説明

車両用駆動装置

【課題】アキュムレータから複数の油圧サーボに速やかに油圧を供給すことができ、オイルポンプ再駆動時に車両をスムーズに発進させることができる車両用駆動装置を提供すること。
【解決手段】無段変速機30に備わる油圧回路50において、アキュムレータ56とオイルポンプ51との間を接続する油路60,61,63,63bを配し、油路63bに、オイルポンプ51からアキュムレータ56への方向にのみオイルを流す一方向弁71を設ける。前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32に油路65,70を介して三方向チェックバルブ75,76をそれぞれ接続し、バルブ75,76の残りの2つのポートに、アキュムレータ56に接続する油路64,69と、オイルポンプ51に接続する油路63a,68とをそれぞれ接続する。そして、三方向チェックバルブ75,76により、油路64と63a,69と68のうち油圧が高い方を、油路65,70に連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン再始動時に油圧サーボに対して油圧を迅速に供給して、例えば、車両発進を可能とする摩擦係合要素を速やかに係合させることができる車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料の節約、排気エミッションの低減、あるいは騒音の低減等を図るために、走行中において所定の条件が成立したときにエンジンを自動停止させる機能(アイドリングストップ機能)を備える車両が実用化されている。このような車両では、例えば車速ゼロ、アクセルオフ、ブレーキオン等の条件がすべて成立すると、エンジンが停止されるようになっている。
【0003】
ここで、エンジンが停止すると、一般にエンジンと連結されているオイルポンプも停止する。このため、例えば、前進走行時に係合されるべき前進用クラッチ(油圧サーボ)に供給されているオイルも油路から抜けてしまい、前進用クラッチはその係合状態が解かれてしまった状態となってしまう。
【0004】
そして、運転者がアクセルペダルを踏んだ場合など、所定の再始動条件が成立すると停止したエンジンが再始動され、オイルポンプも再始動する。このとき、エンジンの再始動とともに前進用クラッチが速やかに係合されないと、エンジンが吹き上がった状態で前進用クラッチが係合してしまって係合ショックが発生してしまう。
【0005】
そこで、このような係合ショックを発生させないようにするための技術が種々提案されている。そのうちの1つとして、例えば、自動変速機の前進用クラッチと、前進用クラッチに油圧を供給するために油圧を発生させるオイルポンプとを結ぶ油路に、油圧を蓄圧可能なアキュムレータを分岐・設置しているものがある(特許文献1)。そして、エンジン再始動時に、アキュムレータに蓄えられた油圧を前進用クラッチへ供給することにより、係合ショックの発生を防止してエンジンの再始動性を向上させている。
【特許文献1】特開2000−313252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1記載の技術では、エンジン再始動時にアキュムレータに蓄えられた油圧を前進用クラッチ(油圧サーボ)へ短時間にて効率よく供給することができないという問題があった。なぜなら、アキュムレータに蓄えられた油圧を前進用クラッチ(油圧サーボ)に供給する際、その油圧が前進用クラッチ(油圧サーボ)にのみ供給されずに、プライマリレギュレータバルブにも供給されてしまい、そこから油圧が漏れてしまうからである。
【0007】
ここで、エンジン再始動時(オイルポンプ再駆動時)に、前進用クラッチの他に、無段変速機に備わるプーリや有段自動変速機に備わる所定のクラッチを速やかに係合させなければ、車両のスムーズな発進ができないおそれがある。なぜなら、無段変速機の場合であれば発進時にベルトの滑りが発生するおそれがあり、有段自動変速機の場合であれば係合遅れにより発進時にショックが発生するおそれがあるからである。しかしながら、上記した特許文献1記載の技術では、前進用クラッチと他の油圧サーボ(つまり、複数の油圧サーボ)に、アキュムレータから油圧を供給することができない。このため、エンジン再始動時(オイルポンプ再駆動時)に、車両をスムーズに発進させることができないおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、アキュムレータから複数の油圧サーボに速やかに油圧を供給すことができ、オイルポンプ再駆動時に車両をスムーズに発進させることができる車両用駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る車両用駆動装置は、油圧を発生させるオイルポンプと、前記オイルポンプにより発生させた油圧を調圧する調圧弁と、油圧により制御される複数の油圧サーボと、前記オイルポンプにより発生させた油圧を蓄えるアキュムレータとを備え、前記調圧弁あるいは前記アキュムレータのいずれか一方から前記油圧サーボに油圧を供給する油圧回路を有する車両用駆動装置において、前記アキュムレータと前記オイルポンプとの間を接続する蓄圧用油路を有し、前記蓄圧用油路には、前記オイルポンプから前記アキュムレータへの方向にのみオイルを流す一方向弁が設けられ、前記各油圧サーボに油圧を供給する各油路には、三方向チェックバルブがそれぞれ配置され、前記各三方向チェックバルブのうちの1つのポートは前記各油圧サーボと接続する油路に接続され、残りの2つのポートは前記アキュムレータに接続する油路と、前記調圧弁に接続する油路とにそれぞれ接続されており、前記各三方向チェックバルブは、前記残りの2つのポートに接続されている各油路のうち油圧が高い方を、前記各油圧サーボと接続する油路に連通させることを特徴とする。
【0010】
この車両用駆動装置では、オイルポンプで発生した油圧は、蓄圧用油路を介してアキュムレータに蓄えられるとともに、三方向チェックバルブを介して各油圧サーボに供給される。なぜなら、オイルポンプが駆動している通常時では、三方向チェックバルブの残りの2つのポートに接続されている油路において、アキュムレータ側油路の油圧が調圧弁側油路の油圧より低い。このため、各三方向チェックバルブが各油圧サーボと接続する各油路に調圧弁側油路を連通させるからである。
【0011】
そして、オイルポンプが停止すると、三方向チェックバルブの残りの2つのポートに接続されている油路において、調圧弁側油路の油圧が低下していく。このとき、調圧弁側油路の油圧がアキュムレータ側油路の油圧よりも低くなると、各三方向チェックバルブが各油圧サーボと接続する各油路にアキュムレータ側油路を連通させる。これにより、オイルポンプが停止すると、アキュムレータから各油圧サーボに油圧が供給されるため、オイルポンプ再駆動時に各油圧サーボへの油圧供給の遅れが生じることがない。つまり、オイルポンプ再駆動時には、アキュムレータから各油圧サーボに速やかに油圧が供給されている。従って、オイルポンプ再駆動時に車両をスムーズに発進させることができる。
【0012】
本発明に係る車両用駆動装置においては、前記各三方向チェックバルブと前記アキュムレータとを接続する油路の遮断・連通状態を切り換え、前記オイルポンプの駆動開始時に所定時間のみ連通状態とされる切換弁を有することが望ましい。
【0013】
このような構成により、オイルポンプの駆動開始時を除き、切換弁は遮断状態とされているため、オイルポンプが停止しても、再度オイルポンプが駆動開始されるまでは、アキュムレータから各油圧サーボに油圧が供給されなくなる。そして、再度オイルポンプが駆動開始されると、所定時間のみ切換弁が連通状態とされるため、アキュムレータから各油圧サーボに油圧が供給される。なお、所定時間としては、オイルポンプが駆動されオイルポンプから各油圧サーボに油圧が供給されるまでの時間を設定すればよい。
【0014】
その後、オイルポンプで発生した油圧が調圧弁を介して各三方向チェックバルブに供給されると、各三方向チェックバルブにおいて調圧弁側油路の油圧がアキュムレータ側油路の油圧よりも高くなる。このため、各三方向チェックバルブが各油圧サーボと接続する各油路に調圧弁側油路を連通させ、オイルポンプで発生した油圧が各油圧サーボに供給される。
【0015】
従って、油圧サーボに油圧が必要とされるときにだけ、オイルポンプ又はアキュムレータから各油圧サーボに油圧を速やかに供給することができる。特に、オイルポンプからの油圧の供給遅れが生じるオイルポンプの駆動開始時に、アキュムレータからの油圧を各油圧サーボに速やかに供給することができる。これにより、オイルポンプ再駆動時に車両をスムーズに発進させることができる。
【0016】
そして、アキュムレータからの各油圧サーボへの油圧供給は、オイルポンプが駆動されオイルポンプから各油圧サーボに油圧が供給されるまでの間(つまり、切換弁が連通状態にされている所定時間)だけ行われれば良い。これにより、アキュムレータの容量を小さくすることができる。
【0017】
本発明に係る車両用駆動装置においては、前記切換弁は、遮断状態にて前記切換弁と前記各三方向チェックバルブとの間に溜まっているオイルを回路外に排出するドレンを備えていることが望ましい。
【0018】
このような構成により、切換弁が遮断状態にされている状態では、切換弁と各三方向チェックバルブとの間の残圧を抜くことができる。これにより、各三方向チェックバルブにおいて、調圧弁側油路とアキュムレータ側油路との差圧を確保する(調圧弁側油路を高くする)ことができる。その結果、オイルポンプから各油圧サーボに油圧を供給する際に、調圧弁により調圧された油圧を安定して供給することができる。
【0019】
また、切換弁を設ける場合には、オイルポンプの駆動開始後にオイルポンプで発生させた油圧を、各三方向チェックバルブを介して各油圧サーボに確実に供給することができる。従って、アキュムレータから油圧を油圧サーボに供給した後、オイルポンプで発生させた油圧を、各油圧サーボに速やかに(高速に)供給することができる。
【0020】
本発明に係る車両用駆動装置においては、前記蓄圧用油路には、前記調圧弁と前記一方向弁との間に絞り弁が設けられていることが望ましい。
【0021】
オイルポンプが駆動されてオイルポンプにより油圧が供給されると、その油圧が各油圧サーボの他アキュムレータにも供給されるが、蓄圧用油路に絞り弁が設けられているため、アキュムレータにはゆっくりと(低速にて)油圧が蓄えられていく。このため、オイルポンプにより発生させた油圧のほとんどを、各油圧サーボに供給することができる。従って、オイルポンプの駆動開始時に、アキュムレータに蓄えられていた油圧が低下した状態であっても、オイルポンプにより発生させた油圧が、アキュムレータの蓄圧に多く使用されることがない。よって、オイルポンプの駆動開始後にオイルポンプにより発生させた油圧を、各油圧サーボに速やかに(高速に)供給することができる。これにより、アキュムレータに要求される容量をさらに小さくすることができる。
【0022】
本発明に係る車両用駆動装置においては、前記複数の油圧サーボには、プーリ式無段変速機に備わる少なくとも1つのプーリと、車両発進時に係合される摩擦係合要素とが含まれていることが望ましい。
【0023】
このように、プーリ式無段変速機を備える車両駆動装置に対して本発明を適用することにより、オイルポンプ駆動開始時において車両発進の際に作動する油圧サーボに、アキュムレータから速やかに油圧を供給することができる。その結果、プーリ式無段変速機を備える車両をスムーズに発進させることができる。
【0024】
ここで、プーリ式無段変速機に備わる少なくとも1つのプーリとしては、セカンダリプーリが好ましい。なぜなら、オイルポンプ駆動開始時においては、プライマリプーリにはほとんど油圧が作用していなくても良い状態であり、セカンダリプーリは油圧が作用している必要がある。このため、セカンダリプーリにアキュムレータから速やかに油圧を供給することにより、ベルトの滑りを確実に防止することができ、車両をよりスムーズに発進させることができるからである。
【0025】
あるいは、本発明に係る車両用駆動装置においては、前記複数の油圧サーボには、有段自動変速機に備わる少なくとも1つの摩擦係合要素と、車両発進時に係合される摩擦係合要素とが含まれていてもよい。
【0026】
このように、有段自動変速機を備える車両駆動装置に対して本発明を適用することにより、オイルポンプ駆動開始時において車両発進の際に作動する油圧サーボに、アキュムレータから速やかに油圧を供給することができる。その結果、有段自動変速機を備える車両をスムーズに発進させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る車両用駆動装置によれば、上記した通り、オイルポンプ再駆動時にアキュムレータから複数の油圧サーボに油圧を供給すことができる。その結果、オイルポンプ再駆動時においても、車両をスムーズに発進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の車両用駆動装置を具体化した最も好適な実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態について説明する。第1の実施の形態は、本発明を無段変速機(CVT)を備える車両駆動システムに適用したものである。そこで、第1の実施の形態に係る車両駆動システムについて、図1を参照しながら説明する。図1は、第1の実施の形態に係る車両駆動システムの概略構成を示す構成図である。
【0030】
第1の実施の形態に係る駆動システムには、図1に示すように、エンジン10と、無段変速機30と、システムを統括的に制御する制御部40と、エンジン10、無段変速機30、及び車両の状態などを検出するための各種センサとが備わっている。
エンジン10には、インジェクタ11、スタータ12、イグナイタ13が設けられている。そして、エンジン10の出力軸に、無段変速機30が接続されている。
【0031】
エンジン10の各気筒には、インテークマニホールド15およびエキゾーストマニホールド16が接続されている。そして、インテークマニホールド15には、アクセルペダルと連動したスロットルバルブ17が設けられている。スロットルバルブ17には、その開度を検出するスロットル位置センサ17aと、全閉状態を検出するアイドルスイッチ17bとが設けられている。また、インジェクタ11は、燃料リレー21を介して、スタータ12はスタータリレー22を介して、イグナイタ13は点火リレー23を介してそれぞれ制御部40に接続されている。
【0032】
無段変速機30は、公知のプーリ式無段変速機である。この無段変速機30は、エンジン10の出力が図示しないトルクコンバータ、前後進切替クラッチ等を介して入力される入力軸を備えており、入力軸に後述するプライマリプーリ31が設けられている。プライマリプーリ31は、それぞれ入力軸に同軸的かつ一体回転可能に設けられた固定シーブと可動シーブとで構成されている。可動シーブは、固定シーブが入力軸に対し固定されているのに対し、入力軸の軸線方向に変位可能とされている。固定シーブと可動シーブとの対向面は、それぞれ円錐面とされており、プライマリプーリ31に巻き掛けられるVベルトを挟み込むようになっている。
【0033】
また、無段変速機30は、入力軸と平行に配置された出力軸を備えており、出力軸に後述するセカンダリプーリ32が設けられている。セカンダリプーリ32も、プライマリプーリ31と同様の構成をなしており、セカンダリプーリ32に巻き掛けられるVベルトを挟み込むようになっている。
【0034】
このように無段変速機30では、プライマリプーリ31及びセカンダリプーリ32に、Vベルトが巻き掛けられており、Vベルトを介して入力軸から出力軸に動力が伝達されるようになっている。そして、それぞれのプーリにおいて可動シーブの固定シーブに対する位置を、後述する油圧回路50により制御される油圧によって保持または変更することにより、Vベルトのプライマリプーリ31への巻き掛け半径と、Vベルトのセカンダリプーリ32への巻き掛け半径とを維持又は変更して、入力軸と出力軸との回転速度比すなわち減速比を維持又は変更するようになっている。
【0035】
さらに、無段変速機30には、運転者の操作により設定されたシフトポジション(レンジ)を検知するシフトポジションスイッチ35と、推進軸に連結される無段変速機30の出力軸の回転速度に基づき車速を検出する車速センサ36とが設けられている。また、無段変速機30には、変速機内のオイルの温度を検出する油温センサ37が設けられている。
【0036】
制御部40は、各種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、及び演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAMなどを備えている。なお、後述するエンジン停止処理やエンジン再始動処のプログラムは、制御部40内のROMに予め書き込まれている。
【0037】
この制御部40には、イグナイタ13の点火一次コイル13a、クランクポジションセンサ14、スロットル位置センサ17a、アイドルスイッチ17b、イグニッションスイッチ18、シフトポジションスイッチ35、車速センサ36、CVT油温センサ37、Gセンサ19a、水温センサ19b、バッテリ電圧センサ19c、ブレーキペダルスイッチ19d、ブレーキマスタシリンダ圧センサ19e、吸気温センサ19f、吸入空気量センサ19g等が接続されている。また、制御部40には、後述するように無段変速機30に設けられた電磁切換弁55が接続されている。そして、制御部40では、各種スイッチ及びセンサからの信号に基づいて各種演算を実行し、点火カット及び点火信号、燃料カット及び燃料噴射信号、スタータ駆動信号、電磁切換弁55の駆動信号などを出力するようになっている。
【0038】
ここで、無段変速機30に備わる油圧回路50について、図2を参照しながら説明する。図2は、無段変速機に備わる油圧回路を示す図である。図2に示すように、油圧回路50には、オイルポンプ51と、ライン圧レギュレータバルブ52と、クラッチ圧制御バルブ53と、マニュアルバルブ54と、電磁切換弁55と、アキュムレータ56と、シフトコントロールバルブ57とが備わっている。そして、このような油圧回路50が、油圧サーボ、すなわち前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、及びプライマリプーリ31とセカンダリプーリ32に接続されている。
【0039】
オイルポンプ51は、無段変速機30全体の油圧源となり、エンジン10の駆動力により油圧を発生するものである。ライン圧レギュレータバルブ52は、オイルポンプ51で発生した油圧をプライマリプーリ31及びセカンダリプーリ32のプーリ位置を制御するために所定圧に制御するものである。クラッチ圧制御バルブ53は、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1を作動させるために所定圧に制御するものである。マニュアルバルブ54は、運転者のシフトポジション操作に連動して油路を切り換えるものである。アキュムレータ56は、オイルポンプ51で発生してクラッチ圧制御バルブ53により調圧された油圧を一時的に蓄えるものである。
【0040】
この油圧回路50においては、オイルポンプ51とライン圧レギュレータバルブ52とが、油路60によって接続されている。そして、ライン圧レギュレータバルブ52とクラッチ圧制御バルブ53とが、油路61によって接続されている。ここで、油路61には、シフトコントロールバルブ57を介してプライマリプーリ31に接続する油路67が接続されている。そして、油路67には油路68が接続されている。油路68は、セカンダリプーリ32に油路70を介して接続されている三方向チェックバルブ76に接続する油路である。これにより、プライマリプーリ31及びセカンダリプーリ32に、オイルポンプ51から油路67,68,70を介して油圧が供給されるようになっている。
【0041】
また、クラッチ圧制御バルブ53には油路63が接続されている。この油路63の途中にマニュアルバルブ54が設けられている。そして、マニュアルバルブ54と前進用クラッチC1とが、油路63,63a、三方向チェックバルブ75、及び油路65を介して接続されている。また、マニュアルバルブ54と後進用ブレーキB1とが、油路66によって接続されている。これにより、マニュアルバルブ54がDポジション(レンジ)に設定されている場合には、油路63が連通し、油路66とドレンEX1とが接続されるようになっている。また、マニュアルバルブ54がRポジションに設定されている場合には、油路63のクラッチ圧制御バルブ53側と油路66とが連通し、後述する油路63の分岐部側とドレンEX1とが接続されるようになっている。さらに、マニュアルバルブ54がN,Pポジションに設定されている場合には、油路63が遮断され、油路63の分岐部側及び油路66とドレンEX1とが接続されるようになっている。これにより、マニュアルバルブ54によって、前進用クラッチC1に油圧が不要となるポジション(Dポジション以外)のときには、前進用クラッチC1に作用している油圧がドレンEX1から抜け、後進用ブレーキB1に油圧が不要となるポジション(Rポジション以外)のときには、後進用ブレーキB1に作用している油圧がドレンEX1から抜けるようになっている。
【0042】
ここで、油路63は、油路63aと油路63bとに分岐部にて分岐している。そして、油路63aは、三方向チェックバルブ75に接続されている。一方、油路63bは電磁切換弁55に接続され、電磁切換弁55は、油路64により三方向チェックバルブ75に接続されている。つまり、三方向チェックバルブ75の3つのポートのうち1つが油路65に接続され、残りの2つのポートに油路(調圧弁側油路)63aと油路(アキュムレータ側油路)64とがそれぞれ接続されている。この三方向チェックバルブ75は、油路63aと油路64のうち油圧が高い方と油路65とを連通させるようになっている。具体的には、油路63aの油圧が油路64の油圧よりも高い場合(オイルポンプ51が駆動されている場合)には、三方向チェックバルブ75により、油路65と油路63aとが連通状態とされ、油路65と油路64とは遮断状態とされる。逆に、油路63aの油圧が油路64の油圧よりも低い場合(オイルポンプ51が停止中で電磁切換弁55が連通(ON)状態の場合)には、三方向チェックバルブ75により、油路65と油路63aとは遮断状態とされ、油路65と油路64とが連通状態とされる。
【0043】
そして、油路63bには、油路63aとの分岐部から順に、オリフィス74、一方向弁71、アキュムレータ56が設けられている。一方向弁71は、油路63aと油路63bとの分岐部からアキュムレータ56への方向にのみオイルを流すように構成されている。これにより、アキュムレータ56に油圧が蓄えられるときには、オイルポンプ51から油路60,61,63,63bを介してオイルが供給される。つまり、本実施の形態では、油路60,61,63,63bにより蓄圧用油路が構成されている。そして、アキュムレータ56から油圧を供給するときには、オイルが油路63bから油路63に漏れないようになっている。
【0044】
電磁切換弁55は、制御部40によってオンオフ制御され、オイルポンプ51が駆動開始されるときに所定時間だけオン状態とされ、それ以外ではオフ状態とされている。つまり、油路63bと油路64との連通・遮断は、電磁切換弁55のオンオフにより切り換えられるようになっている。なお、本実施の形態では、電磁切換弁55をオン状態にしている所定時間として、オイルポンプ51が駆動開始されてからオイルポンプ51の油圧が、前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32に供給されるまでの時間が設定されている。
【0045】
また、電磁切換弁55には、回路外へオイルを排出するドレンEX2が設けられている。このドレンEX2は、電磁切換弁55がオフ状態、つまり油路63bと油路64とが遮断されている状態において、油路64に接続されるようになっている。これにより、油路63bと油路64とが遮断されている状態では、電磁切換弁55と三方向チェックバルブ75との間(油路64内)の残圧を抜くことができるようになっている。
【0046】
また、油路64には、三方向チェックバルブ76に接続する油路69が接続されている。この三方向チェックバルブ76の3つのポートのうち1つが油路70に接続され、残りの2つのポートに油路(調圧弁側油路)68と油路(アキュムレータ側油路)69とがそれぞれ接続されている。この三方向チェックバルブ76は、油路68と油路69のうち油圧が高い方と油路70とを連通させるようになっている。具体的には、油路68の油圧が油路69の油圧よりも高い場合(オイルポンプ51が駆動されている場合)には、三方向チェックバルブ76により、油路70と油路68とが連通状態とされ、油路70と油路69とは遮断状態とされる。逆に、油路68の油圧が油路69の油圧よりも低い場合(オイルポンプ51が停止中で電磁切換弁55が連通(ON)状態の場合)には、三方向チェックバルブ76により、油路70と油路68とは遮断状態とされ、油路70と油路69とが連通状態とされる。
【0047】
そして、油路69は、電磁切換弁55のオンオフにより、油路64を介して油路63bと連通・遮断されるようになっている。また、電磁切換弁55のドレンEX2は、電磁切換弁55がオフ状態、つまり油路63bと油路69とが遮断されている状態において、油路64を介して油路69に接続されるようになっている。これにより、油路63bと油路69とが遮断されている状態では、電磁切換弁55と三方向チェックバルブ76との間(油路69内)の残圧を抜くことができるようになっている。
【0048】
続いて、上記のような構成を備える車両駆動システムの作用について説明する。本実施の形態に係る車両駆動システムでは、車両の走行時にエンジン10の駆動力によってオイルポンプ51が駆動され、油圧回路50に油圧が供給される。そして、無段変速機30では、シフトコントロールバルブ57により制御される油圧によってプライマリプーリ31の可動シーブの固定シーブに対する位置が保持又は変更される。また、セカンダリプーリ32への油圧の供給・停止によってセカンダリプーリ32への油圧の供給・停止によってセカンダリプーリ32の可動シーブの固定シーブに対する位置が保持又は変更される。このようにして、Vベルトのプライマリプーリ31への巻き掛け半径と、Vベルトのセカンダリプーリ32への巻き掛け半径とが維持又は変更されて、減速比が維持又は変更(変速)される。このとき、オイルポンプ51で発生した油圧は、無段変速機30の他、油路60,61,63、63bを通じてアキュムレータ56に供給されている。
【0049】
ここで、本実施の形態に係る車両駆動システムでは、所定の条件が満たされると、制御部40によりエンジン10が一時的に停止される。このエンジン停止処理について、図3を参照しながら説明する。図3は、制御部によるエンジン停止処理の内容を示すフローチャートである。
【0050】
まず、制御部40により、車速がゼロであるか否かが判断される(ステップ1)。具体的には、車速センサ36からの車速信号に基づき、制御部40のCPUによって車速がゼロであるか否かが判断される。このとき、制御部40により車速がゼロであると判断された場合には(S1:YES)、続いてエンジン回転数が所定回転数以下であるか否かが判断される(ステップ2)。具体的には、制御部40に入力されるクランクポジションセンサ14からのエンジン回転数信号に基づき、制御部40のCPUによってエンジン回転数が所定回転数以下であるか否かが判断される。ステップ2における所定回転数としては、例えば、アイドル回転数よりも少し高い回転数を設定すればよい。一方、制御部40により車速がゼロでないと判断された場合には(S1:NO)、エンジン10が停止されることなく、この処理ルーチンは終了する。
【0051】
ステップ2の処理にて、制御部40によりエンジン回転数が所定回転数以下であると判断された場合には(S2:YES)、続いてアクセル開度がゼロであるか否かが判断される(ステップ3)。一方、制御部40によりエンジン回転数が所定回転数以下でないと判断された場合には(S2:NO)、エンジン10が停止されることなく、この処理ルーチンは終了する。
【0052】
ステップ3では具体的に、スロットル位置センサ17aからのアクセル開度信号に基づき、制御部40のCPUによってアクセル開度がゼロであるか否かが判断される。なお、アクセル開度がゼロであるか否かの判断に、アイドルスイッチ17bからの出力信号を付加するようにしてもよい。このステップ3の処理にて、制御部40によりアクセル開度がゼロであると判断された場合には(S3:YES)、続いてブレーキスイッチがONされているか否かが判断される(ステップ4)。一方、制御部40によりアクセル開度がゼロでないと判断された場合には(S3:NO)、エンジン10が停止されることなく、この処理ルーチンは終了する。
【0053】
ステップ4では具体的に、ブレーキペダルスイッチ19dからの出力信号に基づき、制御部40のCPUによってブレーキペダルスイッチがONされているか否かが判断される。なお、ブレーキペダルスイッチがONされているか否か、つまり車両のブレーキ装置が作動しているか否かの判断をより正確に行うために、ブレーキマスタシリンダ圧センサ19eからの検出信号をも考慮するようにしてもよい。この場合には例えば、ブレーキペダルスイッチがONされており、かつブレーキマスタシリンダ圧センサ19eにより検出される圧力が所定値以上である場合にのみ、ブレーキスイッチがONされていると判断するようにすればよい。
【0054】
このようなステップ4の処理にて、制御部40によりブレーキスイッチがONされていると判断された場合には(S4:YES)、続いてその他のエンジン停止条件が成立しているか否かが判断される(ステップ5)。一方、制御部40によりブレーキスイッチがONされていないと判断された場合には(S4:NO)、エンジン10が停止されることなく、この処理ルーチンは終了する。
【0055】
ここで、ステップ5の処理におけるその他のエンジン停止条件としては、例えば、Gセンサ19aからの出力信号に基づく登坂・傾斜判定(傾斜角が所定値以下の場合に条件成立)、水温センサ19bからの出力信号に基づくエンジン水温判定(水温が所定範囲の場合に条件成立)、バッテリ電圧センサ19cの出力信号に基づくバッテリ電圧判定(バッテリ電圧が所定値以上の場合に条件成立)、油温センサ37からの出力信号に基づくCVT油温判定(CVT油温が所定範囲の場合に条件成立)、前回のエンジン始動からの経過時間(所定時間以上の場合に条件成立)、車速履歴(所定値以上の場合に条件成立)などを挙げることができる。
【0056】
そして、ステップ5の処理にて、その他のエンジン停止条件がすべて成立している場合、つまりステップ1〜5の処理においてすべて肯定の場合には(S5:YES)、エンジン10が停止させられる(ステップ6)。具体的には、制御部40からエンジン停止信号を構成する燃料カット信号、点火カット信号が、燃料リレー21、点火リレー23にそれぞれ出力される。これにより、イグナイタ13から点火プラグに高電圧が供給されないようにするとともに、インジェクタ11から燃料が噴射されないようにして、エンジン10を停止させる。一方、その他のエンジン停止条件がすべて成立していない場合には(S5:NO)、エンジン10が停止されることなく、この処理ルーチンは終了する。
【0057】
ここで、エンジン10の停止によりオイルポンプ51も停止するため、油圧回路50に油圧が供給されなくなる。このとき、電磁切換弁55はOFFされており油路63bと油路64とが遮断されているとともに、一方向弁71によりアキュムレータ56から油路63へ油圧が漏れることが防止される。このため、アキュムレータ56では、油圧を蓄えた状態が維持されている。そして、上記のようにエンジン10が一時停止されると、制御部40において、エンジン10の再始動処理ルーチンが実行される。そこで、このエンジンの一時停止後における再始動処理について、図4を参照しながら説明する。図4は、制御部によるエンジン再始動処理の内容を示すフローチャートである。
【0058】
まず、制御部40により、エンジン10が停止中であるか否かが判断される(ステップ10)。このとき、制御部40によりエンジン10が停止中であると判断された場合には(S10:YES)、マニュアルバルブ54のポジションがDレンジに設定されているか否かが判断される(ステップ11)。この判断は、シフトポジションスイッチ35からの出力信号に基づいて行われる。なお、制御部40によりエンジン10が停止中でないと判断された場合には(S10:NO)、エンジン10の再始動は不要であるから、この処理ルーチンは終了する。
【0059】
ステップ11の処理にて、制御部40によりマニュアルバルブ54のポジションがDレンジに設定されていると判断された場合には(S11:YES)、エンジン再始動条件が成立しているか否かが判断される(ステップ12)。一方、制御部40によりマニュアルバルブ54のポジションがDレンジに設定されていないと判断された場合には(S11:NO)、この処理ルーチンは終了する。ここで、ステップ11の処理におけるエンジン再始動条件としては、例えば、車速がゼロであること、ブレーキスイッチがOFFであること、アクセル開度がゼロでないことなどを挙げることができる。
【0060】
そして、ステップ12の処理にて、エンジン再始動条件が成立している場合には(S12:YES)、電磁切換弁55がONされた後(ステップ13)、エンジン10が再始動される(ステップ14)。具体的には、制御部40からエンジン再始動信号を構成する燃料噴射信号、点火信号、およびスタータ駆動信号が、燃料リレー21、点火リレー23、及びスタータリレー22にそれぞれ出力される。これにより、スタータ12が駆動され、イグナイタ13から点火プラグに高電圧が供給されるとともに、インジェクタ11から燃料が噴射されて、エンジン10が再始動される。一方、エンジン再始動条件が成立していない場合には(S12:NO)、この処理ルーチンは終了する。
【0061】
このようにエンジン10が再始動されるときには、エンジン始動直前に電磁開閉弁55がONされるので、油路63bと油路64とが連通状態となる。つまり、オイルポンプ51の駆動開始時に、電磁開閉弁55がONされて油路63bと油路64及び油路64に接続している油路69とが連通状態とされる。このため、アキュムレータ56と三方向チェックバルブ75,76とが連通する。これにより、アキュムレータ56に蓄えられた油圧が、油路63b,64を介して三方向チェックバルブ75に供給され、油路63b,64,69を介して三方向チェックバルブ76に供給される。
【0062】
このとき、三方向チェックバルブ75においては、油路64の油圧が油路63aの油圧よりも高いため、油路64と油路65とが連通する。また、三方向チェックバルブ76においては、油路69の油圧が油路68の油圧よりも高いため、油路69と油路70とが連通する。これらのことにより、アキュムレータ56に蓄えられた油圧は、油路63b、油路64、三方向チェックバルブ75、及び油路65を介して、前進用クラッチC1に供給される。また、アキュムレータ56に蓄えられた油圧は、油路63b、油路64,69、三方向チェックバルブ76、及び油路70を介して、セカンダリプーリ32にも供給される。つまり、アキュムレータ56から複数の油圧サーボ(本実施の形態では、前進用クラッチC1とセカンダリプーリ32との2つ)に油圧が供給される。
【0063】
ここで、アキュムレータ56から供給された油圧は、油路63bを介して、油路63側へも供給される。しかしながら、油路63bには、アキュムレータ56と油路63との間に一方向弁71が設けられている。このため、アキュムレータ56から供給された油圧が、油路63へ抜けることはない。これにより、アキュムレータ56からの油圧は、前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32にのみ供給されるので、アキュムレータ56から前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32に対して、油圧を短時間にて効率よく供給することができる。
【0064】
また、オイルポンプ51が停止しているときにアキュムレータ56から前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32に油圧を常時供給していないので、アキュムレータ56の容量を大きくする必要もないし、大きなスタータが必要になることもない。つまり、アキュムレータ56としては、オイルポンプ51の駆動開始時にオイルポンプ51で発生した油圧が前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32に供給されるまでの間だけ、前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32に油圧を供給することができるだけの容量を備えていればよい。
【0065】
従って、本実施の形態に係る車両駆動システムによれば、アキュムレータ56の容量を必要最小限にしつつ、エンジン再始動時にアキュムレータ56から前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32に油圧を短時間にて効率よく供給することができる。
【0066】
そして、エンジン10が始動されると、電磁切換弁55がOFFされて油路63bと油路64とが遮断状態にされる(ステップ15)。このとき、オイルポンプ51が駆動されて、オイルポンプ51から油圧が、油路60,61,63を介して、油路63a及び油路63bに供給されるとともに、油路60,61,67を介して、油路68に供給される。ここで、油路63bには、油路63aとの分岐部と一方向弁71との間にオリフィス74が設けられている。そして、オイルポンプ51が駆動しているときは、オリフィス74が設けられた油路63bを介して、オイルポンプ51で発生した油圧がアキュムレータ56に供給される。このため、アキュムレータ56には、ゆっくりと(低速にて)油圧が蓄えられていく。
【0067】
これにより、エンジン10の再始動時におけるオイルポンプ51の駆動開始時には、アキュムレータ56に蓄えられた油圧が前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32に供給された直後、アキュムレータ56に蓄えられていた油圧が低下した状態において、オイルポンプ51で発生する油圧が、アキュムレータ56の蓄圧に多く使用されることがない。
【0068】
また、このとき、電磁切換弁55がOFFされているため、油路64と接続されている三方向チェックバルブ75のポート、及び油路69と接続されている三方向チェックバルブ76のポートは、それぞれドレンEX2に連通している。このため、油路64,69の残圧を確実に抜くことができる。従って、三方向チェックバルブ75において、油路63aの油圧を油路64の油圧よりも高くすることができ、油路63aと油路65とを確実に連通させることができる。同様に、三方向チェックバルブ76において、油路68の油圧を油路69の油圧よりも高くすることができ、油路68と油路70とを確実に連通させることができる。
【0069】
これらのことから、オイルポンプ51の駆動開始時にオイルポンプ51で発生する油圧を、油路63aを介して前進用クラッチC1に速やかに(高速に)供給するとともに、油路68を介してセカンダリプーリ32に速やかに(高速に)供給することができる。従って、アキュムレータ56に要求される容量をさらに小さくすることができる。また、オイルポンプ51の駆動時(エンジン10の再始動時)に、オイルポンプ51からの油圧がセカンダリプーリ32に供給されるまでの間に、アキュムレータ56から速やかに(高速に)油圧が供給されるので、セカンダリプーリ32には適切な油圧が作用し、無段変速機30におけるVベルトの滑りが確実に防止される。これにより、オイルポンプ51の駆動時(エンジン10の再始動時)に、確実に車両をスムーズに発進させることができる。
【0070】
以上、詳細に説明したように第1の実施の形態に係る駆動システムによれば、前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32がそれぞれ三方向チェックバルブ75及び76を介して、オイルポンプ51とアキュムレータ56に接続されている。そして、アキュムレータ56が設けられている油路63bに、油路63との分岐部側から順に、オリフィス74、一方向弁71、アキュムレータ56、電磁切換弁55が配置されている。そして、電磁切換弁55は、オイルポンプ51の駆動開始時に一定時間だけ、制御部40によりONされる。
【0071】
このため、オイルポンプ51の駆動開始時を除き、電磁切換弁55はOFF(遮断)状態とされているので、オイルポンプ51で発生した油圧が、油路60,61,63,63a、及び三方向チェックバルブ75を介して、前進用クラッチC1に供給されるとともに、油路60,61,67,68、及び三方向チェックバルブ76を介して、セカンダリプーリ32に供給される。また、このとき、オイルポンプ51で発生した油圧が、油路63bを介してアキュムレータ56に蓄えられる。そして、オイルポンプ51が停止すると、前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32への油圧の供給が停止する。このとき、アキュムレータ56には、油圧が保持されている。
【0072】
その後、オイルポンプ51が駆動されると、電磁切換弁55がON(連通)状態とされ、アキュムレータ56に蓄えられていた油圧が、油路63b,64及び三方向チェックバルブ75を介して、前進用クラッチC1に供給されるとともに、油路63b,64,69及び三方向チェックバルブ76を介して、セカンダリプーリ32に供給される。このとき、アキュムレータ56からの油圧は、油路63bを介して分岐部(油路63)への方向へも供給されるが、このオイルの流れは一方向弁71により阻止される。すなわち、アキュムレータ56からの油圧が、分岐部から漏れることが確実に防止される。これにより、エンジン再始動時におけるオイルポンプ51の駆動開始時に、アキュムレータ56から前進用クラッチC1及びセカンダリプーリ32へ油圧を速やかに供給することができ、油圧の供給遅れが生じない。従って、第1の実施の形態に係る車両駆動システムによれば、車両をスムーズに発進させることができる。
【0073】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態とは異なり、有段自動変速機(有段AT)に対して本発明を適用したものである。しかしながら、第2の実施の形態の基本的な構成は、第1の実施の形態とほぼ同じくし、無段変速機30の代わりに有段自動変速機80が備わり(図1参照)、そこに設けられた油圧回路の構成が異なっている。このため以下では、第1の実施の形態と共通する構成については図面に同じ符号を付してその説明を適宜省略し、相違する構成を中心に第2の実施の形態に係る車両駆動システムにおける油圧回路について、図5を参照しながら説明する。図5は、第2の実施の形態に係る車両駆動システム(有段自動変速機)における油圧回路を示す図である。なお、ここでは前進用クラッチC1がDレンジのすべての前進段で係合し、Dレンジ1速(車両発進時)で前進用クラッチC1及びクラッチC2が係合する場合を例示している。
【0074】
図5に示すように、油圧回路50aにおいては、クラッチ圧制御バルブが設けられておらず、ライン圧レギュレータバルブ52とマニュアルバルブ54aとが設けられている。そして、油路63から分岐する分岐油路63cが設けられており、シフトバルブ・制御バルブユニット81に接続されている。このシフトバルブ・制御バルブユニット81には、分岐油路63cの他、一端がマニュアルバルブ54aに接続する油路66が接続されている。
【0075】
ここで、シフトバルブ・制御バルブユニット81は、有段自動変速機80に備わるクラッチC2,C3、ブレーキB1,B2の係合・開放を制御するものである。このため、クラッチC2とシフトバルブ・制御バルブユニット81とが油路82により接続され、クラッチC3とシフトバルブ・制御バルブユニット81とが油路83により接続され、ブレーキB1とシフトバルブ・制御バルブユニット81とが油路84により接続され、ブレーキB2とシフトバルブ・制御バルブユニット81とが油路85により接続されている。これにより、マニュアルバルブ54bがDレンジに設定されているときに、車両の走行状況に応じたシフトバルブ・制御バルブユニット81の油圧制御によって、クラッチC2,C3、ブレーキB1,B2の係合・開放の組み合わせパターンが変更され、有段自動変速機80において所定段に変速されるようになっている。なお、車両発進時には、前進用クラッチC1及びクラッチC2が係合するようになっている。
【0076】
このような油圧回路50aにおいても、第1の実施の形態で説明したように、オイルポンプ51の駆動開始時を除き、電磁切換弁55はOFF(遮断)状態とされているため、オイルポンプ51で発生した油圧が、油路60,63,63a、三方向チェックバルブ75、及び油路65を介して、前進用クラッチC1に供給される。また、オイルポンプ51で発生した油圧が、油路60,63,63bを介してアキュムレータ56に蓄えられる。
【0077】
さらに、オイルポンプ51で発生した油圧が、油路60,63,63cを介して、シフトバルブ・制御バルブユニット81に供給される。そうすると、シフトバルブ・制御バルブユニット81により、クラッチC2,C3、ブレーキB1,B2の係合・開放の組み合わせパターンが変更され、有段自動変速機80において所定段に変速される。
【0078】
そして、エンジン10が停止してオイルポンプ51が停止すると、前進用クラッチC1への油圧の供給が停止する。このとき、アキュムレータ56には、油圧が保持されている。その後、エンジン10が再始動(オイルポンプ51が駆動)される際に、電磁切換弁55がON(連通)状態とされ、アキュムレータ56に蓄えられていた油圧が、油路63b,64、三方向チェックバルブ75、及び油路65を介して、前進用クラッチC1に供給される。また、アキュムレータ56に蓄えられていた油圧が、油路63b,64,69、三方向チェックバルブ76、及び油路86を介して、クラッチC2に供給される。これにより、車両発進に係合させる必要がある前進用クラッチC1とクラッチC2とを速やかに係合させることができる。そして、このとき、アキュムレータ56からの油圧は、油路63bを介して油路63への方向へも供給されるが、そのオイルの流れは一方向弁71により阻止される。すなわち、アキュムレータ56からの油圧が、油路63から漏れることが確実に防止される。
【0079】
よって、第2の実施の形態に係る車両駆動システムでも、アキュムレータ56の容量を小さくしつつ、アキュムレータ56から前進用クラッチC1及びクラッチC2に油圧を速やかに供給することができる。これにより、エンジン再始動時におけるオイルポンプ51の駆動開始時に、アキュムレータ56から前進用クラッチC1及びクラッチC2へ油圧を速やかに供給することができ、油圧の供給遅れが生じない。従って、第2の実施の形態に係る車両駆動システムによれば、車両をスムーズに発進させることができる。
【0080】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、第1の実施の形態においては、アキュムレータ56から前進用クラッチC1とセカンダリプーリ32とに油圧を供給するようにしているが、もちろんこの2つの油圧サーボ以外の油圧サーボ(例えば、プライマリプーリ31など)にも油圧を供給するようにしてもよい。例えば、アキュムレータ56からプライマリプーリ31にも油圧を供給するには、プライマリプーリ31とシフトコントロールバルブ57との間に三方向チェックバルブを新たに設ければよい。
【0081】
また、上記した実施の形態では、マニュアルバルブ54を油路63の途中に設けているが、油路65の途中(三方向チェックバルブ65と前進用クラッチC1との間)に設けることもできる。さらに、アキュムレータ56に接続する油路63bを油路63から分岐させているが、油路63bをその他の油路(例えば、油路67など)から分岐させることもできる。
【0082】
また、上記した実施の形態では、エンジン10と連結されている機械式のオイルポンプ51を例示したが、エンジンに連結されていない電動式のオイルポンプを備える車両駆動システムに対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1の実施の形態に係る車両駆動システムの概略構成を示す構成図である。
【図2】無段変速機に備わる油圧回路を示す図である。
【図3】制御部によるエンジン停止処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】制御部によるエンジン再始動処理の内容を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る車両駆動システム(有段自動変速機)における油圧回路を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
10 エンジン
11 インジェクタ
12 スタータ
13 イグナイタ
14 クランクポジションセンサ
17 スロットルバルブ
17a スロットル位置センサ
18 イグニッションスイッチ
19d ブレーキペダルスイッチ
21 燃料リレー
22 スタータリレー
23 点火リレー
30 無段変速機(CVT)
31 プライマリプーリ
32 セカンダリプーリ
35 シフトポジションスイッチ
36 車速センサ
37 油温センサ
40 制御部
50 油圧回路
51 オイルポンプ
52 ライン圧レギュレータバルブ
53 クラッチ圧制御バルブ
54 マニュアルバルブ
55 電磁切換弁
56 アキュムレータ
57 シフトコントロールバルブ
60〜70 油路
71 一方向弁
74 オリフィス
75 三方向チェックバルブ
76 三方向チェックバルブ
C1 前進用クラッチ
EX2 ドレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧を発生させるオイルポンプと、前記オイルポンプにより発生させた油圧を調圧する調圧弁と、油圧により制御される複数の油圧サーボと、前記オイルポンプにより発生させた油圧を蓄えるアキュムレータとを備え、前記調圧弁あるいは前記アキュムレータのいずれか一方から前記油圧サーボに油圧を供給する油圧回路を有する車両用駆動装置において、
前記アキュムレータと前記オイルポンプとの間を接続する蓄圧用油路を有し、
前記蓄圧用油路には、前記オイルポンプから前記アキュムレータへの方向にのみオイルを流す一方向弁が設けられ、
前記各油圧サーボに油圧を供給する各油路には、三方向チェックバルブがそれぞれ配置され、
前記各三方向チェックバルブのうちの1つのポートは前記各油圧サーボと接続する油路に接続され、残りの2つのポートは前記アキュムレータに接続する油路と、前記調圧弁に接続する油路とにそれぞれ接続されており、
前記各三方向チェックバルブは、前記残りの2つのポートに接続されている各油路のうち油圧が高い方を、前記各油圧サーボと接続する油路に連通させる
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載する車両用駆動装置において、
前記各三方向チェックバルブと前記アキュムレータとを接続する油路の遮断・連通状態を切り換え、前記オイルポンプの駆動開始時に所定時間のみ連通状態とされる切換弁を有する
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載する車両用駆動装置において、
前記切換弁は、遮断状態にて前記切換弁と前記各三方向チェックバルブとの間に溜まっているオイルを回路外に排出するドレンを備えている
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載するいずれか1つの車両用駆動装置において、
前記蓄圧用油路には、前記調圧弁と前記一方向弁との間に絞り弁が設けられている
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載するいずれか1つの車両用駆動装置において、
前記複数の油圧サーボには、プーリ式無段変速機に備わる少なくとも1つのプーリと、車両発進時に係合される摩擦係合要素とが含まれている
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4に記載するいずれか1つの車両用駆動装置において、
前記複数の油圧サーボには、有段自動変速機に備わる少なくとも1つの摩擦係合要素と、車両発進時に係合される摩擦係合要素とが含まれている
ことを特徴とする車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−144874(P2009−144874A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325113(P2007−325113)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】