車両用伝送線路およびアンテナ
本発明は、車両用伝送線路およびアンテナに関し、車両の車体を用いる極めて単純な構造の伝送線路を提供することにより、車両のモデルの変化に関係なく共通に適用することができ、新たなモデルの車両を開発する際に配線構造のための別の努力を傾ける必要がないことから、車両の開発費用および開発期間を減少させる。また、車両の車体を用いる放射構造を有して極めて単純な構造を有し、かつ、多様な電波環境に対応可能なアンテナを提供することにより、大きさの制約を最小化し、指向性のあるアンテナを容易に設計することができ、指向性の特性により、無指向性に比べて信号を効率よく受信することができ、車両のバッテリ寿命を延長させることができるという利点がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用伝送線路およびアンテナに関し、より詳細には、車両の車体を用いた伝送線路およびアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、車両の機能は消費者の要求に合わせて多様化しており、車両の構造は多くの電子機器により次第に複雑化している。
【0003】
このような車両の電気的な内部構造は、電波信号を空間に放射したり、あるいは空間からの電波信号を受信するアンテナと、電波信号あるいは電力を伝送する役割を果たす伝送線路と、車両の各種機能を制御したり、搭乗者に各種情報を提供するための電子機器などから構成されている。
【0004】
伝送線路は、UTP(Unshielded Twisted Pair、シールドなしより対線)ケーブル、並列ワイヤ(parallel wire)などのような有線が主に採用されるが、電子機器が多くなるほど、有線からなる伝送線路の数が増加することにより、多くの内部空間を占めるのはもちろん、複雑な配線構造を有するという問題があった。配線構造を単純化するための従来の方法の一例は、韓国特許出願KR10−2005−0112459号(「丈夫な長さを使用する配線ハーネスを計画するための装置およびその方法を実行するための方法」、2005年11月23日出願)の明細書等(特許文献1)に開示されている。
【0005】
しかしながら、配線構造は、新たなモデルの車両を開発するたびに必ず考慮すべき事項であり、配線構造の単純化のための努力は車両の開発費用および開発期間の増加につながる。
【0006】
そして、車両用アンテナは、空間を最小化するために、大体、小型アンテナを用いるが、この小型アンテナは電気的な大きさが小さいため、パターンが無指向性に近いことから、多様な電波環境に対応できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願KR10−2005−0112459号明細書等
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであって、車両の車体を用いる極めて単純な構造の伝送線路を提供する。
【0009】
これとともに、車両の車体を用いる放射構造を有して極めて単純な構造を有し、かつ、多様な電波環境に対応可能なアンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様として、車両用伝送線路は、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板上に形成された誘電体と、前記誘電体上に形成された導電ラインとを含むことができる。
【0011】
本発明の第2態様として、車両用伝送線路は、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板上に形成された誘電体と、前記誘電体の内部に形成された導電ラインと、前記誘電体上に形成された導電体とを含むことができる。
【0012】
本発明の第3態様として、車両用アンテナは、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板上に形成された誘電体と、前記誘電体上に放射構造を含む形態で形成された導電ラインとを含むことができる。
【0013】
本発明の第4態様として、車両用アンテナは、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板上に形成された誘電体と、前記誘電体の内部に形成された導電ラインと、前記誘電体上に形成された導電体とを含み、前記導電ラインおよび前記導電体の少なくともいずれか1つは、放射構造を含む形態で形成され得る。
【0014】
本発明の第5態様として、車両用アンテナは、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板を貫通する通孔を介して前記車体の外部および内部に露出した導電ラインと、前記外部の前記導電ラインと前記鋼板との間、および前記内部の前記導電ラインと前記鋼板との間に形成された誘電体とを含み、前記導電ラインは、前記外部の露出部位と前記内部の露出部位に放射構造を含む形態で形成され得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、車両の車体を用いる極めて単純な構造の伝送線路を提供することにより、車両のモデルの変化に関係なく共通に適用することができ、新たなモデルの車両を開発する際に配線構造のための別の努力を傾ける必要がないことから、車両の開発費用および開発期間を減少させる。
【0016】
また、車両の車体を用いる放射構造を有して極めて単純な構造を有し、かつ、多様な電波環境に対応可能なアンテナを提供することにより、大きさの制約を最小化し、指向性のあるアンテナを容易に設計することができ、指向性の特性により、無指向性に比べて信号を効率よく受信することができ、車両のバッテリ寿命を延長させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】本発明の第1実施形態にかかる車両用伝送線路の斜視図である。
【図1b】本発明の第1実施形態にかかる車両用伝送線路の右側面図である。
【図1c】本発明の第2実施形態にかかる車両用伝送線路の右側面図である。
【図2】本発明の第3実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる車両用アンテナの特性を予測可能な分散図表を示す図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる車両用アンテナによるビーム形成の例示図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる車両用アンテナにおける、同じ周波数および異なる周期を用いてマルチビームを形成した例示図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる車両用アンテナにおける、異なる周波数および同じ周期を用いてマルチビームを形成した例示図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図8】本発明の第5実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図9】本発明の第6実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図10】本発明の第7実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図11】本発明の第8実施形態にかかる車両用アンテナの断面図である。
【図12】本発明の様々な実施形態にかかる車両用伝送線路および車両用アンテナを車両に配設した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を説明するにあたり、公知の機能または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要にあいまいにする可能性があると判断された場合は、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は、本発明の実施形態における機能を考慮して定義された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または慣例などによって異なり得る。そのため、その定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて理解されなければならない。
【0019】
(実施形態)
図1aおよび図1bは、本発明の第1実施形態にかかる車両用伝送線路に対する図であり、図1aは斜視図、図1bは右側面図である。
【0020】
これらの図に示すように、本発明の第1実施形態にかかる車両用伝送線路は、車両の車体を形成する圧延鋼板110と、圧延鋼板110上に形成された塗装面120と、塗装面120上に形成された金属ライン130などを含んで構成される。
【0021】
ここで、圧延鋼板110は、車体を形成するために鋼板を製作する際に圧延(rolling)工程を主に利用するため、代表例として記載したものであり、車体を形成するものであればいずれの板材でもよい。以下の他の実施形態においても、圧延鋼板は、鋼板の一例である。
【0022】
塗装面120は、圧延鋼板110と金属ライン130との間で誘電体の役割を果たす。このような誘電体の役割は、通常の車両塗装用ペイントによって提供される特性といえる。以下の他の実施形態においても、塗装面は、誘電体の一例である。
【0023】
金属ライン130は、導電性を有する物質で形成した導電ラインの一例であって、金属を材質として用いることが導電性の面で有利であるが、その他の材質に変更することもできる。このような金属ライン130は、コーティング手法を用いて塗装面120上に形成することができる。図1aの斜視図に示す金属ライン130は厚みなく示し、図1bの右側面図に示す金属ライン130は所定の厚みを感じられるように示した。このことは金属ライン130の厚さがいくらでも変化し得ることを表す。以下の他の実施形態においても、金属ラインは、導電ラインの一例である。
【0024】
図1cは、本発明の第2実施形態にかかる車両用伝送線路に対する図で、右側面図である。
【0025】
同図に示すように、本発明の第2実施形態にかかる車両用伝送線路は、車両の車体を形成する圧延鋼板210と、圧延鋼板210上に形成された塗装面220と、塗装面220の内部に形成された金属ライン230と、塗装面220上に形成された金属板材240などを含んで構成される。
【0026】
金属板材240は、導電性を有する物質で形成した導電体の一例であって、金属を材質として用いることが導電性の面で有利であるが、その他の材質に変更することもできる。このような金属板材240は、コーティング手法を用いて塗装面220上に形成することができる。以下の他の実施形態においても、金属板材は、導電体の一例である。
【0027】
図1aおよび図1bの車両用伝送線路は、マイクロストリップライン(microstrip line)ということができ、図1cに示す車両用伝送線路は、ストリップライン(strip line)ということができ、このような第1実施形態にかかるマイクロストリップラインおよび第2実施形態にかかるストリップラインは、電波信号あるいは電力を伝送する役割を果たす伝送線路として用いることができる。
【0028】
図2は、本発明の第3実施形態にかかる車両用アンテナに対する図で、斜視図である。
【0029】
同図に示すように、本発明の第3実施形態にかかる車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板310と、圧延鋼板310上に形成された塗装面320と、塗装面320上に放射構造を含む形態で形成された金属ライン330などを含んで構成される。
【0030】
ある構造において放射が生じるためには、不連続(discontinuity)地点があるか、電力が漏れるような構造が必要になる。そして、電力を効率よく受信するためには、指向性のあるアンテナが必要になり、周期パターンを用いたアンテナは指向性があるため、放射構造(radiating structure)として用いることができる。周期パターンは、ある伝送線路において、リアクティブ要素(reactive element)が不連続に形成された構造を意味する。
【0031】
本発明の第3実施形態にかかる車両用アンテナは、図2に示すように、金属ライン330の一側面を凹凸状(パルス波状)に形成した周期パターンを有し、このような周期パターンは、アンテナのための放射構造として用いることができる。
【0032】
このような周期パターンにおいて、周期pと伝播定数βは、構造の特性を決定する上で重要なパラメータである。ここで、伝播定数βは、周期軌道安定性(Floquet)理論によれば、下記の「数1」から得ることができる。
【0033】
【数1】
【0034】
周期パターンは、設計に応じて、フィルタのようにガイディング(guiding)構造になってもよく、アンテナのように放射構造になってもよい。分散図表(dispersion diagram)を利用すれば構造特性を予測することができ、これを図3に示した。
【0035】
図3において、2つの直線の傾き(ko/β)は、自由空間において光の速度を示すものであり、自由空間において光の速度より遅い場合にSWR(slow wave region(遅波領域))であり、自由空間において光の速度より速い場合にFWR(fast wave region(速波領域))である。一般的に、SWRはガイディング構造で、FWRは放射構造で動作するので、周期パターンをアンテナとして用いるためには、凹凸状の周期パターンをFWRで動作するように設計しなければならない。「数1」を利用すれば、多数のβnのうち、FWRに該当するn(図3において、n=−1)を選択することができる。
【0036】
図2の実施形態のような凹凸状の周期パターンのほか、多様な形態のパターンを周期pと伝播定数βを決定するために用いることができる。周期パターンに電波が進行すると漏洩波が発生して、放射につながり、アンテナとして動作することになる。周期パターンを含む金属ラインが放射体として動作したとき、車両に形成されるビームの例を、図4に示した。図4において、ビームは、車両の前部と天井部分、そして後部で形成される。したがって、車両とアンテナとの配置によってビームが最もよく当たる部分が存在する。一例として、車両前方の一定距離(例えば、1km)に車両と正面で向き合う送信ホーンアンテナがあると仮定すれば、送信電力はほとんど車両の前部に向かうため、車両の前部のアンテナをオン(on)にし、残りの天井部分と後部に設けられたアンテナはオフ(off)状態にすれば、最も効率よく電力を受けることができる。
【0037】
一方、ビームの操舵角度は、図2のような実施形態などで周期pを変化させて調整することができる。一例として、周波数f0および周期pにおいてビームが0度(°)近傍に操舵されると仮定すれば、pより小さい周期ではビームが右側に操舵され、pより大きい周期ではビームが左側に操舵される。
【0038】
図5は、同じ周波数および異なる周期を用いてマルチビームが形成されることを示す図である。1周期ではない、複数の周期を用いる場合に、マルチビームを形成することができ、周期は次第に減少していることが分かる。すなわち、図5において、前部は、周期p1を有してブロードサイド(broadside)ビームが形成され、後部は、p1より小さい周期p2を有して右側にビームが形成される。したがって、周期を調整して各ビームの操舵角度を調整することができる。
【0039】
図6は、異なる周波数f1、f2および同じ周期pを用いてマルチビームが形成されることを示す図である。このように、同じ周期pを有しても、異なる周波数f1、f2を利用すればマルチビームを形成することができる。すなわち、図6において、周波数f1<f2と仮定する場合、f1周波数は、図5の左側の周期のようにビームが0度(°)近傍に操舵されるのに対し、f2周波数は、電気的な周期がf1周波数のときよりも小さく、図5の右側の周期のようにビームが右側に操舵される。
【0040】
図7〜図10は、本発明にかかる車両用アンテナの多様な実施形態をそれぞれ示す斜視図である。
【0041】
図7は、本発明の第4実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。本実施形態の車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板410と、圧延鋼板410上に形成された塗装面420と、塗装面420の内部に形成された金属ライン430と、塗装面420上に放射構造を含む形態で形成された金属板材440などを含んで構成される。放射構造は、金属板材440のリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなり、周期パターンは、金属板材440に周期的な離隔距離でホール(hole)441を形成し、金属板材440の深さまでオープニング(opening)して形成する。
【0042】
このような本発明の第4実施形態にかかる車両用アンテナは、金属ライン430が信号線の役割を果たし、オープニングされたホール441を介して電磁波が次第に漏洩して放射が生じ、ホール441の大きさおよび形状を調整することにより特性を調整する。
【0043】
図8は、本発明の第5実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。本実施形態の車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板510と、圧延鋼板510上に形成された塗装面520と、塗装面520の内部に放射構造を含む形態で形成された金属ライン530と、塗装面520上に放射構造を含む形態で形成された金属板材540などを含んで構成される。放射構造は、金属板材540のリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなり得、周期パターンは、金属板材540に周期的な離隔距離でホール541を形成し、金属板材540の深さまでオープニングして形成する。これとともに、放射構造は、金属ライン530の一側面をテーパ(taper)状に形成することもできる。
【0044】
このような本発明の第5実施形態にかかる車両用アンテナは、金属ライン530が信号線の役割を果たし、ホール541の大きさおよび形状を調整したり、テーパ状に形成した金属ライン530の一側面の傾きを調整することにより特性を調整する。
【0045】
また、金属ライン530の放射構造は、金属ライン530のリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンで構成できる。ここで、周期パターンにおいて、金属ライン530の一側面は凹凸状に形成されるか、または、金属ライン530の一側面は凹凸状に形成されて他側面はテーパ状に形成される。
【0046】
さらに、第4実施形態および第5実施形態に加えて、車両用アンテナは車両の車体を形成する圧延鋼板と、圧延鋼板上に形成された塗装面と、放射構造を含む形態で塗装面内部に形成された金属ラインと、塗装面上に形成された金属板材とを含んでもよい。この場合、金属ラインの放射構造は、第5実施形態で記述したものと同じである。
【0047】
図9は、本発明の第6実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。本実施形態の車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板610と、圧延鋼板610上に形成された塗装面620と、塗装面620上に放射構造を含む形態で形成された金属ライン630などを含んで構成される。放射構造は、金属ライン630の一側面をテーパ状に形成する。
【0048】
このような本発明の第6実施形態にかかる車両用アンテナは、金属ライン630が信号線の役割を果たし、テーパ状に形成した金属ライン630の一側面の傾きを調整することにより特性を調整する。
【0049】
図10は、本発明の第7実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。本実施形態の車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板710と、圧延鋼板710上に形成された塗装面720と、塗装面720上に放射構造を含む形態で形成された金属ライン730などを含んで構成される。放射構造は、金属ライン730のリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなり得、周期パターンは、金属ライン730の一側面を凹凸状に形成する。これとともに、放射構造は、金属ライン730の他側面をテーパ状に形成することができる。
【0050】
このような本発明の第7実施形態にかかる車両用アンテナは、金属ライン730が信号線の役割を果たし、テーパ状に形成した金属ライン730の一側面の傾きを調整したり、凹凸状に形成した金属ライン730の他側面に対する凹凸の隙間を変化させることにより特性を調整する。
【0051】
本発明の第7実施形態では、金属ライン730に放射構造を形成するために凹凸加工とテーパ加工をすべて適用したものであるが、このような放射構造は、図8を参照して説明した車両用アンテナにも適用することができる。すなわち、金属ライン530の他側面を凹凸状に加工することができる。
【0052】
図11は、本発明の第8実施形態にかかる車両用アンテナの断面図である。
【0053】
同図に示すように、本発明の第8実施形態にかかる車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板810と、圧延鋼板810を貫通する通孔811を介して車体の外部および内部に露出した金属ライン830と、外部の金属ライン830と圧延鋼板810との間、および内部の金属ライン830と圧延鋼板810との間に形成された誘電体820とを含み、金属ライン830は、外部の露出部位831と内部の露出部位832に放射構造を含む形態で形成される。
【0054】
放射構造は、金属ライン830のリアクティブ要素が不連続に形成される周期パターンからなり、周期パターンは、金属ライン830の一側面を凹凸状に形成する。ここで、放射構造は、前述した実施形態と同様に、一側面をテーパ状に形成することもでき、一側面を凹凸状に形成するとともに、他側面をテーパ状に形成することもできる。
【0055】
本発明の第8実施形態は、他の実施形態と比較して、誘電体820において相違点を有する。前述した実施形態では、誘電体を塗装面で実施した例を説明したが、本発明の第8実施形態によれば、圧延鋼板810の外側(図面では、上側)に位置する誘電体820は塗装面で実施することができるが、圧延鋼板810の内側(図面では、下側)に位置する誘電体820は塗装面で実施することが困難である。したがって、本発明の第8実施形態では、車体内の金属ライン830と圧延鋼板810との間に別の誘電物質を充填する。例えば、誘電物質を埋め込みおよびボンディング工程により充填して誘電体820を完成する。
【0056】
このような本発明の第8実施形態によれば、車両の内部が外部と電磁的に遮蔽されている場合に、金属ライン830を介して信号を通信することができる。すなわち、金属ライン830が外部に露出した露出部位831を介して信号を受信し、受信信号は金属ライン830を介して車両の内部に伝送され、金属ライン830の内部に露出した露出部位832を介して車両内の電子機器に信号を送ることができる。
【0057】
図12は、本発明の様々な実施形態にかかる車両用伝送線路および車両用アンテナを車両に配設した例を示す図である。
【0058】
車両の車体の全体表面は、窓のガラス部分を除けば、大体、圧延鋼板901から構成されており、車両の前部と後部、そして天井の3つの部分にアンテナ902、903、904をそれぞれ配設する。
【0059】
車両の前部に位置するアンテナ902は、例えば、地上波DMBを受信するために多数のマイクロストリップライン構造で形成し、多数のマイクロストリップライン構造のうち、受信のよいものをオン(on)にし、地上波DMBのビデオおよびオーディオ信号を受信する。地上波DMBのビデオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介して、例えば、ナビゲーション(テレビ、ラジオ兼用)906に伝達し、ナビゲーション906の出力オーディオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してスピーカ907に伝達し、地上波DMB放送を視聴できるようにする。
【0060】
車両の天井に位置するアンテナ903は、例えば、GPSと衛星DMBを受信するために多数のマイクロストリップライン構造で形成し、多数のマイクロストリップライン構造のうち、受信のよいものをオン(on)にし、GPSと衛星DMBのビデオおよびオーディオ信号を受信する。受信したGPSと衛星DMBビデオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してナビゲーション906に伝達し、ナビゲーション906の出力オーディオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してスピーカ907に伝達し、GPSを利用したり、衛星DMB放送を視聴するようにする。
【0061】
車両の後部に位置するアンテナ904は、例えば、FMおよびAMラジオを受信するためにストリップライン構造で形成し、(放射構造が含まれている)金属ラインを介してFMおよびAM信号を受信し、受信したFMおよびAM信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してナビゲーション906に伝達し、ナビゲーション906の出力オーディオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してスピーカ907に伝達し、FMおよびAM放送を聴取するようにする。
【0062】
このような実施形態のほか、伝送線路905は、各種照明灯や窓コントローラ(controller)などのような各種電子機器の信号線として用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
110、210、310、410、510、610、710、810、901:圧延鋼板
120、220、320、420、520、620、720:塗装面
130、230、330、430、530、630、730、830:金属ライン
240、440、540:金属板材
441、541:ホール
811:通孔
820:誘電体
831、832:露出部位
902、903、904:アンテナ
905:伝送線路
906:ナビゲーション
907:スピーカ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用伝送線路およびアンテナに関し、より詳細には、車両の車体を用いた伝送線路およびアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、車両の機能は消費者の要求に合わせて多様化しており、車両の構造は多くの電子機器により次第に複雑化している。
【0003】
このような車両の電気的な内部構造は、電波信号を空間に放射したり、あるいは空間からの電波信号を受信するアンテナと、電波信号あるいは電力を伝送する役割を果たす伝送線路と、車両の各種機能を制御したり、搭乗者に各種情報を提供するための電子機器などから構成されている。
【0004】
伝送線路は、UTP(Unshielded Twisted Pair、シールドなしより対線)ケーブル、並列ワイヤ(parallel wire)などのような有線が主に採用されるが、電子機器が多くなるほど、有線からなる伝送線路の数が増加することにより、多くの内部空間を占めるのはもちろん、複雑な配線構造を有するという問題があった。配線構造を単純化するための従来の方法の一例は、韓国特許出願KR10−2005−0112459号(「丈夫な長さを使用する配線ハーネスを計画するための装置およびその方法を実行するための方法」、2005年11月23日出願)の明細書等(特許文献1)に開示されている。
【0005】
しかしながら、配線構造は、新たなモデルの車両を開発するたびに必ず考慮すべき事項であり、配線構造の単純化のための努力は車両の開発費用および開発期間の増加につながる。
【0006】
そして、車両用アンテナは、空間を最小化するために、大体、小型アンテナを用いるが、この小型アンテナは電気的な大きさが小さいため、パターンが無指向性に近いことから、多様な電波環境に対応できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願KR10−2005−0112459号明細書等
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであって、車両の車体を用いる極めて単純な構造の伝送線路を提供する。
【0009】
これとともに、車両の車体を用いる放射構造を有して極めて単純な構造を有し、かつ、多様な電波環境に対応可能なアンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様として、車両用伝送線路は、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板上に形成された誘電体と、前記誘電体上に形成された導電ラインとを含むことができる。
【0011】
本発明の第2態様として、車両用伝送線路は、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板上に形成された誘電体と、前記誘電体の内部に形成された導電ラインと、前記誘電体上に形成された導電体とを含むことができる。
【0012】
本発明の第3態様として、車両用アンテナは、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板上に形成された誘電体と、前記誘電体上に放射構造を含む形態で形成された導電ラインとを含むことができる。
【0013】
本発明の第4態様として、車両用アンテナは、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板上に形成された誘電体と、前記誘電体の内部に形成された導電ラインと、前記誘電体上に形成された導電体とを含み、前記導電ラインおよび前記導電体の少なくともいずれか1つは、放射構造を含む形態で形成され得る。
【0014】
本発明の第5態様として、車両用アンテナは、車両の車体を形成する鋼板と、前記鋼板を貫通する通孔を介して前記車体の外部および内部に露出した導電ラインと、前記外部の前記導電ラインと前記鋼板との間、および前記内部の前記導電ラインと前記鋼板との間に形成された誘電体とを含み、前記導電ラインは、前記外部の露出部位と前記内部の露出部位に放射構造を含む形態で形成され得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、車両の車体を用いる極めて単純な構造の伝送線路を提供することにより、車両のモデルの変化に関係なく共通に適用することができ、新たなモデルの車両を開発する際に配線構造のための別の努力を傾ける必要がないことから、車両の開発費用および開発期間を減少させる。
【0016】
また、車両の車体を用いる放射構造を有して極めて単純な構造を有し、かつ、多様な電波環境に対応可能なアンテナを提供することにより、大きさの制約を最小化し、指向性のあるアンテナを容易に設計することができ、指向性の特性により、無指向性に比べて信号を効率よく受信することができ、車両のバッテリ寿命を延長させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】本発明の第1実施形態にかかる車両用伝送線路の斜視図である。
【図1b】本発明の第1実施形態にかかる車両用伝送線路の右側面図である。
【図1c】本発明の第2実施形態にかかる車両用伝送線路の右側面図である。
【図2】本発明の第3実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる車両用アンテナの特性を予測可能な分散図表を示す図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる車両用アンテナによるビーム形成の例示図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる車両用アンテナにおける、同じ周波数および異なる周期を用いてマルチビームを形成した例示図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる車両用アンテナにおける、異なる周波数および同じ周期を用いてマルチビームを形成した例示図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図8】本発明の第5実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図9】本発明の第6実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図10】本発明の第7実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。
【図11】本発明の第8実施形態にかかる車両用アンテナの断面図である。
【図12】本発明の様々な実施形態にかかる車両用伝送線路および車両用アンテナを車両に配設した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を説明するにあたり、公知の機能または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要にあいまいにする可能性があると判断された場合は、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は、本発明の実施形態における機能を考慮して定義された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または慣例などによって異なり得る。そのため、その定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて理解されなければならない。
【0019】
(実施形態)
図1aおよび図1bは、本発明の第1実施形態にかかる車両用伝送線路に対する図であり、図1aは斜視図、図1bは右側面図である。
【0020】
これらの図に示すように、本発明の第1実施形態にかかる車両用伝送線路は、車両の車体を形成する圧延鋼板110と、圧延鋼板110上に形成された塗装面120と、塗装面120上に形成された金属ライン130などを含んで構成される。
【0021】
ここで、圧延鋼板110は、車体を形成するために鋼板を製作する際に圧延(rolling)工程を主に利用するため、代表例として記載したものであり、車体を形成するものであればいずれの板材でもよい。以下の他の実施形態においても、圧延鋼板は、鋼板の一例である。
【0022】
塗装面120は、圧延鋼板110と金属ライン130との間で誘電体の役割を果たす。このような誘電体の役割は、通常の車両塗装用ペイントによって提供される特性といえる。以下の他の実施形態においても、塗装面は、誘電体の一例である。
【0023】
金属ライン130は、導電性を有する物質で形成した導電ラインの一例であって、金属を材質として用いることが導電性の面で有利であるが、その他の材質に変更することもできる。このような金属ライン130は、コーティング手法を用いて塗装面120上に形成することができる。図1aの斜視図に示す金属ライン130は厚みなく示し、図1bの右側面図に示す金属ライン130は所定の厚みを感じられるように示した。このことは金属ライン130の厚さがいくらでも変化し得ることを表す。以下の他の実施形態においても、金属ラインは、導電ラインの一例である。
【0024】
図1cは、本発明の第2実施形態にかかる車両用伝送線路に対する図で、右側面図である。
【0025】
同図に示すように、本発明の第2実施形態にかかる車両用伝送線路は、車両の車体を形成する圧延鋼板210と、圧延鋼板210上に形成された塗装面220と、塗装面220の内部に形成された金属ライン230と、塗装面220上に形成された金属板材240などを含んで構成される。
【0026】
金属板材240は、導電性を有する物質で形成した導電体の一例であって、金属を材質として用いることが導電性の面で有利であるが、その他の材質に変更することもできる。このような金属板材240は、コーティング手法を用いて塗装面220上に形成することができる。以下の他の実施形態においても、金属板材は、導電体の一例である。
【0027】
図1aおよび図1bの車両用伝送線路は、マイクロストリップライン(microstrip line)ということができ、図1cに示す車両用伝送線路は、ストリップライン(strip line)ということができ、このような第1実施形態にかかるマイクロストリップラインおよび第2実施形態にかかるストリップラインは、電波信号あるいは電力を伝送する役割を果たす伝送線路として用いることができる。
【0028】
図2は、本発明の第3実施形態にかかる車両用アンテナに対する図で、斜視図である。
【0029】
同図に示すように、本発明の第3実施形態にかかる車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板310と、圧延鋼板310上に形成された塗装面320と、塗装面320上に放射構造を含む形態で形成された金属ライン330などを含んで構成される。
【0030】
ある構造において放射が生じるためには、不連続(discontinuity)地点があるか、電力が漏れるような構造が必要になる。そして、電力を効率よく受信するためには、指向性のあるアンテナが必要になり、周期パターンを用いたアンテナは指向性があるため、放射構造(radiating structure)として用いることができる。周期パターンは、ある伝送線路において、リアクティブ要素(reactive element)が不連続に形成された構造を意味する。
【0031】
本発明の第3実施形態にかかる車両用アンテナは、図2に示すように、金属ライン330の一側面を凹凸状(パルス波状)に形成した周期パターンを有し、このような周期パターンは、アンテナのための放射構造として用いることができる。
【0032】
このような周期パターンにおいて、周期pと伝播定数βは、構造の特性を決定する上で重要なパラメータである。ここで、伝播定数βは、周期軌道安定性(Floquet)理論によれば、下記の「数1」から得ることができる。
【0033】
【数1】
【0034】
周期パターンは、設計に応じて、フィルタのようにガイディング(guiding)構造になってもよく、アンテナのように放射構造になってもよい。分散図表(dispersion diagram)を利用すれば構造特性を予測することができ、これを図3に示した。
【0035】
図3において、2つの直線の傾き(ko/β)は、自由空間において光の速度を示すものであり、自由空間において光の速度より遅い場合にSWR(slow wave region(遅波領域))であり、自由空間において光の速度より速い場合にFWR(fast wave region(速波領域))である。一般的に、SWRはガイディング構造で、FWRは放射構造で動作するので、周期パターンをアンテナとして用いるためには、凹凸状の周期パターンをFWRで動作するように設計しなければならない。「数1」を利用すれば、多数のβnのうち、FWRに該当するn(図3において、n=−1)を選択することができる。
【0036】
図2の実施形態のような凹凸状の周期パターンのほか、多様な形態のパターンを周期pと伝播定数βを決定するために用いることができる。周期パターンに電波が進行すると漏洩波が発生して、放射につながり、アンテナとして動作することになる。周期パターンを含む金属ラインが放射体として動作したとき、車両に形成されるビームの例を、図4に示した。図4において、ビームは、車両の前部と天井部分、そして後部で形成される。したがって、車両とアンテナとの配置によってビームが最もよく当たる部分が存在する。一例として、車両前方の一定距離(例えば、1km)に車両と正面で向き合う送信ホーンアンテナがあると仮定すれば、送信電力はほとんど車両の前部に向かうため、車両の前部のアンテナをオン(on)にし、残りの天井部分と後部に設けられたアンテナはオフ(off)状態にすれば、最も効率よく電力を受けることができる。
【0037】
一方、ビームの操舵角度は、図2のような実施形態などで周期pを変化させて調整することができる。一例として、周波数f0および周期pにおいてビームが0度(°)近傍に操舵されると仮定すれば、pより小さい周期ではビームが右側に操舵され、pより大きい周期ではビームが左側に操舵される。
【0038】
図5は、同じ周波数および異なる周期を用いてマルチビームが形成されることを示す図である。1周期ではない、複数の周期を用いる場合に、マルチビームを形成することができ、周期は次第に減少していることが分かる。すなわち、図5において、前部は、周期p1を有してブロードサイド(broadside)ビームが形成され、後部は、p1より小さい周期p2を有して右側にビームが形成される。したがって、周期を調整して各ビームの操舵角度を調整することができる。
【0039】
図6は、異なる周波数f1、f2および同じ周期pを用いてマルチビームが形成されることを示す図である。このように、同じ周期pを有しても、異なる周波数f1、f2を利用すればマルチビームを形成することができる。すなわち、図6において、周波数f1<f2と仮定する場合、f1周波数は、図5の左側の周期のようにビームが0度(°)近傍に操舵されるのに対し、f2周波数は、電気的な周期がf1周波数のときよりも小さく、図5の右側の周期のようにビームが右側に操舵される。
【0040】
図7〜図10は、本発明にかかる車両用アンテナの多様な実施形態をそれぞれ示す斜視図である。
【0041】
図7は、本発明の第4実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。本実施形態の車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板410と、圧延鋼板410上に形成された塗装面420と、塗装面420の内部に形成された金属ライン430と、塗装面420上に放射構造を含む形態で形成された金属板材440などを含んで構成される。放射構造は、金属板材440のリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなり、周期パターンは、金属板材440に周期的な離隔距離でホール(hole)441を形成し、金属板材440の深さまでオープニング(opening)して形成する。
【0042】
このような本発明の第4実施形態にかかる車両用アンテナは、金属ライン430が信号線の役割を果たし、オープニングされたホール441を介して電磁波が次第に漏洩して放射が生じ、ホール441の大きさおよび形状を調整することにより特性を調整する。
【0043】
図8は、本発明の第5実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。本実施形態の車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板510と、圧延鋼板510上に形成された塗装面520と、塗装面520の内部に放射構造を含む形態で形成された金属ライン530と、塗装面520上に放射構造を含む形態で形成された金属板材540などを含んで構成される。放射構造は、金属板材540のリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなり得、周期パターンは、金属板材540に周期的な離隔距離でホール541を形成し、金属板材540の深さまでオープニングして形成する。これとともに、放射構造は、金属ライン530の一側面をテーパ(taper)状に形成することもできる。
【0044】
このような本発明の第5実施形態にかかる車両用アンテナは、金属ライン530が信号線の役割を果たし、ホール541の大きさおよび形状を調整したり、テーパ状に形成した金属ライン530の一側面の傾きを調整することにより特性を調整する。
【0045】
また、金属ライン530の放射構造は、金属ライン530のリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンで構成できる。ここで、周期パターンにおいて、金属ライン530の一側面は凹凸状に形成されるか、または、金属ライン530の一側面は凹凸状に形成されて他側面はテーパ状に形成される。
【0046】
さらに、第4実施形態および第5実施形態に加えて、車両用アンテナは車両の車体を形成する圧延鋼板と、圧延鋼板上に形成された塗装面と、放射構造を含む形態で塗装面内部に形成された金属ラインと、塗装面上に形成された金属板材とを含んでもよい。この場合、金属ラインの放射構造は、第5実施形態で記述したものと同じである。
【0047】
図9は、本発明の第6実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。本実施形態の車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板610と、圧延鋼板610上に形成された塗装面620と、塗装面620上に放射構造を含む形態で形成された金属ライン630などを含んで構成される。放射構造は、金属ライン630の一側面をテーパ状に形成する。
【0048】
このような本発明の第6実施形態にかかる車両用アンテナは、金属ライン630が信号線の役割を果たし、テーパ状に形成した金属ライン630の一側面の傾きを調整することにより特性を調整する。
【0049】
図10は、本発明の第7実施形態にかかる車両用アンテナの斜視図である。本実施形態の車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板710と、圧延鋼板710上に形成された塗装面720と、塗装面720上に放射構造を含む形態で形成された金属ライン730などを含んで構成される。放射構造は、金属ライン730のリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなり得、周期パターンは、金属ライン730の一側面を凹凸状に形成する。これとともに、放射構造は、金属ライン730の他側面をテーパ状に形成することができる。
【0050】
このような本発明の第7実施形態にかかる車両用アンテナは、金属ライン730が信号線の役割を果たし、テーパ状に形成した金属ライン730の一側面の傾きを調整したり、凹凸状に形成した金属ライン730の他側面に対する凹凸の隙間を変化させることにより特性を調整する。
【0051】
本発明の第7実施形態では、金属ライン730に放射構造を形成するために凹凸加工とテーパ加工をすべて適用したものであるが、このような放射構造は、図8を参照して説明した車両用アンテナにも適用することができる。すなわち、金属ライン530の他側面を凹凸状に加工することができる。
【0052】
図11は、本発明の第8実施形態にかかる車両用アンテナの断面図である。
【0053】
同図に示すように、本発明の第8実施形態にかかる車両用アンテナは、車両の車体を形成する圧延鋼板810と、圧延鋼板810を貫通する通孔811を介して車体の外部および内部に露出した金属ライン830と、外部の金属ライン830と圧延鋼板810との間、および内部の金属ライン830と圧延鋼板810との間に形成された誘電体820とを含み、金属ライン830は、外部の露出部位831と内部の露出部位832に放射構造を含む形態で形成される。
【0054】
放射構造は、金属ライン830のリアクティブ要素が不連続に形成される周期パターンからなり、周期パターンは、金属ライン830の一側面を凹凸状に形成する。ここで、放射構造は、前述した実施形態と同様に、一側面をテーパ状に形成することもでき、一側面を凹凸状に形成するとともに、他側面をテーパ状に形成することもできる。
【0055】
本発明の第8実施形態は、他の実施形態と比較して、誘電体820において相違点を有する。前述した実施形態では、誘電体を塗装面で実施した例を説明したが、本発明の第8実施形態によれば、圧延鋼板810の外側(図面では、上側)に位置する誘電体820は塗装面で実施することができるが、圧延鋼板810の内側(図面では、下側)に位置する誘電体820は塗装面で実施することが困難である。したがって、本発明の第8実施形態では、車体内の金属ライン830と圧延鋼板810との間に別の誘電物質を充填する。例えば、誘電物質を埋め込みおよびボンディング工程により充填して誘電体820を完成する。
【0056】
このような本発明の第8実施形態によれば、車両の内部が外部と電磁的に遮蔽されている場合に、金属ライン830を介して信号を通信することができる。すなわち、金属ライン830が外部に露出した露出部位831を介して信号を受信し、受信信号は金属ライン830を介して車両の内部に伝送され、金属ライン830の内部に露出した露出部位832を介して車両内の電子機器に信号を送ることができる。
【0057】
図12は、本発明の様々な実施形態にかかる車両用伝送線路および車両用アンテナを車両に配設した例を示す図である。
【0058】
車両の車体の全体表面は、窓のガラス部分を除けば、大体、圧延鋼板901から構成されており、車両の前部と後部、そして天井の3つの部分にアンテナ902、903、904をそれぞれ配設する。
【0059】
車両の前部に位置するアンテナ902は、例えば、地上波DMBを受信するために多数のマイクロストリップライン構造で形成し、多数のマイクロストリップライン構造のうち、受信のよいものをオン(on)にし、地上波DMBのビデオおよびオーディオ信号を受信する。地上波DMBのビデオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介して、例えば、ナビゲーション(テレビ、ラジオ兼用)906に伝達し、ナビゲーション906の出力オーディオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してスピーカ907に伝達し、地上波DMB放送を視聴できるようにする。
【0060】
車両の天井に位置するアンテナ903は、例えば、GPSと衛星DMBを受信するために多数のマイクロストリップライン構造で形成し、多数のマイクロストリップライン構造のうち、受信のよいものをオン(on)にし、GPSと衛星DMBのビデオおよびオーディオ信号を受信する。受信したGPSと衛星DMBビデオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してナビゲーション906に伝達し、ナビゲーション906の出力オーディオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してスピーカ907に伝達し、GPSを利用したり、衛星DMB放送を視聴するようにする。
【0061】
車両の後部に位置するアンテナ904は、例えば、FMおよびAMラジオを受信するためにストリップライン構造で形成し、(放射構造が含まれている)金属ラインを介してFMおよびAM信号を受信し、受信したFMおよびAM信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してナビゲーション906に伝達し、ナビゲーション906の出力オーディオ信号を、マイクロストリップラインからなる伝送線路905を介してスピーカ907に伝達し、FMおよびAM放送を聴取するようにする。
【0062】
このような実施形態のほか、伝送線路905は、各種照明灯や窓コントローラ(controller)などのような各種電子機器の信号線として用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
110、210、310、410、510、610、710、810、901:圧延鋼板
120、220、320、420、520、620、720:塗装面
130、230、330、430、530、630、730、830:金属ライン
240、440、540:金属板材
441、541:ホール
811:通孔
820:誘電体
831、832:露出部位
902、903、904:アンテナ
905:伝送線路
906:ナビゲーション
907:スピーカ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板上に形成された誘電体と、
前記誘電体上に形成された導電ラインとを含むことを特徴とする
車両用伝送線路。
【請求項2】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板上に形成された誘電体と、
前記誘電体の内部に形成された導電ラインと、
前記誘電体上に形成された導電体とを含むことを特徴とする
車両用伝送線路。
【請求項3】
前記誘電体は、前記車体の塗装面で形成されていることを特徴とする
請求項1または2に記載の車両用伝送線路。
【請求項4】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板上に形成された誘電体と、
前記誘電体上に放射構造を含む形態で形成された導電ラインとを含むことを特徴とする
車両用アンテナ。
【請求項5】
前記誘電体は、前記車体の塗装面で形成されていることを特徴とする
請求項4に記載の車両用アンテナ。
【請求項6】
前記放射構造は、前記導電ラインのリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなることを特徴とする
請求項4に記載の車両用アンテナ。
【請求項7】
前記周期パターンは、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成していることを特徴とする
請求項6に記載の車両用アンテナ。
【請求項8】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項4に記載の車両用アンテナ。
【請求項9】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成し、前記導電ラインの他側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項4に記載の車両用アンテナ。
【請求項10】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板上に形成された誘電体と、
前記誘電体の内部に形成された導電ラインと、
前記誘電体上に形成された導電体とを含み、
前記導電ラインおよび前記導電体の少なくともいずれか1つは、放射構造を含む形態で形成されていることを特徴とする
車両用アンテナ。
【請求項11】
前記誘電体は、前記車体の塗装面で形成されていることを特徴とする
請求項10に記載の車両用アンテナ。
【請求項12】
前記放射構造は、前記導電ラインおよび前記導電体の少なくともいずれか1つのリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなることを特徴とする
請求項10に記載の車両用アンテナ。
【請求項13】
前記周期パターンは、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成していることを特徴とする
請求項12に記載の車両用アンテナ。
【請求項14】
前記周期パターンは、前記導電体に周期的な離隔距離でホールを形成していることを特徴とする
請求項12に記載の車両用アンテナ。
【請求項15】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項10に記載の車両用アンテナ。
【請求項16】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成し、前記導電ラインの他側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項10に記載の車両用アンテナ。
【請求項17】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板を貫通する通孔を介して前記車体の外部および内部に露出した導電ラインと、
前記外部の前記導電ラインと前記鋼板との間、および前記内部の前記導電ラインと前記鋼板との間に形成された誘電体とを含み、
前記導電ラインは、前記外部の露出部位と前記内部の露出部位に放射構造を含む形態で形成されていることを特徴とする
車両用アンテナ。
【請求項18】
前記放射構造は、前記導電ラインのリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなることを特徴とする
請求項17に記載の車両用アンテナ。
【請求項19】
前記周期パターンは、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成していることを特徴とする
請求項18に記載の車両用アンテナ。
【請求項20】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項17に記載の車両用アンテナ。
【請求項21】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成し、前記導電ラインの他側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項17に記載の車両用アンテナ。
【請求項1】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板上に形成された誘電体と、
前記誘電体上に形成された導電ラインとを含むことを特徴とする
車両用伝送線路。
【請求項2】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板上に形成された誘電体と、
前記誘電体の内部に形成された導電ラインと、
前記誘電体上に形成された導電体とを含むことを特徴とする
車両用伝送線路。
【請求項3】
前記誘電体は、前記車体の塗装面で形成されていることを特徴とする
請求項1または2に記載の車両用伝送線路。
【請求項4】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板上に形成された誘電体と、
前記誘電体上に放射構造を含む形態で形成された導電ラインとを含むことを特徴とする
車両用アンテナ。
【請求項5】
前記誘電体は、前記車体の塗装面で形成されていることを特徴とする
請求項4に記載の車両用アンテナ。
【請求項6】
前記放射構造は、前記導電ラインのリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなることを特徴とする
請求項4に記載の車両用アンテナ。
【請求項7】
前記周期パターンは、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成していることを特徴とする
請求項6に記載の車両用アンテナ。
【請求項8】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項4に記載の車両用アンテナ。
【請求項9】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成し、前記導電ラインの他側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項4に記載の車両用アンテナ。
【請求項10】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板上に形成された誘電体と、
前記誘電体の内部に形成された導電ラインと、
前記誘電体上に形成された導電体とを含み、
前記導電ラインおよび前記導電体の少なくともいずれか1つは、放射構造を含む形態で形成されていることを特徴とする
車両用アンテナ。
【請求項11】
前記誘電体は、前記車体の塗装面で形成されていることを特徴とする
請求項10に記載の車両用アンテナ。
【請求項12】
前記放射構造は、前記導電ラインおよび前記導電体の少なくともいずれか1つのリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなることを特徴とする
請求項10に記載の車両用アンテナ。
【請求項13】
前記周期パターンは、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成していることを特徴とする
請求項12に記載の車両用アンテナ。
【請求項14】
前記周期パターンは、前記導電体に周期的な離隔距離でホールを形成していることを特徴とする
請求項12に記載の車両用アンテナ。
【請求項15】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項10に記載の車両用アンテナ。
【請求項16】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成し、前記導電ラインの他側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項10に記載の車両用アンテナ。
【請求項17】
車両の車体を形成する鋼板と、
前記鋼板を貫通する通孔を介して前記車体の外部および内部に露出した導電ラインと、
前記外部の前記導電ラインと前記鋼板との間、および前記内部の前記導電ラインと前記鋼板との間に形成された誘電体とを含み、
前記導電ラインは、前記外部の露出部位と前記内部の露出部位に放射構造を含む形態で形成されていることを特徴とする
車両用アンテナ。
【請求項18】
前記放射構造は、前記導電ラインのリアクティブ要素が不連続に形成された周期パターンからなることを特徴とする
請求項17に記載の車両用アンテナ。
【請求項19】
前記周期パターンは、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成していることを特徴とする
請求項18に記載の車両用アンテナ。
【請求項20】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項17に記載の車両用アンテナ。
【請求項21】
前記放射構造は、前記導電ラインの一側面を凹凸状に形成し、前記導電ラインの他側面をテーパ状に形成していることを特徴とする
請求項17に記載の車両用アンテナ。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−509779(P2013−509779A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536659(P2012−536659)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007333
【国際公開番号】WO2011/052944
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(508355493)浦項工科大學校 産學協力團 (14)
【氏名又は名称原語表記】POSTECH ACADEMY−INDUSTRY FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】San 31,Hyoja−dong,Nam−gu,Pohang−si Gyeongsangbuk−do 790−784 Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007333
【国際公開番号】WO2011/052944
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(508355493)浦項工科大學校 産學協力團 (14)
【氏名又は名称原語表記】POSTECH ACADEMY−INDUSTRY FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】San 31,Hyoja−dong,Nam−gu,Pohang−si Gyeongsangbuk−do 790−784 Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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