説明

車両用走行支援装置

【課題】 記憶された道路データの精度の良否に関わらずに適切な走行支援を行えるようにする。
【解決手段】 自立自車位置取得手段M1が自車の車速およびヨーレートに基づいて自立自車位置を取得し、地図自車位置取得手段M2が自車の絶対位置を道路データにマップマッチングして地図自車位置を取得し、相対距離算出手段M3が算出した自立自車位置および地図自車位置の相対距離が作動閾値以下の場合に、走行支援手段M4が自車前方の道路形状および自車の車速に基づいて乗員への警告あるいは自車の走行制御を行う。遷移状態取得手段M5が自立自車位置に基づいて自車進行方位角の変化量および該変化量のばらつき度合いを取得し、作動閾値変更手段M6が前記変化量のばらつき度合いに基づいて前記作動閾値を変更するので、前記相対距離に応じた作動閾値を選択することが可能になり、乗員への警告あるいは自車の走行制御を道路データの精度に応じて的確に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立自車位置取得手段で取得した自立自車位置と、地図自車位置取得手段で取得した地図自車位置との相対距離が作動閾値以下の場合に、自車位置の前方の道路形状および車速に基づいて走行支援手段が乗員への警告あるいは自車の走行制御を行う車両用走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を目的地に経路誘導する指定道路の道路形状を道路地図データから予測し、自車が前方の指定道路のカーブを通過するのが困難である場合に警報や自動減速を行うものにおいて、自車が指定道路を正しく走行しているか否かを、自車の実際の進行方向の方位角θVと指定道路の方位角θMとの偏差Δθ(=θV−θM)に基づいて判定するとともに、自車が指定道路を外れて走行している可能性があると判定された場合には、前記警報や自動減速を中止あるいは抑制することにより、不適切な車両制御が実行されて運転者に違和感を与えるのを防止するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3548009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ナビゲーションシステムに記憶されている地図データの精度は、市街路に比べて山岳路では低くなるのが一般的である。このため、上記特許文献1に記載された発明のように、自車が指定道路を正しく走行しているか否かを、自車の実際の進行方向の方位角θVと指定道路の方位角θMとの偏差Δθに基づいて判定すると、山岳路では指定道路の方位角θMの精度が低いために偏差Δθが大きく算出されてしまい、自車が指定道路上を走行しているにも関わらずに警報や自動減速が中止あるいは抑制されてしまう可能性があった。
【0005】
このような不具合を解消すべく、警報や自動減速を中止あるいは抑制する偏差Δθの閾値を大きく設定すると、元の道路から分岐した並走道路を走行する場合に、誤った警報や自動減速が実行されてしまうという、新たな問題が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、記憶された道路データの精度の良否に関わらずに適切な走行支援を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、自車の車速を検出する車速検出手段と、自車のヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、前記車速および前記ヨーレートに基づいて自立自車位置を取得する自立自車位置取得手段と、自車の絶対位置を検出する絶対位置検出手段と、道路データを記憶する道路データ記憶手段と、前記絶対位置を前記道路データにマップマッチングして地図自車位置を取得する地図自車位置取得手段と、前記自立自車位置取得手段により取得された自立自車位置および前記地図自車位置取得手段により取得された地図自車位置の相対距離を算出する相対距離算出手段と、前記相対距離が作動閾値以下の場合に、前記道路データ記憶手段から読み出した自車前方の道路形状および前記車速検出手段で検出した車速に基づいて乗員への警告あるいは自車の走行制御を行う走行支援手段とを備える車両用走行支援装置において、前記自立自車位置に基づいて自車進行方位角の変化量を取得するとともに所定期間内における該変化量のばらつき度合いを取得する遷移状態取得手段と、前記変化量のばらつき度合いに基づいて前記作動閾値を変更する作動閾値変更手段とを備えることを特徴とする車両用走行支援装置が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記作動閾値変更手段は、予め定められた複数の作動閾値を設定するとともに、前記遷移状態取得手段により取得された前記変化量のばらつき度合いに基づいて、予め定められた複数の前記作動閾値の何れか一つを選択することを特徴とする車両用走行支援装置が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記自立自車位置取得手段は、所定走行距離毎あるいは所定時間毎に自車位置を取得し、前記遷移状態取得手段は、前記自立自車位置取得手段により前々回取得された自車位置および前回取得された自車位置からなる直線と、前回取得された自車位置および今回取得された自車位置からなる直線との交差角を自車進行方位角の変化量として、所定期間内における該変化量のばらつき度合いを取得することを特徴とする車両用走行支援装置が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記遷移状態取得手段は、前記地図自車位置から自車進行方位角の変化量を取得するとともに、所定期間内における該変化量のばらつき度合いを取得し、前記走行支援手段は、自立自車位置から取得された前記ばらつき度合いと地図自車位置から取得された前記ばらつき度合いとの差が所定値以上となる場合に、乗員への警告あるいは自車の走行制御の抑制を行うことを特徴とする車両用走行支援装置が提案される。
【0011】
尚、実施の形態の自立自車位置遷移角Acarおよび地図自車位置遷移角Amapは本発明の自車進行方位角の変化量に対応し、実施の形態の直線路距離閾値D1、郊外路距離閾値D2および山岳路距離閾値D3は本発明の作動閾値に対応し、実施の形態の自立自車位置遷移角の標準偏差σcarおよび地図自車位置遷移角の標準偏差σmapは本発明の変化量のばらつき度合いに対応する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、自立自車位置取得手段が自車の車速およびヨーレートに基づいて自立自車位置を取得し、地図自車位置取得手段が自車の絶対位置を道路データにマップマッチングして地図自車位置を取得し、相対距離算出手段が自立自車位置および地図自車位置の相対距離を算出し、その相対距離が作動閾値以下の場合に走行支援手段が自車前方の道路形状および自車の車速に基づいて乗員への警告あるいは自車の走行制御を行う。このとき、遷移状態取得手段が自立自車位置に基づいて自車進行方位角の変化量を取得するとともに所定期間内における該変化量のばらつき度合いを取得し、作動閾値変更手段が前記変化量のばらつき度合いに基づいて前記作動閾値を変更するので、自立自車位置および地図自車位置のずれ具合に応じた作動閾値を選択することが可能になり、乗員への警告あるいは自車の走行制御を道路データの精度に応じて的確に行うことができる。
【0013】
また請求項2の構成によれば、作動閾値変更手段は、予め定められた複数の作動閾値のうちの何れか一つを、遷移状態取得手段により取得された自車進行方位角の変化量のばらつき度合いに基づいて選択するので、自車が実際に走行する道路の曲がり具合に応じた適切な作動閾値を選択することができる。
【0014】
また請求項3の構成によれば、自立自車位置取得手段は所定走行距離毎あるいは所定時間毎に自車位置を取得し、遷移状態取得手段は前々回取得された自車位置および前回取得された自車位置からなる直線と、前回取得された自車位置および今回取得された自車位置からなる直線との交差角を自車進行方位角の変化量として所定期間内における該変化量のばらつき度合いを取得するので、高い精度で前記ばらつき度合いを算出することができる。
【0015】
また請求項4の構成によれば、遷移状態取得手段は地図自車位置から自車進行方位角の変化量を取得するとともに所定期間内における該変化量のばらつき度合いを取得し、走行支援手段は自立自車位置から取得されたばらつき度合いと地図自車位置から取得されたばらつき度合いとの差が所定値以上となる場合に、乗員への警告あるいは自車の走行制御の抑制を行うので、道路データには曲がりくねった旧道が記憶されている状態で、自車が前記旧道を貫く真っ直ぐな新道を走行するような場合に、旧道の道路形状に基づく不適切な車両制御が行われるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】車両用走行支援装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】記号の定義の説明図。
【図3】作用を説明するフローチャート。
【図4】作用を説明するタイムチャート(その1)。
【図5】作用を説明するタイムチャート(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図5に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1に示すように、車両用走行支援装置の電子制御ユニットUは、自立自車位置取得手段M1と、地図自車位置取得手段M2と、相対距離算出手段M3と、走行支援手段M4と、遷移状態取得手段M5と、作動閾値変更手段M6とを備える。自立自車位置取得手段M1には自車の車速を検出する車速検出手段Saと、自車のヨーレートを検出するヨーレート検出手段Sbとが接続され、地図自車位置取得手段M2にはGPS信号を用いて自車の絶対位置を検出する絶対位置検出手段Scと、地図の道路データを記憶する道路データ記憶手段DBとが接続される。また走行支援手段M4には運転者に警報を発する警報手段M7と、自車を自動制動したりステアリング反力制御したりする走行制御手段M8とが接続される。尚、絶対位置検出手段Sc、自立自車位置取得手段M1および地図自車位置取得手段M2は、既存のナビゲーションシステムに設けられているものを使用することができる。
【0019】
自立自車位置取得手段M1は、車速検出手段Saが検出した車速と、ヨーレート検出手段Sbが検出したヨーレートとに基づいて自立自車位置を取得する。一方、地図自車位置取得手段M2は、絶対位置検出手段ScがGPSシステムを用いて検出した自車の絶対位置を、道路データ記憶手段DBに記憶した道路データにマップマッチングすることで、地図上の自車位置である地図自車位置を取得する。尚、自立自車位置を取得および地図自車位置の取得は所定のサイクル時間毎に行われる。
【0020】
相対距離算出手段M3は、前記自立自車位置と前記地図自車位置との相対距離Dcmを、自車が25m走行する毎に500m分(20回分)算出する。
【0021】
走行支援手段M4は、道路データ記憶手段DBに記憶された自車前方の道路のカーブの曲率半径と、車速検出手段Saで検出した自車の車速とに基づき、現在の車速では自車前方の道路のカーブを曲がりきれないと判断した場合に、警報手段M7を作動させて運転者に自発的な減速を促す警報を発したり、走行制御手段M8を作動させて自車を自動減速したりステアリングホイールの操舵反力を制御したりすることで、自車がカーブを曲がりきれるようにアシストする。
【0022】
このとき、相対距離算出手段M3が取得した自立自車位置と地図自車位置との相対距離Dcmを所定の作動閾値D1,D2,D3と比較し、相対距離Dcmが所定の作動閾値D1,D2,D3以下の場合には、つまり自車が道路データ記憶手段DBに記憶された道路上を正しく走行していることが保証されている場合には、走行支援手段M4は警報手段M7および走行制御手段M8を通常どおり作動させる。一方、相対距離算出手段M3が取得した自立自車位置と地図自車位置との相対距離Dcmが所定の作動閾値D1,D2,D3を超えた場合には、つまり道路データ記憶手段DBに記憶された道路が新道の完成により廃止されていたり、マップマッチングが不適切に行われたりしたために、自車が道路データ記憶手段DBに記憶された道路と異なる道路を走行している場合には、遷移状態取得手段M5および作動閾値変更手段M6を用いて前記作動閾値D1,D2,D3を変更することで、警報手段M7および走行制御手段M8の不適切な作動を抑制する。
【0023】
以下、相対距離算出手段M3、遷移状態取得手段M5、作動閾値変更手段M6,走行支援手段M4の機能を詳細に説明する。
【0024】
図2に示すように、前々回サイクルおよび前回サイクルでは自立自車位置と地図自車位置とは一致しているが、今回サイクルでは自立自車位置と地図自車位置とが不一致になっった場合を考える。相対距離算出手段M3は、今回サイクルでの自立自車位置と今回サイクルでの地図自車位置との距離を、自車がサンプル取得距離Ds(=25m)走行する毎に相対距離Dcmとして算出する。
【0025】
また前々回サイクルおよび前回サイクルの自立自車位置(あるいは地図自車位置)を結ぶベクトルを基準ベクトルとし、前回サイクルおよび今回サイクルの自立自車位置を結ぶベクトルを自立自車位置遷移ベクトルとし、前回サイクルおよび今回サイクルの地図自車位置を結ぶベクトルを地図自車位置遷移ベクトルとする。そして基準ベクトルに対する自立自車位置遷移ベクトルの成す角度を自立自車位置遷移角Acarと定義し、基準ベクトルに対する地図自車位置遷移ベクトルの成す角度を地図自車位置遷移角Amapと定義する。
【0026】
遷移状態取得手段M5は、複数サイクル(実施の形態では20サイクル)の自立自車位置遷移角Acarのばらつき度合いである標準偏差σcarを、
σcar=sqrt{Σ(Acar2 )}/(Ns−1)
で算出し、複数サイクルの地図自車位置遷移角Amapのばらつき度合いである標準偏差σmapを、
σmap=sqrt{Σ(Amap2 )}/(Ns−1)
で算出する。ここでNsは自立自車位置遷移角Acarあるいは地図自車位置遷移角Amapの有効サンプル数(実施の形態ではNs=20)である。
【0027】
作動閾値変更手段M6は、複数サイクルの自立自車位置遷移角Acarのばらつき度合いである標準偏差σcarと、複数サイクルの地図自車位置遷移角Amapのばらつき度合いである標準偏差σmapとに基づいて、相対距離Dcmの前記三つの作動閾値D1,D2,D3の何れかを選択する。
【0028】
以下、上記作用を図3のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0029】
先ず、ステップS1で自立自車位置遷移角Acar、地図自車位置遷移角Amap、自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcarおよび地図自車位置遷移角Amapの標準偏差σmapを算出し、ステップS2で相対距離Dcmを算出する。続くステップS3で後述する新規道路の検出記録が無ければ、ステップS4で自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcarを直線路走行判定閾値σsおよび山岳路走行判定閾値σm(σs<σm)と比較する。その結果、自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcar<直線路走行判定閾値σsであるとき、つまり道路が直線路であるとき、ステップS5で相対距離Dcmが最も小さい直線路距離閾値D1以上であれば、自車が案内されている道路から外れている可能性が高いと判断し、ステップS6で警報手段M7および走行制御手段M8の作動を停止する。
【0030】
前記ステップS5で相対距離Dcmが最も小さい直線路距離閾値D1未満であれば、自車が案内されている道路に乗っている可能性が高いと判断し、ステップS7で地図自車位置遷移角Amapの標準偏差σmapを山岳路走行判定閾値σmと比較する。その結果、地図自車位置遷移角Amapの標準偏差σmap<山岳路走行判定閾値σmであれば、自立自車位置の遷移状態も地図自車位置の遷移状態も直線路を示していると判断し、ステップS8で警報手段M7および走行制御手段M8の作動を許可する。一方、前記ステップS7で地図自車位置遷移角Amapの標準偏差σmap≧山岳路走行判定閾値σmであれば、自立自車位置の遷移状態は直線路を示しているにも関わらず、地図自車位置の遷移状態は山岳路を示していることになり、ステップS9で自車は道路データに無い新規道路を走行中であると判断して新規道路の検出を記録し、ステップS10で警報手段M7および走行制御手段M8の作動を停止する。
【0031】
前記ステップS4で直線路走行判定閾値σs≦自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcar<山岳路走行判定閾値σmであるとき、つまり道路が郊外路であるとき、ステップS11で相対距離Dcmが二番目に小さい郊外路距離閾値D2未満であれば、自車が案内されている道路に乗っている可能性が高いと判断し、ステップS12で警報手段M7および走行制御手段M8の作動を許可する。一方、前記ステップS11で相対距離Dcmが二番目に小さい郊外路距離閾値D2以上であれば、自車が案内されている道路から外れている能性が高いと判断し、ステップS13で警報手段M7および走行制御手段M8の作動を停止する。
【0032】
前記ステップS4で自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcar≧山岳路走行判定閾値σmであるとき、つまり道路が山岳路であるとき、ステップS14で相対距離Dcmが最も大きい山岳路距離閾値D3未満であれば、自車が案内されている道路に乗っている可能性が高いと判断し、ステップS15で警報手段M7および走行制御手段M8の作動を許可する。一方、前記ステップS14で相対距離Dcmが最も大きい山岳路距離閾値D3以上であれば、自車が案内されている道路から外れている可能性が高いと判断し、ステップS16で警報手段M7および走行制御手段M8の作動を停止する。
【0033】
前記ステップS3で新規道路の検出記録が有って警報手段M7および走行制御手段M8の作動を停止しているとき、ステップS17で自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcarと地図自車位置遷移角Amapの標準偏差σmapとが同一路線モードであれば、つまり自車が案内されている道路上を走行していれば、ステップS18で新規道路検出の記録を削除し、同一路線モードでなければ、ステップS19で引き続き警報手段M7および走行制御手段M8の作動を停止する。
【0034】
次に、図4に基づいて、上記フローチャートで説明した制御の一例として、自車が案内されている道路から小さい分岐角で分岐して緩やかに離れていく道路に誤って進入した場合を考える。
【0035】
この場合、自車は直線路を走行していて自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcarはほぼ0であるため、ステップS4で自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcar<直線路走行判定閾値σsが成立し、自車は直線路を走行していると判定される。時刻t1までは、ステップS5で相対距離Dcm<直線路距離閾値D1であり、かつステップS7で地図自車位置遷移角Amapの標準偏差σmap<山岳路走行判定閾値σmであるため、ステップS8で警報手段M7および走行制御手段M8の作動は許可されるが、直線路距離閾値D1は小さい値であるため、時刻t1において、ステップS5で直ちに相対距離Dcm≧直線路距離閾値D1となり、警報手段M7および走行制御手段M8の作動が停止される。
【0036】
以上のように、自車が直線路を走行しているときに、自車が案内されている道路から外れた場合、相対距離Dcmが最も小さい直線路距離閾値D1以上になると直ちに警報手段M7および走行制御手段M8の作動が停止されるので、警報手段M7および走行制御手段M8の誤作動を効果的に防止することができる。特に、このような挟角分岐路は直線路に設けられている場合が多いので、高い確率で有効な制御を行うことができる。
【0037】
次に、図5に基づいて、上記フローチャートで説明した制御の一例として、地図上では曲がりくねった旧道(山岳路)を走行しているのに、実際には前記旧道を貫抜く直線路である新道を走行している場合を考える。
【0038】
この場合、自車は直線路である新道を走行していて自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcarはほぼ0であるため、ステップS4で自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcar<直線路走行判定閾値σsが成立し、自車は直線路を走行していると判定される。続くステップS5で相対距離Dcm<直線路距離閾値D1であり、時刻t1になるまでは、ステップS7で地図自車位置遷移角Amapの標準偏差σmap<山岳走行判定閾値σmが成立するため、ステップS8で警報手段M7および走行制御手段M8の作動は許可される。時刻t1になると、ステップS7で地図自車位置遷移角Amapの標準偏差σmap≧山岳走行判定閾値σmが成立するため、ステップS9で新規道路(直線路よりなる新道)が検出されたと判定され、ステップS10で旧道の道路形状に基づく警報手段M7および走行制御手段M8の作動が停止される。
【0039】
時刻t2から時刻t3まで旧道に新道が重なっていても、警報手段M7および走行制御手段M8の作動は直ちに許可されることはなく、ステップS17で自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcarと地図自車位置遷移角Amapの標準偏差σmapとが同一路線モードであると判定されるまで、つまり自立自車位置遷移角Acarおよび地図自車位置遷移角Amapが所定時間に亙って一致するまで、ステップS19で警報手段M7および走行制御手段M8の作動停止が継続される。
【0040】
以上のように、自車が直線路を走行していて自立自車位置遷移角Acarの標準偏差σcar<直線路走行判定閾値σsが成立しても、自車が山岳路の旧道を貫く直線路の新道を走行していると判定された場合には警報手段M7および走行制御手段M8の作動が禁止されるので、警報手段M7および走行制御手段M8の誤作動を効果的に防止することができる。しかも旧道の一部が新道に重なっていても、警報手段M7および走行制御手段M8の作動禁止が直ちに解除されることがないので利便性が向上する。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0042】
例えば、実施の形態では自車進行方位角の変化量のばらつき度合いとして標準偏差σcar,σmapを用いているが、その代わりに分散を用いても良い。
【0043】
また実施の形態では自立自車位置と地図自車位置との相対距離Dcmを所定の走行距離毎に算出しているが、それを所定の走行時間毎に算出しても良い。
【符号の説明】
【0044】
Acar 自立自車位置遷移角(自車進行方位角の変化量)
Amap 地図自車位置遷移角(自車進行方位角の変化量)
D1 直線路距離閾値(作動閾値)
D2 郊外路距離閾値(作動閾値)
D3 山岳路距離閾値(作動閾値)
DB 道路データ記憶手段
Dcm 自立自車位置と地図自車位置との相対距離
M1 自立自車位置取得手段
M2 地図自車位置取得手段
M3 相対距離算出手段
M4 走行支援手段
M5 遷移状態取得手段
M6 作動閾値変更手段
Sa 車速検出手段
Sb ヨーレート検出手段
Sc 絶対位置検出手段
σcar 自立自車位置遷移角の標準偏差(変化量のばらつき度合い)
σmap 地図自車位置遷移角の標準偏差(変化量のばらつき度合い)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の車速を検出する車速検出手段(Sa)と、
自車のヨーレートを検出するヨーレート検出手段(Sb)と、
前記車速および前記ヨーレートに基づいて自立自車位置を取得する自立自車位置取得手段(M1)と、
自車の絶対位置を検出する絶対位置検出手段(Sc)と、
道路データを記憶する道路データ記憶手段(DB)と、
前記絶対位置を前記道路データにマップマッチングして地図自車位置を取得する地図自車位置取得手段(M2)と、
前記自立自車位置取得手段(M1)により取得された自立自車位置および前記地図自車位置取得手段(M2)により取得された地図自車位置の相対距離(Dcm)を算出する相対距離算出手段(M3)と、
前記相対距離(Dcm)が作動閾値(D1,D2,D3)以下の場合に、前記道路データ記憶手段(DB)から読み出した自車前方の道路形状および前記車速検出手段(Sa)で検出した車速に基づいて乗員への警告あるいは自車の走行制御を行う走行支援手段(M4)とを備える車両用走行支援装置において、
前記自立自車位置に基づいて自車進行方位角の変化量(Acar)を取得するとともに所定期間内における該変化量(Acar)のばらつき度合い(σcar)を取得する遷移状態取得手段(M5)と、
前記変化量(Acar)のばらつき度合い(σcar)に基づいて前記作動閾値(D1,D2,D3)を変更する作動閾値変更手段(M6)とを備えることを特徴とする車両用走行支援装置。
【請求項2】
前記作動閾値変更手段(M6)は、
予め定められた複数の作動閾値(D1,D2,D3)を設定するとともに、前記遷移状態取得手段(M5)により取得された前記変化量(Acar)のばらつき度合い(σcar)に基づいて、予め定められた複数の前記作動閾値(D1,D2,D3)の何れか一つを選択することを特徴とする、請求項1に記載の車両用走行支援装置。
【請求項3】
前記自立自車位置取得手段(M1)は、所定走行距離毎あるいは所定時間毎に自車位置を取得し、
前記遷移状態取得手段(M5)は、前記自立自車位置取得手段(M1)により前々回取得された自車位置および前回取得された自車位置からなる直線と、前回取得された自車位置および今回取得された自車位置からなる直線との交差角を自車進行方位角の変化量(Acar)として、所定期間内における該変化量(Acar)のばらつき度合い(σcar)を取得することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用走行支援装置。
【請求項4】
前記遷移状態取得手段(M5)は、前記地図自車位置から自車進行方位角の変化量(Amap)を取得するとともに、所定期間内における該変化量(Amap)のばらつき度合い(σmap)を取得し、
前記走行支援手段(M4)は、自立自車位置から取得された前記ばらつき度合い(σcar)と地図自車位置から取得された前記ばらつき度合い(σmap)との差が所定値以上となる場合に、乗員への警告あるいは自車の走行制御の抑制を行うことを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−262599(P2010−262599A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114890(P2009−114890)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】