説明

車体のルーフ構造

【課題】本発明は、側面衝突時にルーフパネルリインフォースメントに加わるモーメントを極力小さくして、ルーフパネルリインフォースメントを折れ難くすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車体のルーフ構造は、車体の幅方向両側で前後方向に延びるルーフサイドレール20と、車幅方向に延びる部材で左右の前記ルーフサイドレール20間に渡されるルーフパネルリインフォースメント40とを備え、ルーフパネルリインフォースメント40の左右両端部がエアバックのインフレータ39を高さ方向に回避した状態でルーフサイドレール20に連結される構成の車体のルーフ構造であって、ルーフパネルリインフォースメント40とルーフサイドレール20との連結点45cの高さ位置は、左右のインフレータ39間に位置するルーフパネルリインフォースメント40の車幅方向に延びる部位の中心線Cの高さ位置にほぼ等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の幅方向両側で前後方向に延びるルーフサイドレールと、車幅方向に延びる部材で左右の前記ルーフサイドレール間に渡されるルーフパネルリインフォースメントとを備え、前記ルーフパネルリインフォースメントの左右両端部がエアバックのインフレータを高さ方向に回避した状態で前記ルーフサイドレールに連結される構成の車体のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体のルーフ構造に関する技術が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載された車体のルーフ構造では、図5に示すように、車幅方向に延びるルーフパネルリインフォースメント101は、上方に緩やかに湾曲しており、その両端下面部に連結ブラケット102が連結されている。そして、前記連結ブラケット102の下側端部がルーフサイドレール104の上部に連結されている。また、ルーフサイドレール104の内側下方には、エアバックのインフレータ106が配置されている。
上記構成により、側面衝突時の荷重がセンターピラー107を介してルーフサイドレール104に加わると、ルーフサイドレール104に加わった横荷重は連結ブラケット102を介してルーフパネルリインフォースメント101に加わり、そのルーフパネルリインフォースメント101によって受けられる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−59649号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した車体のルーフ構造では、ルーフパネルリインフォースメント101が上方に緩やかに湾曲し、連結ブラケット102の上側に位置決めされている。このため、側面衝突に起因する横荷重Fの入力点Eはルーフパネルリインフォースメント101の中心線Cよりも距離Lだけ下方に位置している。したがって、ルーフパネルリインフォースメント101には、横荷重F×距離Lに相当するモーメントが図5において左回転方向に加わり、そのモーメントによりルーフパネルリインフォースメント101が中央部分で上方に折れ易くなる(二点鎖線参照)。この結果、側面衝突時におけるルーフサイドレール104及びセンターピラー107の車室内への進入量が大きくなる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、側面衝突時にルーフパネルリインフォースメントに加わるモーメントを極力小さくして、ルーフパネルリインフォースメントを折れ難くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車体の幅方向両側で前後方向に延びるルーフサイドレールと、車幅方向に延びる部材で左右の前記ルーフサイドレール間に渡されるルーフパネルリインフォースメントとを備え、前記ルーフパネルリインフォースメントの左右両端部がエアバックのインフレータを高さ方向に回避した状態で前記ルーフサイドレールに連結される構成の車体のルーフ構造であって、前記ルーフパネルリインフォースメントと前記ルーフサイドレールとの連結点の高さ位置は、左右の前記インフレータ間に位置する前記ルーフパネルリインフォースメントの車幅方向に延びる部位の中心線の高さ位置にほぼ等しいことを特徴とする。
【0007】
上記車体のルーフ構造において、側面衝突時の荷重がセンターピラー等からルーフサイドレールに横方向から加わると、そのルーフサイドレールに加わった荷重は連結点からルーフパネルリインフォースメントに加わり、そのルーフパネルリインフォースメントにより受けられる。
本発明によると、ルーフパネルリインフォースメントとルーフサイドレールとの連結点の高さ位置は、左右の前記インフレータ間に位置する前記ルーフパネルリインフォースメントの車幅方向に延びる部位の中心線の高さ位置に等しく設定されている。このため、前記連結点でルーフパネルリインフォースメントに加わる横荷重は、中心線に沿ってそのルーフパネルリインフォースメントの長手方向に加わるようになる。したがって、前記連結点でルーフパネルリインフォースメントに加わる横荷重がそのルーフパネルリインフォースメントを上下方向に曲げようとするモーメントは理論的にゼロとなる。このため、側面衝突時にルーフパネルリインフォースメントが中央部分で折れ曲がり難くなり、ルーフサイドレール、センターピラーの車室内への進入量を減少させることができる。
【0008】
請求項2の発明によると、ルーフパネルリインフォースメントは、帯板状のリインフォースメント本体と、そのリインフォースメント本体の長手方向両側に固定されて、前記インフレータを上方から囲う半筒状に形成されており、端縁が前記ルーフサイドレールに連結される構成の連結ブラケットとを有することを特徴とする。
本発明によると、ルーフパネルリインフォースメントは、リインフォースメント本体と連結ブラケットとに分割されているため、前記ルーフパネルリインフォースメントの加工が容易になる。
【0009】
請求項3の発明によると、連結ブラケットは、車体の前後方向における複数箇所で前記ルーフサイドレールに連結されていることを特徴とする。
このため、ルーフパネルリインフォースメントがルーフサイドレールに対して中心線回りに捻じれ難くなる。
請求項4の発明によると、左右の前記インフレータ間に位置する前記ルーフパネルリインフォースメントにサンルーフ用のリインフォースメントが支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、側面衝突時にルーフパネルリインフォースメントが中央部分で折れ曲がり難くなり、ルーフサイドレール、センターピラーの車室内への進入量を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施形態1]
以下、図1から図4に基づいて本発明の実施形態1に係る車体のルーフ構造について説明する。ここで、図1は本実施形態に係る車体のルーフ構造を表す縦断面図であり、図2、図3は車体のルーフ構造を表す部分斜視図である。また、図4はルーフパネルリインフォースメントの全体斜視図である。
なお、図中の前後左右及び上下は車体の前後左右及び上下に対応している。
【0012】
<車体のルーフ構造の概要ついて>
車体10の屋根部分には、図1に示すように、幅方向両側の位置で前後方向に延びるルーフサイドレール20が設けられている。なお、図1では、左側のルーフサイドレール20は省略されている。
ルーフサイドレール20は、パネル状のルーフサイドレールインナ22とルーフサイドレールリインフォース24、及びルーフサイドレールアウタ25とから中空閉断面状に構成されている。即ち、ルーフサイドレールインナ22の両端縁に形成されたフランジ部22fに対してルーフサイドレールリインフォース24の両端縁に形成されたフランジ部24fが溶接等により接合されて、内側の筒状体が形成される。次に、ルーフサイドレールリインフォース24のフランジ部24fに対して外側からルーフサイドレールアウタ25のフランジ部25fが接合されることで、外側の筒状体が形成される。これにより、上記した中空閉断面状のルーフサイドレール20が完成する。
ルーフサイドレール20は、前端部がフロントピラー(図示省略)により支持されており、中央部がセンターピラー30、後端部がリヤピラー(図示省略)により支持されている。センターピラー30は、図3に示すように、センターピラーインナ32とセンターピラーリインフォース34とにより中空閉断面状に形成されている。そして、図1(B)に示すように、センターピラーインナ32の上端部がルーフサイドレールインナ22の表側に接合されており、センターピラーリインフォース34の上端部がルーフサイドレールリインフォース24の表側に接合されている。なお、図3では、ルーフサイドレール20は省略されている。
【0013】
ルーフサイドレール20の車幅方向内側には、図1に示すように、カーテンシールドエアバックのインフレータ39が取り付けられている。インフレータ39はエアバックを膨らますための円筒状の部材であり、ルーフサイドレール20に沿ってそのルーフサイドレール20とほぼ同じ高さ位置に配置されている。
また、左右のルーフサイドレール20間には、車幅方向に延びるルーフパネルリインフォースメント40が、インフレータ39を高さ方向に回避した状態で渡されている。ルーフパネルリインフォースメント40は、図3に示すように、センターピラー30よりも若干後方に配置されており、そのルーフパネルリインフォースメント40によって、サンルーフ用のリインフォースメント50が支持されている。サンルーフ用のリインフォースメント50は、図2、図3に示すように、車幅方向両側の前後に設けられたステー51により、ルーフサイドレール20に固定されている。なお、図2においても、ルーフサイドレール20は省略されている。
サンルーフ用のリインフォースメント50は、図1に示すように、上方からルーフパネル55によって覆われており、そのルーフパネル55の左右端縁のフランジ部55fがルーフサイドレール20のフランジ部22f,24f,25fに接合されている。
【0014】
<ルーフパネルリインフォースメント40について>
ルーフパネルリインフォースメント40は、車体10が側面衝突荷重を受けたときにルーフサイドレール20及びセンターピラー30を車幅内側方向から支える部材であり、図4に示すように、リインフォースメント本体42と連結ブラケット45とから構成されている。
リインフォースメント本体42は、長手方向両端部が若干幅広の帯板状部材であり、長手方向に延びる突条42tと直線溝42mとにより、横断面形状が略波形に形成されている。そして、リインフォースメント本体42の長手方向両端部に連結ブラケット45が溶接等により固定されている。
連結ブラケット45は、カーテンシールドエアバックのインフレータ39を高さ方向に回避した状態で、リインフォースメント本体42をルーフサイドレール20のルーフサイドレールインナ22に連結する部材である。連結ブラケット45は、図1(A)、図4に示すように、前記インフレータ39を上方から囲うように略半筒状に形成されており、その連結ブラケット45の軸方向の長さ寸法がリインフォースメント本体42の端部幅寸法にほほ等しく設定されている。連結ブラケット45の径方向における一端部(基端部)には、リインフォースメント本体42の長手方向両端部に形成された接合面42fに溶接されるフランジ部45fが折り曲げ成形されている。また、連結ブラケット45の径方向における他端部(先端部)には、ルーフサイドレールインナ22にボルト止めされる連結孔45cが形成されている。連結孔45cは、連結ブラケット45の軸方向に二箇所設けられている。
連結ブラケット45の連結孔45cは、その連結ブラケット45のフランジ部45fがリインフォースメント本体42の接合面42fに溶接された状態で、リインフォースメント本体42の中心線C(図1(A)参照)と一致する高さ位置に形成されている。このため、連結ブラケット45の連結孔45cがルーフサイドレールインナ22にボルト止めされた状態で、図1(A)に示すように、ルーフパネルリインフォースメント40とルーフサイドレール20との連結点(連結孔45c)の高さ位置は、左右のインフレータ39間に位置するルーフパネルリインフォースメント40の車幅方向に延びる部位の中心線Cの高さ位置にほぼ等しくなる。
【0015】
<本実施形態に係る車体のルーフ構造の長所について>
本実施形態に係る車体のルーフ構造において、側面衝突時の荷重がセンターピラー30等からルーフサイドレール20に横方向から加わると、そのルーフサイドレール20に加わった横荷重Fは連結点(連結孔45c)からルーフパネルリインフォースメント40に加わり、そのルーフパネルリインフォースメント40により受けられる。
本実施形態では、ルーフパネルリインフォースメント40とルーフサイドレール20との連結点(連結孔45c)の高さ位置は、左右のインフレータ39間に位置するルーフパネルリインフォースメント40の車幅方向に延びる部位(リインフォースメント本体42)の中心線Cの高さ位置に等しく設定されている。このため、連結点(連結孔45c)でルーフパネルリインフォースメント40に加わる横荷重Fは、中心線Cに沿ってそのルーフパネルリインフォースメント40の長手方向に加わるようになる。したがって、前記連結点(連結孔45c)でルーフパネルリインフォースメント40に加わる横荷重Fがそのルーフパネルリインフォースメント40を上下方向に曲げようとするモーメントは理論的にゼロとなる。このため、側面衝突時にルーフパネルリインフォースメント40が中央部分で折れ曲がり難くなり、ルーフサイドレール20、センターピラー30の車室内への進入量を減少させることができる。
また、ルーフパネルリインフォースメント40は、リインフォースメント本体42と連結ブラケット45とに分割されているため、ルーフパネルリインフォースメント40の加工が容易になる。
また、連結ブラケット45は、車体の前後方向における二箇所でルーフサイドレール20に連結されているため、ルーフパネルリインフォースメント40がルーフサイドレール20に対して中心線C回りに捻じれ難くなる。
【0016】
<車体のルーフ構造の変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、サンルーフ用のリインフォースメント50を備える車体のルーフ構造について例示したが、サンルーフ用のリインフォースメント50を有しない通常の車体のルーフ構造に本発明を適用することも可能である。
また、連結ブラケット45を車体の前後方向の二箇所でルーフサイドレール20に連結する例を示したが、連結ブラケット45を三箇所以上でルーフサイドレール20に連結することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る車体のルーフ構造を表す縦断面図(A図)、及びルーフサイドレールとセンターピラーとの連結状態を表す縦断面図(B図)である。
【図2】車体のルーフ構造を表す部分斜視図である。
【図3】車体のルーフ構造を表す部分斜視図である。
【図4】ルーフパネルリインフォースメントの全体斜視図である。
【図5】従来の車体のルーフ構造を表す縦断面図である。
【符号の説明】
【0018】
20・・・・ルーフサイドレール
30・・・・センターピラー
39・・・・エアバックのインフレータ
40・・・・ルーフパネルリインフォースメント
42・・・・リインフォースメント本体
45・・・・連結ブラケット
45c・・・連結孔(連結点)
C・・・・・(ルーフパネルリインフォースメントの車幅方向に延びる部位の)中心線
50・・・・サンルーフ用のリインフォースメント


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向両側で前後方向に延びるルーフサイドレールと、車幅方向に延びる部材で左右の前記ルーフサイドレール間に渡されるルーフパネルリインフォースメントとを備え、前記ルーフパネルリインフォースメントの左右両端部がエアバックのインフレータを高さ方向に回避した状態で前記ルーフサイドレールに連結される構成の車体のルーフ構造であって、
前記ルーフパネルリインフォースメントと前記ルーフサイドレールとの連結点の高さ位置は、左右の前記インフレータ間に位置する前記ルーフパネルリインフォースメントの車幅方向に延びる部位の中心線の高さ位置にほぼ等しいことを特徴とする車体のルーフ構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車体のルーフ構造であって、
前記ルーフパネルリインフォースメントは、帯板状のリインフォースメント本体と、そのリインフォースメント本体の長手方向両側に固定されて、前記インフレータを上方から囲う半筒状に形成されており、端縁が前記ルーフサイドレールに連結される構成の連結ブラケットとを有することを特徴とする車体のルーフ構造。
【請求項3】
請求項2に記載された車体のルーフ構造であって、
前記連結ブラケットは、車体の前後方向における複数箇所で前記ルーフサイドレールに連結されていることを特徴とする車体のルーフ構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車体のルーフ構造であって、
左右の前記インフレータ間に位置する前記ルーフパネルリインフォースメントにサンルーフ用のリインフォースメントが支持されていることを特徴とする車体のルーフ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−56990(P2009−56990A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227400(P2007−227400)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】