説明

車両用駆動装置

【課題】2つのオイルポンプの油路が合流されて油圧調圧部に接続される油路構造にあって、逆止弁を廃止することを可能とした車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】車両用駆動装置は、駆動用モータ3に駆動連結された機械式オイルポンプ7と、独立して駆動される電動モータ11に駆動連結された電動オイルポンプ10とを備えており、それらに連通する油路a1,a2が合流された油路構造13を有する。このうちの一方のオイルポンプを停止した後、駆動中の他方のオイルポンプから作用する油圧に基づき、該停止中のオイルポンプの回転方向位置に応じて変動する漏れ量比率が許容範囲以下となるように、駆動用モータ3又は電動モータ11を再駆動して、停止中のオイルポンプの停止位置の位置調整を実行する。停止中のオイルポンプにおけるオイル漏れ量が大幅に低減されるので、油路a1,a2に逆止弁を設けることが不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される車両用駆動装置に係り、詳しくは一方のオイルポンプの停止中に他方のオイルポンプを駆動し、油圧調圧部に対する油圧供給を確保する車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等に搭載されるハイブリッド駆動装置等の車両用駆動装置にあっては、燃費向上を目的として、特に車両停止時においてエンジンのアイドルストップなどによって車両駆動系を停止するものが主流である。このような車両用駆動装置にあっては、自動変速機の油圧制御や潤滑、モータジェネレータの冷却などを行うために油圧を必要とするが、例えば駆動系(エンジンやモータジェネレータ)に駆動連結された機械式オイルポンプだけであると、車両駆動系の停止時に該機械式オイルポンプが停止してしまい、必要な油圧が確保できなくなるため、別途に独立して電動モータで駆動される電動オイルポンプを設けておく必要がある(特許文献1参照)。
【0003】
上述のような車両用駆動装置にあっては、一つの油圧制御装置に対して機械式オイルポンプと電動オイルポンプとが並列接続されており、つまり2つのオイルポンプの排出口に繋がる油路は、合流される形でレギュレータバルブ等の油圧調圧部に連通される構造となっている。そして、機械式オイルポンプと電動オイルポンプとは、一方が停止中に他方を駆動することで常時油圧を確保するように駆動されるため、駆動中のオイルポンプから停止中のオイルポンプに油圧が逆流し、油圧損失が生じることを防止するため、それらオイルポンプの排出口に繋がる油路には、それぞれ逆止弁が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−139060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記逆止弁は、オイルポンプの排出口に繋がる油路に配設されているため、該逆止弁が絞りとして作用することになり、油圧損失を生じるために、オイルポンプの吐出性能の低下を招くという問題がある。また反対に、油圧損失を避けるために逆止弁を大径化すると、逆止弁が肥大化するため、車両用駆動装置に対する搭載性として良好ではなくなるという問題がある。
【0006】
また特に、自動変速機にモータジェネレータを組付けたようなハイブリッド駆動装置(いわゆるシリーズ式ハイブリッドシステム)にあっては、機械式オイルポンプだけを有する内燃エンジン用の自動変速機とハイブリッド駆動装置用の自動変速機との共通化を図ることで、内燃エンジン用の自動変速機をハイブリッド駆動装置用の自動変速機として転用することを可能とし、ハイブリッド駆動装置のコストダウンを図ることも考えられるが、内燃エンジン用の自動変速機に、上記のような肥大化した逆止弁を配設するスペースを確保すること(或いは、予め逆止弁のための不要なスペースを設けて設計しておくこと)は困難であり、結局はハイブリッド駆動装置用の自動変速機を再設計しているのが現状である。
【0007】
そこで本発明は、2つのオイルポンプの油路が合流されて油圧調圧部に接続される油路構造にあって、逆止弁を廃止することを可能とし、もってコンパクト化や自動変速機の共通化などを可能にした車両用駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は(例えば図1乃至図7参照)、第1回転電機(3)の駆動軸(3A)に駆動連結された第1オイルポンプ(7)と、
前記第1回転電機(3)と独立して駆動自在な第2回転電機(11)の駆動軸(11A)に駆動連結された第2オイルポンプ(10)と、
前記第1オイルポンプ(7)及び前記第2オイルポンプ(10)のそれぞれに連通する2つの油路(a1,a2)が合流されて油圧調圧部に接続され、互いの油路に油が流れる油路構造(13)と、
前記第1オイルポンプ(7)及び前記第2オイルポンプ(10)の一方のオイルポンプ(7又は10)の停止中に他方のオイルポンプ(10又は7)を駆動制御する制御部(21)と、を備え、
前記制御部(21)は、前記一方のオイルポンプ(7又は10)を停止する場合、又は停止した後、該一方のオイルポンプ(7又は10)の回転方向の停止位置(ωp)に応じて変動する油の漏れ量の比率(Qr)が許容範囲(Qrp)以下となるように、前記第1回転電機と第2回転電機とのうちの前記一方のオイルポンプを駆動する回転電機(3又は11)を駆動制御して、前記一方のオイルポンプ(7又は10)の停止位置の位置調整を実行することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は(例えば図3参照)、前記第1オイルポンプ(7)及び前記第2オイルポンプは、外歯(16a)が形成されたドライブギヤ(16)と、内歯(17a)が形成されたドリブンギヤ(17)と、油を吸入する吸入口(7a)と、油を排出する排出口(7b)と、を有するギヤ式オイルポンプからなり、
前記制御部(21)は、前記停止中の一方のオイルポンプ(例えば7)の停止位置を位置調整する際、前記吸入口(7a)と前記排出口(7b)との間(例えばA)にあって、前記ドライブギヤ(16)の外歯(16a)の頂点と前記ドリブンギヤ(17)の内歯(17a)の頂点とが対向する位置を目標とすることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は(例えば図1、図6、図7参照)、内燃エンジン(2)の出力軸(2A)と車輪を駆動可能な前記第1回転電機(3)の駆動軸(3A)との間の駆動力の伝達を遮断し得る第1クラッチ(6)と、
前記第1回転電機(3)の駆動軸(3A)に駆動連結され、該駆動軸(3A)の回転を変速して車輪(90)に出力し得る自動変速機(4)と、
前記第1回転電機(3)の駆動軸(3A)と前記車輪(90)との駆動伝達を断接し得る第2クラッチ(4C)と、を備え、
前記制御部(21)は、前記第1クラッチ(6)及び前記第2クラッチ(4C)を解放した後、前記第1オイルポンプ(7)に対して前記位置調整を実行してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は(例えば図1乃至図3参照)、前記第1回転電機(3)の駆動軸(3A)の回転位置を検出する回転角センサ(8)と、
前記第1オイルポンプ(7)の組付け時に、前記第1回転電機(3)の駆動軸(3A)と前記第1オイルポンプ(7)との互いの相対角度位置を位置決めする位置決め手段(16c,16d,4Aa,4Ab)と、を備え、
前記制御部(21)は、前記回転角センサ(8)によって検出された回転位置に基づき、前記第1オイルポンプ(7)に対して前記位置調整を実行することを特徴とする。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によると、一方のオイルポンプを停止する場合、又は停止した後、該一方のオイルポンプの回転方向の停止位置に応じて変動する油の漏れ量の比率が、許容範囲以下となるように、第1回転電機と第2回転電機とのうちの一方のオイルポンプを駆動する回転電機を駆動制御して、一方のオイルポンプの停止位置の位置調整を実行するので、停止中の一方のオイルポンプにおいて油圧逆流による漏れ量を大幅に低減することができ、第1及び第2オイルポンプの排出口に繋がる油路に逆止弁を設けることを不要とすることができる。これにより、車両用駆動装置のコンパクト化を可能すると共に、自動変速機の共通化なども図ることができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によると、停止中の一方のオイルポンプの停止位置を位置調整する際、吸入口と排出口との間にあって、ドライブギヤの外歯の頂点とドリブンギヤの内歯の頂点とが対向する位置を目標とするので、つまり停止中の一方のオイルポンプの最も漏れ量が少ない位置を目標として位置制御することができる。
【0015】
請求項3に係る本発明によると、いわゆるシリーズ式ハイブリッド駆動装置であって、第1クラッチ及び第2クラッチを解放することで、車輪を駆動可能な第1回転電機を内燃エンジン及び車輪に対して駆動力の伝達を遮断した後、該第1回転電機に駆動連結された第1オイルポンプを位置調整することを可能とすることができる。
【0016】
請求項4に係る本発明によると、第1回転電機の駆動軸と第1オイルポンプとの組付け時に、互いの相対角度位置を位置決めする位置決め手段を備えているので、第1回転電機及び回転角センサと第1オイルポンプとの回転角度位置を一義的に位置決めすることができ、これにより、回転角センサによって検出された回転位置に基づき第1オイルポンプに対して位置調整を実行することを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両用駆動装置を搭載した車両を示すブロック図。
【図2】本車両用駆動装置における駆動系と油路構造とを示す模式図。
【図3】機械式オイルポンプを示す断面図で、(a)は漏れ量が最少の回転方向位置を示す図、(b)は漏れ量が最大の回転方向位置を示す図。
【図4】オイルポンプにおける漏れ量と作用する油圧との関係を示す図。
【図5】オイルポンプにおける漏れ量比率とドライブギヤ回転方向位置との関係を示す図。
【図6】本発明に係る位置調整制御を示すフローチャート。
【図7】本発明に係る位置調整制御を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図7に沿って説明する。まず、本発明を適用し得るハイブリッド駆動装置(車両用駆動装置)並びにそれを搭載した車両の概略構成について図1に沿って説明する。
【0019】
図1に示すように、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの車両100には、出力軸(クランク軸)2Aが車両進行方向に対して横向きとなるように内燃エンジン(E/G)2が搭載されており、該内燃エンジン2の出力軸2Aには、本発明に係るハイブリッド駆動装置1が駆動連結されている。また、該ハイブリッド駆動装置1は、前輪用車軸91に駆動連結されており、該前輪用車軸91には左右前方の車輪90,90が接続されている。なお、車両100の後方側には、後輪用車軸92を介して左右後方の車輪90,90が接続されている。
【0020】
なお、本車両100の車両駆動系は、上記内燃エンジン2から車輪90,90までの動力伝達経路に配設された装置を指しており、ハイブリッド駆動装置1は、該車両駆動系の一部を構成している。該ハイブリッド駆動装置1は、大まかに、エンジン切離し用の第1クラッチ6、駆動用モータジェネレータ(M/G)(第1回転電機)3、自動変速機4を備えて構成されている。即ち、駆動用モータジェネレータ3は、車両駆動系の回転電機であり、自動変速機4は、車両駆動系の変速機である。
【0021】
また、ハイブリッド駆動装置1には、第1クラッチ6の断接制御や自動変速機4の変速制御(第2クラッチ4Cの断接制御)を行う自動変速機制御部(A/T ECU)20と、該自動変速機制御部20と連携すると共に、バッテリー31に接続されたインバータ回路30を介して駆動用モータ3の力行制御や回生制御を行うハイブリッド制御部(H/T ECU)21と、が備えられている。
【0022】
詳細には、ハイブリッド駆動装置1の動力伝達経路上において、内燃エンジン2の出力軸2Aと駆動用モータジェネレータ3(以下、単に「駆動用モータ3」という)との間には、自動変速機制御部20からの指令に基づき、図示を省略した油圧サーボによって係合・解放される第1クラッチ6が配設されており、該第1クラッチ6が係合されると内燃エンジン2の駆動力が駆動用モータ3の駆動軸3Aを介して自動変速機4に伝達され、該第1クラッチ6が解放されると、内燃エンジン2と駆動用モータ3及び自動変速機4とを切離し、内燃エンジン2の駆動力の伝達を駆動用モータ3及び自動変速機4に対して遮断する。
【0023】
上記駆動用モータ3は、車輪90,90を駆動可能なモータであって、上記第1クラッチ6と自動変速機4とに駆動連結された駆動軸(ロータ軸)3Aを有しており、上記第1クラッチ6が係合された状態にあっては、内燃エンジン2の駆動力に駆動用モータ3の駆動力をアシストし、また、上記第1クラッチ6が解放された状態にあっては、駆動用モータ3の駆動力によるEV走行(力行・回生)を可能とする。なお、詳しくは後述する自動変速機4には、駆動軸3Aの回転角度を検出し得るレゾルバ(回転角センサ)8が配設されており、該レゾルバ8の検出結果に基づきインバータ回路30は、駆動用モータ3をPWM制御(パルス幅変調制御)することで、該駆動用モータ3を力行・回生制御する。
【0024】
上記自動変速機4は、一般的な内燃エンジンだけを駆動源とする車両用の多段式自動変速機と略々同様な構成からなり、上記駆動用モータ3の駆動軸3Aに駆動連結された入力軸4Aを有していると共に、該入力軸4Aの回転振動を吸収するダンパ装置(不図示)、及び該入力軸4Aの回転を多段変速して前輪用車軸91に伝達する自動変速機構(不図示)を有している。該自動変速機構には、変速段に応じて伝達経路を変更するための複数の変速用クラッチである第2クラッチ4Cが備えられており、これらの第2クラッチ4Cを全て解放することで、上記駆動用モータ3の駆動軸3Aと車輪90(即ち前輪用車軸91)との駆動伝達が切断される。そして、上記自動変速機4には、入力軸4A上に上述したレゾルバ8が配設されていると共に、該入力軸4Aを介して駆動軸3Aに駆動連結された機械式オイルポンプ(第1オイルポンプ)7が備えられている。
【0025】
続いて、本ハイブリッド駆動装置1におけるオイルポンプに対する駆動系及び油路構造について図2に沿って説明する。図2に示すように、本ハイブリッド駆動装置1は、上述した機械式オイルポンプ(O/P)7と、該機械式オイルポンプ7と並列的に配設された電動オイルポンプ(第2オイルポンプ)(EO/P)10とを備えている。
【0026】
上述したように、機械式オイルポンプ7は、自動変速機4の入力軸4Aと駆動用モータ3の駆動軸3Aとが駆動連結されているので、第1クラッチ6を介して内燃エンジン2の出力軸2Aと駆動用モータ3の駆動軸3Aとに駆動連結されており、つまり車両駆動系の駆動源に連動して駆動されるように構成されている。また、上記のように自動変速機4の入力軸4Aには、駆動用モータ3の駆動軸3Aの回転位置(回転角度)を検出するためのレゾルバ(回転角センサ)8が配設されており、該レゾルバ8は、後述の機械式オイルポンプ7のドライブギヤ16の回転角度位置を検出し得る。
【0027】
一方、電動オイルポンプ10は、車両駆動系(特に駆動用モータ3)とは独立して駆動自在な電動モータ(第2回転電機)11に駆動連結されており、つまり車両駆動系の停止中にあっても、独立して電動オイルポンプ10を駆動し得るように構成されている。また、該電動モータ11は、電動オイルポンプ10のドライブギヤ(不図示)に駆動連結された駆動軸11Aを有しており、該駆動軸11Aにはレゾルバ12が配設されて、該レゾルバ12は、電動オイルポンプ10のドライブギヤの回転角度位置を検出し得る。
【0028】
機械式オイルポンプ7及び電動オイルポンプ10は、それぞれの排出口に連通する油路a1,a2に連通されており、これら機械式オイルポンプ7及び電動オイルポンプ10が駆動されると、不図示のオイルパンより吸入口に吸入したオイルを圧縮して排出口より油圧として発生させて、油路a1,a2に油圧を供給する。ハイブリッド駆動装置1は、これら2つの油路a1,a2が油路a3に合流されて油圧制御装置(V/B)14の図示を省略した油圧調圧部(レギュレータバルブなど)に接続される油路構造13を備えており、油圧制御装置(V/B)14で調圧された油圧は、各第2クラッチ4Cの油圧サーボの係合圧や潤滑油圧として自動変速機(AT)4に供給されると共に、第1クラッチ6の油圧サーボの係合圧として供給される。
【0029】
上述の機械式オイルポンプ7及び電動オイルポンプ10は、ハイブリッド制御部21(図1参照)の制御によって、一方のオイルポンプが停止された際に、他方のオイルポンプが駆動されるように制御される。即ち、車両走行中にあって、内燃エンジン2や駆動用モータ3が駆動されて自動変速機4の入力軸4Aが駆動制御されている間は、機械式オイルポンプ7が回転駆動されて油圧を発生し、車両停止中となって、内燃エンジン2が第1クラッチ6により切離され、かつ駆動用モータ3の回転駆動が停止された状態にあっては、機械式オイルポンプ7が停止状態となるので、電動モータ11が駆動されて電動オイルポンプ10が駆動制御される。
【0030】
機械式オイルポンプ7の駆動中でかつ電動オイルポンプ10の停止中にあっては、該機械式オイルポンプ7から油圧制御装置14に油路a1,a3を介して油圧が供給されるが、同時に油路a2を介して電動オイルポンプ10に油圧が逆流される形で作用することになる。反対に、電動オイルポンプ10の駆動中でかつ機械式オイルポンプ7の停止中にあっては、該電動オイルポンプ10から油圧制御装置14に油路a2,a3を介して油圧が供給されるが、同時に油路a1を介して機械式オイルポンプ7に油圧が逆流される形で作用することになる。
【0031】
ついで、機械式オイルポンプ7の構造を説明しつつ、ドライブギヤの回転方向の停止位置と機械式オイルポンプ7のけるオイルの漏れ量との関係を図3ないし図5に沿って説明する。なお、図3は機械式オイルポンプ7の構造を示し、図4及び図5の漏れ量は機械式オイルポンプ7の停止中における漏れ量や漏れ量比率を示すものであるが、これらは電動オイルポンプ10にあっても同様であるので、機械式オイルポンプ7に関する説明をもって、電動オイルポンプ10に関する説明を省略する。また、「オイルの漏れ量」とは、詳しくは後述するオイルポンプ構造にあって、排出口から吸入口に流れ込むオイルの量である。
【0032】
図3に示すように、機械式オイルポンプ7は、ギヤ収納穴7Hが形成されたポンプボディ7Boを有しており、該ギヤ収納穴7H内に収納される形で、自動変速機4の入力軸4Aに対して回転方向に連結固定されたドライブギヤ16と、該ドライブギヤ16に噛合されると共に偏心した位置にあって駆動回転されるドリブンギヤ17とを有している、いわゆるギヤ式オイルポンプからなる。
【0033】
また、ポンプボディ7Boには、不図示のオイルパンに連通される油孔7Aが形成されており、該油孔7Aはドライブギヤ16及びドリブンギヤ17の側面に向かって開口することで油を吸入する吸入口7aを構成している。さらに、ポンプボディ7Boには、上記油路a1に連通される油孔7Bが形成されており、該油孔7Bはドライブギヤ16及びドリブンギヤ17の側面に向かって開口して油を排出する排出口7bを構成している。従って、機械式オイルポンプ7は、不図示のオイルパンに連通する吸入口7aと、圧縮したオイルを油路a1に排出する排出口7bとが、それぞれ略々半周に亘って、かつ互いに連通しないような距離を存して配置されるように有している。
【0034】
なお、ポンプボディ7Boには、図示を省略したポンプカバーが貼り合わされて、ギヤ収納穴7Hを密封状態にする。また、上記吸入口7a及び排出口7bは、ポンプカバー側にも形成されて、ドライブギヤ16及びドリブンギヤ17の両側面から油を吸入し、圧縮して排出し得るように構成することが好ましい。
【0035】
ドライブギヤ16は、内周側の2箇所に突出するように形成されたキー(位置決め手段)16c,16dを有しており、入力軸4Aの外周に形成されたキー溝(位置決め手段)4Aa,4Abに挿入されることによって、入力軸4Aに対するドライブギヤ16の回転方向位置が位置決め固定され、つまり機械式オイルポンプ7と駆動用モータ3との組付け時に、駆動用モータ3の駆動軸3Aとドライブギヤ16との互いの相対角度位置が位置決めされる。これにより、駆動用モータ3の駆動軸3Aの回転角度位置とドライブギヤ16の回転角度位置とが一義的に位置決めされ、上記レゾルバ8の検出結果によって駆動用モータ3を駆動制御することで、ドライブギヤ16の回転角度位置を位置調整することが可能となる。
【0036】
なお、上記キー16cの回転方向位置とドライブギヤ16の1つの外歯16aの頂点位置とが一致するように構成することで、組付け時におけるキーの位置の視認に基づき、レゾルバ8の回転角度調整や駆動用モータ3の回転角度位置調整を容易にすることが可能である。また、上記キー16cは、キー16dよりも幅広に形成されており、キー溝4Aaよりも幅狭に形成された4Abに誤組付けされることはない。
【0037】
上記ドライブギヤ16の外周面には、外周に向かって凸状に突出する外歯16a及びそれら外歯16aの間に谷部16bが滑らかな曲線状となるように形成されており、また、ドリブンギヤ17の内周面には、内周に向かって凸状に突出する内歯17a及びそれら内歯17aの間に谷部17bが滑らかな曲線状となるように形成されており、ドライブギヤ16の外歯16aとドリブンギヤ17の谷部17bとが噛合すると共にドライブギヤ16の谷部16bとドリブンギヤ17の内歯17aとが噛合するように構成されている。これにより、ドライブギヤ16が回転方向ωに回転駆動されると、ドリブンギヤ17の外周面が図示を省略したケースの円筒状穴の内面に沿って回転自在に摺動される形で、同じく回転方向ωに回転駆動される。
【0038】
このように構成された機械式オイルポンプ7は、ドライブギヤ16及びドリブンギヤ17の噛合部分が回転方向ωに回転移動すると、吸入口7aに対応する部分において、ドライブギヤ16の外周面とドリブンギヤ17の内周面との間の空間が徐々に拡大されることで、それらの間の空間にオイルが吸入され、吸入口7aと排出口7bとの間を仕切る区間Aにおいて該空間内にオイルを閉じ込め、排出口7bに対応する部分において、ドライブギヤ16の外周面とドリブンギヤ17の内周面との間の空間が徐々に縮小されることで、それらの間の空間にオイルが圧縮され、排出口7bから油圧が発生される。
【0039】
ところで、ドライブギヤ16とドリブンギヤ17とが回転駆動される場合において、焼け付きの防止等を考慮すると、ドライブギヤ16の外歯16aとドリブンギヤ17の内歯17aとの頂点同士において、僅かにクリアランスが必要となると共に、ドライブギヤ16及びドリブンギヤ17とそれらを摺動自在に支持するケース(不図示)との間にも僅かにクリアランスが必要となり、つまり吸入口7aと排出口7bとの間をドライブギヤ16及びドリブンギヤ17で完全に密封することは難しく、機械式オイルポンプ7の停止中において駆動中の電動オイルポンプ10から作用する油圧に基づき、オイルの漏れ量が発生する。
【0040】
しかしながら、ドライブギヤ16の回転方向位置ωp(なお、ドリブンギヤ17の回転方向位置はドライブギヤ16の回転方向位置で決まる)によっては、その漏れ量が変動し、つまり漏れ量が最大となる位置と、漏れ量が最少となる位置とが存在する。即ち、図3(a)に示すように、ドライブギヤ16の外歯16aの頂点とドリブンギヤ17の内歯17aの頂点とが、吸入口7aと排出口7bとの間を仕切る区間Aにおいて、対向する回転角度位置ωp1では、ドライブギヤ16の外歯16aとドリブンギヤ17の内歯17aとの頂点同士のクリアランスが最少となり、かつ吸入口7aと排出口7bとの間にあって、それら外歯16aと内歯17aとが仕切りを構成する形となるので、上記漏れ量Qは、図4に示すように、駆動中の電動オイルポンプ10から作用する油圧Pに応じて変化するものの、最少の漏れ量Qminとなる。
【0041】
反対に、図3(b)に示すように、ドライブギヤ16の外歯16aの頂点とドリブンギヤ17の内歯17aの頂点とが、半ピッチ分移動した回転角度位置ωp2では、吸入口7aと排出口7bとの間を仕切る区間Aにおいて、それら外歯16aと内歯17aとの頂点同士がずれた分、クリアランスが大きくなると共に、区間Aにおける谷部16bと谷部17bとの間の空間が吸入口7aと排出口7bとを架け渡して連通する形となるので、上記漏れ量Qは、図4に示すように、駆動中の電動オイルポンプ10から作用する油圧Pに応じて変化する最大の漏れ量Qmaxとなる。
【0042】
駆動中の電動オイルポンプ10から停止中の機械式オイルポンプ7に作用する油圧Pを一定と仮定すると、ドライブギヤ16の回転方向位置ωpと漏れ量比率(変動比率)Qrとの関係は、図5に示すような正弦波状となる。即ち、図3(a)に示すドライブギヤ16の回転方向位置ωp1では漏れ量比率Qrが最少値Qrminとなり、図3(b)に示すドライブギヤ16の回転方向位置ωp2では漏れ量比率Qrが最大となる。このような漏れ量比率Qrのうち、許容範囲Qrp以下であれば、大幅に油圧が損失することがなく、許容範囲内といえる。従って、機械式オイルポンプ7を停止する際のドライブギヤ16の回転方向位置ωpは、図3(a)に示す回転方向位置ωp1を中心に、図5に示す区間Zの範囲内に位置調整することが好ましい。
【0043】
なお、以上の説明においては、電動オイルポンプ10の駆動中における機械式オイルポンプ7の停止位置における漏れ量の関係について説明したが、機械式オイルポンプ7の駆動中における電動オイルポンプ10の停止位置における漏れ量の関係も同様である。また、電動オイルポンプ10のドライブギヤと電動モータ11の駆動軸11Aとの位置関係も、図3と同様にキー溝にキーを挿入して一義的に位置決めすることで、同様にレゾルバ12の検出に基づく位置調整制御を可能にするものである。
【0044】
次に、このドライブギヤ16の位置調整の制御について図6及び図7に沿って説明する。上記ハイブリッド制御部21は、車両100の走行中にあって本位置調整制御を開始し(S1)、時点t1において、例えば運転者がフットブレーキを踏圧するなどして車両100の減速を要求する運転操作を行うと、内燃エンジン2を停止し(S2)、第1クラッチ6を解放して内燃エンジン2を車両駆動系から切離すと共に、駆動用モータ3による回生制御を実行する(S3)。これにより、車両100の車速は徐々に減速されていき、また、駆動用モータ3の回転数も低下していく。そして、時点t2において、不図示の車速センサの検出結果に基づき車両100の停止が判断されると(S4)、自動変速機4に内蔵されている第2クラッチ4Cを解放し(S5)、つまり自動変速機4をニュートラル状態にする。
【0045】
このように車両100が停止されると、車両駆動系(特に自動変速機4の入力軸4A)の回転が停止されるため、機械式オイルポンプ7の回転駆動が停止される。すると、ハイブリッド制御部21は、油圧制御装置14(油圧調圧部)に対する油圧供給を確保するため、電動モータ11の駆動を開始し、電動オイルポンプ10による油圧供給を開始する(図2参照)。
【0046】
続いて、上述のように車両100が停止され、第1クラッチ6及び第2クラッチ4Cが解放されると、駆動用モータ3とその駆動軸3A、自動変速機4の入力軸4A、レゾルバ8、機械式オイルポンプ7が自由に回転自在な状態となるので、機械式オイルポンプ7(ドライブギヤ16)の回転方向の停止位置の位置調整制御に移行する。
【0047】
即ち、まずハイブリッド制御部21は、レゾルバ8により停止している駆動軸3Aの回転方向の角度位置、つまりドライブギヤ16の回転方向位置ωpを検出する(S6)。つづいて、ハイブリッド制御部21は、ドライブギヤ16の回転方向位置ωpが上述した区間Z(図5参照)の範囲内であるか否かを判定する(S7)。
【0048】
ここで、ドライブギヤ16の回転方向位置ωpが区間Zの範囲内でない場合は(S7のNo)、図3(a)に示す回転方向位置ωp1(即ち、ドライブギヤ16の外歯16aの頂点とドリブンギヤ17の内歯17aの頂点とが対向する位置)を目標として、駆動用モータ3を駆動することで(S8)、停止していたドライブギヤ16を再度回転駆動し、レゾルバ8でドライブギヤ16の回転方向位置ωpを検出しつつ(S6)、ドライブギヤ16の回転方向位置ωpが区間Zの範囲内となるまでドライブギヤ16の位置調整を行う。そして、時点t3において、ドライブギヤ16の回転方向位置ωpが区間Zの範囲内となると(S7のYes)、駆動用モータ3を停止し、本位置調整制御を終了する(S10)。
【0049】
このように機械式オイルポンプ7のドライブギヤ16の回転方向位置ωpが区間Zの範囲内に位置調整されることで、上述したように駆動中の電動オイルポンプ10から作用する油圧に基づくオイルの漏れ量比率Qrは、許容範囲Qrp以下に抑えられることになる。これにより、停止中の機械式オイルポンプ7のオイル漏れによる油圧損失が大幅に低減されるため、例えば油路a1に逆止弁等を設けることを不要にすることができる。
【0050】
その後、時点t4において、例えば運転者がフットブレーキの踏圧を解放してアクセルペダルを踏み込むなどして車両100の発進を要求する運転操作を行うと、自動変速機4の第2クラッチ4Cを係合すると共に駆動用モータ3による力行制御を開始し、いわゆるEV走行の状態で車両100が発進される。そして、時点t5において、車速が所定車速以上となると、ハイブリッド制御部21が内燃エンジン2の始動を判断し、該内燃エンジン2を点火して始動すると共に第1クラッチ6を係合して、時点t6までに内燃エンジン2と駆動用モータ3とを共に駆動源とするアシスト走行状態に移行し、以降は、アクセル開度やバッテリー31の残量等に基づいて、内燃エンジン2と駆動用モータ3とを適宜使分けた走行状態となる。
【0051】
ところで、車両を発進させて機械式オイルポンプ7が駆動されたタイミング(時点t4の後)では、機械式オイルポンプ7からの油圧上昇に基づき、電動オイルポンプ10による油圧供給が不要となるため、電動モータ11の駆動を停止して電動オイルポンプ10を停止することになる。この際は、上記ステップS6〜S9と同様に電動モータ11を駆動して位置調整することで、停止中の電動オイルポンプ10における漏れ量を許容範囲Qrp以下にすることが可能となる。これにより、停止中の電動オイルポンプ10のオイル漏れによる油圧損失が大幅に低減されるため、例えば油路a2に逆止弁等を設けることを不要にすることができる。
【0052】
以上説明したように本ハイブリッド駆動装置1によると、機械式オイルポンプ7及び電動オイルポンプ10のうちの一方のオイルポンプを停止した後、駆動中の他方のオイルポンプから停止中のオイルポンプに作用する油圧に基づき、該停止中のオイルポンプの回転方向の停止位置に応じて変動する油の漏れ量の比率が、許容範囲以下となるように、駆動用モータ3又は電動モータ11を停止後に再度駆動制御して、停止させるオイルポンプの停止位置の位置調整を実行するので、停止中のオイルポンプにおいて油圧逆流による漏れ量を大幅に低減することができ、機械式オイルポンプ7及び電動オイルポンプ10の排出口に繋がる油路a1,a2に逆止弁を設けることを不要とすることができる。これにより、ハイブリッド駆動装置のコンパクト化を可能すると共に、自動変速機4を内燃エンジンだけを駆動源とする自動変速機との共通化することができる。
【0053】
また、停止中のオイルポンプの停止位置を位置調整する際、例えば機械式オイルポンプ7を一例とすると、吸入口7aと排出口7bとの間の区間Aにあって、ドライブギヤ16の外歯16aの頂点とドリブンギヤ17の内歯17aの頂点とが対向する位置を目標とするので、つまり停止中のオイルポンプの最も漏れ量が少ない位置を目標として位置制御することができる。
【0054】
さらに、本実施の形態で説明したようなシリーズ式のハイブリッド駆動装置1にあって、第1クラッチ6及び第2クラッチ4Cを解放することで、車両駆動系の駆動用モータ3を内燃エンジン2及び車輪90に対して駆動伝達を切断した後、該駆動用モータ3に駆動連結された機械式オイルポンプ7を位置調整することを可能とすることができる。
【0055】
また特に、第2クラッチ4Cが自動変速機4に内蔵された変速用クラッチからなるので、自動変速機4と駆動用モータ3との間に新たなクラッチを設けることなく、変速用クラッチによって自動変速機4をニュートラル状態にすることで、駆動用モータ3と車輪90との駆動伝達を切断することができる。
【0056】
また、駆動用モータ3の駆動軸3Aと機械式オイルポンプ7との組付け時に、互いの相対角度位置を位置決めする位置決め手段としてキー溝4Aaを備えているので、駆動用モータ3及びレゾルバ8と機械式オイルポンプ7のドライブギヤ16との回転角度位置を一義的に位置決めすることができ、これにより、レゾルバ8の検出に基づき機械式オイルポンプ7に対して位置調整を実行することを可能とすることができる。
【0057】
なお、以上説明した本実施の形態においては、車両用駆動装置の一例としてハイブリッド駆動装置1を説明したが、アイドルストップ車両用駆動装置や電気自動車用駆動装置などにあって、2つのオイルポンプが並列的に配設された駆動装置であれば、どのようなものにも本発明を適用し得る。また、ハイブリッド駆動装置1は、シリーズ式のものを説明したが、いわゆるパラレル式、スプリット式、シリーズ・パラレル式のような形式であっても、同様に、2つのオイルポンプが並列的に配設された駆動装置であれば、どのようなものにも本発明を適用し得る。
【0058】
また、以上説明した本実施の形態においては、車両100を停止した後に、駆動用モータ3を駆動して機械式オイルポンプ7の回転位置を調整する場合を説明したが、車両100を停止する場合に合わせて、機械式オイルポンプ7の回転位置を調整するように構成してもよい。この場合では、車両100の惰性走行状態にあって、第1クラッチ6を解放すると共に内燃エンジン2を停止し、その後、車両100の停止に合わせて、アクセルやフットブレーキの操作によって変化するモータの出力トルクの変化が車両100に伝わらないように第2クラッチ4Cをスリップさせていく。この際、該第2クラッチ4Cのスリップ状態を制御しつつ駆動用モータ3を停止させる際に、機械式オイルポンプ7の回転位置を考慮して該駆動用モータ3を停止することになる。
【0059】
また、本実施の形態において、機械式オイルポンプ7や電動オイルポンプ10は、いわゆる内接型のギヤ式オイルポンプであるものを説明したが、これに限らず、ベーン式オイルポンプ、クレセント型のギヤ式オイルポンプ、外接型のギヤ式オイルポンプなどであっても、オイル漏れ量が停止位置によって変動するオイルポンプであれば本発明を適用することができる。また、内接型のギヤ式オイルポンプとして、歯面の形状をトロコイド状に形成してもよいことは勿論のことである。
【0060】
また、本実施の形態において、自動変速機4は、例えば複数の変速用クラッチ(第2クラッチ)4Cを有する多段式自動変速機を一例に説明したが、これに限らず、ベルト式無段変速機、トロイダル式無段変速機等であってもよく、特にニュートラル状態に動力伝達を切断し得るクラッチを有する自動変速機であれば好ましい。また特に、自動変速機に動力伝達を切断し得るクラッチを内蔵していない場合は、駆動用モータと車輪との間の動力伝達を切断し得るクラッチを別に設けても構わない。更に、自動変速機が発進クラッチ等を有している場合は、これを第2クラッチとしても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1 車両用駆動装置(ハイブリッド駆動装置)
2 内燃エンジン
2A 出力軸
3 第1回転電機(駆動用モータ)
3A 駆動軸
4Aa 位置決め手段(キー溝)
4Ab 位置決め手段(キー溝)
4 自動変速機
4C 第2クラッチ(変速用クラッチ)
6 第1クラッチ
7 第1オイルポンプ(機械式オイルポンプ)
7a 吸入口
7b 排出口
8 回転角センサ(レゾルバ)
10 第2オイルポンプ(電動オイルポンプ)
11 第2回転電機(電動モータ)
11A 駆動軸
13 油路構造
16 ドライブギヤ
16a 外歯
16c 位置決め手段(キー)
16d 位置決め手段(キー)
17 ドリブンギヤ
17a 内歯
21 制御部(ハイブリッド制御部)
90 車輪
a1,a2 油路
Qr 漏れ量の比率
Qrp 許容範囲
ωp 回転方向の停止位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転電機の駆動軸に駆動連結された第1オイルポンプと、
前記第1回転電機と独立して駆動自在な第2回転電機の駆動軸に駆動連結された第2オイルポンプと、
前記第1オイルポンプ及び前記第2オイルポンプのそれぞれに連通する2つの油路が合流されて油圧調圧部に接続され、互いの油路に油が流れる油路構造と、
前記第1オイルポンプ及び前記第2オイルポンプの一方のオイルポンプの停止中に他方のオイルポンプを駆動制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記一方のオイルポンプを停止する場合、又は停止した後、該一方のオイルポンプの回転方向の停止位置に応じて変動する油の漏れ量の比率が許容範囲以下となるように、前記第1回転電機と第2回転電機とのうちの前記一方のオイルポンプを駆動する回転電機を駆動制御して、前記一方のオイルポンプの停止位置の位置調整を実行する、
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1オイルポンプ及び前記第2オイルポンプは、外歯が形成されたドライブギヤと、内歯が形成されたドリブンギヤと、油を吸入する吸入口と、油を排出する排出口と、を有するギヤ式オイルポンプからなり、
前記制御部は、前記停止中の一方のオイルポンプの停止位置を位置調整する際、前記吸入口と前記排出口との間にあって、前記ドライブギヤの外歯の頂点と前記ドリブンギヤの内歯の頂点とが対向する位置を目標とする、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
内燃エンジンの出力軸と車輪を駆動可能な前記第1回転電機の駆動軸との間の駆動力の伝達を遮断し得る第1クラッチと、
前記第1回転電機の駆動軸に駆動連結され、該駆動軸の回転を変速して車輪に出力し得る自動変速機と、
前記第1回転電機の駆動軸と前記車輪との駆動伝達を断接し得る第2クラッチと、を備え、
前記制御部は、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチを解放した後、前記第1オイルポンプに対して前記位置調整を実行してなる、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1回転電機の駆動軸の回転位置を検出する回転角センサと、
前記第1オイルポンプの組付け時に、前記第1回転電機の駆動軸と前記第1オイルポンプとの互いの相対角度位置を位置決めする位置決め手段と、を備え、
前記制御部は、前記回転角センサによって検出された回転位置に基づき、前記第1オイルポンプに対して前記位置調整を実行する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68313(P2013−68313A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209340(P2011−209340)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】