説明

車両駆動装置の運転方法および装置

【課題】駆動装置の高い動特性を可能にする、ハイブリッド車駆動装置の運転方法および装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの内燃機関(10)と、少なくとも1つの内燃機関(10)と機械的に結合されている電気機械(20)と、少なくとも1つの電気機械(20)および少なくとも1つの内燃機関(10)と作動結合されている少なくとも1つの搭載電源内のエネルギー貯蔵装置とを備えた車両駆動装置の運転方法において、少なくとも1つの内燃機関(10)および少なくとも1つの電気機械(20)が要求駆動目標トルクを本質的に共同で発生し、1つまたは複数の電気機械(20)の瞬間電気機械トルク余裕(ME res)が決定され、且つこの瞬間電気機械トルク余裕が、少なくとも1つまたは複数の内燃機関(10)に対する内燃機関トルク余裕の設定において、内燃機関トルク余裕が最小にされるように考慮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特にハイブリッド車駆動装置の運転方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エミッションおよび燃料消費を低減させるためにハイブリッド車が既知である。その目的は、内燃機関を好ましい効率の範囲内において運転すること、車両を停止したときないしは車両速度が低いときに内燃機関を遮断し且つ電気駆動で走行すること、並びに制動エネルギーを回生利用することである。パラレル・ハイブリッドにおいては、内燃機関および1つまたは複数の電気機械のトルクの加算が行われる。電気機械は、例えば始動充電発電機として、ベルト駆動装置または内燃機関のクランク軸と結合されている。
【0003】
最新の内燃機関においては、種々の運転点が、排気ガス・エミッションおよび燃料消費の観点から問題となることがある。ガソリン・エンジンにおいては、例えば高いトルクが理論空気/燃料混合物からの偏差を必要とすることがあり、同様に、部品温度を許容限界内に保持するために、全負荷リッチ化が必要となることがある。きわめて小さいトルクを設定するために、通常遅れ方向への点火角シフトが行われ、この点火角シフトは、トルク余裕を得るために、例えばアイドリングにおいて急速なトルク上昇を可能にするためにも使用される。しかしながら、この点火角シフトにより効率は悪くなる。惰行への切換に関連して、触媒内の酸素過剰により高い窒素酸化物エミッションが発生することがある。同様に、ディーゼル・エンジンの運転においては、高いトルクの場合に高い粒子濃度数および窒素酸化物エミッションが予想され、低いトルクの場合に触媒が完全に冷却する危険性が存在する。
【0004】
ドイツ特許出願第102004044507号は、少なくとも1つの内燃機関および少なくとも1つの電気機械を備えた車両駆動装置の運転方法および装置を開示し、この場合、内燃機関および電気機械は、要求駆動目標トルクを共同で発生する。電気機械を適切に使用することにより、内燃機関最適目標トルクの好ましくないトルク範囲および好ましくない高い変化速度が回避可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、駆動装置の高い動特性を可能にする、ハイブリッド車駆動装置の運転方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも1つの内燃機関および少なくとも1つの電気機械が要求駆動目標トルクを本質的に共同で発生し、1つまたは複数の電気機械の瞬間電気機械トルク余裕が決定され、且つこの瞬間電気機械トルク余裕が、少なくとも1つまたは複数の内燃機関に対する内燃機関トルク余裕の設定において、内燃機関トルク余裕が最小にされるように考慮されることが提案される。このとき、全体としては全駆動装置の駆動トルクに対して所定のトルク余裕が存在する。駆動装置の全駆動トルクに対する要求トルク余裕を設定するために、電気機械の電気機械トルク余裕がきわめて小さくなったときにはじめて、高い燃料消費および排気ガス・エミッションを伴う点火角遅れ設定による内燃機関トルク余裕を設定すればよいことが有利である。点火角設定により、内燃機関トルクのほとんど遅れのない変化特に低減を行うことが可能である。内燃機関のトルク操作のために2つの経路が利用可能であり、この場合、緩速経路は特に電気式絞り弁による空気質量流量制御を意味し、および急速経路は点火角調節特に点火角遅れ調節を意味する。最新の電気機械のトルク操作は内燃機関のトルク操作の緩速経路に比較してきわめて高い動特性を有している。本発明による方法は駆動装置の高い動特性を可能にする。
【0007】
また、少なくとも1つの内燃機関と、少なくとも1つの内燃機関と機械的に結合されている電気機械と、少なくとも1つの電気機械および少なくとも1つの内燃機関と作動結合されている少なくとも1つの搭載電源内のエネルギー貯蔵装置とを備えた車両駆動装置の運転装置において、少なくとも1つの内燃機関および少なくとも1つの電気機械が要求駆動目標トルクを本質的に共同で発生すること、および1つまたは複数の電気機械の瞬間電気機械トルク余裕が決定され、且つこの瞬間電気機械トルク余裕が、少なくとも1つまたは複数の内燃機関に対する内燃機関トルク余裕の設定において、内燃機関トルク余裕が最小にされ且つ全体として全駆動装置の駆動トルクに対して所定のトルク余裕が存在するように考慮されるべく全駆動装置に対する許容目標トルクおよび全駆動装置に対する目標トルクを設定するために、上位の制御装置が形成されていることが提案される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、1つまたは複数の内燃機関のトルクおよび1つまたは複数の電気機械のトルクが合計されて駆動トルクを与えるあらゆるハイブリッド駆動装置において使用可能である。
【0009】
電気機械トルク余裕は、1つまたは複数の電気機械、1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置および1つまたは複数の搭載電源の瞬間運転状態に基づいて高い精度で決定可能である。不足の内燃機関トルク余裕が1つまたは複数の電気機械により補償されるとき、小さい燃料消費および小さい排気ガス・エミッションを同じままに維持しながら高い動特性を保証可能である。
【0010】
全駆動装置に対する許容駆動目標トルクおよび駆動目標トルクが上位の制御装置により設定されることが目的に適っている。駆動装置の全駆動トルクに対するトルク余裕が許容駆動目標トルクと駆動目標トルクとの間の差に等しく、この場合、許容駆動目標トルクが駆動目標トルクより大きいかまたは駆動目標トルクに等しいことが好ましい。
【0011】
1つまたは複数の搭載電源および1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置の供給を保証する充電目標トルクが電気機械の1つまたは少なくとも1つに設定されるとき、それは有利である。充電目標トルクが負の場合、エネルギー貯蔵装置を再び補充するために、電気機械の1つまたは少なくとも1つが発電運転されることが好ましい。このとき、電気機械の負荷を補償するために、全駆動装置に対する許容駆動目標トルクおよび駆動目標トルクが上昇されることが好ましい。
【0012】
1つまたは複数の電気機械、1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置および1つまたは複数の搭載電源の瞬間運転状態に基づき、1つまたは複数の電気機械の瞬間最大トルクおよび瞬間最小トルクが決定可能である。電気機械トルク余裕が、瞬間最大トルクと充電目標トルクとの差として形成されることが好ましい。
【0013】
内燃機関に対する許容目標トルクが、全駆動装置に対する許容駆動目標トルクから、充電目標トルクだけ補正されて決定されてもよく、この場合、許容目標トルクは空気質量流量設定により発生される。
【0014】
内燃機関目標トルクが、充電目標トルクだけ補正された全駆動装置に対する駆動目標トルクから形成されてもよく、この場合、内燃機関目標トルクは点火角調節を介して設定される。
【0015】
電気機械トルク余裕が全駆動トルクに対する要求トルク余裕より小さくなったときにはじめて、内燃機関トルク余裕が設定されるとき、高い燃料消費および高い排気ガス・エミッションを僅かな運転過程に制限可能である。
【0016】
内燃機関に対する許容目標トルクが内燃機関に対する目標トルクより常に大きく、または少なくとも等しく選択されることが好ましい。これが最大値選択により行われることが目的に適っている。
【0017】
内燃機関の実際トルクと目標トルクとの間の差トルクが1つまたは複数の電気機械に重ね合わされ、および差トルクと充電目標トルクとの和から電気機械の目標トルクが形成されてもよい。ここで、電気機械のトルク余裕が使用されることが有利である。つまり全駆動トルクに対するトルク余裕が利用される場合、即ち駆動目標トルクが高い動特性で許容駆動目標トルクの方向に上昇される場合、最大値選択に基づき、内燃機関に対する許容目標トルクにおいても、高い勾配を有する上昇を発生可能である。むだ時間要素および一次遅れ要素としてモデル化された吸気管内の動的充填効果により、内燃機関が所定の許容目標トルクに基づいて最適点火角において発生するであろう内燃機関のベース・トルクはこの場合僅かに遅れて追従し、内燃機関の実際トルクはベース・トルクに制限され且つこのとき一時的に内燃機関に対する目標値から偏差を有している。この場合に発生した差トルクは、1つまたは複数の電気機械に重ね合わされ且つ充電目標トルクと共に電気機械に対する目標トルクを与える。
【0018】
本発明のその他の実施形態、観点および利点が、特許請求の範囲内のその要約とは無関係に、一般性を制限することなく、図面により以下に示された本発明の実施例から得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に概略図で示されている、本発明により提案された車両駆動装置の運転方法においては、少なくとも1つの内燃機関10と、少なくとも1つの内燃機関と機械的に結合されている電気機械20とが設けられている。内燃機関10は、特に、吸気管噴射と、図示されていない電子式加速ペダルと、電子式絞り弁と、図示されていない触媒とを備えたオットー・サイクル・エンジンである。内燃機関10のはずみ車が、好ましくはクランク軸始動充電発電機として形成されている電気機械20と結合されている。
【0020】
さらに、少なくとも1つの電気機械20および少なくとも1つの内燃機関10と作動結合されている、図示されていないエネルギー貯蔵装置が、少なくとも1つの搭載電源内に設けられている。エネルギー貯蔵装置はバッテリであることが好ましく、例えば、電気機械20が発電運転されるとき、エネルギー貯蔵装置は電気機械20により充電可能である。内燃機関10および電気機械20は、要求駆動目標トルクMを本質的に共同で発生し、この場合、内燃機関10の実際トルクMVM istおよび電気機械20の実際トルクME istは加算されて全駆動装置の実際トルクMistが形成され、即ち内燃機関10および電気機械20の合計トルクが形成される。
【0021】
図示されていない上位の制御装置が全駆動装置に対する許容駆動目標トルクMおよび駆動目標トルクMを設定する。MがMより大きく設定されることにより、両方の変数の差M−Mに対応する、駆動装置の全駆動トルクMistに対する余裕が要求される。
【0022】
充電目標トルクMLadeにより、搭載電源および電気エネルギー貯蔵装置の供給を保証する係合が行われる。充電目標トルクMLadeが負の場合、電気機械20は発電運転され、電気機械20の負荷を補償するために全駆動装置に対する許容駆動目標トルクMおよび駆動目標トルクMが上昇される。
【0023】
電気機械20、1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置および1つまたは複数の搭載電源の瞬間運転状態から、電気機械20の瞬間最大トルクME maxおよび瞬間最小トルクME minが決定される。電気機械20の最大トルクME maxと充電目標トルクMLadeとの差は、電気機械20の電気機械トルク余裕ME resに対応する。
【0024】
吸気管噴射を有する最新のオットー・サイクル・エンジンは、たいてい、空気質量流量制御のための電子式絞り弁を有している。加速ペダルは、電子式絞り弁から機械的に切り離されている。絞り弁操作要素と、吸気管内における動的充填効果との有限設定速度は、所定の空気質量流量と、これから得られる内燃機関トルクとの高い動的設定を行わない。これに対して、点火角係合ZWEおよびそれに伴う内燃機関トルクの低下はほとんど遅れなく実行可能である。したがって、トルク操作のために2つの経路が存在し、これらの経路に対してそれぞれ、付属の目標トルクMVM LおよびMVMが設定可能である。
【0025】
内燃機関10に対する許容目標トルクMVM Lは内燃機関10の全空気経路に作用し、且つ吸気管内の空気質量流量がそれに対応して設定される。最適点火角においては、内燃機関10は、ベース・トルクMVM Basと呼ばれるトルクを発生するであろう。定常範囲内においては、ベース・トルクMVM Basは、内燃機関10の許容目標トルクMVM Lに対応する。
【0026】
非定常範囲内においては、内燃機関10に対する燃焼空気がその中に吸い込まれる吸気管内に動的充填効果が作用する。許容目標トルクMVM Lのベース・トルクMVM Basへの伝達は、近似的に、むだ時間要素11および一次遅れ要素12(PT1)の直列配置により表わすことができる。
【0027】
絞り弁調節を介して空気経路に作用する許容目標トルクMVM Lのほかに、内燃機関10に対する目標トルクMVMは急速な点火角経路に作用する。点火角を最適点火角に対して遅れ調節することにより、内燃機関10の効率は、ベース・トルクMVM Basに対して低下される。
【0028】
図1のモデルは、内燃機関10内の状況を簡単に示している。内燃機関10に対する目標トルクMVMは、ベース・トルクMVM Basと最小ベース・トルクMVM Bas minとの間の範囲に制限され且つ内燃機関10の実際トルクMVM istを与える。点火角係合における時間遅れは小さいので無視することができる。この場合、ベース・トルクMVM Basは、最適点火角のときに得られる内燃機関10の実際トルクMVM istに対応する。最小ベース・トルクMVM Bas minは、ベース・トルクMVM Basより小さく且つ最大点火角遅れ設定の場合における実際トルクMVM istに対応する。
【0029】
いくつかの運転状態において、許容目標トルクMVM Lは、上位の制御ユニットによって目標トルクMVMより大きく選択され、この場合、これらの差はトルク余裕に対応する。点火角調節は遅れ方向に発生する。内燃機関10の実際トルクMVM istは、このとき、例えばアイドリングにおいて急速トルク上昇、したがって負荷変化に対する急速応答を可能にするために、点火角遅れ設定の解除と関連して、または例えば自動変速機の場合には切換過程と関連して、目標トルクMVMの上昇によりほぼ遅れなく上昇可能である。
【0030】
最新の内燃機関10においては、内燃機関10の瞬間実際トルクMVM istが、そのエンジン制御により、測定変数または評価変数に基づいて決定され、吸気管噴射を有するガソリン・エンジンにおいては、例えばエンジン回転速度、吸気管圧力、点火時期および空気数λから決定される。原理的に、特にターボ過給を有するディーゼル・エンジンにおいてもまた、トルク操作は、許容目標トルクMVM Lを有する緩速経路と、目標トルクMVMを有する急速経路とに分配される。
【0031】
これに対して、最新の電気機械20におけるトルク操作は、内燃機関10のトルク操作の緩速経路に比較してきわめて高い動特性を有している。
図1からわかるように、内燃機関10の急速点火角経路に対する目標トルクMVMは、充電目標トルクMLadeだけ補正された全駆動装置に対する駆動目標トルクMから得られる。
【0032】
内燃機関10に対する許容目標トルクMVM Lは、全駆動装置に対する許容駆動目標トルクMから充電目標トルクMLadeだけ補正されて決定される。電気機械20のトルク余裕ME resは、内燃機関10のトルク余裕を最小にするために差し引かれる。したがって、内燃機関10におけるトルク余裕は、消費およびエミッションの点で好ましくない点火角遅れ調節と関連して、電気機械20のトルク余裕ME resが、駆動装置の全駆動トルクMistに対する要求余裕を設定するのにもはや十分でないときにはじめて設定される。
【0033】
内燃機関10に対する許容目標トルクMVM Lが内燃機関10の急速点火角経路に対する目標トルクMVM以下に低下しないように、最大値選択(MAX)が行われる。
全駆動トルクMistに対する余裕が利用された場合、即ち駆動目標トルクMが高い動特性で許容駆動目標トルクMの方向に上昇された場合、最大値選択(MAX)に基づき、内燃機関10に対する許容目標トルクMVM Lにおいてもまた高い勾配を有する上昇が発生することがある。むだ時間要素11および一次遅れ要素12(PT1)としてモデル化された吸気管内における動的充填効果により、ベース・トルクMVM Basは、この場合に僅かに遅れて追従する。内燃機関10の実際トルクMVM istはベース・トルクMVM Basに制限され、且つこのとき一時的に、内燃機関10に対する目標トルクMVMから偏差を有している。この場合に発生した差トルクMVM deltaは、電気機械20に重ね合わされ且つ充電目標トルクMLadeと共に電気機械20の目標トルクMを与え、これにより、電気機械20のトルク余裕ME resが利用される。
【0034】
電気機械20は目標トルクMを高い動特性で変換し、これにより、電気機械20のトルク操作は本質的に遅れなく実行される。したがって、内燃機関10および電気機械20の実際トルクMVM istおよびME istから得られる全駆動装置の実際駆動トルクMistは駆動目標トルクMに遅れなく追従する。
【0035】
図2a−図2dに、図1の概略図からのトルクの時間線図が示され、ここで、図2aは全駆動装置に対する許容目標トルクMおよび目標トルクMの線図を示し、図2bは内燃機関10のベース・トルクMVM Basおよび実際トルクの線図を示し、図2cは電気機械20の実際トルクME istの線図を示し、図2dは全駆動装置の実際トルクMistの線図を示す。これらの図にはそれぞれ、例えば車両の他のギヤ段への切換に関連して発生することがある、駆動目標トルクMの一時的な復帰の理想的な線図が示されている。この場合、駆動目標トルクMは、一時的に例えば100Nmから50Nmに低下され、一方で、許容駆動目標トルクMは一定のままであり且つ例えば100Nmの値を有している。これらのトルク値は、単に一例であると理解されるべきである。
【0036】
図を簡単にするために、以下においては充電目標トルクMLadeを介しての係合は考慮されない。即ち、MLade=0が成立する。電気機械20の最大トルクME maxは、例えば30Nmの値を有し且つ考慮される時間区間の間は一定と仮定される。したがって、電気機械20のトルク余裕ME resに対しては、ME res=30Nmが成立する。
【0037】
図2bが示すように、駆動目標トルクMの低下と共に、内燃機関10のベース・トルクMVM Basもまた遅れて低下する。この低下は、ME res=30Nmを有する電気機械20のトルク余裕ME resを、許容駆動目標トルクM=100Nmから差し引いた値に制限する。ベース・トルクMVM Basは、駆動目標トルクMの低下の間に、70Nmの値に漸近的に接近する。MLade=0であるので、内燃機関10の急速点火角経路に対する目標トルクMVMは、駆動目標トルクMに対応する。駆動目標トルクMがベース・トルクMVM Basの下側に存在するかぎり、図2bに与えられている大きさの点火角係合ZWEが行われ、且つMVM ist=Mが成立する。
【0038】
許容駆動目標トルクMと電気機械20のトルク余裕ME resとの差に対応する値である70Nmを超えて駆動目標トルクMが再び上昇された場合、ベース・トルクMVM Basは、最大値選択に基づいて追従する。このとき発生するベース・トルクMVM Basの遅れは、内燃機関10における実際トルクMVM istを、駆動目標トルクMに対応する内燃機関10に対する目標トルクMVMよりも遅れて上昇させる。この差トルクMVM deltaは電気機械20に重ね合わされる。したがって、電気機械20は内燃機関10の遅れトルク上昇を補償する。
【0039】
この過程の間に、全駆動装置の実際駆動トルクMist、即ち内燃機関10および電気機械20の合計トルクは、駆動目標トルクMに対応する。全実際駆動トルクMistに対する要求余裕は許容され且つ利用され、ベース・トルクMVM Basは低減され、このことは点火角遅れ設定を最小にする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は内燃機関および電気機械を用いた提案方法の好ましい略図を示す。
【図2】図2aは全体駆動装置に対する許容目標トルクおよび目標トルクのトルク時間線図を示し、図2bは内燃機関のベース・トルクおよび実際トルクのトルク時間線図を示し、図2cは電気機械の実際トルクのトルク時間線図を示し、図2dは全駆動装置の実際トルクのトルク時間線図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの内燃機関(10)と、少なくとも1つの内燃機関(10)と機械的に結合されている電気機械(20)と、少なくとも1つの電気機械(20)および少なくとも1つの内燃機関(10)と作動結合されている少なくとも1つの搭載電源内のエネルギー貯蔵装置とを備えた車両駆動装置の運転方法において、
少なくとも1つの内燃機関(10)および少なくとも1つの電気機械(20)が要求駆動目標トルク(M)を本質的に共同で発生すること、
1つまたは複数の電気機械(20)の瞬間電気機械トルク余裕(ME res)が決定され、且つこの瞬間電気機械トルク余裕が、少なくとも1つまたは複数の内燃機関(10)に対する内燃機関トルク余裕の設定において、内燃機関トルク余裕が最小にされるように考慮されること、
を特徴とする車両駆動装置の運転方法。
【請求項2】
電気機械トルク余裕(ME res)が、1つまたは複数の電気機械(20)、1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置および1つまたは複数の搭載電源の瞬間運転状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
全駆動装置に対する許容駆動目標トルク(M)および駆動目標トルク(M)が上位の制御装置により設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の運転方法。
【請求項4】
駆動装置の全駆動トルク(Mist)に対するトルク余裕が許容駆動目標トルク(M)と駆動目標トルク(M)との間の差に等しく、この場合、許容駆動目標トルク(M)が駆動目標トルク(M)より大きいかまたは駆動目標トルク(M)に等しいことを特徴とする請求項3に記載の運転方法。
【請求項5】
1つまたは複数の搭載電源および1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置の供給を保証する充電目標トルク(MLade)が電気機械(20)の1つまたは少なくとも1つに設定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の運転方法。
【請求項6】
充電目標トルク(MLade)が負の場合、電気機械の1つまたは少なくとも1つが発電運転されることを特徴とする請求項5に記載の運転方法。
【請求項7】
電気機械(20)の負荷を補償するために、全駆動装置に対する許容駆動目標トルク(M)および駆動目標トルク(M)が上昇されることを特徴とする請求項6に記載の運転方法。
【請求項8】
1つまたは複数の電気機械(20)、1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置および1つまたは複数の搭載電源の瞬間運転状態に基づき、1つまたは複数の電気機械(20)の瞬間最大トルク(ME max)および瞬間最小トルク(ME min)が決定されることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載の運転方法。
【請求項9】
電気機械トルク余裕(ME res)が、瞬間最大トルク(ME max)と充電目標トルク(MLade)との差として形成されることを特徴とする請求項8に記載の運転方法。
【請求項10】
内燃機関(10)に対する許容目標トルク(MVM L)が、全駆動装置に対する許容駆動目標トルク(M)から、充電目標トルク(MLade)だけ補正されて決定され、この場合、許容目標トルク(MVM L)が空気質量流量設定により発生されることを特徴とする請求項5ないし9のいずれかに記載の運転方法。
【請求項11】
内燃機関目標トルク(MVM)が、充電目標トルク(MLade)だけ補正された全駆動装置に対する駆動目標トルク(M)から形成され、この場合、内燃機関目標トルク(MVM)が点火角調節を介して設定されることを特徴とする請求項5ないし10のいずれかに記載の運転方法。
【請求項12】
電気機械トルク余裕(ME res)が全駆動トルク(Mist)に対する要求トルク余裕より小さくなったときにはじめて、内燃機関トルク余裕が設定されることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の運転方法。
【請求項13】
内燃機関に対する許容目標トルク(MVM L)が内燃機関(10)に対する目標トルク(MVM)より常に大きく、または少なくとも等しく選択されることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の運転方法。
【請求項14】
内燃機関(10)の実際トルク(MVM ist)と目標トルク(MVM)との間の差トルク(MVM delta)が1つまたは複数の電気機械(20)に重ね合わされ、差トルク(MVM delta)と充電目標トルク(MLade)との和から電気機械(20)の目標トルク(M)が形成されることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の運転方法。
【請求項15】
少なくとも1つの内燃機関(10)と、少なくとも1つの内燃機関(10)と機械的に結合されている電気機械(20)と、少なくとも1つの電気機械(20)および少なくとも1つの内燃機関(10)と作動結合されている少なくとも1つの搭載電源内のエネルギー貯蔵装置とを備えた車両駆動装置の運転装置において、
少なくとも1つの内燃機関(10)および少なくとも1つの電気機械(20)が要求駆動目標トルク(M)を本質的に共同で発生すること、
1つまたは複数の電気機械(20)の瞬間電気機械トルク余裕(ME res)が決定され、且つこの瞬間電気機械トルク余裕が、少なくとも1つまたは複数の内燃機関(10)に対する内燃機関トルク余裕の設定において、内燃機関トルク余裕が最小にされ且つ全体として全駆動装置の駆動トルク(Mist)に対して所定のトルク余裕が存在するように考慮されるべく全駆動装置に対する許容目標トルク(M)および全駆動装置に対する目標トルク(M)を設定するために、上位の制御装置が形成されていること、
を特徴とする車両駆動装置の運転装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【公表番号】特表2008−538341(P2008−538341A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507031(P2008−507031)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060132
【国際公開番号】WO2006/111434
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】