説明

車両用液晶表示装置

【課題】液晶表示パネルの周辺におけるグラデーション表示をより鮮明に行うことができ、液晶表示パネル等による発光表示部分を大きく見せることができる車両用液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】車両用液晶表示装置1は、金属板24で保持してなる液晶表示パネル2と光不透過板6とを備え、光不透過板6に設けた開口穴61から液晶表示パネル2の中心部分が視認できるよう構成してある。液晶表示装置1は、光源31の前方位置から光不透過板6における開口穴61の外縁部の前方位置まで屈曲して形成し、光源31から発した光Xを開口穴61の外縁部の前方へ発光する導光体5を備えている。導光体5の屈曲先端部52における前面520には、屈折反射面54によって屈折した光Xを前方へ屈折させるための多数のプリズム形状55が形成してあり、このプリズム形状55は、外側から中央側に向かうに連れて屈折量が多くなる状態で形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両室内のインストルメントパネル等に配設し、液晶表示パネルによる表示の見栄えを改善した車両用液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネル等には、計器類の周辺において種々の表示を行い、運転手に注意等を喚起する液晶表示装置が設けられている。
例えば、特許文献1の車両用表示装置においては、情報を表示するための液晶表示パネルの前面側に化粧板を配置し、化粧板の開口部の内側に、透光性を有する着色樹脂材料により成形され、開口部の外側から内側に向けて板厚方向寸法が徐々に薄くなる断面三角形状に成形された環状カバー部を配置することが行われている。これにより、液晶表示の周辺において、環状カバー部の灰色の濃度が中央開口部の外側から内側にかけて徐々に薄くなるグラデ−ションを表示することができ、コンビネーションメータの見映えを良好にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−194829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用表示装置によっては、液晶表示の発光表示部分を大きく見せるための工夫はなされていない。すなわち、特許文献1の車両用表示装置においては、液晶表示パネルの前面側に環状カバー部を直接配置しており、液晶表示パネルによる表示部分を小さく見せてしまうおそれがある。
また、従来の車両用表示装置によっては、液晶表示の周辺における明暗をぼかし、液晶表示の周辺において、中央側から外側に向けて徐々に暗くしていくグラデーション表示をより鮮明に行うためには十分ではない。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、液晶表示パネルの周辺におけるグラデーション表示をより鮮明に行うことができ、液晶表示パネル等による発光表示部分を大きく見せることができる車両用液晶表示装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前面の外縁部、側面及び後面を金属板で保持してなる液晶表示パネルと、上記金属板における上記前面の外縁部の前方を覆う光不透過板とを有し、該光不透過板に設けた開口穴から上記液晶表示パネルの中心部分が視認できるよう構成した車両用液晶表示装置において、
上記液晶表示パネルの後面側に配置した基板と、
該基板の前面であって上記液晶表示パネルに対する外周側位置に設けた光源と、
内周に光の反射面を有し、上記光源を囲む状態で上記基板の前面に設けた光源ケースと、
上記光源の前方位置から上記光不透過板における上記開口穴の外縁部の前方位置まで屈曲して形成し、上記光源から発した光を上記開口穴の外縁部の前方へ発光する導光体とを備えており、
該導光体は、上記光源の前方側に設けた基端部と、該基端部の前方端部から中央側に屈曲した屈曲先端部とを有し、該屈曲先端部と上記基端部との外側角部には、光を屈折させる屈折反射面が形成してあり、
上記屈曲先端部における前面及び後面の少なくとも一方には、上記屈折反射面によって屈折した光を前方へ屈折させるための多数のプリズム形状が形成してあり、該プリズム形状は、外側から中央側に向かうに連れて屈折量が多くなる状態で形成してあることを特徴とする車両用液晶表示装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用液晶表示装置においては、導光体を積極的に用いることにより、グラデーション表示をより鮮明にし、発光表示部分を大きくする工夫を行っている。
具体的には、基板に対して光源及び光源ケースを設け、光源の前方位置から光不透過板における開口穴の外縁部の前方位置まで屈曲して導光体を設けている。また、屈曲先端部における後面又は前面には、屈折反射面によって屈折した光を前方へ屈折させるための多数のプリズム形状が形成してある。このプリズム形状は、液晶表示パネルの中央側に向かうに連れて屈折量が多くなるよう形成してある。
【0008】
これにより、光源から前方へ発せられた光は、光源ケースの反射面によって光の漏れが防止され、導光体の屈折反射面によって液晶表示パネルの中央側へ屈折される。そして、屈曲先端部における後面又は前面に設けた多数のプリズム形状によって、屈曲先端部においては、外側から中央側に向かうに連れて光の屈折量が多くなり、外側から中央側に向かうに連れて前方に向けた光の発光強度を高くすることができる。
そのため、本発明の車両用液晶表示装置によれば、液晶表示パネルの周辺における明暗をぼかして、液晶表示パネルの周辺において、中央側から外側に向けて徐々に暗くしていくグラデーション表示をより鮮明に行うことができる。
また、液晶表示パネルの周辺における導光体を発光させることにより、液晶表示パネルの発光表示部分を大きく見せることができ、液晶表示パネルによる意匠外観性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例における、車両用液晶表示装置を示す断面説明図。
【図2】実施例における、車両用液晶表示装置の一部を拡大して示す断面説明図。
【図3】実施例における、車両用液晶表示装置における導光体によるグラデーション表示を模式的に示す正面図。
【図4】実施例における、車両用液晶表示装置を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した本発明の車両用液晶表示装置における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、屈曲先端部における後面又は前面に設けたプリズム形状は、一対の傾斜面からなる断面三角形状の反射面部を、屈曲先端部の外側から中央側に向けて順次並べて形成し、かつ中央側に行くに連れて一対の傾斜面を大きくして形成することができる。
また、屈曲先端部における後面又は前面に設けたプリズム形状は、屈曲先端部の表面に突出する多数の突起(シボ)によって形成し、かつ中央側に行くに連れて多数の突起の形成密度を高くかつ突起を大きくして形成することもできる。
【0011】
また、上記導光体は、上記液晶表示パネルの側方の全周又は側方の互いに対向する位置に設けてあり、上記導光体の前方には、該導光体における上記屈折反射面よりも中央側の上記屈曲先端部の部分を視認可能にした開口部を有する前面ケースが設けてあり、該前面ケースの前方側には、上記液晶表示パネル及び上記導光体の発光時の光を視認可能にする一方、非発光時には、上記液晶表示パネル及び上記導光体を視認不能にするスモーク板が設けてあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、液晶表示パネル及び導光体の発光時においては、スモーク板の表面及び前面ケースの開口部から、液晶表示パネル及び導光体の屈曲先端部から発光する光のみを視認することができる。これにより、上記グラデーション表示の視認外観性をより向上させることができる。また、液晶表示パネル及び導光体の非発光時においては、スモーク板によって、液晶表示パネル及び導光体が視認できないようにすることができる。
【実施例】
【0012】
以下に、本発明の車両用液晶表示装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の車両用液晶表示装置1(以下、単に液晶表示装置1という。)は、図1、図3に示すごとく、前面21の外縁部、側面22及び後面23を金属板24で保持してなる液晶表示パネル2と、金属板24における前面の外縁部の前方を覆い、光Xを透過させない性質を有する光不透過板6とを備え、光不透過板6に設けた開口穴61から液晶表示パネル2の中心部分が視認できるよう構成してある。
液晶表示装置1は、液晶表示パネル2の後面側に配置した基板3と、基板3の前面であって液晶表示パネル2に対する外周側位置に設けた光源31と、内周に光Xの反射面41を有し、光源31を囲む状態で基板3の前面に設けた光源ケース4と、光源31の前方位置から光不透過板6における開口穴61の外縁部の前方位置まで屈曲して形成し、光源31から発した光Xを開口穴61の外縁部の前方へ発光する導光体5とを備えている。
【0013】
図2に示すごとく、導光体5は、光源31の前方側に設けた基端部51と、基端部51の前方端部から中央側に屈曲した屈曲先端部52とを有し、屈曲先端部52と基端部51との外側角部53には、光Xを屈折させる屈折反射面54が形成してある。屈曲先端部52における前面520には、屈折反射面54によって屈折した光Xを前方へ屈折させるための多数のプリズム形状55が形成してあり、このプリズム形状55は、外側から中央側に向かうに連れて屈折量が多くなる状態で形成してある。
【0014】
以下に、本例の液晶表示装置1につき、図1〜図4を参照して詳説する。
本例の液晶表示装置1は、車両のインストルメントパネルにおいて、運転席の前方であって計器類の周辺に配設することができる。液晶表示パネル2は、TFT(薄膜トランジスタ)方式等とすることができる。光源31は、発光ダイオード等によって構成することができる。導光体5は、透明樹脂材料から成形してある。光不透過板6は、計器類の文字、記号等が書かれた樹脂製の文字板である。基板3は、発光ダイオード等の光源31を設けたプリント基板である。
図2に示すごとく、光源ケース4は、樹脂からなる筒状体の内周に、光Xを反射する金属メッキからなる反射面41を形成してなる。導光体5は、その基端部51を光源ケース4内に配置し、その屈曲先端部52を光不透過板6の開口穴61の外縁部の前方に配置してなる。
【0015】
本例の導光体5は、四角形状の液晶表示パネル2の四方(上下の辺、左右の辺)の外縁部に対向して設けてある。四方の外縁部に設けた導光体5の屈折反射面54は、屈曲先端部52と基端部51との外側角部53において、屈曲先端部52と基端部51とに対向する状態で形成してある。屈曲反射面54は、直線状の平坦面によって形成してあり、導光体5の屈曲先端部52の中央側端部522は、円弧状の曲面によって形成してある。
本例の導光体5におけるプリズム形状55は、屈曲先端部52における前面520において、屈曲先端部52の表面に突出する多数の突起(シボ)によって形成し、かつ中央側に行くに連れて多数の突起の形成密度を高くかつ突起を大きくして形成してある。
ここで、屈曲先端部52における前面520とは、屈曲先端部52において基板3及び液晶表示パネル2の面に平行な平坦面521と、曲面状の中央側端部522のことをいう。
【0016】
本例においては、光源31から導光体5内に入射した光Xは、屈折反射面54によって屈折した後、屈曲先端部52における平坦面521及び中央側端部522に形成されたプリズム形状55によって前方へ反射されて、平坦面521及び中央側端部522から前方へ出射される。
屈曲反射面54と屈曲先端部52の中央側端部522とは、光源31から発せられた光Xの屈折方向を考慮し、光Xが前方へ出射され易い形成角度に形成することができる。
また、プリズム形状55は、屈曲先端部52の後面523に形成することもできる。
【0017】
図1に示すごとく、導光体5の前方には、不透明樹脂からなる前面ケース7が設けてある。液晶表示パネル2及び導光体5における屈折反射面54よりも中央側の屈曲先端部52の部分は、前面ケース7の開口部71から視認可能になっている。また、前面ケース7の前方側には、黒色に近い半透明の樹脂又はガラスからなるスモーク板8が設けてある。このスモーク板8は、液晶表示パネル2及び導光体5の発光時の光Xを視認可能にする一方、これらの非発光時には、液晶表示パネル2及び導光体5を視認不能にするよう構成してある。
液晶表示パネル2及び導光体5の発光時においては、スモーク板8の表面及び前面ケース7の開口部71から、液晶表示パネル2及び導光体5の屈曲先端部52から発光する光Xのみを視認することができる。これにより、グラデーション表示の視認外観性をより向上させることができる。また、液晶表示パネル2及び導光体5の非発光時においては、スモーク板8によって、液晶表示パネル2及び導光体5が視認できないようにすることができる。
【0018】
図4に示すごとく、基板3における光源31は、導光体5の長尺形状に合わせて、すなわち導光体5の基端部51に対向する位置において、導光体5の各辺の形成方向に複数並べて設けることができる。光源31は、一色とする以外にも白色、青色、橙色等を用いた多色とすることもできる。多色の光源31を配置したときには、液晶表示パネル2に対するアンビエント表示等として、車両の運転手に伝達するメッセージの内容に応じて、適宜発光させる色を異ならせることができる。
【0019】
本例の液晶表示装置1においては、導光体5を積極的に用いることにより、グラデーション表示をより鮮明にし、発光表示部分を大きくする工夫を行っている。
本例の液晶表示装置1においては、光源31から前方へ発せられた光Xは、図2に示すごとく、光源ケース4の反射面41によって光Xの漏れが防止され、導光体5の屈折反射面54によって液晶表示パネル2の中央側へ屈折される。そして、屈曲先端部52における後面523に設けた多数のプリズム形状55によって、屈曲先端部52においては、図3に示すごとく、外側から中央側に向かうに連れて前方に向けた光Xの屈折量が多くなり、外側から中央側に向かうに連れて前方に向けた光Xの発光強度を高くすることができる。
【0020】
そのため、本例の液晶表示装置1によれば、液晶表示パネル2の周辺における明暗をぼかして、液晶表示パネル2の周辺において、中央側から外側に向けて徐々に暗くしていくグラデーション表示をより鮮明に行うことができる。
また、液晶表示パネル2の周辺における導光体5を発光させることにより、液晶表示パネル2の発光表示部分を大きく見せることができ、液晶表示パネル2による意匠外観性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 車両用液晶表示装置
2 液晶表示パネル
24 金属板
3 基板
31 光源
4 光源ケース
41 反射面
5 導光体
51 基端部
52 屈曲先端部
53 外側角部
54 屈折反射面
55 プリズム形状
6 光不透過板
61 開口穴
7 前面ケース
71 開口部
8 スモーク板
X 光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面の外縁部、側面及び後面を金属板で保持してなる液晶表示パネルと、上記金属板における上記前面の外縁部の前方を覆う光不透過板とを有し、該光不透過板に設けた開口穴から上記液晶表示パネルの中心部分が視認できるよう構成した車両用液晶表示装置において、
上記液晶表示パネルの後面側に配置した基板と、
該基板の前面であって上記液晶表示パネルに対する外周側位置に設けた光源と、
内周に光の反射面を有し、上記光源を囲む状態で上記基板の前面に設けた光源ケースと、
上記光源の前方位置から上記光不透過板における上記開口穴の外縁部の前方位置まで屈曲して形成し、上記光源から発した光を上記開口穴の外縁部の前方へ発光する導光体とを備えており、
該導光体は、上記光源の前方側に設けた基端部と、該基端部の前方端部から中央側に屈曲した屈曲先端部とを有し、該屈曲先端部と上記基端部との外側角部には、光を屈折させる屈折反射面が形成してあり、
上記屈曲先端部における前面及び後面の少なくとも一方には、上記屈折反射面によって屈折した光を前方へ屈折させるための多数のプリズム形状が形成してあり、該プリズム形状は、外側から中央側に向かうに連れて屈折量が多くなる状態で形成してあることを特徴とする車両用液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用液晶表示装置において、上記導光体は、上記液晶表示パネルの側方の全周又は側方の互いに対向する位置に設けてあり、
上記導光体の前方には、該導光体における上記屈折反射面よりも中央側の上記屈曲先端部の部分を視認可能にした開口部を有する前面ケースが設けてあり、
該前面ケースの前方には、上記液晶表示パネル及び上記導光体の発光時の光を視認可能にする一方、非発光時には、上記液晶表示パネル及び上記導光体を視認不能にするスモーク板が設けてあることを特徴とする車両用液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−123406(P2011−123406A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282612(P2009−282612)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】