車両用差動装置およびそれを備えた車両
【課題】 左右輪の駆動力配分の制御幅を拡大し、より積極的な駆動力配分を行なうことができる車両用差動装置を提供する。
【解決手段】 モータジェネレータMG1,MG2は、モータジェネレータMG1の逆起電力がモータジェネレータMG2の逆起電力よりも大きくなるように設計または選定される。差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生した逆起電力を受け、車両100の旋回時、モータジェネレータMG1からの電力を用いて車両100の旋回方向に応じてモータジェネレータMG2を力行駆動または回生駆動し、ドライブシャフト20,22の駆動力を変化させる。
【解決手段】 モータジェネレータMG1,MG2は、モータジェネレータMG1の逆起電力がモータジェネレータMG2の逆起電力よりも大きくなるように設計または選定される。差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生した逆起電力を受け、車両100の旋回時、モータジェネレータMG1からの電力を用いて車両100の旋回方向に応じてモータジェネレータMG2を力行駆動または回生駆動し、ドライブシャフト20,22の駆動力を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用差動装置およびそれを備えた車両に関し、特に、電動機によって左右の駆動輪の駆動力配分を積極的に制御する車両用差動装置およびそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、左右の車輪の駆動力配分を積極的に制御可能な左右駆動力配分装置を開示する。この左右駆動力配分装置は、左の車軸とディファレンシャルケースとの間に相対的な回転力を付与可能な電動モータと、ディファレンシャルケースの回転力によって発電するジェネレータと、電動モータの動作を制御するモータ制御部とを備える。そして、この左右駆動力配分装置によれば、モータ制御部により電動モータの駆動方向および発生トルクを制御することによって、左右の車輪に対する駆動力の配分の割合を積極的に制御することができ、その結果、車両の旋回性能等を向上させることができる(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2は、左右の従動輪間に設けられる連結装置を開示する。この連結装置は、左右の車軸に連結される差動装置と、左右の車軸にそれぞれ対応して設けられる一対の電動モータとを備える。そして、この連結装置によれば、車両の発進時においては、一対の電動モータを共に正転(前進時)または後転(後進時)させることによって発進アシストを行ない、車両の旋回時においては、旋回方向に応じて一対の電動モータを互いに逆回転させることによって旋回アシストを行なうことができる(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−59010号公報
【特許文献2】特開平11−240347号公報
【特許文献3】特開平11−170881号公報
【特許文献4】特表2002−534050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された左右駆動力配分装置は、1つの電動モータによって左右の車輪に対する駆動力の配分を行なうため、駆動力配分の制御幅が小さい。
【0005】
また、特許文献2に開示された連結装置においては、左右に設けられた一対の電動モータは、同一仕様のモータを前提としており、やはり駆動力配分の制御幅が小さく、また、各電動モータを駆動するための電源を別途備える必要がある。
【0006】
そこで、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、左右輪の駆動力配分の制御幅を拡大し、より積極的な駆動力配分を行なうことができる車両用差動装置を提供することである。
【0007】
また、この発明の別の目的は、別途電源を備えることなく左右輪の駆動力配分を行なうことができる車両用差動装置を提供することである。
【0008】
また、この発明の別の目的は、左右輪の駆動力配分の制御幅を拡大し、より積極的な駆動力配分を行なうことができる車両用差動装置を備えた車両を提供することである。
【0009】
また、この発明の別の目的は、別途電源を備えることなく左右輪の駆動力配分を行なうことができる車両用差動装置を備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば、車両用差動装置は、第1の駆動輪に連結される第1の駆動軸と第2の駆動輪に連結される第2の駆動軸との間に設けられ、推進軸から供給される駆動力を第1および第2の駆動軸に伝達するディファレンシャルギアと、第1の駆動軸に連結されて回転し、第1の逆起電力を発生する第1のモータジェネレータと、第2の駆動軸に連結されて回転し、第1の逆起電力よりも小さい第2の逆起電力を発生する第2のモータジェネレータと、第1および第2のモータジェネレータに接続され、車両の旋回時、第1および第2のモータジェネレータを駆動して第1および第2の駆動軸の駆動力を変化させる差動制御装置とを備える。
【0011】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数を有し、第2のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数よりも小さい第2の逆起電力定数を有する。
【0012】
好ましくは、差動制御装置は、第2の駆動軸の駆動力を第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを力行駆動する。
【0013】
好ましくは、差動制御装置は、第1の駆動軸の駆動力を第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを回生駆動し、第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて第1のモータジェネレータを力行駆動する。
【0014】
また、この発明によれば、車両用差動装置は、第1の駆動輪に連結される第1の駆動軸と第2の駆動輪に連結される第2の駆動軸との間に設けられ、推進軸から供給される駆動力を第1および第2の駆動軸に伝達するディファレンシャルギアと、推進軸および第1の駆動軸のいずれか一方に連結されて回転し、第1の逆起電力を発生する第1のモータジェネレータと、推進軸および第1の駆動軸の他方に連結されて回転し、第1の逆起電力よりも小さい第2の逆起電力を発生する第2のモータジェネレータと、第1および第2のモータジェネレータに接続され、車両の旋回時、第1および第2のモータジェネレータを駆動して第1および第2の駆動軸の駆動力を変化させる差動制御装置とを備える。
【0015】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、推進軸に連結され、第2のモータジェネレータは、第1の駆動軸に連結され、差動制御装置は、第1の駆動軸の駆動力を第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを力行駆動する。
【0016】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、推進軸に連結され、第2のモータジェネレータは、第1の駆動軸に連結され、差動制御装置は、第2の駆動軸の駆動力を第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを回生駆動し、第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて第1のモータジェネレータを力行駆動する。
【0017】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、第1の駆動軸に連結され、第2のモータジェネレータは、推進軸に連結され、差動制御装置は、第1の駆動軸の駆動力を第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを回生駆動し、第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて第1のモータジェネレータを力行駆動する。
【0018】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、第1の駆動軸に連結され、第2のモータジェネレータは、推進軸に連結され、差動制御装置は、第2の駆動軸の駆動力を第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを力行駆動する。
【0019】
好ましくは、差動制御装置は、第1および第2のモータジェネレータに接続され、かつ、第1および第2のモータジェネレータ間で相互に電力変換を行なうマトリックスコンバータを含む。
【0020】
また、この発明によれば、車両は、上述したいずれかの車両用差動装置を備える。
【0021】
好ましくは、車両の駆動方式は、フロントエンジン・リアドライブ方式であり、車両用差動装置は、駆動輪である後輪の駆動軸に設けられる。
【0022】
好ましくは、車両は、ハイブリッド自動車である。
【発明の効果】
【0023】
この発明による車両用差動装置においては、第1および第2のモータジェネレータは、ディファレンシャルギアに接続される第1および第2の駆動軸にそれぞれ連結される。第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力は、第2のモータジェネレータが発生する第2の逆起電力よりも大きいので、差動制御装置は、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を制御できる。そして、差動制御装置は、車両の旋回時、第2のモータジェネレータを力行または回生駆動することにより、第1および第2のモータジェネレータ間に双方向に電力フローを発生させ、この電力フローに相当するトルクの授受が第1および第2のモータジェネレータ間で行なわれる。すなわち、第1および第2の駆動軸間でトルクの授受が行なわれる。
【0024】
したがって、この発明によれば、第1のモータジェネレータからの電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を積極的に制御することにより第1および第2の駆動輪の駆動力配分の制御幅を拡大することができ、より積極的な駆動力配分を行なうことができる。また、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を制御するので、第1および第2のモータジェネレータを駆動するための電源を別途設ける必要がない。
【0025】
また、この発明による車両用差動装置においては、第1のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数を有し、第2のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数よりも小さい第2の逆起電力定数を有するので、第1のモータジェネレータが発生する逆起電力は、第2のモータジェネレータが発生する逆起電力よりも大きい。
【0026】
したがって、この発明によれば、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を制御でき、その結果、上記と同様に、第1および第2の駆動輪の駆動力配分の制御幅を拡大することができる。
【0027】
また、この発明による車両用差動装置においては、第1のモータジェネレータは、推進軸または第1の駆動軸のいずれか一方に連結され、第2のモータジェネレータは、推進軸または第1の駆動軸の他方に連結される。第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力は、第2のモータジェネレータが発生する第2の逆起電力よりも大きいので、差動制御装置は、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を制御できる。そして、差動制御装置は、車両の旋回時、第2のモータジェネレータを力行または回生駆動することにより、第1および第2のモータジェネレータ間に双方向に電力フローを発生させ、この電力フローに相当するトルクの授受が第1および第2のモータジェネレータ間で行なわれる。すなわち、推進軸と第1の駆動軸との間でトルクの授受が行なわれ、その結果、第1および第2の駆動軸の駆動力配分が変化する。
【0028】
したがって、この発明によっても、第1のモータジェネレータからの電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を積極的に制御することにより第1および第2の駆動輪の駆動力配分の制御幅を拡大することができ、より積極的な駆動力配分を行なうことができる。また、第1および第2のモータジェネレータを駆動するための電源を別途設ける必要がない。
【0029】
また、この発明による車両用差動装置においては、差動制御装置は、第1および第2のモータジェネレータに接続され、かつ、第1および第2のモータジェネレータ間で相互に電力変換を行なうマトリックスコンバータを含むので、直流リンク部を介することなく、第1および第2のモータジェネレータ間で相互かつ直接に電力のやり取りが行なわれる。
【0030】
したがって、この発明によれば、電力損失の小さい高効率な車両用差動装置を実現できる。また、装置の小型化も実現できる。
【0031】
また、この発明による車両によれば、上述した車両用差動装置を備えるので、より積極的な駆動力配分を行なうことができ、その結果、車両の旋回時において優れた走行性を実現できる。また、第1および第2のモータジェネレータを駆動するための電源を別途設ける必要がないので、車両の低コスト化や軽量化を大きく阻害することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0033】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による車両用差動装置が搭載された車両の全体構成図である。図1を参照して、この車両100は、エンジン12と、変速機14と、プロペラシャフト16と、ディファレンシャルギア(Differential Gear、以下「DG」と称する。)18と、ドライブシャフト20,22と、モータジェネレータMG1,MG2と、差動制御装置24と、前輪26R,26Lと、後輪28R,28Lとを備える。
【0034】
エンジン12は、たとえば車両前方のエンジンルームに搭載され、この車両100の動力を発生し、その発生した動力を変速機14へ出力する。変速機14は、エンジン12から出力されるトルクの増大や回転速度の増加を行なう。プロペラシャフト16は、変速機14とDG18との間に設けられ、変速機14からの駆動力を車両後方に設けられるDG18に伝達する。
【0035】
DG18は、プロペラシャフト16から受ける駆動力をドライブシャフト20,22に伝達する。また、DG18は、車両100の旋回時に内周側の車輪と外周側の車輪との間に回転差を発生させる。さらに、DG18は、減速機として機能し、プロペラシャフト16から受けるトルクを増加させてドライブシャフト20,22に伝達する。ドライブシャフト20は、DG18と右の後輪28Rとの間に設けられ、DG18から受ける駆動力を後輪28Rへ伝達する。ドライブシャフト22は、DG18と左の後輪28Lとの間に設けられ、DG18から受ける駆動力を後輪28Lへ伝達する。
【0036】
モータジェネレータMG1,MG2は、たとえば、3相交流同期電動機からなる。モータジェネレータMG1は、ドライブシャフト20に連結され、ドライブシャフト20の回転力を用いて交流電圧を発生し、その発生した交流電圧を差動制御装置24へ出力する。また、モータジェネレータMG1は、差動制御装置24から受ける交流電圧によって駆動トルクを発生し、その発生した駆動トルクをドライブシャフト20に付与する。モータジェネレータMG2は、ドライブシャフト22に連結され、差動制御装置24から受ける交流電圧によって駆動トルクを発生し、その発生した駆動トルクをドライブシャフト22に付与する。また、モータジェネレータMG2は、差動制御装置24から受ける交流電圧によって回生駆動され、発生した回生電圧を差動制御装置24へ出力する。
【0037】
ここで、モータジェネレータMG1,MG2は、モータジェネレータMG1の逆起電力がモータジェネレータMG2の逆起電力よりも大きくなるように設計または選定される。具体的には、モータジェネレータMG1の逆起電力定数K1がモータジェネレータMG2の逆起電力定数K2よりも大きくなるように、モータジェネレータMG1,MG2が設計または選定される。ここで、逆起電力定数とは、モータジェネレータの回転速度と逆起電力との関係を示す定数であり、逆起電力定数が大きいモータジェネレータほど同一の回転速度で大きな逆起電力を発生する。
【0038】
これにより、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2の駆動を制御することができる。すなわち、仮に、2台のモータジェネレータが同一モータであって逆起電力定数が同じ場合、その2台のモータジェネレータがそれぞれ発生する逆起電力は同等となるので、一方のモータジェネレータが発生した逆起電力を用いて他方のモータジェネレータの駆動を制御することはできない。
【0039】
しかしながら、この実施の形態1では、モータジェネレータMG1の逆起電力定数K1をモータジェネレータMG2の逆起電力定数K2よりも大きくすることにより、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力をモータジェネレータMG2が発生する逆起電力よりも大きくさせることによって、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2の駆動を制御可能としたものである。
【0040】
差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2に接続され、車両100の旋回時、モータジェネレータMG1,MG2間で電力のやり取りを行なう。差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生した逆起電力を受け、車両100の旋回時、その旋回方向に応じてモータジェネレータMG2を力行駆動または回生駆動する。これにより、差動制御装置24は、車両100の旋回時、モータジェネレータMG1,MG2間に旋回方向に応じた電力フローを発生させ、ドライブシャフト20,22間すなわち後輪28R,28L間の駆動力の配分を制御する。なお、この差動制御装置24の具体的な動作については、後ほど詳しく説明する。
【0041】
この車両100においては、エンジン12によって発生した動力は、変速機14およびプロペラシャフト16を介してDG18へ伝達され、DG18によってドライブシャフト20,22に配分される。ここで、車両100の旋回時、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2の動作を制御し、車両100の旋回方向に応じてモータジェネレータMG1,MG2間に電力フローを発生させ、ドライブシャフト20,22間の駆動力の配分を制御する。
【0042】
図2は、図1に示した差動制御装置24の回路図である。図2を参照して、この差動制御装置24は、マトリックスコンバータ50と、制御装置52とを含む。マトリックスコンバータ50は、電源ラインLa〜Lcを介してモータジェネレータMG1と接続され、電源ラインLA〜LCを介してモータジェネレータMG2と接続される。
【0043】
マトリックスコンバータ50は、双方向性スイッチSAa〜SAc,SBa〜SBc,SCa〜SCcと、電源ラインLA〜LC,La〜Lcとからなる。双方向性スイッチSXy(「X」はA〜Cのいずれかであり、「y」はa〜cのいずれかである。以下同じ。)は、電源ラインLXと電源ラインLyとの間に接続される。そして、各双方向性スイッチSXyは、制御装置52からの制御信号に応じてスイッチング動作を行ない、オン状態のときは、対応する2つの電源ライン間で双方向に電流を流すことができる。また、各双方向性スイッチSXyは、オフ状態のときは、対応する2つの電源ラインを電気的に分離する。
【0044】
このマトリックスコンバータ50は、モータジェネレータMG1,MG2間で相互に電力変換を行なう。具体的には、マトリックスコンバータ50は、制御装置52からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行ない、モータジェネレータMG1から受ける3相交流電力を所望の電圧および周波数からなる3相交流電力に変換し、その変換した3相交流電力をモータジェネレータMG2へ出力してモータジェネレータMG2を力行駆動する。
【0045】
また、マトリックスコンバータ50は、制御装置52からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行ない、モータジェネレータMG1から受ける3相交流電力を所望の電圧および周波数からなる3相交流電力に変換し、その変換した3相交流電力をモータジェネレータMG2へ出力してモータジェネレータMG2を回生駆動するとともに、モータジェネレータMG2によって回生発電された3相交流電力を所望の電圧および周波数からなる3相交流電力に変換し、その変換した3相交流電力をモータジェネレータMG1へ出力してモータジェネレータMG1を力行駆動する。
【0046】
制御装置52は、モータジェネレータMG1,MG2のトルク指令値、モータ電圧、モータ電流およびモータ回転数に基づいてモータジェネレータMG1,MG2を駆動するためのPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成し、その生成したPWM信号を制御信号としてマトリックスコンバータ50の各双方向性スイッチSXyへ出力する。なお、各双方向性スイッチSXyのPWM制御については、3×3のマトリックスコンバータにおける公知のスイッチング制御手法を用いることができる。また、モータジェネレータMG1,MG2のモータ電圧、モータ電流およびモータ回転数は、図示されない各センサによって検出される。
【0047】
図3は、図2に示した双方向性スイッチSXyの構成を示す回路図である。図3を参照して、双方向性スイッチSXyは、npn型トランジスタ54,58と、ダイオード56,60とからなる。npn型トランジスタ54,58は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)からなる。
【0048】
npn型トランジスタ54は、コレクタが端子62に接続され、ダイオード60のアノードにエミッタが接続され、制御装置52(図示せず、以下同じ。)からの制御信号をベース端子に受ける。ダイオード56は、npn型トランジスタ54と逆並列に接続される。また、npn型トランジスタ58は、コレクタが端子64に接続され、ダイオード56のアノードにエミッタが接続され、制御装置52からの制御信号をベース端子に受ける。ダイオード60は、npn型トランジスタ58と逆並列に接続される。そして、パワートランジスタ54とダイオード60との接続点は、パワートランジスタ58とダイオード56との接続点と接続される。端子62,64は、対応する2つの電源ラインにそれぞれ接続される。
【0049】
この双方向性スイッチSXyにおいては、制御装置52からの制御信号が活性化されると、パワートランジスタ54,58がオンし、パワートランジスタ54およびダイオード60を介して端子62から端子64へ電流を流すことができ、また、パワートランジスタ58およびダイオード56を介して端子64から端子62へも電流を流すことができる。
【0050】
したがって、端子64よりも端子62の方が高電圧のときは、パワートランジスタ54およびダイオード60を介して端子62から端子64へ電流が流れ、端子62よりも端子64の方が高電圧のときは、パワートランジスタ58およびダイオード56を介して端子64から端子62へ電流が流れる。
【0051】
図4〜図6は、この発明の実施の形態1による車両用差動装置の動作を説明するための図である。図4は、車両100の直進時の動作を示し、図5は、車両100の右旋回時の動作を示し、図6は、車両100の左旋回時の動作を示す。なお、この図4〜図6においては、説明を簡単にするため、DG18におけるトルクの増加は無いものとして説明する。
【0052】
図4を参照して、車両100が直進しているとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2の駆動制御を停止する。すなわち、モータジェネレータMG1,MG2間で電力フローは発生しない。したがって、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、DG18によってドライブシャフト20,22に均等に配分される。
【0053】
図5を参照して、車両100が右旋回するとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2を力行駆動する。具体的には、モータジェネレータMG1は、ドライブシャフト20の回転力を用いて発電し、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1から電力の供給を受けてモータジェネレータMG2を力行駆動し、モータジェネレータMG2は、差動制御装置24から電力の供給を受けて発生した駆動トルクをドライブシャフト22に付与する。
【0054】
すなわち、モータジェネレータMG1からモータジェネレータMG2へ差動制御装置24を介して電力フローが発生し、この電力フローに相当するトルクΔTがドライブシャフト22からドライブシャフト20へ伝達される。したがって、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、ドライブシャフト20,22にそれぞれ(T/2−ΔT),(T/2+ΔT)に配分される。
【0055】
これにより、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、内周側の右の後輪28Rよりも外周側の左の後輪28Lに多く配分され、車両100は、スムースに右旋回を行なうことができる。
【0056】
図6を参照して、車両100が左旋回するとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2を回生駆動する。具体的には、モータジェネレータMG1は、ドライブシャフト20の回転力を用いて発電し、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1から電力の供給を受けてモータジェネレータMG2を回生駆動する。そして、さらに、差動制御装置24は、モータジェネレータMG2から回生電力の供給を受けてモータジェネレータMG1を力行駆動し、モータジェネレータMG1は、差動制御装置24から電力の供給を受けて発生した駆動トルクをドライブシャフト20に付与する。
【0057】
すなわち、全体としてモータジェネレータMG2からモータジェネレータMG1への電力フローが発生し、この電力フローに相当するトルクΔTがドライブシャフト22からドライブシャフト20へ伝達される。したがって、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、ドライブシャフト20,22にそれぞれ(T/2+ΔT),(T/2−ΔT)に配分される。
【0058】
これにより、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、内周側の左の後輪28Lよりも外周側の右の後輪28Rに多く配分され、車両100は、スムースに左旋回を行なうことができる。
【0059】
以上のように、この実施の形態1によれば、逆起電力の大きいモータジェネレータMG1からの電力を用いてモータジェネレータMG2の駆動を制御し、モータジェネレータMG1,MG2間に双方向に電力フローを発生させるようにしたので、ドライブシャフト20,22間すなわち後輪28R,28L間の駆動力の配分を積極的かつ広範囲に制御することができる。その結果、車両100の旋回性能が向上する。
【0060】
また、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いて他方のモータジェネレータMG2を駆動するので、モータジェネレータMG1,MG2を駆動するための電源を別途設ける必要はない。
【0061】
また、モータジェネレータMG1,MG2間で電力のやり取りを行なう差動制御装置24をマトリックスコンバータ50で構成したので、差動制御装置24内にコンデンサ等のエネルギー蓄積要素を必要とせず、かつ、個々のスイッチング素子のサイズを小さくでき、その結果、差動制御装置24を小型化できる。
【0062】
[実施の形態2]
図7は、この発明の実施の形態2による車両用差動装置が搭載された車両の全体構成図である。図7を参照して、この車両100Aにおいては、モータジェネレータMG1がプロペラシャフト16に連結される。車両100Aのその他の構成は、図1に示した実施の形態1における車両100と同じである。
【0063】
この車両100Aにおいても、モータジェネレータMG1,MG2は、モータジェネレータMG1の逆起電力がモータジェネレータMG2の逆起電力よりも大きくなるように設計または選定される。そして、モータジェネレータMG1は、プロペラシャフト16の回転力を用いて交流電圧を発生し、その発生した交流電圧を差動制御装置24へ出力する。また、モータジェネレータMG1は、差動制御装置24から受ける交流電圧によって駆動トルクを発生し、その発生した駆動トルクをプロペラシャフト16に付与する。
【0064】
図8〜図10は、この発明の実施の形態2による車両用差動装置の動作を説明するための図である。図8は、車両100Aの直進時の動作を示し、図9は、車両100Aの右旋回時の動作を示し、図10は、車両100Aの左旋回時の動作を示す。なお、この図8〜図10においては、説明を簡単にするため、DG18におけるトルクの増加は無いものとして説明する。
【0065】
図8を参照して、車両100Aが直進しているとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2の駆動制御を停止する。すなわち、モータジェネレータMG1,MG2間で電力フローは発生しない。したがって、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、DG18によってドライブシャフト20,22に均等に配分される。
【0066】
図9を参照して、車両100Aが右旋回するとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2を力行駆動する。具体的には、モータジェネレータMG1は、プロペラシャフト16の回転力を用いて発電し、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1から電力の供給を受けてモータジェネレータMG2を力行駆動し、モータジェネレータMG2は、差動制御装置24から電力の供給を受けて発生した駆動トルクをドライブシャフト22に付与する。
【0067】
すなわち、モータジェネレータMG1からモータジェネレータMG2へ差動制御装置24を介して電力フローが発生し、この電力フローに相当するトルクΔTがプロペラシャフト16からドライブシャフト22へ伝達される。したがって、プロペラシャフト16のトルクは(T−ΔT)となり、その結果、ドライブシャフト20,22にそれぞれ(T−ΔT)/2,(T+ΔT)/2のトルクが配分される。
【0068】
図10を参照して、車両100Aが左旋回するとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2を回生駆動する。具体的には、モータジェネレータMG1は、プロペラシャフト16の回転力を用いて発電し、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1から電力の供給を受けてモータジェネレータMG2を回生駆動する。そして、さらに、差動制御装置24は、モータジェネレータMG2から回生電力の供給を受けてモータジェネレータMG1を力行駆動し、モータジェネレータMG1は、差動制御装置24から電力の供給を受けて発生した駆動トルクをプロペラシャフト16に付与する。
【0069】
すなわち、全体としてモータジェネレータMG2からモータジェネレータMG1への電力フローが発生し、この電力フローに相当するトルクΔTがドライブシャフト22からプロペラシャフト16へ伝達される。したがって、プロペラシャフト16のトルクは(T+ΔT)となり、その結果、ドライブシャフト20,22にそれぞれ(T+ΔT)/2,(T−ΔT)/2のトルクが配分される。
【0070】
以上のように、この実施の形態2によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0071】
なお、上記の実施の形態2においては、プロペラシャフト16に連結されるモータジェネレータMG1の逆起電力が、ドライブシャフト22に連結されるモータジェネレータMG2の逆起電力よりも大きくなるように設計または選定されるものとしたが、モータジェネレータMG2の逆起電力がモータジェネレータMG1の逆起電力よりも大きくなるようにモータジェネレータMG1,MG2を設計または選定してもよい。すなわち、モータジェネレータMG2の逆起電力定数K2がモータジェネレータMG1の逆起電力定数K1よりも大きくなるように、モータジェネレータMG1,MG2を設計または選定してもよい。
【0072】
そして、モータジェネレータMG2が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG1の駆動を制御することにより、モータジェネレータMG1,MG2間に双方向の電力フローを発生させることができるので、この場合も上記と同様に、後輪28R,28L間の駆動力の配分を積極的かつ広範囲に制御することができる。
【0073】
なお、上記の実施の形態1,2においては、差動制御装置24は、マトリックスコンバータ50によって構成されるものとしたが、この発明の適用範囲は、差動制御装置24がマトリックスコンバータで構成されるものに限られるものではない。
【0074】
図11は、図1に示した差動制御装置の他の構成を示す回路図である。図11を参照して、この差動制御装置24Aは、インバータ70,80と、コンデンサCと、制御装置90と、電源ラインPLと、接地ラインSLとを含む。インバータ70は、U相アーム72、V相アーム74およびW相アーム76からなり、各相アームの上下アームの接続点は、それぞれモータジェネレータMG1の対応するコイルの反中性点側と接続される。インバータ80は、U相アーム82、V相アーム84およびW相アーム86からなり、各相アームの上下アームの接続点は、それぞれモータジェネレータMG2の対応するコイルの反中性点側と接続される。
【0075】
コンデンサCは、電源ラインPLと接地ラインSLとの間に接続され、インバータ70または80によって整流された直流電力を蓄積する。制御装置90は、コンデンサCからの直流電力を用いてモータジェネレータMG1,MG2を力行駆動または回生駆動するためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を制御信号としてインバータ70,80の各npn型トランジスタQ11〜Q16,Q21〜Q26へ出力する。
【0076】
この差動制御装置24Aにおいては、インバータ70は、モータジェネレータMG1によって発電された交流電圧を整流してコンデンサCに供給する。そして、インバータ80は、制御装置90からの制御信号に基づいて、コンデンサCからの直流電圧を交流電圧に変換し、その変換した交流電圧をモータジェネレータMG2へ出力してモータジェネレータMG2を力行駆動する。
【0077】
また、インバータ80は、制御装置90からの制御信号に基づいて、モータジェネレータMG2を回生駆動し、モータジェネレータMG2によって発電された交流電圧を整流してコンデンサCに供給する。そして、インバータ70は、コンデンサCからの直流電圧を交流電圧に変換し、その変換した交流電圧をモータジェネレータMG1へ出力してモータジェネレータMG1を力行駆動する。
【0078】
このように、直流リンク部を含む電力変換装置によっても、差動制御装置を構成することができる。
【0079】
なお、上記の実施の形態1,2においては、モータジェネレータMG1,MG2は、3相交流同期電動機からなるものとしたが、モータジェネレータMG1,MG2は、直流電動機で構成してもよい。
【0080】
また、上記においては、車両100,100Aのパワートレーンは、FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式として説明したが、この発明の適用範囲は、車両のパワートレーンがFR方式のものに限定されるものではなく、種々のパワートレーン方式の車両に適用することができる。また、動力源がエンジンのものに限定されるものではなく、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)や電気自動車(Electric Vehicle)など直流電源を動力源として備える車両であってもよい。
【0081】
なお、上記において、ドライブシャフト20,22は、「第1の駆動軸」または「第2の駆動軸」を構成し、プロペラシャフト16は、「推進軸」を構成する。そして、DG18、モータジェネレータMG1,MG2および差動制御装置24(24A)は、「車両用差動装置」を構成する。
【0082】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の実施の形態1による車両用差動装置が搭載された車両の全体構成図である。
【図2】図1に示す差動制御装置の回路図である。
【図3】図2に示す双方向性スイッチSXyの構成を示す回路図である。
【図4】この発明の実施の形態1による車両用差動装置の直進時の動作を説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態1による車両用差動装置の右旋回時の動作を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態1による車両用差動装置の左旋回時の動作を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態2による車両用差動装置が搭載された車両の全体構成図である。
【図8】この発明の実施の形態2による車両用差動装置の直進時の動作を説明するための図である。
【図9】この発明の実施の形態2による車両用差動装置の右旋回時の動作を説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態2による車両用差動装置の左旋回時の動作を説明するための図である。
【図11】図1に示す差動制御装置の他の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0084】
12 エンジン、14 変速機、16 プロペラシャフト、18 DG、20,22 ドライブシャフト、24,24A 差動制御装置、26R,26L 前輪、28R,28L 後輪、50 マトリックスコンバータ、52,90 制御装置、54,58,Q11〜Q16,Q21〜Q26 npn型トランジスタ、56,60,D11〜D16,D21〜D26 ダイオード、70,80 インバータ、72,82 U相アーム、74,84 V相アーム、76,86 W相アーム、100,100A 車両、MG1,MG2 モータジェネレータ、LA〜LC,La〜Lc,PL 電源ライン、SAa〜SAc,SBa〜SBc,SCa〜SCc 双方向性スイッチ、C コンデンサ、SL 接地ライン。
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用差動装置およびそれを備えた車両に関し、特に、電動機によって左右の駆動輪の駆動力配分を積極的に制御する車両用差動装置およびそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、左右の車輪の駆動力配分を積極的に制御可能な左右駆動力配分装置を開示する。この左右駆動力配分装置は、左の車軸とディファレンシャルケースとの間に相対的な回転力を付与可能な電動モータと、ディファレンシャルケースの回転力によって発電するジェネレータと、電動モータの動作を制御するモータ制御部とを備える。そして、この左右駆動力配分装置によれば、モータ制御部により電動モータの駆動方向および発生トルクを制御することによって、左右の車輪に対する駆動力の配分の割合を積極的に制御することができ、その結果、車両の旋回性能等を向上させることができる(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2は、左右の従動輪間に設けられる連結装置を開示する。この連結装置は、左右の車軸に連結される差動装置と、左右の車軸にそれぞれ対応して設けられる一対の電動モータとを備える。そして、この連結装置によれば、車両の発進時においては、一対の電動モータを共に正転(前進時)または後転(後進時)させることによって発進アシストを行ない、車両の旋回時においては、旋回方向に応じて一対の電動モータを互いに逆回転させることによって旋回アシストを行なうことができる(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−59010号公報
【特許文献2】特開平11−240347号公報
【特許文献3】特開平11−170881号公報
【特許文献4】特表2002−534050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された左右駆動力配分装置は、1つの電動モータによって左右の車輪に対する駆動力の配分を行なうため、駆動力配分の制御幅が小さい。
【0005】
また、特許文献2に開示された連結装置においては、左右に設けられた一対の電動モータは、同一仕様のモータを前提としており、やはり駆動力配分の制御幅が小さく、また、各電動モータを駆動するための電源を別途備える必要がある。
【0006】
そこで、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、左右輪の駆動力配分の制御幅を拡大し、より積極的な駆動力配分を行なうことができる車両用差動装置を提供することである。
【0007】
また、この発明の別の目的は、別途電源を備えることなく左右輪の駆動力配分を行なうことができる車両用差動装置を提供することである。
【0008】
また、この発明の別の目的は、左右輪の駆動力配分の制御幅を拡大し、より積極的な駆動力配分を行なうことができる車両用差動装置を備えた車両を提供することである。
【0009】
また、この発明の別の目的は、別途電源を備えることなく左右輪の駆動力配分を行なうことができる車両用差動装置を備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば、車両用差動装置は、第1の駆動輪に連結される第1の駆動軸と第2の駆動輪に連結される第2の駆動軸との間に設けられ、推進軸から供給される駆動力を第1および第2の駆動軸に伝達するディファレンシャルギアと、第1の駆動軸に連結されて回転し、第1の逆起電力を発生する第1のモータジェネレータと、第2の駆動軸に連結されて回転し、第1の逆起電力よりも小さい第2の逆起電力を発生する第2のモータジェネレータと、第1および第2のモータジェネレータに接続され、車両の旋回時、第1および第2のモータジェネレータを駆動して第1および第2の駆動軸の駆動力を変化させる差動制御装置とを備える。
【0011】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数を有し、第2のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数よりも小さい第2の逆起電力定数を有する。
【0012】
好ましくは、差動制御装置は、第2の駆動軸の駆動力を第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを力行駆動する。
【0013】
好ましくは、差動制御装置は、第1の駆動軸の駆動力を第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを回生駆動し、第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて第1のモータジェネレータを力行駆動する。
【0014】
また、この発明によれば、車両用差動装置は、第1の駆動輪に連結される第1の駆動軸と第2の駆動輪に連結される第2の駆動軸との間に設けられ、推進軸から供給される駆動力を第1および第2の駆動軸に伝達するディファレンシャルギアと、推進軸および第1の駆動軸のいずれか一方に連結されて回転し、第1の逆起電力を発生する第1のモータジェネレータと、推進軸および第1の駆動軸の他方に連結されて回転し、第1の逆起電力よりも小さい第2の逆起電力を発生する第2のモータジェネレータと、第1および第2のモータジェネレータに接続され、車両の旋回時、第1および第2のモータジェネレータを駆動して第1および第2の駆動軸の駆動力を変化させる差動制御装置とを備える。
【0015】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、推進軸に連結され、第2のモータジェネレータは、第1の駆動軸に連結され、差動制御装置は、第1の駆動軸の駆動力を第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを力行駆動する。
【0016】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、推進軸に連結され、第2のモータジェネレータは、第1の駆動軸に連結され、差動制御装置は、第2の駆動軸の駆動力を第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを回生駆動し、第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて第1のモータジェネレータを力行駆動する。
【0017】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、第1の駆動軸に連結され、第2のモータジェネレータは、推進軸に連結され、差動制御装置は、第1の駆動軸の駆動力を第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを回生駆動し、第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて第1のモータジェネレータを力行駆動する。
【0018】
好ましくは、第1のモータジェネレータは、第1の駆動軸に連結され、第2のモータジェネレータは、推進軸に連結され、差動制御装置は、第2の駆動軸の駆動力を第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータを力行駆動する。
【0019】
好ましくは、差動制御装置は、第1および第2のモータジェネレータに接続され、かつ、第1および第2のモータジェネレータ間で相互に電力変換を行なうマトリックスコンバータを含む。
【0020】
また、この発明によれば、車両は、上述したいずれかの車両用差動装置を備える。
【0021】
好ましくは、車両の駆動方式は、フロントエンジン・リアドライブ方式であり、車両用差動装置は、駆動輪である後輪の駆動軸に設けられる。
【0022】
好ましくは、車両は、ハイブリッド自動車である。
【発明の効果】
【0023】
この発明による車両用差動装置においては、第1および第2のモータジェネレータは、ディファレンシャルギアに接続される第1および第2の駆動軸にそれぞれ連結される。第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力は、第2のモータジェネレータが発生する第2の逆起電力よりも大きいので、差動制御装置は、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を制御できる。そして、差動制御装置は、車両の旋回時、第2のモータジェネレータを力行または回生駆動することにより、第1および第2のモータジェネレータ間に双方向に電力フローを発生させ、この電力フローに相当するトルクの授受が第1および第2のモータジェネレータ間で行なわれる。すなわち、第1および第2の駆動軸間でトルクの授受が行なわれる。
【0024】
したがって、この発明によれば、第1のモータジェネレータからの電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を積極的に制御することにより第1および第2の駆動輪の駆動力配分の制御幅を拡大することができ、より積極的な駆動力配分を行なうことができる。また、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を制御するので、第1および第2のモータジェネレータを駆動するための電源を別途設ける必要がない。
【0025】
また、この発明による車両用差動装置においては、第1のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数を有し、第2のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数よりも小さい第2の逆起電力定数を有するので、第1のモータジェネレータが発生する逆起電力は、第2のモータジェネレータが発生する逆起電力よりも大きい。
【0026】
したがって、この発明によれば、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を制御でき、その結果、上記と同様に、第1および第2の駆動輪の駆動力配分の制御幅を拡大することができる。
【0027】
また、この発明による車両用差動装置においては、第1のモータジェネレータは、推進軸または第1の駆動軸のいずれか一方に連結され、第2のモータジェネレータは、推進軸または第1の駆動軸の他方に連結される。第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力は、第2のモータジェネレータが発生する第2の逆起電力よりも大きいので、差動制御装置は、第1のモータジェネレータが発生する第1の逆起電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を制御できる。そして、差動制御装置は、車両の旋回時、第2のモータジェネレータを力行または回生駆動することにより、第1および第2のモータジェネレータ間に双方向に電力フローを発生させ、この電力フローに相当するトルクの授受が第1および第2のモータジェネレータ間で行なわれる。すなわち、推進軸と第1の駆動軸との間でトルクの授受が行なわれ、その結果、第1および第2の駆動軸の駆動力配分が変化する。
【0028】
したがって、この発明によっても、第1のモータジェネレータからの電力を用いて第2のモータジェネレータの駆動を積極的に制御することにより第1および第2の駆動輪の駆動力配分の制御幅を拡大することができ、より積極的な駆動力配分を行なうことができる。また、第1および第2のモータジェネレータを駆動するための電源を別途設ける必要がない。
【0029】
また、この発明による車両用差動装置においては、差動制御装置は、第1および第2のモータジェネレータに接続され、かつ、第1および第2のモータジェネレータ間で相互に電力変換を行なうマトリックスコンバータを含むので、直流リンク部を介することなく、第1および第2のモータジェネレータ間で相互かつ直接に電力のやり取りが行なわれる。
【0030】
したがって、この発明によれば、電力損失の小さい高効率な車両用差動装置を実現できる。また、装置の小型化も実現できる。
【0031】
また、この発明による車両によれば、上述した車両用差動装置を備えるので、より積極的な駆動力配分を行なうことができ、その結果、車両の旋回時において優れた走行性を実現できる。また、第1および第2のモータジェネレータを駆動するための電源を別途設ける必要がないので、車両の低コスト化や軽量化を大きく阻害することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0033】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による車両用差動装置が搭載された車両の全体構成図である。図1を参照して、この車両100は、エンジン12と、変速機14と、プロペラシャフト16と、ディファレンシャルギア(Differential Gear、以下「DG」と称する。)18と、ドライブシャフト20,22と、モータジェネレータMG1,MG2と、差動制御装置24と、前輪26R,26Lと、後輪28R,28Lとを備える。
【0034】
エンジン12は、たとえば車両前方のエンジンルームに搭載され、この車両100の動力を発生し、その発生した動力を変速機14へ出力する。変速機14は、エンジン12から出力されるトルクの増大や回転速度の増加を行なう。プロペラシャフト16は、変速機14とDG18との間に設けられ、変速機14からの駆動力を車両後方に設けられるDG18に伝達する。
【0035】
DG18は、プロペラシャフト16から受ける駆動力をドライブシャフト20,22に伝達する。また、DG18は、車両100の旋回時に内周側の車輪と外周側の車輪との間に回転差を発生させる。さらに、DG18は、減速機として機能し、プロペラシャフト16から受けるトルクを増加させてドライブシャフト20,22に伝達する。ドライブシャフト20は、DG18と右の後輪28Rとの間に設けられ、DG18から受ける駆動力を後輪28Rへ伝達する。ドライブシャフト22は、DG18と左の後輪28Lとの間に設けられ、DG18から受ける駆動力を後輪28Lへ伝達する。
【0036】
モータジェネレータMG1,MG2は、たとえば、3相交流同期電動機からなる。モータジェネレータMG1は、ドライブシャフト20に連結され、ドライブシャフト20の回転力を用いて交流電圧を発生し、その発生した交流電圧を差動制御装置24へ出力する。また、モータジェネレータMG1は、差動制御装置24から受ける交流電圧によって駆動トルクを発生し、その発生した駆動トルクをドライブシャフト20に付与する。モータジェネレータMG2は、ドライブシャフト22に連結され、差動制御装置24から受ける交流電圧によって駆動トルクを発生し、その発生した駆動トルクをドライブシャフト22に付与する。また、モータジェネレータMG2は、差動制御装置24から受ける交流電圧によって回生駆動され、発生した回生電圧を差動制御装置24へ出力する。
【0037】
ここで、モータジェネレータMG1,MG2は、モータジェネレータMG1の逆起電力がモータジェネレータMG2の逆起電力よりも大きくなるように設計または選定される。具体的には、モータジェネレータMG1の逆起電力定数K1がモータジェネレータMG2の逆起電力定数K2よりも大きくなるように、モータジェネレータMG1,MG2が設計または選定される。ここで、逆起電力定数とは、モータジェネレータの回転速度と逆起電力との関係を示す定数であり、逆起電力定数が大きいモータジェネレータほど同一の回転速度で大きな逆起電力を発生する。
【0038】
これにより、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2の駆動を制御することができる。すなわち、仮に、2台のモータジェネレータが同一モータであって逆起電力定数が同じ場合、その2台のモータジェネレータがそれぞれ発生する逆起電力は同等となるので、一方のモータジェネレータが発生した逆起電力を用いて他方のモータジェネレータの駆動を制御することはできない。
【0039】
しかしながら、この実施の形態1では、モータジェネレータMG1の逆起電力定数K1をモータジェネレータMG2の逆起電力定数K2よりも大きくすることにより、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力をモータジェネレータMG2が発生する逆起電力よりも大きくさせることによって、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2の駆動を制御可能としたものである。
【0040】
差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2に接続され、車両100の旋回時、モータジェネレータMG1,MG2間で電力のやり取りを行なう。差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生した逆起電力を受け、車両100の旋回時、その旋回方向に応じてモータジェネレータMG2を力行駆動または回生駆動する。これにより、差動制御装置24は、車両100の旋回時、モータジェネレータMG1,MG2間に旋回方向に応じた電力フローを発生させ、ドライブシャフト20,22間すなわち後輪28R,28L間の駆動力の配分を制御する。なお、この差動制御装置24の具体的な動作については、後ほど詳しく説明する。
【0041】
この車両100においては、エンジン12によって発生した動力は、変速機14およびプロペラシャフト16を介してDG18へ伝達され、DG18によってドライブシャフト20,22に配分される。ここで、車両100の旋回時、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2の動作を制御し、車両100の旋回方向に応じてモータジェネレータMG1,MG2間に電力フローを発生させ、ドライブシャフト20,22間の駆動力の配分を制御する。
【0042】
図2は、図1に示した差動制御装置24の回路図である。図2を参照して、この差動制御装置24は、マトリックスコンバータ50と、制御装置52とを含む。マトリックスコンバータ50は、電源ラインLa〜Lcを介してモータジェネレータMG1と接続され、電源ラインLA〜LCを介してモータジェネレータMG2と接続される。
【0043】
マトリックスコンバータ50は、双方向性スイッチSAa〜SAc,SBa〜SBc,SCa〜SCcと、電源ラインLA〜LC,La〜Lcとからなる。双方向性スイッチSXy(「X」はA〜Cのいずれかであり、「y」はa〜cのいずれかである。以下同じ。)は、電源ラインLXと電源ラインLyとの間に接続される。そして、各双方向性スイッチSXyは、制御装置52からの制御信号に応じてスイッチング動作を行ない、オン状態のときは、対応する2つの電源ライン間で双方向に電流を流すことができる。また、各双方向性スイッチSXyは、オフ状態のときは、対応する2つの電源ラインを電気的に分離する。
【0044】
このマトリックスコンバータ50は、モータジェネレータMG1,MG2間で相互に電力変換を行なう。具体的には、マトリックスコンバータ50は、制御装置52からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行ない、モータジェネレータMG1から受ける3相交流電力を所望の電圧および周波数からなる3相交流電力に変換し、その変換した3相交流電力をモータジェネレータMG2へ出力してモータジェネレータMG2を力行駆動する。
【0045】
また、マトリックスコンバータ50は、制御装置52からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行ない、モータジェネレータMG1から受ける3相交流電力を所望の電圧および周波数からなる3相交流電力に変換し、その変換した3相交流電力をモータジェネレータMG2へ出力してモータジェネレータMG2を回生駆動するとともに、モータジェネレータMG2によって回生発電された3相交流電力を所望の電圧および周波数からなる3相交流電力に変換し、その変換した3相交流電力をモータジェネレータMG1へ出力してモータジェネレータMG1を力行駆動する。
【0046】
制御装置52は、モータジェネレータMG1,MG2のトルク指令値、モータ電圧、モータ電流およびモータ回転数に基づいてモータジェネレータMG1,MG2を駆動するためのPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成し、その生成したPWM信号を制御信号としてマトリックスコンバータ50の各双方向性スイッチSXyへ出力する。なお、各双方向性スイッチSXyのPWM制御については、3×3のマトリックスコンバータにおける公知のスイッチング制御手法を用いることができる。また、モータジェネレータMG1,MG2のモータ電圧、モータ電流およびモータ回転数は、図示されない各センサによって検出される。
【0047】
図3は、図2に示した双方向性スイッチSXyの構成を示す回路図である。図3を参照して、双方向性スイッチSXyは、npn型トランジスタ54,58と、ダイオード56,60とからなる。npn型トランジスタ54,58は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)からなる。
【0048】
npn型トランジスタ54は、コレクタが端子62に接続され、ダイオード60のアノードにエミッタが接続され、制御装置52(図示せず、以下同じ。)からの制御信号をベース端子に受ける。ダイオード56は、npn型トランジスタ54と逆並列に接続される。また、npn型トランジスタ58は、コレクタが端子64に接続され、ダイオード56のアノードにエミッタが接続され、制御装置52からの制御信号をベース端子に受ける。ダイオード60は、npn型トランジスタ58と逆並列に接続される。そして、パワートランジスタ54とダイオード60との接続点は、パワートランジスタ58とダイオード56との接続点と接続される。端子62,64は、対応する2つの電源ラインにそれぞれ接続される。
【0049】
この双方向性スイッチSXyにおいては、制御装置52からの制御信号が活性化されると、パワートランジスタ54,58がオンし、パワートランジスタ54およびダイオード60を介して端子62から端子64へ電流を流すことができ、また、パワートランジスタ58およびダイオード56を介して端子64から端子62へも電流を流すことができる。
【0050】
したがって、端子64よりも端子62の方が高電圧のときは、パワートランジスタ54およびダイオード60を介して端子62から端子64へ電流が流れ、端子62よりも端子64の方が高電圧のときは、パワートランジスタ58およびダイオード56を介して端子64から端子62へ電流が流れる。
【0051】
図4〜図6は、この発明の実施の形態1による車両用差動装置の動作を説明するための図である。図4は、車両100の直進時の動作を示し、図5は、車両100の右旋回時の動作を示し、図6は、車両100の左旋回時の動作を示す。なお、この図4〜図6においては、説明を簡単にするため、DG18におけるトルクの増加は無いものとして説明する。
【0052】
図4を参照して、車両100が直進しているとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2の駆動制御を停止する。すなわち、モータジェネレータMG1,MG2間で電力フローは発生しない。したがって、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、DG18によってドライブシャフト20,22に均等に配分される。
【0053】
図5を参照して、車両100が右旋回するとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2を力行駆動する。具体的には、モータジェネレータMG1は、ドライブシャフト20の回転力を用いて発電し、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1から電力の供給を受けてモータジェネレータMG2を力行駆動し、モータジェネレータMG2は、差動制御装置24から電力の供給を受けて発生した駆動トルクをドライブシャフト22に付与する。
【0054】
すなわち、モータジェネレータMG1からモータジェネレータMG2へ差動制御装置24を介して電力フローが発生し、この電力フローに相当するトルクΔTがドライブシャフト22からドライブシャフト20へ伝達される。したがって、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、ドライブシャフト20,22にそれぞれ(T/2−ΔT),(T/2+ΔT)に配分される。
【0055】
これにより、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、内周側の右の後輪28Rよりも外周側の左の後輪28Lに多く配分され、車両100は、スムースに右旋回を行なうことができる。
【0056】
図6を参照して、車両100が左旋回するとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2を回生駆動する。具体的には、モータジェネレータMG1は、ドライブシャフト20の回転力を用いて発電し、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1から電力の供給を受けてモータジェネレータMG2を回生駆動する。そして、さらに、差動制御装置24は、モータジェネレータMG2から回生電力の供給を受けてモータジェネレータMG1を力行駆動し、モータジェネレータMG1は、差動制御装置24から電力の供給を受けて発生した駆動トルクをドライブシャフト20に付与する。
【0057】
すなわち、全体としてモータジェネレータMG2からモータジェネレータMG1への電力フローが発生し、この電力フローに相当するトルクΔTがドライブシャフト22からドライブシャフト20へ伝達される。したがって、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、ドライブシャフト20,22にそれぞれ(T/2+ΔT),(T/2−ΔT)に配分される。
【0058】
これにより、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、内周側の左の後輪28Lよりも外周側の右の後輪28Rに多く配分され、車両100は、スムースに左旋回を行なうことができる。
【0059】
以上のように、この実施の形態1によれば、逆起電力の大きいモータジェネレータMG1からの電力を用いてモータジェネレータMG2の駆動を制御し、モータジェネレータMG1,MG2間に双方向に電力フローを発生させるようにしたので、ドライブシャフト20,22間すなわち後輪28R,28L間の駆動力の配分を積極的かつ広範囲に制御することができる。その結果、車両100の旋回性能が向上する。
【0060】
また、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いて他方のモータジェネレータMG2を駆動するので、モータジェネレータMG1,MG2を駆動するための電源を別途設ける必要はない。
【0061】
また、モータジェネレータMG1,MG2間で電力のやり取りを行なう差動制御装置24をマトリックスコンバータ50で構成したので、差動制御装置24内にコンデンサ等のエネルギー蓄積要素を必要とせず、かつ、個々のスイッチング素子のサイズを小さくでき、その結果、差動制御装置24を小型化できる。
【0062】
[実施の形態2]
図7は、この発明の実施の形態2による車両用差動装置が搭載された車両の全体構成図である。図7を参照して、この車両100Aにおいては、モータジェネレータMG1がプロペラシャフト16に連結される。車両100Aのその他の構成は、図1に示した実施の形態1における車両100と同じである。
【0063】
この車両100Aにおいても、モータジェネレータMG1,MG2は、モータジェネレータMG1の逆起電力がモータジェネレータMG2の逆起電力よりも大きくなるように設計または選定される。そして、モータジェネレータMG1は、プロペラシャフト16の回転力を用いて交流電圧を発生し、その発生した交流電圧を差動制御装置24へ出力する。また、モータジェネレータMG1は、差動制御装置24から受ける交流電圧によって駆動トルクを発生し、その発生した駆動トルクをプロペラシャフト16に付与する。
【0064】
図8〜図10は、この発明の実施の形態2による車両用差動装置の動作を説明するための図である。図8は、車両100Aの直進時の動作を示し、図9は、車両100Aの右旋回時の動作を示し、図10は、車両100Aの左旋回時の動作を示す。なお、この図8〜図10においては、説明を簡単にするため、DG18におけるトルクの増加は無いものとして説明する。
【0065】
図8を参照して、車両100Aが直進しているとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2の駆動制御を停止する。すなわち、モータジェネレータMG1,MG2間で電力フローは発生しない。したがって、プロペラシャフト16から供給されるトルクTは、DG18によってドライブシャフト20,22に均等に配分される。
【0066】
図9を参照して、車両100Aが右旋回するとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2を力行駆動する。具体的には、モータジェネレータMG1は、プロペラシャフト16の回転力を用いて発電し、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1から電力の供給を受けてモータジェネレータMG2を力行駆動し、モータジェネレータMG2は、差動制御装置24から電力の供給を受けて発生した駆動トルクをドライブシャフト22に付与する。
【0067】
すなわち、モータジェネレータMG1からモータジェネレータMG2へ差動制御装置24を介して電力フローが発生し、この電力フローに相当するトルクΔTがプロペラシャフト16からドライブシャフト22へ伝達される。したがって、プロペラシャフト16のトルクは(T−ΔT)となり、その結果、ドライブシャフト20,22にそれぞれ(T−ΔT)/2,(T+ΔT)/2のトルクが配分される。
【0068】
図10を参照して、車両100Aが左旋回するとき、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG2を回生駆動する。具体的には、モータジェネレータMG1は、プロペラシャフト16の回転力を用いて発電し、差動制御装置24は、モータジェネレータMG1から電力の供給を受けてモータジェネレータMG2を回生駆動する。そして、さらに、差動制御装置24は、モータジェネレータMG2から回生電力の供給を受けてモータジェネレータMG1を力行駆動し、モータジェネレータMG1は、差動制御装置24から電力の供給を受けて発生した駆動トルクをプロペラシャフト16に付与する。
【0069】
すなわち、全体としてモータジェネレータMG2からモータジェネレータMG1への電力フローが発生し、この電力フローに相当するトルクΔTがドライブシャフト22からプロペラシャフト16へ伝達される。したがって、プロペラシャフト16のトルクは(T+ΔT)となり、その結果、ドライブシャフト20,22にそれぞれ(T+ΔT)/2,(T−ΔT)/2のトルクが配分される。
【0070】
以上のように、この実施の形態2によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0071】
なお、上記の実施の形態2においては、プロペラシャフト16に連結されるモータジェネレータMG1の逆起電力が、ドライブシャフト22に連結されるモータジェネレータMG2の逆起電力よりも大きくなるように設計または選定されるものとしたが、モータジェネレータMG2の逆起電力がモータジェネレータMG1の逆起電力よりも大きくなるようにモータジェネレータMG1,MG2を設計または選定してもよい。すなわち、モータジェネレータMG2の逆起電力定数K2がモータジェネレータMG1の逆起電力定数K1よりも大きくなるように、モータジェネレータMG1,MG2を設計または選定してもよい。
【0072】
そして、モータジェネレータMG2が発生する逆起電力を用いてモータジェネレータMG1の駆動を制御することにより、モータジェネレータMG1,MG2間に双方向の電力フローを発生させることができるので、この場合も上記と同様に、後輪28R,28L間の駆動力の配分を積極的かつ広範囲に制御することができる。
【0073】
なお、上記の実施の形態1,2においては、差動制御装置24は、マトリックスコンバータ50によって構成されるものとしたが、この発明の適用範囲は、差動制御装置24がマトリックスコンバータで構成されるものに限られるものではない。
【0074】
図11は、図1に示した差動制御装置の他の構成を示す回路図である。図11を参照して、この差動制御装置24Aは、インバータ70,80と、コンデンサCと、制御装置90と、電源ラインPLと、接地ラインSLとを含む。インバータ70は、U相アーム72、V相アーム74およびW相アーム76からなり、各相アームの上下アームの接続点は、それぞれモータジェネレータMG1の対応するコイルの反中性点側と接続される。インバータ80は、U相アーム82、V相アーム84およびW相アーム86からなり、各相アームの上下アームの接続点は、それぞれモータジェネレータMG2の対応するコイルの反中性点側と接続される。
【0075】
コンデンサCは、電源ラインPLと接地ラインSLとの間に接続され、インバータ70または80によって整流された直流電力を蓄積する。制御装置90は、コンデンサCからの直流電力を用いてモータジェネレータMG1,MG2を力行駆動または回生駆動するためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を制御信号としてインバータ70,80の各npn型トランジスタQ11〜Q16,Q21〜Q26へ出力する。
【0076】
この差動制御装置24Aにおいては、インバータ70は、モータジェネレータMG1によって発電された交流電圧を整流してコンデンサCに供給する。そして、インバータ80は、制御装置90からの制御信号に基づいて、コンデンサCからの直流電圧を交流電圧に変換し、その変換した交流電圧をモータジェネレータMG2へ出力してモータジェネレータMG2を力行駆動する。
【0077】
また、インバータ80は、制御装置90からの制御信号に基づいて、モータジェネレータMG2を回生駆動し、モータジェネレータMG2によって発電された交流電圧を整流してコンデンサCに供給する。そして、インバータ70は、コンデンサCからの直流電圧を交流電圧に変換し、その変換した交流電圧をモータジェネレータMG1へ出力してモータジェネレータMG1を力行駆動する。
【0078】
このように、直流リンク部を含む電力変換装置によっても、差動制御装置を構成することができる。
【0079】
なお、上記の実施の形態1,2においては、モータジェネレータMG1,MG2は、3相交流同期電動機からなるものとしたが、モータジェネレータMG1,MG2は、直流電動機で構成してもよい。
【0080】
また、上記においては、車両100,100Aのパワートレーンは、FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式として説明したが、この発明の適用範囲は、車両のパワートレーンがFR方式のものに限定されるものではなく、種々のパワートレーン方式の車両に適用することができる。また、動力源がエンジンのものに限定されるものではなく、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)や電気自動車(Electric Vehicle)など直流電源を動力源として備える車両であってもよい。
【0081】
なお、上記において、ドライブシャフト20,22は、「第1の駆動軸」または「第2の駆動軸」を構成し、プロペラシャフト16は、「推進軸」を構成する。そして、DG18、モータジェネレータMG1,MG2および差動制御装置24(24A)は、「車両用差動装置」を構成する。
【0082】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の実施の形態1による車両用差動装置が搭載された車両の全体構成図である。
【図2】図1に示す差動制御装置の回路図である。
【図3】図2に示す双方向性スイッチSXyの構成を示す回路図である。
【図4】この発明の実施の形態1による車両用差動装置の直進時の動作を説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態1による車両用差動装置の右旋回時の動作を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態1による車両用差動装置の左旋回時の動作を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態2による車両用差動装置が搭載された車両の全体構成図である。
【図8】この発明の実施の形態2による車両用差動装置の直進時の動作を説明するための図である。
【図9】この発明の実施の形態2による車両用差動装置の右旋回時の動作を説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態2による車両用差動装置の左旋回時の動作を説明するための図である。
【図11】図1に示す差動制御装置の他の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0084】
12 エンジン、14 変速機、16 プロペラシャフト、18 DG、20,22 ドライブシャフト、24,24A 差動制御装置、26R,26L 前輪、28R,28L 後輪、50 マトリックスコンバータ、52,90 制御装置、54,58,Q11〜Q16,Q21〜Q26 npn型トランジスタ、56,60,D11〜D16,D21〜D26 ダイオード、70,80 インバータ、72,82 U相アーム、74,84 V相アーム、76,86 W相アーム、100,100A 車両、MG1,MG2 モータジェネレータ、LA〜LC,La〜Lc,PL 電源ライン、SAa〜SAc,SBa〜SBc,SCa〜SCc 双方向性スイッチ、C コンデンサ、SL 接地ライン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の駆動輪に連結される第1の駆動軸と第2の駆動輪に連結される第2の駆動軸との間に設けられ、推進軸から供給される駆動力を前記第1および第2の駆動軸に伝達するディファレンシャルギアと、
前記第1の駆動軸に連結されて回転し、第1の逆起電力を発生する第1のモータジェネレータと、
前記第2の駆動軸に連結されて回転し、前記第1の逆起電力よりも小さい第2の逆起電力を発生する第2のモータジェネレータと、
前記第1および第2のモータジェネレータに接続され、車両の旋回時、前記第1および第2のモータジェネレータを駆動して前記第1および第2の駆動軸の駆動力を変化させる差動制御装置とを備える車両用差動装置。
【請求項2】
前記第1のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数を有し、
前記第2のモータジェネレータは、前記第1の逆起電力定数よりも小さい第2の逆起電力定数を有する、請求項1に記載の車両用差動装置。
【請求項3】
前記差動制御装置は、前記第2の駆動軸の駆動力を前記第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを力行駆動する、請求項1または請求項2に記載の車両用差動装置。
【請求項4】
前記差動制御装置は、前記第1の駆動軸の駆動力を前記第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを回生駆動し、前記第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて前記第1のモータジェネレータを力行駆動する、請求項1または請求項2に記載の車両用差動装置。
【請求項5】
第1の駆動輪に連結される第1の駆動軸と第2の駆動輪に連結される第2の駆動軸との間に設けられ、推進軸から供給される駆動力を前記第1および第2の駆動軸に伝達するディファレンシャルギアと、
前記推進軸および前記第1の駆動軸のいずれか一方に連結されて回転し、第1の逆起電力を発生する第1のモータジェネレータと、
前記推進軸および前記第1の駆動軸の他方に連結されて回転し、前記第1の逆起電力よりも小さい第2の逆起電力を発生する第2のモータジェネレータと、
前記第1および第2のモータジェネレータに接続され、車両の旋回時、前記第1および第2のモータジェネレータを駆動して前記第1および第2の駆動軸の駆動力を変化させる差動制御装置とを備える車両用差動装置。
【請求項6】
前記第1のモータジェネレータは、前記推進軸に連結され、
前記第2のモータジェネレータは、前記第1の駆動軸に連結され、
前記差動制御装置は、前記第1の駆動軸の駆動力を前記第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを力行駆動する、請求項5に記載の車両用差動装置。
【請求項7】
前記第1のモータジェネレータは、前記推進軸に連結され、
前記第2のモータジェネレータは、前記第1の駆動軸に連結され、
前記差動制御装置は、前記第2の駆動軸の駆動力を前記第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを回生駆動し、前記第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて前記第1のモータジェネレータを力行駆動する、請求項5に記載の車両用差動装置。
【請求項8】
前記第1のモータジェネレータは、前記第1の駆動軸に連結され、
前記第2のモータジェネレータは、前記推進軸に連結され、
前記差動制御装置は、前記第1の駆動軸の駆動力を前記第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを回生駆動し、前記第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて前記第1のモータジェネレータを力行駆動する、請求項7に記載の車両用差動装置。
【請求項9】
前記第1のモータジェネレータは、前記第1の駆動軸に連結され、
前記第2のモータジェネレータは、前記推進軸に連結され、
前記差動制御装置は、前記第2の駆動軸の駆動力を前記第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを力行駆動する、請求項7に記載の車両用差動装置。
【請求項10】
前記差動制御装置は、前記第1および第2のモータジェネレータに接続され、かつ、前記第1および第2のモータジェネレータ間で相互に電力変換を行なうマトリックスコンバータを含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両用差動装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車両用差動装置を備えた車両。
【請求項12】
当該車両の駆動方式は、フロントエンジン・リアドライブ方式であり、
前記車両用差動装置は、駆動輪である後輪の駆動軸に設けられる、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
当該車両は、ハイブリッド自動車である、請求項12に記載の車両。
【請求項1】
第1の駆動輪に連結される第1の駆動軸と第2の駆動輪に連結される第2の駆動軸との間に設けられ、推進軸から供給される駆動力を前記第1および第2の駆動軸に伝達するディファレンシャルギアと、
前記第1の駆動軸に連結されて回転し、第1の逆起電力を発生する第1のモータジェネレータと、
前記第2の駆動軸に連結されて回転し、前記第1の逆起電力よりも小さい第2の逆起電力を発生する第2のモータジェネレータと、
前記第1および第2のモータジェネレータに接続され、車両の旋回時、前記第1および第2のモータジェネレータを駆動して前記第1および第2の駆動軸の駆動力を変化させる差動制御装置とを備える車両用差動装置。
【請求項2】
前記第1のモータジェネレータは、第1の逆起電力定数を有し、
前記第2のモータジェネレータは、前記第1の逆起電力定数よりも小さい第2の逆起電力定数を有する、請求項1に記載の車両用差動装置。
【請求項3】
前記差動制御装置は、前記第2の駆動軸の駆動力を前記第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを力行駆動する、請求項1または請求項2に記載の車両用差動装置。
【請求項4】
前記差動制御装置は、前記第1の駆動軸の駆動力を前記第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを回生駆動し、前記第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて前記第1のモータジェネレータを力行駆動する、請求項1または請求項2に記載の車両用差動装置。
【請求項5】
第1の駆動輪に連結される第1の駆動軸と第2の駆動輪に連結される第2の駆動軸との間に設けられ、推進軸から供給される駆動力を前記第1および第2の駆動軸に伝達するディファレンシャルギアと、
前記推進軸および前記第1の駆動軸のいずれか一方に連結されて回転し、第1の逆起電力を発生する第1のモータジェネレータと、
前記推進軸および前記第1の駆動軸の他方に連結されて回転し、前記第1の逆起電力よりも小さい第2の逆起電力を発生する第2のモータジェネレータと、
前記第1および第2のモータジェネレータに接続され、車両の旋回時、前記第1および第2のモータジェネレータを駆動して前記第1および第2の駆動軸の駆動力を変化させる差動制御装置とを備える車両用差動装置。
【請求項6】
前記第1のモータジェネレータは、前記推進軸に連結され、
前記第2のモータジェネレータは、前記第1の駆動軸に連結され、
前記差動制御装置は、前記第1の駆動軸の駆動力を前記第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを力行駆動する、請求項5に記載の車両用差動装置。
【請求項7】
前記第1のモータジェネレータは、前記推進軸に連結され、
前記第2のモータジェネレータは、前記第1の駆動軸に連結され、
前記差動制御装置は、前記第2の駆動軸の駆動力を前記第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを回生駆動し、前記第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて前記第1のモータジェネレータを力行駆動する、請求項5に記載の車両用差動装置。
【請求項8】
前記第1のモータジェネレータは、前記第1の駆動軸に連結され、
前記第2のモータジェネレータは、前記推進軸に連結され、
前記差動制御装置は、前記第1の駆動軸の駆動力を前記第2の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを回生駆動し、前記第2のモータジェネレータによって回生発電された電力を用いて前記第1のモータジェネレータを力行駆動する、請求項7に記載の車両用差動装置。
【請求項9】
前記第1のモータジェネレータは、前記第1の駆動軸に連結され、
前記第2のモータジェネレータは、前記推進軸に連結され、
前記差動制御装置は、前記第2の駆動軸の駆動力を前記第1の駆動軸の駆動力よりも大きくするとき、前記第1のモータジェネレータが発生する前記第1の逆起電力を用いて前記第2のモータジェネレータを力行駆動する、請求項7に記載の車両用差動装置。
【請求項10】
前記差動制御装置は、前記第1および第2のモータジェネレータに接続され、かつ、前記第1および第2のモータジェネレータ間で相互に電力変換を行なうマトリックスコンバータを含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両用差動装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車両用差動装置を備えた車両。
【請求項12】
当該車両の駆動方式は、フロントエンジン・リアドライブ方式であり、
前記車両用差動装置は、駆動輪である後輪の駆動軸に設けられる、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
当該車両は、ハイブリッド自動車である、請求項12に記載の車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−125562(P2006−125562A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316350(P2004−316350)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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