説明

車両用情報提供装置

【課題】運転者による運転操作以外の燃費を悪化させる要因について運転操作とは切り分けて情報提供する車両用情報提供装置を提供すること。
【解決手段】車両において、運転者に燃費改善のための情報を提供する車両用情報提供装置に、定常的な走行抵抗の増加を検出する検出手段と、この検出手段により定常的な走行抵抗の増加が検出されたとき、運転者に上記燃費改善のための情報を提供する情報提供手段とを備える。検出手段は、所定の車両状態を検出し、対応する所定の基準状態と比較し、その比較結果に基づいて走行抵抗が定常的に増加したか否かを判断する。検出手段は、車両状態又は車両周辺環境状態を検出し、検出された車両状態又は車両周辺環境状態に基づいて、上記基準状態を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両において、運転者に経済運転を促すための情報を提供する車両用情報提供装置に係り、特に、運転者による運転操作以外の燃費を悪化させる要因について運転操作とは切り分けて情報提供する車両用情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において、運転者に経済運転を促すための情報を提供する車両用情報提供装置が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
特許文献1〜4には、加減速度や車速などの燃料消費に関する車両情報に基づく運転状況の評価を運転者に通知する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−082243号公報
【特許文献2】特開2002−104023号公報
【特許文献3】特開2003−316864号公報
【特許文献4】特開2004−157842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載されたような従来装置では、運転操作に起因した車両情報に基づいて運転状況の経済運転度を評価しているため、例えば、不要な荷物が積載されている、車両のメンテナンス状態が悪い、ウィンドウが開いている、キャリアが装着されている、など運転操作以外の要因により車両状態が変化して燃費が悪化している場合、適切な評価・アドバイスを行うことができない。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、運転者による運転操作以外の燃費を悪化させる要因について運転操作とは切り分けて情報提供する車両用情報提供装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の第一の態様は、車両において、運転者に燃費改善のための情報を提供する車両用情報提供装置であって、定常的な(すなわち一時的でない)走行抵抗の増加を検出する検出手段と、この検出手段により定常的な走行抵抗の増加が検出されたとき、運転者に上記燃費改善のための情報を提供する情報提供手段とを有する車両用情報提供装置である。
【0007】
上記第一の態様において、「定常的な(一時的でない)走行抵抗の増加」とは、言い換えれば、運転者の運転操作によってはほとんど変化しないと言い得る運転操作以外の原因に起因した走行抵抗の増加を指す。
【0008】
また、上記第一の態様において、上記検出手段は、例えば、所定の車両状態を検出し、対応する所定の基準状態と比較し、その比較結果に基づいて走行抵抗が定常的に増加したか否かを判断する。
【0009】
上記第一の態様によれば、運転者の運転操作以外の原因により走行抵抗が増加していると判断されたときに、運転者が経済的な運転操作を心掛けるだけでは改善できない運転者の運転操作とは独立した何らかの燃費を悪化させる要因が存在することを運転者に知らせることができる。
【0010】
なお、上記第一の態様において、走行抵抗が定常的に増加したか否かの判断は、車両の状態や車両周辺環境の状態に依存するため、上記検出手段は、車両状態又は車両周辺環境状態を検出し、検出された車両状態又は車両周辺環境状態に基づいて、上記基準状態を補正することが好ましい。
【0011】
上記目的を達成するための本発明の第二の態様は、上記第一の態様に係る車両用情報提供装置であって、上記検出手段は、自車両が減速状態のとき及び加速状態又は定速走行状態のときに、上記所定の車両状態と上記基準状態とを比較し、上記情報提供手段は、自車両が減速状態のときの上記比較結果と加速状態又は定速走行状態のときの上記比較結果とに応じて異なる情報を上記燃費改善のための情報として運転者に提供する、車両用情報提供装置である。
【0012】
上記第二の態様において、上記検出手段により検出される上記所定の車両状態は、例えば、自車両が加速状態又は定速走行状態のときは駆動力であり、自車両が減速状態のときは制動力であり、上記基準状態は、例えば、自車両が加速状態又は定速走行状態のときは基準駆動力であり、自車両が減速状態のときは基準制動力である。
【0013】
この場合、上記情報提供手段は、具体的には、例えば、1)自車両が加速状態又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力が基準制動力よりも所定値を超えて小さいときには、荷物の積載により定常的に車両重量が増加して走行抵抗が増加していると判断して荷物積載量の低減を運転者に促す情報を、2)自車両が加速状態又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力と基準制動力との差が所定値未満のときには、エンジン出力の低下により走行抵抗が増加していると判断してエンジン出力向上のためのメンテナンス(例えば、エアクリーナーの交換、エンジンオイルの交換、点火プラグの点検/交換、など)を運転者に促す情報を、3)自車両が加速状態又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力が基準制動力よりも所定値を超えて大きく、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力と基準制動力の差分が一定又は車速に比例するときには、駆動系における摩擦の増加により走行抵抗が増加していると判断して駆動系摩擦低減のためのメンテナンスを、4)自車両が加速状態又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力が基準制動力よりも所定値を超えて大きく、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力と基準制動力の差分が車速の二乗に比例するときには、空気抵抗の増加により走行抵抗が増加していると判断して空気抵抗低減のための対応(例えば、ウィンドウを閉める、キャリアを取り外す、など)を運転者に促す情報を、5)自車両が加速状態又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力が基準制動力よりも所定値を超えて大きく、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力と基準制動力の差分がエンジン回転数に比例するときには、エンジン系における摩擦の増加により走行抵抗が増加していると判断してエンジン系摩擦低減のためのメンテナンスを運転者に促す情報を、6)自車両が加速状態又は定速走行状態のときに検出された駆動力と基準駆動力との差が所定値未満で、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力が基準制動力よりも所定値を超えて小さいときには、ブレーキのフェードにより走行抵抗が増加していると判断してブレーキを冷却することを運転者に促す情報を、7)自車両が加速状態又は定速走行状態のときに検出された駆動力と基準駆動力との差が所定値未満で、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力が基準制動力よりも所定値を超えて大きいときには、ブレーキの引き摺りにより走行抵抗が増加していると判断してブレーキの引き摺りを点検することを運転者に促す情報を、それぞれ上記燃費改善のための情報として運転者に提供する。
【0014】
上記第二の態様によれば、車両の走行状態に応じて検出された車両状態と基準状態とを比較するため、燃費の悪化につながる走行抵抗の増加を招いた原因を絞り込むことができる。
【0015】
上記目的を達成するための本発明の第三の態様は、上記第一又は第二の態様に係る車両用情報提供装置であって、上記情報提供手段は、上記検出手段によって検出された定常的な走行抵抗の増加による損失エネルギ量を算出し、算出した損失エネルギ量を上記燃費改善のための情報の一部として運転者に提供する、車両用情報提供装置である。
【0016】
上記第三の態様において、上記情報提供手段は、例えば、算出した上記損失エネルギ量を燃料消費量に換算した値を上記燃費改善のための情報の一部として運転者に提供する。
【0017】
上記第三の態様によれば、運転者の運転操作以外の原因により過剰に消費されたと推定されるエネルギ量が運転者に提示されるため、運転者に当該原因を改善してより経済的な運転となるようにしようという動機付け・意識付けを与えることができる。
【0018】
なお、上記第三の態様において、上記情報提供手段は、運転者に環境へ与える影響についても認識させる観点から、算出した上記損失エネルギ量を排気ガス(二酸化炭素等)排出量に換算した値を上記燃費改善のための情報の一部として運転者に提供するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、運転者による運転操作以外の燃費を悪化させる要因について運転操作とは切り分けて情報提供する車両用情報提供装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0021】
以下、図1〜3を用いて、本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置について説明する。
【0022】
図1は、本実施例に係る車両用情報提供装置100の概略構成図である。
【0023】
車両用情報提供装置100は、自車両の状態及び自車両周辺の環境の状態を検出する状態検出部101を有する。状態検出部101は、a)複数のセンサを有し、これらセンサの出力信号から自車両状態/自車両周辺環境状態を検出(又は判定)してもよく、及び/又は、b)他の車載システム(例えば、ナビゲーションシステムなど)から例えば車内LANを通じて自車両状態/自車両周辺環境状態に関する情報を取得してもよく、或いは、c)路側(インフラ)又は他車両から路車間通信や車車間通信を通じて自車両周辺環境状態に関する情報を取得してもよい。
【0024】
ここで、状態検出部101は、自車両の車両状態に関する情報として、例えば、燃料消費量、ウィンドウ開閉状態、車速、加速度/減速度、エンジン回転数、ブレーキ油圧、発生駆動力、発生制動力、乗員数、タイヤ空気圧、などに関する情報を検出又は取得するように構成される。
【0025】
また、状態検出部101は、自車両の周辺環境状態に関する情報として、例えば、道路に関する情報(形状、地形、勾配、標高、等)、路面状態に関する情報(舗装/非舗装、路面摩擦係数[μ]、積雪、凍結、砂利/ダート、等)、天候に関する情報(降雨・降雪、大気圧、風速・風向、等)、などの情報を検出(又は取得)するように構成される。
【0026】
車両用情報提供装置100は、更に、車両用情報提供装置100による各種処理に必要なデータを記憶保持する記憶部102を有する。本実施例において、記憶部102は、任意の記憶媒体でよい。
【0027】
車両用情報提供装置100は、更に、運転者に燃費改善のための情報を提供する情報提供部103を有する。情報提供部103は、典型的には、燃費改善のための情報を文字情報として運転者に対して表示する表示部(図示せず)を備えており、これに代えて又は加えて、燃費改善のための情報を音声メッセージとして車室内に出力する音声出力部(図示せず)を備えていてもよい。
【0028】
ここで、図示しない表示部は、例えば液晶ディスプレイやヘッドアップディスプレイ(HUD)など任意の種類の車載ディスプレイ装置でよく、他の車載システム(例えば、ナビゲーションシステム、マルチメディアシステム、など)のディスプレイ装置と兼用であってもよい。また、音声出力部が利用される場合、車室内に設けられた任意のスピーカでよく、他の車載システム(例えば、ナビゲーションシステムや、オーディオビジュアルシステムなど)のスピーカと兼用であってもよい。
【0029】
車両用情報提供装置100は、更に、車両用情報提供装置100の各構成要素を統括的に制御すると共に、後に詳述する各種の処理に必要な演算を行う主制御部104を有する。本実施例において、主制御部104は、例えばECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)である。
【0030】
次いで、図2の処理フロー図を用いて、主制御部104による演算及び処理の流れを説明する。
【0031】
まず、主制御部104は、状態検出部101によって検出(又は取得)された自車両の車両状態及び/又は自車両周辺の環境状態を用いて、記憶部102に予め記憶された自車両の基準車両状態を補正し、その時点での乗員数、走行道路、及び天候等において自車両がある走行状態(車速、エンジン回転数等)となったときに本来であればどの程度の走行抵抗(ころがり抵抗、空気抵抗、加速抵抗、等)が理論的には発生するはずであるかを算出できるようにする(S201)。
【0032】
また、記憶部102には、自車両の各種搭載部品の摩耗等の劣化について計算上の及び/又は経験上の経時変化データが予め記憶され、同じく記憶部102に予め記憶された自車両の基準車両状態(特に、ころがり抵抗、タイヤ空気圧、制動系摩擦、駆動系摩擦、等)を補正するのに用いられる。
【0033】
次いで、主制御部104は、状態検出部101によって検出された車両状態のうちの所定の車両状態とそれに対応する記憶部102に記憶された基準車両状態とを比較し、走行抵抗が定常的に増加していないかどうかがチェックされる(S202)。
【0034】
本実施例では、上記所定の車両状態の一例として、自車両が加速又は定速走行しているときの駆動力及び自車両が減速しているときの制動力を用い、状態検出部101によって検出された自車両が加速又は定速走行しているときの駆動力が記憶部102に記憶された基準車両状態に基づいて推定される理論駆動力よりも大幅に小さい場合、及び、状態検出部101によって検出された自車両が減速しているときの制動力が記憶部102に記憶された基準車両状態に基づいて推定される理論制動力よりも大幅に大きい又は小さい場合、運転者の運転操作以外の要因で走行抵抗が定常的に増加していると判断する。
【0035】
定常的な/一時的でない、換言すれば運転者による運転操作(特に加減速操作)によって大きく変動することのない、走行抵抗の増加が存在すると判断されたとき、主制御部104は、状態検出部01によって検出された自車両の駆動力/制動力を記憶部102に予め記憶させた燃費悪化要因判定マップに照らして、定常的な走行抵抗の増加をもたらした要因を推定する(S203)。
【0036】
本実施例において記憶部102に記憶される燃費悪化要因判定マップの一例を図3に示す。
【0037】
本例では、まず、A)自車両が加速状態及び/又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力よりも不足しており(例えば所定値を超えて小さく)、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力も基準制動力より不足している(例えば所定値を超えて小さい)場合、駆動力が必要な加減時・定速走行時及び制動力が必要な減速時いずれにおいても共通して駆動力/制動力が不足していることから、例えば荷物の積載により車両重量が(補正された基準車両状態である車両空重量+乗員よりも)定常的に増加し、それによって走行抵抗(加速抵抗/減速抵抗)も定常的に増加したものと判断して、余分な荷物の積載などによる車両重量の増加が走行抵抗の定常的増加の原因であると判定する。
【0038】
また、B)自車両が加速状態及び/又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力よりも不足しており(例えば所定値を超えて小さく)、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力が基準制動力よりも過剰である(例えば所定値を超えて大きい)場合、正常時に比して車両に常に制動力が掛かっている状態と考えられるため、B−1)自車両が減速状態のときに検出された制動力と基準制動力の差分(制動力過剰分)が一定又は車速に比例するときには、駆動系の摩擦が定常的に増加し、それによって走行抵抗(加速抵抗)も定常的に増加したものと判断して、駆動系摩擦の増加が走行抵抗の定常的増加の原因であると判定し、B−2)自車両が減速状態のときに検出された制動力と基準制動力の差分(制動力過剰分)が車速の二乗に比例するときには、空気抵抗が定常的に増加し、それによって走行抵抗(加速抵抗)も定常的に増加したものと判断して、空気抵抗の増加が走行抵抗の定常的増加の原因であると判定し、B−3)自車両が減速状態のときに検出された制動力と基準制動力の差分(制動力過剰分)がエンジン回転数に比例するときには、エンジン系の摩擦が定常的に増加し、それによって走行抵抗(加速抵抗)も定常的に増加したものと判断して、エンジン系摩擦の増加が走行抵抗の定常的増加の原因であると判定する。
【0039】
また、C)自車両が加速状態及び/又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力に対して正常範囲内(例えば基準駆動力との差が所定値未満)で、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力が基準制動力よりも不足している(例えば所定値を超えて小さい)場合、駆動力は正常であって制動力だけが不足していることから、例えばブレーキのフェードにより制動力が定常的に弱まり、それによって走行抵抗(制動抵抗)も定常的に増加したものと判断して、ブレーキフェードが走行抵抗の定常的増加の原因であると判定する。
【0040】
また、D)自車両が加速状態及び/又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力に対して正常範囲内(基準駆動力との差が所定値未満)で、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力が基準制動力よりも過剰である(所定値を超えて大きい)場合、駆動力は正常であって制動力だけが過剰に効いていることから、ブレーキの引き摺りにより制動力が定常的に強まり、それによって走行抵抗(制動抵抗)が減少していると判断して、ブレーキの引き摺りが走行抵抗の定常的増加の原因であると判定する。
【0041】
さらに、E)自車両が加速状態及び/又は定速走行状態のときに検出された駆動力が基準駆動力よりも不足しており(例えば所定値を超えて小さく)、且つ、自車両が減速状態のときに検出された制動力は基準制動力に対して正常範囲内(基準制動力との差が所定値未満)の場合、駆動力が必要な加速時及び定速走行時にのみ駆動力が不足していることから、エンジン出力が定常的に低下し、それによって走行抵抗(加速抵抗)も定常的に増加したものと判断して、エンジン出力の低下が走行抵抗の定常的増加の原因であると判定する。
【0042】
また、図3に示した一例では、記憶部102に記憶されたこの燃費悪化要因判定マップに、推定された燃費悪化要因ごとに対応した改善策も併せて含ませておく。
【0043】
例えば、図3のケースAの場合、推定された燃費悪化原因は車両重量の増加であるため、不要な荷物の積載を減らすことで改善されると考えられる。同様に、ケースB−1の場合は駆動系摩擦低減のためのメンテナンス(オイル交換やその他一般的な点検)によって、ケースB−2の場合は空気抵抗低減のための措置(ウィンドウ閉、不要なキャリアの取り外し、等)によって、ケースB−3の場合はエンジン系摩擦低減のためのメンテナンス(エンジンオイル交換やその他一般的な点検)によって、ケースCの場合はブレーキの冷却によって、ケースDの場合はブレーキ引き摺りの解消によって、そして、ケースEの場合はエンジン出力向上(改善)のための措置(エアクリーナーの交換、エンジンオイルの交換、点火プラグの点検/交換、等)によって、それぞれ燃費を改善できると考えられる。
【0044】
図2に戻る。次いで、主制御部104は、定常的に増加したと推定された走行抵抗の増加量に相当する損失エネルギ量を(例えばキロカロリー単位で)算出する(S203)。
【0045】
そして、主制御部104は、推定された定常的走行抵抗増加の原因及びその改善策(改善のためのアドバイス)と、算出された定常的走行抵抗増加による損失エネルギ量とを含むメッセージ情報を情報提供部103を通じて運転者へ提示する(S204)。
【0046】
これにより、運転者は、運転操作以外の原因により燃費が定常的に悪化していること、それによってどの程度のエネルギが損失となっているか、及び、その原因はどのようにすれば除去(又は改善)することができるのか、について認識することができる。よって、運転者に、そのような定常的に燃費を悪化させている原因を除去・改善して燃費を向上させようという動機付け・意識付けを与えることができる。
【0047】
ここで、情報提供部103によって運転者に文字情報及び/又は音声メッセージとして提示される情報は、推定原因及び/又は改善策ごとに予め関連付けてマップの形で記憶部102に記憶させておく。
【0048】
また、主制御部104は、運転者がより直感的に分かりやすいように、上記損失エネルギ量を、燃料消費に換算したときの燃料(ガソリン)消費量として例えばリットル単位で、運転者に提供するようにしてもよい。加えて、燃費のコスト面だけでなく、環境面についても運転者に意識を持ってもらうために、定常的走行抵抗増加による損失エネルギ量を燃料消費に換算した場合のガソリン量をエンジンにおいて消費した(燃焼させた)ときに発生する排気ガスの量を例えばその中に含まれる二酸化酸素排出量や環境汚染物質の量などの代表的な数値で表し、これを損失エネルギ量と併せて運転者に提示するようにしてもよい。これにより、環境負荷の観点からもより燃費を向上させようという動機付け・意識付けを運転者に与えることができる。
【0049】
このように、本実施例によれば、車両運転者に運転操作以外の原因による定常的な燃費の悪化の発生が通知されると共に、その定常的燃費悪化による影響の大きさが提示されるため、運転者にその燃費悪化原因を改善して燃費を向上させようという動機付け・意識付けを与えることができる。
【0050】
また、本実施例によれば、提示された定常的な燃費の悪化を招いている推定原因を除去又は改善するための対策も併せて提示されるため、運転者はどのようにすればその時点での自車両の車両状態及び/又は周辺環境に沿って適切な対応を容易に採ることができる。
【0051】
さらに、本実施例によれば、燃費が定常的に悪化していることによる環境への負荷も運転者に提示されるため、環境への配慮の観点からも運転者に燃費の改善を促すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、運転者に経済運転を促すための情報を提供する車両用情報提供装置に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置による燃費悪化要因推定マップの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
100 車両用情報提供装置
101 状態検出部
102 記憶部
103 情報提供部
104 主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において、運転者に燃費改善のための情報を提供する車両用情報提供装置であって、
定常的な走行抵抗の増加を検出する検出手段と、
前記検出手段により定常的な走行抵抗の増加が検出されたとき、運転者に前記燃費改善のための情報を提供する情報提供手段と、を有することを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用情報提供装置であって、
前記検出手段は、所定の車両状態を検出し、対応する所定の基準状態と比較し、その比較結果に基づいて走行抵抗が定常的に増加したか否かを判断する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用情報提供装置であって、
前記検出手段は、車両状態又は車両周辺環境状態を検出し、検出された車両状態又は車両周辺環境状態に基づいて、前記基準状態を補正する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の車両用情報提供装置であって、
前記検出手段は、自車両が減速状態のとき及び加速状態又は定速走行状態のときに、前記所定の車両状態と前記基準状態とを比較し、
前記情報提供手段は、自車両が減速状態のときの前記比較結果と加速状態又は定速走行状態のときの前記比較結果とに応じて異なる情報を前記燃費改善のための情報として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両用情報提供装置であって、
前記検出手段により検出される前記所定の車両状態は、自車両が加速状態又は定速走行状態のときは駆動力であり、自車両が減速状態のときは制動力であり、
前記基準状態は、自車両が加速状態又は定速走行状態のときは基準駆動力であり、自車両が減速状態のときは基準制動力である、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両用情報提供装置であって、
自車両が加速状態又は定速走行状態のときに前記検出手段により検出された駆動力が前記基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力が前記基準制動力よりも所定値を超えて小さいとき、前記情報提供手段は、荷物積載量の低減を運転者に促す情報を前記燃費改善のための情報として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項7】
請求項5記載の車両用情報提供装置であって、
自車両が加速状態又は定速走行状態のときに前記検出手段により検出された駆動力が前記基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力と前記基準制動力との差が所定値未満のとき、前記情報提供手段は、エンジン出力向上のためのメンテナンスを運転者に促す情報を前記燃費改善のための情報として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項8】
請求項5記載の車両用情報提供装置であって、
自車両が加速状態又は定速走行状態のときに前記検出手段により検出された駆動力が前記基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力が前記基準制動力よりも所定値を超えて大きく、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力と前記基準制動力の差分が一定又は車速に比例するとき、前記情報提供手段は、駆動系摩擦低減のためのメンテナンスを運転者に促す情報を前記燃費改善のための情報として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項9】
請求項5記載の車両用情報提供装置であって、
自車両が加速状態又は定速走行状態のときに前記検出手段により検出された駆動力が前記基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力が前記基準制動力よりも所定値を超えて大きく、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力と前記基準制動力の差分が車速の二乗に比例するとき、前記情報提供手段は、空気抵抗低減のための対応を運転者に促す情報を前記燃費改善のための情報として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項10】
請求項5記載の車両用情報提供装置であって、
自車両が加速状態又は定速走行状態のときに前記検出手段により検出された駆動力が前記基準駆動力よりも所定値を超えて小さく、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力が前記基準制動力よりも所定値を超えて大きく、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力と前記基準制動力の差分がエンジン回転数に比例するとき、前記情報提供手段は、エンジン系摩擦低減のためのメンテナンスを運転者に促す情報を前記燃費改善のための情報として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項11】
請求項5記載の車両用情報提供装置であって、
自車両が加速状態又は定速走行状態のときに前記検出手段により検出された駆動力と前記基準駆動力との差が所定値未満で、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力が前記基準制動力よりも所定値を超えて小さいとき、前記情報提供手段は、ブレーキを冷却することを運転者に促す情報を前記燃費改善のための情報として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項12】
請求項5記載の車両用情報提供装置であって、
自車両が加速状態又は定速走行状態のときに前記検出手段により検出された駆動力と前記基準駆動力との差が所定値未満で、且つ、自車両が減速状態のときに前記検出手段により検出された制動力が前記基準制動力よりも所定値を超えて大きいとき、前記情報提供手段は、ブレーキの引き摺りを点検することを運転者に促す情報を前記燃費改善のための情報として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項記載の車両用情報提供装置であって、
前記情報提供手段は、前記検出手段によって検出された定常的な走行抵抗の増加による損失エネルギ量を算出し、算出した損失エネルギ量を前記燃費改善のための情報の一部として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項14】
請求項13記載の車両用情報提供装置であって、
前記情報提供手段は、算出した前記損失エネルギ量を燃料消費量に換算した値を前記燃費改善のための情報の一部として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項15】
請求項13記載の車両用情報提供装置であって、
前記情報提供手段は、算出した前記損失エネルギ量を排気ガス排出量に換算した値を前記燃費改善のための情報の一部として運転者に提供する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−269210(P2007−269210A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98254(P2006−98254)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】