説明

車両用内装部品

【課題】内装部品の裏面と車体部材との間に隙間が生じることのない車両用内装部品を提供する。
【解決手段】本発明による車両用内装部品は、平板状に形成された合成樹脂からなる第1部材8と、該第1部材8の裏面側に接合され、複数の凹部9と凸部10を有する合成樹脂製の第2部材11と、該第2部材11の裏面側の凸部10に接合され、サイドパネル5に取り付けられるクリップ12を係止可能な金属製の平坦な板状保持部材13と、を備えている。前記板状保持部材13の端部には、前記クリップ12が挿入して係止される切欠部25が形成されている。前記第2部材11における板状保持部材13の切欠部25に対応する部位の凸部10を前記第1部材側に向けて凹ませて段差部20を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両室内の外観向上を図るために、各種の内装部品を装着することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された内装部品は、裏面側に、断面ハット状に形成した金属製のクリップ取付用ブラケットを接合している。該ブラケットには、切欠きが形成されており、この切欠きにクリップを挿入および嵌合させる。そして、クリップを車体部材の嵌合孔に係止させることにより、内装部品を車体側に装着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−16657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1においては、クリップ取付用ブラケットが内装部品の裏面から突出しているため、内装部品を車体部材に装着した状態において、内装部品の裏面と車体部材との間に隙間が生じるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、内装部品の裏面と車体部材との間に隙間が生じることのない車両用内装部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用内装部品は、平板状に形成された合成樹脂からなる第1部材と、該第1部材の裏面側に接合され、複数の凹部と凸部を有する合成樹脂製の第2部材と、該第2部材の裏面側の凸部に接合され、車体部材に取り付けられる留め部材を係止可能な金属製の平坦な板状保持部材と、を備え、前記板状保持部材の端部には、前記留め部材が挿入して係止される切欠部が形成された車両用内装部品である。前記第2部材における板状保持部材の切欠部に対応する部位の凸部を前記第1部材側に向けて凹ませて段差部を形成し、該段差部の高さを前記第2部材の凸部よりも低く設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、第2部材における板状保持部材の切欠部に対応する部位に段差部を設けている。従って、留め部材の下部を段差部に配置し、そのまま、留め部材を板状保持部材の切欠部に向けて平行移動させて嵌合させるという簡単な手順で、留め部材を車両用内装部品に容易に取り付けることができる。
【0009】
また、板状保持部材が平坦であるため、車両用内装部品を車体部材に装着したときに、車両用内装部品の裏面と車体部材との間に隙間が生じることがなくなる。
【0010】
また、板状保持部材は金属から形成されているため、高強度である。従って、車両用内装部品を車体部材に装着したときの車両用内装部品の保持剛性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態によるサイドトリムを設けた車両内部を斜め後方から見た斜視図である。
【図2】図1における前側サイドトリムの要部を裏面側から見た拡大斜視図である。
【図3】図2のA−A線による断面図である。
【図4】本発明の実施形態による板状保持部材を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態によるサイドトリムに板状保持部材を接合するときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態による車両1の室内には、前側に左右一対のフロントシート2,3が配設され、後側に二点鎖線で示すバックシート4が配設されている。また、車体側面には、車体部材であるサイドパネル5が設けられ、室内の美観を向上させるためにサイドパネル5の室内側に前側サイドトリム6および後側サイドトリム18が配設されている。なお、車両後端には、上端部を中心に開閉するバックドア19が設けられている。
【0014】
図2,3に示すように、前側サイドトリム6は3層構造に構成されている。即ち、最も室内側(表面側)には不織布からなる表皮7が設けられ、該表皮7の室外側(裏面側)には、平板状の第1部材8が設けられ、該第1部材8の室外側(裏面側)には、複数の凹部9と凸部10を有する第2部材11が設けられている。これらの表皮7、第1部材8および第2部材11は互いに接合されて一体になっている。また、第2部材11の裏面には、留め部材であるクリップ12が係止された板状保持部材13が接合されている。なお、本実施形態では、前側サイドトリム6について説明するが、後側サイドトリム18とバックドア19の室内側バックドアトリム(図示せず)についても同一構造である。
【0015】
前記第1部材8は、熱可塑性の合成樹脂から形成されている。
【0016】
前記第2部材11は、熱可塑性の合成樹脂から形成されている。そして、円筒状の凹部9がほぼ同一間隔をもって複数配置されている。具体的には、多数の円筒状の凹形状がある真空成形ロールを用い、加熱されて軟化した板状の熱可塑性樹脂を真空成形することによって、前記凹部9を形成する。この凹部9は、図3に示すように、第1部材8の裏面17に接合された円盤状の底面14と、該底面14の外周縁から裏面側に延在する側面15と、から一体形成されている。また、第2部材11の凸部10は、平坦状に形成された頂面16を有し、第1部材8の裏面17から第2部材11の凸部10の頂面16までの高さはH0に設定されている。
【0017】
そして、第2部材11の裏面における前記板状保持部材13が配置される部位には、第1部材8に向けて(表面側に向けて)凹んだ段差部20が形成されている。この段差部20は、凸部10の頂面16を第1部材8に向けて凹ませて、高さがH1に形成された第1段差部21と、該第1段差部21よりも更に第1部材8に向けて凹ませて第1部材8の裏面17に接合された第2段差部22と、から構成される。なお、板状保持部材13が配置される部位や大きさによって、第1部材8に向けて凹んだ段差部20の断面形状は異なるため、段差部20は、例えば第2段差部22だけの構成であっても良い。なお、図3に示すように、第2部材11の凸部10と第1部材8の裏面17とによって、閉断面構造の中空部28が形成されている。
【0018】
前記板状保持部材13は、鉄板やアルミニウム等の金属からなる板状の保持部材本体23と、図3,4に示すように、保持部材本体23における第1部材側である表面側に貼着されたホットメルトフィルム24とからなる。ホットメルトフィルム24は、所定の温度に加熱すると溶融し、冷却されると固化する合成樹脂やゴムを含む接着剤である。板状保持部材13は、平面視で横長の矩形状に形成されており、横方向の中央部に切欠部25が形成されている。この切欠部25は、端部が開口端に形成されており、中心に向かうにつれて幅寸法が徐々に狭くなる左右一対の直線部26と、クリップ12が嵌合される円弧部27と、からなる。このように、切欠部25の入口の幅は広く、中心に向かうにつれて徐々に狭くなっており、円弧部27においてクリップ12が嵌合される。従って、クリップ12が円弧部27に嵌合した状態では、大きな荷重を加えないと抜けないように構成されている。
【0019】
また、クリップ12は、図2,3に示すように、一端に形成した係合部30と、他端に形成した係止面31と、これらの係合部30と係止面31との間に形成した上側つば部32および下側つば部33とから一体形成されている。また、係合部30には、長手方向に沿って溝34が延設してある。前記下側つば部33と係止面31とで板状保持部材13を厚さ方向に挟むことによって、クリップ12が板状保持部材13に保持される。
【0020】
次に、板状保持部材13を第2部材11の裏面に接合する方法を説明する。本実施形態では、板状保持部材13の保持部材本体23が金属製であるため、電磁誘導加熱によって保持部材本体23を加熱し、この保持部材本体23の熱によってホットメルトフィルム24を溶融させて接合を行う。
【0021】
図5に示すように、電磁誘導加熱装置40の下部には、加熱部41が配設されている。この加熱部41の内部には、巻回されたコイル42が収容されている。
【0022】
コイル42に電流を流すと、コイル42の周りに磁力線が生じる。この磁力線によって、金属製の保持部材本体23に渦電流が流れ、ジュール熱によって保持部材本体23が加熱される。従って、保持部材本体23に貼着されているホットメルトフィルム24が熱によって溶融し、第2部材11の裏面側の凸部10の頂面16に付着する。
【0023】
こののち、コイル42の電流を止めると、保持部材本体23およびホットメルトフィルム24が冷却され、ホットメルトフィルム24が固化される結果、保持部材本体23がホットメルトフィルム24を介して第2部材11の凸部10の頂面16に接合される。
【0024】
次いで、クリップ12を板状保持部材13に取り付ける手順を説明する。
【0025】
本実施形態による前側サイドトリム6には、板状保持部材13が予め接合されている。また、板状保持部材13における切欠部25に対応する第2部材11の部位には、段差部20が形成されている。
【0026】
従って、まず、図2,3に示す第1段差部21および第2段差部22にクリップ12の下部を配置し、そのまま、クリップ12を板状保持部材13の切欠部25に向けて平行移動させて切欠部25における円弧部27に嵌合させる。これによって、クリップ12の係止面31と下側つば部33とによって板状保持部材13を上下から支持することで、クリップ12が板状保持部材13に保持される。
【0027】
こののち、図1に示すように、前側サイドトリム6の裏面に係止されたクリップ12を、車体部材であるサイドパネル5における図外のクリップ孔に嵌合させることによって、前側サイドトリム6をサイドパネル5に装着することができる。
【0028】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、種々の変更および変形が可能である。例えば、前記実施形態における前側サイドトリム6には表皮7を設けたが、表皮7がない実施形態も本発明に含まれる。
【0029】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0030】
(1)本実施形態による前側サイドトリム6(車両用内装部品)は、平板状に形成された合成樹脂からなる第1部材8と、該第1部材8の裏面側に接合され、複数の凹部9と凸部10を有する合成樹脂製の第2部材11と、該第2部材11の裏面側の凸部10に接合され、サイドパネル5(車体部材)に取り付けられるクリップ12(留め部材)を係止可能な金属製の平坦な板状保持部材13と、を備え、前記板状保持部材13の端部には、前記クリップ12が挿入して係止される切欠部25が形成されている。前記第2部材11における板状保持部材13の切欠部25に対応する部位の凸部10を前記第1部材側に向けて凹ませて段差部20を形成し、該段差部20の高さH1を前記第2部材11の凸部10の高さH0よりも低く設定している。
【0031】
このように、第2部材11における板状保持部材13の切欠部25に対応する部位に段差部20を設けている。従って、クリップ12の下部を段差部20に配置し、そのまま、クリップ12を板状保持部材13の切欠部25に向けて平行移動させて嵌合させるという簡単な手順で、クリップ12を前側サイドトリム6に取り付けることができる。
【0032】
また、板状保持部材13が平坦であるため、前側サイドトリム6をサイドパネル5に装着したときに、前側サイドトリム6の裏面とサイドパネル5との間に隙間が生じることがなくなる。
【0033】
また、板状保持部材13は金属から形成されているため、高強度である。従って、前側サイドトリム6をサイドパネル5に装着する際における前側サイドトリム6の保持剛性が高い。
【0034】
(2)前記第2部材11は、前記凹部9が第1部材8の裏面17に接合されており、前記凸部10と第1部材8の裏面17との間に中空部28を形成している。
【0035】
従って、前側サイドトリム6の剛性、特に曲げ剛性を高くすることができる。
【0036】
(3)前記板状保持部材13にホットメルトフィルム24を設け、電磁誘導加熱によって板状保持部材13を加熱し、ホットメルトフィルム24を溶解および固化させて、前記板状保持部材13をホットメルトフィルム24を介して第2部材11の凸部10に接合している。
【0037】
従って、簡単な工程で板状保持部材13を前側サイドトリム6に接合することができる。
【符号の説明】
【0038】
8…第1部材
9…凹部
10…凸部
11…第2部材
12…クリップ(留め部材)
13…板状保持部材
20…段差部
21…第1段差部(段差部)
22…第2段差部(段差部)
24…ホットメルトフィルム
25…切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状に形成された合成樹脂からなる第1部材と、該第1部材の裏面側に接合され、複数の凹部と凸部を有する合成樹脂製の第2部材と、該第2部材の裏面側の凸部に接合され、車体部材に取り付けられる留め部材を係止可能な金属製の平坦な板状保持部材と、を備え、前記板状保持部材の端部には、前記留め部材が挿入して係止される切欠部が形成された車両用内装部品であって、
前記第2部材における板状保持部材の切欠部に対応する部位の凸部を前記第1部材側に向けて凹ませて段差部を形成し、該段差部の高さを前記第2部材の凸部よりも低く設定したことを特徴とする車両用内装部品。
【請求項2】
前記第2部材は、前記凹部が第1部材の裏面に接合されており、前記凸部と第1部材の裏面との間に中空部が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品。
【請求項3】
前記板状保持部材にホットメルトフィルムを設け、電磁誘導加熱によって板状保持部材を加熱し、前記ホットメルトフィルムを溶解および固化させることによって、前記板状保持部材をホットメルトフィルムを介して第2部材の凸部に接合したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用内装部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−187993(P2012−187993A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52507(P2011−52507)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000244280)盟和産業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】