説明

車体構造

【課題】乗員を乗降性の向上を図りつつも、安全性や車体剛性を高められる車体構造を提供する。
【解決手段】車両前後方向に隣接して設けられ、車両Bに形成されたドア開口部1,3を共同して閉鎖するフロントドア2及びリアドア4を備え、ドア開口部を閉じる閉鎖位置でフロントドア2及びリアドア4をそれぞれ保持するロック部を有し、ロック部は、少なくともフロントドア2の後側上下端とドア開口部の縁部との間に設けられるフロントドア2の上部ロック部i1及びフロントドアの下部ロック部i2と、リアドア4の前側上下端とドア開口部の縁部との間に設けられるリアドア4の上部ロック部J1及びリアドア4の下部ロック部J2を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に形成されたドア開口部を開閉する車両前後に設けられたドアを備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面には、乗降口を形成するドア開口部が設けられている。このドア開口部の縁部には、ドア開口部を開閉するドアが装着される。これらドアの開閉方式には、ヒンジによる回動開閉式やスライド機構を備えた支持ユニットによるスライド式などがある。スライドドアを備えた車両の構造では、スライドドアを車両前後方向にスライドさせるのに、ドア開口部の縁部上部を形成するサイドルーフレール、ドア開口部の縁部下部を形成するサイドシル内、スライドドアの中央にスライド機構を設けていることが多い。特にサイドルーフレールやサイドシル内にスライド機構を設ける場合、サイドルーフレールやサイドシルの断面が大きくなってドア開口部の高さが制限を受ける場合や、車室内に対する出っ張りが大きくなってしまう傾向となる。
【0003】
そこで、特許文献1に示すように、スライドドアをその中央部のみで車両前後方向にスライド自在に支持し、サイドルーフレールやサイドシル内からスライド機構をなくした車体構造が提案されている。
【0004】
車両には、フロントドアとリアドアの間にセンターピラーを有するものと、乗降性の向上を図る目的から車体側にセンターピラーを持たないものがある。車体側にセンターピラーを持たない例としては、例えば特許文献2が挙げられる。車体側にセンターピラーを持たない車体構造において、ドアを閉鎖状態に保持する場合、ラッチとストライカなどから構成されたロック部をそれぞれフロントドアのパネル後端部とリアドアのパネル前端部に固定している。
【0005】
【特許文献1】特許第2049752号
【特許文献2】特開2002−147090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、車両に形成されたドア開口部を開閉するヒンジドアと、これと隣接されたスライドドアを有し、ヒンジドアのロック部がヒンジドア後側上下端とドア開口部の縁部との間に配置され、スライドドアのロック部が、スライドドア後側と、ヒンジドア及びスライドドアを連結するようにそれぞれ配設されている。このため、ドアを開閉するにはロック部を解除する順序が生まれ、使い勝手が良くなかった。
【0007】
車体側にセンターピラーを持たない車体構造では、ドア開口部を大きく取れる反面、車体側方からの衝突に対する剛性がセンターピラーのある車体構成に比して低くなる傾向にあるので、如何に剛性を確保するかが課題とされている。また、車両のドアには、一般に衝撃荷重が加わっても、ドアが不用意に開かないことが要求されている。
本発明は、乗員を乗降性の向上を図りつつも、安全性や車体剛性を高められる車体構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、車両前後方向に隣接して設けられ、車両に形成されたドア開口部を共同して閉鎖するフロントドア及びリアドアを備える車体構造において、ドア開口部を閉じる閉鎖位置でフロントドアおよびリアドアをそれぞれ保持するロック部を有し、ロック部は、少なくともフロントドアの後側上下端とドア開口部の縁部との間に設けられるフロントドアの上部ロック部及びフロントドアの下部ロック部と、リアドアの前側上下端とドア開口部の縁部との間に設けられるリアドアの上部ロック部及びリアドアの下部ロック部を備えたことを特徴としている。
【0009】
本発明に係る車体構造において、前記フロントドアの下部ロック部と前記リアドアの下部ロック部との間隔が、前記フロントドアの上部ロック部と前記リアドアの上部ロック部との間隔よりも広くなるように各ロック部を配置したことを特徴としている。
【0010】
本発明に係る車体構造において、ドア開口部の縁部は、少なくともサイドルーフレールとサイドシルから形成され、上部ロック部は、サイドルーフレールと各ドアのいずれか一方に設けられたラッチと他方に設けられたストライカを備え、下部ロック部は、サイドシルと各ドアのいずれか一方に設けられたラッチと他方に設けられたストライカ備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る車体構造において、上部ロック部と下部ロック部とでは、ロック部によるドア拘束方向が互いに異なる方向となるように、ロック部を配置したことを特徴としている。
【0012】
本発明に係る車体構造において、フロントドア及びリアドアの少なくとも一方はスライドドアを構成し、スライドドアのロック部が、車両前後方向で前記上部ロック部及び前記下部ロック部と反対側にも配置されていることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る車体構造において、スライドドアを車両前後方向に移動自在に支持する支持ユニットを備え、スライドドアの各ロック部で囲まれた領域内で、前記スライドドアの重心近傍をこの支持ユニットで支持することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドア開口部を閉じる閉鎖位置でフロントドアおよびリアドアをそれぞれ保持するロック部を少なくともフロントドアの後側上下端とドア開口部の縁部との間と、リアドアの前側上下端とドア開口部の縁部との間に設けたので、フロントドアとリアドアとを閉めたときに、これら各ドアが個別なロック部でそれぞれ独立して保持されるので、ドアの開閉順序が発生しなくなるとともに、各ドアのロック状態を強固に保持できる。このため、車体にセンターピラーを持たない構造でありながらドア開口部が閉じられる各ドアの閉鎖位置で各ロック部で結ぶ領域が仮想センターピラーとなり、剛性アップを図れるとともに、衝撃荷重が加わったときの不用意なドアの開きを効果的に防止することができ、乗降性を確保しながら安全性と剛性アップを図ることができる。
【0015】
本発明によれば、フロントドアの下部ロック部とリアドアの下部ロック部との間隔が、フロントドアの上部ロック部とリアドアの上部ロック部との間隔よりも広くなるように各ロック部を配置したので、各ドアが各ロック部で保持されるとともに、フロントドアとリアドアの間のドア開口部に各ロック部を結ぶ領域により形成される仮想センサーピラー領域が下方で広くなるので、衝突物に対すると接触面積が大きくなり、効率よく衝撃加重を分散することができる。また、センターピラー領域の上方は、その幅が押さえられるので、窓などの占有面を広く取ることができ、視認性が向上し、安全性がより向上する。
【0016】
本発明によれば、上部ロック部はサイドルーフレールに、下部ロック部はサイドシルにラッチ&ストライカ構造で接続しているため、衝撃荷重を車体の骨格であるサイドルーフレールやサイドシルに効率よく分散することができる。
【0017】
本発明によれば、上部ロック部と下部ロック部とでは、ロック部によるドア拘束方向が互いに異なる方向となるようにロック部を配置したので、ドアの建付け調整が行えると共に、ドアのロック状態をより強化に保持でき、衝撃荷重が加わったときの不用意なドアの開きをより確実に防止することができる。特にスライドドアの開閉動作に伴いロック部のラッチとストライカの位置関係がずれた場合でも、そのずれを吸収できる。
【0018】
本発明によれば、スライドドアのロック部を車両前後方向で前記上部ロック部及び前記下部ロック部と反対側にも配置することで、上部ロック部、下部ロック部と併せて3点支持でドアが閉塞状態に保持されるので、閉鎖状態での回転モーメントの発生を効果的に抑制して振動の発生を少なくしながら、スライドドアのロック状態を強化に保持でき、衝撃荷重が加わったときの不用意なドアの開きを効果的に防止することができる。
【0019】
本発明によれば、スライドドアを車両前後方向に移動自在に支持する支持ユニットを備え、スライドドアの各ロック部で囲まれた領域内で、前記スライドドアの重心近傍を支持ユニットで支持しているので、従来のように、サイドルーフレールやサイドシルの断面が大きくなることが無く、ドア開口部の高さ制限や車室内に対する出っ張りも少なくなり、より乗員の乗降性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、車体側にセンターピラーのない4ドアハッチバックタイプの車両Bの車体構造を示す。車両Bは左右には、ドア開口部となる前乗降口1と後乗降口3が1つの空間として形成されている。これら前乗降口1と後乗降口3は、フロントドア2とこのドアと隣接するリアドア4とによって開閉される。図1は車両Bの左側の側面を示す。
【0021】
ヒンジドアとなる各フロントドア2及びスライドドアとなる各リアドア4は、それぞれ図示しないウエザーストリップを外周縁に連続して装着し、それぞれ対向する乗降口1,3の周縁部とのシール性を確保するように形成されている。
【0022】
図2、図4に示すように、リアドア4を車両前後方向Xに移動可能に支持する支持ニットしてのスイングスライドユニットUは、車体としてのボデー側面14の後乗降口3近傍の取付け基部141に固着されたベース部材15を備え、ベース部材15に平行リンク16とドア摺動機構17とドア荷重支持アーム18と開閉駆動機構19とを装着する。
【0023】
ベース部材15は、図2に示すように、上下フランジ151,152とこれらを連結する縦板部153とで収容空間eを形成したコ字型断面材であり、下フランジ152が取付け基部141に固着される。
【0024】
平行リンク16は移動軌跡に沿って揺動するリアドア4の各位置を位置決めする機能を備える。この平行リンク16はリアドア4のインナーパネル21Bの中央部に固着される後述のドア支持レール22に複数のローラ23を介して摺動可能に嵌着されるレール受けブラケット24と、下フランジ152上に突設される取付けブラケット25と、取付けブラケット25の前後2箇所の縦ピン26を介して一端が水平に回動自在に枢支される前アーム31及び後アーム32とを供える。前アーム31及び後アーム32は各揺動端がレール受けブラケット24の前後2箇所に縦ピン28を介して枢支される。
【0025】
ドア摺動機構17はリアドア4のインナーパネル21Bの内壁にドア支持レール22を一体結合し、このドア支持レール22の一対の下向きレール溝33に複数のローラ23を介してレール受けブラケット24に摺動自在に架設されるという構成を採る。ドア支持レール22は一対の下向きレール溝33を形成する断面形状をなし、リアドア4の車両前後方向Xに長く配備される。このドア支持レール22は一側端がインナーパネル21に取付けブラケット35を介し一体結合される。取付けブラケット35はインナーパネル21Bの内壁の中央主要部を覆うような形状の屈曲板材で、ドア重心位置近傍に後述のドア枢支ピン36を取付けたドア側枢支部37を形成している。レール受けブラケット24はその上面より縦向きローラピン38と横向きローラピン39を突設し、縦向きローラピン38には水平方向に回転できるローラ23が、横向きローラピン39には縦方向に回動できるローラ23が夫々枢支される。なお、各ローラ23はドア支持レール22の一対の下向きレール溝33に回転可能にガタが規制された状態で嵌合する。
【0026】
このようなレール受けブラケット24の下向壁の前後2箇所には前アーム31及び後アーム32の揺動端がそれぞれ縦ピン28によって枢支される。
【0027】
ドア荷重支持アーム18はベース部材15の下フランジ152に上向きに突設される枢支台42と、この枢支台42の中央と上フランジ151間に支持された縦ピン43と、縦ピン43に基端が枢支される第1支持アーム44と、第1支持アーム44の回動端に縦ピン45を介して枢支される第2支持アーム46と、第2支持アーム46の他端であってリアドア4の重心位置を縦向きのドア枢支ピン36を介して枢支するドア側枢支部37とを備える。
【0028】
ここで、ベース部材15は、縦ピン43を介してドア荷重支持アーム18を枢支しており、ドア荷重支持アーム18のドア側枢支部37は縦ピン36を介してリアドア4を枢支することより、上下方向の剛性を十分に確保した状態でドア荷重支持アーム18は揺動でき、即ち、リアドア4の重心の荷重を常にベース部材15の枢支台42に伝達でき、リアドア4が移動する何れの位置でもドア荷重を支え、リアドア4の傾きを規制するように機能する。
【0029】
すなわち、図1に示すように、リアドア4は、スイングスライドユニットUでリアドア4の上下方向における中央部近傍が支持されている。そして、その支持部を構成するドア支持レール22は、ロック部J1,J2,J3で形成される三角形領域100内に配置されている。
【0030】
開閉駆動機構19はベース部材15の上下フランジ152間の収容空間eのうち奥側に配備されるモータ50及び同モータ50に駆動される巻き取りドラム52と、ベース部材15及びベース部材15に固着される図示しないブラケットに枢支される固定プーリp1と、前アーム31に枢支されるアーム側プーリp2と、ドア支持レール22に枢支されるドア側プーリp3と、強度を持つ支持部材としてのドア支持レール22の前後端の前後ケーブル止め47,48と、これら前ケーブル止めに結合され巻き取りドラム52に達する開作動ケーブル49と、後ケーブル止め48に結合され巻き取りドラム52に達する閉作動ケーブル51を備える。
【0031】
図3(a)〜(c)に太い実線で示すように、前ケーブル止め47に結合される開作動ケーブル49はドア側プーリp3の外面部、アーム側プーリp2の内面部、図示しないブラケットに枢支される後の固定プーリp1、同固定プーリを経て巻き取りドラム52の開き巻き取り部(図2、図3の2点差線で示す部位の左半部)に達する。
【0032】
図3(a)〜(c)に太い2点鎖線で示すように、後ケーブル止め48に結合される閉作動ケーブル51はドア側プーリp3の内面部、アーム側プーリp2の外面部、図示しないブラケットに枢支される前の固定プーリp1を経て巻き取りドラム52の閉巻き取り部(図23の2点差線で示す部位の右半部)に達する。
【0033】
このような開閉駆動機構19のモータ50に駆動される巻き取りドラム52は、図示しないコントローラ23に接続される。コントローラ23はドア開指令を受けると、リアドア4の上部ロック部となる前端上ロック部J1と下部ロック部となる前端下ロック部J2と後端ロック部J3にロック解除の出力を発し、リアドア4の後乗降口3へのロックを解除させる。
【0034】
更にコントローラ23はドア開指令に基づくドア開出力を受けると、巻き取りドラム52を駆動して太い実線で示す開作動ケーブル49を巻き取り、太い2点鎖線で示す閉作動ケーブル51の放出を可能とする。この際、図3(a)〜(c)に示すドア閉鎖位置D1のリアドア4と一体のドア支持レール22(レール前位置P1にある)は、前ケーブル止め47が開作動ケーブル49により後方に引き寄せられ、この際、前後アーム31、32が前後一対の車内側回動中心点a1,a2を中心に車外側回動中心点b1、b2を外側に揺動し、図3(b)に示すドア揺動位置D2(ドア支持レール22はレール中位置P2にある)に保持する。更に前ケーブル止めが開作動ケーブル49により後方に引き寄せられることで、レール受けブラケット24に対してドア支持レール22及びリアドア4が後方に摺動し、後乗降口3が開放され、図3(c)に示すドア開位置D3(ドア支持レール22はレール後位置P3にある)に保持される。この開作動の間、巻き取りドラム52は太い2点鎖線で示す閉作動ケーブル51を巻き取ることとなる。このような図3(c)に示すドア開位置D3にリアドア4が保持されることで、後乗降口3での乗り降りが成される。
【0035】
一方、図示しないコントローラよりドア閉指令に基づくドア閉出力を受けると、モータ50が駆動して巻き取りドラム52を回転駆動して太い2点鎖線で示す閉作動ケーブル51を巻き取り、太い実線で示す開作動ケーブル49の放出を可能とする。この際、図3(c)に示すドア開位置D3のリアドア4と一体のドア支持レール22は、後ケーブル止め48が閉作動ケーブル51により前方に引き寄せられ、この際、レール受けブラケット24に対してドア支持レール22及びリアドア4が前方に摺動し、図3(b)に示すドア揺動位置D2に達する。更に前ケーブル止め47が閉作動ケーブル51を前方に引き寄せ作動することで、前後アーム31,32が前後一対の車内側回動中心点a1,a2を中心に車外側回動中心点b1,b2を車内側に揺動し、図3(a)に示すドア閉鎖位置D1(ドア支持レール22はレール前位置P1にある)に達する。
【0036】
コントローラはドア閉信号を図示しない位置センサより受けると、リアドア4の前端上ロック部J1と前端下ロック部J2と後端ロック部J3にロック出力を発し、リアドア4を後乗降口3へロックすることとなる。
【0037】
各フロントドア2は、その前端上下2箇所をヒンジ結合され、回動端であり、スライドドア4側に位置する後端が上ロック部i1(上部ロック部)でドア開口部の縁部の上部を形成するルーフサイドレール10に離脱可能にロックされ、下ロック部i2(下部ロック部)でドア開口部の縁部の下部を形成するサイドシル101に離脱可能にロックされる。すなわち、各フロントドア2は、図5に示すように、その前端上ロック部i1を構成するラッチ120Aとストライカ121Aを用いてルーフサイドレール10に離脱可能にロックされ、前端下ロック部i2が図6に示すようにラッチ125Aとストライカ126Aを用いてサイドシル101に離脱可能にロックされる。
【0038】
リアドア4は、スライドドアであり、後述の支持ユニットとなるスイングスライドユニットUによって車両前後方向Xに移動可能に支持され、後乗降口3を閉鎖するドア閉鎖位置D1と、そのドア閉鎖位置D1より車外に突出た揺動位置D2と、揺動位置D2より後方に移動した開位置D3とに移動可能に支持されている。
【0039】
後乗降口3の周囲には、後乗降口3を閉じるドア閉鎖位置D1において、リアドア4を保持する複数のロック部J1,J2,J3が配置されている。各ロック部は、本形態において、ロック部J1,J2はフロントドア側に位置する後乗降口3の前側(閉鎖方向側)上下に、ロック部J3は後乗降口3の後側(開放方向側)にそれぞれ配置されている。すなわち、ドア閉鎖位置D1において、リアドア4は、図5に示すように、その前端上ロック部J1を構成するラッチ120Bとストライカ121Bを用いてルーフサイドレール10に離脱可能にロックされ、前端下ロック部J2が図6に示すようにラッチ125ビBとストライカ126Bを用いてサイドシル101に離脱可能にロックされる。また、後端ロック部J3は、図7に示すようにラッチ122とストライカ123を用いてリアピラー102に離脱可能にロックされる。
【0040】
本形態において、上ロック部i1,J1のストライカ121A,121Bは、ルーフサイドレール10にボルト103A、103Bで締結固定され、下ロック部i2,J2のストライカ126A,126Bは、サイドシル101のアウターパネルに図示しないボルトで締結固定されている。後端ロック部J3のストライカ123はリアピラー102のアウターパネルにボルト104で締結固定されている。各ロック部のラッチは、各ストライカと対向するフロントドア2とリアドア4のインナーパネル21A,21Bに、それぞれ固定されている。
【0041】
本形態において、ロック部i1,i2は、図1に示すように、ヒンジ部h1,h2と相まってロック部i1,i2を結ぶ線を底辺とし、ヒンジ部h1,h2を結ぶ線を上辺とする台形領域M1を形成するように前乗降口1の周部に配置されている。ロック部J1,J2,J3は、各ロック部を結ぶ線が、ロック部J3が頂点となる三角領域M2を形成するように後乗降口3の周部に配置されている。
【0042】
ロック部i1,i2及びロック部J1,J2は、下側のロック部i2とロック部J2の間隔L2が、上側のロック部i1とロック部J1の間隔L1よりも広くなるように、それぞれ配置されていて、フロントドア2とリアドア4を閉じたときに、領域M1,M2の間に領域M3を形成する。この領域M3は、ロック部i1,i2を結ぶ線、ロック部J1,J2を結ぶ線、ロック部i1、J1を結ぶ線、ロック部i2,J2ロックを結ぶ線で囲まれた下方側が上方側よりも広い台形をなし、フロントドア2とリアドア4を閉じたときに、センターピラー領域として機能する。すなわち、ロック部i1,i2及びロック部J1,J2によってフロントドア2とリアドア4がドア開口部に固定されることにより領域M3内に位置する各ドアの部位がセンターピラーとして機能するようになる。
【0043】
このように、ドア開口部となる前乗降口1を閉じる閉鎖位置でフロントドア2を保持するロック部i1,i2を前乗降口1の後側上下に配置し、後乗降口3を閉じる閉鎖位置D1でスライド方式のリアドア4を保持するロック部J1,J2,J3を、各乗降口3の前側上下と後側にそれぞれ配置したので、前乗降口1と後乗降口3をフロントドア2及びリアドア4で閉めたときに、これらドアが個別なロック部i1,i2及びロック部J1,J2,J3でそれぞれ独立して保持されるので、ドアの開閉順序が発生しなくなるとともに、フロントドア2及びリアドア4のロック状態を強固に保持できる。このため、センターピラーレス構造でありながら剛性アップを図れるとともに、車両側方から衝撃荷重が加わったときの不用意なドアの開きを効果的に防止することができ、乗降性を確保しながら安全性と剛性アップを図ることができる。また、フロントドア2は、ヒンジ部h1,h2とロック部i1,i2を結ぶ台形領域M1の四点で前乗降口1閉じる閉塞位置に保持されるので、ドア単体でのロック状態が安定する。
【0044】
特に、リアドア4においては、各ロック部で囲まれた領域内で、前記スライドドアの重心近傍がスイングスライドユニットUで支持されているので、後乗降口3をリアドア4で閉めたときに、前側上下のロック部J1,J2とドア後側のロック部J3とで閉鎖状態に保持されるので、閉鎖状態での回転モーメントの発生が抑制される。このため、閉鎖位置での振動の発生を少なくしながら、リアドア4のロック状態を強化に保持でき、車両側方から衝撃荷重が加わったときの不用意なドアの開きを効果的に防止することができる。しかもロック部J1,J2,J3は、ロック部J3が頂点となる三角領域M2を形成するように後乗降口3の周部に配置されているので、少ないロック部で効率的にリアドア4の閉塞位置D1に保持することができるので、コスト低減を図ることができる。
【0045】
スライドドアであるリアドア4の上下方向における中央部近傍をスイングスライドユニットUで支持することで、従来のように、サイドルーフレール10やサイドシル101内にスライドレールなどを設置しなくて良いので、サイドルーフレール10やサイドシル101の断面が小さくなり、前乗降口1や後乗降口4の高さ制限や車室内に対する出っ張りが少なくなり、より乗員の乗降性を向上することができる。
【0046】
前乗降口1や後乗降口4の閉鎖方向側下部に配置されたロック部i2,J2の間隔L2が閉鎖方向側上部に配置されたロック部i1,J1の間隔L1よりも広くなるように各ロック部を配置したので、これらロック部を結ぶ領域により仮想センサーピラー領域M3が形成される。このセンターピラー領域では下方が広くなるので、衝突物に対する接触面積が大きくなり、効率よく衝撃加重をフロントドア1とリアドア4に分散することができる。また、センターピラー領域M3の上方は、その幅が押さえられるので、窓などの占有面を広く取ることができ、視認性が向上し、安全性がより向上することができる。
【0047】
次にロック部によるフロントドア2とリアドア4の拘束について説明する。本形態では、図5、図6に示すように閉鎖方向側上部に配置されたロック部i1,J1と、閉鎖方向側下部に配置されたロック部i1,J1によるドア拘束方向が、互いに異なる方向となるように各ロック部を配置している。すなわち、本形態では、ロック部i1,J1のストライカ121A,121Bと、ロック部i2,J2のストライカ126A,126Bの取付け向きを異ならせている。
【0048】
ストライカ121A,121Bは、図5に示すうに、サイドルーフレール10に略水平で、かつ車両前後方向Xに幅広となるように装着されていて、ラッチ120A,120Bは、これらにストライカに対して上下方向から噛み合うように各ドアに装着されている。これに対し、ストライカ126A,126Bは、図6に示すように、サイドシル101に略垂直で、かつ車幅方向Yに幅広となるように装着され、ラッチ125A,125Bは水平方向から噛み合うように各ドアに装着されている。
【0049】
このため、ロック部i1,J1のロック状態では、ラッチ121A,121Bが図1に矢印Zで示す車両の上下方向に対して、その動きが拘束されるが、車幅方向Yにはその移動可能でなる。また、ロック部i2,J2のロック状態では、ラッチ126A,126Bが矢印Zで示す車両の上下方向に対して移動可能となるが、車幅方向Yにはその移動が拘束されることになる。
【0050】
このため、フロントドア1やリアドア4の開閉動作に伴い各ロック部のラッチとストライカの位置関係がずれた場合でも、そのずれを吸収することができるので、ドアの建付け調整が容易に行えると共に、各ドアのロック状態をより強化に保持でき、衝撃荷重が加わったときの不用意なドアの開きをより確実に防止することができる。特に、本形態のリアドア4の支持構造は、その上下方向における中央部近傍をスイングスライドユニットUで支持する構造であるので、開閉動作に伴い上限方向への回転モーメントが発生し易く、建付け制度を取るのが難しいが、上部のロック部J1と下部のロック部J2による拘束方向が異なることで容易に建付け調整を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態である車両の概略側面図である。
【図2】図1のリアドアに用いられるスイングスライドユニットの概略側面図である。
【図3】図1のリアドアに用いられるスイングスライドユニットの機能説明図で、(a)はドア閉鎖位置を、(b)は揺動位置を、(c)は開位置を示す平面図である。
【図4】図1のリアドアに用いられるスイングスライドユニットの斜視図である。
【図5】閉鎖方向側上部に配置したロック部の構成を示す拡大平面視図である。
【図6】閉鎖方向側下部に配置したロック部の構成を示す拡大平面視図である。
【図7】ドア開放方向側に配置したロック部の構成を示す拡大平面視図である。
【符号の説明】
【0052】
1,3 ドア開口部
2 ヒンジドア
4 スライドドア
10 サイドルーフレール
101 サイドシル
120A,125A ヒンジドアのラッチ
120B,122,125B スライドドアのラッチ
121A,126A ヒンジドアのストライカ
121B,123,126B スライドドアのストライカ
B 車両
i1,J1 閉鎖方向側上部のロック部
i2,J2 閉鎖方向側下部のロック部
J3 ドア開放方向側のロック部
L1 閉鎖方向側上部ロック部の間隔
L2 閉鎖方向側下部ロック部の間隔
U 支持ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に隣接して設けられ、車両に形成されたドア開口部を共同して閉鎖するフロントドア及びリアドアを備える車体構造において、
前記ドア開口部を閉じる閉鎖位置で前記フロントドアおよび前記リアドアをそれぞれ保持するロック部を有し、
前記ロック部は、少なくとも前記フロントドアの後側上下端と前記ドア開口部の縁部との間に設けられるフロントドアの上部ロック部及びフロントドアの下部ロック部と、前記リアドアの前側上下端と前記ドア開口部の縁部との間に設けられるリアドアの上部ロック部及びリアドアの下部ロック部を備えたことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の車体構造において、
前記フロントドアの下部ロック部と前記リアドアの下部ロック部との間隔が、前記フロントドアの上部ロック部と前記リアドアの上部ロック部との間隔よりも広くなるように各ロック部を配置したことを特徴とする車体構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車体構造において、
前記ドア開口部の縁部は、少なくともサイドルーフレールとサイドシルから形成され、
前記上部ロック部は、サイドルーフレールと各ドアのいずれか一方に設けられたラッチと他方に設けられたストライカを備え、
前記下部ロック部は、サイドシルと各ドアのいずれか一方に設けられたラッチと他方に設けられたストライカ備えていることを特徴とする車体構造。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の車体構造において、
前記上部ロック部と前記下部ロック部とでは、ロック部によるドア拘束方向が、互いに異なる方向となるように、前記ロック部が配置されていることを特徴とする車体構造。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかに記載の車体構造において、
前記フロントドア及び前記リアドアの少なくとも一方はスライドドアを構成し、
前記スライドドアのロック部は、車両前後方向で前記上部ロック部及び前記下部ロック部と反対側にも配置されていることを特徴とする車体構造。
【請求項6】
請求項5記載の車体構造において、
前記スライドドアを車両前後方向に移動自在に支持する支持ユニットを備え、
前記スライドドアの各ロック部で囲まれた領域内で、前記スライドドアの重心近傍を前記支持ユニットで支持したことを特徴とする車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−216726(P2007−216726A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36785(P2006−36785)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】