車両用燃料電池
【課題】前列席の下に燃料電池を配置する燃料電池車において、後列席乗員の足下スペースを確保するのに好適な機器の配置を提供する。
【解決手段】前列席の下に配置される燃料電池26Aの後端面42Aの上端と下端の一方を他方より後方に位置させる。後端面42Aと燃料電池スタック30Aとの間に形成される空間に、空気配管32A、冷却水配管34Aおよび燃料ガス配管36Aが配置される。最も流量(体積流量)の多い空気配管32Aが、後端面の、より後方に位置する端寄りに配置され、最も流量の少ない燃料ガス配管36Aが、より前方に位置する端寄りに配置される。冷却水配管34Bは、この間に配置される。
【解決手段】前列席の下に配置される燃料電池26Aの後端面42Aの上端と下端の一方を他方より後方に位置させる。後端面42Aと燃料電池スタック30Aとの間に形成される空間に、空気配管32A、冷却水配管34Aおよび燃料ガス配管36Aが配置される。最も流量(体積流量)の多い空気配管32Aが、後端面の、より後方に位置する端寄りに配置され、最も流量の少ない燃料ガス配管36Aが、より前方に位置する端寄りに配置される。冷却水配管34Bは、この間に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を座席下に搭載した車両に関し、特に燃料電池内の機器および配管の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を搭載し、燃料電池により発電された電力により走行する車両が開発されている。燃料電池の配置について各種の提案がなされているが、例えば、下記特許文献1においては、前列席の下に燃料電池を搭載する構成が示されている。一般的なエンジンにより駆動される車両においては、前列席の下の部分は、空間をあけ、ここに後列席の乗員の足先を入れるようにして、後列席乗員の足下スペースを確保している。しかし、前記特許文献1に記載された車両においては、前列席下の部分が燃料電池で占められ、後列席乗員の足を入れるスペースが確保されていない。
【0003】
下記特許文献2には、前列席下に搭載された燃料電池等の後端面を斜面にして、後列席乗員の足下スペースを確保する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−126063号公報
【特許文献2】特開2006−62548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献2には、燃料電池の後端面を斜めにすることは記載されているが、どのようにして、この構成を達成するかについては、言及されていない。
【0006】
本発明は、後ろの席の乗員の足下スペースを効率的に作り出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料電池スタックなどの機器および各配管等を収容する燃料電池ケースの後端面を、その上端と下端の一方が他方より後方となるようにし、後方となった端側に空気が流れる配管を、反対の端側に燃料ガスが流れる配管を、これらの配管の間に冷却水が流れる配管を配置する。
【発明の効果】
【0008】
燃料ガスよりも流量が多く、流路の断面積が大きくなる空気配管を、後方となる端側に配置することにより、効率的に足下スペースが確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】側方視による燃料電池車両の概略図である。
【図2】燃料電池の一例の後方部分の拡大図である。
【図3】燃料電池の他の例の後方部分の拡大図である。
【図4】図3に示す燃料電池による足下スペースの状態を示す図である。
【図5】燃料電池の更に他の例の後方部分の拡大図である。
【図6】平面視による燃料電池車両の概略図である。
【図7】燃料電池内部の側方視における各機器の配置例を示す図である。
【図8】燃料電池内部の平面視における各機器の配置例を示す図である。
【図9】燃料電池内部の平面視における各機器の他の配置例を示す図である。
【図10】燃料電池内部の平面視における各機器の更に他の配置例を示す図である。
【図11】燃料電池内部の平面視における各機器の更に他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、車両10および乗員12,14を側方視した図である。車両10は、例として前列席16および後列席18を有する形式の車両を示している。前列席16は、左右独立したシートを有しても良く、また左右が繋がったベンチシート形式であってもよい。後列席18も、左右独立、左中右独立、またベンチシート形式であってよい。個々の座席は、シートクッション20、シートバック22およびヘッドレスト24を含む。特に、前列席、後列席を分けて説明する必要があるときには、符号20,22,24の後にF(前席)、R(後席)を付す。現在、販売されている多くの車両において、前列席シートクッション20Fの下の空間は、後列席乗員の足下スペースとして利用される。つまり、後列席乗員のつま先が、前列席シートクッション20Fの下に入り込むように、空間が空けられている。前列席シートクッション20F下に、小物入れを備える車両であっても、後方部分は、足下スペースとして利用されるのが一般的である。
【0011】
燃料電池を搭載し、これにより発電された電力によってモータを駆動して走行する燃料電池車においては、燃料電池の搭載場所について、様々な提案がなされている。前記公報においては、その一例として前列席の下を搭載場所とする提案がなされている。燃料電池は、比較的大きな外形寸法を有し、前列席下の空間に余裕を持って収められるというわけではない。一方で、この場所は、前述のように、従来、後列席乗員の足下スペースとして利用されており、ここが燃料電池等により占有されてしまうと、後列席乗員が窮屈な思いをする可能性がある。
【0012】
この実施形態の車両10は、前列席シートクッション20F下の空間に燃料電池26を配置する。前列席が左右独立席の場合、左右の座席の下の空間の間の空間を含め、前列席下の空間に燃料電池26を配置することもできる。一方で、燃料電池26を構成する、燃料電池スタック、補機および分配器等の配置を工夫することにより、後列席乗員の足下スペースを確保している。燃料電池26は、燃料電池スタック、補機および分配機等を燃料電池ケースに収めて構成されており、燃料電池ケースの後端面の少なくとも一部が後列席乗員の足下スペースの前端を規定している。燃料電池ケースの後端面は、その上端と下端の一方が他方に対して後方に位置し、これにより、足下スペースが確保されている。つまり、前列席下の空間の鉛直方向の高さは、人の足の厚さ(鉛直方向の寸法)に対して、かなり大きく、上端または両端のいずれか一方を後方に位置させて燃料電池の構成要素の配置スペースを確保しつつ、他方の端を前方に位置させることにより足下のスペースも確保する。このような後端面は、前列席の全幅にわたって設けられてもよいが、後列席に乗員が座る位置の前方のみに配置してもよい。例えば、上記の後端面を左右の後列席の前方のみに配置し、後列中央席の前方、前列左右席の間の部分またはセンタートンネル部分においては、鉛直な後端面を形成することもできる。
【0013】
図2には、燃料電池26の内部構成の一例として燃料電池26Aが、前列の右席または左席の正中面(車両前後方向に平行な鉛直面)による断面にて示されている。図中、左が車両の前方に当たり、燃料電池26Aの後半部分が示されている。燃料電池26Aは、燃料電池ケース28A内に、燃料電池セルが積層された燃料電池スタック30Aと、燃料ガス、空気、冷却水等を流すためのマニホルドと呼ばれる配管32A,34A,36Aが配置される。図2の断面には現れないが、さらに複数の燃料電池スタックに燃料ガス、空気等を分配する分配器38(図6参照)、および燃料電池スタックに燃料ガス、空気、冷却水等を供給し、またスタックより排出させるための機器である補機40(図6参照)を配置することもできる。補機は、具体的には、空気を圧縮するコンプレッサ、供給する空気を加湿する加湿器、燃料ガスを循環させる循環ポンプが含まれる。これらの補機の全て、または一部が前列席下の燃料電池26に配置されることができる。
【0014】
図2の例では、燃料電池セルの電極は、車両の幅方向、図2においては紙面を貫く方向に積層されており、この積層方向に沿って各配管が延びている。燃料電池ケース28の後端面42は後傾しており、上端が下端より後方に位置している。燃料電池セル内を流れる空気、燃料ガス、冷却水は、電極の面に平行な方向に流れるので、図2の例にあっては、これらの流体は、車両の前後方向に流れる。したがって、供給側のマニホルドと、排出側のマニホルドは、一方が燃料電池スタック30の前方側、他方側が後方に配置される。
【0015】
空気が流れる空気配管32が、後端面42の、後方に位置する端、この例では上端に寄せて配置され、燃料ガスが流れる燃料ガス配管36が前方に位置する端に寄せて配置されている。空気配管32と燃料ガス配管36の間に、冷却水の流れる冷却水配管34が配置されている。この配置は、流量(体積流量)に応じて定められており、流量が多い配管が、後方に位置する端に寄せて配置され、逆に流量が少ない端が前方に位置する端に寄せて配置されている。この例では、図1に示されるように、後列席の乗員は、つま先を後端面42の下端付近に挿入するようにして、着席することができる。
【0016】
図3は、図2の燃料電池26の上下を入れ替えた配置例を示す図である。燃料電池26Bの燃料電池ケース28Bの後端面42Bは、前傾しており、上端が前方に位置し、下端が後方に位置している。これに合わせ、下端寄りに空気配管32Bが、上端寄りに燃料ガス配管36Bが、これらの配管の間に冷却水配管34Bが配置されている。前傾した後端面42Bの例においては、後列席乗員14の足下スペースは、図4のように確保される。すなわち、後列席乗員14は、つま先を高くして、後端面42Bの上端近くの空間に入れるようにする。靴底または足の裏全体を、傾斜した後端面42に接触するようにしてもよい。
【0017】
図5は、また別の燃料電池内部の構成要素の配置例を示す図である。燃料電池26Cの燃料電池ケース28Cの後端面42Cは段差形状となっており、上側が後方に、下側が前方に位置する。上側に位置する部分の内側に空気配管32Cが、下側に位置する部分の内側に燃料ガス配管36Cと冷却水配管34Cが配置される。後列席乗員は、後端面42Cの下側の前方に位置する部分に向けて、つま先を入れるようにして着席する。
【0018】
図6は、車両10を平面視したときの燃料電池26の内部構成の配置を示す図である。図6は、図2〜図5にて示した燃料電池26A,26B,26Cのいずれにも共通した図であり、各図において数字の後に付した英文字A,B,Cを省略して示す。前述のように燃料電池セルは、車両の幅方向に積層されている。これにより、セルに空気、燃料ガス等を供給するため、またセルから回収するための配管32,34,36は、燃料電池スタック30の前方と後方に配置される。燃料電池スタック30は、独立した前列左右席の下に別々に配置され、空気、燃料ガス等を供給するための分配器38、補機40が左右席の間の部分に配置される。燃料電池ケース28の後端面42は、前列席16の左右の座席の位置で上端または下端の一方が、他方より後方に延びている。これに対して左右の座席の間の部分では、鉛直な面となっている。この鉛直部分43は、左右座席下の傾斜した、または段差のついた後端面の前方側の端の位置に配置されるが、後端面の後方端の位置に配置されてもよく、またこれらの間に配置されてもよい。平面視において、後端面が凹型、すなわち左右の座席の間で、後列席乗員から見て奥に位置することにより、後列中央席の足下スペースが確保され、また視覚的な圧迫感が緩和される。
【0019】
図7は、前列席下に配置される燃料電池の他の例を示す図である。図7(a),(b),(c)は、前述の図2、図3、図5の例に対応しており、順番に、後端面が後傾した例、前傾した例、段差とした例を示している。燃料電池スタック46A,46B,46Cは、セルが車両の前後方向に積層されたものであり、この場合マニホルドは、燃料電池スタックの車両の幅方向左右、またはスタックの上下に配置される。マニホルドの配置のために幅寸法に余裕がなくなる分、燃料電池44A,44B,44Cの後端付近の略三角形断面の部分、段差の一部の方形部分を分配器または補機、またはその両方を配置するスペース48A,48B,48Cとされる。図7の各例において、後列席乗員の足下スペースの確保については、図1〜図5の場合の各例と同様であり、説明は省略する。
【0020】
図8は、燃料電池のさらに別の配置例を示す図である。図8においては、平面視における車両の前列席16部分のみを示し、図6と同様左が車両の前方である。燃料電池50は、燃料電池ケース52内に、燃料電池スタック54および分配器56、補機58を収めて構成される。燃料電池スタック54は、前列席の左右に分けて配置され、燃料電池セルの積層方向は車両の幅方向とされている。分配器56および補機58は、左右の燃料電池スタック54の間に配置される。補機58は、必要な補機全てを収容してもよく、また一部を収容してもよい。燃料電池ケース52は、両側の燃料電池スタック54を収めた部分が前後方向に長く、中央部分が短くなっており、全体として凹形状となっている。この例においては、燃料電池ケース52の後端面60は、全て略鉛直に配置された面で構成される。後端面60は、燃料電池スタック54を収めた部分60aが、分配器56および補機58を収めた部分60bよりも後方に位置する。好適には、後端面の部分60aは、前列の左右席の下の部分であり、部分60bは左右席の間の部分に対応する。また、部分60bはセンタートンネル62内に収められるようにしてよい。
【0021】
燃料電池50を、平面視において凹形状としたことにより、後列中央席の足下スペースが確保され、また後列席乗員から見たときに圧迫感が低減される。
【0022】
図9は、燃料電池のさらに別の配置例を示す図である。図9においては、平面視における車両の前列席16部分のみを示し、図6と同様左が車両の前方である。燃料電池70は、燃料電池ケース72内に、燃料電池スタック74および分配器76、補機78を収めて構成される。燃料電池スタック74は、左右に分けて配置され、燃料電池セルの積層方向は車両の前後方向とされている。補機78は、必要な補機全てを収容してもよく、また一部を収容してもよい。燃料電池ケース72は、分配器76および補機78を収めた部分が、その両側の部分より前後方向に長くなっており、全体として凸形状となっている。この例においては、燃料電池ケース72の後端面80は、全て略鉛直に配置された面で構成される。後端面80は、分配器76および補機78を収めた部分80bが、その両側の部分80aよりも後方に位置する。好適には、後端面の部分80bは、左右席の間の部分に対応する。また、燃料電池70の、分配器76および補機78を収めた部分(後方に延びる部分)は、センタートンネル62内に位置するようにしてよい。
【0023】
燃料電池70を、平面視において凸形状としたことにより、燃料電池スタックを搭載するための空間を確保し、後列左右席の足下スペースも確保することができる。
【0024】
図10は、燃料電池のさらに別の配置例を示す図である。図10においては、平面視における車両の前列席16部分のみを示し、図6と同様左が車両の前方である。燃料電池90は、燃料電池ケース92内に、燃料電池スタック94および分配器96、補機98を収めて構成される。燃料電池スタック94は、前列席の左右に分けて配置され、燃料電池セルの積層方向は車両の幅方向とされている。分配器96および補機98は、左右の燃料電池スタック94の間およびこの間の後方に延びた部分に配置される。補機98は、必要な補機全てを収容してもよく、また一部を収容してもよい。燃料電池ケース92は、両側の燃料電池スタック94を収めた部分が前後方向に短く、中央部分が長くなっており、全体として凸形状となっている。この例においては、燃料電池ケース92の後端面100は、全て略鉛直に配置された面で構成される。後端面100は、燃料電池スタック94を収めた部分100aが、分配器96および補機98を収めた部分100bよりも前方に位置する。好適には、後端面の部分100aは、前列の左右席の下の部分であり、部分100bは左右席の間の部分に対応する。また、燃料電池90の、分配器96および補機98を収めた部分(後方に延びる部分)は、センタートンネル62内に位置するようにしてよい。
【0025】
燃料電池90を、平面視において凸形状としたことにより、燃料電池スタックを搭載するための空間を確保し、後列左右席の足下スペースも確保することができる。
【0026】
図11は、燃料電池のさらに別の配置例を示す図である。図11においては、平面視における車両の前列席16部分のみを示し、図6と同様左が車両の前方である。燃料電池110は、燃料電池ケース112内に、燃料電池スタック114および分配器116、補機118を収めて構成される。燃料電池スタック114は、前列左右席の一方の席下およびセンタートンネル62内に配置され、燃料電池セルの積層方向は車両の幅方向とされている。分配器116および補機118は、前列左右席の他方の席下に配置される。補機118は、必要な補機全てを収容してもよく、また一部を収容してもよい。燃料電池ケース112は、燃料電池スタック114を収めた部分が前後方向に短く、分配器116および補機118を収めた部分が長くなっており、全体としてL字形状となっている。この例においては、燃料電池ケース92の後端面120は、全て略鉛直に配置された面で構成される。後端面120は、燃料電池スタック114を収めた部分120aが、分配器116および補機118を収めた部分120bよりも前方に配置される。この例は、前列席および後列席の少なくとも一方が非対称に(例えば前後にずれて)配置される場合に好適に採用できる。
【0027】
以上の各例は、前列席、後列席の2列を有する車両を用いて説明したが、3列以上の座席を有する車両において、最後列以外の列の席下に燃料電池を配置する場合にも、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 車両、16 前列席、18 後列席、26,26A〜C 燃料電池、28,28A〜C 燃料電池ケース、32,32A〜C 空気配管、34,34A〜C 冷却水配管、36,36A〜C 燃料ガス配管、38 分配器、40 補機、42 後端面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を座席下に搭載した車両に関し、特に燃料電池内の機器および配管の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を搭載し、燃料電池により発電された電力により走行する車両が開発されている。燃料電池の配置について各種の提案がなされているが、例えば、下記特許文献1においては、前列席の下に燃料電池を搭載する構成が示されている。一般的なエンジンにより駆動される車両においては、前列席の下の部分は、空間をあけ、ここに後列席の乗員の足先を入れるようにして、後列席乗員の足下スペースを確保している。しかし、前記特許文献1に記載された車両においては、前列席下の部分が燃料電池で占められ、後列席乗員の足を入れるスペースが確保されていない。
【0003】
下記特許文献2には、前列席下に搭載された燃料電池等の後端面を斜面にして、後列席乗員の足下スペースを確保する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−126063号公報
【特許文献2】特開2006−62548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献2には、燃料電池の後端面を斜めにすることは記載されているが、どのようにして、この構成を達成するかについては、言及されていない。
【0006】
本発明は、後ろの席の乗員の足下スペースを効率的に作り出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料電池スタックなどの機器および各配管等を収容する燃料電池ケースの後端面を、その上端と下端の一方が他方より後方となるようにし、後方となった端側に空気が流れる配管を、反対の端側に燃料ガスが流れる配管を、これらの配管の間に冷却水が流れる配管を配置する。
【発明の効果】
【0008】
燃料ガスよりも流量が多く、流路の断面積が大きくなる空気配管を、後方となる端側に配置することにより、効率的に足下スペースが確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】側方視による燃料電池車両の概略図である。
【図2】燃料電池の一例の後方部分の拡大図である。
【図3】燃料電池の他の例の後方部分の拡大図である。
【図4】図3に示す燃料電池による足下スペースの状態を示す図である。
【図5】燃料電池の更に他の例の後方部分の拡大図である。
【図6】平面視による燃料電池車両の概略図である。
【図7】燃料電池内部の側方視における各機器の配置例を示す図である。
【図8】燃料電池内部の平面視における各機器の配置例を示す図である。
【図9】燃料電池内部の平面視における各機器の他の配置例を示す図である。
【図10】燃料電池内部の平面視における各機器の更に他の配置例を示す図である。
【図11】燃料電池内部の平面視における各機器の更に他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、車両10および乗員12,14を側方視した図である。車両10は、例として前列席16および後列席18を有する形式の車両を示している。前列席16は、左右独立したシートを有しても良く、また左右が繋がったベンチシート形式であってもよい。後列席18も、左右独立、左中右独立、またベンチシート形式であってよい。個々の座席は、シートクッション20、シートバック22およびヘッドレスト24を含む。特に、前列席、後列席を分けて説明する必要があるときには、符号20,22,24の後にF(前席)、R(後席)を付す。現在、販売されている多くの車両において、前列席シートクッション20Fの下の空間は、後列席乗員の足下スペースとして利用される。つまり、後列席乗員のつま先が、前列席シートクッション20Fの下に入り込むように、空間が空けられている。前列席シートクッション20F下に、小物入れを備える車両であっても、後方部分は、足下スペースとして利用されるのが一般的である。
【0011】
燃料電池を搭載し、これにより発電された電力によってモータを駆動して走行する燃料電池車においては、燃料電池の搭載場所について、様々な提案がなされている。前記公報においては、その一例として前列席の下を搭載場所とする提案がなされている。燃料電池は、比較的大きな外形寸法を有し、前列席下の空間に余裕を持って収められるというわけではない。一方で、この場所は、前述のように、従来、後列席乗員の足下スペースとして利用されており、ここが燃料電池等により占有されてしまうと、後列席乗員が窮屈な思いをする可能性がある。
【0012】
この実施形態の車両10は、前列席シートクッション20F下の空間に燃料電池26を配置する。前列席が左右独立席の場合、左右の座席の下の空間の間の空間を含め、前列席下の空間に燃料電池26を配置することもできる。一方で、燃料電池26を構成する、燃料電池スタック、補機および分配器等の配置を工夫することにより、後列席乗員の足下スペースを確保している。燃料電池26は、燃料電池スタック、補機および分配機等を燃料電池ケースに収めて構成されており、燃料電池ケースの後端面の少なくとも一部が後列席乗員の足下スペースの前端を規定している。燃料電池ケースの後端面は、その上端と下端の一方が他方に対して後方に位置し、これにより、足下スペースが確保されている。つまり、前列席下の空間の鉛直方向の高さは、人の足の厚さ(鉛直方向の寸法)に対して、かなり大きく、上端または両端のいずれか一方を後方に位置させて燃料電池の構成要素の配置スペースを確保しつつ、他方の端を前方に位置させることにより足下のスペースも確保する。このような後端面は、前列席の全幅にわたって設けられてもよいが、後列席に乗員が座る位置の前方のみに配置してもよい。例えば、上記の後端面を左右の後列席の前方のみに配置し、後列中央席の前方、前列左右席の間の部分またはセンタートンネル部分においては、鉛直な後端面を形成することもできる。
【0013】
図2には、燃料電池26の内部構成の一例として燃料電池26Aが、前列の右席または左席の正中面(車両前後方向に平行な鉛直面)による断面にて示されている。図中、左が車両の前方に当たり、燃料電池26Aの後半部分が示されている。燃料電池26Aは、燃料電池ケース28A内に、燃料電池セルが積層された燃料電池スタック30Aと、燃料ガス、空気、冷却水等を流すためのマニホルドと呼ばれる配管32A,34A,36Aが配置される。図2の断面には現れないが、さらに複数の燃料電池スタックに燃料ガス、空気等を分配する分配器38(図6参照)、および燃料電池スタックに燃料ガス、空気、冷却水等を供給し、またスタックより排出させるための機器である補機40(図6参照)を配置することもできる。補機は、具体的には、空気を圧縮するコンプレッサ、供給する空気を加湿する加湿器、燃料ガスを循環させる循環ポンプが含まれる。これらの補機の全て、または一部が前列席下の燃料電池26に配置されることができる。
【0014】
図2の例では、燃料電池セルの電極は、車両の幅方向、図2においては紙面を貫く方向に積層されており、この積層方向に沿って各配管が延びている。燃料電池ケース28の後端面42は後傾しており、上端が下端より後方に位置している。燃料電池セル内を流れる空気、燃料ガス、冷却水は、電極の面に平行な方向に流れるので、図2の例にあっては、これらの流体は、車両の前後方向に流れる。したがって、供給側のマニホルドと、排出側のマニホルドは、一方が燃料電池スタック30の前方側、他方側が後方に配置される。
【0015】
空気が流れる空気配管32が、後端面42の、後方に位置する端、この例では上端に寄せて配置され、燃料ガスが流れる燃料ガス配管36が前方に位置する端に寄せて配置されている。空気配管32と燃料ガス配管36の間に、冷却水の流れる冷却水配管34が配置されている。この配置は、流量(体積流量)に応じて定められており、流量が多い配管が、後方に位置する端に寄せて配置され、逆に流量が少ない端が前方に位置する端に寄せて配置されている。この例では、図1に示されるように、後列席の乗員は、つま先を後端面42の下端付近に挿入するようにして、着席することができる。
【0016】
図3は、図2の燃料電池26の上下を入れ替えた配置例を示す図である。燃料電池26Bの燃料電池ケース28Bの後端面42Bは、前傾しており、上端が前方に位置し、下端が後方に位置している。これに合わせ、下端寄りに空気配管32Bが、上端寄りに燃料ガス配管36Bが、これらの配管の間に冷却水配管34Bが配置されている。前傾した後端面42Bの例においては、後列席乗員14の足下スペースは、図4のように確保される。すなわち、後列席乗員14は、つま先を高くして、後端面42Bの上端近くの空間に入れるようにする。靴底または足の裏全体を、傾斜した後端面42に接触するようにしてもよい。
【0017】
図5は、また別の燃料電池内部の構成要素の配置例を示す図である。燃料電池26Cの燃料電池ケース28Cの後端面42Cは段差形状となっており、上側が後方に、下側が前方に位置する。上側に位置する部分の内側に空気配管32Cが、下側に位置する部分の内側に燃料ガス配管36Cと冷却水配管34Cが配置される。後列席乗員は、後端面42Cの下側の前方に位置する部分に向けて、つま先を入れるようにして着席する。
【0018】
図6は、車両10を平面視したときの燃料電池26の内部構成の配置を示す図である。図6は、図2〜図5にて示した燃料電池26A,26B,26Cのいずれにも共通した図であり、各図において数字の後に付した英文字A,B,Cを省略して示す。前述のように燃料電池セルは、車両の幅方向に積層されている。これにより、セルに空気、燃料ガス等を供給するため、またセルから回収するための配管32,34,36は、燃料電池スタック30の前方と後方に配置される。燃料電池スタック30は、独立した前列左右席の下に別々に配置され、空気、燃料ガス等を供給するための分配器38、補機40が左右席の間の部分に配置される。燃料電池ケース28の後端面42は、前列席16の左右の座席の位置で上端または下端の一方が、他方より後方に延びている。これに対して左右の座席の間の部分では、鉛直な面となっている。この鉛直部分43は、左右座席下の傾斜した、または段差のついた後端面の前方側の端の位置に配置されるが、後端面の後方端の位置に配置されてもよく、またこれらの間に配置されてもよい。平面視において、後端面が凹型、すなわち左右の座席の間で、後列席乗員から見て奥に位置することにより、後列中央席の足下スペースが確保され、また視覚的な圧迫感が緩和される。
【0019】
図7は、前列席下に配置される燃料電池の他の例を示す図である。図7(a),(b),(c)は、前述の図2、図3、図5の例に対応しており、順番に、後端面が後傾した例、前傾した例、段差とした例を示している。燃料電池スタック46A,46B,46Cは、セルが車両の前後方向に積層されたものであり、この場合マニホルドは、燃料電池スタックの車両の幅方向左右、またはスタックの上下に配置される。マニホルドの配置のために幅寸法に余裕がなくなる分、燃料電池44A,44B,44Cの後端付近の略三角形断面の部分、段差の一部の方形部分を分配器または補機、またはその両方を配置するスペース48A,48B,48Cとされる。図7の各例において、後列席乗員の足下スペースの確保については、図1〜図5の場合の各例と同様であり、説明は省略する。
【0020】
図8は、燃料電池のさらに別の配置例を示す図である。図8においては、平面視における車両の前列席16部分のみを示し、図6と同様左が車両の前方である。燃料電池50は、燃料電池ケース52内に、燃料電池スタック54および分配器56、補機58を収めて構成される。燃料電池スタック54は、前列席の左右に分けて配置され、燃料電池セルの積層方向は車両の幅方向とされている。分配器56および補機58は、左右の燃料電池スタック54の間に配置される。補機58は、必要な補機全てを収容してもよく、また一部を収容してもよい。燃料電池ケース52は、両側の燃料電池スタック54を収めた部分が前後方向に長く、中央部分が短くなっており、全体として凹形状となっている。この例においては、燃料電池ケース52の後端面60は、全て略鉛直に配置された面で構成される。後端面60は、燃料電池スタック54を収めた部分60aが、分配器56および補機58を収めた部分60bよりも後方に位置する。好適には、後端面の部分60aは、前列の左右席の下の部分であり、部分60bは左右席の間の部分に対応する。また、部分60bはセンタートンネル62内に収められるようにしてよい。
【0021】
燃料電池50を、平面視において凹形状としたことにより、後列中央席の足下スペースが確保され、また後列席乗員から見たときに圧迫感が低減される。
【0022】
図9は、燃料電池のさらに別の配置例を示す図である。図9においては、平面視における車両の前列席16部分のみを示し、図6と同様左が車両の前方である。燃料電池70は、燃料電池ケース72内に、燃料電池スタック74および分配器76、補機78を収めて構成される。燃料電池スタック74は、左右に分けて配置され、燃料電池セルの積層方向は車両の前後方向とされている。補機78は、必要な補機全てを収容してもよく、また一部を収容してもよい。燃料電池ケース72は、分配器76および補機78を収めた部分が、その両側の部分より前後方向に長くなっており、全体として凸形状となっている。この例においては、燃料電池ケース72の後端面80は、全て略鉛直に配置された面で構成される。後端面80は、分配器76および補機78を収めた部分80bが、その両側の部分80aよりも後方に位置する。好適には、後端面の部分80bは、左右席の間の部分に対応する。また、燃料電池70の、分配器76および補機78を収めた部分(後方に延びる部分)は、センタートンネル62内に位置するようにしてよい。
【0023】
燃料電池70を、平面視において凸形状としたことにより、燃料電池スタックを搭載するための空間を確保し、後列左右席の足下スペースも確保することができる。
【0024】
図10は、燃料電池のさらに別の配置例を示す図である。図10においては、平面視における車両の前列席16部分のみを示し、図6と同様左が車両の前方である。燃料電池90は、燃料電池ケース92内に、燃料電池スタック94および分配器96、補機98を収めて構成される。燃料電池スタック94は、前列席の左右に分けて配置され、燃料電池セルの積層方向は車両の幅方向とされている。分配器96および補機98は、左右の燃料電池スタック94の間およびこの間の後方に延びた部分に配置される。補機98は、必要な補機全てを収容してもよく、また一部を収容してもよい。燃料電池ケース92は、両側の燃料電池スタック94を収めた部分が前後方向に短く、中央部分が長くなっており、全体として凸形状となっている。この例においては、燃料電池ケース92の後端面100は、全て略鉛直に配置された面で構成される。後端面100は、燃料電池スタック94を収めた部分100aが、分配器96および補機98を収めた部分100bよりも前方に位置する。好適には、後端面の部分100aは、前列の左右席の下の部分であり、部分100bは左右席の間の部分に対応する。また、燃料電池90の、分配器96および補機98を収めた部分(後方に延びる部分)は、センタートンネル62内に位置するようにしてよい。
【0025】
燃料電池90を、平面視において凸形状としたことにより、燃料電池スタックを搭載するための空間を確保し、後列左右席の足下スペースも確保することができる。
【0026】
図11は、燃料電池のさらに別の配置例を示す図である。図11においては、平面視における車両の前列席16部分のみを示し、図6と同様左が車両の前方である。燃料電池110は、燃料電池ケース112内に、燃料電池スタック114および分配器116、補機118を収めて構成される。燃料電池スタック114は、前列左右席の一方の席下およびセンタートンネル62内に配置され、燃料電池セルの積層方向は車両の幅方向とされている。分配器116および補機118は、前列左右席の他方の席下に配置される。補機118は、必要な補機全てを収容してもよく、また一部を収容してもよい。燃料電池ケース112は、燃料電池スタック114を収めた部分が前後方向に短く、分配器116および補機118を収めた部分が長くなっており、全体としてL字形状となっている。この例においては、燃料電池ケース92の後端面120は、全て略鉛直に配置された面で構成される。後端面120は、燃料電池スタック114を収めた部分120aが、分配器116および補機118を収めた部分120bよりも前方に配置される。この例は、前列席および後列席の少なくとも一方が非対称に(例えば前後にずれて)配置される場合に好適に採用できる。
【0027】
以上の各例は、前列席、後列席の2列を有する車両を用いて説明したが、3列以上の座席を有する車両において、最後列以外の列の席下に燃料電池を配置する場合にも、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 車両、16 前列席、18 後列席、26,26A〜C 燃料電池、28,28A〜C 燃料電池ケース、32,32A〜C 空気配管、34,34A〜C 冷却水配管、36,36A〜C 燃料ガス配管、38 分配器、40 補機、42 後端面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルが複数個積層された燃料電池スタックと、
燃料電池スタックに向かう、または燃料電池スタックからの燃料ガスが流れる燃料ガス配管と、
燃料電池スタックに向かう、または燃料電池スタックからの空気を送る空気配管と、
燃料電池スタックの冷却水が流れる冷却水配管と、
燃料電池スタック、燃料ガス配管、空気配管および冷却水配管を収容する燃料電池ケースと、
を有する車両用の燃料電池であって、
当該燃料電池は、最後列より前の列の座席の下に搭載され、
前記燃料電池ケースの後端面が当該座席の後ろの席の足下空間の前端を規定し、前記後端面の上端と下端の一方が他方に対して、後方に位置し、
燃料ガス配管、空気配管および冷却水配管の、燃料電池スタックと前記燃料電池ケースの後端面の間に位置する部分は、後端面の、前記後方に位置する端側に空気配管が、他方の端側に燃料ガス配管が、これらの間に冷却水配管が配置される、
車両用の燃料電池。
【請求項1】
燃料電池セルが複数個積層された燃料電池スタックと、
燃料電池スタックに向かう、または燃料電池スタックからの燃料ガスが流れる燃料ガス配管と、
燃料電池スタックに向かう、または燃料電池スタックからの空気を送る空気配管と、
燃料電池スタックの冷却水が流れる冷却水配管と、
燃料電池スタック、燃料ガス配管、空気配管および冷却水配管を収容する燃料電池ケースと、
を有する車両用の燃料電池であって、
当該燃料電池は、最後列より前の列の座席の下に搭載され、
前記燃料電池ケースの後端面が当該座席の後ろの席の足下空間の前端を規定し、前記後端面の上端と下端の一方が他方に対して、後方に位置し、
燃料ガス配管、空気配管および冷却水配管の、燃料電池スタックと前記燃料電池ケースの後端面の間に位置する部分は、後端面の、前記後方に位置する端側に空気配管が、他方の端側に燃料ガス配管が、これらの間に冷却水配管が配置される、
車両用の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−221892(P2010−221892A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72283(P2009−72283)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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