説明

車両用傾き規制装置とその規制装置を備えた車両

【課題】 車両の横幅方向への傾きを規制して車両の横転を防止すること。
【解決手段】 車両の車体側に取り付けられる車体側ギヤと、前記車両の車軸側に取り付けられる車軸側ギヤを備え、前記車体側ギヤと車軸側ギヤは互いに昇降スライド可能に且つ相対的に接近・離間可能に配置され、前記両ギヤ又はいずれか一方のギヤは、車体が所定角度以上傾斜すると駆動体により相対的に接近駆動されて互いに噛み合って係止して、車体の傾斜を規制できるようにした。この車両用傾き規制装置を車両の進行方向左右両側に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は各種自動車、電車等の車両、特に、牽引車(トラクタ)に被牽引車(トレーラ)が連結されたセミトレーラのような連結車両におけるトレーラの横幅方向への傾きを規制するのに適する車両用傾き規制装置と、その規制装置を備えた車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型の貨物、大量の貨物、長尺貨物などの運搬には、トレーラをトラクタに連結した連結車両(以下「トレーラ連結車両」という。)が使用されている。トラクタとトレーラは、トレーラの下方に突出したキングピンをトラクタのカプラのスリットに挿入し、挿入後に当該部分をジョーでロックすることによって連結されている。このような連結構造は単にトレーラを連結するという意味では十分機能するものであるが、横幅方向や上下方向への動きには必ずしも十分対応できているとはいえない。例えば、トレーラ連結車両が走行方向左又は右に方向転換(旋回)する場合、トラクタに遅れて旋回を始めるトレーラには旋回する方向と反対向きの遠心力が働くためトレーラがその横幅方向に傾斜し、傾斜が大きくなると前記連結箇所よりも工法のトレーラが横転する事故がある。近年、トレーラ連結車両の横転事故が相次ぎ、社会問題の一つとなっている。
【0003】
このような状況下において、トレーラの横転事故を防止する方法や装置の発明が提案されており、その中の一つの発明として、ローラを用いて車体の傾きを防止する傾き防止装置がある(特許文献1)。この特許文献1記載の傾き防止装置は、車体に取り付けられた支持手段の両端側に昇降手段を介してローラが取り付けられたものであり、車体が傾いたときにローラを降下させ、そのローラを直接車輪に押し当てることによって車体の傾きを防止しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−341718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1記載の傾き防止装置には次のような難点があった。
(1)車体が傾いたときにローラをタイヤに接触させるものであるため、摩擦熱によりタイヤの耐用年数が極端に短くなる虞がある。また、タイヤの摩耗による二次的な事故を誘発する虞もある。
(2)タイヤに直接接触させるものであるため、タイヤの回転力によって傾き防止装置自体が破損する恐れがある。
【0006】
本願発明の課題は、前記難点を解消でき、トレーラ車両のみならず他の車両における車体の傾きを自動的に検知して規制することによって、車両の横転を防止できる車両用傾き規制装置とその規制装置を備えた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の車両用傾き規制装置の一つは、請求項1記載のように、車両の横幅方向への傾きを規制する車両用傾き規制装置において、前記車両の車体側に取り付けられる車体側ギヤと、前記車両の車軸側に取り付けられる車軸側ギヤを備え、前記車体側ギヤと車軸側ギヤは互いに昇降スライド可能に且つ相対的に接近・離間可能に配置され、前記両ギヤ又はいずれか一方のギヤは、車体が所定角度以上傾斜すると駆動体により相対的に接近駆動されて互いに噛み合って係止して、車体の傾斜を規制できるようにしたものである。
【0008】
本願発明の車両用傾き規制装置の他の一つは、請求項2記載のように、車両の横幅方向への傾きを規制する車両用傾き規制装置において、前記車両の車体側に取り付けられる車体側ギヤと、前記車両の車軸側に取り付けられる車軸側ギヤと、駆動体を備え、前記車体側ギヤと車軸側ギヤは互いに昇降スライド可能に且つ相対的に接近・離間可能に配置され、前記駆動体は車体が所定角度以上傾斜すると前記両ギヤ又はいずれか一方のギヤを相対的に接近駆動させて互いに係止して、車体の傾斜を規制できるようにしたものである。
【0009】
本願発明の車両用傾き規制装置の他の一つは、請求項3記載のように、車両の横幅方向への傾きを規制する車両用傾き規制装置において、前記車両の車体側に取り付けられる車体側ギヤと、前記車両の車軸側に取り付けられる車軸側ギヤと、駆動体と、車体の傾向きを検知する傾きセンサを備え、前記車体側ギヤと車軸側ギヤは互いに昇降スライド可能に且つ相対的に接近・離間可能に配置され、前記駆動体は車体が所定角度以上傾斜したことが前記傾きセンサで検知されると作動して、前記両ギヤ又はいずれか一方のギヤを相対的に接近駆動させて互いに係止して、車体の傾斜を規制できるようにしたものである。
【0010】
本願発明の車両用傾き規制装置を備えた車両は、請求項4記載のように、前記車両用傾き規制装置が搭載された車両において、前記車両用傾き規制装置の車体側ギヤが車両の車体側に取り付けられ、車軸側ギヤが車両の車軸側に取り付けられ、駆動体が前記車体側ギヤと車軸側ギヤの双方または何れか一方に連結され、傾きセンサは車両の車体側に連結され、前記傾きセンサにより車体が所定角度以上傾斜したことが検知されると、前記駆動体が作動して前記両ギヤ又はいずれか一方のギヤが相対的に接近駆動されて互いに係止して、車体の傾斜を規制できるようにしたものである。この場合、請求項5記載のように、車両用傾き規制装置を車両の進行方向左右に設け、左右の車両用傾き規制装置をギヤの上下の向きを逆向きにして取り付けることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の車両用傾き規制装置は次のような効果がある。
(1)車両側ギヤと車軸側ギヤがギヤの噛み合いで係止して、車体の傾きを規制するものであるため確実に傾きが規制でき、車両の横転事故を防止することができる。
(2)構造が簡潔で小型であるため車両空間への搭載、設置が容易であり、メンテナンスも容易である。
【0012】
本願発明の車両用傾き規制装置を装備した車両は次のような効果がある。
(1)車両走行中の車体の傾きが、傾きセンサで自動検知されると、車両側と車軸側のギヤが自動的に噛み合って傾きが規制されるので、走行中の車両の傾きを迅速に規制して車両の横転事故を防止することができる。
(2)ギヤの駆動に車両の油圧システム或いはエアシステムを利用できるため、駆動力の取り出しが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明の車両用傾き規制装置を備えた車両の一例を示す背面図。
【図2】(a)は本願発明の車両用傾き規制装置を備えた車両の平面図、(b)は側面図。
【図3】本願発明の車両用傾き規制装置の一例を示す分解図。
【図4】本願発明の車両用傾き規制装置の他例を示す分解図。
【図5】(a)は本願発明の車両用傾き規制装置を備えたトレーラ(車両)の一例を示す平面図、(b)は側面図。
【図6】本願発明の車両用傾き規制装置を備えた車両の他例を示す側面図。
【図7】本願発明の車両用傾き規制装置を備えた車両の空車時の状態を示すもので、(a)は背面図、(b)は傾きセンサ部分の一例を示す平面図。
【図8】(a)は図7(a)の車両用傾き規制装置の左側(車両左側)に装備した車両用傾き規制装置の断面図、(b)は図7(a)の車両用傾き規制装置の右側(車両右側)に装備した車両用傾き規制装置の断面図。
【図9】本願発明の車両用傾き規制装置を備えた車両の積載時の状態を示すもので、(a)は背面図、(b)は傾きセンサ部分を示す平面図。
【図10】(a)は図9(a)の車両用傾き規制装置の左側(車両左側)に装備した車両用傾き規制装置の断面図、(b)は図9(a)の車両用傾き規制装置の右側(車両右側)に装備した車両用傾き規制装置の断面図。
【図11】本願発明の車両用傾き規制装置を備えた車両の右カーブにより車体が左傾斜した状態を示すもので、(a)は背面図、(b)は傾きセンサ部分の平面図。
【図12】車両の右カーブにより車体が左傾斜した時の車両用傾き規制装置のギヤ係止状態の一例を示すものであり、(a)は図11(a)の車両右側の車両用傾き規制装置の断面図、(b)は図11(a)の車両左側の車両用傾き規制装置の断面図。
【図13】本願発明の車両用傾き規制装置を備えた車両の左カーブにより車両が右傾斜した状態を示すもので、(a)は背面図、(b)は傾きセンサ部分の平面図。
【図14】車両の左カーブにより車体が右傾斜した時の車両用傾き規制装置のギヤ係止状態の一例を示すものであり、(a)は図12(a)の車両右側に装備されている車両用傾き規制装置の断面図、(b)は車両左側に装備されている車両用傾き規制装置の示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(車両用傾き規制装置の実施形態1)
本願発明の車両用傾き規制装置の第1の実施形態について、図1〜図3を参照しながら説明する。この車両用傾き規制装置50はトレーラ、箱型トラック、ワンボックスカー、電車といった各種車両の車体の横幅方向(進行方向左右)への傾きを規制するものであり、車両の車体1(図1)側に取り付けられる車体側ギヤ2(図3)と、前記車両1の車軸3(図1)側に取り付けられる車軸側ギヤ4(図3)を備えている。
【0015】
前記車体側ギヤ2は車軸側ギヤ4に対して接近・離間可能に配置され、車体1が左右に所定角度以上傾斜すると、油圧システム、エアシステムといった駆動体(図示せず)により車軸側ギヤ4に接近させられて、両ギヤ2、4が噛み合って係止し、車体1の前記傾斜を規制する(それ以上傾斜しないようにする)ことができるようにしてある。
【0016】
前記車体側ギヤ2は図3に示すように二枚あり、箱型のケース5(図3)内に配置され、ケース5の外から差し込んだ止め軸6の先端部が固定され、止め軸6の外側突出部にスプリング7を被せて図8(a)、(b)のようにケース側壁に取り付けられ、スプリング7により通常はケース5の外側に引かれて側壁内面に接しており、止め軸6が油圧システムや空気システム等の駆動体でケース5の内側に押されると車軸側ギヤ4と噛み合うようにしてある。2枚の車体側ギヤ2はその左列ギヤ2aと右列ギヤ2bの向きが逆(一方が上向き、他方が下向き)になっている。
【0017】
前記車軸側ギヤ4はケース5内の幅方向中央部に縦向きに形成されている二本のガイドバー9に沿って上下にスライド可能に配置されている。この車軸側ギヤ4は一枚の細長肉厚板状の基盤の左面に左列ギヤ4aが、右面に右列ギヤ4bが形成され、基盤の両側面の中程にガイド溝11が形成され、そのガイド溝11が前記ガイドバー9に沿って上下にスライド可能としてある。この車軸側ギヤ4の左列ギヤ4aと右列ギヤ4bの向きも逆(一方が上向き、他方が下向き)になっている。この左右列のギヤ4a、4bの向きは対向する車体側ギヤ2の左右列のギヤ2a、2bの向きと逆にして、車体側ギヤ2が車軸側ギヤ4に接近すると互いの左右列のギヤ2aと4a、2bと4bが噛み合うようにしてある。
【0018】
車体側ギヤ2、車軸側ギヤ4の左右列ギヤ2a、2b、4a、4bの歯数を多くし、溝を深く(山の高さを高く)すれば噛み合いが確実になるが、枚数が多過ぎたり溝が深さ過ぎたりすると大型化するので、噛み合いが確実になり且つ傾き規制が確実にできる範囲で選定するのがよい。
【0019】
前記ケース5は縦長の箱型であり、上面12が閉塞され、下面13が開口され、上面12にはロッドエンド14の軸15が取り付けられている。前記車軸側ギヤ4の下端にもロッドエンド14の軸15が取り付けられている。前記両ロッドエンド14は同じものであり、軸15の先に回転部16が設けられており、この回転部16は固定リング17内に軸孔の周方向に回転可能な回転リング18が設けられ、回転リング18の内側に360度何れの方向にも回転自在な球形リング19が内装されている。
【0020】
前記車軸側ギヤ4を駆動する駆動体には車両1に搭載されている油圧システムやエアシステム或いは新規に搭載される油圧システムやエアシステムなどを使用することができる。駆動体の通路(図示せず)は図8(a)、(b)に示すように、ケース5の外側に設けた媒体ケース20に設けられている2本の媒体通路21の上流側と連通している。媒体通路21の末端側(下流側)は車体側ギヤ2の止め軸6が収容されているピン収容室22内に連通している。この連通構造とすることにより、駆動体から送られる高圧油や高圧空気(駆動媒体)は媒体通路21を通ってピン収容室22内に送られ、止め軸6をケース5の内側に押して車両側ギヤ2が車軸側ギヤ4とを噛み合わせて互いに係止させ、駆動体により媒体通路21内の駆動媒体が排出される(抜かれる)とピン収容室22内の駆動媒体も排出されて(抜かれて)止め軸6の押しが解除され、止め軸6がスプリング7により押し戻されて車両側ギヤ2と車軸側ギヤ4との噛み合いが解除されるようにしてある。駆動体は傾きセンサ30(図7(a)、(b))が車両の車体が左又は右に所定角度以上傾向いたことを検知すると作動するようにしてある。
【0021】
前記傾きセンサ30には電気式、光学式、メカ式といった各種方式のものを採用することができる。傾きセンサ30の一例として図7(b)に示すものは、回転ローラ31が引っ張りばね32で車体1に取り付けられ、回転ローラ31に車軸3側から上方に伸ばしたロープ33を巻回して回転ローラ31にテンションを与えておき、車体1に貨物を積載して車体が下がると、図9(b)のように回転ローラ31が車体1側に引かれて回転ローラ31にテンションが付与され、車両が右折(右カーブ)することによりその遠心力で、車体1が図11(a)のように左下がりに傾斜すると、前記回転ローラ6が右回転して回転子34が右に回転し、車両が左折(左カーブ)することによりその遠心力で、車体1が図13(a)のように右下がりに傾斜すると、前記回転ローラ31が左回転して回転子34が左に回転し、その左右への回転角度により車体1が左右いずれの方向にどの程度傾斜したかを検知できるようにしたものである。ロープ33は方向転換ローラ35を介して縦方向から横方向に方向転換し、方向転換ローラ35を介して前方に方向転換して回転ローラ31に掛けてある。
【0022】
(車両用傾き規制装置を備えた車両の実施形態)
本発明の車両用傾き規制装置を備えた車両の一例を図5、図6に示す。図5の車両はトレーラの場合であり、図6の車両は車体寸法が長い箱型とラックの場合である。いずれの場合も車両用傾き規制装置50を全ての車輪40の内側に取り付けてある。具体的には図1、図2(a)、(b)、図7(a)に示すように、車体側ギヤ2のロッドエンド14の回転部16が取り付け軸41により車体1の底面に取り付けられ、車軸側ギヤ4のロッドエンド14の回転部16が取り付け軸42で夫々の車輪40の内側の車軸3に取り付けられて、車体1が左又は右に傾くとそれに追随して夫々の方向に傾くことができるようにしてある。全ての車軸側ギヤ4の媒体ケース20には駆動体の供給路(図示しない)が連結されている。
【0023】
図7(a)に示す車体の左側の車両用傾き規制装置と右側の車両用傾き規制装置は同じ構造のものであるが、図8(a)、(b)に示すように車体側ギヤ2、車軸側ギヤ4の向きが逆向きになるように取り付けてある。具体的には図7(a)の左側の傾き規制装置は図8(a)のように車体側ギヤ2の左列ギヤ2aが右上がり、右列ギヤ2bが左下がり、車軸側ギヤ4の左列ギヤ4aが左下がり、右列ギヤ4bが右上がりになる向きにして取り付け、図7(a)の右側の車両用傾き規制装置は図8(b)のように車体側ギヤ2の左列ギヤ2aが右下がり、右列ギヤ2bが左上がり、車軸側ギヤ4の左列ギヤ4aが左上がり、右列ギヤ4bが右下がりになる向きにして取り付けてある。ギヤの向きをこのようにして取り付けることにより、図11(a)のように車体1が左傾斜したときも、図13(a)のように車体1が右傾斜したときも、車体側ギヤ2の左列ギヤ2aと車軸側ギヤ4の左列ギヤ4aの噛み合いが確実になりに、車体側ギヤ2の右列ギヤ2bと車軸側ギヤ4の右列ギヤ4bの噛み合いが確実になるようにしてある。
【0024】
(空車時と積載時)
本願発明の車両用傾き規制装置50を備えた車両は、荷台に荷物が積載されていないとき(空車時)は図7(a)のように車体が水平になっており、荷物が積載されるとその重みで車体が図9(a)のように下がるが、いずれの場合も車体1は水平になっている。前記空車時も積載時も車両の左右に取り付けられた車両用傾き規制装置50の車体側ギヤ2と車軸側ギヤ4のギヤは離れている(噛み合わない)。
【0025】
(車両の左傾き検知と規制)
車両が右カーブして車体1が図11(a)のように左に傾斜した時も、車両が左カーブして車体1が図13(a)のように右に傾斜した時も、夫々の傾きが車両に装備されている傾きセンサ30により検知される。この検知に基づいて前記駆動体(油圧回路、空圧回路等)が自動的に作動して媒体が媒体通路21に送られ、車両の左側に取り付けてある車両用傾き規制装置50と右側に取り付けてある車両用傾き規制装置50が同時に作動して、夫々の車両用傾き規制装置50の車体側ギヤ2と車軸側ギヤ4が互いに噛み合わされる。この噛み合いにより車体側ギヤ4がそれ以上は傾かず、車体1もそれ以上は傾かないように規制される。車両のカーブ終了により車体1が所定角度に戻ると、前記駆動体が自動的に作動して媒体が媒体通路21から抜かれ(排出され)て、前記車体側ギヤ2と車軸側ギヤ4の噛み合わせが解放(解除)される。この解放動作も全ての車体側ギヤ2について同時に行われる。これら車体側ギヤ2と車軸側ギヤ4の噛み合いの一例を以下に詳細に説明する。
【0026】
(車両右カーブ、車体左傾斜時の傾き規制)
車両が右カーブして車体1が左に傾斜し、その傾斜が傾きセンサ30で検知されると、車両の左側に取り付けてある車両用傾き規制装置50(図11(a))の媒体通路21(図12(a))に媒体が送られて、車両用傾き規制装置50の車体側ギヤ2の左列ギヤ2aが車軸側ギヤ4の左列ギヤ4aに押し付けられて両ギヤ2a、4aが互いに噛み合う。この噛み合い動作と同時に、車両の右側に取り付けてある傾き規制装置50の媒体通路21(図12(b))にも媒体が送られて、車体側ギヤ2の左列ギヤ2aが車軸側ギヤ4の左列ギヤ4aに押し付けられて両ギヤ2b、4bが互いに噛み合う。図12(a)、(b)の噛み合いにより、車体1の左傾斜(図11(a))がそれ以上傾斜しないように規制される。車両の右カーブが終了して車体1が左傾斜から戻ると前記駆動体が自動的に作動して、媒体が媒体通路21から抜かられ(排出され)、前記噛み合わせが解放(解除)されて噛み合い前の状態に戻る。この動作は全ての車体側ギヤについて同時に行われる。
【0027】
(車両左カーブ、車体右傾斜時の傾き規制)
車両が左カーブして車体1が右に傾斜し、その傾斜が傾きセンサ30で検知されると、車両の左側に取り付けてある車両用傾き規制装置50(図11(a))の媒体通路21(図14(a))に媒体が送られて、その車両用傾き規制装置50の車体側ギヤ2の右列ギヤ2bが車軸側ギヤ4の右列ギヤ4bに押し付けられて両ギヤ2b、4bが互いに噛み合う。この噛み合い動作と同時に、車両の右側に取り付けてある車両用傾き規制装置50の媒体通路21(図14(b))にも媒体が送られて、車体側ギヤ2の右列ギヤ2bが車軸側ギヤ4の右列ギヤ4bに押し付けられて両ギヤ2b、4bが互いに噛み合う。図14(a)、(b)の噛み合いにより、車体1の右傾斜(図13(a))がそれ以上傾斜しないように規制される。車両の左カーブが終了して車体1が右傾斜から戻ると前記駆動体が自動的に作動して、媒体が媒体通路21から抜かられ(排出され)、前記噛み合わせが解放(解除)されて、噛み合い前の状態に戻る。この動作は全ての車体側ギヤ2について同時に行われる。
【0028】
(車両用傾き規制装置の実施形態2)
本願発明の車両用傾き規制装置の第2の実施形態を図4に示す。この車両用傾き規制装置50も車体側ギヤ2と車軸側ギヤ4を備えており、車体側ギヤ2は箱型の小ケース60の内面に形成され、車体側ギヤ2は縦長箱状のケース61内の収容空間62内に左右にスライド自在に収容されている。車体側ギヤ2は一方が下向き、他方が上向き(互いに逆向き)に形成されている。
【0029】
車軸側ギヤ4は細長肉厚板状の基盤の両面に左列ギヤ4aと右列ギヤ4bが形成されている。この両ギヤ4a、4bも一方が下向き、他方が上向き(互いに向き)に形成されている。この場合、対向する車体側ギヤ2の向きと、車軸側ギヤ4向きは、両ギヤ2、4の接近時に互いに噛み合う向きにしてある。図4には図示していないが前記小ケース60の背面にも図8(a)、(b)の媒体ケース20と同じ構造の媒体ケースを設けて、それに駆動体の媒体通路21が連結され、駆動体による媒体通路21への媒体の供給、排出され、供給時には車体側ギヤ2が車軸側ギヤ4に接近して両ギヤ2、4が噛み合い、排出時に噛み合いが解除されるようにしてある。ケース61の天井面と車軸側ギヤ4の一端にロッドエンド14の軸15が取り付けられて、それらロッドエンド14の回転部16の夫々を、実施形態1の車両用傾き規制装置50と同様に(図8(a)、(b)のように)車体1側、車軸3側の夫々に取り付け軸で取り付けできるようにしてある。
【0030】
(傾き規制装置の車両への装備)
実施形態1、2では車軸側ギヤ4を車軸3に、車体側ギヤ2を車体1に取り付けてあるが、本願発明ではこれとは逆に、車軸側ギヤ4を車体1に、車体側ギヤ2を車軸3に取り付けることもできる。この場合は車体側ギヤ2、車軸側ギヤ4を上下逆向きにする。また、ギヤの噛み合いが確実になるようにギヤの向きを設定する。
【符号の説明】
【0031】
1 車体
2 車体側ギヤ
2a 車体側ギヤの左列ギヤ
2b 車体側ギヤの右列ギヤ
3 車軸
4 車軸側ギヤ
4a 車軸側ギヤの左列ギヤ
4b 車軸側ギヤの右列ギヤ
5 ケース
6 止め軸
7 スプリング
9 ガイドバー
11 ガイド溝
12 ケースの上面
13 ケースの下面
14 ロッドエンド
15 ロッドエンドの軸
16 ロッドエンドの回転部
17 固定リング
18 回転リング
19 球形リング
20 媒体ケース
21 媒体通路
22 ピン収容室
30 傾きセンサ
31 回転ローラ
32 引っ張りばね
33 ロープ
34 回転子
35 方向転換ローラ
40 車輪
41 取り付け軸
42 取り付け軸
50 車両用傾き規制装置
60 小ケース
61 ケース
62 収容空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の横幅方向への傾きを規制する車両用傾き規制装置において、前記車両の車体側に取り付けられる車体側ギヤと、前記車両の車軸側に取り付けられる車軸側ギヤを備え、前記車体側ギヤと車軸側ギヤは互いに昇降スライド可能に且つ相対的に接近・離間可能に配置され、前記両ギヤ又はいずれか一方のギヤは、車体が所定角度以上傾斜すると駆動体により相対的に接近駆動されて互いに噛み合って係止して、車体の傾斜を規制できるようにしたことを特徴とする車両用傾き規制装置。
【請求項2】
車両の横幅方向への傾きを規制する車両用傾き規制装置において、前記車両の車体側に取り付けられる車体側ギヤと、前記車両の車軸側に取り付けられる車軸側ギヤと、駆動体を備え、前記車体側ギヤと車軸側ギヤは互いに昇降スライド可能に且つ相対的に接近・離間可能に配置され、前記駆動体は車体が所定角度以上傾斜すると前記両ギヤ又はいずれか一方のギヤを相対的に接近駆動させて互いに係止して、車体の傾斜を規制できるようにしたことを特徴とする車両用傾き規制装置。
【請求項3】
車両の横幅方向への傾きを規制する車両用傾き規制装置において、前記車両の車体側に取り付けられる車体側ギヤと、前記車両の車軸側に取り付けられる車軸側ギヤと、駆動体と、車体の傾向きを検知する傾きセンサを備え、前記車体側ギヤと車軸側ギヤは互いに昇降スライド可能に且つ相対的に接近・離間可能に配置され、前記駆動体は車体が所定角度以上傾斜したことが前記傾きセンサで検知されると作動して、前記両ギヤ又はいずれか一方のギヤを相対的に接近駆動させて互いに係止して、車体の傾斜を規制できるようにしたことを特徴とする車両用傾き規制装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両用傾き規制装置が搭載された車両において、前記車両用傾き規制装置の車体側ギヤが車両の車体側に取り付けられ、車軸側ギヤが車両の車軸側に取り付けられ、駆動体が前記車体側ギヤと車軸側ギヤの双方または何れか一方に連結され、傾きセンサは車両の車体側に連結され、前記傾きセンサにより車体が所定角度以上傾斜したことが検知されると、前記駆動体が作動して前記両ギヤ又はいずれか一方のギヤが相対的に接近駆動されて互いに係止して、車体の傾斜を規制できるようにしたことを特徴とする車両用傾き規制装置を備えた車両。
【請求項5】
請求項4記載の車両用傾き規制装置を備えた車両において、車両用傾き規制装置が車両の進行方向左右に設けられ、左右の車両用傾き規制装置はギヤの上下の向きを逆向きにして取り付けられたことを特徴とする車両用傾き規制装置を備えた車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−111083(P2011−111083A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270838(P2009−270838)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(500201587)
【Fターム(参考)】