車両用空調装置
【課題】 省エネ、乗員の快適性向上、エアコン臭防止を達成できる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】 冷房運転が要求される状態において、車両の走行が停止し、アイドルストップにより冷媒圧縮機が停止した状態では、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施し、少ない消費エネルギーにより、アイドルストップ中における乗員の快適性を確保する。このドラフト空調では、エバポレータ6を通過しない空気流が車室内に吹き出されるため、エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐことができる。即ち、アイドルストップ中は、エアコン臭の無いドラフト空調を少ない消費エネルギーで実施して、乗員の快適性を確保することができる。
【解決手段】 冷房運転が要求される状態において、車両の走行が停止し、アイドルストップにより冷媒圧縮機が停止した状態では、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施し、少ない消費エネルギーにより、アイドルストップ中における乗員の快適性を確保する。このドラフト空調では、エバポレータ6を通過しない空気流が車室内に吹き出されるため、エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐことができる。即ち、アイドルストップ中は、エアコン臭の無いドラフト空調を少ない消費エネルギーで実施して、乗員の快適性を確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行停止時に内燃機関(以下、エンジンと称す)の運転を停止して省エネ運転(アイドルストップ)を実施する車両(以下、エコラン車と称す)に搭載される空調装置に関するものであり、特に車両走行停止中における冷房運転技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行停止に伴うエンジン停止中に冷房運転を行なう技術として、冷媒圧縮機に電動モータを組み合わせた電動コンプレッサを作動させて、アイドルストップ中であっても冷房運転を実行する技術が知られている。
しかし、アイドルストップ中は、エンジンの停止に伴い充電動作が行なわれておらず、バッテリの負担が大きくなる。また、アイドルストップに消費された冷房エネルギーは、エンジン始動後の車両走行中に回収(動力消費によるバッテリ充電)されるため、省燃費の妨げとなる。
【0003】
別の技術として、空調ダクトにエバポレータ(冷媒蒸発器)をバイパスするエババイパスを設けるとともに、このエババイパス内に蓄冷剤熱交換器を配置した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。蓄冷剤熱交換器は、車両走行中における冷凍サイクルの作動により蓄冷される蓄冷剤と、エババイパスを流れる空気との熱交換を行なう熱交換器である。
この特許文献1の技術は、車両走行停止に伴う冷媒圧縮機の停止中に、蓄冷剤熱交換器で冷却された空気を車室内に吹き出す技術である。
しかし、蓄冷剤に蓄えられた冷熱で車室内の冷房運転を実施しようとすると、蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルとして約100kJが要求される。その結果、蓄冷剤熱交換器が大型化し、車両搭載スペースの確保が困難となる不具合があった。
【0004】
また別の技術として、車両走行停止に伴って冷媒圧縮機が停止した際、送風機の風量を増大させて、空調装置から吹き出される風によって乗員の快適性を保つ技術が考えられる。
しかし、この技術では、エバポレータを通過した風が車室内に吹き出される。この際、エバポレータ表面の水分(ドレン水)が蒸発する。この時、エバポレータの表面に付着していた異臭成分(乗員の汗等に由来する酢酸系の匂い成分や、車両内装材など車室内の部材から放出された匂い成分など)を含んだ水分が蒸発して、好ましくない匂いのエアコン臭として車室内に吹き出され、乗員に不快感を与える不具合があった。
【特許文献1】特開2000−289451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、(1)車両走行停止に伴うエンジン停止中に冷媒圧縮機を停止させた状態であっても乗員の快適性を確保し、(2)車両搭載スペースの確保が容易で、(3)エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐことのできる車両用空調装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[請求項1の手段]
請求項1の手段を採用する車両用空調装置は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、エバポレータ(6)を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施する。
このように、冷媒圧縮機が停止する状態であっても、ドラフト空調によって乗員の快適性を確保することができる。
また、ドラフト空調を用いることで、蓄冷剤を用いた蓄冷剤熱交換器(31)を不要にできる。あるいは、蓄冷剤熱交換器(31)を用いたとしても、蓄冷剤による冷房を主目的としないため、大きな蓄冷量ポテンシャルを必要としない。このため、車両搭載スペースの確保を容易にできる。
さらに、ドラフト空調では、エバポレータ(6)を通過しない空気流を車室内に吹き出すため、エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐことができる。即ち、エアコン臭の無い空気流によりドラフト空調を実施して、乗員の快適性を確保することができる。
【0007】
[請求項2の手段]
請求項2の手段を採用する車両用空調装置においてドラフト空調を行なう空気通路(23)には、冷凍サイクルの作動により冷却される蓄冷剤と、ドラフト空調により車室内に向かう空気流との熱交換を行なう蓄冷剤熱交換器(31)が配置される蓄冷器通路が設けられるとともに、この蓄冷器通路をバイパスする蓄冷器バイパス(32)が設けられる。 そして、制御装置は、ドラフト空調を行なう際、日射量、または乗員表面温度、あるいは目標吹出温度に基づき、ドラフト空調を行なう送風機の作動制御、および蓄冷器通路または蓄冷器バイパス(32)の開閉制御(選択制御)を行なう。
これにより、無駄なエネルギー消費を抑えることができ、省エネルギーと、乗員の快適性とを、高次元で両立できる。
【0008】
[請求項3の手段]
請求項3の手段を採用する車両用空調装置は、蓄冷剤熱交換器(31)に搭載される蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルが40〜60kJである。
このように、蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルが40〜60kJと従来技術(蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルとして約100kJを必要とした従来技術)に比較して小さいため、蓄冷剤熱交換器(31)を搭載するものであっても、車両搭載スペースの確保を容易にできる。
【0009】
[請求項4の手段]
請求項4の手段を採用する車両用空調装置の制御装置は、冷媒圧縮機を作動させる冷房運転時から、冷媒圧縮機を停止してドラフト空調を行なう際に、冷媒圧縮機を作動させる冷房運転の送風量より、ドラフト空調の送風量を増加させるドラフト風量増加手段を備える。
これにより、冷媒圧縮機が停止した状態であっても、ドラフト空調の風量が増加することで乗員の快適性を高く維持できる。
【0010】
また、この請求項4の手段を採用する車両用空調装置の制御装置は、ドラフト空調中に、乗員のマニュアル操作によって風量変更の指示が成された場合に、その風量変更を記憶し、次回から風量変更後の風量にてドラフト空調を実施させる学習手段を備える。
これにより、次回のドラフト空調時に、乗員がマニュアル操作を実行しなくても、乗員の好みに応じた風量によるドラフト空調を実施することができる。
【0011】
[請求項5の手段]
請求項5の手段を採用する車両用空調装置を搭載する車両は、自身の車両の外部から交通に関する情報を受信する情報受信装置を搭載する。
そして、制御装置は、車両走行中に、情報受信装置により検出した「次に信号に停止するまでの時間」と「次の信号停車時間」とに基づいて、蓄冷剤の蓄冷量をコントロールする。
これにより、車両が停車するまでの間に、停車中(冷媒圧縮機の停止中)に必要とされる蓄冷能力を蓄冷剤熱交換器(31)に蓄えることができる。
【0012】
また、この請求項4の手段を採用する車両用空調装置における制御装置は、車両が信号で停車した際、情報受信装置により検出した「信号停止時間」に基づいて、蓄冷剤の放冷量をコントロールする。
これにより、車両停車中に安定して冷風を車室内に吹き出すことができる。
【0013】
[請求項6の手段]
請求項6の手段を採用する車両用空調装置の制御装置は、上記請求項5の手段に加え、さらに乗員乗車数を加味して、蓄冷剤の蓄冷量と放冷量をコントロールするものである。 これにより、無駄な蓄冷量を抑えることができ、省エネルギーと、乗員の快適性とを、高次元で両立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
車両用空調装置は、冷媒の吸入圧縮動作を行なう冷媒圧縮機、および空気流と低温低圧の冷媒との熱交換を行って空気流の冷却を行うエバポレータ(6)を備える冷凍サイクルを具備し、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する。
この車両用空調装置は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際(例えば、アイドルストップ時)、エバポレータ(6)を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施する。
【実施例1】
【0015】
車両走行停止時にエンジンを停止して省エネ運転を実施する車両に搭載される車両用空調装置の一例を、図1〜図3を参照して説明する。
なお、以下の各実施例では、冷凍サイクルの冷媒圧縮機がエンジンにより駆動される例を示す。即ち、以下の実施例では、アイドルストップに伴い冷媒圧縮機が停止する車両用空調装置を示す。
【0016】
(車両用空調装置の概略構成)
車両用空調装置は、車室内の暖房、送風、冷房の実行を行なうHVAC(ヒーター/ベンチレーション/エアコンユニット:図1参照)と、このHVACの作動を制御する制御装置(以下、空調用ECUと称す:図示しない)とで構成される。
HVACは、車室内前部のインストルメントパネル(ダッシュボード)の内部に配置されるものであり、大別して送風機ユニット1と空調ユニット2の2つの部分から構成されており、送風機ユニット1と空調ユニット2が結合された状態で車両に搭載される。なお、図1において前後上下の各矢印は、HVACの車両搭載状態における方向を示している。
【0017】
(送風機ユニット1の説明)
送風機ユニット1は、内気(車室内空気)または外気(車室外空気)を選択して取り入れる内外気切替箱3と、この内外気切替箱3で選択された空気を空調ユニット2に送風するメイン送風機4とを組み合わせてなる。
内外気切替箱3は、車室外に連通する外気導入口と、車室内に連通する内気導入口と、外気導入口または内気導入口を開閉可能な内外気切替ドアとを備え、内外気切替ドアにより選択された空気(外気、内気、または外気と内気の混合空気)を内外気切替箱3の内部に導入する。
メイン送風機4は、ファンと電動モータとを組み合わせてなる遠心式の電動ファンであり、図示しない空調用ECUから通電を受けると、内外気切替箱3(具体的には内外気切替ドア)で選択された空気を吸引して、空調ユニット2内に圧送する。
【0018】
(空調ユニット2の説明)
空調ユニット2は、送風機ユニット1の接続口から車室内に向かう空気通路を形成する樹脂製の空調ケース5を有する。この空調ケース5は、ポリプロピレンのような弾性を有し、機械的強度も高い樹脂にて成形されている。具体的に空調ケース5は、成形上の型抜きの都合、および内部への機能部品等の組付上の理由等から複数に分割して成形した後に、締結部品によって一体に結合する構造を採用している。
【0019】
空調ユニット2には、空気流の上流側から下流側に向かって、(a)車室内に吹き出される空気流の冷却を行なうクーリング部、(b)車室内に吹き出される空気流の加熱を行なうヒーティング部、(c)車室内に吹き出される空気流の吹出口を切り替える吹出口切替部が設けられている。
【0020】
(クーリング部の説明)
クーリング部は、空気流の冷却を行なうエバポレータ6が配置される。このエバポレータ6は、車両用冷凍サイクルの一部である。
車両用冷凍サイクルの概略構成を説明する。車両用冷凍サイクルは、冷媒の吸引圧縮動作を行なう冷媒圧縮機と、この冷媒圧縮機で圧縮された高温高圧の冷媒を外気と熱交換して液化凝縮するコンデンサ(冷媒凝縮器)と、このコンデンサで液化された高温高圧の液冷媒を低温低圧の霧状冷媒にする減圧装置(膨張弁等)と、減圧装置で減圧された低温低圧の霧状冷媒を車室内に吹き出される空気と熱交換し、低温低圧の霧状冷媒を蒸発させるエバポレータ6(冷媒蒸発器)とを備え、このエバポレータ6で蒸発した蒸気冷媒は再び冷媒圧縮機に吸引され、上記のサイクルを繰り返す。
なお、車両用冷凍サイクル内で冷媒を蓄える手段は、コンデンサと減圧装置の間に配置されて液冷媒のみを減圧装置に導くレシーバであっても良いし、エバポレータ6と冷媒圧縮機の間に配置されてガス冷媒のみを冷媒圧縮機へ導くアキュムレータであっても良い。
【0021】
この実施例1における冷媒圧縮機は、車両走行用のエンジンによって駆動されるもの(例えば、空調用ECUの指示により吐出容量の制御がなされる斜板式可変容量圧縮機など)であり、エンジンのクランク軸の回転出力がプーリーやベルトを介して伝達されて、冷媒の吸入動作と圧縮吐出動作を行なう。
空調ユニット2内に配置されるエバポレータ6は、上述したように、減圧装置により減圧された低温低圧の霧状冷媒が流入し、この低温低圧の霧状冷媒がエバポレータ6を通過する空気から吸熱して蒸発する。この時、霧状冷媒がエバポレータ6を通過する空気から吸熱することで、エバポレータ6を通過する空気が冷却される。
なお、クーリング部の詳細は後述する。
【0022】
(ヒーティング部の説明)
空調ケース5の内部には、温水式のヒータコア7(暖房用熱交換器の一例)が配置される温風通路と、この温風通路をバイパス(ヒータコア7をバイパス)させる冷風バイパス8とが設けられている。
ここで、ヒータコア7は、エンジン冷却水(温水)が循環供給可能に設けられており、エンジン冷却水とヒータコア7を通過する空気とが熱交換することで、ヒータコア7を通過する空気が加熱される。
【0023】
ヒータコア7の空気流の上流側には、ヒータコア7を通過する空気流量(即ち、ヒータコア7で加熱される温風量)と、冷風バイパス8を通過する空気流量(即ち、ヒータコア7を迂回する冷風量)との割合を調整するエアミックスドア9が配置されている。なお、このエアミックスドア9は、板状ドアによって構成されるものであっても良いし、フィルム式ドアであっても良い。
ここで、図1では、冷風バイパス8の上部に、ヒータコア7および冷風バイパス8の両方をバイパスする第2冷風バイパス10が設けられ、この第2冷風バイパス10が開閉ドア11によって開閉可能に設けられる例を示すが、第2冷風バイパス10およびその開閉ドア11は無くても良い。
【0024】
(吹出口切替部の説明)
吹出口切替部は、空調ユニット2内を通過した空調風の吹出口の切替えを実施するものであり、空調ケース5における空気流の下流側には、フロントガラスの内側に向けて空調風(主に温風)を吹き出すためのデフロスタ吹出口に通じるデフロスタ開口12、前席乗員の上半身に向けて空調風(主に冷風)を吹き出すためのフェイス吹出口に通じるフェイス開口13、前席乗員の足元部に向けて空調風(主に温風)を吹き出すためのフット吹出口に通じるフット開口(図示しない)が設けられている。
【0025】
デフロスタ開口12には、デフロスタ開口12の開閉およびデフロスタ開口12の開度を調整するデフロスタドア14が配置されている。
フェイス開口13には、フェイス開口13の開閉およびフェイス開口13の開度を調整するフェイスドア15が配置されている。
フット開口には、フット開口の開閉およびフット開口の開度を調整するフットドア(図示しない)が配置されている。
これらのデフロスタドア14、フェイスドア15、フットドアは、板状ドアによって構成されるものであっても良いし、フィルム式ドアまたはロータリ式ドアであっても良い。
【0026】
なお、図1に示す吹出口切替部には、上記各吹出口の他に、後席乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すためのリヤフェイス吹出口に通じるリヤフェイス開口16、後席乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのリヤフット吹出口に通じるリヤフット開口17が設けられるとともに、リヤフェイス開口16とリヤフット開口17のそれぞれの開閉を行なうリヤフェイスドア18とリヤフットドア19が設けられる。また、空調ユニット2の空気流の下流部には、空調風をリヤフェイス開口16およびリヤフット開口17に導くリヤ空調開口20と、このリヤ空調開口20の開閉を行なうリヤ空調切替ドア21が設けられている。なお、これらの後席用の吹出口切替部は無くても良い。
【0027】
(空調用ECUの説明)
空調用ECUは、制御処理、演算処理を行なうCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(RAM、ROM、SRAM、EEPROM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路などを含んで構成される周知構造のコンピュータであり、読み込まれたセンサ類(乗員等に操作されるスイッチ類を含む)からの信号(乗員の操作指示、検出温度など)と、記憶する制御プログラムとに応じて、車両用空調装置に搭載される各種電気動作部品(上述したメイン送風機4、上述した冷媒圧縮機、上述した各ドアを駆動するサーボモータ等)の作動制御を行なうものである。
【0028】
具体的に、空調用ECUは、車室内に吹き出させる空調風の目標吹出温度(以下、TAOと称する)を算出し、算出されたTAOに基づいてメイン送風機4の作動制御、エアミックスドア9の開度制御、吹出口の切替えを行なう各ドアの開閉制御を自動制御可能に設けられている。
このTAOは、車室内を、乗員によって操作される車室内温度設定手段(図示しない)の設定温度Tsetに維持するために必要な吹出温度であり、下記の数式1に基づいて算出される。
[数式1]
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C
ここで、上記式中におけるTrは内気センサ(図示しない)によって検出される内気吸込み温度であり、Tamは外気センサ(図示しない)によって検出される外気吸込み温度であり、Tsは日射センサ(図示しない)によって検出される日射量である。また、上記式中におけるKset、Kr、Kam、Ksは予め設定された制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0029】
〔実施例1の特徴〕
この実施例1の車両用空調装置を搭載する車両は、車両走行停止時に車両走行用エンジンの運転を停止して省エネ運転を実施するアイドルストップ車両である。
このようなアイドルストップ車両は、信号待ちなどの停車中はエンジンが停止しているため、車両用空調装置に冷房運転が要求される運転状態であっても、冷媒圧縮機の停止により冷房運転の継続ができなくなる。
【0030】
そこで、この実施例1の空調装置は、(1)アイドルストップに伴う冷媒圧縮機の停止中における乗員の快適性を確保し、(2)車両搭載スペースの確保が容易で、(3)エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐために、次の手段を採用する。
この車両用空調装置は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際(アイドルストップ時)、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施するように設けられている。
【0031】
具体的に、空調ユニット2のクーリング部には、エバポレータ6を通過する空気が流れるエバ流路22とは別に、このエバ流路22をバイパス(エバポレータ6をバイパス)するエババイパス23が設けられている。また、クーリング部には、エバ流路22の開閉を行なうエバ開閉ドア24と、エババイパス23の開閉を行なうエババイパス開閉ドア25とが設けられている。
このエバ開閉ドア24およびエババイパス開閉ドア25は、図1に示すように板状ドアによって構成されるものであっても良いし、フィルム式ドアなど他の開閉手段であっても良い。
また、エバ開閉ドア24およびエババイパス開閉ドア25は、1つのサーボモータによって連動して開閉動作するものであっても良いし、エバ開閉ドア24とエババイパス開閉ドア25のそれぞれをサーボモータで独立して開閉制御するものであっても良い。
なお、図1と図2でエババイパス開閉ドア25の取付位置が異なるが、どちらであっても良い。
【0032】
空調用ECUには、冷房運転が要求される状態(TAOが所定温度以下の時:具体的には、TAOが、オートエアコンにおける自動吹出口選択モードの際にフェイス吹出口が選択される温度以下の時)で、且つアイドルストップ中にドラフト空調を実施する際、車両走行中の冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)の送風量より、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るドラフト風量増加手段(制御プログラム)が設けられている。
【0033】
また、空調用ECUには、冷房運転が要求される状態でアイドルストップで停車してドラフト空調を実施する際、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、さらにエババイパス開閉ドア25によりエババイパス23を開く動作を行なってドラフト空調を実施するドラフト空調実行手段(制御プログラム)が設けられている。
なお、空調用ECUは、冷房運転が要求される状態で車両が走行する冷房運転中(アイドルストップ中でない冷房運転中)、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を開き、エババイパス開閉ドア25によりエババイパス23を閉じて、エバポレータ6を通過した冷却風によって車室内を冷房する通常の空調制御(冷凍サイクルの運転状態での空調制御)を実施するものである。
【0034】
内外気切替箱3の内外気切替ドアは、ドラフト空調を実施する際、自動的に内気循環に切り替えられるものである。なお、乗員が手動により外気導入を選択する場合は、手動操作を優先させて外気導入を選択するものである。また、ドラフト空調を実施する際、内気温度よりも外気温度が低い場合には自動的に内外気切替ドアを外気導入に切り替えるようにしても良い。
一方、ドラフト空調時における吹出口は、自動的にフェイス吹出モードに切り替えられるものである。なお、乗員が手動により吹出モードの設定を行なう場合は、手動操作を優先させて吹出モードの選択を行なうものである。
【0035】
次に、冷房運転が要求される状態でアイドルストップで停車する際の具体的な制御例を、図3のフローチャートを参照して説明する。
車両用空調装置の運転中にこの制御ルーチンに侵入すると(スタート)、エコランエンジンストップ中か否かの判断を行なう(ステップS11)。
このステップS11の判断結果がNOの場合(エンジン運転中)は、通常の空調制御(冷凍サイクルの運転状態での空調制御)を実施する制御ルーチンへ進む(ステップS12)。
【0036】
ステップS11の判断結果がYESの場合(エンジン停止中)は、日射センサ(図示しない)によって検出される日射量を読み込む(ステップS13)。
次に、ステップS13で読み込んだ日射量が予め設定した設定値より大きいか否かの判断を行なう。具体的には、日射量が0(ゼロ)であるか、日射量が0(ゼロ)より大きいかの判断を行なう(ステップS14)。
【0037】
ステップS14の判断結果において日射量が0(ゼロ)の場合は、夜など積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと判断し、メイン送風機4の運転を停止した空調停止を実施する(ステップS15)。
一方、ステップS14の判断結果において日射量が0(ゼロ)より大きい場合は、昼間など積極的な冷房効果を乗員が希望していると判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、さらにエババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開く動作を行なってドラフト空調を実施する(ステップS16)。
上記ステップS15またはステップS16の実行後、リターンする。即ち、その後、ステップS11に進み、ステップS11の判断結果に従う。
【0038】
〔実施例1の効果〕
実施例1の車両用空調装置は、上述したように、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際(アイドルストップ時)、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施する。
このように、冷媒圧縮機が停止するアイドルストップ時であっても、ドラフト空調によって乗員の快適性を確保することができる。
また、この実施例1では蓄冷剤熱交換器(後述する実施例3の符号31参照)を搭載しないため、空調ユニット2の大型化を抑えることができ、空調ユニット2の車両搭載性の悪化を防ぐことができる。即ち、車両搭載スペースの確保を容易にできる。
さらに、ドラフト空調では、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出すため、エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐことができる。即ち、エアコン臭の無い空気流によりドラフト空調を実施して、乗員の快適性を確保することができる。
【0039】
一方、この実施例1では、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、夜など日射量が0(ゼロ)の時はメイン送風機4の作動を停止させて、ドラフト空調も停止させるため、充電動作が行なわれていないアイドルストップ中におけるバッテリ消費を抑えることができる。このように、バッテリ消費が抑えられるため、車両発進後におけるバッテリの充電量が抑えられ、結果的に車両の燃料消費を抑えることができる。
【実施例2】
【0040】
図4、図5を参照して実施例2を説明する。なお、以下の各実施例において上記実施例1と同一符号は同一機能物を示すものである。
上記の実施例1は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、日射量に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する例を示した。
これに対し、この実施例2は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、乗員表面温度(車両乗員の表面温度)に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する例を示す。
【0041】
車室内には、図4に示すように、少なくとも運転者の乗員表面温度を検出するIRセンサ26(赤外線センサ)が設けられ、このIRセンサ26で検出した乗員表面温度がIRセンサ値として空調用ECUで読み取られるように設けられている。
一方、空調用ECUには、IRセンサ26で検出されたIRセンサ値(乗員表面温度に関連する値)に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する制御プログラムが搭載されている。
【0042】
次に、冷房運転が要求される状態でアイドルストップで停車する際の具体的な制御例を、図5のフローチャートを参照して説明する。
車両用空調装置の運転中にこの制御ルーチンに侵入すると(スタート)、エコランエンジンストップ中か否かの判断を行なう(ステップS21)。
このステップS21の判断結果がNOの場合(エンジン運転中)は、通常の空調制御を実施する制御ルーチンへ進む(ステップS22)。
【0043】
ステップS21の判断結果がYESの場合(エンジン停止中)は、IRセンサ26によって検出されるIRセンサ値を読み込む(ステップS23)。
次に、ステップS23で読み込んだIRセンサ値が予め設定した設定値より大きいか否かの判断を行なう。具体的には、IRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)以下であるか、IRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)より大きいかの判断を行なう(ステップS24)。
【0044】
ステップS24の判断結果においてIRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)以下の場合は、乗員が冷えて積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと判断し、メイン送風機4の運転を停止した空調停止を実施する(ステップS25)。
一方、ステップS24の判断結果においてIRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)より大きい場合は、乗員は冷えておらず冷房効果を乗員が希望していると判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、さらにエババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開く動作を行なってドラフト空調を実施する(ステップS26)。
上記ステップS25またはステップS26の実行後、リターンする。即ち、その後、ステップS21に進み、ステップS21の判断結果に従う。
【0045】
この実施例2では、上記実施例1の効果に加え、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、IRセンサ26の検出により乗員が冷えていると判断した場合にメイン送風機4の作動を停止させることで、充電動作が行なわれていないアイドルストップ中におけるバッテリ消費を抑えることができる。このように、バッテリ消費が抑えられるため、車両発進後におけるバッテリの充電量が抑えられ、結果的に車両の燃料消費を抑えることができる。
【実施例3】
【0046】
図6〜図9を参照して実施例3を説明する。
この実施例3は、実施例1で示したエババイパス23を、蓄冷剤熱交換器31が配置される蓄冷器通路と、蓄冷剤熱交換器31をバイパスする蓄冷器バイパス32とに分けたものである。
また、この実施例3は、エババイパス23の開閉を行なうエババイパス開閉ドア25とは別に、蓄冷器通路または蓄冷器バイパス32の一方の閉塞、および蓄冷器通路と蓄冷器バイパス32の両方の同時開放が可能な蓄冷選択ドア33を設けたものである。
【0047】
蓄冷剤熱交換器31は、車両走行中における冷凍サイクルの作動により蓄冷される蓄冷剤と、エババイパス23のうちの蓄冷器通路を流れる空気との熱交換を行なう熱交換器である。具体的な蓄冷剤熱交換器31の構造は、例えば複数のチューブを隙間を隔てて配置し、チューブ内に蓄冷剤を充填し、チューブとチューブの間を空気が通過する構造を採用している。蓄冷剤熱交換器31に充填される蓄冷剤は、例えばパラフィンを用いた水和物蓄冷剤である。
【0048】
この実施例3に用いられる蓄冷剤熱交換器31は、ドラフト空調時に吹き出される空気を冷却する際に用いられるものであり、蓄冷剤熱交換器31に搭載される蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルは、40〜60kJの範囲内に設けられる(蓄冷剤に蓄えられた冷熱で車室内の冷房を実施しようとすると、蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルとして約100kJが要求されるが、それよりもこの実施例で使用される蓄冷剤は小さい)。
【0049】
蓄冷剤熱交換器31は、上述したように、冷凍サイクルの作動により蓄冷される。具体的な一例としては、エバポレータ6の上部に搭載された蓄冷剤熱交換器31が、エバポレータ6と広い面積で接触するように設けられ、エバポレータ6の作動に伴う冷熱によって蓄冷剤熱交換器31に充填された蓄冷剤が冷却されるように設けられている。
なお、他の蓄冷手段として、冷凍サイクルの運転による低温冷媒によって直接的に蓄冷剤を冷やして積極的に蓄冷しても良い。具体的に例えば、減圧装置をバイパスさせた液冷媒によって直接的に蓄冷剤を冷却するように設けても良い。
【0050】
実施例3の空調用ECUは、アイドルストップによるドラフト空調を行なう際、日射量とTAOに基づき、メイン送風機4の作動制御と、蓄冷選択ドア33の開度制御(蓄冷剤熱交換器31が配置される蓄冷器通路と、蓄冷器バイパス32との切替制御)とを行なうように設けられている。即ち、空調用ECUには、日射センサで検出された日射量とTAOに基づいてドラフト空調の運転状態を制御する制御プログラムが搭載されている。
【0051】
次に、アイドルストップで停車する際の具体的な制御例を、図8のフローチャートを参照して説明する。
車両用空調装置の運転中にこの制御ルーチンに侵入すると(スタート)、エコランエンジンストップ中か否かの判断を行なう(ステップS31)。
このステップS31の判断結果がNOの場合(エンジン運転中)は、通常の空調制御を実施する制御ルーチンへ進む(ステップS32)。
【0052】
ステップS31の判断結果がYESの場合(エンジン停止中)は、日射センサ(図示しない)によって検出される日射量とTAOを読み込む(ステップS33)。
次に、ステップS33で読み込んだTAOが38℃以下であるか否かの判断を行なうとともに、ステップS33で読み込んだ日射量が0(ゼロ)であるか、日射量が0(ゼロ)〜400W/m2 の範囲内であるか、日射量が400W/m2 より大きいかの判断を行なう(ステップS34)。
【0053】
ステップS34の判断結果において、TAOが38℃より大きい場合、あるいは日射量が0(ゼロ)の場合は、積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと判断し、メイン送風機4の運転を停止した空調停止を実施する(ステップS35)。
一方、ステップS34の判断結果において、TAOが38℃以下で、日射量が0(ゼロ)〜400W/m2 の範囲内の場合は、冷房効果は希望するものの大きな冷房効果を乗員が希望していないと判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、エババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開き、さらに蓄冷選択ドア33によって蓄冷剤熱交換器31が配置された蓄冷器通路を閉じて、蓄冷剤熱交換器31を通過しない送風動作によるドラフト空調(以下、送風だけのドラフト空調と称す)を実施する(ステップS36)。
【0054】
さらに、ステップS34の判断結果において、TAOが38℃以下で、日射量が400W/m2 より大きい場合は、大きな冷房効果を乗員が希望していると判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、エババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開き、さらに蓄冷選択ドア33によって蓄冷器バイパス32を閉じて、蓄冷剤熱交換器31を通過した冷風(蓄冷剤のパージ風)によるドラフト空調(以下、蓄冷ドラフト空調と称す)を実施する(ステップS37)。
上記ステップS35、ステップS36、またはステップS37の実行後、リターンする。即ち、その後、ステップS31に進み、ステップS31の判断結果に従う。
【0055】
(実施例3の効果1)
この実施例3では、上記実施例1の効果に加え、次の効果を奏する。
この実施例3では、アイドルストップでエンジンが停止して、冷媒圧縮機が停止している状態であっても、大きな冷房効果を乗員が希望していると空調用ECUが判断した際に、蓄冷ドラフト空調を実施して、蓄冷剤熱交換器31を通過した冷風を車室内に吹出して、冷房運転を継続する。このように、アイドルストップ中の冷房運転を継続できるため、アイドルストップ中の乗員の快適性を高く保つことができる。
【0056】
また、この実施例3では、アイドルストップでエンジンが停止して、冷媒圧縮機が停止している状態であっても、冷房効果は希望するものの大きな冷房効果を乗員が希望していないと空調用ECUが判断した際に、送風だけのドラフト空調を実施して、アイドルストップ中の乗員の快適性を維持することができる。
【0057】
さらに、この実施例3では、アイドルストップでエンジンが停止して、冷媒圧縮機が停止している状態であっても、積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと空調用ECUが判断した際に、メイン送風機4を停止するため、アイドルストップ中の乗員の快適性を損なうことなく、充電動作が行なわれていないアイドルストップ中におけるバッテリ消費を抑えることができる。
【0058】
ここで、蓄冷ドラフト空調は、冷媒圧縮機が作動する期間(エンジン運転中)に蓄冷した蓄冷剤の冷熱を、アイドルストップ中にパージするものである。
このため、図9に示す具体的な実験結果で表されるように、冷媒圧縮機が作動する冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)の空調能力(図中、能力)を100%とした場合、送風だけのドラフト空調の空調能力では71%に下がるが、蓄冷ドラフト空調では空調能力を81%に維持できる。
この実験結果からも、送風だけのドラフト空調に比較して、蓄冷ドラフト空調により、アイドルストップ中の乗員の快適性を高く保つことが理解できる。
【0059】
また、図9に示す具体的な実験結果で表されるように、冷媒圧縮機が作動する冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)の消費エネルギー(図中、動力)を100%とした場合、蓄冷ドラフト空調の消費エネルギーは85%に抑えられる。即ち、蓄冷ドラフト空調では、小さい消費エネルギーにより、アイドルストップ中の乗員の快適性を高く保つことができる。
一方、送風だけのドラフト空調の消費エネルギーは、冷媒圧縮機が作動する冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)に比較して77%に抑えられる。この実験結果からも、送風だけのドラフト空調は、消費エネルギーが小さいことが理解できる。
【0060】
(実施例3の効果2)
この実施例3は、蓄冷剤熱交換器31を用いるものであるが、蓄冷ドラフト空調では蓄冷剤による冷房運転を主目的としないため、大きな蓄冷量ポテンシャルを必要としない。このため、車両搭載スペースの確保を容易にできる。具体的には、蓄冷剤熱交換器31に搭載される蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルが40〜60kJであり、従来技術(蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルとして約100kJを必要とした従来技術)に比較して蓄冷剤熱交換器31を小さくできる。このため、エババイパス23に小型の蓄冷剤熱交換器31を搭載でき、結果的に空調ユニット2の大型化を抑えることができ、車両搭載スペースの確保を容易にできる。
【0061】
(実施例3の効果3)
この実施例3の空調用ECUは、アイドルストップ中に、日射量とTAOに基づき、メイン送風機4のOFF制御、送風だけのドラフト空調の実施、蓄冷ドラフト空調の実施の切替えを行なうことで、乗員の快適性を保ちつつ、無駄なエネルギー消費を抑えることができる。即ち、省エネルギーと、乗員の快適性とを、高次元で両立することができる。
【実施例4】
【0062】
図10を参照して実施例4を説明する。
上記の実施例3は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、日射量に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する例を示した。
これに対し、この実施例4は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、IRセンサ26によって検出される乗員表面温度に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する例を示す。
空調用ECUには、IRセンサ26で検出されたIRセンサ値(乗員表面温度に関連する値)に基づいてドラフト空調の運転状態(運転停止、送風だけのドラフト空調、蓄冷ドラフト空調)を制御する制御プログラムが搭載されている。
【0063】
次に、アイドルストップで停車する際の具体的な制御例を、図10のフローチャートを参照して説明する。
車両用空調装置の運転中にこの制御ルーチンに侵入すると(スタート)、エコランエンジンストップ中か否かの判断を行なう(ステップS41)。
このステップS41の判断結果がNOの場合(エンジン運転中)は、通常の空調制御を実施する制御ルーチンへ進む(ステップS42)。
【0064】
ステップS41の判断結果がYESの場合(エンジン停止中)は、IRセンサ26によって検出されるIRセンサ値とTAOを読み込む(ステップS43)。
次に、ステップS43で読み込んだTAOが38℃以下であるか否かの判断を行なうとともに、ステップS43で読み込んだIRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)以下であるか、IRセンサ値が18〜22(平常時の範囲内の乗員表面温度に相当)であるか、IRセンサ値が22(平常時より熱くなっている乗員表面温度に相当)より大きいかの判断を行なう(ステップS44)。
【0065】
ステップS44の判断結果において、TAOが38℃より大きい場合、あるいはIRセンサ値が18以下の場合は、積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと判断し、メイン送風機4の運転を停止した空調停止を実施する(ステップS45)。
一方、ステップS44の判断結果において、TAOが38℃以下で、IRセンサ値が18〜22の範囲内の場合は、冷房効果は希望するものの大きな冷房効果を乗員が希望していないと判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、エババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開き、さらに蓄冷選択ドア33によって蓄冷剤熱交換器31が配置された蓄冷器通路を閉じて、送風だけのドラフト空調を実施する(ステップS46)。
【0066】
さらに、ステップS44の判断結果において、TAOが38℃以下で、IRセンサ値が22より大きい場合は、大きな冷房効果を乗員が希望していると判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、エババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開き、さらに蓄冷選択ドア33によって蓄冷器バイパス32を閉じて、蓄冷剤熱交換器31を通過した冷風(蓄冷剤のパージ風)による蓄冷ドラフト空調を実施する(ステップS47)。
上記ステップS45、ステップS46、またはステップS47の実行後、リターンする。即ち、その後、ステップS41に進み、ステップS41の判断結果に従う。
この実施例4でも、上記実施例3と同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0067】
この実施例5は、上記実施例3、4の変形例である。
上記実施例3、4では、大きな冷房効果を乗員が希望していると空調用ECUが判断した際に、蓄冷ドラフト空調を実施して、蓄冷剤熱交換器31を通過した冷風を車室内に吹出して、冷房運転を継続する例を示した。
これに対し、大きな冷房効果を乗員が希望していると空調用ECUが判断した際に、蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量に応じて蓄冷選択ドア33の開閉状態を制御しても良い。
具体的には、蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より多い(冷えている)と判断される場合は、蓄冷選択ドア33によって蓄冷器バイパス32を閉じて、蓄冷ドラフト空調を実施させ、蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より少ない(冷えていない)と判断される場合は、蓄冷選択ドア33によって蓄冷器バイパス32と蓄冷器通路(蓄冷剤熱交換器31)の両方を開いたドラフト空調(以下、送風+蓄冷ドラフト空調と称す)を実施させても良い。
【0068】
蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より多いか、少ないかの判断基準は、例えば空調ユニット2の空気流の下流側の空気流温度(吹出温度)を検出し、その吹出温度が予め設定された基準温度より低い場合に「蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より多い」と判断し、吹出温度が予め設定された基準温度より高い場合に「蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より少ない」と判断しても良い。
あるいは、蓄冷ドラフト空調の運転時間をカウントし、蓄冷ドラフト空調の運転時間が予め設定された設定時間より短い場合に「蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より多い」と判断し、蓄冷ドラフト空調の運転時間が予め設定された設定時間より長い場合に「蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より少ない」と判断しても良い。
【0069】
この実施例5を採用することにより、アイドルストップ中に、蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が低下すると、蓄冷器バイパス32と蓄冷器通路(蓄冷剤熱交換器31)の両方が開かれた送風+蓄冷ドラフト空調が実施されるため、流路抵抗の低下により車室内への吹出し風量が増えて、乗員の快適性を確保することができる。
【実施例6】
【0070】
図11を参照して実施例6を説明する。
上記の各実施例では、メイン送風機4を作動させ、エババイパス23を通過する空気流によってドラフト空調を実施する例を示した。
これに対し、この実施例6は、空調ユニット2内にエババイパス23を設けることなく、メイン送風機4とは別のサブ送風機41によりドラフト空調を実施するものである。
【0071】
この実施例6のHVACは、メイン送風機4とは別に、空調ユニット2における空気流の下流側にサブ送風機41を搭載している。この実施例6の空調ユニット2は、内部が上下2層に分割して設けられており、サブ送風機41の本来の搭載目的はリヤ風量のアシストを行なうものであり、下層の空気通路内に車室内の後部座席側に向かう空気流を生じさせるものである。
【0072】
この実施例6では、サブ送風機41を用いてアイドルストップ時のドラフト空調を実施するものである。
具体的に、この実施例6におけるサブ送風機41の吸込口には、空気の吸込み先を、空調ユニット2の下層通路内か、あるいはインストルメントパネルPの下部の内気かに切り替える吸入空気切替手段(図示しない)が設けられている。
また、サブ送風機41の吹出口には、空気の吹出し先を、本来の目的である後部座席側か、あるいは前席乗員の上半身かに切り替える吹出空気切替手段(図示しない)が設けられている。
そして、アイドルストップ時にドラフト空調を行なう際は、サブ送風機41の吸込口をインストルメントパネルPの下部の内気に切り替えるとともに、サブ送風機41の吹出口を前席乗員の上半身に切り替えて、サブ送風機41を作動させ、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出させるものである。
【0073】
ここで、サブ送風機41によってドラフト空調を行なう際、サブ送風機41の吸込口からインストルメントパネルPの下部の内気が吸い込まれる。インストルメントパネルPの下部には、比較的温度の低い空気が存在する可能性が高い。このため、ドラフト空調によって車室内に低い温度の空気が吹き出され、乗員の快適性を高めることができる。
具体的に、送風機ユニット1のメイン送風機4が、内外気切替箱3(符号、図1等参照)で選択された内気を吸引する際、メイン送風機4はインストルメントパネルPの隙間、およびインストルメントパネルPの内部に配置された内部機材の隙間を通過した内気を吸引するため、インストルメントパネルPおよび内部機材の蓄熱によりHVACに吸い込まれる内気が温められる。このため、メイン送風機4を作動させて内気送風によるドラフト空調を実施しても、温かい空気が吹き出されてしまう。
これに対し、この実施例6では、上述したように、ドラフト空調によって車室内に低い温度の空気が吹き出され、乗員の快適性を高めることができる。
【実施例7】
【0074】
図12を参照して実施例7を説明する。
上記の各実施例では、HVACに設けた送風機(メイン送風機4またはサブ送風機41)によりドラフト空調を実施する例を示した。
これに対し、この実施例7は、図12に示すように、HVACとは別に乗員の上半身へ向けて送風を行なうベンチレーションユニット42を設け、このベンチレーションユニット42に搭載されるベンチレーション送風機43を作動させることでドラフト空調を実施するものである。
このベンチレーションユニット42は、上記実施例6と同様、インストルメントパネルPの下部の比較的温度の低い空気を吸い込んで乗員の上半身へ向けて吹き出し、乗員の快適性を高めることができる。
また、この実施例7では、HVACとは別のベンチレーションユニット42を作動させてアイドルストップ時のドラフト空調を実施するものであるため、既存のHVACの構造を変更する必要がない。
【実施例8】
【0075】
上記の各実施例では、空調用ECUにドラフト風量増加手段(制御プログラム)を設けて、ドラフト空調を実施する際に、車両走行中の冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)の送風量より、風量を1レベル上げて風量増加を図る例を示した。
これに対し、この実施例8の空調用ECUには、学習手段(制御プログラム)が設けられており、ドラフト空調中に、乗員のマニュアル操作によって風量変更の指示が成された場合に、その風量変更を記憶し、次回から風量変更後の風量にてドラフト空調を実施させるように設けられている。
具体的な一例を示すと、ドラフト空調中に、乗員のマニュアル操作によって風量低下の指示が成された場合には、ドラフト空調中に風量低下の指示が成された旨を記憶装置に記憶して、次回からのドラフト空調時においてドラフト風量増加手段による風量増加のキャンセルを行なうものである。
これにより、次回のドラフト空調時に、乗員がマニュアル操作を実行しなくても、乗員の好みに応じた風量によるドラフト空調を実施することができる。
【実施例9】
【0076】
この実施例9は、ドラフト空調を実施する空気通路内に蓄冷剤熱交換器31が配置される車両用空調装置(例えば、実施例3、4参照)に適用可能な技術である。即ち、蓄冷ドラフト空調が可能な車両用空調装置に適用可能な技術である。
【0077】
蓄冷ドラフト空調が可能な車両用空調装置を搭載する車両は、自身の車両の外部から交通に関する情報(ナビゲーションシステムや車車間通信などより得られるIT情報など)を受信する情報受信装置を搭載する。
一方、空調用ECUは、車両内で検出可能な「空調状態(日射量、外気温度、要求冷房能力等)」の他に、車両の走行中、情報受信装置により検出した「次に信号に停止するまでの時間」と「次の信号停車時間」に基づいて、蓄冷剤の蓄冷量をコントロールする。具体的には、「次の信号停車時間」に実施される蓄冷ドラフト空調に要求される蓄冷量を算出するとともに、算出された蓄冷量が蓄冷剤熱交換器31に蓄えられるように冷媒圧縮機の運転状態を制御するものである。
これにより、車両が停車するまでの間に、停車中(冷媒圧縮機の停止中)に必要とされる蓄冷能力を蓄冷剤熱交換器31に蓄えることができ、信号停車中に蓄冷ドラフト空調を実施できる。
【0078】
このように、車両の走行中に、「次に信号に停止するまでの時間」と「次の信号停車時間」に基づいて、蓄冷剤の蓄冷量をコントロールすることで、エンジンの運転中に次の蓄冷ドラフト空調に要求される蓄冷量を確保できるとともに、無駄な蓄冷を抑えて低燃費を実現できる。
【0079】
また、空調用ECUは、車両が停車した際、車両内で検出可能な「空調状態(日射量、外気温度、要求冷房能力等)」の他に、情報受信装置により検出した「信号停止時間」に基づいて、蓄冷剤の放冷量をコントロールする。具体的には、「蓄冷剤の蓄冷量」と「信号停止時間」に基づいて蓄冷ドラフト空調における風量制御を実施して、信号停止中に無駄なく蓄冷ドラフト空調を実施するものである。これによっても、無駄な蓄冷が抑えられて低燃費を実現できる。
【実施例10】
【0080】
この実施例10は、上記実施例9の変形例である。
車両の乗員乗車数は、運転者だけの乗車割合が平日で75%、土日や休日で62%というデータがある。このように、車両は、運転者の1名だけが乗車している可能性が高い。このため、蓄冷ドラフト空調における蓄冷量を、車両の定員数に基づいて設定すると、無駄な蓄冷を行なう可能性が高い。
【0081】
この実施例10は、車両に実際に乗車している人数(乗員乗車数)をシートセンサ(シートに乗車した乗員の重みなどで乗員の人数を検出する手段)やIRセンサ等により検出する。
一方、空調用ECUは、車両内で検出可能な「空調状態(日射量、外気温度、要求冷房能力等)」の他に、車両の走行中に情報受信装置により検出した「次に信号に停止するまでの時間」と「次の信号停車時間」と「乗員乗車数」に基づいて、蓄冷剤の蓄冷量をコントロールする。具体的には、「空調状態」と「乗員乗車数」と「次の信号停車時間」に応じた蓄冷量が蓄冷剤熱交換器31に蓄えられるように、冷媒圧縮機の運転状態を制御する。これにより、無駄な蓄冷を抑えて低燃費を実現できる。
【0082】
また、空調用ECUは、車両が停車した際、車両内で検出可能な「空調状態(日射量、外気温度、要求冷房能力等)」の他に、情報受信装置により検出した「信号停止時間」と「乗員乗車数」に基づいて、蓄冷剤の放冷量をコントロールする。具体的には、「蓄冷剤の蓄冷量」と「乗員乗車数」と「信号停止時間」と「空調状態」に基づいて蓄冷ドラフト空調における風量制御を実施して、信号停止中に無駄なく蓄冷ドラフト空調を実施するものである。これによっても、無駄な蓄冷が抑えられて低燃費を実現できる。なお、乗員乗車数に応じた蓄冷ドラフト空調を行なう際、乗員の乗車していない座席に向かう吹出口を自動閉鎖することが望ましい。
【0083】
なお、乗員乗車数に応じて蓄冷剤の蓄冷量および放冷量をコントロールする際、乗員1人あたり1.0Met(静止している人)〜1.2Met(表面温度の高い人)の数値を用いて蓄冷量および放冷量をコントロールしても良い。
また、上記に加えて、「SETスタート」と呼ばれる技術を用いて蓄冷量および放冷量をコントロールしても良い。
【0084】
〔変形例〕
上記の各実施例では、具体的な一例を説明するために、車両走行用のエンジンにより冷媒圧縮機が駆動される例を示したが、電動モータにより冷媒圧縮機を駆動するものであっても良い。このように電動コンプレッサを用いる場合で、ハイブリッド車両のように大きなバッテリ容量を持たない場合は、アイドルストップに伴う発電停止中は電動コンプレッサを停止させる要求がある。このとき、本発明のドラフト空調を実施することで、省エネ、乗員の快適性向上、エアコン臭防止を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】HVACの概略構成図である(実施例1)。
【図2】図1の要部拡大図である(実施例1)。
【図3】制御例を示すフローチャートである(実施例1)。
【図4】IRセンサの取付位置を示す説明図である(実施例2)。
【図5】制御例を示すフローチャートである(実施例2)。
【図6】HVACの概略構成図である(実施例3)。
【図7】図6の要部拡大図である(実施例3)。
【図8】制御例を示すフローチャートである(実施例3)。
【図9】空調能力と消費エネルギーの比較例を示すグラフである(実施例3)。
【図10】制御例を示すフローチャートである(実施例4)。
【図11】HVACの概略構成図である(実施例6)。
【図12】HVACとベンチレーションユニットの概略構成図である(実施例7)。
【符号の説明】
【0086】
4 メイン送風機
6 エバポレータ
22 エバ流路
23 エババイパス(ドラフト空調を行なう空気通路の一例)
24 エバ開閉ドア
31 蓄冷剤熱交換器
32 蓄冷器バイパス
33 蓄冷選択ドア
41 サブ送風機
42 ベンチレーションユニット
43 ベンチレーション送風機
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行停止時に内燃機関(以下、エンジンと称す)の運転を停止して省エネ運転(アイドルストップ)を実施する車両(以下、エコラン車と称す)に搭載される空調装置に関するものであり、特に車両走行停止中における冷房運転技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行停止に伴うエンジン停止中に冷房運転を行なう技術として、冷媒圧縮機に電動モータを組み合わせた電動コンプレッサを作動させて、アイドルストップ中であっても冷房運転を実行する技術が知られている。
しかし、アイドルストップ中は、エンジンの停止に伴い充電動作が行なわれておらず、バッテリの負担が大きくなる。また、アイドルストップに消費された冷房エネルギーは、エンジン始動後の車両走行中に回収(動力消費によるバッテリ充電)されるため、省燃費の妨げとなる。
【0003】
別の技術として、空調ダクトにエバポレータ(冷媒蒸発器)をバイパスするエババイパスを設けるとともに、このエババイパス内に蓄冷剤熱交換器を配置した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。蓄冷剤熱交換器は、車両走行中における冷凍サイクルの作動により蓄冷される蓄冷剤と、エババイパスを流れる空気との熱交換を行なう熱交換器である。
この特許文献1の技術は、車両走行停止に伴う冷媒圧縮機の停止中に、蓄冷剤熱交換器で冷却された空気を車室内に吹き出す技術である。
しかし、蓄冷剤に蓄えられた冷熱で車室内の冷房運転を実施しようとすると、蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルとして約100kJが要求される。その結果、蓄冷剤熱交換器が大型化し、車両搭載スペースの確保が困難となる不具合があった。
【0004】
また別の技術として、車両走行停止に伴って冷媒圧縮機が停止した際、送風機の風量を増大させて、空調装置から吹き出される風によって乗員の快適性を保つ技術が考えられる。
しかし、この技術では、エバポレータを通過した風が車室内に吹き出される。この際、エバポレータ表面の水分(ドレン水)が蒸発する。この時、エバポレータの表面に付着していた異臭成分(乗員の汗等に由来する酢酸系の匂い成分や、車両内装材など車室内の部材から放出された匂い成分など)を含んだ水分が蒸発して、好ましくない匂いのエアコン臭として車室内に吹き出され、乗員に不快感を与える不具合があった。
【特許文献1】特開2000−289451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、(1)車両走行停止に伴うエンジン停止中に冷媒圧縮機を停止させた状態であっても乗員の快適性を確保し、(2)車両搭載スペースの確保が容易で、(3)エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐことのできる車両用空調装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[請求項1の手段]
請求項1の手段を採用する車両用空調装置は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、エバポレータ(6)を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施する。
このように、冷媒圧縮機が停止する状態であっても、ドラフト空調によって乗員の快適性を確保することができる。
また、ドラフト空調を用いることで、蓄冷剤を用いた蓄冷剤熱交換器(31)を不要にできる。あるいは、蓄冷剤熱交換器(31)を用いたとしても、蓄冷剤による冷房を主目的としないため、大きな蓄冷量ポテンシャルを必要としない。このため、車両搭載スペースの確保を容易にできる。
さらに、ドラフト空調では、エバポレータ(6)を通過しない空気流を車室内に吹き出すため、エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐことができる。即ち、エアコン臭の無い空気流によりドラフト空調を実施して、乗員の快適性を確保することができる。
【0007】
[請求項2の手段]
請求項2の手段を採用する車両用空調装置においてドラフト空調を行なう空気通路(23)には、冷凍サイクルの作動により冷却される蓄冷剤と、ドラフト空調により車室内に向かう空気流との熱交換を行なう蓄冷剤熱交換器(31)が配置される蓄冷器通路が設けられるとともに、この蓄冷器通路をバイパスする蓄冷器バイパス(32)が設けられる。 そして、制御装置は、ドラフト空調を行なう際、日射量、または乗員表面温度、あるいは目標吹出温度に基づき、ドラフト空調を行なう送風機の作動制御、および蓄冷器通路または蓄冷器バイパス(32)の開閉制御(選択制御)を行なう。
これにより、無駄なエネルギー消費を抑えることができ、省エネルギーと、乗員の快適性とを、高次元で両立できる。
【0008】
[請求項3の手段]
請求項3の手段を採用する車両用空調装置は、蓄冷剤熱交換器(31)に搭載される蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルが40〜60kJである。
このように、蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルが40〜60kJと従来技術(蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルとして約100kJを必要とした従来技術)に比較して小さいため、蓄冷剤熱交換器(31)を搭載するものであっても、車両搭載スペースの確保を容易にできる。
【0009】
[請求項4の手段]
請求項4の手段を採用する車両用空調装置の制御装置は、冷媒圧縮機を作動させる冷房運転時から、冷媒圧縮機を停止してドラフト空調を行なう際に、冷媒圧縮機を作動させる冷房運転の送風量より、ドラフト空調の送風量を増加させるドラフト風量増加手段を備える。
これにより、冷媒圧縮機が停止した状態であっても、ドラフト空調の風量が増加することで乗員の快適性を高く維持できる。
【0010】
また、この請求項4の手段を採用する車両用空調装置の制御装置は、ドラフト空調中に、乗員のマニュアル操作によって風量変更の指示が成された場合に、その風量変更を記憶し、次回から風量変更後の風量にてドラフト空調を実施させる学習手段を備える。
これにより、次回のドラフト空調時に、乗員がマニュアル操作を実行しなくても、乗員の好みに応じた風量によるドラフト空調を実施することができる。
【0011】
[請求項5の手段]
請求項5の手段を採用する車両用空調装置を搭載する車両は、自身の車両の外部から交通に関する情報を受信する情報受信装置を搭載する。
そして、制御装置は、車両走行中に、情報受信装置により検出した「次に信号に停止するまでの時間」と「次の信号停車時間」とに基づいて、蓄冷剤の蓄冷量をコントロールする。
これにより、車両が停車するまでの間に、停車中(冷媒圧縮機の停止中)に必要とされる蓄冷能力を蓄冷剤熱交換器(31)に蓄えることができる。
【0012】
また、この請求項4の手段を採用する車両用空調装置における制御装置は、車両が信号で停車した際、情報受信装置により検出した「信号停止時間」に基づいて、蓄冷剤の放冷量をコントロールする。
これにより、車両停車中に安定して冷風を車室内に吹き出すことができる。
【0013】
[請求項6の手段]
請求項6の手段を採用する車両用空調装置の制御装置は、上記請求項5の手段に加え、さらに乗員乗車数を加味して、蓄冷剤の蓄冷量と放冷量をコントロールするものである。 これにより、無駄な蓄冷量を抑えることができ、省エネルギーと、乗員の快適性とを、高次元で両立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
車両用空調装置は、冷媒の吸入圧縮動作を行なう冷媒圧縮機、および空気流と低温低圧の冷媒との熱交換を行って空気流の冷却を行うエバポレータ(6)を備える冷凍サイクルを具備し、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する。
この車両用空調装置は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際(例えば、アイドルストップ時)、エバポレータ(6)を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施する。
【実施例1】
【0015】
車両走行停止時にエンジンを停止して省エネ運転を実施する車両に搭載される車両用空調装置の一例を、図1〜図3を参照して説明する。
なお、以下の各実施例では、冷凍サイクルの冷媒圧縮機がエンジンにより駆動される例を示す。即ち、以下の実施例では、アイドルストップに伴い冷媒圧縮機が停止する車両用空調装置を示す。
【0016】
(車両用空調装置の概略構成)
車両用空調装置は、車室内の暖房、送風、冷房の実行を行なうHVAC(ヒーター/ベンチレーション/エアコンユニット:図1参照)と、このHVACの作動を制御する制御装置(以下、空調用ECUと称す:図示しない)とで構成される。
HVACは、車室内前部のインストルメントパネル(ダッシュボード)の内部に配置されるものであり、大別して送風機ユニット1と空調ユニット2の2つの部分から構成されており、送風機ユニット1と空調ユニット2が結合された状態で車両に搭載される。なお、図1において前後上下の各矢印は、HVACの車両搭載状態における方向を示している。
【0017】
(送風機ユニット1の説明)
送風機ユニット1は、内気(車室内空気)または外気(車室外空気)を選択して取り入れる内外気切替箱3と、この内外気切替箱3で選択された空気を空調ユニット2に送風するメイン送風機4とを組み合わせてなる。
内外気切替箱3は、車室外に連通する外気導入口と、車室内に連通する内気導入口と、外気導入口または内気導入口を開閉可能な内外気切替ドアとを備え、内外気切替ドアにより選択された空気(外気、内気、または外気と内気の混合空気)を内外気切替箱3の内部に導入する。
メイン送風機4は、ファンと電動モータとを組み合わせてなる遠心式の電動ファンであり、図示しない空調用ECUから通電を受けると、内外気切替箱3(具体的には内外気切替ドア)で選択された空気を吸引して、空調ユニット2内に圧送する。
【0018】
(空調ユニット2の説明)
空調ユニット2は、送風機ユニット1の接続口から車室内に向かう空気通路を形成する樹脂製の空調ケース5を有する。この空調ケース5は、ポリプロピレンのような弾性を有し、機械的強度も高い樹脂にて成形されている。具体的に空調ケース5は、成形上の型抜きの都合、および内部への機能部品等の組付上の理由等から複数に分割して成形した後に、締結部品によって一体に結合する構造を採用している。
【0019】
空調ユニット2には、空気流の上流側から下流側に向かって、(a)車室内に吹き出される空気流の冷却を行なうクーリング部、(b)車室内に吹き出される空気流の加熱を行なうヒーティング部、(c)車室内に吹き出される空気流の吹出口を切り替える吹出口切替部が設けられている。
【0020】
(クーリング部の説明)
クーリング部は、空気流の冷却を行なうエバポレータ6が配置される。このエバポレータ6は、車両用冷凍サイクルの一部である。
車両用冷凍サイクルの概略構成を説明する。車両用冷凍サイクルは、冷媒の吸引圧縮動作を行なう冷媒圧縮機と、この冷媒圧縮機で圧縮された高温高圧の冷媒を外気と熱交換して液化凝縮するコンデンサ(冷媒凝縮器)と、このコンデンサで液化された高温高圧の液冷媒を低温低圧の霧状冷媒にする減圧装置(膨張弁等)と、減圧装置で減圧された低温低圧の霧状冷媒を車室内に吹き出される空気と熱交換し、低温低圧の霧状冷媒を蒸発させるエバポレータ6(冷媒蒸発器)とを備え、このエバポレータ6で蒸発した蒸気冷媒は再び冷媒圧縮機に吸引され、上記のサイクルを繰り返す。
なお、車両用冷凍サイクル内で冷媒を蓄える手段は、コンデンサと減圧装置の間に配置されて液冷媒のみを減圧装置に導くレシーバであっても良いし、エバポレータ6と冷媒圧縮機の間に配置されてガス冷媒のみを冷媒圧縮機へ導くアキュムレータであっても良い。
【0021】
この実施例1における冷媒圧縮機は、車両走行用のエンジンによって駆動されるもの(例えば、空調用ECUの指示により吐出容量の制御がなされる斜板式可変容量圧縮機など)であり、エンジンのクランク軸の回転出力がプーリーやベルトを介して伝達されて、冷媒の吸入動作と圧縮吐出動作を行なう。
空調ユニット2内に配置されるエバポレータ6は、上述したように、減圧装置により減圧された低温低圧の霧状冷媒が流入し、この低温低圧の霧状冷媒がエバポレータ6を通過する空気から吸熱して蒸発する。この時、霧状冷媒がエバポレータ6を通過する空気から吸熱することで、エバポレータ6を通過する空気が冷却される。
なお、クーリング部の詳細は後述する。
【0022】
(ヒーティング部の説明)
空調ケース5の内部には、温水式のヒータコア7(暖房用熱交換器の一例)が配置される温風通路と、この温風通路をバイパス(ヒータコア7をバイパス)させる冷風バイパス8とが設けられている。
ここで、ヒータコア7は、エンジン冷却水(温水)が循環供給可能に設けられており、エンジン冷却水とヒータコア7を通過する空気とが熱交換することで、ヒータコア7を通過する空気が加熱される。
【0023】
ヒータコア7の空気流の上流側には、ヒータコア7を通過する空気流量(即ち、ヒータコア7で加熱される温風量)と、冷風バイパス8を通過する空気流量(即ち、ヒータコア7を迂回する冷風量)との割合を調整するエアミックスドア9が配置されている。なお、このエアミックスドア9は、板状ドアによって構成されるものであっても良いし、フィルム式ドアであっても良い。
ここで、図1では、冷風バイパス8の上部に、ヒータコア7および冷風バイパス8の両方をバイパスする第2冷風バイパス10が設けられ、この第2冷風バイパス10が開閉ドア11によって開閉可能に設けられる例を示すが、第2冷風バイパス10およびその開閉ドア11は無くても良い。
【0024】
(吹出口切替部の説明)
吹出口切替部は、空調ユニット2内を通過した空調風の吹出口の切替えを実施するものであり、空調ケース5における空気流の下流側には、フロントガラスの内側に向けて空調風(主に温風)を吹き出すためのデフロスタ吹出口に通じるデフロスタ開口12、前席乗員の上半身に向けて空調風(主に冷風)を吹き出すためのフェイス吹出口に通じるフェイス開口13、前席乗員の足元部に向けて空調風(主に温風)を吹き出すためのフット吹出口に通じるフット開口(図示しない)が設けられている。
【0025】
デフロスタ開口12には、デフロスタ開口12の開閉およびデフロスタ開口12の開度を調整するデフロスタドア14が配置されている。
フェイス開口13には、フェイス開口13の開閉およびフェイス開口13の開度を調整するフェイスドア15が配置されている。
フット開口には、フット開口の開閉およびフット開口の開度を調整するフットドア(図示しない)が配置されている。
これらのデフロスタドア14、フェイスドア15、フットドアは、板状ドアによって構成されるものであっても良いし、フィルム式ドアまたはロータリ式ドアであっても良い。
【0026】
なお、図1に示す吹出口切替部には、上記各吹出口の他に、後席乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すためのリヤフェイス吹出口に通じるリヤフェイス開口16、後席乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのリヤフット吹出口に通じるリヤフット開口17が設けられるとともに、リヤフェイス開口16とリヤフット開口17のそれぞれの開閉を行なうリヤフェイスドア18とリヤフットドア19が設けられる。また、空調ユニット2の空気流の下流部には、空調風をリヤフェイス開口16およびリヤフット開口17に導くリヤ空調開口20と、このリヤ空調開口20の開閉を行なうリヤ空調切替ドア21が設けられている。なお、これらの後席用の吹出口切替部は無くても良い。
【0027】
(空調用ECUの説明)
空調用ECUは、制御処理、演算処理を行なうCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(RAM、ROM、SRAM、EEPROM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路などを含んで構成される周知構造のコンピュータであり、読み込まれたセンサ類(乗員等に操作されるスイッチ類を含む)からの信号(乗員の操作指示、検出温度など)と、記憶する制御プログラムとに応じて、車両用空調装置に搭載される各種電気動作部品(上述したメイン送風機4、上述した冷媒圧縮機、上述した各ドアを駆動するサーボモータ等)の作動制御を行なうものである。
【0028】
具体的に、空調用ECUは、車室内に吹き出させる空調風の目標吹出温度(以下、TAOと称する)を算出し、算出されたTAOに基づいてメイン送風機4の作動制御、エアミックスドア9の開度制御、吹出口の切替えを行なう各ドアの開閉制御を自動制御可能に設けられている。
このTAOは、車室内を、乗員によって操作される車室内温度設定手段(図示しない)の設定温度Tsetに維持するために必要な吹出温度であり、下記の数式1に基づいて算出される。
[数式1]
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C
ここで、上記式中におけるTrは内気センサ(図示しない)によって検出される内気吸込み温度であり、Tamは外気センサ(図示しない)によって検出される外気吸込み温度であり、Tsは日射センサ(図示しない)によって検出される日射量である。また、上記式中におけるKset、Kr、Kam、Ksは予め設定された制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0029】
〔実施例1の特徴〕
この実施例1の車両用空調装置を搭載する車両は、車両走行停止時に車両走行用エンジンの運転を停止して省エネ運転を実施するアイドルストップ車両である。
このようなアイドルストップ車両は、信号待ちなどの停車中はエンジンが停止しているため、車両用空調装置に冷房運転が要求される運転状態であっても、冷媒圧縮機の停止により冷房運転の継続ができなくなる。
【0030】
そこで、この実施例1の空調装置は、(1)アイドルストップに伴う冷媒圧縮機の停止中における乗員の快適性を確保し、(2)車両搭載スペースの確保が容易で、(3)エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐために、次の手段を採用する。
この車両用空調装置は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際(アイドルストップ時)、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施するように設けられている。
【0031】
具体的に、空調ユニット2のクーリング部には、エバポレータ6を通過する空気が流れるエバ流路22とは別に、このエバ流路22をバイパス(エバポレータ6をバイパス)するエババイパス23が設けられている。また、クーリング部には、エバ流路22の開閉を行なうエバ開閉ドア24と、エババイパス23の開閉を行なうエババイパス開閉ドア25とが設けられている。
このエバ開閉ドア24およびエババイパス開閉ドア25は、図1に示すように板状ドアによって構成されるものであっても良いし、フィルム式ドアなど他の開閉手段であっても良い。
また、エバ開閉ドア24およびエババイパス開閉ドア25は、1つのサーボモータによって連動して開閉動作するものであっても良いし、エバ開閉ドア24とエババイパス開閉ドア25のそれぞれをサーボモータで独立して開閉制御するものであっても良い。
なお、図1と図2でエババイパス開閉ドア25の取付位置が異なるが、どちらであっても良い。
【0032】
空調用ECUには、冷房運転が要求される状態(TAOが所定温度以下の時:具体的には、TAOが、オートエアコンにおける自動吹出口選択モードの際にフェイス吹出口が選択される温度以下の時)で、且つアイドルストップ中にドラフト空調を実施する際、車両走行中の冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)の送風量より、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るドラフト風量増加手段(制御プログラム)が設けられている。
【0033】
また、空調用ECUには、冷房運転が要求される状態でアイドルストップで停車してドラフト空調を実施する際、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、さらにエババイパス開閉ドア25によりエババイパス23を開く動作を行なってドラフト空調を実施するドラフト空調実行手段(制御プログラム)が設けられている。
なお、空調用ECUは、冷房運転が要求される状態で車両が走行する冷房運転中(アイドルストップ中でない冷房運転中)、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を開き、エババイパス開閉ドア25によりエババイパス23を閉じて、エバポレータ6を通過した冷却風によって車室内を冷房する通常の空調制御(冷凍サイクルの運転状態での空調制御)を実施するものである。
【0034】
内外気切替箱3の内外気切替ドアは、ドラフト空調を実施する際、自動的に内気循環に切り替えられるものである。なお、乗員が手動により外気導入を選択する場合は、手動操作を優先させて外気導入を選択するものである。また、ドラフト空調を実施する際、内気温度よりも外気温度が低い場合には自動的に内外気切替ドアを外気導入に切り替えるようにしても良い。
一方、ドラフト空調時における吹出口は、自動的にフェイス吹出モードに切り替えられるものである。なお、乗員が手動により吹出モードの設定を行なう場合は、手動操作を優先させて吹出モードの選択を行なうものである。
【0035】
次に、冷房運転が要求される状態でアイドルストップで停車する際の具体的な制御例を、図3のフローチャートを参照して説明する。
車両用空調装置の運転中にこの制御ルーチンに侵入すると(スタート)、エコランエンジンストップ中か否かの判断を行なう(ステップS11)。
このステップS11の判断結果がNOの場合(エンジン運転中)は、通常の空調制御(冷凍サイクルの運転状態での空調制御)を実施する制御ルーチンへ進む(ステップS12)。
【0036】
ステップS11の判断結果がYESの場合(エンジン停止中)は、日射センサ(図示しない)によって検出される日射量を読み込む(ステップS13)。
次に、ステップS13で読み込んだ日射量が予め設定した設定値より大きいか否かの判断を行なう。具体的には、日射量が0(ゼロ)であるか、日射量が0(ゼロ)より大きいかの判断を行なう(ステップS14)。
【0037】
ステップS14の判断結果において日射量が0(ゼロ)の場合は、夜など積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと判断し、メイン送風機4の運転を停止した空調停止を実施する(ステップS15)。
一方、ステップS14の判断結果において日射量が0(ゼロ)より大きい場合は、昼間など積極的な冷房効果を乗員が希望していると判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、さらにエババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開く動作を行なってドラフト空調を実施する(ステップS16)。
上記ステップS15またはステップS16の実行後、リターンする。即ち、その後、ステップS11に進み、ステップS11の判断結果に従う。
【0038】
〔実施例1の効果〕
実施例1の車両用空調装置は、上述したように、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際(アイドルストップ時)、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施する。
このように、冷媒圧縮機が停止するアイドルストップ時であっても、ドラフト空調によって乗員の快適性を確保することができる。
また、この実施例1では蓄冷剤熱交換器(後述する実施例3の符号31参照)を搭載しないため、空調ユニット2の大型化を抑えることができ、空調ユニット2の車両搭載性の悪化を防ぐことができる。即ち、車両搭載スペースの確保を容易にできる。
さらに、ドラフト空調では、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出すため、エアコン臭の車室内への吹出しを防ぐことができる。即ち、エアコン臭の無い空気流によりドラフト空調を実施して、乗員の快適性を確保することができる。
【0039】
一方、この実施例1では、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、夜など日射量が0(ゼロ)の時はメイン送風機4の作動を停止させて、ドラフト空調も停止させるため、充電動作が行なわれていないアイドルストップ中におけるバッテリ消費を抑えることができる。このように、バッテリ消費が抑えられるため、車両発進後におけるバッテリの充電量が抑えられ、結果的に車両の燃料消費を抑えることができる。
【実施例2】
【0040】
図4、図5を参照して実施例2を説明する。なお、以下の各実施例において上記実施例1と同一符号は同一機能物を示すものである。
上記の実施例1は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、日射量に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する例を示した。
これに対し、この実施例2は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、乗員表面温度(車両乗員の表面温度)に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する例を示す。
【0041】
車室内には、図4に示すように、少なくとも運転者の乗員表面温度を検出するIRセンサ26(赤外線センサ)が設けられ、このIRセンサ26で検出した乗員表面温度がIRセンサ値として空調用ECUで読み取られるように設けられている。
一方、空調用ECUには、IRセンサ26で検出されたIRセンサ値(乗員表面温度に関連する値)に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する制御プログラムが搭載されている。
【0042】
次に、冷房運転が要求される状態でアイドルストップで停車する際の具体的な制御例を、図5のフローチャートを参照して説明する。
車両用空調装置の運転中にこの制御ルーチンに侵入すると(スタート)、エコランエンジンストップ中か否かの判断を行なう(ステップS21)。
このステップS21の判断結果がNOの場合(エンジン運転中)は、通常の空調制御を実施する制御ルーチンへ進む(ステップS22)。
【0043】
ステップS21の判断結果がYESの場合(エンジン停止中)は、IRセンサ26によって検出されるIRセンサ値を読み込む(ステップS23)。
次に、ステップS23で読み込んだIRセンサ値が予め設定した設定値より大きいか否かの判断を行なう。具体的には、IRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)以下であるか、IRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)より大きいかの判断を行なう(ステップS24)。
【0044】
ステップS24の判断結果においてIRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)以下の場合は、乗員が冷えて積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと判断し、メイン送風機4の運転を停止した空調停止を実施する(ステップS25)。
一方、ステップS24の判断結果においてIRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)より大きい場合は、乗員は冷えておらず冷房効果を乗員が希望していると判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、さらにエババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開く動作を行なってドラフト空調を実施する(ステップS26)。
上記ステップS25またはステップS26の実行後、リターンする。即ち、その後、ステップS21に進み、ステップS21の判断結果に従う。
【0045】
この実施例2では、上記実施例1の効果に加え、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、IRセンサ26の検出により乗員が冷えていると判断した場合にメイン送風機4の作動を停止させることで、充電動作が行なわれていないアイドルストップ中におけるバッテリ消費を抑えることができる。このように、バッテリ消費が抑えられるため、車両発進後におけるバッテリの充電量が抑えられ、結果的に車両の燃料消費を抑えることができる。
【実施例3】
【0046】
図6〜図9を参照して実施例3を説明する。
この実施例3は、実施例1で示したエババイパス23を、蓄冷剤熱交換器31が配置される蓄冷器通路と、蓄冷剤熱交換器31をバイパスする蓄冷器バイパス32とに分けたものである。
また、この実施例3は、エババイパス23の開閉を行なうエババイパス開閉ドア25とは別に、蓄冷器通路または蓄冷器バイパス32の一方の閉塞、および蓄冷器通路と蓄冷器バイパス32の両方の同時開放が可能な蓄冷選択ドア33を設けたものである。
【0047】
蓄冷剤熱交換器31は、車両走行中における冷凍サイクルの作動により蓄冷される蓄冷剤と、エババイパス23のうちの蓄冷器通路を流れる空気との熱交換を行なう熱交換器である。具体的な蓄冷剤熱交換器31の構造は、例えば複数のチューブを隙間を隔てて配置し、チューブ内に蓄冷剤を充填し、チューブとチューブの間を空気が通過する構造を採用している。蓄冷剤熱交換器31に充填される蓄冷剤は、例えばパラフィンを用いた水和物蓄冷剤である。
【0048】
この実施例3に用いられる蓄冷剤熱交換器31は、ドラフト空調時に吹き出される空気を冷却する際に用いられるものであり、蓄冷剤熱交換器31に搭載される蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルは、40〜60kJの範囲内に設けられる(蓄冷剤に蓄えられた冷熱で車室内の冷房を実施しようとすると、蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルとして約100kJが要求されるが、それよりもこの実施例で使用される蓄冷剤は小さい)。
【0049】
蓄冷剤熱交換器31は、上述したように、冷凍サイクルの作動により蓄冷される。具体的な一例としては、エバポレータ6の上部に搭載された蓄冷剤熱交換器31が、エバポレータ6と広い面積で接触するように設けられ、エバポレータ6の作動に伴う冷熱によって蓄冷剤熱交換器31に充填された蓄冷剤が冷却されるように設けられている。
なお、他の蓄冷手段として、冷凍サイクルの運転による低温冷媒によって直接的に蓄冷剤を冷やして積極的に蓄冷しても良い。具体的に例えば、減圧装置をバイパスさせた液冷媒によって直接的に蓄冷剤を冷却するように設けても良い。
【0050】
実施例3の空調用ECUは、アイドルストップによるドラフト空調を行なう際、日射量とTAOに基づき、メイン送風機4の作動制御と、蓄冷選択ドア33の開度制御(蓄冷剤熱交換器31が配置される蓄冷器通路と、蓄冷器バイパス32との切替制御)とを行なうように設けられている。即ち、空調用ECUには、日射センサで検出された日射量とTAOに基づいてドラフト空調の運転状態を制御する制御プログラムが搭載されている。
【0051】
次に、アイドルストップで停車する際の具体的な制御例を、図8のフローチャートを参照して説明する。
車両用空調装置の運転中にこの制御ルーチンに侵入すると(スタート)、エコランエンジンストップ中か否かの判断を行なう(ステップS31)。
このステップS31の判断結果がNOの場合(エンジン運転中)は、通常の空調制御を実施する制御ルーチンへ進む(ステップS32)。
【0052】
ステップS31の判断結果がYESの場合(エンジン停止中)は、日射センサ(図示しない)によって検出される日射量とTAOを読み込む(ステップS33)。
次に、ステップS33で読み込んだTAOが38℃以下であるか否かの判断を行なうとともに、ステップS33で読み込んだ日射量が0(ゼロ)であるか、日射量が0(ゼロ)〜400W/m2 の範囲内であるか、日射量が400W/m2 より大きいかの判断を行なう(ステップS34)。
【0053】
ステップS34の判断結果において、TAOが38℃より大きい場合、あるいは日射量が0(ゼロ)の場合は、積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと判断し、メイン送風機4の運転を停止した空調停止を実施する(ステップS35)。
一方、ステップS34の判断結果において、TAOが38℃以下で、日射量が0(ゼロ)〜400W/m2 の範囲内の場合は、冷房効果は希望するものの大きな冷房効果を乗員が希望していないと判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、エババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開き、さらに蓄冷選択ドア33によって蓄冷剤熱交換器31が配置された蓄冷器通路を閉じて、蓄冷剤熱交換器31を通過しない送風動作によるドラフト空調(以下、送風だけのドラフト空調と称す)を実施する(ステップS36)。
【0054】
さらに、ステップS34の判断結果において、TAOが38℃以下で、日射量が400W/m2 より大きい場合は、大きな冷房効果を乗員が希望していると判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、エババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開き、さらに蓄冷選択ドア33によって蓄冷器バイパス32を閉じて、蓄冷剤熱交換器31を通過した冷風(蓄冷剤のパージ風)によるドラフト空調(以下、蓄冷ドラフト空調と称す)を実施する(ステップS37)。
上記ステップS35、ステップS36、またはステップS37の実行後、リターンする。即ち、その後、ステップS31に進み、ステップS31の判断結果に従う。
【0055】
(実施例3の効果1)
この実施例3では、上記実施例1の効果に加え、次の効果を奏する。
この実施例3では、アイドルストップでエンジンが停止して、冷媒圧縮機が停止している状態であっても、大きな冷房効果を乗員が希望していると空調用ECUが判断した際に、蓄冷ドラフト空調を実施して、蓄冷剤熱交換器31を通過した冷風を車室内に吹出して、冷房運転を継続する。このように、アイドルストップ中の冷房運転を継続できるため、アイドルストップ中の乗員の快適性を高く保つことができる。
【0056】
また、この実施例3では、アイドルストップでエンジンが停止して、冷媒圧縮機が停止している状態であっても、冷房効果は希望するものの大きな冷房効果を乗員が希望していないと空調用ECUが判断した際に、送風だけのドラフト空調を実施して、アイドルストップ中の乗員の快適性を維持することができる。
【0057】
さらに、この実施例3では、アイドルストップでエンジンが停止して、冷媒圧縮機が停止している状態であっても、積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと空調用ECUが判断した際に、メイン送風機4を停止するため、アイドルストップ中の乗員の快適性を損なうことなく、充電動作が行なわれていないアイドルストップ中におけるバッテリ消費を抑えることができる。
【0058】
ここで、蓄冷ドラフト空調は、冷媒圧縮機が作動する期間(エンジン運転中)に蓄冷した蓄冷剤の冷熱を、アイドルストップ中にパージするものである。
このため、図9に示す具体的な実験結果で表されるように、冷媒圧縮機が作動する冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)の空調能力(図中、能力)を100%とした場合、送風だけのドラフト空調の空調能力では71%に下がるが、蓄冷ドラフト空調では空調能力を81%に維持できる。
この実験結果からも、送風だけのドラフト空調に比較して、蓄冷ドラフト空調により、アイドルストップ中の乗員の快適性を高く保つことが理解できる。
【0059】
また、図9に示す具体的な実験結果で表されるように、冷媒圧縮機が作動する冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)の消費エネルギー(図中、動力)を100%とした場合、蓄冷ドラフト空調の消費エネルギーは85%に抑えられる。即ち、蓄冷ドラフト空調では、小さい消費エネルギーにより、アイドルストップ中の乗員の快適性を高く保つことができる。
一方、送風だけのドラフト空調の消費エネルギーは、冷媒圧縮機が作動する冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)に比較して77%に抑えられる。この実験結果からも、送風だけのドラフト空調は、消費エネルギーが小さいことが理解できる。
【0060】
(実施例3の効果2)
この実施例3は、蓄冷剤熱交換器31を用いるものであるが、蓄冷ドラフト空調では蓄冷剤による冷房運転を主目的としないため、大きな蓄冷量ポテンシャルを必要としない。このため、車両搭載スペースの確保を容易にできる。具体的には、蓄冷剤熱交換器31に搭載される蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルが40〜60kJであり、従来技術(蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルとして約100kJを必要とした従来技術)に比較して蓄冷剤熱交換器31を小さくできる。このため、エババイパス23に小型の蓄冷剤熱交換器31を搭載でき、結果的に空調ユニット2の大型化を抑えることができ、車両搭載スペースの確保を容易にできる。
【0061】
(実施例3の効果3)
この実施例3の空調用ECUは、アイドルストップ中に、日射量とTAOに基づき、メイン送風機4のOFF制御、送風だけのドラフト空調の実施、蓄冷ドラフト空調の実施の切替えを行なうことで、乗員の快適性を保ちつつ、無駄なエネルギー消費を抑えることができる。即ち、省エネルギーと、乗員の快適性とを、高次元で両立することができる。
【実施例4】
【0062】
図10を参照して実施例4を説明する。
上記の実施例3は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、日射量に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する例を示した。
これに対し、この実施例4は、車両走行停止時に冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、IRセンサ26によって検出される乗員表面温度に基づいてドラフト空調の運転状態を制御する例を示す。
空調用ECUには、IRセンサ26で検出されたIRセンサ値(乗員表面温度に関連する値)に基づいてドラフト空調の運転状態(運転停止、送風だけのドラフト空調、蓄冷ドラフト空調)を制御する制御プログラムが搭載されている。
【0063】
次に、アイドルストップで停車する際の具体的な制御例を、図10のフローチャートを参照して説明する。
車両用空調装置の運転中にこの制御ルーチンに侵入すると(スタート)、エコランエンジンストップ中か否かの判断を行なう(ステップS41)。
このステップS41の判断結果がNOの場合(エンジン運転中)は、通常の空調制御を実施する制御ルーチンへ進む(ステップS42)。
【0064】
ステップS41の判断結果がYESの場合(エンジン停止中)は、IRセンサ26によって検出されるIRセンサ値とTAOを読み込む(ステップS43)。
次に、ステップS43で読み込んだTAOが38℃以下であるか否かの判断を行なうとともに、ステップS43で読み込んだIRセンサ値が18(十分冷えている乗員表面温度に相当)以下であるか、IRセンサ値が18〜22(平常時の範囲内の乗員表面温度に相当)であるか、IRセンサ値が22(平常時より熱くなっている乗員表面温度に相当)より大きいかの判断を行なう(ステップS44)。
【0065】
ステップS44の判断結果において、TAOが38℃より大きい場合、あるいはIRセンサ値が18以下の場合は、積極的な冷房効果を乗員が希望していない可能性が高いと判断し、メイン送風機4の運転を停止した空調停止を実施する(ステップS45)。
一方、ステップS44の判断結果において、TAOが38℃以下で、IRセンサ値が18〜22の範囲内の場合は、冷房効果は希望するものの大きな冷房効果を乗員が希望していないと判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、エババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開き、さらに蓄冷選択ドア33によって蓄冷剤熱交換器31が配置された蓄冷器通路を閉じて、送風だけのドラフト空調を実施する(ステップS46)。
【0066】
さらに、ステップS44の判断結果において、TAOが38℃以下で、IRセンサ値が22より大きい場合は、大きな冷房効果を乗員が希望していると判断し、メイン送風機4の風量を1レベル上げて風量増加を図るとともに、エバ開閉ドア24によりエバ流路22を閉じ、エババイパス開閉ドア25によってエババイパス23を開き、さらに蓄冷選択ドア33によって蓄冷器バイパス32を閉じて、蓄冷剤熱交換器31を通過した冷風(蓄冷剤のパージ風)による蓄冷ドラフト空調を実施する(ステップS47)。
上記ステップS45、ステップS46、またはステップS47の実行後、リターンする。即ち、その後、ステップS41に進み、ステップS41の判断結果に従う。
この実施例4でも、上記実施例3と同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0067】
この実施例5は、上記実施例3、4の変形例である。
上記実施例3、4では、大きな冷房効果を乗員が希望していると空調用ECUが判断した際に、蓄冷ドラフト空調を実施して、蓄冷剤熱交換器31を通過した冷風を車室内に吹出して、冷房運転を継続する例を示した。
これに対し、大きな冷房効果を乗員が希望していると空調用ECUが判断した際に、蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量に応じて蓄冷選択ドア33の開閉状態を制御しても良い。
具体的には、蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より多い(冷えている)と判断される場合は、蓄冷選択ドア33によって蓄冷器バイパス32を閉じて、蓄冷ドラフト空調を実施させ、蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より少ない(冷えていない)と判断される場合は、蓄冷選択ドア33によって蓄冷器バイパス32と蓄冷器通路(蓄冷剤熱交換器31)の両方を開いたドラフト空調(以下、送風+蓄冷ドラフト空調と称す)を実施させても良い。
【0068】
蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より多いか、少ないかの判断基準は、例えば空調ユニット2の空気流の下流側の空気流温度(吹出温度)を検出し、その吹出温度が予め設定された基準温度より低い場合に「蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より多い」と判断し、吹出温度が予め設定された基準温度より高い場合に「蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より少ない」と判断しても良い。
あるいは、蓄冷ドラフト空調の運転時間をカウントし、蓄冷ドラフト空調の運転時間が予め設定された設定時間より短い場合に「蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より多い」と判断し、蓄冷ドラフト空調の運転時間が予め設定された設定時間より長い場合に「蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が所定量より少ない」と判断しても良い。
【0069】
この実施例5を採用することにより、アイドルストップ中に、蓄冷剤熱交換器31の蓄冷量が低下すると、蓄冷器バイパス32と蓄冷器通路(蓄冷剤熱交換器31)の両方が開かれた送風+蓄冷ドラフト空調が実施されるため、流路抵抗の低下により車室内への吹出し風量が増えて、乗員の快適性を確保することができる。
【実施例6】
【0070】
図11を参照して実施例6を説明する。
上記の各実施例では、メイン送風機4を作動させ、エババイパス23を通過する空気流によってドラフト空調を実施する例を示した。
これに対し、この実施例6は、空調ユニット2内にエババイパス23を設けることなく、メイン送風機4とは別のサブ送風機41によりドラフト空調を実施するものである。
【0071】
この実施例6のHVACは、メイン送風機4とは別に、空調ユニット2における空気流の下流側にサブ送風機41を搭載している。この実施例6の空調ユニット2は、内部が上下2層に分割して設けられており、サブ送風機41の本来の搭載目的はリヤ風量のアシストを行なうものであり、下層の空気通路内に車室内の後部座席側に向かう空気流を生じさせるものである。
【0072】
この実施例6では、サブ送風機41を用いてアイドルストップ時のドラフト空調を実施するものである。
具体的に、この実施例6におけるサブ送風機41の吸込口には、空気の吸込み先を、空調ユニット2の下層通路内か、あるいはインストルメントパネルPの下部の内気かに切り替える吸入空気切替手段(図示しない)が設けられている。
また、サブ送風機41の吹出口には、空気の吹出し先を、本来の目的である後部座席側か、あるいは前席乗員の上半身かに切り替える吹出空気切替手段(図示しない)が設けられている。
そして、アイドルストップ時にドラフト空調を行なう際は、サブ送風機41の吸込口をインストルメントパネルPの下部の内気に切り替えるとともに、サブ送風機41の吹出口を前席乗員の上半身に切り替えて、サブ送風機41を作動させ、エバポレータ6を通過しない空気流を車室内に吹き出させるものである。
【0073】
ここで、サブ送風機41によってドラフト空調を行なう際、サブ送風機41の吸込口からインストルメントパネルPの下部の内気が吸い込まれる。インストルメントパネルPの下部には、比較的温度の低い空気が存在する可能性が高い。このため、ドラフト空調によって車室内に低い温度の空気が吹き出され、乗員の快適性を高めることができる。
具体的に、送風機ユニット1のメイン送風機4が、内外気切替箱3(符号、図1等参照)で選択された内気を吸引する際、メイン送風機4はインストルメントパネルPの隙間、およびインストルメントパネルPの内部に配置された内部機材の隙間を通過した内気を吸引するため、インストルメントパネルPおよび内部機材の蓄熱によりHVACに吸い込まれる内気が温められる。このため、メイン送風機4を作動させて内気送風によるドラフト空調を実施しても、温かい空気が吹き出されてしまう。
これに対し、この実施例6では、上述したように、ドラフト空調によって車室内に低い温度の空気が吹き出され、乗員の快適性を高めることができる。
【実施例7】
【0074】
図12を参照して実施例7を説明する。
上記の各実施例では、HVACに設けた送風機(メイン送風機4またはサブ送風機41)によりドラフト空調を実施する例を示した。
これに対し、この実施例7は、図12に示すように、HVACとは別に乗員の上半身へ向けて送風を行なうベンチレーションユニット42を設け、このベンチレーションユニット42に搭載されるベンチレーション送風機43を作動させることでドラフト空調を実施するものである。
このベンチレーションユニット42は、上記実施例6と同様、インストルメントパネルPの下部の比較的温度の低い空気を吸い込んで乗員の上半身へ向けて吹き出し、乗員の快適性を高めることができる。
また、この実施例7では、HVACとは別のベンチレーションユニット42を作動させてアイドルストップ時のドラフト空調を実施するものであるため、既存のHVACの構造を変更する必要がない。
【実施例8】
【0075】
上記の各実施例では、空調用ECUにドラフト風量増加手段(制御プログラム)を設けて、ドラフト空調を実施する際に、車両走行中の冷房運転(エンジン運転中の冷房運転)の送風量より、風量を1レベル上げて風量増加を図る例を示した。
これに対し、この実施例8の空調用ECUには、学習手段(制御プログラム)が設けられており、ドラフト空調中に、乗員のマニュアル操作によって風量変更の指示が成された場合に、その風量変更を記憶し、次回から風量変更後の風量にてドラフト空調を実施させるように設けられている。
具体的な一例を示すと、ドラフト空調中に、乗員のマニュアル操作によって風量低下の指示が成された場合には、ドラフト空調中に風量低下の指示が成された旨を記憶装置に記憶して、次回からのドラフト空調時においてドラフト風量増加手段による風量増加のキャンセルを行なうものである。
これにより、次回のドラフト空調時に、乗員がマニュアル操作を実行しなくても、乗員の好みに応じた風量によるドラフト空調を実施することができる。
【実施例9】
【0076】
この実施例9は、ドラフト空調を実施する空気通路内に蓄冷剤熱交換器31が配置される車両用空調装置(例えば、実施例3、4参照)に適用可能な技術である。即ち、蓄冷ドラフト空調が可能な車両用空調装置に適用可能な技術である。
【0077】
蓄冷ドラフト空調が可能な車両用空調装置を搭載する車両は、自身の車両の外部から交通に関する情報(ナビゲーションシステムや車車間通信などより得られるIT情報など)を受信する情報受信装置を搭載する。
一方、空調用ECUは、車両内で検出可能な「空調状態(日射量、外気温度、要求冷房能力等)」の他に、車両の走行中、情報受信装置により検出した「次に信号に停止するまでの時間」と「次の信号停車時間」に基づいて、蓄冷剤の蓄冷量をコントロールする。具体的には、「次の信号停車時間」に実施される蓄冷ドラフト空調に要求される蓄冷量を算出するとともに、算出された蓄冷量が蓄冷剤熱交換器31に蓄えられるように冷媒圧縮機の運転状態を制御するものである。
これにより、車両が停車するまでの間に、停車中(冷媒圧縮機の停止中)に必要とされる蓄冷能力を蓄冷剤熱交換器31に蓄えることができ、信号停車中に蓄冷ドラフト空調を実施できる。
【0078】
このように、車両の走行中に、「次に信号に停止するまでの時間」と「次の信号停車時間」に基づいて、蓄冷剤の蓄冷量をコントロールすることで、エンジンの運転中に次の蓄冷ドラフト空調に要求される蓄冷量を確保できるとともに、無駄な蓄冷を抑えて低燃費を実現できる。
【0079】
また、空調用ECUは、車両が停車した際、車両内で検出可能な「空調状態(日射量、外気温度、要求冷房能力等)」の他に、情報受信装置により検出した「信号停止時間」に基づいて、蓄冷剤の放冷量をコントロールする。具体的には、「蓄冷剤の蓄冷量」と「信号停止時間」に基づいて蓄冷ドラフト空調における風量制御を実施して、信号停止中に無駄なく蓄冷ドラフト空調を実施するものである。これによっても、無駄な蓄冷が抑えられて低燃費を実現できる。
【実施例10】
【0080】
この実施例10は、上記実施例9の変形例である。
車両の乗員乗車数は、運転者だけの乗車割合が平日で75%、土日や休日で62%というデータがある。このように、車両は、運転者の1名だけが乗車している可能性が高い。このため、蓄冷ドラフト空調における蓄冷量を、車両の定員数に基づいて設定すると、無駄な蓄冷を行なう可能性が高い。
【0081】
この実施例10は、車両に実際に乗車している人数(乗員乗車数)をシートセンサ(シートに乗車した乗員の重みなどで乗員の人数を検出する手段)やIRセンサ等により検出する。
一方、空調用ECUは、車両内で検出可能な「空調状態(日射量、外気温度、要求冷房能力等)」の他に、車両の走行中に情報受信装置により検出した「次に信号に停止するまでの時間」と「次の信号停車時間」と「乗員乗車数」に基づいて、蓄冷剤の蓄冷量をコントロールする。具体的には、「空調状態」と「乗員乗車数」と「次の信号停車時間」に応じた蓄冷量が蓄冷剤熱交換器31に蓄えられるように、冷媒圧縮機の運転状態を制御する。これにより、無駄な蓄冷を抑えて低燃費を実現できる。
【0082】
また、空調用ECUは、車両が停車した際、車両内で検出可能な「空調状態(日射量、外気温度、要求冷房能力等)」の他に、情報受信装置により検出した「信号停止時間」と「乗員乗車数」に基づいて、蓄冷剤の放冷量をコントロールする。具体的には、「蓄冷剤の蓄冷量」と「乗員乗車数」と「信号停止時間」と「空調状態」に基づいて蓄冷ドラフト空調における風量制御を実施して、信号停止中に無駄なく蓄冷ドラフト空調を実施するものである。これによっても、無駄な蓄冷が抑えられて低燃費を実現できる。なお、乗員乗車数に応じた蓄冷ドラフト空調を行なう際、乗員の乗車していない座席に向かう吹出口を自動閉鎖することが望ましい。
【0083】
なお、乗員乗車数に応じて蓄冷剤の蓄冷量および放冷量をコントロールする際、乗員1人あたり1.0Met(静止している人)〜1.2Met(表面温度の高い人)の数値を用いて蓄冷量および放冷量をコントロールしても良い。
また、上記に加えて、「SETスタート」と呼ばれる技術を用いて蓄冷量および放冷量をコントロールしても良い。
【0084】
〔変形例〕
上記の各実施例では、具体的な一例を説明するために、車両走行用のエンジンにより冷媒圧縮機が駆動される例を示したが、電動モータにより冷媒圧縮機を駆動するものであっても良い。このように電動コンプレッサを用いる場合で、ハイブリッド車両のように大きなバッテリ容量を持たない場合は、アイドルストップに伴う発電停止中は電動コンプレッサを停止させる要求がある。このとき、本発明のドラフト空調を実施することで、省エネ、乗員の快適性向上、エアコン臭防止を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】HVACの概略構成図である(実施例1)。
【図2】図1の要部拡大図である(実施例1)。
【図3】制御例を示すフローチャートである(実施例1)。
【図4】IRセンサの取付位置を示す説明図である(実施例2)。
【図5】制御例を示すフローチャートである(実施例2)。
【図6】HVACの概略構成図である(実施例3)。
【図7】図6の要部拡大図である(実施例3)。
【図8】制御例を示すフローチャートである(実施例3)。
【図9】空調能力と消費エネルギーの比較例を示すグラフである(実施例3)。
【図10】制御例を示すフローチャートである(実施例4)。
【図11】HVACの概略構成図である(実施例6)。
【図12】HVACとベンチレーションユニットの概略構成図である(実施例7)。
【符号の説明】
【0086】
4 メイン送風機
6 エバポレータ
22 エバ流路
23 エババイパス(ドラフト空調を行なう空気通路の一例)
24 エバ開閉ドア
31 蓄冷剤熱交換器
32 蓄冷器バイパス
33 蓄冷選択ドア
41 サブ送風機
42 ベンチレーションユニット
43 ベンチレーション送風機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の吸入圧縮動作を行なう冷媒圧縮機、および空気流と低温低圧の冷媒との熱交換を行って空気流の冷却を行うエバポレータ(6)を備える冷凍サイクルを具備し、
車両走行停止時に前記冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する車両用空調装置において、
この車両用空調装置は、車両走行停止時に前記冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、前記エバポレータ(6)を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記ドラフト空調を行なう空気通路(23)には、前記冷凍サイクルの作動により冷却される蓄冷剤と、前記ドラフト空調により車室内に向かう空気流との熱交換を行なう蓄冷剤熱交換器(31)が配置される蓄冷器通路が設けられるとともに、この蓄冷器通路をバイパスする蓄冷器バイパス(32)が設けられ、
前記車両用空調装置における電気動作部品の作動制御を行なう制御装置は、前記ドラフト空調を行なう際、日射量、または乗員表面温度、あるいは目標吹出温度に基づき、前記ドラフト空調を行なう送風機の作動制御、および前記蓄冷器通路または前記蓄冷器バイパス(32)の開閉制御を行なうことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
前記蓄冷剤熱交換器(31)に搭載される前記蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルは、40〜60kJであることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記車両用空調装置における電気動作部品の作動制御を行なう制御装置は、前記冷媒圧縮機を作動させる冷房運転時から、前記冷媒圧縮機を停止して前記ドラフト空調を行なう際に、前記冷媒圧縮機を作動させる冷房運転の送風量より、前記ドラフト空調の送風量を増加させるドラフト風量増加手段を備えるとともに、
前記ドラフト空調中に、乗員のマニュアル操作によって風量変更の指示が成された場合に、その風量変更を記憶し、次回から風量変更後の風量にてドラフト空調を実施させる学習手段を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記ドラフト空調を行なう空気通路(23)には、前記冷凍サイクルの作動により冷却される蓄冷剤と、前記ドラフト空調により車室内に向かう空気流との熱交換を行なう蓄冷剤熱交換器(31)が配置される蓄冷器通路が設けられ、
前記車両用空調装置を搭載する車両は、当該車両の外部から交通に関する情報を受信する情報受信装置を搭載し、
前記車両用空調装置における電気動作部品の作動制御を行なう制御装置は、
車両走行中、前記情報受信装置により検出した次に信号に停止するまでの時間と次の信号停車時間とに基づいて、前記蓄冷剤の蓄冷量をコントロールするとともに、
車両が信号で停車した際、前記情報受信装置により検出した信号停止時間に基づいて、前記蓄冷剤の放冷量をコントロールすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、乗員乗車数を検出する手段を備え、
前記制御装置は、前記蓄冷剤の蓄冷量をコントロールする際、前記情報受信装置により検出した次に信号に停止するまでの時間と次の信号停車時間の他に、乗員乗車数に基づいて、前記蓄冷剤の蓄冷量をコントロールするとともに、
前記蓄冷剤の放冷量をコントロールする際、前記情報受信装置により検出した信号停止時間の他に、乗員乗車数に基づいて、前記蓄冷剤の放冷量をコントロールすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項1】
冷媒の吸入圧縮動作を行なう冷媒圧縮機、および空気流と低温低圧の冷媒との熱交換を行って空気流の冷却を行うエバポレータ(6)を備える冷凍サイクルを具備し、
車両走行停止時に前記冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する車両用空調装置において、
この車両用空調装置は、車両走行停止時に前記冷媒圧縮機を停止して省エネ運転を実施する際、前記エバポレータ(6)を通過しない空気流を車室内に吹き出すドラフト空調を実施することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記ドラフト空調を行なう空気通路(23)には、前記冷凍サイクルの作動により冷却される蓄冷剤と、前記ドラフト空調により車室内に向かう空気流との熱交換を行なう蓄冷剤熱交換器(31)が配置される蓄冷器通路が設けられるとともに、この蓄冷器通路をバイパスする蓄冷器バイパス(32)が設けられ、
前記車両用空調装置における電気動作部品の作動制御を行なう制御装置は、前記ドラフト空調を行なう際、日射量、または乗員表面温度、あるいは目標吹出温度に基づき、前記ドラフト空調を行なう送風機の作動制御、および前記蓄冷器通路または前記蓄冷器バイパス(32)の開閉制御を行なうことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
前記蓄冷剤熱交換器(31)に搭載される前記蓄冷剤の蓄冷量ポテンシャルは、40〜60kJであることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記車両用空調装置における電気動作部品の作動制御を行なう制御装置は、前記冷媒圧縮機を作動させる冷房運転時から、前記冷媒圧縮機を停止して前記ドラフト空調を行なう際に、前記冷媒圧縮機を作動させる冷房運転の送風量より、前記ドラフト空調の送風量を増加させるドラフト風量増加手段を備えるとともに、
前記ドラフト空調中に、乗員のマニュアル操作によって風量変更の指示が成された場合に、その風量変更を記憶し、次回から風量変更後の風量にてドラフト空調を実施させる学習手段を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記ドラフト空調を行なう空気通路(23)には、前記冷凍サイクルの作動により冷却される蓄冷剤と、前記ドラフト空調により車室内に向かう空気流との熱交換を行なう蓄冷剤熱交換器(31)が配置される蓄冷器通路が設けられ、
前記車両用空調装置を搭載する車両は、当該車両の外部から交通に関する情報を受信する情報受信装置を搭載し、
前記車両用空調装置における電気動作部品の作動制御を行なう制御装置は、
車両走行中、前記情報受信装置により検出した次に信号に停止するまでの時間と次の信号停車時間とに基づいて、前記蓄冷剤の蓄冷量をコントロールするとともに、
車両が信号で停車した際、前記情報受信装置により検出した信号停止時間に基づいて、前記蓄冷剤の放冷量をコントロールすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、乗員乗車数を検出する手段を備え、
前記制御装置は、前記蓄冷剤の蓄冷量をコントロールする際、前記情報受信装置により検出した次に信号に停止するまでの時間と次の信号停車時間の他に、乗員乗車数に基づいて、前記蓄冷剤の蓄冷量をコントロールするとともに、
前記蓄冷剤の放冷量をコントロールする際、前記情報受信装置により検出した信号停止時間の他に、乗員乗車数に基づいて、前記蓄冷剤の放冷量をコントロールすることを特徴とする車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−6218(P2010−6218A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167239(P2008−167239)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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