説明

車両用操舵装置

【課題】電動パワーステアリング装置の異常によるアシスト停止後もステアリング操作により車両の旋回を継続できる車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】ABS装置30は、電動パワーステアリング装置1のECU11の制御状態量である操舵トルクτを取得する(ステップS401)。異常検出信号Spsfの入力があるか否かを判定し(ステップS402)、異常検出信号Spsfの入力がある場合(ステップS402:YES)には、続いてステアリング操作中であるか否かを判定する(ステップS403)。ステアリング操作中であると判定した場合(ステップS403:YES)には、受信した操舵トルクτに基づき、所定の転舵輪7に付与する制動力を演算する(ステップS404)。ここで、通常時の制動力に演算された制動力分が補正される。そして、その制動力を制御指令として出力(ステップS405)し、ブレーキアクチュエータ31を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用パワーステアリング装置として、モータを駆動源とする電動パワーステアリング装置(EPS)がある。通常、このような電動パワーステアリング装置は、トルクセンサにより操舵トルクを検出し、その検出された操舵トルクおよび車速等に基づいて操舵系に付与するアシスト力を電気的に制御する。そして、例えば、そのトルクセンサに異常が検出された場合等、何らかの失陥が検出された場合には、駆動源であるモータを停止して、速やかにフェールセーフを図るようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−182608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電動パワーステアリング装置に異常が発生した場合、EPSコントローラがアシスト制御を停止すると、運転者がステアリング操作を続行しようとしても、ステアリングホイールが非常に重くなり、車両の移動が困難になる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電動パワーステアリング装置の異常によるアシスト停止後もステアリング操作により車両の旋回を継続できる車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、モータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する操舵力補助装置と、異常を検出する異常検出手段を有し、前記異常が検出された場合、前記操舵力補助装置の作動を停止する制御手段と、を備えた電動パワーステアリング装置と、各車輪に付与される制動力を制御する制動制御装置と、を備えた車両用操舵装置において、前記制動制御装置は、ステアリング操作中に前記異常が検出された場合には、前記操舵系の状態に応じて検出された操舵方向に基づき、所定の車輪に前記制動力を付与することにより車両を旋回させることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、電動パワーステアリング装置の異常が検出され、アシスト動作を停止した場合、電動パワーステアリング装置の制御手段は、異常検出信号および異常を検出した直前のアシスト制御状態量を出力する。これらの情報に基づき、制動制御装置は、ステアリング操作中のステアリング方向側の車輪に対し制動力を付与するように作動し、車両はステアリング方向に旋回することができる。これにより、電動パワーステアリング装置の停止後においても容易にステアリング操作を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用操舵装置において、前記制動制御装置は、前記電動パワーステアリング装置に備えたトルクセンサの出力信号より検出された操舵トルクに基づき、前記操舵方向を検出することを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、制動制御装置は、電動パワーステアリング装置に備えたトルクセンサより検出された操舵トルクからステアリング方向を判別することできる。これにより、制動制御装置は、他のセンサからの車両信号を必要とせず、電動パワーステアリング装置が備えるセンサの情報に基づき制動力を調整することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電動パワーステアリング装置の異常によるアシスト停止後もステアリング操作により車両の旋回を継続できる車両用操舵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両用操舵装置の概略構成図。
【図2】電動パワーステアリング装置の制御ブロック図。
【図3】本発明の第1の実施形態における電動パワーステアリング装置異常時のアシスト停止制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】本発明の第1の実施形態における電動パワーステアリング装置異常時の制動制御装置の制動制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
図1は、車両用操舵装置の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態の車両用操舵装置1には、電動パワーステアリング装置(EPS)20が設けられている。本実施形態の電動パワーステアリング装置20において、ステアリングホイール2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト3a、インターミディエイトシャフト3b、およびピニオンシャフト3cを連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転にともなうラック軸5の直線運動が、ラック軸5の両端に連結されたタイロッド6を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪(車輪)7の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0013】
また、電動パワーステアリング装置20は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ(操舵力補助装置)10と、EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのECU(制御手段)11とを備えている。
【0014】
本実施形態のEPSアクチュエータ10は、駆動源であるモータ12が減速機構13を介してコラムシャフト3aと駆動連結されたいわゆるコラムタイプのEPSアクチュエータとして構成されている。なお、本実施形態では、モータ12には、ブラシ付の直流モータが採用されている。そして、EPSアクチュエータ10は、モータ12の回転を減速してコラムシャフト3aに伝達することにより、モータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成となっている。
【0015】
一方、ECU11には、トルクセンサ14、車速センサ15、操舵角検出手段を構成するステアリングセンサ(舵角センサ)16が接続されている。そして、ECU11は、各センサの出力信号に基づいて、操舵トルクτ、車速V、および操舵角θsを検出する。
【0016】
本実施形態では、コラムシャフト3aの途中、詳しくは、上記EPSアクチュエータ10を構成する減速機構13よりもステアリングホイール2側にトーションバー17が設けられている。そして、本実施形態のトルクセンサ14は、トーションバー17の捩れに基づいて、ステアリングシャフト3を介して伝達される操舵トルクτを演算可能なセンサ信号Sa,Sbを出力するセンサ素子14a,14bを備えて構成されている。
【0017】
なお、このようなトルクセンサは、例えば、トーションバー17の捩れに基づいて磁束変化を生ずる図示しないセンサコアの外周に、2つの磁気検出素子(例えば、ホールIC)を各センサ素子14a,14bとして配置することにより形成することができる。
【0018】
すなわち、回転軸であるステアリングシャフト3へのトルク入力によりトーションバー17が捩れることで、各センサ素子14a,14bを通過する磁束が変化する。そして、本実施形態のトルクセンサ14は、磁束変化にともない変化する各センサ素子14a,14bの出力電圧を、それぞれセンサ信号Sa,SbとしてECU11に出力する構成となっている。
【0019】
また、本実施形態のステアリングセンサ16は、トルクセンサ14よりもステアリングホイール2側においてコラムシャフト3aに固定された回転子18と、回転子18の回転にともなう磁束変化を検出するセンサ素子(例えば、ホールIC)19とを備えた磁気式の回転角センサにより構成されている。
【0020】
本実施形態では、トルク演算手段としてのECU11は、トルクセンサ14の出力要素としての各センサ素子14a,14bが出力する各センサ信号Sa,Sbに基づいて操舵トルクτを検出する。そして、ECU11は、操舵トルクτ、および車速センサ15により検出される車速Vに基づいて目標アシスト力を演算し、この目標アシスト力をEPSアクチュエータ10に発生させるべく、駆動源であるモータ12に駆動電力を供給することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する構成となっている。(パワーアシスト制御)
【0021】
さらに、図1に示すように、本実施形態の車両用操舵装置1には、ABS(アンチロックブレーキ)装置(制動制御装置)30が装備されている。各転舵輪(車輪)7には、ブレーキアクチュエータ31が設けられており、ABS装置30の作動により、各転舵輪7のブレーキアクチュエータ31に付与される制動力が制御される。ABS装置30は、制動時、各転舵輪7のロック状態を検知して、その制動力を自動的に制御することにより、各転舵輪7が完全にロックすることを回避する。
【0022】
また,ABS装置30には、ECU11から電動パワーステアリング装置20の作動状態を示す各状態量(操舵トルクτ、モータ回転角速度ωおよび操舵角θs)がCAN通信により入力される。なお、これらの入力情報は、電動パワーステアリング装置20の異常によるアシスト停止時にブレーキアクチュエータ31の制御指令の演算のために用いられる。そして、ABS装置30は、これらの情報に基づいて、所定の転舵輪7に付与される制動力を制御する構成となっている。
【0023】
次に、本実施形態の電動パワーステアリング装置におけるアシスト制御の態様について説明する。
図2は、本実施形態の電動パワーステアリング装置20の制御ブロック図である。図2に示すように、ECU11は、モータ制御信号を出力するマイコン(以下、CPUという)21と、そのモータ制御信号に基づいて、EPSアクチュエータ10の駆動源であるモータ12に駆動電力を供給する駆動回路22とを備えている。
【0024】
なお、以下に示す各制御ブロックは、CPU21が実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。そして、CPU21は、所定のサンプリング周期で各状態量を検出し、所定周期毎に以下の制御ブロックに示される各演算処理を実行することにより、モータ制御信号を生成する。
【0025】
詳述すると、CPU21は、EPSアクチュエータ10に発生させるべき目標アシスト力に対応した電流指令値I*を演算する電流指令値演算部23と、電流指令値演算部23により演算された電流指令値I*に基づいてモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力部24とを備えている。
【0026】
また、CPU21は、上記トルクセンサ14が出力する各センサ信号Sa,Sbに基づいて操舵トルクτを演算する操舵トルク演算部25を備えている。すなわち、本実施形態のトルクセンサ14は、上記のように、各センサ素子14a,14bに磁気検出素子(例えば、ホールIC)を用いた磁気式のトルクセンサである。このため、操舵トルク演算部25は、これら2系統のセンサ信号Sa,Sbを用いた補正処理(温度特性等)を行なうことで、高精度に操舵トルクτの演算を行なう構成となっている。そして、電流指令値演算部23は、操舵トルク演算部25により演算された操舵トルクτ、および車速センサ15により検出される車速Vに基づいて、目標アシスト力の基礎成分となるアシスト制御量(アシストトルク)を演算する。
【0027】
さらに詳述すると、操舵トルクτおよび車速Vは、電流指令値演算部23に設けられたアシスト制御部26に入力される。また、モータ回転角θ、モータの逆起電力から演算により、あるいは、モータ回転角θを時間微分して求められるモータ回転角速度ω、および操舵角θsがアシスト制御部26に入力される。そして、アシスト制御部26において、入力された操舵トルクτに対応したアシスト力を発生させる基礎成分となる図示しない基本アシスト制御量が演算される。
【0028】
具体的には、アシスト制御部26は、操舵トルクτの絶対値が大きいほど、より大きなアシスト力が操舵系に付与されるように、より大きな値の絶対値を有する基本アシスト制御量を演算する。なお、本実施形態では、アシスト力を発生させる基礎成分となる基本アシスト制御量の演算は、車速感応型の3次元マップを用いて行なわれる。これにより、アシスト制御部26は、車速Vが小さいほど、より大きな値の絶対値を有する基本アシスト制御量を演算するようになっている。
【0029】
このように、電流指令値演算部23は、アシスト制御部26において演算される基本アシスト制御量をアシスト制御の目標アシスト力の基礎成分として、モータ12に供給する電流指令値I*を演算する。また、モータ制御信号出力部24には、電流指令値演算部23により演算された電流指令値I*とともに、電流センサ27により検出されるモータ12の実電流値Iが入力される。そして、本実施形態のモータ制御信号出力部24は、電流指令値I*に実電流値Iを追従させるべく、電流フィードバック制御の実行により、モータ制御信号を生成する。
【0030】
そして、本実施形態のECU11は、このようにして生成されたモータ制御信号をCPU21が駆動回路22に出力し、駆動回路22がモータ制御信号に基づく駆動電力をモータ12に供給することにより、EPSアクチュエータ10の作動を制御し、アシスト制御を実行する構成となっている。
【0031】
ここで、本実施形態のCPU21には、例えば、トルクセンサ14が出力する各センサ信号Sa,Sbの異常を検出する異常検出手段が設けられており、ECU11(CPU21)は、その異常検出に基づいてトルクセンサ14の異常を判定する。そして、制御手段および異常検出手段としてのECU11は、検出されるトルクセンサ14の異常発生モードに応じて、アシスト制御を実行する構成となっている。そして、各センサ素子14a,14bに異常が発生したと判定される場合には、速やかにアシスト制御を停止してフェールセーフを図るべく、アシスト力を漸減する制御を実行する(アシスト停止制御)。
【0032】
さらに、図2に示すように、本実施形態では、操舵トルク演算部25が実行する各センサ信号Sa,Sbの異常検出、および対応する各センサ素子14a,14bの異常検出の結果は、異常検出信号Strとして電流指令値演算部23に入力される。そして、電流指令値演算部23は、各センサ信号Sa,Sbに対応する各センサ素子14a,14bの両方がともに故障した旨を示す異常検出信号Strが入力された場合には、電流指令値I*の出力を停止する。
【0033】
また、本実施形態では、アシスト制御部26は、電動パワーステアリング装置20の異常を検出する検出手段(異常検出手段)としての機能を有しており、後述する異常検出判定により、何らかの異常を検出した場合には、CPU21は、速やかにアシスト制御を停止して、異常を検出したことを示す異常検出信号Spsfを出力する。
【0034】
次に、本実施形態における電動パワーステアリング装置のフェールセーフ制御について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態における電動パワーステアリング装置異常時のアシスト停止制御の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態のECU11は、電動パワーステアリング装置20の異常を検出する検出手段としての機能を有している。そして、その異常検出判定により、何らか(例えば、モータ、ECU、トルクセンサ等)の異常を検出した場合には、そのフェールセーフを図るべく、電動パワーステアリング装置20の作動を停止する。
【0035】
具体的には、図3のフローチャートに示すように、CPU21は、その異常判定により電動パワーステアリング装置20における何らかの異常を検出すると(ステップS301:YES)、まず、異常を検出した直前にECU11の制御状態量として演算した操舵トルクτを記憶する(ステップS302)。そして、異常を検出したことを示す異常検出信号Spsfを出力(送信)し(ステップS303)、続いて、異常検出時に記憶した直前の操舵トルクτを出力(送信)する(ステップS304)。そして、電動パワーステアリング装置20の作動を停止すべくアシスト停止制御を実行する(ステップS305)。この処理の後、メインルーチンに戻る。なお、上記ステップS301において、異常を検出しない場合(ステップS301:NO)には、ステップS302〜S305の処理を実行しない。
【0036】
また、上記異常検出時、ECU11が出力する異常検出信号Spsf、操舵トルクτは、CANバスを介して、ABS装置30に入力される(図1参照)。そして、ABS装置30は、ステアリング操作中に、この異常検出信号Spsfを受信した場合には、ステアリング方向に旋回力が発生するように制動力を付与する。そして、これにより、電動パワーステアリング装置20の作動停止後においてもステアリング操作を行い車両挙動の安定化を図る構成となっている。
【0037】
図4は、本発明の第1の実施形態における電動パワーステアリング装置異常時の制動制御装置の制動制御の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すように、ABS装置30は、上記電動パワーステアリング装置20のECU11のアシスト制御状態量である操舵トルクτを取得する(ステップS401)。次に、異常検出信号Spsfの入力があるか否かを判定し(ステップS402)、異常検出信号Spsfの入力がある場合(ステップS402:YES)には、続いてステアリング操作中であるか否かを判定する(ステップS403)。そして、ステアリング操作中であると判定した場合(ステップS403:YES)には、受信した操舵トルクτに基づき、所定の転舵輪(車輪)7に付与する制動力を演算する(ステップS404)。ここで、通常時の制動力に演算された制動力分が補正される。そして、その制動力を制御指令として出力(ステップS405)し、ブレーキアクチュエータ31を制御する。この処理の後、メインルーチンに戻る。
【0038】
なお、上記ステップS402において異常検出信号Spsfの入力がない場合(ステップS402:NO)、または、上記ステップS403においてステアリング操作中ではないと判定した場合(ステップS403:NO)には、上記ステップS404およびS405の処理を実行しない。
【0039】
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を説明する。ここで、本実施形態は、ECU11の制御状態量のみが上記第1の実施形態と相違する。すなわち、図3および図4における操舵トルクτをモータ回転角速度ωに置き換えたものであり,CPU21は、異常検出時に記憶した直前の操舵トルクτを出力(送信)するとともに、ABS装置30は、上記電動パワーステアリング装置20のECU11のアシスト制御状態量であるモータ回転角速度ωを取得し、受信したモータ回転角速度ωに基づき、所定の転舵輪(車輪)7に付与する制動力を演算する。その他の処理手順については、図3および図4と同様であるためその説明を省略する。
【0040】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
ステアリング操作中に電動パワーステアリング装置20の異常が検出され、アシスト動作を停止した場合に、電動パワーステアリング装置20のECU11は、異常検出信号Spsfおよび異常を検出した直前の操舵トルクτ、または、モータ回転角速度ωの制御状態量を出力(通信)する。これらの情報に基づき、ABS装置30は、通常時の制動力に加え、ステアリング方向側の転舵輪7に対し制動力を付与するように作動し、ブレーキアクチュエータ31を制御する。これにより、車両はステアリング方向に旋回することができるとともに、電動パワーステアリング装置20の作動停止後においても容易にステアリング操作を行うことができる。
【0041】
また、上記構成によれば、異常を検出した直前のステアリング方向はトルクセンサ14より検出された操舵トルクτ、または、モータ回転角度θより演算された回転角速度ωから判別することできる。これにより、ABS装置30は、他のセンサからの車両信号(操舵角、ヨーレート等)を必要とせず、電動パワーステアリング装置20が備えるセンサ(トルクセンサ、回転角センサ等)からの情報に基づき制動力を調整することができる。
【0042】
以上のように、電動パワーステアリング装置の異常によるアシスト停止後もステアリング操作により車両の旋回を継続することができる車両用操舵装置を提供することができる。
【0043】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
上記実施形態では、電動パワーステアリング装置20に入力されるトルクセンサ14、または、モータ12に設けた回転角センサ28からの信号に基づき、ステアリング方向を判別する例を示したが、ステアリングシャフト3に装備されたステアリングセンサ16により検出される操舵角θsに基づきステアリング方向を判別してもよい。
【0044】
また、上記実施形態は、トルクセンサ14の異常に限るものではなく、その他、電動パワーステアリング装置20(モータ12、ECU11等)の異常発生時に適用してもよい。
さらに、上記実施形態は、フェールセーフによりその作動が停止されるものであれば、電動パワーステアリング装置20に限らず油圧パワーステアリング装置を備えるものに適用してもよい。
【0045】
上記実施形態では、EPSアクチュエータ10の駆動源であるモータ12には、ブラシ付きの直流モータを用いることとした。しかし、これに限らず、ブラシレスモータを駆動源とする電動パワーステアリング装置に具体化してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、本発明をいわゆるコラムタイプの電動パワーステアリング装置20に具体化したが、本発明は、いわゆるピニオンタイプやラックアシストタイプの電動パワーステアリング装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:車両用操舵装置、2:ステアリングホイール、3:ステアリングシャフト、
3a:コラムシャフト、3b:インターミディエイトシャフト、3c:ピニオンシャフト、
4:ラックアンドピニオン機構、5:ラック軸、6:タイロッド、7:転舵輪、
10:EPSアクチュエータ(操舵力補助装置)、11:ECU(制御手段)、
12:モータ、14:トルクセンサ、14a,14b:センサ素子、15:車速センサ、
16:ステアリングセンサ、17:トーションバー、18:回転子、19:センサ素子、
20:電動パワーステアリング装置(EPS)、21:CPU(マイコン)、
22:駆動回路、23:電流指令値演算部、24:モータ制御信号出力部、
25:操舵トルク演算部、26:アシスト制御部、27:電流センサ、
28:回転角センサ、30:ABS(アンチロックブレーキ)装置(制動制御装置)、
31:ブレーキアクチュエータ、
I*:電流指令値、I:実電流値、Sa,Sb:センサ信号、Str:異常検出信号、
τ:操舵トルク、V:車速、θ:モータ回転角、ω:モータ回転角速度、θs:操舵角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する操舵力補助装置と、
異常を検出する異常検出手段を有し、前記異常が検出された場合、前記操舵力補助装置の作動を停止する制御手段と、を備えた電動パワーステアリング装置と、
各車輪に付与される制動力を制御する制動制御装置と、を備えた車両用操舵装置において、
前記制動制御装置は、ステアリング操作中に前記異常が検出された場合には、前記操舵系の状態に応じて検出された操舵方向に基づき、所定の車輪に前記制動力を付与することにより車両を旋回させること、を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用操舵装置において、
前記制動制御装置は、前記電動パワーステアリング装置に備えたトルクセンサの出力信号より検出された操舵トルクに基づき、前記操舵方向を検出すること、を特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79003(P2013−79003A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220250(P2011−220250)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】