説明

車体前部構造

【課題】
重量が軽く取り扱いが容易で歩行者保護を図ることが可能なダッシュボードアッパリッドを有する車体前部構造を提供することである。
【解決手段】
車体前部構造であって、ダッシュボードアッパと、後端が前記ダッシュボードアッパに固定されたウインドシールドロアパネルと、後端が前記ダッシュボードアッパに着脱自在に固定され、前端部近傍の車体幅方向中央部が着脱自在の組付けステイを介して前記ウインドシールドロアパネルの前端に吊り下げられたアルミニウム合金製のダッシュボードアッパリッドと、前記ダッシュボードアッパリッドを少なくとも部分的にカバーするカウルトップ等を具備して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のウインドシールドの下端及びカウルトップを支持する車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
外気取り入れ用グリルを有しているカウルトップは、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュボードの上に配置されたカバー部材であり、その前端がダッシュボードアッパにより支持された構造が知られている。
【0003】
また、ダッシュボードアッパにダッシュボードアッパリッドを取り外し可能に装着し、エンジン部品等のメンテナンス時にダッシュボードアッパリッドをダッシュボードアッパから取り外して、修理すべき部品にアクセス可能とした構造も知られている。
【0004】
また、歩行者との正面衝突時に、ボンネットに跳ね上げられた歩行者がカウルトップ部分に衝突した際、この衝撃力を十分吸収して歩行者保護を図る車体前部構造が要望されている。
【0005】
一方、車体の軽量化等の観点から、エンジンルーム及び車体のフロア部を構成する骨格構造体と、乗用空間を画成する骨格構造体とをアルミニウム合金又はマグニシウム合金等の軽合金によって鋳造成形し、これらを結合して剛性の高い車体フレームを構成する構造も提案されている。
【特許文献1】特開平6−286654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダッシュボードアッパに着脱可能に取り付けられた従来のダッシュボードアッパリッドは、ダッシュボードアッパと同様に鋼板から形成されており、重量が重く且つ剛性が高いので変形が困難なため、歩行者衝突時の歩行者保護性能が十分でないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献1は、カウルフロントパネルをダッシュロアパネルと一体にアルミニウム鋳造する構造を開示しており、車体の軽量化に効果があるが、車体剛性が弱くなるという欠点も有している。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量が軽く着脱可能で歩行者衝突時に変形することにより歩行者保護性能を確保したダッシュボードアッパリッドを有する車体前部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、ダッシュボードアッパと、後端が前記ダッシュボードアッパに固定されたウインドシールドロアパネルと、後端が前記ダッシュボードアッパに着脱自在に固定され、前端部近傍の車体幅方向中央部が着脱自在の組付けステイを介して前記ウインドシールドロアパネルの前端に吊り下げられたアルミニウム合金製のダッシュボードアッパリッドと、前記ダッシュボードアッパリッドを少なくとも部分的にカバーするカウルトップと、を具備したことを特徴とする車体前部構造が提供される。
【発明の効果】
【0010】
ダッシュボードアッパリッドをアルミニウム合金から形成し、且つ着脱可能にダッシュボードアッパに取り付けたため、ダッシュボードアッパリッドの取り外し取り付けが容易であり、エンジン部品のメンテナンス性が向上する。
【0011】
また、ダッシュボードアッパリッドにカウルトップを装着可能であり、歩行者との衝突時に歩行者頭部がカウルトップに衝突してもダッシュボードアッパリッドが容易に変形して、歩行者保護を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお本明細書において、「前」、「後ろ」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従うものとする。
【0013】
図1は本発明に係る車体前部構造を具備した車両を前から見た斜視図であり、ボンネット(フード)2で覆われたエンジンルーム内には符号4で示す位置にエンジン及びトランスミッションが搭載されている。車室内に外気を取り入れるためのカウルトップ6は中央パネル8と、左サイドパネル10と、右サイドパネル12に3分割されている。
【0014】
ウインドシールド(フロントガラス)14の下部には黒色セラミック膜15が貼付されている。16はルーフ、18はワイパーアーム、20はフロントグリル、22はヘッドライト、24はフロントバンパである。
【0015】
エンジンルーム内にはフロントサスペンションのダンパ(ストラット)を連結支持する一対のダンパハウジング(ストラットタワー)26が配置されている。
【0016】
図2は図1の概略側面図であり、カウルトップ6の中央パネル8の上面がボンネット2と概略同一面を成すように配置されている。
【0017】
図3は図1のA−A線断面図であり、本発明実施形態に係る車体前部構造を示している。符号25はダッシュボードアッパ組立体であり、図4に示すように構成されている。
【0018】
ダッシュボードアッパ組立体25は、自動車の車室とエンジンルームとを分離するものであり、図4でダッシュボードアッパ組立体25より下側がエンジンルーム側、上側が車室側である。
【0019】
ダッシュボードアッパ組立体25は、左右端が左右のダンパベース上面まで延在するように車体幅方向に伸長するダッシュボードアッパ28と、このダッシュボードアッパ28にスポット溶接され、ダッシュボードアッパ28と共に車体幅方向に閉断面を形成するクロスメンバー30と、このクロスメンバー30の左右両端の延長線上でダンパベース上面と重なるようにダッシュボードアッパ28にスポット溶接された一対のダンパプレート34とから構成される。
【0020】
クロスメンバー30には軽量化のための複数の穴32が形成されている。38はタイヤハウスであり、このタイヤハウス38にはダンパハウジング(ストラットタワー)26が溶接されている。40はボンネットヒンジ用サイドメンバーであり、ダンパプレート34に溶接されている。
【0021】
図3を再び参照すると、ダッシュボードアッパ28の前端部にはダッシュボードアッパリッド46の後端部が着脱可能に取り付けられている。即ち、図6に示すように、ダッシュボードアッパリッド46の後端部は複数の組付ボルト56によりダッシュボードアッパ28の前端部に着脱可能に取り付けられる。ダッシュボードアッパリッド46はアルミニウム合金から形成されている。
【0022】
符号42はウインドシールドロアパネルであり、屈曲部42cで概略への字に折り曲げられてウインドシールド14と概略平行の前部42aと、その下端がダッシュボードアッパ28に溶接された剛性の高い後部42bとから構成される。ダッシュボードアッパ28,クロスビーム30及びウインドシールドロアパネル42は鋼板から形成されている。
【0023】
ウインドシールド14の下端は、ウインドシールドロアパネル42のへの字の屈曲部42c近傍の接着固定部44でウインドシールドロアパネル42の前部42aに接着固定されている。
【0024】
鋼板から形成された組付けステイ48の後端部がボルト50によりダッシュボードロアパネル42の前端部に取り外し可能に取り付けられている。図6に最も良く示されるように、ダッシュボードアッパリッド46の前端部近傍の車体幅方向中央部がボルト52により組付けステイ48に着脱可能に固定され、これによりダッシュボードアッパリッド46の前端部が組付けステイ48により吊り下げられている。
【0025】
組付けステイ48はその中間部分に穴48aを有しており、衝撃が加わった場合この穴48a部分で折れ曲がり変形し易くなっている。
【0026】
ダッシュボードアッパリッド46上には車室内に外気を取り入れるためのカウルトップ6が装着されている。即ち、カウルトップ6の後端部は図示しないクリップによりウインドシールドロアパネル42に着脱可能に固定され、その前端部はクリップ54によりダッシュボードアッパリッド46の前端部に着脱可能に固定されている。
【0027】
本実施形態の車体前部構造によると、エンジン5をウインドシールド14の下方に配置する車体設計が可能である。また、ダッシュボードアッパリッド46をアルミニウム合金から形成し、ダッシュボードアッパ28の前端に着脱可能に固定したため、重量が軽くその取り扱いが容易である。
【0028】
即ち、エンジン部品のメンテナンスをする際には、カウルトップ6の中央パネル8及びダッシュボードアッパリッド46を取り外す必要があるが、ダッシュボードアッパリッド46はアルミニウム合金製であるため軽く、その取り扱いが容易である。
【0029】
また、ダッシュボードアッパリッド46はアルミニウム合金製であるので鋼板に比べて変形し易いため、前面衝突した歩行者がボンネット2上に跳ね上げられてカウルトップ6に衝突すると、ウインドシールドロアパネル42が接着固定部44から前側で折れ曲げ変形され、更にダッシュボードアッパリッド46も容易に変形するため、歩行者がカウルトップ6に衝突する際の衝撃を有効に吸収することができ、歩行者保護を図ることができる。
【0030】
この歩行者保護は、ダッシュボードアッパリッド46の前端部を吊り下げている組付ステイ48が中間部分に穴48aを有しているため、この穴48a部分で組付ステイ48が変形し易いことにより助長される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明実施形態の車体前部構造を具備した自動車を前から見た斜視図である。
【図2】図1の概略側面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】ダンパベースに取り付けられたダッシュボードアッパ組立体の平面図である。
【図5】ウインドシールドロアパネルに吊り下げられたダッシュボードアッパリッドを示す斜視図である。
【図6】ダッシュボードアッパリッドの取り付け部分を下側から見た斜視図である。
【図7】ダッシュボードアッパリッドの取り付け部分を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
2 ボンネット
6 カウルトップ
8 中央パネル
14 ウインドシールド(フロントガラス)
25 ダッシュボードアッパ組立体
28 ダッシュボードアッパ
30 クロスメンバー
42 ウインドシールドロアパネル
46 ダッシュボードアッパリッド
48 組付ステイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュボードアッパと、
後端が前記ダッシュボードアッパに固定されたウインドシールドロアパネルと、
後端が前記ダッシュボードアッパに着脱自在に固定され、前端部近傍の車体幅方向中央部が着脱自在の組付けステイを介して前記ウインドシールドロアパネルの前端に吊り下げられたアルミニウム合金製のダッシュボードアッパリッドと、
前記ダッシュボードアッパリッドを少なくとも部分的にカバーするカウルトップと、
を具備したことを特徴とする車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−327448(P2006−327448A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155035(P2005−155035)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】