説明

車両用内装部品の製造方法および装置

【課題】 本発明は、均一で美麗なシボ模様などを保持した状態で表皮を貼着することが可能な車両用内装部品の製造方法および装置を提供する。
【解決手段】 凸面を有する形状に成形された樹脂芯材に表皮を貼着する車両用内装部品の製造方法であって、樹脂芯材を真空成形型に装着する芯材装着工程と、 表皮を複数の表皮把持部を有する表皮枠に装着する表皮装着工程と、表皮枠に装着された表皮を加熱する表皮加熱工程と、表皮加熱工程で加熱された表皮を、真空成形型に装着された樹脂芯材に貼着する表皮貼着工程と、を備え、表皮貼着工程は、複数の表皮把持部の一部を所定の方向に移動させて、表皮枠に装着された表皮を弛ませ、樹脂芯材の凸面の肩部を、弛ませた表皮に先当たりさせることを特徴とする車両用内装部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形された芯材の表面にシート状の表皮材を貼着する車両用内装部品の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内に装着されて使用される内装部品の多くは、合成樹脂製の芯材に、装飾性を有する表皮を貼着して構成されている。一方、工業製品としての市場価値を高めるために、居住空間としての快適性のある車室を創り出し、自動車を使用する者に満足感を提供することが重要となっている。このために、表皮をムラなく均一に貼着し、車両用内装部品の美観を向上させることができる製造技術が望まれている。
【0003】
図8は、芯材に表皮を貼着する真空成形法を模式的に示す説明図である。図中に示すように、真空成形法は、成形型(図示しない)に樹脂芯材2を装着し、上方に配置された表皮材3に向けて樹脂芯材2を載せた支持筐体4を上昇させるか、または、表皮枠5に保持されたシート状の表皮材3を下降させて、樹脂芯材2に覆い被せるように貼り付ける方法である。この際、支持筐体4の内部に配置された真空ポンプによって成形型の内部が減圧され、成形型の吸引孔および樹脂芯材2の全面に設けられた多数の小孔を通して表皮材3が吸着されることにより、エア溜まりを発生させることなく表皮材3が樹脂芯材2の表面に密着して貼着を完了する。
【0004】
また、上記の真空成形法においては、芯材の形状に沿って表皮を密着させるために、予め表皮を加熱して軟化させる方法が用いられる。この際、加熱軟化された表皮が自重で垂れ下がり、樹脂芯材の貼着面にムラや皺が生じる問題があった。特許文献1には、表皮の加熱工程において、表皮の前後を把持するクランパの間隔を広げて自重による垂れ下がりを防止する技術が記載されている。さらに、特許文献2には、加熱工程および真空成形工程の2度に渡り、表皮をストレッチしてドローイングを防ぐ真空成形方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−279685号公報
【特許文献2】特開平7−40431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の真空成形法では、ムラや皺を生じさせるドローイングの他に、表皮材を型面に沿わせて貼着する過程において、樹脂芯材の形状に対応して表皮の伸びが不可避的に生じるという問題があった。その伸び率は、芯材の形状の起伏の違いに起因して部分的に異なるので、表皮材に装飾模様が形成されているような場合には、その模様が変形して部分毎に異なる外観を生じることになる。特に、表皮の表面に微細な凹凸で表現される所謂シボ模様の場合には、その影響が顕著に表れ、凹凸が部分的に浅くなって模様にムラが生じたり、条件によっては模様が消滅するという不具合が生じる場合があった。
【0007】
図9(a)、(b)は、従来の真空成形法を説明するための模式図である。図9(a)に示すように、真空成形装置40の支持筐体41が駆動シリンダ45によって上昇させられると、成形型42に装着された樹脂芯材2の肩部Sから平坦部Fにかけての領域において表皮材3に当接し、貼着が開始される。この際、成形型42の内部空間43は、真空ポンプ44で排気されて減圧状態となっているので、表皮材3の当接された領域は樹脂芯材2に吸着されて密着する。さらに、図9(b)に示すように、支持筐体41が上昇するにつれて、肩部Sから平坦部Fの領域の周辺へ、樹脂芯材2の形状に沿って表皮3が貼り付けられてゆく。この時、樹脂芯材2の肩部S周辺の段差の大きな部分においては、図中の矢印Wで示すように、樹脂芯材2に接する前の表皮3が張力を受けて引き伸ばされ、大きな伸び率が生じてしまうことになる。このため、肩部SからWで示す領域において、シボ模様がムラになり、また、消滅するという不具合が生じる場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、均一で美麗なシボ模様などを保持した状態で表皮を貼着することが可能な車両用内装部品の製造方法および装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用内装部品の製造方法は、凸面を有する形状に成形された芯材に表皮を貼着する車両用内装部品の製造方法であって、芯材を真空成形型に装着する芯材装着工程と、複数の表皮把持部を有する表皮枠に表皮を装着する表皮装着工程と、表皮枠に装着された表皮を加熱する表皮加熱工程と、表皮加熱工程で加熱された表皮を、真空成形型に装着された芯材に貼着する表皮貼着工程と、を備え、表皮貼着工程は、複数の表皮把持部の一部を所定の方向に移動させて、表皮枠に装着された表皮を弛ませ、芯材の凸面の肩部を、弛ませた表皮に先当たりさせることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る製造方法では、意図的に弛ませた表皮に凸面肩部を先当たりさせることにより、芯材表面の起伏の大きな部分において最初に表皮を貼着させる。すなわち、表皮の伸び率が大きくなり易い部分において、張力をかけずに表皮を貼着して、表皮の伸びを抑制する。これにより、表皮に形成された模様を保持した状態で、大きな起伏を有する芯材に表皮を貼着することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は、凸面を有する形状に成形され、真空成形型に装着された芯材に表皮を貼着する車両用内装部品の製造装置であって、表皮を拡張可能に把持する複数の表皮把持部を有する表皮枠と、真空成形型に装着された芯材の凸面の肩部に沿った方向に、表皮の弛み部分を生じさせるように、複数の表皮把持部の一部を移動させることができる表皮枠構造と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る製造装置によれば、貼着後の表皮の伸びを抑制したい部分に、意図的に弛みを形成した状態で、芯材表面に表皮の貼着を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、均一で美麗なシボ模様などを保持した状態で表皮を貼着することが可能な車両用内装部品の製造方法および装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る真空成形装置のA−A断面を示す模式図である。
【図2】本発明に係る表皮枠に表皮を保持した状態を示す模式図である。
【図3】本発明に係る表皮を加熱軟化する工程を示す模式図である。
【図4】本発明に係る表皮枠の機能を示す模式図である。
【図5】本発明に係る表皮の貼着方法を示す模式図である。
【図6】本発明に係る表皮枠の構成を示す模式図である。
【図7】本発明に係る表皮枠の構成を示す模式図である。
【図8】芯材に表皮を貼着する真空成形法を模式的に示す説明図である。
【図9】従来技術に係る表皮の貼着方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。最初に、図1ないし図5を参照して、本発明に係る車両用内装部品の製造方法を説明する。次に、図6および図7を参照して、本発明に係る車両用内装部品の製造装置を説明する。本実施態様に係る車両用内装部材は、例えば、車両のドアパネルに装着されるドアトリムであって、凸面を有する形状に成形された樹脂芯材に表皮を貼着するものである。
≪芯材装着工程≫
【0016】
図1は、本発明に係る真空成形装置のA−A断面(図8参照)を示す模式図である。油圧シリンダ21によって昇降するベースプレート31上に、2つの真空成形型17aおよび17bを支持する筐体12aおよび12bが設置されている。筐体12aおよび12bの内部には、それぞれ真空ポンプ16が配置されており、真空成形型17aおよび17bのそれぞれの内部空間18を真空引きして減圧する。
【0017】
表皮を貼着する樹脂芯材2a、2bは、図中に示すように真空成形型17aおよび17bに装着される。真空成形型17aおよび17bには、それぞれ複数の吸引孔(図示しない)が設けられており、真空ポンプ16によって内部空間18が減圧されると、樹脂芯材2aおよび2bを吸着して固定する。
【0018】
真空成形型17aおよび17bに樹脂芯材2a、2bが装着されると、上方の所定位置に表皮枠30に保持された表皮材13が配置され、油圧シリンダ21の駆動が開始されて、ベースプレート31が上昇を始める。その結果、ベースプレート31上に設置された筐体に支持される真空成形型17a、17b、および真空成形型17a、17bに装着された樹脂芯材2a、2bが表皮材13に向かって上昇する。
≪表皮装着工程≫
【0019】
図2(a)は、本発明に係る表皮枠30(図6参照)に、表皮材13が装着された状態を示す模式図である。表皮枠30は、複数の表皮把持部15aないし15fを有しており、図中に示すように、表皮材13の2つの長辺を、それぞれ表皮把持部15c、15dおよび表皮把持部15e、15fで保持している。また、表皮材13の2つの短辺は、それぞれ表皮把持部15aおよび15bによって保持されている。
≪表皮加熱工程≫
【0020】
図3は、本発明に係る表皮を加熱軟化する工程を示す模式図である。表皮材13は、表皮枠30に保持された状態(図2(a)参照)で加熱炉20の内部にセットされ、加熱ヒータ26によって所定の温度まで加熱される。
【0021】
表皮材7の素材としては、非通気性の熱可塑性樹脂シート、例えばオレフィン樹脂(TPO)や塩化ビニル樹脂(PVC)シートに、ポリプロピレンフォーム(PPF)のクッション材を裏打ちした積層シート材が用いられ、115〜130℃の温度に加熱軟化処理される。
【0022】
加熱炉20内で加熱軟化された表皮材13は、図3中に示すように、自重により変形して垂れ下がる所謂ドローイングを生じる。そこで、加熱中に表皮材13を拡張してドローイングを矯正し、一旦、平面に戻す処理を行う。図2(b)は、表皮材13を拡張するために移動する表皮枠30を示す模式図である。表皮枠30に設けられた表皮把持部15aないし15fが、表皮枠30に備えられた駆動機構(図6参照)により図中の矢印に示す方向へ移動し、表皮材13を拡張してテンションを与えドローイングを矯正する。
≪表皮貼着工程≫
【0023】
次に、加熱軟化された表皮材13を加熱炉20から取出し、真空成形装置10の上方の所定位置に配置して、真空成形型17a、17bに装着された樹脂芯材2a、2bに表皮を貼着する。この際、表皮材13のドローイングを矯正するための拡張を再度行い、さらに、表皮把持部15aないし15fの一部を所定の方向に移動させて、表皮枠に装着された表皮を弛ませる。
【0024】
図4は、表皮材13に上記の処理を行う際の表皮枠30の動きを模式的に示した説明図である。図4(a)に示すように、表皮把持部15aないし15fを図中に示す方向に移動させることにより、加熱炉20から取出された表皮材13を拡張し、テンションを与えて平面状態に戻す。前述したように、加熱炉20内において、表皮把持部15aないし15fを移動させてテンションを与え、表皮材13のドローイングを矯正したとしても、さらに加熱を継続することによって、再度のドローイングを生じているからである。
【0025】
次に、表皮把持部15aないし15fを移動させてテンションを与え、ドローイングを矯正して平面に保持した状態から、図4(b)中の矢印で示すように、表皮把持部15aおよび15bを表皮材13の内側方向へ移動させて、表皮材13の中央部に、意図的に弛みを生じさせる(図4(c)参照)。この時、表皮把持部15cと15eの間、および表皮把持部15dおよび15fの間はテンションを維持した状態に保たれている。すなわち、表皮把持部15cと15d、および15eと15fが分離して設けられていることにより、図4(c)に示すように、表皮材13の中央部に弛み領域Uを生じさせることが可能となる。
【0026】
また、図4(c)において、弛み領域Uが生じている図中の上下方向は、樹脂芯材の肩部S(図8参照)の方向に一致させる。上記の実施態様では、表皮材13の長辺を表皮把持部15c、15dおよび表皮把持部15e、15fで保持し、表皮把持部15a、15bを移動させて上下方向に弛み領域Uを生じさせているが、樹脂芯材の肩部Sの方向が表皮材13の長辺方向となるような場合には、表皮把持部の構成を変更して、弛み領域の方向を長辺方向に一致させる。すなわち、表皮枠30を90°回転させて配置し、分離した表皮把持部15cないし15fで表皮材13の短辺側を保持し、長辺を保持させる表皮把持部15a、15bを移動させ、弛み領域Uを長辺方向に生じさせる。
【0027】
図5は、油圧シリンダ21を駆動してベースプレート31、およびベースプレート31上に設置された真空成形型17a、17bを上昇させて、真空成形型17a、17bに装着された樹脂芯材2a、2bに表皮材13を貼着する工程を示した模式図である。
【0028】
加熱炉20から取出した後の表皮把持部15aおよび15bの処理により、表皮材13は、図5(a)に示すように、中央部を意図的に弛ませた状態に保持されている。この状態で、油圧シリンダ21を駆動し、真空成形型17a、17bを表皮材13に向けて上昇させると、真空成形型17a、17bに装着された樹脂芯材2a、2bの凸面の肩部が、図5(b)に示すように、弛ませた表皮材13に先当たりするので、この肩部から表皮の貼着を開始させることができる。この際、前述したように、筐体12a、12bの内部に設置された真空ポンプ16により真空成形型17a、17bの内部空間18が減圧されているので、表皮材13は、樹脂芯材2a、2bの表面に触れた部分から吸着されて密着する。
【0029】
さらに、真空成形型17a、17bを上昇させるに従い、図5(c)に示すように、真空成形型17a、17bに装着された樹脂芯材2a、2bの全面にわたって表皮が吸着されて密着し、表皮貼着工程を完了する。
【0030】
上記の表皮貼着過程において、意図的に弛みを持たせた表皮材13の中央部は、肩部Sから芯材の側面にかけてテンションを持たない状態で吸着されることは明らかであり、表皮材13に伸びが生じることがない。これにより、従来の貼着方法では表皮材の伸び率が大きくなる肩部Sにおいて、表皮材の伸びを防ぎ、表面に形成されたシボ模様の形状を保持して表皮を貼着することが可能となる。
【0031】
尚、上記の実施態様において説明を省いたが、真空成形型に装着される樹脂芯材の表面には、ホットメルトタイプの接着剤がコーティングされており、加熱軟化された表皮材の熱により軟化し、表皮材と樹脂芯材が密着した状態で冷却されることにより、両者が強固に接着される。また、樹脂芯材2aの材料としてポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等、非通気性の汎用熱可塑性樹脂を素材として用いた場合には、芯材の成形加工の段階で、表皮を真空吸着するための微細孔を形成しておく必要がある。一方、通気性を有する材料、例えば木質系の基材のような材料で樹脂芯材2aが製作されているような場合には、微細孔を形成する必要がなく、製作方法を簡便とすることができる。
【0032】
次に、図6および図7を参照して、表皮枠30の構造について説明する。前述したように、本発明に係る表皮枠30は、凸面を有する形状に成形され、真空成形型17a、17bに装着された樹脂芯材2a、2bに表皮材13を貼着する製造装置であって、表皮を拡張可能に把持する複数の表皮把持部15aないし15fを有する。
【0033】
図6は、表皮枠30の構造を模式的に示す斜視図である。図中には、表皮把持部15a、および15b、15c、15dを配置した部分が示されている。図示しない表皮把持部15eおよび15fは、図中の表皮把持部15cおよび15dと対称の構成を有し、15cおよび15dに対向して配置されている。
【0034】
各表皮把持部は、コの字型の断面形状をした押さえプレート15a、および15b、15c、15dである。各表皮把持部は、それぞれに対応する表皮支持板31、および32、33、34に回動自在に取り付けられており、表皮支持板との間に表皮材の端部を挟持する構成となっている。また、表皮材を確実に保持するために、表皮材を挟持した押さえプレートと表皮支持板とを挟み込んで固定するクランプ冶具を用いることが好ましい。
【0035】
各表皮支持板は、支持ブロック33a、32a、33a、33b、34a、34bに支持され、表皮枠30の枠組みを構成するように配置されている。また、各支持ブロックにはウォームギア35a、35b、35c、35dが取り付けられている。各ウォームギアは、ステップモータ36a、36b、36cによって駆動されて回転し、支持ブロック33a、32a、33a、34aを移動させる。例えば、ウォームギア35aは、支持ブロック31aに形成されたネジ孔に螺合して取り付けられており、ステップモータ36aの回転により支持ブロック31aを移動させる。その結果、支持ブロック31aに支持されている表皮支持板31が図中の矢印で示すX方向に移動する。一方、ピニオンギア38を介してウォームギア35aの回転に連動するウォームギア35dは、支持ブロック32aに形成されたネジ孔に螺合しており、支持ブロック32aを移動させる。これにより、支持ブロック32aに支持されている表皮支持板32は、図中に示すX方向へ移動する。
【0036】
上記のステップモータ36aとウォームギアの組合せた駆動機構により、表皮支持板31および32上に取り付けられた表皮把持部15aと15bは、図中に矢印で示すX方向に移動する。また、ピニオンギア38を介して伝達されるウォームギア35aと35dの回転方向は逆向きとなるため、表皮把持部15aと15bの移動方向は、相対的に逆方向となる。
【0037】
一方、表皮把持部15cおよび15dが取り付けられた表皮支持板33、34は、ウォームギア35bおよび35cと螺合した支持ブロック33aおよび34aの動きに従って、図中に示すY方向に移動する。また、表皮支持板33、34の一端は、スライド棒37aおよび37bに沿ってスライド可能に配置された支持ブロック33bおよび34bに支持されている。
【0038】
図7は、表皮枠30の側面図であり、表皮把持部15cおよび15dと表皮把持部15aと15bが連動して動く構成を模式的に示している。すなわち、上述したように、表皮把持部15cと15dは、ウォームギア35bおよび35cと螺合した支持ブロック33a、34aに従ってY方向へ移動する。一方、ウォームギア35bおよび35cは、表皮把持部15aおよび15bが取り付けられている表皮支持板31、32を支持する支持ブロック31aおよび32aを貫通して配置されている(図6参照)。このため、支持ブロック33aおよび34aは、ウォームギア35b、35cによってY方向へ移動するだけでなく、ウォームギア35a、35dの回転によりX方向へ移動する支持ブロック31a、32aにも追従して移動する。これにより、表皮支持板33、34を介して支持ブロック33aおよび34aに支持される表皮把持部15cおよび15dは、表皮把持部15a,15bの動きに追従して、X方向へも移動する。
【0039】
上述した表皮枠30の構成および駆動機構により、図4(a)、(b)、(c)を参照して説明した表皮把持部15aないし15fの動きを実現することが可能となる。これにより、真空成形型に装着された樹脂芯材の凸面の肩部に沿った方向に、表皮の弛み部分を生じさせるように、複数の表皮把持部の一部を移動させることができる表皮枠構造が実現される。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明に係る車両用内装部品の製造方法および装置は、上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
2a、2b 樹脂芯材
10 真空成形装置
13 表皮材
15 表皮把持部
20 加熱炉
17a、17b 真空成形型
30 表皮枠
S 肩部
U 弛み領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸面を有する形状に成形された芯材に表皮を貼着する車両用内装部品の製造方法であって、
前記芯材を真空成形型に装着する芯材装着工程と、
前記表皮を複数の表皮把持部を有する表皮枠に装着する表皮装着工程と、
前記表皮枠に装着された表皮を加熱する表皮加熱工程と、
前記表皮加熱工程で加熱された表皮を、前記真空成形型に装着された芯材に貼着する表皮貼着工程と、を備え、
前記表皮貼着工程は、前記複数の表皮把持部の一部を所定の方向に移動させて、前記表皮枠に装着された表皮を弛ませ、
前記芯材の凸面の肩部を、前記弛ませた表皮に先当たりさせることを特徴とする車両用内装部品の製造方法。
【請求項2】
凸面を有する形状に成形され、真空成形型に装着された芯材に表皮を貼着する車両用内装部品の製造装置であって、
前記表皮を拡張可能に把持する複数の表皮把持部を有する表皮枠と、
前記真空成形型に装着された芯材の凸面の肩部に沿った方向に、前記表皮の弛み部分を生じさせるように、前記複数の表皮把持部の一部を移動させることができる表皮枠構造と、を備えることを特徴とする車両用内装部品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−264597(P2010−264597A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115317(P2009−115317)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】