説明

車両用空調装置

【課題】車両用空調装置における冷媒循環通路を確保し、運転状態に応じて冷媒の循環状態を適切かつ安定に切り替えられるようにする。
【解決手段】車両用冷暖房装置1は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機2と、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱させる凝縮器5と、凝縮器5から導出された冷媒を蒸発させる蒸発器7と、凝縮器5および蒸発器7の少なくとも一方の下流側に設けられ、その弁部の上流側または下流側の冷媒の温度と圧力を感知して弁開度を調整する過冷却度制御弁46と、過冷却度制御弁46が開閉する主通路を迂回するバイパス通路を内部に有し、その弁部の上流側と下流側との差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁してバイパス通路を開放する差圧弁48と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調装置に関し、特にヒートポンプ式の車両用冷暖房装置として好適な空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、蒸発器等を冷媒循環通路に配置して構成される。そして、このような冷凍サイクルの運転状態に応じた冷媒循環通路の切り替えや冷媒流量の調整等のために種々の制御弁が設けられている(例えば特許文献1参照)。このような制御弁として、冷媒から受ける圧力による力とそれに対抗するスプリングの付勢力とのバランスにより弁部が開閉される機械弁や、外部から電気的に開度を調整するためのアクチュエータを備える電気駆動弁が適宜用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−287354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような各種制御弁のうち機械弁は、冷媒の状態に応じて弁部の開閉やその開度の調整を自律的に行うものであるため、電気駆動弁のような応答性は得られ難い。例えば、温度式膨張弁などは冷媒の温度や圧力を感知して弁開度を調整するため、その冷媒の温度によっては閉弁状態が維持され、冷媒循環通路を遮断してしまう。このため、その膨張弁の閉弁状態においても所定流量の冷媒循環を確保すべき運転モードを有する冷凍サイクルを設計する場合、膨張弁にオリフィス通路を設けるなどの手段を講じる必要がある。しかしながら、そうしたオリフィス通路を設けた場合、逆に膨張弁での冷媒流量を極少に絞ったり、冷媒循環を確実に停止させる運転モードの実行が困難となる。このため、機械弁を配置した冷凍サイクルにおいて、冷媒の循環状態を最適化するのが難しいといった問題があった。
【0005】
本発明の目的の一つは、車両用空調装置における冷媒循環通路を確保し、運転状態に応じて冷媒の循環状態を適切かつ安定に切り替えられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用空調装置は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる凝縮器と、凝縮器から導出された冷媒を蒸発させる蒸発器と、凝縮器および蒸発器の少なくとも一方の下流側に設けられ、その弁部の上流側または下流側の冷媒の温度と圧力を感知して弁開度を調整する制御弁と、制御弁が開閉する主通路を迂回するバイパス通路を内部に有し、その弁部の上流側と下流側との差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁してバイパス通路を開放する差圧弁と、を備える。
【0007】
この態様によると、冷媒の温度と圧力を感知して弁開度を自律的に調整する機械式の制御弁が設けられる車両用空調装置において、その制御弁が開閉する主通路を迂回するバイパス通路を内部に有する差圧弁が設けられる。すなわち、制御弁が閉弁状態にあっても、差圧弁の上流側と下流側との差圧(「前後差圧」ともいう)が設定差圧よりも大きくなると、その差圧弁がバイパス通路を開放して冷媒循環を確保する。一方、その前後差圧が設定差圧よりも小さい状態においては差圧弁がバイパス通路を遮断するため、制御弁の開度を極少にするなど弁部の絞り量を調整したり、冷媒循環そのものを遮断することも可能となる。すなわち、車両用空調装置における冷媒循環通路を確保し、運転状態に応じて冷媒の循環状態を適切かつ安定に切り替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両用空調装置における冷媒循環通路を確保し、運転状態に応じて冷媒の循環状態を適切かつ安定に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る車両用空調装置の概略構成を表すシステム構成図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【図4】制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【図5】制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【図6】制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施形態に係る車両用空調装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用空調装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
【0011】
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。冷媒循環回路には、冷暖房を適切に制御するための各種制御弁が配設されている。
【0012】
車両用冷暖房装置1は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。すなわち、室外熱交換器5は、冷房運転時においては室外凝縮器として機能し、暖房運転時には室外蒸発器として機能する。
【0013】
具体的には、圧縮機2の吐出室は第1通路21を介して室内凝縮器3の入口に接続され、室内凝縮器3の出口は第2通路22を介して室外熱交換器5の一方の出入口に接続されている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。第2通路22と第3通路23とはバイパス通路25により接続され、室内凝縮器3から導出された冷媒の少なくとも一部を室外熱交換器5を迂回させるようにして蒸発器7へ供給可能となっている。
【0014】
バイパス通路25には、大口径の第1弁42が設けられている。バイパス通路25は、第1弁42の下流側にて分岐し、第1分岐通路27、第2分岐通路28、第3分岐通路29となっている。第1分岐通路27には、第1弁42を通過した冷媒の中間圧力Ppが満たされる。第2分岐通路28には、第1弁42よりも小さな小口径の第2弁44が設けられている。第1弁42と第2弁44とは連動可能に構成されているが、その具体的構成については後述する。第3分岐通路29には過冷却度制御弁46が設けられている。第1分岐通路27と第3通路23との合流点には、差圧弁48が設けられている。第2分岐通路28は差圧弁48の上流側にて第3通路23に接続され、第3分岐通路29は差圧弁48の下流側にて第3通路23に接続されている。本実施形態においては、第1弁42、第2弁44、過冷却度制御弁46および差圧弁48が、共通のボディに組み込まれた制御弁ユニット6を構成する。この制御弁ユニット6の具体的構成については後述する。
【0015】
また、第2通路22のバイパス通路25との分岐点よりも下流側には第2の分岐点が設けられ、アキュムレータ8の入口につながるバイパス通路26が設けられている。その第2の分岐点には、冷媒循環通路を切り替えるための切替弁32が設けられている。さらに、第3通路23と第4通路24とをつなぐバイパス通路30が設けられ、バイパス通路30と第4通路24との合流点には、冷媒循環通路を切り替えるための切替弁34が設けられている。
【0016】
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
【0017】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
【0018】
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
【0019】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
【0020】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置として機能する制御弁の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。
【0021】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に上流側から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができるようになっている。
【0022】
切替弁32は、第2通路22を開閉する第1弁部と、バイパス通路26を開閉する第2弁部と、各弁部を駆動するアクチュエータとを備える三方弁からなる。第1弁部は、室内凝縮器3から第2通路22を介して室外熱交換器5へ流れる冷媒の流量を調整する。第2弁部は、室外熱交換器5からバイパス通路26を介してアキュムレータ8へ流れる冷媒の流量を調整する。本実施形態では、切替弁32として、ステッピングモータの駆動により各弁部の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁部の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0023】
切替弁34は、第4通路24を開閉する第1弁部と、バイパス通路30を開閉する第2弁部と、各弁部を駆動するアクチュエータとを備える三方弁からなる。第1弁部は、蒸発器7から第4通路24を介してアキュムレータ8へ流れる冷媒の流量を調整する。第2弁部は、その開弁により室外熱交換器5からバイパス通路30を介したアキュムレータ8への冷媒の流れを許容する。本実施形態では、切替弁34として、ステッピングモータの駆動により各弁部の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁部の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0024】
第1弁42および第2弁44は、共通のアクチュエータである1つのステッピングモータにより駆動され、その開度が調整される比例弁として構成されている。第1弁42は、バイパス通路25の上流部の開度を調整する。第2弁44は、第2分岐通路28の開度を調整する。
【0025】
過冷却度制御弁46は、室外熱交換器5から導出された冷媒や、バイパス通路25を介して供給された冷媒を絞り膨張させて蒸発器7側に導出する膨張弁として機能する。過冷却度制御弁46は、冷房運転時において室外熱交換器5の出口側の過冷却度が予め設定された一定の過冷却度(設定値SC)に近づくよう冷媒の流れを制御する。また、暖房運転時において室内凝縮器3の出口側の過冷却度が予め設定された一定の過冷却度(設定値SC)に近づくよう冷媒の流れを制御する。本実施形態では、過冷却度制御弁46として、その上流側(冷房運転時においては室外熱交換器5の出口側であり、暖房運転時(除湿制御を行う特定暖房運転時)において室内凝縮器3の出口側)の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。
【0026】
過冷却度制御弁46は、冷房運転時において室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値SCよりも大きくなると開弁方向に動作し、室外熱交換器5を流れる冷媒の流量を増加させる。このように冷媒の流量が増加すると、室外熱交換器5における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が小さくなるため、その過冷却度は小さくなる方向に変化する。逆に、室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値SCよりも小さくなると、過冷却度制御弁46は閉弁方向に動作し、室外熱交換器5を流れる冷媒の流量を減少させる。このように冷媒の流量が減少すると、室外熱交換器5における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が大きくなるため、その過冷却度は大きくなる方向に変化する。過冷却度制御弁46は、その入口(室外熱交換器5の出口側)の過冷却度が設定値SCとなるよう自律的に動作する。
【0027】
過冷却度制御弁46は、また、特定暖房運転時においてバイパス通路25が開放されると、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCよりも大きくなると開弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を増加させる。このように冷媒の流量が増加すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が小さくなるため、その過冷却度は小さくなる方向に変化する。逆に、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCよりも小さくなると、過冷却度制御弁46は閉弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を減少させる。このように冷媒の流量が減少すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が大きくなるため、その過冷却度は大きくなる方向に変化する。過冷却度制御弁46は、その入口(室内凝縮器3の出口側)の過冷却度が設定値SCとなるよう自律的に動作する。過冷却度制御弁46の具体的構成については後述する。
【0028】
差圧弁48は、その前後差圧が設定された開弁差圧(設定差圧)以上となったときに開弁する機械式の弁として構成される。差圧弁48の弁体にはオリフィスが形成され、過冷却度制御弁46が閉弁状態にあっても前後差圧が大きくなることで開弁し、室外熱交換器5から蒸発器7への所定流量の冷媒の流れを確保する。本実施形態において、この「設定差圧」は、冷房運転時において差圧弁48に作用する前後差圧よりも小さく、暖房運転時において差圧弁48に作用する前後差圧よりも大きくなる値に設定されている。これにより、車両用冷暖房装置1の起動時の冷媒循環を確保するために過冷却度制御弁46等に所定流量の冷媒の流れを許容するオリフィス等を設ける必要がなくなるとともに、前後差圧が設定差圧よりも小さい状態において室外熱交換器5から蒸発器7への冷媒の流れを確実に遮断することも可能となる。差圧弁48は、オリフィスを開閉する第1弁部と、第3通路23と第1分岐通路27との連通路を開閉する第2弁部とを有する。本実施形態では後述のように、これら第1弁部と第2弁部とが同時に開閉する。
【0029】
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部100は、切替弁32,切替弁34,第1弁42,第2弁44などの開閉制御のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
【0030】
制御部100は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の設定開度を決定し、その開度がその設定開度となるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。このような制御により、図示のように、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。制御部100による制御により、図示のように、第1弁42の上流側は上流側圧力P1となり、第1弁42の下流側は中間圧力Ppとなる。また、第2弁44の下流側は中間圧力P2となり、過冷却度制御弁46の下流側は下流側圧力P3となる。
【0031】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は除湿運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は暖房運転時の状態を示し、(E)は除霜運転時の状態を示している。ここでいう「除湿運転」は、車室内の除湿をメインとして運転状態であり、「特定暖房運転」は、暖房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。
【0032】
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜iはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
【0033】
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、切替弁32において第1弁部が全開状態にされ、第2弁部は閉弁される。また、切替弁34において第1弁部が全開状態にされ、第2弁部は閉弁される。このとき、差圧弁48は、その前後差圧(P2−P3)が開弁差圧よりも大きくなるため、第1分岐通路27とオリフィス通路の双方を全開状態にする。一方、第1弁42および第2弁44は閉弁状態とされる。このため、室内凝縮器3から導出された冷媒は室外熱交換器5に導かれるようになる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、切替弁32、室外熱交換器5、差圧弁48、過冷却度制御弁46、蒸発器7、切替弁34、アキュムレータ8を経由する冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
【0034】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室外熱交換器5を経由した冷媒が過冷却度制御弁46にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。このとき、過冷却度制御弁46は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。
【0035】
図2(B)に示すように、除湿運転時においては、切替弁32の開度が調整されて差圧制御が実行される。このとき、切替弁32には前後差圧ΔPが発生する。その結果、室内凝縮器3の凝縮圧力(凝縮温度)が、室外熱交換器5の凝縮圧力(凝縮温度)よりも高く維持され、車室内の温度が必要以上に低下することが抑制される。具体的には、ドライバの足元の温度をある程度高く維持することができる。また、この場合も、過冷却度制御弁46は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。
【0036】
図2(C)に示すように、特定暖房運転時においては、切替弁32において第1弁部が閉弁され、第2弁部が開弁される。また、切替弁34においては第1弁部が開弁され、第2弁部は閉弁される。一方、第1弁42および第2弁44がともに開弁され、その開度が調整される。差圧弁48は、その前後差圧(P2−P3)が開弁差圧よりも小さくなるため、第2分岐通路28とオリフィス通路の双方を閉じる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、第1弁42、過冷却度制御弁46、蒸発器7、切替弁34、アキュムレータ8を経由する冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、第1弁42、第2弁44、室外熱交換器5、切替弁32、アキュムレータ8を経由する冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
【0037】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される(b点→c点)。そして、過冷却度制御弁46にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒となり(c点→f点)、蒸発器7にて蒸発する(f点→g点)。一方、第2弁44にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒は、室外熱交換器5にて蒸発する(e点→d点)。このとき、過冷却度制御弁46は、室内凝縮器3の出口側(c点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。
【0038】
このとき、制御部は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整する。そのために、例えば切替弁34の第1弁部を全開状態とし、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の蒸発圧力Peとの差圧ΔP=Po−Peが適正となるよう切替弁32の第2弁部を開閉制御する。このとき、蒸発圧力Peは、圧縮機2の吸入圧力Psに実質的に等しくなる。
【0039】
すなわち、差圧ΔPが大きくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、差圧ΔPが小さくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部は、その差圧ΔPが適正となるように制御することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。なお、本実施形態では、室外熱交換器5の蒸発圧力Poを室外熱交換器5の入口側の温度Toを検出することで特定する。また、蒸発器7の出口の圧力Peを蒸発器7の入口側の温度Teを検出することで特定する。
【0040】
なお、運転状態によっては室外熱交換器5の蒸発圧力Poよりも蒸発器7の蒸発圧力Peを高く設定する場合もある。その場合には、切替弁32の第2弁部を全開状態とし、蒸発器7の蒸発圧力Peと室外熱交換器5の蒸発圧力Poとの差圧ΔP=Pe−Poが適正となるよう切替弁34の第1弁部を開閉制御する。このとき、蒸発圧力Poは、圧縮機2の吸入圧力Psに実質的に等しくなる。
【0041】
図2(D)に示すように、暖房運転時においては、切替弁32において第1弁部が閉弁され、第2弁部が全開状態にされる。また、切替弁34においては第1弁部が開弁され、第2弁部は閉弁される。一方、第1弁42および第2弁44がともに開弁され、その開度が調整される。このとき、第2弁44の開度は特定暖房運転時(図2(c)参照)よりも大きくされる。その結果、第2弁44の開度が大きくなるにつれて過冷却度制御弁46の上流側の過冷却度が小さくなり、過冷却度制御弁46が閉弁状態となる。差圧弁48は、その前後差圧(P2−P3)が開弁差圧よりも小さくなるため、第2分岐通路28とオリフィス通路の双方を閉じる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1弁42、第2弁44、室外熱交換器5、切替弁32、アキュムレータ8を経由する冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
【0042】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される(b点→c点)。そして、第2弁44にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒は、室外熱交換器5にて蒸発する(e点→d点)。
【0043】
また、車両が極寒の環境下におかれた場合などには、室外熱交換器5が凍結して空調制御の制御性を低下させてしまうことも想定される。このため、制御部100は、外部情報に基づいて適宜除霜運転を実行する。この除霜運転において、制御部100は、まずエアミックスドア14を閉じて室内凝縮器3における熱交換を休止し、冷媒の温度低下を抑制する。このとき、蒸発器7にて熱交換が行われると車室内の温度が低下してしまうので、室内送風機12の駆動も停止させる。
【0044】
すなわち、図2(E)に示すように、除霜運転時においては、切替弁32において第1弁部が開弁され、第2弁部は閉弁される。また、切替弁34においては第1弁部が閉弁され、第2弁部が開弁される。一方、第1弁42および第2弁44はともに閉弁される。なお、除霜運転時において室外熱交換器5と外部の空気との熱交換を抑制するために、室外熱交換器5に外気(風)が当たることを抑制するシャッタ等を設けてもよい。
【0045】
このとき、切替弁32は差圧制御を実行する。その結果、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒が、切替弁32の第1弁部を通過して室外熱交換器5に供給され、切替弁34の第2弁部およびアキュムレータ8を経由して圧縮機2に戻る。その結果、ホットガスが室外熱交換器5に供給され続ける状態となり、除霜を確実に実行することが可能となる。除霜運転が安定した状態においては図示のように、室外熱交換器5から導出された冷媒は、アキュムレータ8に導入されることにより飽和蒸気線上に制御される(e点)。
【0046】
次に、制御弁ユニット6の具体的構成について説明する。図3は、集合弁の具体的構成を表す断面図である。
制御弁ユニット6は、共用のボディ102に第1弁42、第2弁44、過冷却度制御弁46および差圧弁48を組み付けた集合弁として構成されている。ボディ102は、円筒状に形成され、その上端開口部がモータユニット104により封止され、下端開口部が円盤状の封止部材106により封止されている。ボディ102の側部には、上方から導入ポート112、導入出ポート114、導出ポート116が設けられている。ボディ102の内部には、上方から第1弁42、第2弁44、差圧弁48、過冷却度制御弁46が配設されている。モータユニット104は、第1弁42および第2弁44の駆動部を構成する。すなわち、図示のように、第1弁42および第2弁44が電気駆動弁であるのに対し、過冷却度制御弁46および差圧弁48は機械弁となっている。
【0047】
また、ボディ102には、冷媒通路を区画するための複数の通路形成部材が組み込まれている。すなわち、ボディ102の上半部には通路形成部材122が配設され、下半部には通路形成部材124が設けられている。通路形成部材122は、その軸線方向中央部に大口径の弁孔130と小口径の弁孔132とが同心状に設けられた二重管構造を有する。また、通路形成部材122の上半部には、大径の弁体134、小径の弁体136および弁作動体138が同軸状に配設されている。弁体134は、上流側から弁孔130に接離して第1弁42を開閉する。弁体136は、上流側から弁孔132に接離して第2弁44を開閉する。
【0048】
弁孔130の上流側には高圧室62が形成され、弁孔130と弁孔132との間には中間圧力室64が形成され、弁孔132の下流側には中圧室66が形成されている。高圧室62は導入ポート112を介してバイパス通路25の上流部に連通し、中間圧力室64は第1分岐通路27を構成し、中圧室66は第2分岐通路28を構成する(図1参照)。
【0049】
モータユニット104は、ロータ140とステータ142とを含むステッピングモータとして構成されている。弁作動体138は、弁体134および弁体136をそれぞれ支持する一方、モータユニット104のロータ140に嵌合している。弁作動体138と弁体136との間には、弁体136を閉弁方向に付勢するスプリング144が介装されている。一方、弁体134とボディ102との間には、弁体134を閉弁方向に付勢するスプリング146が介装されている。弁作動体138は、弁体134に同軸状に挿通され、その下端部において弁体134を下方から支持する。
【0050】
弁作動体138は、モータユニット104により回転駆動され、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体138は回転により軸線方向に変位し、弁体134および弁体136を開閉方向に駆動する。制御部100は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、ステータ142の励磁コイルに駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ140が回転し、弁作動体138が回転駆動されて小口径の第2弁44および大口径の第1弁42の開度が設定開度に調整される。
【0051】
通路形成部材122の下部には、差圧弁48が配設されている。すなわち、通路形成部材122の下半部の側面開口部に円筒状の弁座形成部材150が圧入されている。弁座形成部材150の内方には弁孔152が形成されている。弁座形成部材150の弁孔152と反対側端部が入口ポートを形成している。また、弁座形成部材150の内方には円板状の第1弁体153が設けられ、通路形成部材122の内方には円柱状の第2弁体154が摺動可能に支持されている。第1弁体153には通路形成部材122の内方に向けて弁体部155が突設されている。また、第1弁体153には、弁孔152と導入出ポート114とを連通させる連通孔が設けられている。
【0052】
第2弁体154には、その軸線に沿って貫通するオリフィス通路156が設けられている。第2弁体154は、その軸線が通路形成部材122の軸線と直交するように支持され、第1弁体153に対向配置されている。また、第2弁体154の軸線方向中央の摺動部が、通路形成部材122の下部を中間圧力室64と低圧室68に区画している。通路形成部材122におけるその摺動部の下流側に出口ポートが形成されている。低圧室68は、通路形成部材122の下端開口部を介して導出ポート116に連通する。第1弁体153は、弁座形成部材150の内方にて軸線方向に微少量変位可能に支持されている。
【0053】
第2弁体154が弁孔152に接離することにより、第1弁体153がオリフィス通路156の一方の開口端部に接離する。すなわち、第1弁体153が第2弁体154(オリフィス通路156)に接離することにより第1弁部を開閉し、第2弁体154が弁孔152に接離することにより第2弁部を開閉する。第2弁体154と通路形成部材122との間には、第2弁体154を閉弁方向に付勢するスプリング158が介装されている。オリフィス通路156は、第2弁体154の開閉方向に延びるように形成されている。本実施形態では、第2弁体154が中央部で摺動するガイド孔の有効径と弁孔152の有効径とが等しくされているため、第2弁体154に作用する中間圧力Ppの影響はキャンセルされる。すなわち、第2弁体154は、その前後差圧(P2−P3)を感知して動作するようになる。
【0054】
通路形成部材124は二重管構造を有し、その内方には過冷却度制御弁46が配設されている。過冷却度制御弁46は、上流側から導入された冷媒を絞り膨張する弁部と、その弁部を開閉駆動するパワーエレメント160を備えている。過冷却度制御弁46は、プレス成形されたボディ162に弁体164を収容して構成される。ボディ162の下端部には、パワーエレメント160が一体に設けられている。ボディ162は、通路形成部材124の内管部に嵌合するようにして支持されている。ボディ162の上半部は縮径されており、その縮径部に弁孔166が形成されている。ボディ162の下半部には内外を連通させる入口ポートが設けられ、上半部には内外を連通させる出口ポートが設けられている。ボディ162の上端部はばね受けにより封止されて背圧室168が形成されている。そのばね受けと弁体164との間には、弁体164を開弁方向に付勢するスプリング170が介装されている。弁体164は、弁孔166の上流側から接離して弁部を開閉する。
【0055】
パワーエレメント160は、通路形成部材124と封止部材106とに囲まれた圧力室172に配置されている。圧力室172は、通路形成部材124の外管部に形成された連通路174を介して中間圧力室64に連通している。したがって、圧力室172にも中間圧力Ppが導入される。上流側から連通路174に導かれた冷媒は、過冷却度制御弁46の入口ポートに導かれる。弁孔166の下流側は低圧室68となっている。
【0056】
パワーエレメント160は、中空のハウジングと、ハウジング内を密閉空間と開放空間とに仕切るように配設されたダイアフラム176とを含んで構成されている。密閉空間には、基準ガスとして冷凍サイクルを循環する冷媒と類似する圧力−温度特性を有するガスと窒素ガスとの混合ガスが充填されている。また、弁体164を軸線方向に貫通するように連通路178が形成されており、入口ポートから導入された冷媒は、その連通路178を介して背圧室168にも導かれるようになっている。本実施形態では、弁体164の背圧室168における有効径と弁孔166の有効径とが等しくされているため、弁体164に作用する中間圧力Ppの影響はキャンセルされる。
【0057】
過冷却度制御弁46によれば、上流側の過冷却度の制御状態において過冷却度が設定値SCよりも大きくなると、パワーエレメント160が低温を感知して開弁方向に動作する。その結果、弁開度が大きくなるため中間圧力Ppが低くなり、過冷却度が小さくなる方向に変化する。逆に、過冷却度が設定値SCよりも小さくなると、パワーエレメント160が高温を感知して閉弁方向に動作する。その結果、弁開度が小さくなるため中間圧力Ppが高くなり、過冷却度が大きくなる方向に変化する。このようにして過冷却度が設定値SCに保たれるようになる。
【0058】
次に、制御弁ユニット6の動作について説明する。図4〜図6は、制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。図4は冷房運転時および除湿運転時の動作状態を示し、図5は特定暖房運転時の動作状態を示し、図6は暖房運転時の動作状態を示している。なお、既に説明した図3は、車両用冷暖房装置1の起動前の状態を示している。
【0059】
車両用冷暖房装置1の起動前においては、室外熱交換器5の出口側で過冷却が生じていないため、図3に示すように、過冷却度制御弁46が閉弁状態となっている。また、第1弁42および第2弁44も閉弁状態とされる。このとき、差圧弁48は、その前後差圧(P2−P3)が発生しないため、閉弁状態となる。
【0060】
この状態から、例えば冷房運転のために車両用冷暖房装置1が起動されると、圧縮機2の動作により冷凍サイクル内に差圧が発生する。それにより、差圧弁48の前後差圧(P2−P3)がその開弁差圧よりも速やかに大きくなるため、図4に示すように、差圧弁48が開弁状態となる。このとき、当初は過冷却度制御弁46は閉弁状態となっているが、差圧弁48のオリフィス通路156が開放されるため、冷媒循環通路は確保される。そして、冷房運転状態や除湿運転状態が安定すると、室外熱交換器5の出口側に過冷却が生じるため、図示のように過冷却度制御弁46が開弁される。このとき、過冷却度制御弁46は、その上流側(つまり室外熱交換器5の下流側)の過冷却度が設定値SCとなるように自律的に弁開度を調整する。
【0061】
特定暖房運転時においては、図5に示すように、モータユニット104の駆動により第1弁42および第2弁44が開弁され、その開度が制御される。このとき、過冷却度制御弁46は、その上流側(つまり室内凝縮器3の下流側)の過冷却度が設定値SCとなるように自律的に弁開度を調整する。一方、差圧弁48は、その前後差圧(P2−P3)がその開弁差圧に満たないため、閉弁状態となる。
【0062】
暖房運転時においては、図6に示すように、モータユニット104の駆動により第1弁42および第2弁44が開弁され、その開度が制御される。このとき、過冷却度制御弁46は、第2弁44の開度が大きくなるにつれて閉弁方向に動作する。一方、差圧弁48は、その前後差圧(P2−P3)がその開弁差圧に満たないため、閉弁状態となる。
【0063】
なお、除霜運転時においては第1弁42および第2弁44が閉弁され、切替弁34の第1弁部が閉弁され第2弁部が開弁される。その結果、過冷却度制御弁46の上流側には過冷却が発生せず、差圧弁48の前後差圧(P2−P3)はほとんど発生しない。このため、過冷却度制御弁46および差圧弁48も閉弁状態となる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0065】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【0066】
上記実施形態においては、補助凝縮器として室内凝縮器を設ける例を示した。変形例においては、補助凝縮器を室外熱交換器とは別に設けられる熱交換器として構成してもよい。その熱交換器は、例えば車室外に配置され、エンジンの冷却水を利用して熱交換を行うものでもよい。具体的には、例えば図1における圧縮機2と切替弁32との間に熱交換器を設ける一方、ダクト10内に放熱器を配置し、これら熱交換器と放熱器とを冷却水の循環回路にて接続してもよい。その循環回路には冷却水を汲み上げるポンプを設けてもよい。このようにすれば、圧縮機2から切替弁32へ向かう高温の冷媒と、循環回路を循環する冷却水との間で熱交換を行うことができる。このような構成においても、圧縮機2から吐出された冷媒を熱交換器により凝縮させることが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用冷暖房装置、 2 圧縮機、 3 室内凝縮器、 5 室外熱交換器、 6 制御弁ユニット、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 42 第1弁、 44 第2弁、 46 過冷却度制御弁、 48 差圧弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる凝縮器と、
前記凝縮器から導出された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記凝縮器および前記蒸発器の少なくとも一方の下流側に設けられ、その弁部の上流側または下流側の冷媒の温度と圧力を感知して弁開度を調整する制御弁と、
前記制御弁が開閉する主通路を迂回するバイパス通路を内部に有し、その弁部の上流側と下流側との差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁して前記バイパス通路を開放する差圧弁と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御弁が、前記凝縮器と前記蒸発器との間に設けられ、前記凝縮器の出口側の過冷却度が設定値となるよう冷媒の流量を調整する過冷却度制御弁であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記差圧弁が、
上流側から冷媒を導入する入口ポートと、下流側へ冷媒を導出する出口ポートと、前記入口ポートと前記出口ポートとをつなぐ連通路と、前記連通路を開放または遮断するために開閉される弁部とを含むボディと、
前記ボディに支持されつつ前記弁部の開閉方向に動作する弁体と、
前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と、
前記弁体を貫通するように形成され、前記弁部の開閉方向に延びる前記バイパス通路としてのオリフィスと、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−121361(P2012−121361A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271446(P2010−271446)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】