42に両面粘着テープにより接着されている。保持部材42は、合成樹脂(例えばABS)からなるものであり、歯車部42a及び軸部42bが一体に形成されている。なお、保持部材42の軸部42bはハウジング80に設けられた軸支部(図示しない)に軸支されているものとする。
【0029】
ステッピングモータ43の回転軸には歯車43aが取付けられており、この歯車43aは、保持部材42の歯車部42aと噛合されている。凹面鏡41は保持部材42とともに回動可能な状態で支持されており、ステッピングモータ43により凹面鏡41を所定の回動軸線R(つまり、軸部42bの軸方向に沿った軸線)を中心として回動させ、表示光L1のフロントガラス13に対する投射方向(照射方向)を調整することができる。
【0030】
運転者14は、後述する操作手段である押ボタンスイッチを操作し表示光L1が運転者14の目の位置に反射されるように(すなわち、虚像Vを視認できるように)凹面鏡41の角度を調整する。この際、虚像Vは、前記押ボタンスイッチの操作に応じて、フロントガラス13の水平方向とは直交する方向である鉛直方向(上下方向)に移動可能(位置調整可能)となる。なお、ここで言う前記鉛直方向とは、図1中、矢印Z方向を意味している。
【0031】
プリント配線板50は、例えば所定の配線パターンが施された硬質回路基板からなり、配線基板21や液晶表示素子23、発光ユニット70に備えられる後述する回路基板と導通接続され、適宜固定手段によりハウジング80内に固定されてなる。
【0032】
かかるプリント配線板50には、配線基板21に実装される光源22の発光制御を行う後述する光源駆動回路、液晶表示素子23を駆動する前記液晶駆動回路、ステッピングモータ43の駆動制御を行う後述するモータ駆動回路、発光ユニット70に備えられる前記発光体の発光制御を行う後述する発光体駆動回路、後述する制御手段等が搭載されてなる。
【0033】
覆い部材60は、例えば黒色の合成樹脂材料からなり、主に回路基板50を覆うように回路基板50の上方側に位置してなり、回路基板50と同様に適宜固定手段によりハウジング80に固定されてなる。
【0034】
発光装置としての発光ユニット70は、表示光L1の光路を妨げないように第2反射器40の上方側に位置し、回路基板71と、この回路基板71上に実装される発光体72と、この発光体72の前方側(つまり発光体72と前記透光性カバーとの間)に配置される半透過性の被覆部73と、発光体72と被覆部73との間に位置するレンズ部材74と、発光ユニット70の外装ケースを構成するケース体75とを有している(図3参照)。
【0035】
回路基板71は、所定の配線部が施された硬質回路基板からなり、前記配線部上に発光体72が搭載(実装)されている。かかる回路基板71は、ケース体75の下端側開口を塞ぐようにケース体75内に配設されている。
【0036】
発光体72は、例えば赤色光を発するチップ型発光ダイオード(LED)からなり、レンズ部材74に照明光(前述した出射光L2)を供給する発光体である。なお、本例の場合、発光体72は回路基板71上に1個実装されているが、例えば発光体72を回路基板71上に複数個実装してもよい。
【0037】
被覆部73は、暗色系のスモーク色調を有する半透明の合成樹脂板(もしくはガラス板)からなり、前記下端側開口とは反対側に位置するケース体75の上端側開口を塞ぐようにケース体75内に配設されている。
【0038】
レンズ部材74は、透光性合成樹脂からなり、適宜固定手段を用いてケース体75に固定され、背面側(発光体72側)が平坦面であるとともに前記背面側とは反対側に位置する前面側(被覆部73側)が凸面である凸レンズ(平凸レンズ)形状となっている。かかるレンズ部材74は、発光体72から出射される出射光L2を集光させる集光部材としての機能を有している。つまり、レンズ部材74は、出射光L2に対し所望の屈折を与え、略平行光束化された平行出射光を被覆部73側に向けて出射するようになっている。
【0039】
なお、レンズ部材74と被覆部73との間に、必要に応じて拡散シートからなる拡散部材(図示せず)を配置してもよい。かかる拡散部材は、外光が前記透光性カバー及び被覆部73を通じてケース体75内に入射した際に、外光を拡散(乱反射)させる機能を有しており、これによりケース体75内に収容されている回路基板71や発光体72等の内機部品が照らされない構成となる。従って、外光による内機部品のフロントガラス13への映り込みが防止され、虚像Vの表示品位の低下を抑制することができるというメリットがある。
【0040】
ケース体75は、例えば白色の合成樹脂からなり、略枠形状に形成され、その内部に発光体72が実装された回路基板71や被覆部73、レンズ部材74が収納されている。なお、75aは、保持部材42の背面に沿うようにケース体75に一体形成された鍔部であり、この鍔部75aは、図3中、右方側となるケース体75の下端側外壁面から保持部材42の背面に沿うように突出形成されている。
【0041】
また、鍔部75aには固定手段であるネジSが貫通するネジ孔75bが設けられるとともに、鍔部75aに対応する保持部材42箇所にはネジ孔75bに連通する凹部形状からなるネジ螺合部42cが設けられている。
【0042】
そして、ケース体75(発光ユニット70)を保持部材42(第2反射器40)に固定するには、被覆部73と透光性カバー85とが向かい合うようにネジ孔75bとネジ螺合部42cとを位置合わせした後、ネジSのネジ部をネジ孔75bに貫通させるとともにネジ孔75bを貫通してなる前記ネジ部の所要部をネジ螺合部42cに螺合させればよい。なお、本例の場合、ネジ孔75bは鍔部75aに2箇所形成され、ネジ螺合部42cはこの2つのネジ孔75bにそれぞれ対応するように2箇所形成されている。
【0043】
そして、このように発光体72を含む発光ユニット70がネジSを用いて保持部材42(保持部材42に接着されている凹面鏡41)に固定されている状態にあっては、発光体72は、その発光面72aがレンズ部材74側(前記透光性カバー側)を向くように位置している構成となる。
【0044】
ハウジング80は、例えば黒色の遮光性合成樹脂材料からなり、ともに断面略凹部形状からなる上ケース81と下ケース82とを備え、上ケース81と下ケース82とで形成される内部空間である空間部83において、液晶表示器20や各反射器30、40、プリント配線板50、覆い部材60、発光ユニット70を収納するものである。
【0045】
上ケース81には、凹面鏡41の配設位置の上部(車両10のフロントガラス13側)が開口する開口窓部84が形成されており、この開口窓部84には、開口窓部84を塞ぐように透光部である透光性カバー85が配設されてなる。透光性カバー85は、透光性の合成樹脂材料(例えばアクリル樹脂)からなり、凹面鏡41で反射された表示光L1並びに発光ユニット70から出射される出射光L2が透過(通過)する光透過性部材としての機能を有している。
【0046】
また、86は、透光性カバー85の表面に部分的に形成された黒色印刷層からなる遮光層(遮光部)であり、このように透光性カバー85の表面に部分的に遮光層86を設けたことで、透光性カバー85には、遮光層86の抜き印刷部分(抜き部)となる第1の透光エリア85a及び第2の透光エリア85bが形成されることになる。そして、凹面鏡41で反射された表示光L1は第1の透光エリア85aを透過(通過)し、発光ユニット70から出射される出射光L2は第2の透光エリア85bを透過(通過)する構成となっている。なお、遮光層86は、透光性カバー85の表面ではなく、透光性カバー85の裏面に形成してもよい。
【0047】
ここで、発光ユニット70と透光性カバー85とフロントガラス13との三者の位置関係に着目すると、透光性カバー85は、フロントガラス13とハウジング80内に配設される発光ユニット70の双方に向かい合うように配設される構成となっている(図2参照)。つまり、このことは、発光ユニット70が、透光性カバー85を挟んでフロントガラス13と対向する(向かい合う)ようにハウジング80の内部に配設されていることを意味している。
【0048】
従って、凹面鏡41によって反射された表示光L1は、凹面鏡41と対向している第1の透光エリア85aを通じて(透過して)フロントガラス13に照射されるとともに、発光ユニット70から出射される出射光L2は、発光ユニット70と対向している第2の透光エリア85bを通じて(透過して)フロントガラス13に照射され、この照射によって得られた虚像Vを運転者14が視認することになる。なお、運転者14が視認する虚像Vは、表示光L1が運転者14側へと反射されることにより表示される後述する第1の虚像と、出射光L2が運転者14側へと反射されることにより表示される後述する第2の虚像とからなる。
【0049】
以上の各部により、表示装置12が構成されている。次に、本実施形態における車両用ヘッドアップディスプレイ装置の電気的構成を図4を用いて説明する。図4中、91は車速検出手段、92は操作手段、93は制御手段、94は光源駆動回路、95は液晶駆動回路、96はモータ駆動回路、97は発光体駆動回路、22は光源、23は液晶表示素子、43はステッピングモータ、72は発光体である。
【0050】
車速検出手段61は、車両10の速度を検出するための車速センサからなり、車両の運転状態に応じた車速検出信号を検出し制御手段93に出力するものである。
【0051】
操作手段92は、前記押ボタンスイッチ等からなり、ステッピングモータ43を駆動させ凹面鏡41の角度位置を調整するための操作データを制御手段93に出力するものである。
【0052】
制御手段93は、処理動作のプログラムが記憶されたROMや演算値を一時的に記憶するRAM、前記プログラムを実行するためのCPU等を有するマイクロコンピュータからなり、プリント配線板50に実装されている。
【0053】
かかる制御手段93は、車速検出手段91からの前記車速検出信号や、操作手段92から入力した前記操作データに基づいて、液晶表示素子23と光源22とステッピングモータ43と発光体72の動作を制御する制御信号を出力する。制御手段93の出力する制御信号は、液晶表示素子23と光源22とステッピングモータ43と発光体72に対応する個々のドライバ類(駆動回路)に入力され、これらドライバ類は、その信号入力に応じて液晶表示素子23、光源22、ステッピングモータ43、発光体72を動作させる。
【0054】
そして、制御手段93は、車両10が走行状態となると、前記車速検出信号に基づいて所定の演算処理を行い、液晶表示素子23に車速を表示させるべく液晶駆動回路95に第1の指令信号を出力するとともに光源22を点灯動作させるべく光源駆動回路94に第2の指令信号を出力する。すると、この第1の指令信号を受けて液晶駆動回路95が液晶表示素子23を駆動するとともに第2の指令信号を受けて光源駆動回路94が光源22を点灯動作させ、これにより液晶表示器20からは車速表示光からなる表示光L1が発せられる。
【0055】
この液晶表示器20から発せられる表示光L1は、第1反射器30、第2反射器40、第1の透光エリア85aを経て車両10のフロントガラス13に照射され、この照射によって得られた車速表示像(第1の虚像)V1を運転者14が視認することになる(図5参照)。
【0056】
ここで、制御手段93は、液晶表示器20から表示光L1が発せられている状態において、操作手段92からの前記操作データを受信すると、凹面鏡41を所定の設定位置に回動動作させるようにステッピングモータ43を駆動・制御する出力信号を出力し、この出力信号を受信したモータ駆動回路67がステッピングモータ43を駆動させる信号を出力し、これによりステッピングモータ43が駆動する。
【0057】
すると、ステッピングモータ43の駆動によって、ステッピングモータ43の回転軸が回転駆動し、かかる回転駆動力は、前記回転軸に取り付けられた歯車43a、歯車43aと噛合う保持部材42の歯車部42aを通じて保持部材42に伝達し、これにより保持部材42が回動軸線Rを中心として回動動作する(つまり凹面鏡41の傾斜角度が変化する)ことで、車速表示光である表示光L1のフロントガラス13に対する投射方向を調整することができる。つまり、フロントガラス13越しに表示される車速表示像V1を前記鉛直方向に沿うように上下移動させることができる。
【0058】
また、制御手段93は、車速検出手段91からの前記車速検出信号に基づいて、発光体72の動作を制御する制御信号を出力する。具体的には、発光体72の点灯制御は、前記車速検出信号に基づいて以下の通り行われる。
【0059】
すなわち、本例の場合、制御手段93は、車両の運転状態に応じて入力される前記車速検出信号の値が所定の閾値(例えば時速100キロメートル)を超えたときのみ、LEDである発光体72を点灯動作させるべく制御信号を出力する。制御手段93の出力する制御信号は、発光体72を駆動する発光体駆動回路97へと入力される。発光体駆動回路97は、この制御信号を受けて発光体72を駆動し、これにより発光体72が点灯する。
【0060】
そして、このように車速が時速100キロメートルを超えて発光体72が点灯すると、発光体72から発せられる出射光L2は、レンズ部材74を通過した後、前記平行出射光としてレンズ部材74から出射される。かかる平行出射光(つまり発光体72からの出射光L2)は、スモーク色調を有する半透過性の被覆部73及び第2の透光エリア85bを透過し、表示光L1の光路と重ならないようにフロントガラス13側へと照射され、さらにフロントガラス13にて運転者14側に反射される。
【0061】
運転者14は、この反射によって得られた赤色発光像からなる警告表示像(第2の虚像)V2を車速表示像V1の下側に視認することができる(図5参照)。ここで、発光体72からフロントガラス13へと至る出射光L2の光路長は液晶表示器20からフロントガラス13へと至る表示光L1の光路長よりも短いため、運転者14がフロントガラス13を見た際に警告表示像V2は車速表示像V1よりも手前側にて視認(表示)される構成となる。
【0062】
このように本発明では、LEDからなる発光体72から発せられる出射光L2が、凹面鏡41を介さずに、透光性カバー85(第2の透光エリア85b)を経てフロントガラス13にダイレクトに照射される構成となっているため、警告表示像V2の輝度低下を極力抑制することができ、発光体として従来は必要であった高輝度LEDは不要となる。
【0063】
そして、このように高輝度LEDが不要となることに伴い、高輝度LEDから発せられる熱をハウジング外部に逃がすために従来は必要であった専用の放熱部材が不要となるため、コストアップを避けながら警告表示像V2の輝度低下を抑制することができる。また、本発明は、速度の出し過ぎを略円形の前記赤色発光像を利用して運転者14に警告表示することで、運転者14に対する注意喚起を促すことができるというメリットもある。
【0064】
なお、発光ユニット70から出射される出射光L2は、スモーク色調を有する半透過性の被覆部73を通過するときにその輝度が減衰するが、本発明の車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、警告の喚起を目的としているため、輝度が減衰しても、ぼやけた表示になるだけであって表示品位を損なうものではない。
【0065】
以上のように本実施形態では、出射光L2を発する発光体72を少なくとも有する発光ユニット70と、表示光L1を発する液晶表示器20と、表示光L1を反射させる凹面鏡41と、発光ユニット70と液晶表示器20と凹面鏡41とを収容するハウジング80とを備え、発光体72から発せられる出射光L2並びに凹面鏡41によって反射された表示光L1は透光性カバー85を通じて車両10のフロントガラス13に照射され、この照射によって得られた虚像V(車速表示像V1及び警告表示像V2)を運転者14に視認させる車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、発光ユニット70は、透光性カバー85を挟んでフロントガラス13と向かい合うようにハウジング80の内部に配設されているものである。
【0066】
従って、LEDからなる発光体72から発せられる出射光L2が、凹面鏡41を介さずに透光性カバー85(第2の透光エリア85b)を経てフロントガラス13にダイレクトに照射される構成となることから、警告表示像V2の輝度低下を極力抑制することができ、発光体として従来は必要であった高輝度LEDは不要となる。しかも、このように高輝度LEDが不要となることに伴い、高輝度LEDから発せられる熱をハウジング外部に逃がすために従来は必要であった専用の放熱部材が不要となるため、コストアップを避けながら警告表示像V2の輝度低下を抑制することができる。
【0067】
また本実施形態では、発光体72は、その発光面72aが透光性カバー85側を向くように、ネジSを用いて保持部材42(凹面鏡41)に固定されていることにより、運転者14が前記押ボタンスイッチ(操作手段92)を操作して凹面鏡41の傾斜角度が変化した場合であっても、車速表示像V1と警告表示像V2との相対的な位置関係が変わらない状態で両表示像V1、V2が前記鉛直方向に沿うように移動(上下移動)することから、表示品位の向上した車両用ヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0068】
また本実施形態では、ケース体75(発光ユニット70)が保持部材42(第2反射器40)に固定されている例について説明したが、例えば発光ユニット70に備えられるケース体75を保持部材42に固定せずに、ケース体75とハウジング80とを一体形成するような構成としてもよいし、あるいは発光ユニット70(被覆部73またはケース体75)と透光性カバー85とを適宜固定手段を用いて固定するような構成としてもよい。
【0069】
また本実施形態では、発光体72の点灯に伴い警告表示像V2を表示するものであったが、例えば発光体72を点滅させることで、警告表示像V2を点滅表示させるようにしてもよい。このように警告表示像V2を点滅表示させることで、運転者14に対する注意喚起力をより高めることができる。
【0070】
また本実施形態では、車速が前記閾値を超えたときに発光体72が点灯することに伴い警告表示像V2が表示され、運転者14に対し注意を喚起する(警告を促す)例について説明したが、例えば燃料の残量が所定値以下となっているときや、自車両と前方を走行している他の車両との間の車間距離が所定距離以下となったときに警告表示像V2を表示(点滅表示)し、運転者14に対し注意を喚起する(警告を促す)構成であってもよい。
【0071】
また本実施形態では、レンズ部材74を、背面側(発光体72側)が平坦面であるとともに前面側(被覆部73側)が凸面である平凸レンズ形状とした例について説明したが、例えば発光体72側並びに被覆部73側がともに凸面であるような両凸レンズ形状からなるレンズ部材74を適用してもよい。
【0072】
なお、本実施形態では、凹面鏡41によって反射される表示光L1及び発光ユニット70から発せられる出射光L2が、フロントガラス13に照射される例について説明したが、例えばフロントガラス13に表示光L1及び出射光L2を良好に運転者14方向に反射させるコンバイナフィルムを設けてもよいし、あるいはフロントガラス13とは別の専用の投影部材に表示光L1及び出射光L2を照射する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
12 表示装置
13 フロントガラス(投影部材)
14 運転者(利用者)
20 液晶表示器(表示器)
30 第1反射器
31 コールドミラー
40 第2反射器
41 凹面鏡(反射部材)
42 保持部材
50 プリント配線板
60 覆い部材
70 発光ユニット(発光装置)
71 回路基板
72 発光体
72a 発光面
73 被覆部
74 レンズ部材
75 ケース体
75a 鍔部
80 ハウジング
85 透光性カバー(透光部)
85a 第1の透光エリア
85b 第2の透光エリア
86 遮光層(遮光部)
91 車速検出手段
93 制御手段
94 光源駆動回路
95 液晶駆動回路
97 発光体駆動回路
L 照射光
L1 表示光
L2 出射光
S ネジ(固定手段)
V 虚像
V1 車速表示像(第1の虚像)
V2 警告表示像(第2の虚像)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射光を発する発光体を少なくとも有する発光装置と、
表示光を発する表示器と、
前記表示光を反射させる反射部材と、
前記発光装置と前記表示器と前記反射部材とを収容するハウジングとを備え、
前記発光体から発せられる前記出射光並びに前記反射部材によって反射された前記表示光は前記ハウジングに形成された透光部を通じて所定の投影部材に照射され、この照射によって得られた虚像を車両の利用者に視認させる車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、
前記発光装置は、前記透光部を挟んで前記投影部材と向かい合うように前記ハウジングの内部に配設されてなることを特徴とする車両用ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記発光体は、その発光面が前記透光部側を向くように、所定の固定手段を用いて前記反射部材に固定されてなることを特徴とする請求項1記載の車両用ヘッドアップディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86691(P2013−86691A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230271(P2011−230271)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】