説明

車両用内装品

【課題】内装品として装着に適した外形形状を実現しつつ軽量化を達成するとともに、外観上の美観に優れた車両用内装品を提供する。
【解決手段】車両室内に露出するように配置される化粧材層と、該化粧材層が接着される表面層と、それぞれの底部が、該表面層の該化粧材層が接着される面と反対側の面に接着される複数の凹部を有する裏面層とを備えた積層構造体を有し、該複数の凹部の深さが、前記積層構造体の厚みを実質的に構成し、前記表面層と前記裏面層との間には、空間部が形成されており、前記空間部が前記積層構造体の外周壁により閉じられ、前記外周壁の外周面は、前記化粧材層の外周面と前記裏面層の外周面とにより構成され、前記化粧材層の外周面と前記裏面層の外周面とは、連続的に滑らかに連なることを特徴とする車両用内装品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装品に関し、より詳細には、内装品として装着に適した外形形状を実現しつつ軽量化を達成するとともに、外観上の美観に優れた車両用内装品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両用の内装品として、積層構造が用いられている。
車両用の内装品は、車室内の種々の車両パネルとして装着することにより、スペアタイヤカバー、フロアパネル、天井材等凹部をカバーしたり、蓋をしたりする用途、デッキボード、トノボード等仕切りとしての用途、インストルメントパネル等ケーシングとしての用途等多種の用途に用いられる。
【0003】
いずれの用途であれ、車両用の内装品は、外観上の美観が重視されるとともに、それぞれの用途に応じて、重量物が積載される場合には、圧縮あるいは曲げ強度が要求され、荷重が負荷されない用途の場合であっても、たとえば、車両が走行中に内装品に振動が伝達され、それにより内装品が波打つような変形が生じないように、内装品自身の外形を維持するに十分な強度が要求される。
特許文献1は、その一例を開示し、自動車のフロアパネル上に敷設する自動車用敷設内装材として、熱可塑性樹脂のハニカムコア基材と不織布とが一体成形により積層されたものを開示する。
この自動車用敷設内装材によれば、曲面を有する内装材を一体成形することが可能であるが、内装材の周端面に端面処理が施されておらず、特にハニカムコア基材のハニカム構造を形成する多数のリブがむき出しとされ、デザイン上の美観が重視される内装材として外観上の美観に劣る。
このような問題点を解決した例が、特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献2には、車両用や建築用の内装材や外装材に用いられる積層板が開示され、この積層板は、化粧材層と、化粧材層が接着される表面層と、表面層に部分的に接着される複数の凹部を有する裏面層とを有する。さらに、端面処理が施され、具体的には、積層板の周端部において、化粧材が表面層とともに裏面層側に向かって折り曲げられ、凹部を形成するリブの側面に融着されている。これにより、特許文献1とは異なり、折り曲げた化粧材により多数のリブを覆い隠し、外観上の美観を維持することが可能である。
しかしながら、この積層板によれば、端面処理を施すために、以下に示すような技術的問題点が引き起こされる。
【0005】
第1に、端面において化粧材が押し潰されて外観が劣化する点である。より詳細には、化粧材を表面層とともに裏面層側に向かって折り曲げるに場合に、所定の長さを有する熱刃を用いて、表面層に接着される複数の凹部の底面部を積層板の厚み方向に表面層および化粧材とともに切断する際、端面部において、表面層および裏面層のみならず、化粧材も含めて加熱圧縮され、溶かされて硬くつぶされる。それにより、外観を向上させるための化粧材の端面部は、局所的につぶされて平坦性を失うとともに、加熱により外観が劣化する。
【0006】
このような技術的問題点に関連して、特に積層板の外形形状を曲面状等立体形状とする場合あるいは積層板にヒンジ部を設ける場合、従来、熱プレスによって積層板を加熱圧縮していたため、ハニカムコア基材が熱プレスにより潰れ、積層板自体の厚みを維持することが困難となる。積層板を内装品として組み込む場合には、組み込まれる相手部材の表面との間に段差あるいは継ぎ目を生じてしまい、美観が損なわれる。
【0007】
第2に、複数の凹部に対して配置上の制約が生じるという問題点を引き起こす。より詳細には、所定の長さを有する熱刃を用いて、表面層に接着される複数の凹部の底面部を積層板の厚み方向に表面層および化粧材とともに切断する際、複数のリブを覆い隠すために表面層とともに化粧材を折り曲げる必要があり、その場合、熱刃により一度に切断される複数の凹部はいずれも、その底面部が切断されるようにほぼ直線状に整列配置される必要がある。
【0008】
このような内装材にとって、複数の凹部は、凹部を構成するリブにより、強度、特に積層板の圧縮強さを確保するのではなく、外形形状を保持するに十分な強度を有する限り、内装材として装着される相手部材、たとえば自動車のフロアパネル、ドアの内壁部等車体パネルの状況に応じて、必要とされる外形形状、特に積層板の厚みを確保するのに用いられる。
【0009】
この点、特許文献3には、自動車用成形天井が開示され、この自動車用成形天井は、基材と、外部に露出される表皮材とを一体に貼着した積層構造であり、特に基材に対し、表皮材が基材の端部からはみ出した延長部を一体に有し、この延長部を表皮材の保形力により基材の端部から車体側天井パネルに向かって上方に突出させるようにしており、それにより、端面処理を施すことなしに基材の端部が車内から見えないようにすることにより外観上の美観を保持することが可能である。
【0010】
しかしながら、この自動車用成形天井の基材は、特許文献1および特許文献2と異なり、中実の一枚板であり、中空部を有する場合に比べて重量が重く、車体側天井パネル側から垂下形態で装着されるに過ぎないため、外形保持に必要な限度で極力軽量化することが望ましい。特に、自動車向けの場合、化石燃料による二酸化炭素排出の低減の観点から、極力内装品を軽量化することが緊急課題とされている。
【特許文献1】特開平7−96791
【特許文献2】特開2001−18308
【特許文献3】特開平7−291049
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の技術的問題点にかんがみ、本発明の目的は、内装品として装着に適した外形形状を実現しつつ軽量化を達成するとともに、外観上の美観に優れた車両用内装品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するために、本発明の車両用内装品は、
車両室内に露出するように配置される化粧材層と、該化粧材層が接着される表面層と、それぞれの底部が、該表面層の該化粧材層が接着される面と反対側の面に接着される複数の凹部を有する裏面層とを備えた積層構造体を有し、
該複数の凹部の深さが、前記積層構造体の厚みを実質的に構成し、
前記表面層と前記裏面層との間には、空間部が形成されており、前記空間部が前記積層構造体の外周壁により閉じられ、
前記外周壁の外周面は、前記化粧材層の外周面と前記裏面層の外周面とにより構成され、前記化粧材層の外周面と前記裏面層の外周面とは、連続的に滑らかに連なる構成としている。
【0013】
以上の構成を有する車両用内装品によれば、化粧材層が接着される表面層と裏面層とを備えた積層構造体を化粧材が車両室内に露出するように配置する場合、それぞれの底部が、表面層の化粧材層が接着される面と反対側の面に接着される複数の凹部を裏面層に設け、車両用内装品が装着される相手部材の状況に応じて必要とされる外形形状、特に厚みを実現可能なように、配置上の制約なく複数の凹部を設けて、凹部を構成するリブの高さを適宜調整することにより、積層構造体としての必要な厚みを実質的に確保するとともに、複数の凹部を設けることにより軽量化を達成し、一方、表面層と裏面層との間に形成される空間部が、積層構造体の周端面において、裏面層の外周壁により閉じられ、外周壁の外周面は、化粧材層の外周面と裏面層の外周面とにより構成され、化粧材層の外周面と裏面層の外周面とは、連続的に滑らかに連なることから、端面処理の必要なしに、内装品の外観、特に周端部に継ぎ目、あるいは段部を生じることなくその美観を保持することが可能であり、総じて内装品として装着に適した外形形状を実現しつつ軽量化を達成するとともに、優れた外観上の美観を呈することが可能である。

さらに、前記化粧材層および前記表面層それぞれは、周縁部が一方の側に湾曲したへりを有し、
前記裏面層は、その周縁部が一方の側に湾曲したへりを有し、
前記化粧材層および前記表面層それぞれのへりの一方の側に向けられた端周面と、前記裏面層のへりの一方の側に向けられた端周面とを突き合わせることにより、前記外周壁の外周面が構成されるのがよい。
また、前記化粧材層および前記表面層それぞれは、周縁部が一方の側に湾曲したへりを有し、
前記裏面層は、その周縁部を含め平板状であり、
前記化粧材層および前記表面層それぞれのへりの一方の側に向けられた端周面と、前記裏面層の内表面とを突き合わせることにより、前記外周壁の外周面が構成されるのでもよい。
さらにまた、前記化粧材層および前記表面層それぞれは、その周縁部を含め平板状であり、
前記裏面相は、周縁部が一方の側に湾曲したヘリを有し、
前記表面層の内表面と、前記裏面層のへりの一方の側に向けられた端周面とを突き合わせることにより、前記外周壁の外周面が構成されるのでもよい。
【0014】
加えて、前記裏面層は、内表面側で突出するように内方に向かって先細の複数の凹部を外表面に有し、前記複数の凹部それぞれは、前記裏面層の内表面と前記表面層の内表面との間を延びるリブにより構成され、最先細部に突き合わせ平面部を有し、該突き合わせ平面部が前記表面層の内表面に接着され、前記空間部は、前記裏面層の内表面、前記表面層の内表面および前記リブの外表面により構成されるのでもよい。
さらに、前記複数の凹部それぞれは、前記裏面層の外表面に形成される開口が正六角形であり、開口から内方に向かって先細の角錐台形状を有するのでもよい。
さらにまた、前記複数の凹部それぞれは、前記裏面層の外表面において、隣り合う開口の対向する辺同士が平行となるようにハニカム状に配置されるのでもよい。
さらに、前記裏面層は、熱可塑性樹脂製であり、
前記空間部内には、隣接する凹部の間で前記裏面層の内表面から前記表面層に向かって延びる板状リブ片の折れ肉が形成されるのがよい。

【0015】
以上の構成の車両用内装品によれば、複数の凹部の配置を制約なく調整することにより、吹き込み成形を通じて、空間部内で、隣接する凹部の間で裏面層の内表面から表面層に向かって延びる折れ肉を敢えて形成することで、複数の凹部の前記裏面層の外表面に設けられる開口に近傍する付け根部がその分薄肉化され、それにより構造強度部材としての強度不足を引き起こすとしても、このような折れ肉により隣接する凹部同士を連絡する板状リブ片が構成されるので、軽量化を達成するとともに内装品としての必要な全体厚みを確保しつつ、内装品の外形保持に必要な限度の強度を内装品全体として一様に確保することが可能である。

加えて、前記折れ肉は、前記裏面層の内表面から前記表面層に向かって略V字断面を有し、前記折れ肉は、内装品の厚み方向に延び、その頂部は、前記表面層の内表面の手前で終端するのでもよい。
さらに、前記複数の凹部それぞれは、前記裏面層の外表面において、隣り合う開口の頂点同士が最近接となるように配置されるのでもよい。
さらにまた、前記折れ肉は、隣り合う開口の最近接となる頂点から前記表面層に向かって延びる前記リブの稜線を包含するように形成されるのがよい。
さらに、前記車両用内装品は、スペアタイヤカバー、フロアパネル、デッキボード、トノボード、ドアトリム、天井材、インストルメントパネルのいずれかであるのがよい。
また、前記複数の凹部は、前記裏面層の幅方向全体に亘って延びる凹溝を有し、該凹溝は、該凹溝の延びる方向をヒンジ軸とするヒンジ部を形成するのでもよい。
加えて、前記表面層および前記裏面層はそれぞれ、厚み1.5mm以下であり、内装品としての全体厚みが、15mm以下であるのがよい。
さらに、前記開口は、その面積が、3cm2以下であるのがよい。
さらにまた、前記表面層および前記裏面層は、それぞれの周端部が突き合わせ状に溶着一体化されているのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る車両用内装品の第1実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
本実施形態においては、自動車用のデッキボードの補助板に利用する場合を例として説明する。
図1ないし図3に示すように、車両用内装品100は、おもて面側表皮材シート120Aと裏面側表皮材シート120Bと、おもて面側表皮材シート120Aの外表面150に貼り合わされた化粧材シート140とから構成され、車両用内装品100は、化粧材シート140、おもて面側表皮材シート120A、および裏面側表皮材シート120Bの3層の積層構造である。なお、図1において、車両用内装品100の内部構造を明瞭に示すために、車両用内装品100の周端部まわりを省略して示している。
【0017】
おもて面側表皮材シート120Aおよび裏面側表皮材シート120Bそれぞれの厚み、および車両用内装品100としての全体厚みは、車両用内装品100の用途に応じて適宜定めればよいが、たとえば、自動車用のデッキボードに利用する場合、おもて面側表皮材シート120Aおよび裏面側表皮材シート120Bそれぞれの厚みは、1.5mm以下、好ましくは1.0mm以下、車両用内装品100としての全体厚みは、15mm以下、好ましくは10mm以下である。
【0018】
裏面側表皮材シート120Bは、それぞれの底部が、おもて面側表皮材シート120Aの化粧材シート140が接着される面(外表面)150と反対側の面である内表面170に接着される複数の凹部200を有し、複数の凹部200の深さが、積層構造板100の厚みを実質的に構成する。複数の凹部200それぞれは、裏面側表皮材シート120Bの内表面180とおもて面側表皮材シート120Aの内表面170との間を延びるリブ122により、内表面側で突出するように内方に向かって先細に構成され、複数の凹部200はそれぞれ、有底であり、最先細部に突き合わせ平面部240を有し、突き合わせ平面部240が面170に接着されるようにしている。
複数の凹部200の数は、車両用内装品100の用途により適宜設定すればよいが、数が多いほど軽量化が促進される半面、剛性が低下する。
【0019】
図1に示すように、複数の凹部200はそれぞれ、外表面220における開口260が正六角形の角錐台であり、外表面220上で開口260がハニカム状に配置されている。すなわち、外表面220上で、隣り合う開口260の対向する辺同士が平行となるように配置されている。これにより、外表面220に最も密に複数の凹部200を配置することが可能である。複数の凹部200それぞれの開口260の大きさ、凹部200の深さおよび隣り合う凹部200同士の間隔について、開口260の大きさが小さく、凹部200の深さが深く、隣合う凹部200同士の間隔が小さいほど、車両用内装品100全体としての軽量性を向上することが可能である。
【0020】
複数の凹部200のうち、1つの凹部200は、裏面側表皮材シート120Bの幅方向全体に亘って延びる凹溝(図示せず)を形成し、凹溝の延びる方向をヒンジ軸とするヒンジ部となし、後に説明するように、ヒンジ軸により分断された車両用内装品100の一方の部分を他方の部分に対してこのヒンジ軸を中心として回動可能としている。
変形例として、複数の凹部200は、外表面220において均等に分散配置させるのが好ましいが、その形状は、円錐形状、円錐台形状、円筒形状、角柱形状、角錐形状、半球形状など多種の形状から適宜選択すればよい。
【0021】
図4は、車両用内装品100の外周壁まわりを詳細に示す部分断面図である。図4に示すように、おもて面側表皮材シート120Aと裏面側表皮材シート120Bとの間には、裏面側表皮材シート120Bの内表面180、おもて面側表皮材シート120Aの内表面170およびリブ122の外表面により構成される密閉中空部280が形成されており、密閉中空部280が積層構造板100の周端面において、裏面側表皮材シート120Bの外周壁により閉じられている。
【0022】
図4(A)に示すように、化粧材シート14およびおもて面側表皮材シート120Aそれぞれは、周縁部が一方の側に湾曲したへり290を有し、裏面側表皮材シート120Bは、その周縁部が一方の側に湾曲したへり292を有し、化粧材シート14およびおもて面側表皮材シート120Aそれぞれのへり290の一方の側に向けられた端周面294と、裏面側表皮材シート120Bのへり292の一方の側に向けられた端周面296とを突き合わせることにより、外周壁の外周面が構成されている。これにより、外周壁の外周面は、化粧材シート14の外周面と裏面側表皮材シート120Bの外周面とにより構成されるところ、突き合わせ部には外周面上に周方向に延びる突き合わせラインPが形成されるが、化粧材シート14の外周面と裏面側表皮材シート120Bの外周面とは、連続的に滑らかに連なる構成としている。このような構成によれば、化粧材シート14の外周面と裏面側表皮材シート120Bの外周面との境目である突き合わせラインPに継ぎ目、あるいは段差なく、外観上の美観を維持することが可能である。
【0023】
変形例として、図4(B)に示すように、図4(A)と同様に、化粧材シート14およびおもて面側表皮材シート120Aそれぞれは、周縁部が一方の側に湾曲したへり290を有する一方、裏面側表皮材シート120Bは、その周縁部を含め平板状であり、化粧材シート14およびおもて面側表皮材シート120Aそれぞれのへり290の一方の側に向けられた端周面294と、裏面側表皮材シート120Bの内表面180とを突き合わせることにより、外周壁の外周面が構成されるのでもよい。
【0024】
さらなる変形例として、図4(C)に示すように、化粧材シート14およびおもて面側表皮材シート120Aそれぞれは、その周縁部を含め平板状であり、一方、裏面側表皮材シート120Bは、図4(A)と同様に、周縁部が一方の側に湾曲したへり292を有し、おもて面側表皮材シート120Aの内表面170と、裏面側表皮材シート120Bのへり292の一方の側に向けられた端周面296とを突き合わせることにより、外周壁の外周面が構成されるのでもよい。
特に、図4(B)によれば、化粧材14を車両室内に露出する形態で車両用内装品100を凹部に組み込むように装着する際、図4(A)および図4(C)に比べて、突き合わせラインPが奥まった位置に形成され、見えにくくなるので、外観上の美観の観点から有利である。
【0025】
おもて面側表皮材シート120Aおよび裏面側表皮材シート120Bの材料である熱可塑性樹脂シートPは、ポリプロピレン、エンジニアリングプラスチックス、オレフィン系樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、熱可塑性樹脂シートPは、溶融状態に押し出したシートがドローダウン、ネックインなど自重により引き伸ばされて部分的な薄肉が生じ、肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0026】
より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)の一種類又は二種類以上をブレンドして用い、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のものを用いる。またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分のものを用いる。さらに、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。
【0027】
また、熱可塑性樹脂シートPには衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴムおよびその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で、かつ1.0g/10分以上あるものがよい。
さらに、熱可塑性樹脂シートPには、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
【0028】
熱可塑性樹脂シートPの表面に化粧材シート140を設ける場合において、化粧材シート140とは、外観性向上、装飾性、成形品と接触する物(例えば、カーゴフロアボードの場合、ボード上面に載置される荷物など)の保護を目的として構成されるものである。化粧材シート140の材質は、繊維表皮材、シート状表皮材、フィルム状表皮材等が適用される。かかる繊維表皮材の素材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ビニロン等の合成繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、又はこれらのブレンド繊維が挙げられる。特に、表面層との接着性の観点から合成繊維からなるものであることが好ましい。
【0029】
これらの中でも、触感、耐久性及び成形性の観点から、ポリプロピレン又はポリエステルであることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。繊維表皮材に用いられる糸は、例えば、ポリエステル:(3〜5)デニール×(50〜100)mm等の繊度が3〜15デニール、繊維長さが2〜5インチ程度のステープルの紡績糸と、細い柔軟なフィラメントを束にしたポリエステル:約150〜1000デニール/30〜200フィラメント=約5デニール×30〜200本等のマルチフィラメント、又は、ポリエステル:400〜800デニール/1フィラメント等の太いモノ・フィラメントと、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0030】
化粧材シート140の組織としては、不織布、織物、編物、それらを起毛した布地等が挙げられる。なお、織物には、織組織が縦糸、横糸が順次上下に交絡する平組織のほか、何本かの糸を跳び越して交絡する種々の変化織も含まれる。これらの中でも、伸びに対する方向性がないため、立体形状に成形し易く、且つ表面層との接着性、表面の触感、風合いに優れることから、不織布であることが好ましい。ここで、不織布とは、繊維を平行に又は交互させて積上げるか又はランダムに散布してウエブを形成し、次いでウエブとなった繊維を接合してなる布状品を意味する。これらの中でも、成形品の立体形状再現性及び外観特性の観点から、ニードルパンチ法により製造された不織布であることが好ましい。また、ニードルパンチ法にて得られた不織布は、織物に比べて強度が小で伸度が大であり任意方向に対する変形度合いが大きいので、不織布としての強度を向上させると共に寸法の安定化を図るために、織布にバインダーを付着させる、又は、ウエブと不織布を重ね針でパンチさせておくことがより好ましい。これらのことから、化粧材シート140は、ポリプロピレン不織布又はポリエステル不織布であることがより好ましい。この場合、化粧材シート140自体が熱可塑性であるので、剥離回収後、加熱して変形させることによって、別の用途に用いることも可能である。例えば主体樹脂層をポリプロピレンにて構成し、化粧材シート140をポリプロピレン不織布で構成すると、成形品の主体樹脂層と化粧材シート140とが同じ素材であることから、リサイクルが容易になる。
【0031】
一方、化粧材シート140がポリエステル不織布であると、ポリプロピレンにて構成した主体樹脂層と繊維表皮材との融点が異なるので、成形品に化粧材シート140を接着する際、熱により変質、変形したり、正しい位置に接着できない等の不具合が生じるのを抑制できる。また、この場合、成形性、剛性、外観及び耐久性にも優れる。また、化粧材シート140の引張強度は、立体形状再現性及び成形性の観点から、15kg/cm
2以上であることが好ましく、伸度は、30%以上であることが好ましい。なお、かかる引張強度及び伸度の値は、温度20℃においてJIS−K−7113に準拠して測定したものである。シート状表皮材、フィルム状表皮材としては、熱可塑性エラストマ−、エンボス加工された樹脂層、印刷層が外面に付された樹脂層、合成皮革、滑り止め用メッシュ形状の表皮層等が使用できる。

以上の構成を有する車両用内装品100について、その作用を以下に説明する。
【0032】
図5は、車両用内装品100を自動車のデッキボード300に装着した状態を示し、図6は、このような用途の車両用内装品100の斜視図である。車両用内装品100は、クッションシート302とクッションシート302に対して傾動可能に設けられるバックシート304とからなるリアシート306とデッキボード300との間のデッドスペース308を上から覆うことにより目隠し板として利用される。
より具体的には、車両用内装品100は、凹溝により形成されるヒンジ軸を車両の幅方向に向けた状態で、リアシート306とデッキボード300との間に配置される。
【0033】
通常の場合は、車両用内装品100の固定部をデッキボード300の凹部312に、たとえば、ねじ止め等により固定した状態で、ヒンジ部314を介して可動部316を固定部310に対して回動させて、可動部316の先端をバックシート304の背面318にもたれかけ、バックシート304を前方に押し倒した場合には、可動部316がヒンジ部314を介して前方に回動して、バックシート304の背面318に設けた凹部320に載置する。これにより、車両用内装品100の化粧材シート14が車両室内から露出するように配置された状態で、デッドスペース308の目隠し板として機能しつつ、バックシート304の背面318、車両用内装品100の化粧材シート14の外表面およびデッキボード300の上面は、面一となり、そこに車両の前後方向に長尺品、たとえばスキー用具を搭載することが可能となる。
【0034】
このとき、凹部の深さを適宜に調整することにより、化粧材シート14の外表面とデッキボード300の上面あるいはバックシート304の背面318との間に段差を生じることなく、車両用内装品100をデッキボード300の凹部312およびバックシート304の凹部320に装着可能であるとともに、化粧材シート14の外表面に搭載する荷物の重量により撓むことなく、あるいは車両の走行時の振動により変形することなく、強度を保持することが可能である。
このような車両用内装品100は、いわゆる一体成形により成形してもよいし、別々に成形してもよい。
【0035】
前者の場合、2つの分割形式の金型の間に位置決めした溶融状態の熱可塑性樹脂シートPを2つの分割形式の金型を型締することにより成形してもよい。より具体的には、一方の金型が他方の金型に向かって突起する複数の突起体をキャビティに設けた分割形式の一対の金型を設ける段階と、一方が裏面側表皮材シート120の材料であり、他方がおもて面側表皮材シート120Aの材料である2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを互いに所定間隔を隔てて、環状に配置された融着部形成部のまわりにはみ出す形態で、分割形式の一対の金型の間に位置決めする段階と、裏面側表皮材シート120の材料である一方のシートと、一方のシートの外表面に対向する一方の金型のキャビティとの間に密閉空間を形成する段階と、一方の金型の側から密閉空間を吸引して、一方の金型のキャビティに対して一方のシートの外表面を押し当てることにより、一方のシートを賦形して、凹部を形成する段階と、一対の金型を型締めして、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの周縁同士を、および一方のシートに形成された凹部の頂部を他方のシートの内表面に、それぞれ溶着する段階と、を有するのがよい。この場合、化粧材シート14は、おもて面表皮材シート120Aの材料である熱可塑性樹脂製シートに対向する他方の金型に、たとえば吸引形式で予め保持させておけばよい。
これにより、一対の金型を型締めすることにより、周縁部に環状に配置された融着部により外周壁が形成されて、端面処理を施すことなしに、周縁部の美観を損なうことなく、内部に空間部を有する車両用内装品を製造することが可能である。
【0036】
このような成形方法によれば、車両用内装品100の用途に応じて、おもて面側表皮材シート120Aと裏面側表皮材シート120Bと間の所望の位置に密閉中空部280を有するとともに所望の表面形状(平坦または曲面)を呈するように形成する一方、おもて面側表皮材シート120Aと裏面側表皮材シート120Bとを溶着し、車両用内装品100の用途に応じた外形あるいは表面形状および内部構造を所望に実現可能な車両用内装品100を提供することが可能である。特に、おもて面側表皮材シート120Aおよび裏面側表皮材シート120B同士の周縁面が互いに溶着することにより、融着ラインが形成され、それにより密閉中空部280が形成される。
【0037】
特に、一次成形と二次成形とを利用して成形してもよい。すなわち、裏面側表皮材シート120の材料である溶融状態の熱可塑性樹脂製シート、およびおもて面側表皮材シート120Aの材料である溶融状態の熱可塑性樹脂製シートをそれぞれ、押し出し成形により押し出して、溶融状態のまま一対の分割金型の間に配置してもよい。このような方法によれば、一次成形において溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、シート状の車両用内装品100を次々に成形することが可能であり、押出成形(一次成形)により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態の熱可塑性樹脂シートPとして押し出し、真空成形(二次成形)により押し出された熱可塑性樹脂シートPを分割金型を用いて一体成形することが可能である。
それに対して、後者の場合、おもて面側表皮材シート120A、裏面側表皮材シート120Bおよび化粧材シート14それぞれを個別に、たとえば押し出し成形、射出成形等により成形し、個別に成形されたこれらのシートをたとえば接着剤により接着したりあるいは振動溶着により完成してもよい。
【0038】
以上の構成を有する車両用内装品によれば、化粧材層が接着されるおもて面側表皮材シート120Aと裏面側表皮材シート120Bとを備えた積層構造体を化粧材が車両室内に露出するように配置する場合、それぞれの底部が、おもて面側表皮材シート120Aの化粧材層が接着される面と反対側の面に接着される複数の凹部200を裏面側表皮材シート120Bに設け、車両用内装品が装着される相手部材の状況に応じて必要とされる外形形状、特に厚みを実現可能なように、配置上の制約なく複数の凹部200を設けて、凹部を構成するリブの高さを適宜調整することにより、積層構造体としての必要な厚みを実質的に確保するとともに、複数の凹部200を設けることにより軽量化を達成し、一方、おもて面側表皮材シート120Aと裏面側表皮材シート120Bとの間に形成される空間部が、積層構造体の周端面において、裏面側表皮材シート120Bの外周壁により閉じられ、外周壁の外周面は、化粧材シート14の外周面と裏面側表皮材シート120Bの外周面とにより構成され、化粧材シート14の外周面と裏面側表皮材シート120Bの外周面とは、連続的に滑らかに連なることから、端面処理の必要なしに、内装品の外観、特に周端部の美観を保持することが可能であり、総じて内装品として装着に適した外形形状を実現しつつ軽量化を達成するとともに、優れた外観上の美観を呈することが可能である。

以下に、本発明の第2実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素には、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では本実施形態の特徴について詳細に説明する。
【0039】
本実施形態の特徴は、第1実施形態と異なり、凹部200の配置を工夫することにより、おもて面側表皮材シート120Aと裏面側表皮材シート120Bとの間に形成される空間部内で、隣り合う凹部200の間に板状リブ片のいわゆる折れ肉を形成し、この折れ肉を利用して、内装品の長手方向のたわみ剛性を向上させた点にある。
複数の凹部200は、密閉中空部280内で、隣接する凹部200の間で裏面側表皮材シート120Bの内表面180からおもて面側表皮材シート120Aに向かって延びる板状リブ片の折れ肉124を形成するに必要な間隔を隔てて配置される。
【0040】
より具体的には、図7に示すように、第1実施形態の図1においては、複数の凹部200はハニカム状に配置されていたところ、複数の凹部200は、裏面側表皮材シート120Bの外表面において、隣り合う開口260の頂点同士が最近接となるように配置されている。より詳細には、たとえば、図1においては、隣り合う正六角形の開口において、対向する辺同士が平行となるように配置され、その辺同士の間隔が隣り合う開口の間隔を構成するのに対して、図7においては、隣り合う正六角形の開口において、それぞれの開口中心を結ぶ線上にそれぞれの開口の正六角形の一つの頂点が配置されることから、これらの頂点同士の間隔が隣合う開口の間隔を構成する。
このような開口の配置を実現する場合、車両用内装品100を真空成形により成形することにより、以下に示すように、隣合う凹部200の間(より正確には、隣り合う凹部200それぞれを構成するリブ122の外表面同士の間)でいわゆる折れ肉が形成される。
【0041】
すなわち、折れ肉を形成する場合には、第1実施形態で説明したように、分割金型を利用した真空成形により車両用内装品を成形すればよく、分割金型を型締することにより形成される密閉空間内を一方の金型側から吸引することにより、熱可塑性樹脂製シートをキャビティに向かって押し付けることにより、賦形し、その際、複数の突起体が近接する位置においてキャビティ上で隣り合う突起体の付け根部にまで樹脂が伸びきれないことを利用して、板状のリブを構成する折れ肉を形成すればよい。
【0042】
より詳細には、このような折れ肉124は、真空成形あるいは吹き込み成形を問わず、裏面側表皮材シート120Bの材料である熱可塑性樹脂製シートを金型のキャビティに設けた突起体に押し付けることにより、裏面側表皮材シート120Bの外表面に複数の凹部200を形成することにより起因して発生する。より詳細には、複数の凹部200に対応してキャビティに設ける複数の突起体において、隣り合う突起体同士の間隔が狭い部分は、それ以外の部分に比べて、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートが賦形により伸ばされておもて面側表皮材シート120Aまで到達するのが困難となることから、隣り合う突起体を連絡する直線状の延びる板状のシワが形成される。
図8および図9に示すように、折れ肉124は、裏面側表皮材シート120Bの内表面180からおもて面側表皮材シート120Aに向かって略V字断面を有し、折れ肉124は、車両用内装品100の厚み方向に延び、その頂部125は、おもて面側表皮材シート120Aの内表面の手前で終端する。
以上より、所望の折れ肉124を形成するためには、隣り合う突起体同士の間隔が重要であり、図7に示すように、複数の凹部200を配置させた場合には、折れ肉は、隣り合う開口260の最近接となる頂点からおもて面側表皮材シート120Aに向かって延びるリブ122の稜線を包含するように形成される。
この点、図1に示すように、複数の凹部200をハニカム状に配置した場合には、図7に示すような隣り合う開口同士で局所的に間隔の狭い部分が形成されないので、このような折れ肉は形成されにくい。
【0043】
また、特に、裏面側表皮材シート120Bの材料である熱可塑性樹脂製シートを一次成形により鉛直下方に押し出して、分割金型の間に配置する場合、隣り合う凹部200間の間隔は一定であるにも係わらず、図8に示すように、図7のD1方向(押し出し方向)に隣り合う凹部200の間には折れ肉124が形成され、一方、図10に示すように、図7のD2方向あるいはD3方向に隣り合う凹部200の間には折れ肉が形成されていない。これは、溶融状態の熱可塑性樹脂シートに作用する重力の関係で、鉛直方向の方が水平方向より折れ肉が形成されやすいものと推測される。
この性質を利用すれば、通常押し出し方向を長辺とする矩形形状の車両用内装品は、押し出し方向のたわみ剛性が不足することから、押し出し方向に沿って折れ肉を形成することにより、押し出し方向のたわみ剛性を補強することが可能となる。
【0044】
このように、複数の凹部200の配置を制約なく調整することにより、真空成形を通じて、密閉中空部280内で、隣接する凹部200の間で裏面側表皮材シート120Bの内表面180からおもて面側表皮材シート120Aに向かって延びる折れ肉124を敢えて形成することで、複数の凹部200の裏面側表皮材シート120Bの外表面220に設けられる開口260に近傍する付け根部がその分薄肉化され、それにより構造強度部材としての強度不足を引き起こすとしても、このような折れ肉124により隣接する凹部200同士を連絡する板状リブ片が構成されるので、軽量化を達成するとともに車両用内装品100としての必要な全体厚みを確保しつつ、内装品の外形保持に必要な限度の強度を内装品全体として一様に確保することが可能である。
また、隣合う凹部200同士の間隔を調整することにより、所望の厚さD,高さHの折れ肉124(図9参照)を設けることにより、特に車両用内装品100の厚み方向の曲げ剛性を確保したり、折れ肉124の車両用内装品100上での分布を調整することにより、局所的に剛性を調整することも可能である。
【0045】
なお、このような折れ肉は、図7に示すように、裏面側表皮材シート120Bの外表面220上に、折れ肉形成に伴い隣り合う凹部220同士の間を結ぶ線状痕Lが生じ、この線状痕Lが裏面側表皮材シート120Bの外表面220の美観を損なうものとして、従来折れ肉の発生は好ましくないものとして扱われてきたが、本発明に係る内装品の場合には、おもて面側表皮材シート120Aの外表面150に貼着される化粧材シート14は、車両室内から視認され、外観上の美観が重視されるが、裏面側表皮材シート120Bの外表面220は、内装品が装着されることにより車両室内からは見えないことになるため、このような線状痕Lの発生は外観上問題とならず、折れ肉を剛性向上に利用し、特に矩形形状の内装品の長手方向に折れ肉を形成することにより、長手方向のたわみ剛性が短方向のそれよりも劣る点を補強することが可能となる。

【0046】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば種々の修正あるいは変更が可能である。たとえば、第1実施形態においては、自動車向けの内装品として説明したが、それに限定されることなく、鉄道車両、飛行機、船舶等一般車両のみならず、遊園地の乗り物等の特殊車両に対しても適用可能であり、特に特殊車両の場合には、幼児向けに色彩も含めた外観上の美観が重視されることから、樹脂製内装品が適している。
また、第1実施形態においては、平板状の内装品として説明したが、それに限定されることなく、たとえば天井材、インストルメントパネル等立体形状を有する用途にも適用可能であり、その場合、軽量化を達成するとともに外形形状を保持できる剛性を維持しつつ、必要な厚みを確保することが可能である。
さらに、第2実施形態においては、折れ肉を一方向にのみ形成する場合を説明したが、それに限定されることなく、複数の凹部の配置を調整することにより、押し出し方向のみならず、隣り合う凹部同士にもれなく折れ肉を形成し、内装品全体として一様にたわみ剛性を補強してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用内装品の部分斜視図である。
【図2】図1の線A−Aに沿う車両用内装品の断面図である。
【図3】図1の線B−Bに沿う車両用内装品の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る車両用内装品の周端部まわりを示す部分断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る車両用内装品が装着された状態を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る車両用内装品の全体斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る図1と同様な図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る図3と同様な図である。
【図9】図8の線C−Cに沿う折れ肉の断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る図2と同様な図である。
【符号の説明】
【0048】
P 突き合わせライン
100 車両用内装品
120 表皮材シート
122 リブ
124 折れ肉
125 頂部
140 化粧材シート
150 外表面
170 内表面
180 内表面
200 凹部
220 外表面
240 突き合わせ平面部
260 開口
280 密閉中空部
300 デッキボード
302 クッションシート
304 バックシート
306 リアシート
308 デッドスペース
310 固定部
312 凹部
314 ヒンジ部
316 可動部
318 背面
320 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内に露出するように配置される化粧材層と、該化粧材層が接着される表面層と、それぞれの底部が、該表面層の該化粧材層が接着される面と反対側の面に接着される複数の凹部を有する裏面層とを備えた積層構造体を有し、
該複数の凹部の深さが、前記積層構造体の厚みを実質的に構成し、
前記表面層と前記裏面層との間には、空間部が形成されており、前記空間部が前記積層構造体の外周壁により閉じられ、
前記外周壁は、前記化粧材層の外周面と前記裏面層の外周面とにより構成され、前記化粧材層の外周面と前記裏面層の外周面とは、連続的に滑らかに連なることを特徴とする車両用内装品。
【請求項2】
前記化粧材層および前記表面層それぞれは、周縁部が一方の側に湾曲したへりを有し、
前記裏面層は、その周縁部が一方の側に湾曲したへりを有し、
前記化粧材層および前記表面層それぞれのへりの一方の側に向けられた端周面と、前記裏面層のへりの一方の側に向けられた端周面とを突き合わせることにより、前記外周壁の外周面が構成される、請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項3】
前記化粧材層および前記表面層それぞれは、周縁部が一方の側に湾曲したへりを有し、
前記裏面層は、その周縁部を含め平板状であり、
前記化粧材層および前記表面層それぞれのへりの一方の側に向けられた端周面と、前記裏面層の内表面とを突き合わせることにより、前記外周壁の外周面が構成される、請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項4】
前記化粧材層および前記表面層それぞれは、その周縁部を含め平板状であり、
前記裏面層は、周縁部が一方の側に湾曲したへりを有し、
前記表面層の内表面と、前記裏面層のへりの一方の側に向けられた端周面とを突き合わせることにより、前記外周壁の外周面が構成される、請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項5】
前記裏面層は、内表面側で突出するように内方に向かって先細の複数の凹部を外表面に有し、前記複数の凹部それぞれは、前記裏面層の内表面と前記表面層の内表面との間を延びるリブにより構成され、最先細部に突き合わせ平面部を有し、該突き合わせ平面部が前記表面層の内表面に接着され、前記空間部は、前記裏面層の内表面、前記表面層の内表面および前記リブの外表面により構成される、請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項6】
前記複数の凹部それぞれは、前記裏面層の外表面に形成される開口が正六角形であり、開口から内方に向かって先細の角錐台形状を有する、請求項5に記載の車両用内装品。
【請求項7】
前記複数の凹部それぞれは、前記裏面層の外表面において、隣り合う開口の対向する辺同士が平行となるようにハニカム状に配置される、請求項6に記載の車両用内装品。
【請求項8】
前記裏面層は、熱可塑性樹脂製であり、
前記空間部内には、隣接する凹部の間で前記裏面層の内表面から前記表面層に向かって延びる板状リブ片の折れ肉が形成される、請求項6に記載の車両用内装品。
【請求項9】
前記折れ肉は、前記裏面層の内表面から前記表面層に向かって略V字断面を有し、前記折れ肉は、内装品の厚み方向に延び、その頂部は、前記表面層の内表面の手前で終端する、請求項8に記載の車両用内装品。
【請求項10】
前記複数の凹部それぞれは、前記裏面層の外表面において、隣り合う開口の頂点同士が最近接となるように配置される、請求項8または請求項9に記載の車両用内装品。
【請求項11】
前記折れ肉は、隣り合う開口の最近接となる頂点から前記表面層に向かって延びる前記リブの稜線を包含するように形成される、請求項10に記載の車両用内装品。
【請求項12】
前記車両用内装品は、スペアタイヤカバー、フロアパネル、デッキボード、トノボード、ドアトリム、天井材、インストルメントパネルのいずれかである、請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項13】
前記複数の凹部は、前記裏面層の幅方向全体に亘って延びる凹溝を有し、該凹溝は、該凹溝の延びる方向をヒンジ軸とするヒンジ部を形成する、請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項14】
前記表面層および前記裏面層はそれぞれ、厚み1.5mm以下であり、内装品としての全体厚みが、15mm以下である、請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項15】
前記開口は、その面積が、3cm2以下である、請求項14に記載の車両用内装品。
【請求項16】
前記表面層および前記裏面層は、それぞれの周端部が突き合わせ状に溶着一体化されている、請求項1に記載の車両用内装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−136664(P2011−136664A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299038(P2009−299038)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】