説明

車体前部構造

【課題】バンパービームに作用した衝撃荷重を効率よく伝えることができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、内側エクステンション部材41にバンパービーム18がボルト76で締結されている。内側エクステンション部材41は、内側プレート111および外側プレート112の各上折曲部位が溶接されることで上壁62が形成され、内側プレートおよび外側プレートの各下折曲部位が溶接されることで下壁63が形成されている。そして、上折曲部位が溶接された上接合部117、下折曲部位が溶接された下接合部118およびボルト76が内側荷重伝達ライン151上に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームの前端部からエクステンション部材を車体前方に向けて突出させた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、フロントサイドフレームの車体幅方向外側にアッパメンバーを備え、それぞれの前端部に内外側の衝撃吸収部(以下、「エクステンション部材」という)を車幅方向に離間させて備え、内外側のエクステンション部材の前端部にバンパービームを設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−190964号公報
【0003】
特許文献1の車体前部構造は、フロントサイドフレームおよびアッパメンバーのそれぞれの前端部に取付プレートが架け渡され、取付プレートに内外側のエクステンション部材が設けられている。
【0004】
内側エクステンション部材はフロントサイドフレームの前端部から車体前方に向けて突出されている。外側エクステンション部材はアッパメンバーの前端部から車体前方に向けて突出されている。
内外側のエクステンション部材のそれぞれの前端部に取付孔が形成され、取付孔に挿入したボルトでバンパービームが取り付けられている。
【0005】
車体前部構造によれば、バンパービームに車体前方から衝撃荷重が作用した場合に、作用した衝撃荷重を内外側のエクステンション部材を経てフロントサイドフレームやアッパメンバーに伝えることができる。
そして、伝えられた衝撃荷重をフロントサイドフレームやアッパメンバーで支えることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、バンパービームに車体前方から衝撃荷重が作用した場合に、作用した衝撃荷重を内側エクステンション部材や外側エクステンション部材に効率よく伝え、さらに、内側エクステンション部材に伝えられた衝撃荷重をフロントサイドフレームに効率よく伝えるとともに、外側エクステンション部材に伝えられた衝撃荷重をアッパメンバーに効率よく伝えることが望ましい。
【0007】
本発明は、バンパービームに作用した衝撃荷重をエクステンション部材を経てフロントサイドフレームやアッパメンバーに効率よく伝えることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向けてフロントサイドフレームが延出され、前記フロントサイドフレームの前端部から車体前方に向けてエクステンション部材が突出され、前記エクステンション部材の前端部にバンパービームが締結部材で締結された車体前部構造において、前記エクステンション部材は、断面略コ字状に折り曲げられることで上下の折曲部位を有する内側プレートと、断面略コ字状に折り曲げられることで上下の折曲部位を有する外側プレートと、を備え、前記内側プレートおよび前記外側プレートの各上折曲部位が重ね合わされて溶接されることで前記エクステンション部材の上壁が形成され、前記内側プレートおよび前記外側プレートの各下折曲部位が重ね合わされて溶接されることで前記エクステンション部材の下壁が形成され、前記上折曲部位が溶接された上接合部、前記下折曲部位が溶接された下接合部および前記締結部材が、前記バンパービームに車体前方側から作用した衝撃荷重の荷重伝達ライン上に配置されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記荷重伝達ラインは、前記エクステンション部材の車幅方向中心に対して内側プレートおよび外側プレートの一方側にオフセットされ、前記荷重伝達ラインをオフセットした側の一方のプレートの板厚寸法が、他方のプレートの板厚寸法に比して大きく設定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3は、前記フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが車体後方に向けて上り勾配に延出され、前記一方のプレートを前記内側プレートとすることで、前記一方のプレートが前記フロントサイドフレーム側に設けられ、前記他方のプレートを前記外側プレートとすることで、前記他方のプレートが前記アッパメンバー側に設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項4は、前記フロントサイドフレームが車体幅方向の左右側に備えられ、前記左右のフロントサイドフレーム間の空間に動力源が配置され、前記動力源が前記左右のフロントサイドフレームに設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、エクステンション部材の前端部にバンパービームを締結部材で締結した。また、内外側のプレートの2枚の上折曲部位を溶接して重ね合わせてエクステンション部材の上壁を形成した。さらに、内外側のプレートの2枚の下折曲部位を溶接して重ね合わせてエクステンション部材の下壁を形成した。
そして、2枚の上折曲部位が溶接された上接合部、2枚の下折曲部位が溶接された下接合部および締結部材を、バンパービームに車体前方側から作用した衝撃荷重の荷重伝達ライン上に配置した。
【0013】
よって、バンパービームに衝撃荷重が作用した場合に、作用した衝撃荷重は締結部材を経て内外側のエクステンション部材に伝えられる。
内外側のエクステンション部材に伝えられた衝撃荷重は、上折曲部位や下折曲部位の接合部を経てフロントサイドフレームに伝えられる。
このように、バンパービームに作用した衝撃荷重を、締結部材、上折曲部位の上接合部や下折曲部位の下接合部を経てフロントサイドフレームに伝えることで、衝撃荷重をフロントサイドフレームに効率よく伝えることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、荷重伝達ラインを内側プレートおよび外側プレートの一方側にオフセットして、一方のプレートの板厚寸法を他方のプレートに比して大きく設定した。
よって、一方のプレート側にオフセットされて(偏って)衝撃荷重が伝えられても、エクステンション部材を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができる。
これにより、エクステンション部材による衝撃荷重の吸収量を十分に確保することができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、他方のプレートと比して板厚寸法の大きな一方のプレートをフロントサイドフレーム側に設けた。
また、一方のプレートと比して板厚寸法の小さな他方のプレートをアッパメンバー側に設けた。
【0016】
よって、アッパメンバーに比して剛性の高いフロントサイドフレームに、一方のプレートを経て比較的大きな衝撃荷重を伝えることができる。
また、フロントサイドフレームに比して剛性の低いアッパメンバーに、他方のプレートを経て比較的小さな衝撃荷重を伝えることができる。
これにより、エクステンション部材を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができ、エクステンション部材による衝撃荷重の吸収量を十分に確保することができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、フロントサイドフレームを車体幅方向の左右側に備え、左右のフロントサイドフレームに動力源を設けた(懸架した)。
よって、左右のフロントサイドフレームの一方に伝えられた衝撃荷重を、動力源を経て他方のフロントサイドフレームに分散させることができる。
これにより、一方のフロントサイドフレームに伝えられた衝撃荷重を一層良好に支えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0019】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。なお、図1においては車体前部構造の構成の理解を容易にするために動力源を除去した状態で示す。
車体前部構造10は、車体前部の左右側に左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)11,12を備え、左フロントサイドフレーム11の車体幅方向外側に左アッパメンバー(アッパメンバー)13を備え、右フロントサイドフレーム12の車体幅方向外側に右アッパメンバー(アッパメンバー)14を備え、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー13の前端部13aに左衝撃吸収ユニット16を備え、右フロントサイドフレーム12の前端部12aおよび右アッパメンバー14の前端部14aに右衝撃吸収ユニット17を備え、左右の衝撃吸収ユニット16,17にバンパービーム18を架け渡した自動車の構造である。
【0020】
さらに、車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12間の空間(エンジンルーム)21に動力源22(図2、図3参照)を備え、動力源22の前方にフロントバルクヘッド24を備え、フロントバルクヘッド24にラジエータなどの冷却部材26を備えている。
【0021】
図2は本発明に係る車体前部構造の要部を示す斜視図、図3は本発明に係る車体前部構造の要部を示す平面図である。
動力源22は、一例として、エンジンおよびトランスミッションが一体に組み合わされてユニット化され、エンジンが右フロントサイドフレーム12(図1参照)側に配置され、トランスミッションが左フロントサイドフレーム11側に配置されている。
この動力源22は、トランスミッションが左マウント部材23で左フロントサイドフレーム11に取り付けられ、エンジンが右マウント部材(図示せず)で右フロントサイドフレーム12に取り付けられている。
【0022】
左フロントサイドフレーム11は、車体前後方向に向けて延出されるとともに、後端部11bが左アウトリガー27(図1参照)に連結されている。
左アッパメンバー13は、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられるとともに、車体後方に向けて上り勾配に延出され、後端部15bが左フロントピラー28(図1参照)に連結されている。
【0023】
左フロントサイドフレーム11は、前端部11aが左アッパメンバー13の前端部13aに前連結部位31で連結されている。
左フロントサイドフレーム11と左アッパメンバー13との間に、左前輪(図示せず)を覆う左ホイールハウス32が設けられている。
【0024】
ここで、左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のアッパメンバー13,14は左右対称の部材であり、以下左フロントサイドフレーム11および左アッパメンバー13について説明して、右フロントサイドフレーム12および右アッパメンバー14の説明を省略する。
また、左右の衝撃吸収ユニット16,17は左右対称の部材であり、以下左衝撃吸収ユニット16について説明して右衝撃吸収ユニット17の説明を省略する。
【0025】
図4は本発明に係る車体前部構造を示す分解斜視図、図5は図3の5部拡大図である。
左衝撃吸収ユニット16は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー13の前端部13aに渡って設けられた支持プレート34と、支持プレート34に設けられた取付プレート35と、取付プレート35に設けられた内側エクステンション部材(エクステンション部材)41および外側エクステンション部材(エクステンション部材)42とを備えている。
【0026】
この左衝撃吸収ユニット16は、内側エクステンション部材41が左フロントサイドフレーム11の前端部11a(具体的には、取付プレート35)から車体前方に向けて突出され、外側エクステンション部材42が左アッパメンバー13の前端部13a(具体的には、取付プレート35)から車体前方に向けて突出されている。
【0027】
支持プレート34は、外形が略矩形状に形成され、左フロントサイドフレーム11の前端部11a、左アッパメンバー13の前端部13aおよび前連結部位31に設けられている。
すなわち、支持プレート34は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー13の前端部13aに渡って設けられている。
【0028】
この支持プレート34は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられた内側支持部45と、左アッパメンバー13の前端部13aに設けられた外側支持部46とを備えている。
【0029】
外側支持部46は、車幅方向に延びる車幅方向直線48に対して略平行に設けられている。
内側支持部45は、支持プレート34の中央部34aから車幅方向中心に向けて車体前方に傾斜するように前傾されている。
具体的には、内側支持部45は、車幅方向直線48に対して傾斜角θ1で傾斜するように前傾されている。
加えて、内側支持部45は、内側端部45aが車幅方向直線48に対して略平行に張り出されている。
【0030】
支持プレート34の前面に取付プレート35がボルト37…,109で取り付けられることで、支持プレート34の前面に取付プレート35が重ね合わされた状態に配置されている。
取付プレート35は、支持プレート34と略同じ外形(すなわち、略矩形状)に形成されたプレートである。
【0031】
この取付プレート35は、支持プレート34を介在させた状態で、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー13の前端部13aに渡って設けられている。
この取付プレート35は、内側支持部45の前面に設けられた内側取付部51と、外側支持部46の前面に設けられた外側取付部52とを備えている。
【0032】
外側取付部52は、外側支持部46と同様に、車幅方向直線48に対して略平行に設けられている。
内側取付部51は、内側支持部45と同様に、取付プレート35の中央部35aから車幅方向中心に向けて車体前方に傾斜するように前傾されている。
具体的には、内側取付部51は、車幅方向直線48に対して傾斜角θ1で傾斜するように前傾されている。
加えて、内側取付部51は、内側端部51aに設けられた段差部53と、段差部53に設けられた挟持片54とを有する。
【0033】
段差部53は、内側取付部51の内側端部51aにおいて車体前方に向けて折り曲げられた部位である。
挟持片54は、段差部53の前辺から内側支持部45の内側端部45aに対して略平行に、車体幅方向中心に向けて張り出されている。
【0034】
内側端部51aに段差部53および挟持片54を形成することで、挟持片54が内側支持部45の内側端部45aに対して所定間隔S1をおいて配置されている。
よって、挟持片54と内側端部45aとの間に、後述する後フランジ106の取付片107を挟持する間隙を確保することができる。
なお、挟持片54と内側端部45aとの間に後フランジ106の取付片107を挟持する理由については後で詳しく説明する。
【0035】
図6は本発明に係る車体前部構造の左衝撃吸収ユニットを示す分解斜視図、図7は本発明に係る左衝撃吸収ユニットの内側筒体および外側筒体を示す斜視図、図8は本発明に係る左衝撃吸収ユニットの内側前蓋部および外側前蓋部を示す斜視図である。
取付プレート35に内側エクステンション部材41および外側エクステンション部材42がそれぞれ設けられている。
内側エクステンション部材41は、上壁62・下壁63・内側壁64・外側壁65で略矩形状の筒状に形成された内側筒体(筒体)61と、内側筒体61の前端部61aを塞ぐ内側前蓋部(前蓋部)67とを備えている。
内側壁64は車体幅方向中心側に設けられた壁部である。
外側壁65は車体幅方向外側(すなわち、外側エクステンション部材42側)に設けられた壁部である。
【0036】
内側筒体61は、上壁62および下壁63が側面視で車体前方に向けて略水平に張り出され、内側壁64および外側壁65が平面視で車体前方に向けて徐々に先細状になるように張り出されている。
【0037】
この内側筒体61は、車体幅方向中心側に設けられた内側プレート111と、車体幅方向外側に設けられた外側プレート112とを備えている。
内側プレート111は、断面略コ字状に折り曲げられることで内側壁64、上折曲部位113および下折曲部位114(図7参照)を有する。
外側プレート112は、断面略コ字状に折り曲げられることで外側壁65、上折曲部位115および下折曲部位116(図7参照)を有する。
【0038】
内側プレート111の上折曲部位113および外側プレート112の上折曲部位115が重ね合わされ、それぞれの上折曲部位113,115が上接合部117…でスポット溶接されることで内側筒体61の上壁62が形成されている。
また、内側プレート111の下折曲部位114および外側プレート112の下折曲部位116が重ね合わされ、それぞれの下折曲部位114,116が下接合部118でスポット溶接されることで内側筒体61の下壁63が形成されている。
【0039】
このように、上折曲部位113,115同士が接合されるとともに下折曲部位114,116同士が接合されることで、内側プレート111および外側プレート112で内側筒体61が形成されている。
【0040】
ここで、上折曲部位113,115同士を重ねて接合することで上壁62の剛性は一枚のプレートで形成したものと比較して剛性が高い。
また、下折曲部位114,116同士を重ねて接合することで下壁63の剛性は一枚のプレートで形成したものと比較して剛性が高い。
【0041】
一方、内側筒体61は、内側壁64に車体前後方向に向けて補強用の内ビード(ビード)121が延出されている。
内ビード121は、内側壁64の高さ方向の中央において車体前後方向に平行に延出された凹部(溝部)である。
内ビード121は、車体前方に向けてビード深さ寸法が徐々に小さくなるように、内ビード121の溝底部が上り勾配に形成されている。
【0042】
さらに、外側壁65に車体前後方向に向けて補強用の外ビード(ビード)122が延出されている。
外ビード122は、内ビード121と同様に、外側壁65の高さ方向の中央において車体前後方向に平行に延出された凹部(溝部)である。
外ビード122は、車体前方に向けてビード深さ寸法が徐々に小さくなるように、外ビード122の溝底部が上り勾配に形成されている。
【0043】
内側壁64に内ビード121を延出するとともに外側壁65に外ビード122を延出することで、内側壁64や外側壁65の剛性を上壁62や下壁63に合わせて高めることができる。
これにより、内側壁64、外側壁65、上壁62、下壁63の4壁の剛性をそれぞれ合わせることができ、内側筒体61(すなわち、内側エクステンション部材41)の変形量(潰し量)を均等に確保して、衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0044】
内側前蓋部67は、内側筒体61の前端部61aを塞ぐ前壁(内側エクステンション部材41の前端部)68と、前壁68から車体後方に張り出された上壁固定フラップ71・下壁固定フラップ72・内側壁固定フラップ73・外側壁固定フラップ74とを備えている。
【0045】
上壁固定フラップ71は、前壁68の上端部68aから車体後方に向けて上壁62に沿って張り出されている。
上壁固定フラップ71は、上フラップ接合部124,124において上壁62にスポット溶接されることで上壁62に固定されている。
【0046】
下壁固定フラップ72は、前壁68の下端部68bから車体後方に向けて下壁63に沿って張り出され、下壁63に溶接で固定されている。
下壁固定フラップ72は、下フラップ接合部125,125において下壁63にスポット溶接されることで下壁63に固定されている。
【0047】
内側壁固定フラップ73は、前壁68の内側端部68cから車体後方に向けて内側壁64に沿って張り出され、内側壁64に溶接で固定されている。
外側壁固定フラップ74は、前壁68の外側端部68dから車体後方に向けて外側壁65に沿って張り出され、外側壁65に溶接で固定されている。
これにより、内側前蓋部67が内側筒体61の前端部61aに溶接で固定されている。
この状態において、内側前蓋部67の前壁68は、車幅方向中心に向けて車体前方に傾斜するように前傾されている(図5参照)。
【0048】
上壁固定フラップ71、下壁固定フラップ72、内側壁固定フラップ73および外側壁固定フラップ74は、それぞれのフラップ端縁71a,72a,73a,74aが、取付プレート35に対して同じ距離S2(図5参照)だけ離間されている。
なお、各固定フラップ71〜74のフラップ端縁71a〜74aを取付プレート35に対して同じ距離だけ離間させた理由については後述する。
【0049】
外側エクステンション部材42は、内側エクステンション部材41に対して突出量が小さく抑えられた部材である。
この外側エクステンション部材42は、内側エクステンション部材41の内側筒体61と同様に、上壁82・下壁83・内側壁84・外側壁85で略矩形状の筒状に形成された外側筒体(筒体)81と、外側筒体81の前端部81aを塞ぐ外側前蓋部87とを備えている。
内側壁84は車体幅方向中心側(すなわち、内側エクステンション部材41側)に設けられた壁部である。
外側壁85は車体幅方向外側に設けられた壁部である。
【0050】
外側筒体81は、上壁82および下壁83が側面視で車体前方に向けて略水平に張り出され、内側壁84・外側壁85が平面視で車体前方に向けて徐々に先細状になるように張り出されている。
【0051】
この外側筒体81は、車体幅方向中心側に設けられた内側プレート131と、車体幅方向外側に設けられた外側プレート132とを備えている。
内側プレート131は、断面略コ字状に折り曲げられることで内側壁84、上折曲部位133および下折曲部位134を有する。
外側プレート132は、断面略コ字状に折り曲げられることで外側壁85、上折曲部位135および下折曲部位136を有する。
【0052】
内側プレート131の上折曲部位133および外側プレート132の上折曲部位135が重ね合わされ、それぞれの上折曲部位133,135が上接合部137…でスポット溶接されることで内側筒体81の上壁82が形成されている。
また、内側プレート131の下折曲部位134および外側プレート132の下折曲部位136が重ね合わされ、それぞれの下折曲部位134,136が下接合部138(1箇所のみ図示する)でスポット溶接されることで内側筒体81の下壁83が形成されている。
【0053】
このように、上折曲部位133,135同士が接合されるとともに下折曲部位134,136同士が接合されることで、内側プレート131および外側プレート132で外側筒体81が形成されている。
【0054】
外側前蓋部87は、外側筒体81の前端部81aを塞ぐ前壁(外側エクステンション部材42の前端部)88と、前壁88から車体後方に張り出された上壁固定フラップ91・下壁固定フラップ92・内側壁固定フラップ93・外側壁固定フラップ94とを備えている。
【0055】
上壁固定フラップ91は、前壁88の上端部88aから車体後方に向けて上壁82に沿って張り出され、上壁82に溶接で固定されている。
上壁固定フラップ91は、上フラップ接合部144,144において上壁82にスポット溶接されることで上壁82に固定されている。
【0056】
下壁固定フラップ92は、前壁88の下端部88bから車体後方に向けて下壁83に沿って張り出され、下壁83に溶接で固定されている。
下壁固定フラップ92は、下フラップ接合部145,145において下壁83にスポット溶接されることで下壁83に固定されている。
【0057】
内側壁固定フラップ93は、前壁88の内側端部88cから車体後方に向けて内側壁84に沿って張り出され、内側壁84に溶接で固定されている。
外側壁固定フラップ94は、前壁88の外側端部88dから車体後方に向けて外側壁85に沿って張り出され、外側壁85に溶接で固定されている。
これにより、外側前蓋部87が外側筒体81の前端部81aに溶接で固定されている。
【0058】
図9は本発明に係る左衝撃吸収ユニットの溶接部位およびボルトの位置関係を示す平面図である。
内側エクステンション部材41は、前壁68にバンパービーム18の左端部18aが上下のボルト(締結部材)76で締結されている。
なお、内側エクステンション部材41の前壁68にバンパービーム18の左端部18aを上下のボルト76で締結する構成については後で詳しく説明する。
【0059】
この内側エクステンション部材41は、上下のボルト76を経て車体後方に延びる内側荷重伝達ライン(荷重伝達ライン)151上に、上フラップ接合部124、下フラップ接合部125、上接合部117,117、下接合部118,118が設けられている。
内側荷重伝達ライン151は、バンパービーム18に車体前方側から衝撃荷重F1が作用した場合、衝撃荷重F1の一部が伝達されるラインである。
【0060】
ここで、バンパービーム18に車体前方側から衝撃荷重F1が作用した場合、衝撃荷重F1の一部が上下のボルト76を経て内側エクステンション部材41に伝えられる。
内側エクステンション部材41に伝えられた衝撃荷重は、内側荷重伝達ライン151上の上フラップ接合部124、下フラップ接合部125、上接合部117,117、下接合部118,118を経て左フロントサイドフレーム11に伝えられる。
【0061】
このように、バンパービーム18に作用した衝撃荷重F1を、内側荷重伝達ライン151上に設けた上下のボルト76、上フラップ接合部124、下フラップ接合部125、上接合部117,117、下接合部118,118を経て左フロントサイドフレーム11に伝えることで、衝撃荷重を左フロントサイドフレーム11に効率よく伝えることができる。
【0062】
加えて、内側荷重伝達ライン151は、内側エクステンション部材41の車幅方向中心152に対して内側プレート111側(すなわち、車体幅方向中心側に)に間隔S3だけオフセットされている。
また、内側荷重伝達ライン151をオフセットした側の内側プレート111の板厚寸法T1(図7も参照)が、外側プレート112の板厚寸法T2(図7も参照)に比して大きく設定されている。
【0063】
よって、内側プレート111の剛性が、外側プレート112の剛性に対して高く設定されている。
これにより、内側プレート111側にオフセットされて(偏って)衝撃荷重が伝えられても、内側エクステンション部材41を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができる。
したがって、内側エクステンション部材41による衝撃荷重の吸収量を十分に確保することができる。
【0064】
ここで、左フロントサイドフレーム11は、左アッパメンバー13に比して剛性が高く設定されている。
よって、左フロントサイドフレーム11は、左アッパメンバー13に比して大きな衝撃荷重を支えることができる。
そこで、板厚寸法T1が大きな内側プレート111を左フロントサイドフレーム11側に設け、板厚寸法T2が小さい外側プレート112を左アッパメンバー13側に設けた。
【0065】
これにより、内側プレート111を経て左フロントサイドフレーム11に比較的大きな衝撃荷重を伝えることができる。
一方、外側プレート112を経て左アッパメンバー13に比較的小さな衝撃荷重を伝えることができる。
【0066】
このように、板厚寸法T1が大きな内側プレート111に比較的大きな衝撃荷重を伝え、板厚寸法T2が小さな外側プレート112に比較的小さな衝撃荷重を伝えることで、内側エクステンション部材41を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができる。
これにより、内側エクステンション部材41による衝撃荷重の吸収量を十分に確保することができる。
【0067】
外側エクステンション部材42は、前壁88にバンパービーム18の左端部18aが上下のボルト(締結部材)76で締結されている。
なお、外側エクステンション部材42の前壁88にバンパービーム18の左端部18aを上下のボルト76で締結する構成については後で詳しく説明する。
【0068】
この外側エクステンション部材42は、上下のボルト76を経て車体後方に延びる外側荷重伝達ライン(荷重伝達ライン)154上に、上フラップ接合部144、下フラップ接合部145、上接合部137,137、下接合部138,138が設けられている。
外側荷重伝達ライン154は、バンパービーム18に車体前方側から衝撃荷重F1が作用した場合、衝撃荷重F1の一部が伝達されるラインである。
【0069】
ここで、バンパービーム18に車体前方側から衝撃荷重F1が作用した場合、衝撃荷重F1の一部が上下のボルト76を経て外側エクステンション部材42に伝えられる。
外側エクステンション部材42に伝えられた衝撃荷重は、外側荷重伝達ライン154上の上フラップ接合部144、下フラップ接合部145、上接合部137,137、下接合部138,138を経て左アッパメンバー13に伝えられる。
【0070】
このように、バンパービーム18に作用した衝撃荷重F1を、外側荷重伝達ライン154上に設けた上下のボルト76、上フラップ接合部144、下フラップ接合部145、上接合部137,137、下接合部138,138を経て左アッパメンバー13に伝えることで、衝撃荷重を左アッパメンバー13に効率よく伝えることができる。
【0071】
加えて、外側荷重伝達ライン154は、外側エクステンション部材42の車幅方向中心155に対して内側プレート131側(すなわち、車体幅方向中心側に)に間隔S4だけオフセットされている。
また、外側荷重伝達ライン154をオフセットした側の内側プレート131の板厚寸法T3(図7も参照)が、外側プレート132の板厚寸法T4(図7も参照)に比して大きく設定されている。
【0072】
よって、内側プレート131の剛性が、外側プレート132の剛性に対して高く設定されている。
これにより、内側プレート131側にオフセットされて(偏って)衝撃荷重が伝えられても、外側エクステンション部材42を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができる。
したがって、外側エクステンション部材42による衝撃荷重の吸収量を十分に確保することができる。
【0073】
ここで、左フロントサイドフレーム11は、左アッパメンバー13に比して剛性が高く設定されている。
よって、左フロントサイドフレーム11は、左アッパメンバー13に比して大きな衝撃荷重を支えることができる。
そこで、板厚寸法T3が大きな内側プレート131を左フロントサイドフレーム11側に設け、板厚寸法T4が小さい外側プレート132を左アッパメンバー13側に設けた。
【0074】
これにより、内側プレート131を経て左フロントサイドフレーム11に比較的大きな衝撃荷重を伝えることができる。
一方、外側プレート132を経て左アッパメンバー13に比較的小さな衝撃荷重を伝えることができる。
【0075】
このように、板厚寸法T3が大きな内側プレート131に比較的大きな衝撃荷重を伝え、板厚寸法T4が小さな外側プレート132に比較的小さな衝撃荷重を伝えることで、外側エクステンション部材42を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができる。
これにより、外側エクステンション部材42による衝撃荷重の吸収量を十分に確保することができる。
【0076】
図5に戻って、内側エクステンション部材41は、内側前蓋部67の前壁68のうち、内側端部68cが外側端部68dに対して車体前方に突出されている。
よって、内側エクステンション部材41は、内側前蓋部67の前壁68が、前壁68の外側端部68dから内側端部68cまで車幅方向中心に向けて車体前方に傾斜するように前傾されている。
具体的には、前壁68は、車幅方向直線48に対して傾斜角θ2で傾斜するように前傾されている。
【0077】
傾斜角θ2は、バンパービーム18の形状に合わせるために、内側取付部51の傾斜角θ1に対して僅かに大きく設定されている。
よって、内側前蓋部67の前壁68は、内側取付部51に対して略平行に配置されている。
【0078】
この前壁68に、上下のボルト(締結部材)76が挿通可能な上下の取付孔77(図8参照)が形成されている。
上下の取付孔77にボルト76がそれぞれ挿入され、挿入したボルト76がナット78にそれぞれねじ結合されることで、内側前蓋部67にバンパービーム18の左端部18aがボルト止めされている。
【0079】
ここで、取付プレート35の内側取付部51を前傾するとともに、内側前蓋部67の前壁68を前傾することで、前壁68が内側取付部51に対して略平行に配置されている。
前壁68および内側取付部51を略平行に配置することで、内側エクステンション部材41の内側壁64や外側壁65が内側取付部51から略同じ量だけ突出されている。
【0080】
また、上壁固定フラップ71、下壁固定フラップ72(図8参照)、内側壁固定フラップ73および外側壁固定フラップ74は、それぞれのフラップ端縁71a,72a(図8参照),73a,74aが、取付プレート35に対して同じ距離S2だけ離間されている。
フラップ端縁71a〜74aを取付プレート35に対して同じ距離S2だけ離間した理由は次の通りである。
【0081】
すなわち、内側エクステンション部材41は内側筒体61の前端部61aに上壁固定フラップ71、下壁固定フラップ72(図8参照)、内側壁固定フラップ73および外側壁固定フラップ74が重ね合わせられている。
【0082】
このため、各固定フラップ71〜74が重ね合わされた前端部61aは、車体前方から作用する衝撃荷重に対して比較的変形し難い(潰れ難い)部位である。
このため、各固定フラップ71〜74が重ね合わされていない部位を、衝撃荷重で均等に変形させる(潰す)ように構成することが好ましい。
【0083】
そこで、フラップ端縁71a〜74aを取付プレート35に対して同じ距離S2だけ離間するようにした。よって、内側エクステンション部材41の変形量(潰し量)を均等に確保することができる。
これにより、内側エクステンション部材41に衝撃荷重が作用した場合に、内側エクステンション部材41の内側筒体61を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができ、衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0084】
外側エクステンション部材42は、外側前蓋部87の前壁88が、前壁88の外側端部88dから内側端部88cまで車幅方向中心に向けて車体前方に傾斜するように前傾されている。
具体的には、前壁88は、車幅方向直線48に対して傾斜角θ3で傾斜するように前傾されている。
【0085】
前壁88の傾斜角θ3は、バンパービーム18の形状に合わせるために、内側前蓋部67(前壁68)の傾斜角θ2に対して略同じ大きさに設定されている。
この前壁88には、上下のボルト76が挿通可能な上下の取付孔96(図8参照)が形成されている。
【0086】
上下の取付孔96にボルト76がそれぞれ挿入され、挿入したボルト76がナット97にそれぞれねじ結合されることで、外側前蓋部87にバンパービーム18の左端部18aがボルト止めされている。
【0087】
図3、図4に戻って、フロントバルクヘッド24は、冷却部材(ラジエータなど)26を備え、取付プレート35の車体幅方向中心側に配置されている。
具体的には、フロントバルクヘッド24は、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12a(右フレーム12、前端部12aは図1参照)間で、かつ、前端部11a,12aに対して車体前方側に配置され、エンジンルーム21の前部を仕切る部材である。
【0088】
このフロントバルクヘッド24は、車幅方向に延出されたアッパメンバー101と、アッパメンバー101の下方に設けられたロアメンバー(図示せず)と、アッパメンバー101およびロアメンバーのそれぞれの左端部に設けられた左ステイ部103と、アッパメンバー101およびロアメンバーのそれぞれの右端部に設けられた右ステイ部104(図1参照)とで略矩形枠状に形成されている。
【0089】
左ステイ部103は、後部103aに取付プレート35に向けて張り出された後フランジ106を備えている。
後フランジ106は、取付プレート35の段差部53に向けて張り出された取付片107を有し、取付片107に取付孔108を有している。
【0090】
前述したように、取付片107は、内側取付部51の挟持片54と内側支持部45の内側端部45aとの間に挟持可能な張出片である。
すなわち、取付片107は、内側取付部51の挟持片54と内側支持部45の内側端部45aとの間に挟み込まれた状態でボルト109で取り付けられている。
よって、支持プレート34および取付プレート35に後フランジ106が設けられている。
なお、左右のステイ部103,104は左右対称の部材であり、以下左ステイ部103について説明して右ステイ部104の説明を省略する。
【0091】
内側支持部45が傾斜角θ1で前傾されるとともに、内側取付部51が傾斜角θ1で前傾されることで、内側支持部45および内側取付部51を車体前方側に移動させて設けることができる。
よって、内側取付部51の挟持片54と内側支持部45の内側端部45aとの間に挟み込まれた後フランジ106の取付片107を車体前方側に移動させて設けることができる。
【0092】
これにより、フロントバルクヘッド24を車体前方側の位置P1(図5も参照)まで移動させて設けることができ、フロントバルクヘッド24とともに冷却部材26を車体前方側に移動させて設けることができる。
したがって、車体全長をコンパクトに抑えた車両において、エンジンルーム21を車体前方に向けて大きく確保することができ、エンジンルーム21に大型の動力源22を搭載することができる。
【0093】
加えて、取付プレート35に後フランジ106を設けることで、フロントバルクヘッド24とともに冷却部材26を車体前方にさらに移動させて設けることができる。
これにより、車体全長をコンパクトに抑えた車両において、エンジンルーム21を車体前方に向けてさらに大きく確保することができる。
【0094】
ここで、車体前部構造10は、図1に示すように、左右のフロントサイドフレーム11,12が車体幅方向の左右側に備えられ、左右のフロントサイドフレーム11,12間の空間(エンジンルーム)21に動力源22が配置され、動力源22が左マウント部材23で左フロントサイドフレーム11に設けられる(懸架される)とともに、右マウント部材(図示せず)で右フロントサイドフレーム12に設けられている(懸架され)。
【0095】
よって、左右のフロントサイドフレーム11,12の一方(例えば、左フロントサイドフレーム11)に伝えられた衝撃荷重を、動力源22を経て右フロントサイドフレーム12に分散させることができる。
これにより、左フロントサイドフレーム11に伝えられた衝撃荷重を一層良好に支えることができる。
【0096】
つぎに、車体前部構造10に相手車両がオフセット状態で衝突する例を図10〜図11に基づいて説明する。
図10(a),(b)は本発明に係る車体前部構造に相手車両がオフセット衝突した例を説明する図である。
(a)において、相手車両160が車体前部構造10に対して左側にずれてオフセット衝突する。
オフセット衝突により生じた衝撃荷重F1は、バンパービーム18の左端部18aを経て左衝撃吸収ユニット16に伝わる。
【0097】
具体的には、衝撃荷重F1の一部が内側エクステンション部材41に衝撃荷重F2として矢印の如く伝わる。
また、衝撃荷重F1の残りの衝撃荷重F3が、外側エクステンション部材42に矢印の如く伝わる。
【0098】
ここで、内側エクステンション部材41は、内側荷重伝達ライン151上に、上下のボルト76(図9参照)、上フラップ接合部124、下フラップ接合部125、上接合部117,117および下接合部118,118が設けられている。
よって、バンパービーム18に作用した衝撃荷重F1の一部は、上下のボルト76を経て内側エクステンション部材41に衝撃荷重F2として伝えられ、上フラップ接合部124、下フラップ接合部125、上接合部117,117、下接合部118,118を経て左フロントサイドフレーム11に効率よく伝えられる。
【0099】
また、外側エクステンション部材42は、外側荷重伝達ライン154上に、上下のボルト76(図9参照)、上フラップ接合部144、下フラップ接合部145、上接合部137,137および下接合部138,138が設けられている。
よって、衝撃荷重F1の残りの衝撃荷重F3は、上下のボルト76を経て外側エクステンション部材42に伝えられ、上フラップ接合部144、下フラップ接合部145、上接合部137,137、下接合部138,138を経て左アッパメンバー13に効率よく伝えられる。
【0100】
(b)において、内側エクステンション部材41に作用した衝撃荷重F2で、内側エクステンション部材41の内側筒体61を変形させて(潰して)衝撃荷重F2の一部を吸収する。
【0101】
ここで、内側荷重伝達ライン151は、内側エクステンション部材41の車幅方向中心152に対して内側プレート111側(すなわち、車体幅方向中心側に)に間隔S3だけオフセットされている(図10(a)も参照)。
また、内側荷重伝達ライン151をオフセットした側の内側プレート111は、図9に示すように、外側プレート112の板厚寸法に比して大きく設定されている。
【0102】
よって、衝撃荷重F2が内側プレート111側にオフセットされて(偏って)伝えられても、内側エクステンション部材41の内側筒体61を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができる。
これにより、内側エクステンション部材41による衝撃荷重F2の吸収量を十分に確保することができる。
【0103】
加えて、左フロントサイドフレーム11は、左アッパメンバー13に比して剛性が高く設定されている。さらに、内側プレート111は外側プレート112に比して板厚寸法が大きく設定されている。
よって、左フロントサイドフレーム11側に設けられた内側プレート111(板厚寸法が大きいプレート)に比較的大きな衝撃荷重が伝えられる。
【0104】
一方、左アッパメンバー13側に設けられた外側プレート112(板厚寸法が小さいプレート)に比較的小さな衝撃荷重が伝えられる。
これにより、内側エクステンション部材41を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができ、内側エクステンション部材41による衝撃荷重の吸収量を一層良好に確保することができる。
【0105】
また、外側エクステンション部材42に作用した衝撃荷重F3で、外側エクステンション部材42の外側筒体81を変形させて(潰して)衝撃荷重F3の一部を吸収する。
【0106】
ここで、外側荷重伝達ライン154は、外側エクステンション部材42の車幅方向中心155に対して内側プレート131側(すなわち、車体幅方向中心側に)に間隔S4だけオフセットされている(図10(a)も参照)。
また、外側荷重伝達ライン154をオフセットした側の内側プレート131は、図9に示すように、外側プレート132の板厚寸法に比して大きく設定されている。
【0107】
よって、衝撃荷重F3が内側プレート131側にオフセットされて(偏って)伝えられても、外側エクステンション部材42の外側筒体81を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができる。
これにより、外側エクステンション部材42による衝撃荷重F3の吸収量を十分に確保することができる。
【0108】
加えて、前述したように、左フロントサイドフレーム11は、左アッパメンバー13に比して剛性が高く設定されている。さらに、内側プレート131は、外側プレート132に比して板厚寸法が大きく設定されている。
よって、左フロントサイドフレーム11側に設けられた内側プレート131(板厚寸法が大きいプレート)に比較的大きな衝撃荷重が伝えられる。
【0109】
一方、左アッパメンバー13側に設けられた外側プレート132(板厚寸法が小さいプレート)に比較的小さな衝撃荷重が伝えられる。
これにより、外側エクステンション部材42を全域に渡って均等に変形させる(潰す)ことができ、外側エクステンション部材42による衝撃荷重の吸収量を一層良好に確保することができる。
【0110】
図11は本発明に係る車体前部構造で衝撃荷重を支える例を説明する図である。
内側エクステンション部材41で衝撃荷重F2の一部が吸収された後、衝撃荷重F2の残りの衝撃荷重F4が左フロントサイドフレーム11に矢印の如く伝わる。
伝えられた衝撃荷重F4は左フロントサイドフレーム11で支えられる。
【0111】
一方、外側エクステンション部材42で衝撃荷重F3の一部が吸収された後、衝撃荷重F3の残りの衝撃荷重が、左フロントサイドフレーム11および左アッパメンバー13にそれぞれ分散されて衝撃荷重F5および衝撃荷重F6として矢印の如く伝わる。
【0112】
左フロントサイドフレーム11に伝えられた衝撃荷重F5は左フロントサイドフレーム11で支えられる。
また、左アッパメンバー13に伝えられた衝撃荷重F6は左アッパメンバー13で支えられる。
これにより、相手車両160がオフセット衝突した場合に発生する衝撃荷重F1を車体前部構造10で良好に支えることができる。
【0113】
ここで、車体前部構造10は、図1に示すように、左右のフロントサイドフレーム11,12が車体幅方向の左右側に備えられ、左右のフロントサイドフレーム11,12間の空間(エンジンルーム)21に動力源22が配置され、動力源22が左マウント部材23で左フロントサイドフレーム11に設けられるとともに、右マウント部材(図示せず)で右フロントサイドフレーム12に設けられている。
【0114】
よって、左フロントサイドフレーム11に伝えられた衝撃荷重F4,F5を、左マウント部材23を経て動力源22側に衝撃荷重F7として分散させることができる。分散された衝撃荷重F7は、右フロントサイドフレーム12側に伝えられて、右フロントサイドフレーム12で支えられる。
これにより、左フロントサイドフレーム11に伝えられた衝撃荷重F4,F5を一層良好に支えることができる。
【0115】
なお、前記実施の形態では、内側支持部45を傾斜角θ1で前傾させるとともに、前壁68を傾斜角θ2で前傾させて内側エクステンション部材41の内側壁64と外側壁65とを略同じ突出量にする構成を例示したが、これに限らないで、外側エクステンション部材42を内側エクステンション部材41と同様に形成することも可能である。
【0116】
また、前記実施の形態では、内側荷重伝達ライン151を内側エクステンション部材41の車幅方向中心に対して内側プレート111側にオフセットさせた例について説明したが、これに限らないで、外側プレート112側にオフセットさせることも可能である。
また、外側エクステンション部材42も同様に、外側プレート132側にオフセットさせることも可能である。
【0117】
さらに、前記実施の形態では、バンパービーム18を取り付ける締結部材としてボルト76を例示したが、これに限らないで、リベットなどの他の締結部材を用いることも可能である。
【0118】
また、前記実施の形態で示した左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のアッパメンバー13,14、バンパービーム18、内外側のエクステンション部材41,42、内外側の筒体61,81、内側プレート111,131、外側プレート112,132、上折曲部位113,115,133,135、下折曲部位114,116,134,136などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、フロントサイドフレームの前端部からエクステンション部材を車体前方に向けて突出させた車体前部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造の要部を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造の要部を示す平面図である。
【図4】本発明に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
【図5】図3の5部拡大図である。
【図6】本発明に係る車体前部構造の左衝撃吸収ユニットを示す分解斜視図である。
【図7】本発明に係る左衝撃吸収ユニットの内側筒体および外側筒体を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る左衝撃吸収ユニットの内側前蓋部および外側前蓋部を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る左衝撃吸収ユニットの溶接部位およびボルトの位置関係を示す平面図である。
【図10】本発明に係る車体前部構造に相手車両がオフセット衝突した例を説明する図である。
【図11】本発明に係る車体前部構造で衝撃荷重を支える例を説明する図である。
【符号の説明】
【0121】
10…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、11a,12a…左右のフロントサイドフレームの前端部、12…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、13…左アッパメンバー(アッパメンバー)、14…右アッパメンバー(アッパメンバー)、18…バンパービーム、21…空間、22…動力源、41…内側エクステンション部材(エクステンション部材)、42…外側エクステンション部材(エクステンション部材)、61…内側筒体(筒体)、62,82…上壁、63,83…下壁、64,84…内側壁、65,85…外側壁、68…前壁(内側エクステンション部材41の前端部)、76…ボルト(締結部材)、81…外側筒体(筒体)、88…前壁(外側エクステンション部材42の前端部)、111,131…内側プレート、112,132…外側プレート、113,115,133,135…上折曲部位、114,116,134,136…下折曲部位、117,137…上接合部、118,138…下接合部、124,144…上フラップ接合部、125,145…上フラップ接合部、151…内側荷重伝達ライン(荷重伝達ライン)、154…外側荷重伝達ライン(荷重伝達ライン)、T1〜T4…板厚寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に向けてフロントサイドフレームが延出され、前記フロントサイドフレームの前端部から車体前方に向けてエクステンション部材が突出され、前記エクステンション部材の前端部にバンパービームが締結部材で締結された車体前部構造において、
前記エクステンション部材は、
断面略コ字状に折り曲げられることで上下の折曲部位を有する内側プレートと、
断面略コ字状に折り曲げられることで上下の折曲部位を有する外側プレートと、を備え、
前記内側プレートおよび前記外側プレートの各上折曲部位が重ね合わされて溶接されることで前記エクステンション部材の上壁が形成され、
前記内側プレートおよび前記外側プレートの各下折曲部位が重ね合わされて溶接されることで前記エクステンション部材の下壁が形成され、
前記上折曲部位が溶接された上接合部、前記下折曲部位が溶接された下接合部および前記締結部材が、前記バンパービームに車体前方側から作用した衝撃荷重の荷重伝達ライン上に配置されたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記荷重伝達ラインは、
前記エクステンション部材の車幅方向中心に対して内側プレートおよび外側プレートの一方側にオフセットされ、
前記荷重伝達ラインをオフセットした側の一方のプレートの板厚寸法が、他方のプレートの板厚寸法に比して大きく設定されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが車体後方に向けて上り勾配に延出され、
前記一方のプレートを前記内側プレートとすることで、前記一方のプレートが前記フロントサイドフレーム側に設けられ、
前記他方のプレートを前記外側プレートとすることで、前記他方のプレートが前記アッパメンバー側に設けられたことを特徴とする請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記フロントサイドフレームが車体幅方向の左右側に備えられ、
前記左右のフロントサイドフレーム間の空間に動力源が配置され、
前記動力源が前記左右のフロントサイドフレームに設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−83455(P2010−83455A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257761(P2008−257761)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】