説明

車両用ライト点消灯装置

【課題】車両の運転者の視認感覚とライトの点灯タイミングとのずれを低減可能な車両用ライト点消灯装置を提供する。
【解決手段】第1光検出素子40および第1光検出素子42は、可視光の所定の波長を最大感度波長とし、周辺光(前方光6および上方光7)を受光すると、その受光量に基づき第1出力値を出力する。第2光検出素子60は、赤外光の所定の波長を最大感度波長とし、周辺光8を受光すると、その受光量に基づき第2出力値を出力する。マイコン90(補正部)は、第2出力値に基づき、第1出力値を補正し、第1出力値を補正した値である補正後出力値を出力する。マイコン90(点消灯制御部)は、補正後出力値および第2出力値に基づき、ヘッドライト100の点消灯を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺光に応じてライトの点消灯を制御する車両用ライト点消灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光検出素子により車両の周辺光を検出し、光検出素子からの出力値に応じて、車両のライトの点消灯を制御する車両用ライト点消灯装置が知られている。特許文献1に開示された車両用ライト点消灯装置では、光検出素子からの出力値が基準値以下になったとき、車両の周囲が夜になったと判定し、ライトを点灯するよう制御している。しかしながら、この車両用ライト点消灯装置では、夜間、車両が街灯の下を通過するとき等、光検出素子からの出力値が一時的に前記基準値より大きくなった場合、ライトを点灯しておくべきところ、誤ってライトを消灯するおそれがある。
【0003】
これに対し、特許文献2に開示された車両用ライト点消灯装置では、可視光の所定の波長を最大感度波長とする可視光検出素子、および、赤外光の所定の波長を最大感度波長とする赤外光検出素子を備え、可視光検出素子からの出力値および赤外光検出素子からの出力値の少なくとも一方が基準値以下となったとき、夜になったと判定しライトを点灯するよう制御している。そして、可視光検出素子からの出力値および赤外光検出素子からの出力値がいずれも基準値より大きくなった場合のみ、昼になったと判定しライトを消灯する制御を行うことで、上述の誤消灯を抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−29053号公報
【特許文献2】特開平10−44860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の車両用ライト点消灯装置では、可視光検出素子の受光感度の範囲は赤外光の波長領域を含むので、例えば曇天の場合、晴天に比べて車両の周辺光のうち可視光に対する赤外光の割合が大きく、可視光検出素子からの出力値が赤外光の量に応じて大きくなる。つまり、可視光検出素子からの出力値は、純粋な可視光の量に対応した値よりも大きくなる。そのため、曇天時、車両の周囲が昼から夜へ移行するとき、周辺光のうち可視光の量が低下していくことで夜になったと判定されるべき状況であっても、可視光検出素子からの出力値が基準値より大きいことで昼であると判定され、結果、ライトの点灯が遅れる場合がある。この場合、車両の運転者が、視認感覚とライトの点灯タイミングとの間にずれを感じるといったことが懸念される。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の運転者の視認感覚とライトの点灯タイミングとのずれを低減可能な車両用ライト点消灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、車両の周辺光に応じて前記車両のライトの点消灯を制御する車両用ライト点消灯装置であって、第1光検出素子と第2光検出素子と補正部と点消灯制御部とを備えている。第1光検出素子は、可視光の所定の波長を最大感度波長とする。第1光検出素子は、周辺光を受光すると、その受光量に基づき第1出力値を出力する。第2光検出素子は、赤外光の所定の波長を最大感度波長とする。第2光検出素子は、周辺光を受光すると、その受光量に基づき第2出力値を出力する。補正部は、第2光検出素子から出力された第2出力値に基づき、第1光検出素子から出力された第1出力値を補正する。補正部は、第1出力値を補正した値である補正後出力値を出力する。点消灯制御部は、補正部の出力する補正後出力値に基づき、ライトの点消灯を制御する。
【0008】
本発明では、補正部は、例えば、周辺光に含まれる赤外光の量に対応した値である第2出力値に所定の係数を乗じた値を、第1出力値から減じることで補正後出力値を算出する。これにより、第1光検出素子の受光感度の範囲が赤外光の波長領域を含む場合であっても、補正部から出力される補正後出力値を、周辺光に含まれる可視光の量に概ね対応した値とすることができる。点消灯制御部は、例えば、補正部から出力される補正後出力値が基準値以下の場合、夜であると判定し車両のライトを点灯する。一方、補正部から出力される補正後出力値が基準値よりも大きい場合、昼であると判定しライトを消灯する。
【0009】
このように、本発明では、第1光検出素子からの出力値(第1出力値)を第2光検出素子からの出力値(第2出力値)で補正した値(補正後出力値)に基づいて、車両のライトの点消灯を制御する。そのため、曇天時等の車両の周辺光のように、可視光に対する赤外光の割合が大きい状況であっても、車両の運転者の視認感覚に近いタイミングでライトを点灯させることができる。したがって、運転者の視認感覚とライトの点灯タイミングとのずれを低減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、点消灯制御部は、補正部の出力する補正後出力値、および、第2光検出素子の出力する第2出力値に基づき、ライトの点消灯を制御する。例えば、点消灯制御部は、補正後出力値および第2出力値の少なくとも一方が各基準値以下の場合、夜であると判定し、ライトを点灯する。一方、補正後出力値および第2出力値のいずれもが各基準値よりも大きい場合、昼であると判定し、ライトを消灯する。そのため、例えば、夜間、車両が街灯の下を通過するとき等、第1出力値および第2出力値のうち第1出力値のみが一時的に大きくなることで、補正後出力値および第2出力値のうち補正後出力値のみが所定の基準値よりも大きくなった場合には、点消灯制御部はライトを消灯しない。これにより、車両が街灯の下を通過するとき等に誤ってライトを消灯するのを防ぐことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、発光素子と導光体と雨滴検出部とをさらに備えている。発光素子は、赤外光を発することが可能である。導光体は、第2光検出素子と車両のウィンドシールドとの間に位置するよう設けられる。導光体は、発光素子から発せられた赤外光をウィンドシールドに導くとともにウィンドシールドと車両外部との境界面で反射された前記赤外光を第2光検出素子に導く。雨滴検出部は、第2光検出素子が前記境界面で反射された赤外光を受光することで出力される第3出力値に基づき、ウィンドシールドの車両外部側に付着した雨滴の量を検出可能である。そして、本発明では、第2光検出素子は、導光体を透過した周辺光を受光することで前記第2出力値を出力する。
【0012】
このように、本発明は、車両のライトの点消灯を制御する機能に加え、車両外部の雨滴の量を検出するレインセンサとしての機能も有している。本発明では、第1出力値を補正するために用いる第2光検出素子を、レインセンサを実現するための構成要素として利用している。これにより、上述の2つの機能の間で部材(第2光検出素子)の共用化を図ることができる。よって、装置の大型化、ならびに、部材点数および部材コストの増大を抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、導光体は、可視光の波長範囲に属する波長の光を遮蔽可能に着色されている。そのため、導光体を透過した周辺光からは可視光成分が除かれることとなる。これにより、第2光検出素子は、周辺光のうち可視光以外の光を受光することで第2出力値を出力する。よって、第2光検出素子の受光感度の範囲が可視光の波長領域を含む場合であっても、第2出力値を、周辺光のうち赤外光の量のみに対応した値にすることができる。したがって、補正部によって、精度よく補正後出力値を算出することができる。その結果、車両の運転者の視認感覚とライトの点灯タイミングとのずれをより高精度に低減することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、導光体は、周辺光を集光して第2光検出素子に導く集光レンズ部を有する。そのため、第2光検出素子は、より広範囲の周辺光(赤外光)を受光することができる。これにより、第2光検出素子から出力される第2出力値に関し、特定方向の局所的な周辺光量(赤外光量)の変動に対するロバスト性を向上することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、第2光検出素子は、発光素子が赤外光を発していないとき、周辺光を受光することで前記第2出力値を出力し、発光素子が赤外光を発しているとき、前記境界面で反射された赤外光を受光することで前記第3出力値を出力する。
本発明では、例えば、所定の周期でオンオフを繰り返すことで発光素子からパルス状に赤外光を発し、「前記周期において赤外光を発していないとき、第2光検出素子から出力される第2出力値に基づき補正部により補正後出力値を出力し、当該補正後出力値に基づき点消灯制御部によりライトの点消灯を制御する」、ならびに、「前記周期において赤外光を発しているとき、第2光検出素子から出力される第3出力値に基づき雨滴検出部により雨滴の量を検出する」といった作動を想定することができる。つまり、本発明では、前記周期において「ライトの点消灯制御」および「雨滴量の検出」の両方を実施することができる。
【0016】
また、第2光検出素子が第2出力値を出力するとき、発光素子は赤外光を発していない。そのため、このとき、第2光検出素子は、発光素子が発した赤外光を受光することはない。これにより、第2出力値を、周辺光の量のみに対応した値にすることができる。したがって、補正部から出力される補正後出力値の精度が向上し、点消灯制御部によってライトの点消灯を高精度に制御することができる。
さらに、発光素子が赤外光を発しているときでも、発光素子のパルス周期が短い場合にはその間の周辺光の光量変動は無視できるとみなし、第2出力値を前回値保持することで補正後出力値を算出し、「ライトの点消灯制御」と「雨滴量の検出」とを同時に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の車両用ライト点消灯装置を示す断面図。
【図2】図1を矢印IIの方向から見た図。
【図3】本発明の一実施形態の車両用ライト点消灯装置の第1光検出素子および第2光検出素子の受光感度に関する特性図。
【図4】(A)は本発明の一実施形態の車両用ライト点消灯装置のマイコンの構成を示す模式図、(B)は本発明の一実施形態の車両用ライト点消灯装置の発光素子に印加される制御信号を示す図。
【図5】本発明の一実施形態の車両用ライト点消灯装置の作動の一例を説明するための図であって、(A)は第1出力値の経時的な変化を示す図、(B)は第2出力値の経時的な変化を示す図、(C)は補正後出力値の経時的な変化を示す図。
【図6】本発明の一実施形態の車両用ライト点消灯装置の作動の一例を説明するための図であって、時刻の範囲毎の第1出力値、第2出力値および補正後出力値の値、点消灯制御部による昼夜判定、ならびに、点消灯制御部によるライトの点消灯制御について表形式で示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態による車両用ライト点消灯装置を図1および2に示す。車両用ライト点消灯装置10は、車両のウィンドシールド1に取り付けられる。ここで、ウィンドシールド1は、車両の進行方向前側に設けられるフロントガラスとする。車両用ライト点消灯装置10は、ウィンドシールド1のワイパー払拭領域内で、かつ、運転者の視界を妨げないようウィンドシールド1の上方に取り付けられる。図1は、車両用ライト点消灯装置10がウィンドシールド1に取り付けられた状態を示している。
【0019】
車両用ライト点消灯装置10は、図1に示すようにケース20、第1導光体30、第1光検出素子40、第1光検出素子42、発光素子50、第2光検出素子60、第2導光体70およびマイコン90などを備えている。車両用ライト点消灯装置10は、車両の周辺光を検出し、車両のライトの点灯および消灯等を制御するのに用いられる。本実施形態の車両用ライト点消灯装置10が点消灯の制御対象とするライトは、例えば前照灯としてのヘッドライト100である。なお、本実施形態では、ヘッドライト100が点消灯すると、それに連動して、図示しない尾灯としてのテールランプが点消灯するよう構成されている。
【0020】
ケース20は、樹脂等からなる遮光材料によって略直方体状に形成されている。ケース20は、有底箱状のケース本体21、および、略矩形板状の蓋部材22を有している。蓋部材22は、ケース本体21の底部とは反対側の端部の開口23を覆っている(図1および図2参照)。蓋部材22は、外縁部を切り欠くようにして形成された切欠部24、および、中央を矩形に切り抜くことで形成された切抜部25を有している。ケース20の蓋部材22側には、ブラケット2が装着される。ケース20は、ブラケット2を経由して接着剤3によりウィンドシールド1の車室内側に取り付けられる。
【0021】
ここで、以下の説明のために、図1においてx軸、y軸およびz軸を示すことでxyz空間を定義する。x軸は車両の前後方向を示し、y軸は車両の左右方向を示し、z軸は車両の上下方向を示す。すなわち、xy平面は車両(地面)に対し水平な面であり、z軸は鉛直方向の直線と一致する。
【0022】
ケース20は、x軸(水平)に対して傾斜角θ1をなすようウィンドシールド1に取り付けられる。車両用ライト点消灯装置10がウィンドシールド1に取り付けられた状態において、車両の周辺光は、ウィンドシールド1を透過し、切欠部24および切抜部25を通過することでケース20内へ入射可能である。すなわち、ケース20は、開口23を周辺光が通過可能なようウィンドシールド1に取り付けられる。
【0023】
第1導光体30は、ケース20の内側、切欠部24の近傍に配置されている。第1導光体30は、透明な樹脂またはガラス等により形成されている。第1導光体30は、入射面31および射出面32を有している。入射面31は、切欠部24とケース本体21との間に位置する。入射面31には、ウィンドシールド1を透過した車両の周辺光のうち特定方向の光6が入射する。ここで、「特定方向」とは、車両の前方から車両に向かう方向のことである。つまり、特定方向の光6は、車両前方の光であって、x軸に一致する方向の光である。以下、特定方向の光6を前方光6という。入射面31に入射した前方光6は、第1導光体30の内部を透過し、射出面32から射出される。
【0024】
第1導光体30は、入射面31および射出面32の他に、入射面33および射出面34を有している。入射面33には、ウィンドシールド1を透過した車両の周辺光のうち上方光7が入射する。ここで、上方光7は、車両の上方から車両に向かう方向、すなわち車両上方の光である。上方光7は、z軸に一致する方向の光である。入射面33に入射した上方光7は、第1導光体30の内側と外側との境界面で全反射し、その光路を変更する。第1導光体30の前記境界面で反射された上方光7は、射出面34から射出される。
【0025】
ケース20の内側には、基板11が設けられている。この基板11に、第1光検出素子40、第1光検出素子42、発光素子50、第2光検出素子60およびマイコン90等が設置されている。
第1光検出素子40は、第1導光体30の射出面32から射出された前方光6を受光可能な位置に設置されている。第1光検出素子40は、例えばフォトダイオードまたはフォトトランジスタ等の、光を検出可能な素子(光検出器)である。本実施形態では、可視光の波長の範囲を約380nm〜約780nm、赤外光の波長範囲を約780nm〜と想定している。第1光検出素子40は、図3にPS1で示すように、可視光の所定の波長を最大感度波長としている。つまり、第1光検出素子40は、受光した光のうち特に可視光を検出するのに用いられる。なお、第1光検出素子40の受光感度の範囲は、赤外光の波長領域を含む(図3参照)。
【0026】
第1光検出素子42は、第1導光体30の射出面34から射出された上方光7を受光可能な位置に設置されている。第1光検出素子42は、第1光検出素子40と同様の構成であり、受光感度および最大感度波長も第1光検出素子40と同じである(図3のPS1参照)。
【0027】
第1光検出素子40は、受光面41で前方光6を受光すると、その受光量および自身の受光感度に基づく信号(以下、この信号を「第1出力値O11」という)を出力する。つまり、第1出力値O11は、前方光6の波長成分毎に第1光検出素子40の受光感度(係数)を乗じた値の総計に対応する値である。
第1光検出素子42は、受光面43で上方光7を受光すると、その受光量および自身の受光感度に基づく信号(以下、この信号を「第1出力値O12」という)を出力する。つまり、第1出力値O12は、上方光7の波長成分毎に第1光検出素子42の受光感度を乗じた値の総計に対応する値である。
第1光検出素子40から出力された第1出力値O11、および、第1光検出素子42から出力された第1出力値O12は、後述のマイコン90に伝送される。以下、便宜上、第1出力値O11と第1出力値O12との和を「第1出力値O1」とする。
【0028】
発光素子50は、基板11上に、第1光検出素子42を間に挟むようにして2つ設置されている(図2参照)。本実施形態では、発光素子50は、赤外光を発することが可能な発光ダイオードである。
【0029】
第2光検出素子60は、基板11上の、2つの発光素子50からほぼ同じ距離離れた位置に1つ設置されている(図2参照)。第2光検出素子60は、例えばフォトダイオードまたはフォトトランジスタ等の、光を検出可能な素子(光検出器)である。第2光検出素子60は、図3にPS2で示すように、赤外光の所定の波長を最大感度波長としている。つまり、第2光検出素子60は、受光した光のうち特に赤外光を検出するのに用いられる。なお、第2光検出素子60の受光感度の範囲は、可視光の波長領域を含む(図3参照)。
【0030】
第2導光体70は、図1および図2に示すように、蓋部材22の切抜部25から一方の面71の一部が露出した状態となるよう、蓋部材22に設けられている。車両用ライト点消灯装置10がウィンドシールド1に取り付けられるとき、第2導光体70とウィンドシールド1との間には、透明な板状の弾性部材4が、第2導光体70およびウィンドシールド1と接するようにして設けられる。また、第2導光体70は、車両用ライト点消灯装置10がウィンドシールド1に取り付けられた状態では、第1光検出素子40および第2光検出素子60とウィンドシールド1との間に位置するようケース20の開口23に設けられている。
【0031】
第2導光体70は、樹脂またはガラス等により形成されている。また、第2導光体70は、所定範囲の波長の光を遮蔽可能に着色されている。本実施形態では、第2導光体70は、例えば可視光の波長範囲(380nm〜780nm)に属する波長の光を遮蔽可能に着色されている。
【0032】
また、第2導光体70の他方の面72は、複数のレンズ状に形成されている。第2導光体70の他方の面72の、第2光検出素子60とウィンドシールド1との間には、集光レンズ部73が形成されている。集光レンズ部73は、車両の周辺光8を集光して第2光検出素子60に導く。
【0033】
第2導光体70は可視光の波長範囲に属する波長の光を遮蔽可能に着色されているため、第2光検出素子60は、周辺光8に含まれる光のうち可視光以外の光(赤外光等)を受光する。ここで、第2導光体70は、特許請求の範囲における「導光体」に対応している。
【0034】
第2光検出素子60は、第2導光体70を透過した周辺光8を受光面61で受光すると、その受光量および自身の受光感度に基づく信号(以下、この信号を「第2出力値O2」という)を出力する。つまり、第2出力値O2は、第2導光体70を透過した周辺光8の波長成分毎に第2光検出素子60の受光感度を乗じた値の総計に対応する値である。第2光検出素子60から出力された第2出力値O2は、後述のマイコン90に伝送される。
【0035】
図1に示すように、車両用ライト点消灯装置10がウィンドシールド1に取り付けられた状態において、発光素子50が赤外光9を発すると、当該赤外光9は、第2導光体70の他方の面72に入射し、一方の面71から射出される。第2導光体70の一方の面71から射出された赤外光9は、弾性部材4を透過し、ウィンドシールド1と車両外部との境界面5で反射される。境界面5で反射された赤外光9は、再び弾性部材4を透過して第2導光体70の一方の面71に入射し、他方の面72から射出される。第2光検出素子60は、第2導光体70の他方の面72から射出された赤外光9を受光面61で受光する。
【0036】
第2光検出素子60は、境界面5で反射されて第2導光体70を透過した赤外光9を受光面61で受光すると、その受光量および自身の受光感度に基づく信号(以下、この信号を「第3出力値O3」という)を出力する。第2光検出素子60から出力された第3出力値O3は、後述のマイコン90に伝送される。
【0037】
マイコン90は、基板11上の所定の位置に設置されている(図1および2参照)。マイコン90は、制御処理や演算処理を行うCPU、各種プログラムやデータを保存するための読み取り専用メモリ(ROM)や書き込み可能なメモリ(RAM)等のメモリを含む記憶装置、入力回路、出力回路および電源回路等から構成されたICパッケージである。
マイコン90は、図4(A)に示すように、概念的に補正部91、点消灯制御部92、雨滴検出部93および発光制御部94等を有している。ここで、補正部91、点消灯制御部92、雨滴検出部93および発光制御部94は、上述のCPU、ROM、RAM、各種プログラム、入力回路および出力回路等を組み合わせることにより構成されている。
【0038】
本実施形態では、例えば車両電源がオンすることによりマイコン90に電力が供給されると、発光制御部94は、図4(B)に示すようなパルス状のオンオフ制御信号を発光素子50に印加する。これにより、発光素子50は、オンオフ制御信号に基づき所定の周期でオンオフを繰り返すことで、パルス状に赤外光9を発する。
【0039】
以下、点消灯制御部92によるヘッドライト100の点消灯制御について説明する。
発光素子50にオン信号が印加されていないとき、すなわち発光素子50が赤外光9を発していないとき、第1光検出素子40および第1光検出素子42は、周辺光(前方光6および上方光7)を受光することで、第1出力値O11および第1出力値O12(第1出力値O1)を出力する。また、このとき、すなわち発光素子50が赤外光9を発していないとき、第2光検出素子60は、第2導光体70を透過した周辺光8を受光することで、第2出力値O2を出力する。
【0040】
補正部91は、第1光検出素子40および第1光検出素子42から出力された第1出力値O1を、第2光検出素子60から出力された第2出力値O2に基づき補正し、第1出力値O1を補正した値である補正後出力値OCを出力する。より具体的には、補正部91は、第2出力値O2に所定の係数を乗じた値を第1出力値O1から減じることで補正後出力値OCを算出する。
【0041】
本実施形態では、第2導光体70が可視光の波長範囲に属する波長の光を遮蔽可能に着色されているため、第2出力値O2は、周辺光8に含まれる赤外光の量に対応した値となる。よって、補正後出力値OCは、周辺光(前方光6および上方光7)に含まれる赤外光を除いた光の量、すなわち可視光の量に対応した値となる。
【0042】
点消灯制御部92は、補正部91の出力する補正後出力値OC、および、第2光検出素子60の出力する第2出力値O2に基づき、点消灯制御信号を出力する。より具体的には、点消灯制御部92は、補正後出力値OCが基準値s1以下、または、第2出力値O2が基準値s2以下のとき、ヘッドライト100を点灯制御することを表す点灯信号(点消灯制御信号)を出力する。一方、点消灯制御部92は、補正後出力値OCが基準値s1より大きく、かつ、第2出力値O2が基準値s2より大きいとき、ヘッドライト100を消灯制御することを表す消灯信号(点消灯制御信号)を出力する。
【0043】
点消灯制御部92から出力される点消灯制御信号は、コネクタ12を経由して、車両に搭載された電子制御ユニット(以下、「ECU」という)101に伝達される。ECU101は、CPU、ROMおよびRAM等からなる小型のコンピュータである。ECU101は、ROMに格納された各種プログラムに従い作動する。ECU101は、車両に取り付けられた各種センサからの情報等に基づき、車両の各種装置類の作動を制御することで、車両の状態を統合的に制御する。
【0044】
ECU101には、ヘッドライト100が接続されている(図1参照)。ECU101は、点消灯制御部92から点消灯制御信号が伝達されると、その信号に応じてヘッドライト100を点灯または消灯する。すなわち、ECU101は、点消灯制御部92から伝達された点消灯制御信号が点灯信号であった場合、ヘッドライト100を点灯する。一方、点消灯制御部92から伝達された点消灯制御信号が消灯信号であった場合、ヘッドライト100を消灯する。
【0045】
このように、点消灯制御部92は、補正後出力値OCおよび第2出力値O2の少なくとも一方が各基準値(s1、s2)以下の場合、夜であると判定し、ECU101を経由してヘッドライト100を点灯する。一方、補正後出力値OCおよび第2出力値O2のいずれもが各基準値(s1、s2)よりも大きい場合、昼であると判定し、ECU101を経由してヘッドライト100を消灯する。つまり、車両用ライト点消灯装置10は、車両の周辺光に応じてヘッドライト100の点消灯を自動で制御する、オートライトシステムの一部を構成している。
【0046】
続いて、雨滴検出部93の作動について説明する。
発光素子50にオン信号が印加されているとき、すなわち発光素子50が赤外光9を発しているとき、第2光検出素子60は、境界面5で反射されて第2導光体70を透過した赤外光9を受光することで、第3出力値O3を出力する。
【0047】
ウィンドシールド1の車両外部側に雨滴が付着すると、境界面5で反射される赤外光9の量(強度)が低下する。これにより、第2光検出素子60から出力される第3出力値O3が変化する。よって、雨滴検出部93は、第3出力値O3の変化に基づき、ウィンドシールド1の車両外部側に付着した雨滴の量を検出可能である。当該検出された雨滴の量に関する信号は、コネクタ12を経由してECU101に伝送される。ECU101は、雨滴検出部93から伝送された雨滴の量に関する信号に基づき、ワイパーの払拭モードを制御する。このように、本実施形態の車両用ライト点消灯装置10は、車両のヘッドライト100の点消灯を制御する機能に加え、車両外部の雨滴の量を検出するレインセンサとしての機能も有している。
【0048】
このように、本実施形態では、発光素子50のパルス周期において「ライトの点消灯制御」および「雨滴量の検出」の両方を実施することができる。なお、発光素子50が赤外光9を発しているときでも、発光素子50のパルス周期を短く設定した場合にはその間の周辺光の光量変動は無視できるとみなし、第2出力値O2を前回値保持することで補正後出力値OCを算出し、「ライトの点消灯制御」と「雨滴量の検出」とを同時に実施することができる。
【0049】
次に、車両用ライト点消灯装置10によるヘッドライト100の点消灯制御に関する作動の一例を図5および図6に基づき説明する。
図5(A)は、時刻(T)を横軸にとり第1出力値O1を縦軸にとることで、時間の経過に伴う第1出力値O1の変化を示している。図5(B)は、時刻(T)を横軸にとり第2出力値O2を縦軸にとることで、時間の経過に伴う第2出力値O2の変化を示している。図5(C)は、時刻(T)を横軸にとり補正後出力値OCを縦軸にとることで、時間の経過に伴う補正後出力値OCの変化を示している。なお、図5の各グラフは、発光素子50の発光周期のうち発光素子50が発光していないときの各出力値(O1、O2、OC)を連続的に示したものである。図6は、時刻(T)の範囲毎の第1出力値O1、第2出力値O2および補正後出力値OCの値、点消灯制御部92による昼夜判定、ならびに、点消灯制御部92によるヘッドライト100の点消灯制御等について、表形式で示している。
【0050】
図5および図6に示す例は、例えば曇天時、車両の周囲が昼から夜へ移行するときの作動の一例である。そのため、各出力値(O1、O2、OC)は、時間の経過に伴い徐々に値が減少している。また、第1出力値O1は、時刻t4からt5の期間、車両が街灯の下を通過することにより一時的に値が上昇している(図5(A)参照)。また、この例では、曇天で車両の周辺光に赤外光が多く含まれているため、第2出力値O2は、比較的高い値を示している(図5(B)参照)。また、補正後出力値OCは、第2出力値O2に所定の係数を乗じた値を第1出力値O1から減じること(第1出力値O1を補正すること)で得られる値を示している(図5(C)参照)。
【0051】
時刻(T<t1)のとき、補正後出力値OCは基準値s1より大きく、かつ、第2出力値O2は基準値s2より大きいため(図5(B)および(C)参照)、点消灯制御部92は、車両の周囲は昼であると判定し、ヘッドライト100を消灯する(図6参照)。つまり、時刻(T<t1)のとき、ヘッドライト100は消灯した状態である。
【0052】
時刻t1のとき、補正後出力値OCが基準値s1になると(図5(C)参照)、点消灯制御部92は、車両の周囲が夜になったと判定し、ヘッドライト100を点灯する(図6参照)。
時刻t2では、第2出力値O2が基準値s2になる。時刻t3では、第1出力値O1が基準値s1になる。
時刻(t1≦T<t4)のとき、補正後出力値OCが基準値s1以下のため(図5(C)参照)、点消灯制御部92は、夜であると判定し、ヘッドライト100を点灯した状態にする(図6参照)。
【0053】
時刻t4のとき、補正後出力値OCは基準値s1より大きくなるが、第2出力値O2は基準値s2より小さいため(図5(B)および(C)参照)、点消灯制御部92は、夜であると判定し、ヘッドライト100を点灯したままにする(図6参照)。すなわち、このとき、点消灯制御部92は、ヘッドライト100を消灯しない。
時刻(t4≦T)のとき、第2出力値O2が基準値s2以下のため(図5(B)参照)、点消灯制御部92は、夜であると判定し、ヘッドライト100を点灯した状態にする(図6参照)。
【0054】
このように、本実施形態では、時刻(T<t1)のとき、補正後出力値OCおよび第2出力値O2のいずれもが各基準値(s1、s2)より大きいため(図5(B)および(C)参照)、点消灯制御部92は、昼であると判定し、ヘッドライト100を消灯した状態にする(図6参照)。時刻(t1≦T)のときは、補正後出力値OCおよび第2出力値O2の少なくとも一方が各基準値(s1、s2)以下のため(図5(B)および(C)参照)、点消灯制御部92は、夜であると判定し、ヘッドライト100を点灯した状態にする(図6参照)。
【0055】
次に、比較例1および比較例2による車両用ライト点消灯装置の作動について説明することで、比較例1および比較例2に対する本実施形態の有利な効果を明らかにする。
比較例1は、物理的な構成は本実施形態と同様であるものの、点消灯制御部92による昼夜判定の仕方が本実施形態と異なる。比較例1は、第1出力値O1および第2出力値O2の少なくとも一方が各基準値(s1、s2)以下のとき「夜である」と判定し、第1出力値O1および第2出力値O2のいずれもが各基準値(s1、s2)より大きいとき「昼である」と判定する。すなわち、比較例1は、第1出力値O1および第2出力値O2に基づき昼夜判定を行うものであり、上述の「背景技術」の欄で示した特許文献2の車両用ライト点消灯装置の構成に近い構成を備えるものである。
【0056】
図6に示すように、比較例1が「夜になった」と判定するのは、時刻t2のときである。このように、比較例1では、周辺光に含まれる赤外光の量に関し補正されていない第1出力値O1、および、第2出力値O2に基づき昼夜判定を行うため、特に周辺光に赤外光が多く含まれる曇天時等、本実施形態と比べ、夜になったと判定するのに遅れが生じる。よって、比較例1では、ヘッドライト100の点灯のタイミングが車両の運転者の視認感覚とずれるおそれがある。
【0057】
比較例2は、物理的には本実施形態から第2光検出素子60を取り除いた構成である。そのため、点消灯制御部92による昼夜判定の仕方も本実施形態と異なる。比較例2は、第1出力値O1が基準値s1以下のとき「夜である」と判定し、第1出力値O1が基準値s1より大きいとき「昼である」と判定する。すなわち、比較例2は、第1出力値O1のみに基づき昼夜判定を行うものであり、上述の「背景技術」の欄で示した特許文献1の車両用ライト点消灯装置の構成に近い構成を備えるものである。
【0058】
図6に示すように、比較例2が「夜になった」と判定するのは、時刻t3のときである。このように、比較例2では、周辺光に含まれる赤外光の量に関し補正されていない第1出力値O1のみに基づき昼夜判定を行うため、特に周辺光に赤外光が多く含まれる曇天時等、本実施形態と比べ、夜になったと判定するのに、より遅れが生じる。よって、比較例2では、比較例1と同様、ヘッドライト100の点灯のタイミングが車両の運転者の視認感覚とずれるおそれがある。
また、比較例2では、時刻(t4≦T<t5)のとき(車両が街灯の下を通過したとき)、第1出力値O1が基準値s1より大きくなるため、点消灯制御部92は、ヘッドライト100を消灯する。このように、比較例2では、車両の周囲が夜であるにもかかわらず、誤ってヘッドライト100を消灯するおそれがある。
【0059】
このように、本実施形態では、比較例1および比較例2と比べ、曇天時に昼から夜に移行するときのヘッドライト100の点灯タイミングが早い。また、本実施形態では、比較例2のように夜であるにもかかわらず誤ってヘッドライト100を消灯する、ということがない。
【0060】
以上説明したように、本実施形態は、第1光検出素子40および第1光検出素子42と第2光検出素子60とマイコン90(補正部91および点消灯制御部92)とを備えている。第1光検出素子40および第1光検出素子42は、可視光の所定の波長を最大感度波長とし、周辺光(前方光6および上方光7)を受光すると、その受光量に基づき第1出力値O1を出力する。第2光検出素子60は、赤外光の所定の波長を最大感度波長とし、周辺光8を受光すると、その受光量に基づき第2出力値O2を出力する。
【0061】
本実施形態では、補正部91は、第2光検出素子60から出力された第2出力値O2に基づき、第1光検出素子40および第1光検出素子42から出力された第1出力値O1を補正し、第1出力値O1を補正した値である補正後出力値OCを出力する。より具体的には、補正部91は、周辺光8に含まれる赤外光の量に対応した値である第2出力値O2に所定の係数を乗じた値を、第1出力値O1から減じることで補正後出力値OCを算出する。本実施形態では第1光検出素子40および第1光検出素子42は受光感度の範囲が赤外光の波長領域を含むよう構成されているが、上述のように補正後出力値OCを算出することにより、補正部91から出力される補正後出力値OCを、周辺光に含まれる可視光の量に対応した値にすることができる。
【0062】
本実施形態では、点消灯制御部92は、補正部91から出力される補正後出力値OC、および、第2光検出素子60から出力される第2出力値O2に基づき、ヘッドライト100の点消灯を制御する。より具体的には、点消灯制御部92は、補正後出力値OCおよび第2出力値O2の少なくとも一方が各基準値(s1、s2)以下の場合、夜であると判定し、ヘッドライト100を点灯する。一方、補正後出力値OCおよび第2出力値O2のいずれもが各基準値よりも大きい場合、昼であると判定し、ヘッドライト100を消灯する。
【0063】
つまり、点消灯制御部92は、少なくとも補正部91から出力される補正後出力値OCが基準値s1以下となったとき、夜になったと判定しヘッドライト100を点灯する。このように、本実施形態では、第1光検出素子40および第1光検出素子42からの出力値(第1出力値O1)を第2光検出素子60からの出力値(第2出力値O2)で補正した値(補正後出力値OC)に基づいて、ヘッドライト100を点灯させる。そのため、曇天時の車両の周辺光(前方光6、上方光7および周辺光8)のように、可視光に対する赤外光の割合が大きい状況であっても、車両の運転者の視認感覚に近いタイミングでヘッドライト100を点灯させることができる。したがって、運転者の視認感覚とヘッドライト100の点灯タイミングとのずれを低減することができる。
【0064】
また、本実施形態では、補正後出力値OCおよび第2出力値O2のいずれもが各基準値(s1、s2)よりも大きい場合、昼であると判定し、ヘッドライト100を消灯する。そのため、例えば、夜間、車両が街灯の下を通過するとき等、第1出力値O1および第2出力値O2のうち第1出力値O1のみが一時的に大きくなることで、補正後出力値OCおよび第2出力値O2のうち補正後出力値OCのみが所定の基準値(s1)よりも大きくなった場合には、点消灯制御部92はヘッドライト100を消灯しない。これにより、車両が街灯の下を通過するとき等に誤ってヘッドライト100を消灯するのを防ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態は、発光素子50と第2導光体70と雨滴検出部93(マイコン90)とをさらに備えている。発光素子50は、赤外光9を発することが可能である。第2導光体70は、発光素子50から発せられた赤外光9をウィンドシールド1に導くとともにウィンドシールド1と車両外部との境界面5で反射された赤外光9を第2光検出素子60に導く。雨滴検出部93は、第2光検出素子60が境界面5で反射された赤外光9を受光することで出力される第3出力値O3に基づき、ウィンドシールド1の車両外部側に付着した雨滴の量を検出可能である。そして、本実施形態では、第2光検出素子60は、第2導光体70を透過した周辺光8を受光することで第2出力値O2を出力する。
【0066】
このように、本実施形態は、車両のヘッドライト100の点消灯を制御する機能に加え、車両外部の雨滴の量を検出するレインセンサとしての機能も有している。本実施形態では、第1出力値O1を補正するために用いる第2光検出素子60を、レインセンサを実現するための構成要素として利用している。これにより、上述の2つの機能の間で部材(第2光検出素子60)の共用化を図ることができる。よって、2つの機能を実現しながら、装置の大型化、ならびに、部材点数および部材コストの増大を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、第2導光体70は、可視光の波長範囲に属する波長の光を遮蔽可能に着色されている。そのため、第2導光体70を透過した周辺光からは可視光成分が除かれることとなる。これにより、第2光検出素子60は、周辺光8のうち可視光以外の光を受光することで第2出力値O2を出力する。本実施形態では第2光検出素子60は受光感度の範囲が可視光の波長領域を含むよう構成されているが、上述のように第2導光体70を着色することにより、第2出力値O2を、周辺光のうち赤外光の量のみに対応した値にすることができる。したがって、補正部91によって、精度よく補正後出力値OCを算出することができる。その結果、車両の運転者の視認感覚とヘッドライト100の点灯タイミングとのずれをより高精度に低減することができる。
【0068】
また、本実施形態では、第2導光体70は、周辺光を集光して第2光検出素子60に導く集光レンズ部73を有する。そのため、第2光検出素子60は、より広範囲の周辺光(赤外光)を受光することができる。これにより、第2光検出素子60から出力される第2出力値O2に関し、特定方向の局所的な周辺光量(赤外光量)の変動に対するロバスト性を向上することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第2光検出素子60は、発光素子50が赤外光9を発していないとき、周辺光8を受光することで第2出力値O2を出力し、発光素子50が赤外光9を発しているとき、境界面5で反射された赤外光9を受光することで第3出力値O3を出力する。
本実施形態では、所定の周期でオンオフを繰り返すことで発光素子50からパルス状に赤外光9を発し、「前記周期において赤外光9を発していないとき、第2光検出素子60から出力される第2出力値O2に基づき補正部91により補正後出力値OCを出力し、当該補正後出力値OCに基づき点消灯制御部92によりヘッドライト100の点消灯を制御する」。また、「前記周期において赤外光9を発しているとき、第2光検出素子60から出力される第3出力値O3に基づき雨滴検出部93により雨滴の量を検出する」。つまり、本実施形態では、前記周期において「ヘッドライト100の点消灯制御」および「雨滴量の検出」の両方を実施することができる。
【0070】
また、第2光検出素子60が第2出力値O2を出力するとき、発光素子50は赤外光9を発していない。そのため、このとき、第2光検出素子60は、発光素子50が発した赤外光9を受光することはない。これにより、第2出力値O2を、周辺光8の量のみに対応した値にすることができる。したがって、補正部91から出力される補正後出力値OCの精度が向上し、点消灯制御部92によってヘッドライト100の点消灯を高精度に制御することができる。
【0071】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、点消灯制御部が、補正部から出力される補正後出力値、および、第2光検出素子から出力される第2出力値に基づき、ライトの点消灯を制御する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、点消灯制御部は、補正後出力値のみに基づき、ライトの点消灯を制御することとしてもよい。例えば、補正後出力値が基準値以下の場合、夜であると判定し車両のライトを点灯し、一方、補正後出力値が基準値よりも大きい場合、昼であると判定しライトを消灯するといった具合である。
【0072】
また、点消灯制御部は、ライトが消灯しているときには補正後出力値が基準値以下となった場合にライトを点灯し、ライトが点灯しているときには補正後出力値および第2出力値のいずれもが各基準値より大きくなった場合にのみライトを消灯する、といった制御を行ってもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、第1光検出素子を2つ(前方光検出用および上方光検出用)備え、2つの第1光検出素子からの出力の和を第1出力値として採用する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、2つの第1光検出素子からのそれぞれの出力に異なる係数を乗じた値の和を第1出力値として採用することとしてもよい。または、2つの第1光検出素子からの出力のうち一方の出力のみを第1出力値として採用することとしてもよい。さらに、本発明の他の実施形態では、上述の2つの第1光検出素子のうち一方のみ備える構成としてもよい。
【0074】
また、本発明の他の実施形態では、導光体(第2導光体70)は、無色透明、すなわち着色されていなくてもよい。また、導光体は、集光レンズ部を有していなくてもよい。さらに、本発明の他の実施形態は、導光体および雨滴検出部を備えていなくてもよい。
【0075】
上述の実施形態では、マイコン(補正部、点消灯制御部、雨滴検出部等)がケース内の基板に設けられる例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、マイコンまたは当該マイコンと同等の機能を有する部品をケースの外部に設けることとしてもよい。あるいは、車両を統合的に制御するECUが、上述の補正部、点消灯制御部または雨滴検出部として機能することとしてもよい。
【0076】
本発明の車両用ライト点消灯装置が制御対象とするライトは、前照灯としてのヘッドライトに限らず、インパネ内の計器類を照らすためのライト、その他車両に設けられるライトの点消灯を制御するのに用いてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
6 ・・・・・前方光(周辺光)
7 ・・・・・上方光(周辺光)
8 ・・・・・周辺光
10 ・・・・車両用ライト点消灯装置
40、42 ・・・第1光検出素子
60 ・・・・第2光検出素子
90 ・・・・マイコン(補正部、点消灯制御部)
100 ・・・ヘッドライト(ライト)
O11、O12、O1 ・・・第1出力値
O2 ・・・・第2出力値
OC ・・・・補正後出力値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺光に応じて前記車両のライトの点消灯を制御する車両用ライト点消灯装置であって、
可視光の所定の波長を最大感度波長とし、前記周辺光を受光すると、その受光量に基づき第1出力値を出力する第1光検出素子と、
赤外光の所定の波長を最大感度波長とし、前記周辺光を受光すると、その受光量に基づき第2出力値を出力する第2光検出素子と、
前記第2出力値に基づき前記第1出力値を補正し、前記第1出力値を補正した値である補正後出力値を出力する補正部と、
前記補正部の出力する前記補正後出力値に基づき前記ライトの点消灯を制御する点消灯制御部と、
を備えることを特徴とする車両用ライト点消灯装置。
【請求項2】
前記点消灯制御部は、前記補正部の出力する前記補正後出力値、および、前記第2光検出素子の出力する前記第2出力値に基づき前記ライトの点消灯を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用ライト点消灯装置。
【請求項3】
赤外光を発する発光素子と、
前記第2光検出素子と前記車両のウィンドシールドとの間に位置するよう設けられ、前記発光素子から発せられた赤外光を前記ウィンドシールドに導くとともに前記ウィンドシールドと前記車両外部との境界面で反射された前記赤外光を前記第2光検出素子に導く導光体と、
前記第2光検出素子が前記境界面で反射された前記赤外光を受光することで出力される第3出力値に基づき、前記ウィンドシールドの前記車両外部側に付着した雨滴の量を検出可能な雨滴検出部と、をさらに備え、
前記第2光検出素子は、前記導光体を透過した前記周辺光を受光することで前記第2出力値を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ライト点消灯装置。
【請求項4】
前記導光体は、可視光の波長範囲に属する波長の光を遮蔽可能に着色されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ライト点消灯装置。
【請求項5】
前記導光体は、前記周辺光を集光して前記第2光検出素子に導く集光レンズ部を有することを特徴とする請求項3または4に記載の車両用ライト点消灯装置。
【請求項6】
前記第2光検出素子は、
前記発光素子が前記赤外光を発していないとき、前記周辺光を受光することで前記第2出力値を出力し、
前記発光素子が前記赤外光を発しているとき、前記境界面で反射された前記赤外光を受光することで前記第3出力値を出力することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の車両用ライト点消灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183886(P2012−183886A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47559(P2011−47559)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】