車両用内装部品の製造装置
【課題】 本発明は、接着剤を塗布、あるいはラミネートした表皮材の裏面に直接水分を供給し、接着剤の粘着力を弱めて表皮材の離型を容易にする構造を有する車両用内装部品の製造装置を提供する。
【解決手段】 車両用内装部品の樹脂芯材に、接着剤層が形成された表皮材を貼着する製造装置であって、樹脂芯材が装着される成形型3と、成形型3の外周部に沿って設けられ、樹脂芯材に貼着された表皮材の周辺部裏面に液状の水分を供給して離型を促進する水分供給部8と、水分供給部8に接続される水分供給系7と、を備え、水分供給部8は、水分供給系7から供給された水を噴出する複数の噴出孔であることを特徴とする。
【解決手段】 車両用内装部品の樹脂芯材に、接着剤層が形成された表皮材を貼着する製造装置であって、樹脂芯材が装着される成形型3と、成形型3の外周部に沿って設けられ、樹脂芯材に貼着された表皮材の周辺部裏面に液状の水分を供給して離型を促進する水分供給部8と、水分供給部8に接続される水分供給系7と、を備え、水分供給部8は、水分供給系7から供給された水を噴出する複数の噴出孔であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空成形法を用いる車両用内装部品の製造装置に係り、特に、成形型からの離型を容易とするため手段に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内に装着されて使用される内装部品の多くは、合成樹脂製の芯材に、装飾性を有する表皮を貼着して構成されている。また、芯材へ表皮を貼着する方法としては、加熱して軟化させた合成樹脂製の表皮を芯材表面に吸着させて貼着させる真空成形法が用いられる。
【0003】
図10は、真空成形の構成を示した模式図である。真空成形装置30の上方に、表皮把持枠24に保持されたシート状の表皮材23を配置し、樹脂芯材27が装着された支持筐体22を表皮材23に向けて上昇させるか、または、表皮把持枠24に保持された表皮材23を下降させて、樹脂芯材27に覆い被せるようにして貼着する。
【0004】
この際、図11に示すように、表皮材23は、予めヒーター装置25により加熱されて軟化処理が施された後、真空成形装置30の上方に配置される。軟化した表皮材23は、樹脂芯材27の形状に沿うように貼着することができる。また、表皮材23の裏面にはホットメルトタイプの接着剤がコーティングされおり、加熱することにより粘着力が生じ、これにより、樹脂芯材27の表面に接着して一体化することが可能となる。
【0005】
図12は、成形型3に装着された樹脂芯材27に表皮材23が貼着された状態を模式的に示すA−A断面図である(図10参照)。真空成形装置30の支持筐体22内部に配置された真空ポンプ4によって成形型3の内部空間5が減圧され、成形型3の吸引孔および樹脂芯材27の全面に設けられた微細孔を通して表皮材23が吸着されている。これにより、エア溜まりを発生させることなく表皮材23が樹脂芯材27の表面に密着する。
【0006】
図13は、樹脂芯材27の表面に表皮材23を貼着した後で、成形型3から樹脂芯材27を脱型させた状態を示す模式図である。表皮材23に接着して一体化された樹脂芯材27は、真空ポンプ4が停止させて成形型3内の空間5を大気圧に戻し、駆動シリンダ9により支持筐体22を下降させて成形型3から脱型する。
【0007】
一方、樹脂芯材27に表皮材23が貼着された状態において(図12参照)、表皮材23の裏面側に接着剤がコーティングされているために、成形型3の周辺の支持筐体22の上面にも表皮材23接着している。通常、表皮材23を支持筐体22の上面から離型させるため、表皮材23が接触する支持筐体22の上面部分にテフロン(登録商標)テープ等の離型性テープ26を貼付するか、あるいはシリコン樹脂等の離型剤がコーティング処理される。図13に示す真空成形装置においては、さらに、支持筐体22の内部に離型シリンダ28が備えられており、表皮材23を突き上げて離型を促進する構成となっている。
【0008】
特許文献1には、支持筐体22の周辺に相当する部分に水蒸気を供給して、接着剤の粘着力を弱め、表皮の離型を容易にする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−179759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のテフロン(登録商標)テープ等の離型性テープ26を貼付する方法、また、離型剤をコーティング処理する方法は、耐久性に乏しいため、頻繁にテープの貼り替え等のメンテナンス作業が必要となり、生産性を低下させる要因となっている。また、特許文献1に記載された水蒸気を供給して接着剤の粘着力を弱める方法は、粘着力の大きな接着剤を使用する場合に十分な効果が得られない場合があった。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、接着剤を塗布、あるいはラミネートした表皮材の裏面に直接水分を供給し、接着剤の粘着力を弱めて表皮材の離型を容易にする構造を有する車両用内装部品の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は、樹脂芯材に、接着剤層が形成された表皮材を貼着する製造装置であって、樹脂芯材が装着される成形型と、成形型の外周部に沿って設けられ、樹脂芯材に貼着された表皮材の周辺部裏面に液状の水分を供給して離型を促進する水分供給部と、水分供給部に接続される水分供給系と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
これにより、表皮材の離型手段に係る真空成形装置のメンテナンスは、主として水分供給部の能力維持となる。水分供給部は、従来の方法に比べて耐久性があるので、メンテナンス回数を少なくすることができ、生産性の向上を図ることが可能となる。また、表皮材の接着面に液状の水分を直接供給するので、粘着力の削減に顕著な効果を示し、従来の方法で困難であった離型が容易となる。
【0014】
本発明に係る車両用内装部品の製造装置おいて、水分供給部は、水分供給系から供給された水分を噴出する複数の噴出孔を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る車両用内装部品の製造装置おいて、水分供給部は、成形型の外周部に設けられた水分の流路を有することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係る車両用内装部品の製造装置おいて、水分供給部は、成形型の外周部に設けられた水分の流路と、流路上に配置された水分吸収体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車両用内装部品の製造装置によれば、接着剤を塗布、あるいはラミネートした表皮材の裏面に直接水分を供給し、接着剤の粘着力を弱めて表皮材の離型を容易にするという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る真空成形装置のA−A断面を示す模式図である。
【図2】本発明に係る真空成形装置のA−A断面を示す模式図である。
【図3】本発明に係る真空成形装置の実施態様を示す説明図である。
【図4】本発明に係る真空成形装置の実施態様を示す説明図である。
【図5】本発明に係る真空成形装置の実施態様を示す説明図である。
【図6】本発明に係る真空成形装置の第2の実施態様を示す模式図である。
【図7】本発明に係る真空成形装置の第2の実施態様を示す模式図である。
【図8】本発明に係る真空成形装置の第2の実施態様を示す模式図である。
【図9】本発明に係る真空成形装置の第3の実施態様を示す模式図である。
【図10】真空成形を用いた表皮の貼着方法の構成を示す概要図である。
【図11】従来の実施態様に係る予備工程を示す説明図である。
【図12】従来に係る真空成形装置のA−A断面を示す模式図である。
【図13】従来に係る真空成形装置のA−A断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る車両用内装部品の製造装置並びに表皮の貼着工程に適用した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1、図2は、本発明に係る車両用内装部品の製造装置である真空成形装置のA−A断面(図10参照)を示す模式図である。図1に示すように、本発明に係る真空成形装置1においては、支持筐体2の上面に成形型3が配置されている。支持筐体2は、駆動シリンダ9により上下方向に昇降し、上方に配置された表皮材(図10参照)に、成形型3に装着された樹脂芯材を押し当てることにより表皮の貼着を行う。その後、支持筐体2を下降させて、樹脂芯材を成形型3から脱型させる。
【0021】
支持筐体の内部には、真空ポンプ4が配置されており、成形型3の内部空間5を排気して減圧状態にすることにより真空成形を行う。成形型3の周囲には、加熱された表皮材を冷却する循環冷却水の冷却配管6が備えられている。また、成形型3の外周部に沿って、支持筐体2の上面から水を噴出する噴出孔8が設けられている。噴出孔8は、樹脂芯材に貼着される表皮材の周辺部裏面に液状の水分を供給して離型を容易とする水分供給部であり、冷却配管6から分岐した分岐配管7を介して、冷却配管6内を循環する水の一部が噴出する構成となっている。冷却配管6および分岐配管7は、水分供給部である噴出孔8に接続される水分供給系として機能する。
【0022】
図2は、支持筐体2の上面端部を拡大して示す模式図である。冷却配管6から分岐した分岐配管7は、さらに枝管に分岐し複数の噴出孔8につながっている。このような構成の分岐部が成形型3の周囲に複数配置され、成形型3を囲む支持筐体2の上面に多数の噴出孔が配置されている(図7、8参照)。また、冷却配管6から分岐する分岐配管7には、電磁弁12(またはエアー駆動弁)と減圧弁13が挿入されている。電磁弁は、図示しない制御部からのON/OFF信号を受けて、噴出孔8から噴出する水の量を制御する。減圧弁13は、分岐した循環冷却水の圧力を下げて、噴出する水の勢いを制御するために挿入されている。
【0023】
さらに、本発明に係る真空成形装置においては、水分の供給により表皮材23の離型を容易とすることができるので、従来例に示すような離型シリンダ28(図13参照)を配置する必要がない。これにより、循環冷却水の配置を増すことが可能となり、表皮材23の冷却効率を向上させることが可能となる。
【0024】
図3ないし図5は、本発明に係る真空成形装置1を用いて、車両用内装部品の樹脂芯材27の表面に、裏面に接着剤層が形成された表皮材23を貼着する真空成形工程を模式的に示す説明図である。図3は、成形型3に樹脂芯材27が装着され、駆動シリンダ9により駆動された支持筐体2が、表皮把持枠24で保持された表皮材23に向けて上昇している状態を示している。表皮材23は、前述したように、ヒーター装置25により加熱軟化処理が施されている。一方、成形型3の内部空間5は真空ポンプ4により減圧状態にされ、成形型3に設けられた吸引孔(図示しない)を介して、樹脂芯材27が吸着されている。
【0025】
樹脂芯材27は、さらに表皮材23を真空吸着する必要があるため、通気性を備える必要がある。例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等、汎用の熱可塑性樹脂を素材として用いた場合には、芯材の成形加工の段階で微細孔を形成しておく必要がある。また、PP樹脂繊維と木質系繊維とを適宜割合で配合したものを混合して、加熱、加圧工程を経てマット状に形成し、その後プレス加工により所望厚みを備えた通気性を備えた木質系繊維板を使用することもできる。
【0026】
一方、表皮材23としては、例えば、TPO(サーモプラスチックオレフィン)シート等のトップ層の裏面にポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム等の発泡層を裏打ちした積層シート材料を使用し、さらに発泡層の裏面には、ポリエチレン等のホットメルトシートをコーティングする。また、アクリル系樹脂等の接着剤をコーティングしても良い。
【0027】
図4は、成形型3に装着された樹脂芯材27に表皮材23が貼着された状態を示す模式図である。前述したように真空ポンプ4によって成形型3内部空間5が減圧され、成形型3の吸引孔および樹脂芯材27の全面に設けられた微細孔を通して表皮材23が吸着されている。一方、成形型3の外周部においても、支持筐体2の上面端部に表皮材23が接着している。
【0028】
この状態において、支持筐体2の上面に接着した表皮材23は、筐体内部に備えられた冷却配管6により冷却される。また、図示しない制御部からの制御信号を受けて電磁弁12が開かれ、噴出孔8から噴出した水により表皮材23が冷却され、さらに表面に水分を付着させることができる。これにより、表皮材23の裏面にコーティングされた接着剤の粘着力が失われ、図5に示すように、駆動シリンダ9により支持筐体2を下降させた場合に、表皮材23が支持筐体2の上面から剥離し、樹脂芯材27を成形型3からスムーズに脱型させることができる。
【0029】
上述した実施態様において、噴出孔8から水を噴出するタイミングは、表皮材23が支持筐体2の上面に接着した後としたが、表皮材23が支持筐体2の上面に近づいたタイミングで表皮材23の裏面に水を吹き付けるように制御しても良い。また、表皮材23が支持筐体2の上面に触れる前、すなわち図3に示す状態において、噴出孔8から水を噴出させて支持筐体2の上面を濡れた状態にすることも可能である。また、噴出される水の量は、制御部から電磁弁12に送られるON/OFF信号および減圧弁13によって減圧される水圧により制御する。
【0030】
図6ないし図8は、本発明に係る真空成形装置の第2の実施態様を示している。図6は、本実施態様に係る支持筐体2の上面端部を拡大して示す模式図である。冷却配管6から分岐した分岐配管7は、電磁弁12および減圧弁13を介して、支持筐体2の上面に形成された水の流路15の底面に配置された噴出孔8につながっている。本実施態様においては、噴出孔8から噴出された水が流路15に溜められており、表皮材23が支持筐体2の上面に接触した時に接触面に水分が付着する構成となっている。
【0031】
図7および図8は、本実施態様に係る真空成形装置10および20を示す模式図である。図7に示す真空成形装置10においては、支持筐体2の上面に2つの成形型3が配置されており、同時に2つの樹脂芯材に表皮を貼着することができる。支持筐体2の上面には、2つの成形型3の周りを囲むように水の流路15が設けられている。また、流路の底面には複数の噴出孔8が配置されている。
【0032】
一方、図8に示す真空成形装置20においては、水の流路15が2重に配置されており、図7に示す真空成形装置10に比べて、広い範囲で表皮材23の裏面に水分を供給することができる。また、このような構成にすることにより、多数の噴出孔8を配置する必要があるが、前述したように分岐配管7をさらに枝管に分岐して噴出孔8に接続することにより(図2参照)、配管の配置を複雑にすることなく実施することが可能である。
【0033】
図9は、本発明に係る真空成形装置の第3の実施態様を示す模式図である。図6に示した第2実施態様の形態と同じように、冷却配管6から分岐した分岐配管7は、電磁弁12および減圧弁13を介して、支持筐体2の上面に形成された水の流路15に配置された噴出孔8につながっている。さらに、本実施態様においては、水の流路15の上に、樹脂製の芯材18を包んだ水分吸収体17が配置されている。水分吸収体17は、例えば脱脂綿のような繊維質のものを使用し、噴出孔8から流路15に供給した水を毛細管現象により吸い上げて、表皮材23と接触する上面に水分を保持する機能を有するものである。また、水分吸収体17は、水の流路15に沿って配置される(図7、図8参照)。これにより、成形型3の内部空間5が真空ポンプ4によって真空引きされる際に、成形型3に設けられた吸引孔を介して、流路15に溜まった水が内部空間5に引き込まれる不具合を防止することができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施態様について詳述したが、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は、上述した実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1、10、20、30 真空成形装置
2、22 支持筐体
3 成形型
6 冷却水配管
7 分岐配管
12 電磁弁
13 減圧弁
15 流路
23 表皮材
27 樹脂芯材
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空成形法を用いる車両用内装部品の製造装置に係り、特に、成形型からの離型を容易とするため手段に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内に装着されて使用される内装部品の多くは、合成樹脂製の芯材に、装飾性を有する表皮を貼着して構成されている。また、芯材へ表皮を貼着する方法としては、加熱して軟化させた合成樹脂製の表皮を芯材表面に吸着させて貼着させる真空成形法が用いられる。
【0003】
図10は、真空成形の構成を示した模式図である。真空成形装置30の上方に、表皮把持枠24に保持されたシート状の表皮材23を配置し、樹脂芯材27が装着された支持筐体22を表皮材23に向けて上昇させるか、または、表皮把持枠24に保持された表皮材23を下降させて、樹脂芯材27に覆い被せるようにして貼着する。
【0004】
この際、図11に示すように、表皮材23は、予めヒーター装置25により加熱されて軟化処理が施された後、真空成形装置30の上方に配置される。軟化した表皮材23は、樹脂芯材27の形状に沿うように貼着することができる。また、表皮材23の裏面にはホットメルトタイプの接着剤がコーティングされおり、加熱することにより粘着力が生じ、これにより、樹脂芯材27の表面に接着して一体化することが可能となる。
【0005】
図12は、成形型3に装着された樹脂芯材27に表皮材23が貼着された状態を模式的に示すA−A断面図である(図10参照)。真空成形装置30の支持筐体22内部に配置された真空ポンプ4によって成形型3の内部空間5が減圧され、成形型3の吸引孔および樹脂芯材27の全面に設けられた微細孔を通して表皮材23が吸着されている。これにより、エア溜まりを発生させることなく表皮材23が樹脂芯材27の表面に密着する。
【0006】
図13は、樹脂芯材27の表面に表皮材23を貼着した後で、成形型3から樹脂芯材27を脱型させた状態を示す模式図である。表皮材23に接着して一体化された樹脂芯材27は、真空ポンプ4が停止させて成形型3内の空間5を大気圧に戻し、駆動シリンダ9により支持筐体22を下降させて成形型3から脱型する。
【0007】
一方、樹脂芯材27に表皮材23が貼着された状態において(図12参照)、表皮材23の裏面側に接着剤がコーティングされているために、成形型3の周辺の支持筐体22の上面にも表皮材23接着している。通常、表皮材23を支持筐体22の上面から離型させるため、表皮材23が接触する支持筐体22の上面部分にテフロン(登録商標)テープ等の離型性テープ26を貼付するか、あるいはシリコン樹脂等の離型剤がコーティング処理される。図13に示す真空成形装置においては、さらに、支持筐体22の内部に離型シリンダ28が備えられており、表皮材23を突き上げて離型を促進する構成となっている。
【0008】
特許文献1には、支持筐体22の周辺に相当する部分に水蒸気を供給して、接着剤の粘着力を弱め、表皮の離型を容易にする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−179759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のテフロン(登録商標)テープ等の離型性テープ26を貼付する方法、また、離型剤をコーティング処理する方法は、耐久性に乏しいため、頻繁にテープの貼り替え等のメンテナンス作業が必要となり、生産性を低下させる要因となっている。また、特許文献1に記載された水蒸気を供給して接着剤の粘着力を弱める方法は、粘着力の大きな接着剤を使用する場合に十分な効果が得られない場合があった。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、接着剤を塗布、あるいはラミネートした表皮材の裏面に直接水分を供給し、接着剤の粘着力を弱めて表皮材の離型を容易にする構造を有する車両用内装部品の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は、樹脂芯材に、接着剤層が形成された表皮材を貼着する製造装置であって、樹脂芯材が装着される成形型と、成形型の外周部に沿って設けられ、樹脂芯材に貼着された表皮材の周辺部裏面に液状の水分を供給して離型を促進する水分供給部と、水分供給部に接続される水分供給系と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
これにより、表皮材の離型手段に係る真空成形装置のメンテナンスは、主として水分供給部の能力維持となる。水分供給部は、従来の方法に比べて耐久性があるので、メンテナンス回数を少なくすることができ、生産性の向上を図ることが可能となる。また、表皮材の接着面に液状の水分を直接供給するので、粘着力の削減に顕著な効果を示し、従来の方法で困難であった離型が容易となる。
【0014】
本発明に係る車両用内装部品の製造装置おいて、水分供給部は、水分供給系から供給された水分を噴出する複数の噴出孔を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る車両用内装部品の製造装置おいて、水分供給部は、成形型の外周部に設けられた水分の流路を有することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係る車両用内装部品の製造装置おいて、水分供給部は、成形型の外周部に設けられた水分の流路と、流路上に配置された水分吸収体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車両用内装部品の製造装置によれば、接着剤を塗布、あるいはラミネートした表皮材の裏面に直接水分を供給し、接着剤の粘着力を弱めて表皮材の離型を容易にするという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る真空成形装置のA−A断面を示す模式図である。
【図2】本発明に係る真空成形装置のA−A断面を示す模式図である。
【図3】本発明に係る真空成形装置の実施態様を示す説明図である。
【図4】本発明に係る真空成形装置の実施態様を示す説明図である。
【図5】本発明に係る真空成形装置の実施態様を示す説明図である。
【図6】本発明に係る真空成形装置の第2の実施態様を示す模式図である。
【図7】本発明に係る真空成形装置の第2の実施態様を示す模式図である。
【図8】本発明に係る真空成形装置の第2の実施態様を示す模式図である。
【図9】本発明に係る真空成形装置の第3の実施態様を示す模式図である。
【図10】真空成形を用いた表皮の貼着方法の構成を示す概要図である。
【図11】従来の実施態様に係る予備工程を示す説明図である。
【図12】従来に係る真空成形装置のA−A断面を示す模式図である。
【図13】従来に係る真空成形装置のA−A断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る車両用内装部品の製造装置並びに表皮の貼着工程に適用した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1、図2は、本発明に係る車両用内装部品の製造装置である真空成形装置のA−A断面(図10参照)を示す模式図である。図1に示すように、本発明に係る真空成形装置1においては、支持筐体2の上面に成形型3が配置されている。支持筐体2は、駆動シリンダ9により上下方向に昇降し、上方に配置された表皮材(図10参照)に、成形型3に装着された樹脂芯材を押し当てることにより表皮の貼着を行う。その後、支持筐体2を下降させて、樹脂芯材を成形型3から脱型させる。
【0021】
支持筐体の内部には、真空ポンプ4が配置されており、成形型3の内部空間5を排気して減圧状態にすることにより真空成形を行う。成形型3の周囲には、加熱された表皮材を冷却する循環冷却水の冷却配管6が備えられている。また、成形型3の外周部に沿って、支持筐体2の上面から水を噴出する噴出孔8が設けられている。噴出孔8は、樹脂芯材に貼着される表皮材の周辺部裏面に液状の水分を供給して離型を容易とする水分供給部であり、冷却配管6から分岐した分岐配管7を介して、冷却配管6内を循環する水の一部が噴出する構成となっている。冷却配管6および分岐配管7は、水分供給部である噴出孔8に接続される水分供給系として機能する。
【0022】
図2は、支持筐体2の上面端部を拡大して示す模式図である。冷却配管6から分岐した分岐配管7は、さらに枝管に分岐し複数の噴出孔8につながっている。このような構成の分岐部が成形型3の周囲に複数配置され、成形型3を囲む支持筐体2の上面に多数の噴出孔が配置されている(図7、8参照)。また、冷却配管6から分岐する分岐配管7には、電磁弁12(またはエアー駆動弁)と減圧弁13が挿入されている。電磁弁は、図示しない制御部からのON/OFF信号を受けて、噴出孔8から噴出する水の量を制御する。減圧弁13は、分岐した循環冷却水の圧力を下げて、噴出する水の勢いを制御するために挿入されている。
【0023】
さらに、本発明に係る真空成形装置においては、水分の供給により表皮材23の離型を容易とすることができるので、従来例に示すような離型シリンダ28(図13参照)を配置する必要がない。これにより、循環冷却水の配置を増すことが可能となり、表皮材23の冷却効率を向上させることが可能となる。
【0024】
図3ないし図5は、本発明に係る真空成形装置1を用いて、車両用内装部品の樹脂芯材27の表面に、裏面に接着剤層が形成された表皮材23を貼着する真空成形工程を模式的に示す説明図である。図3は、成形型3に樹脂芯材27が装着され、駆動シリンダ9により駆動された支持筐体2が、表皮把持枠24で保持された表皮材23に向けて上昇している状態を示している。表皮材23は、前述したように、ヒーター装置25により加熱軟化処理が施されている。一方、成形型3の内部空間5は真空ポンプ4により減圧状態にされ、成形型3に設けられた吸引孔(図示しない)を介して、樹脂芯材27が吸着されている。
【0025】
樹脂芯材27は、さらに表皮材23を真空吸着する必要があるため、通気性を備える必要がある。例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等、汎用の熱可塑性樹脂を素材として用いた場合には、芯材の成形加工の段階で微細孔を形成しておく必要がある。また、PP樹脂繊維と木質系繊維とを適宜割合で配合したものを混合して、加熱、加圧工程を経てマット状に形成し、その後プレス加工により所望厚みを備えた通気性を備えた木質系繊維板を使用することもできる。
【0026】
一方、表皮材23としては、例えば、TPO(サーモプラスチックオレフィン)シート等のトップ層の裏面にポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム等の発泡層を裏打ちした積層シート材料を使用し、さらに発泡層の裏面には、ポリエチレン等のホットメルトシートをコーティングする。また、アクリル系樹脂等の接着剤をコーティングしても良い。
【0027】
図4は、成形型3に装着された樹脂芯材27に表皮材23が貼着された状態を示す模式図である。前述したように真空ポンプ4によって成形型3内部空間5が減圧され、成形型3の吸引孔および樹脂芯材27の全面に設けられた微細孔を通して表皮材23が吸着されている。一方、成形型3の外周部においても、支持筐体2の上面端部に表皮材23が接着している。
【0028】
この状態において、支持筐体2の上面に接着した表皮材23は、筐体内部に備えられた冷却配管6により冷却される。また、図示しない制御部からの制御信号を受けて電磁弁12が開かれ、噴出孔8から噴出した水により表皮材23が冷却され、さらに表面に水分を付着させることができる。これにより、表皮材23の裏面にコーティングされた接着剤の粘着力が失われ、図5に示すように、駆動シリンダ9により支持筐体2を下降させた場合に、表皮材23が支持筐体2の上面から剥離し、樹脂芯材27を成形型3からスムーズに脱型させることができる。
【0029】
上述した実施態様において、噴出孔8から水を噴出するタイミングは、表皮材23が支持筐体2の上面に接着した後としたが、表皮材23が支持筐体2の上面に近づいたタイミングで表皮材23の裏面に水を吹き付けるように制御しても良い。また、表皮材23が支持筐体2の上面に触れる前、すなわち図3に示す状態において、噴出孔8から水を噴出させて支持筐体2の上面を濡れた状態にすることも可能である。また、噴出される水の量は、制御部から電磁弁12に送られるON/OFF信号および減圧弁13によって減圧される水圧により制御する。
【0030】
図6ないし図8は、本発明に係る真空成形装置の第2の実施態様を示している。図6は、本実施態様に係る支持筐体2の上面端部を拡大して示す模式図である。冷却配管6から分岐した分岐配管7は、電磁弁12および減圧弁13を介して、支持筐体2の上面に形成された水の流路15の底面に配置された噴出孔8につながっている。本実施態様においては、噴出孔8から噴出された水が流路15に溜められており、表皮材23が支持筐体2の上面に接触した時に接触面に水分が付着する構成となっている。
【0031】
図7および図8は、本実施態様に係る真空成形装置10および20を示す模式図である。図7に示す真空成形装置10においては、支持筐体2の上面に2つの成形型3が配置されており、同時に2つの樹脂芯材に表皮を貼着することができる。支持筐体2の上面には、2つの成形型3の周りを囲むように水の流路15が設けられている。また、流路の底面には複数の噴出孔8が配置されている。
【0032】
一方、図8に示す真空成形装置20においては、水の流路15が2重に配置されており、図7に示す真空成形装置10に比べて、広い範囲で表皮材23の裏面に水分を供給することができる。また、このような構成にすることにより、多数の噴出孔8を配置する必要があるが、前述したように分岐配管7をさらに枝管に分岐して噴出孔8に接続することにより(図2参照)、配管の配置を複雑にすることなく実施することが可能である。
【0033】
図9は、本発明に係る真空成形装置の第3の実施態様を示す模式図である。図6に示した第2実施態様の形態と同じように、冷却配管6から分岐した分岐配管7は、電磁弁12および減圧弁13を介して、支持筐体2の上面に形成された水の流路15に配置された噴出孔8につながっている。さらに、本実施態様においては、水の流路15の上に、樹脂製の芯材18を包んだ水分吸収体17が配置されている。水分吸収体17は、例えば脱脂綿のような繊維質のものを使用し、噴出孔8から流路15に供給した水を毛細管現象により吸い上げて、表皮材23と接触する上面に水分を保持する機能を有するものである。また、水分吸収体17は、水の流路15に沿って配置される(図7、図8参照)。これにより、成形型3の内部空間5が真空ポンプ4によって真空引きされる際に、成形型3に設けられた吸引孔を介して、流路15に溜まった水が内部空間5に引き込まれる不具合を防止することができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施態様について詳述したが、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は、上述した実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1、10、20、30 真空成形装置
2、22 支持筐体
3 成形型
6 冷却水配管
7 分岐配管
12 電磁弁
13 減圧弁
15 流路
23 表皮材
27 樹脂芯材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装部品の樹脂芯材に、接着剤層が形成された表皮材を貼着する製造装置であって、
前記樹脂芯材が装着される成形型と、
前記成形型の外周部に沿って設けられ、前記樹脂芯材に貼着された表皮材の周辺部裏面に液状の水分を供給して離型を促進する水分供給部と、
前記水分供給部に接続される水分供給系と、
を備えたことを特徴とする車両用内装部品の製造装置。
【請求項2】
前記水分供給部は、前記水分供給系から供給された水を噴出する複数の噴出孔を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造装置。
【請求項3】
前記水分供給部は、前記成形型の外周部に設けられた水分の流路を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造装置。
【請求項4】
前記水分供給部は、前記成形型の外周部に設けられた水分の流路と、
前記流路上に配置された水分吸収体と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造装置。
【請求項1】
車両用内装部品の樹脂芯材に、接着剤層が形成された表皮材を貼着する製造装置であって、
前記樹脂芯材が装着される成形型と、
前記成形型の外周部に沿って設けられ、前記樹脂芯材に貼着された表皮材の周辺部裏面に液状の水分を供給して離型を促進する水分供給部と、
前記水分供給部に接続される水分供給系と、
を備えたことを特徴とする車両用内装部品の製造装置。
【請求項2】
前記水分供給部は、前記水分供給系から供給された水を噴出する複数の噴出孔を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造装置。
【請求項3】
前記水分供給部は、前記成形型の外周部に設けられた水分の流路を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造装置。
【請求項4】
前記水分供給部は、前記成形型の外周部に設けられた水分の流路と、
前記流路上に配置された水分吸収体と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−240988(P2010−240988A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92413(P2009−92413)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
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