説明

車体構造

【課題】車室内の車幅方向中心部に運転席シートが配設された自動車の車体構造において、インパネメンバの支持剛性を車体構造に応じた適正な構成で効果的に向上させる。
【解決手段】車室フロア5上の車幅方向中心部に配設された運転席シート6と、エンジンルームの前部から上記車室フロア5の下面部に亘って車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のフロントサイドフレーム42,42とを備えた自動車の車体構造において、車室内の前端部に設置されたインストルメントパネル40の内部に、車幅方向に延びてステアリング9等を支持するインパネメンバ60を設置するとともに、上記フロントサイドフレーム42が設置される部分の車室フロア5と上記インパネメンバ60とを連結ブラケット62を介して連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室フロア上の車幅方向中心部に運転席シートが配設された自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の節減等の要求から、コンパクトで軽量な自動車が求められている。このような自動車では、コンパクトな構成でありながら車室内において乗員のためのスペースをできるだけ広く確保するための工夫が必要となる。例えば、下記特許文献1では、車室フロア上の車幅方向中心部、すなわち、車体の左右両側端部から離れた位置に運転席シートを配設することにより、車体をコンパクト化しつつ上記運転シートの左右に広いスペースを確保することが行われている。
【特許文献1】特開平7−156807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、通常の自動車においては、車室内の前端部に、オーディオや空調ユニット等の各種車載機器が装備されるインストルメントパネルが設置され、このインストルメントパネルの内部に、車幅方向に延びて上記車載機器や車両操舵用のステアリング等を支持するインパネメンバが設置されている。このインパネメンバは、上記車載機器やステアリング等を安定して支持するために、例えば車室フロア上の車幅方向中心部に突設されるフロアトンネルに所定の連結部材等を介して連結されており、これによって高い支持剛性を有するように構成されている。
【0004】
ところが、上記特許文献1のように、車室フロア上の車幅方向中心部に運転席シートが配設される自動車では、車室フロア上に上記のようなフロアトンネルを突設することが構造上困難であり、上記インパネメンバをフロアトンネルと連結してその支持剛性を向上させるという上記のような構成を採用することができない場合がある。このように、車室フロア上の車幅方向中心部に運転席シートが配設される自動車では、通常の自動車とは異なる車体構造上の制限等が存在するため、このような車体構造の相違に応じた適正な構成で上記インパネメンバの支持剛性を確保する必要がある。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、車室内の車幅方向中心部に運転席シートが配設された自動車の車体構造において、インパネメンバの支持剛性を車体構造に応じた適正な構成で効果的に向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車室の側面部に形成された乗降用開口部と、この乗降用開口部を開閉するサイドドアと、車室フロア上の車幅方向中心部に配設された運転席シートと、エンジンルームの前部から上記車室フロアの下面部に亘って車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のフロントサイドフレームと、車室内の前端部において車幅方向に延びるように設置されたインストルメントパネルと、このインストルメントパネルの車幅方向中心部から後方に突出するステアリングとを備えた自動車の車体構造であって、上記インストルメントパネルの内部には、車幅方向に延びて上記ステアリングを支持するインパネメンバが設置されており、上記フロントサイドフレームが設置される部分の車室フロアと上記インパネメンバとが連結ブラケットを介して連結されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、車室フロアの下面部等に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを設けるとともに、このフロントサイドフレームが設置される部分の車室フロアとインストルメントパネル内部のインパネメンバとを連結ブラケットを介して連結するようにしたため、車室フロア上の車幅方向中心部にフロアトンネルが突設されているか否かにかかわらず、上記インパネメンバを車室フロア上の高剛性部(フロントサイドフレームにより剛性が強化された部分)に連結することができ、これに応じてインパネメンバの支持剛性を効果的に向上させることができる等の利点がある。
【0008】
上記車室フロアは、上記フロントサイドフレームの設置部に、周囲よりも上方に隆起する補強部を有し、上記連結ブラケットは、上記車室フロアの補強部と上記インパネメンバとを連結するものであることが好ましい(請求項2)。
【0009】
このように、フロントサイドフレームが設置される部分の車室フロアを隆起させて高剛性な補強部を形成し、この補強部と上記インパネメンバとを連結するようにした場合には、インパネメンバの支持剛性をより効果的に向上させることができる等の利点がある。
【0010】
上記連結ブラケットは、上記インパネメンバに沿って車幅方向に延びるボス部と、このボス部と車室フロアとを連結するように上下方向に延びる脚部とを有し、上記ボス部には、上記インパネメンバの車幅方向中心部に対応する位置に、上記ステアリングを支持するステアリング支持部が設けられており、このステアリング支持部の設置部から車幅方向外側にオフセットしたボス部の所定部位に、上記脚部の上端部が結合されていることが好ましい(請求項3)。
【0011】
このように、インパネメンバに沿って車幅方向に延びる連結ブラケットのボス部に、インパネメンバの車幅方向中心部に位置してステアリングを支持するステアリング支持部を設け、このステアリング支持部から車幅方向外側にオフセットした位置に、上記ボス部と車室フロアとを連結する脚部の上端部を結合させた場合には、上記インパネメンバにその車幅方向中心部を節とした比較的大きな2次振動が生じることを有効に回避しながら、インパネメンバやこれに支持されるステアリングの支持剛性を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0012】
上記構成においては、上記運転席シートの後方部と側面視で重複するとともに、平面視で上記運転席シートを左右から挟むように配設された一対の後席シートを備えることが好ましい(請求項4)。
【0013】
このようにすれば、乗員の足元スペースを比較的広く確保しつつ、車体をコンパクトかつ軽量に構成できるという利点がある。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、車室内の車幅方向中心部に運転席シートが配設された自動車の車体構造において、インパネメンバの支持剛性を車体構造に応じた適正な構成で効果的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図5は、本発明の一実施形態にかかる自動車の車体構造を示している。本図に示される自動車は、車室の側面部に形成された乗降用開口部1,2と、この乗降用開口部1,2をそれぞれ開閉するサイドドア3,4と、車室の左右両側辺部に沿って設置されたサイドシル11,11の間において前後方向に延びる車室フロア5と、この車室フロア5上の車幅方向中心部に配設された運転席シート6と、この運転席シート6の左右後方に配設された一対の後席シート7,8と、エンジンルームの前部から上記車室フロア5の下面部に亘って車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のフロントサイドフレーム42,42と、車室内の前端部において車幅方向に延びるように設置されたインストルメントパネル40と、このインストルメントパネル40の車幅方向中心部から後方に突出するステアリング9とを備えている。
【0016】
上記車室フロア5は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル10の下端部から車体の後方側に延びるように設置された略平坦なフロントフロア部12と、上記運転席シート6の設置部に位置する車幅方向中央部分が上方に隆起した第1キックアップ部13と、左右の後席シート7,8の設置部間に位置する車幅方向中央部分が上記第1キックアップ部13よりもさらに上方に隆起した第2キックアップ部14とを有している。
【0017】
ここで、多くの自動車において車室フロア5の車幅方向中心部には、上方に突出するフロアトンネルが車体の前後方向に延びるように設置されているが、当実施形態では、図2や図5等から分かるように、車室フロア5に上記のようなフロアトンネルは設けられていない。これにより、上記フロアトンネルの存在に起因して運転席シート6に着座した乗員の足元スペースが阻害されるのを防止し、乗員を適正かつ安楽な姿勢で運転席シート6に着座させることができるようになっている。
【0018】
上記第1キックアップ部13の上方には、運転席シート6を車体の前後方向にスライド自在に支持する左右一対のシートスライドレール17が設置されている。このシートスライドレール17は、取付ブラケット18を介して上記第1キックアップ部13の上面に固定されたロアレール19と、このロアレール19に沿って摺動可能に支持されたアッパレール20とを有し、このアッパレール20の上面に運転席シート6のシートクッション21が支持されている。そして、このシートクッション21を支持するアッパレール20がシートスライドレール17のロアレール19に沿って摺動することにより、上記運転席シート6が車体の前後方向にスライド変位してその前後位置が調節されるようになっている。
【0019】
上記第2キックアップ部14には、図4および図5に示すように、後席シート7,8のシートクッション23が載置されるシート載置部25,25が左右に形成されている。これら左右のシート載置部25,25の間、つまり第2キックアップ部14の車幅方向中心部には、周囲よりも上方へ大きく隆起する隆起部27が形成されている。
【0020】
上記第2キックアップ部14における左右のシート載置部25,25上にそれぞれ載置された後席シート7,8は、図2に示すように、側面視で運転席シート6の後方部と重複し、かつ図1に示すように、平面視で運転席シート6を左右から挟むように設置されるとともに、各シートの前面が車幅方向の斜め外側を向くように設定された傾斜ラインA,Aに沿って配設されている。
【0021】
また、図2〜図4に示すように、上記第1キックアップ部13および第2キックアップ部14の下方には、燃料タンク15およびエキゾーストパイプ37が配設されているとともに、上記第1キックアップ部13の後端部下面には、車幅方向に延びるクロスメンバ16が設置されている。
【0022】
上記燃料タンク15は、上記第1キックアップ部13の高さ寸法および幅寸法に対応した形状に形成されてこの第1キックアップ部13の下方に配設される前側タンク30と、この前側タンク30の後端部に連設されて上記第2キックアップ部14の下方に配設される後側タンク33とから構成されている。このうち後側タンク33は、図4に示すように、上記第2キックアップ部14のシート載置部25に沿って車幅方向に延びる左右一対の側方延出部35,35と、これら側方延出部35,35の間で上記第2キックアップ部14の隆起部27に沿って上方に膨出する膨出部34とを有している。また、図2に示すように、上記前側タンク30の後端部上面には、上記クロスメンバ16との干渉を防止するための凹部36が形成されている。
【0023】
上記フロントサイドフレーム42は、図2および図5に示すように、エンジンルームの前方側から後方に延びるフレーム前部44と、上記車室フロア5の下面に沿って前後方向に延びるフレーム後部46と、これらフレーム前部44とフレーム後部46とを連結するように上記ダッシュパネル10の下端部および車室フロア5(フロントフロア部12)の前端部における車室外側面に沿って配設されたフレーム連結部45とが互いに溶接されることによって構成されている。なお、フロントサイドフレーム42は、このような3分割構造に限らず、プレス加工等により一体成形された単一のフレームから構成されていてもよいし、上記とは異なる部分で分割されていてもよい。
【0024】
上記フレーム前部44は、角筒状に形成されており、これ自体で閉断面を形成して高い剛性を有するように構成されている。一方、上記フレーム連結部45およびフレーム後部46は、図6および図7に示すように、断面視逆ハット状に形成されており、その上端開口縁に形成されたフランジ部がダッシュパネル10や車室フロア5の車室外側面に接合されることにより、これらの部材とともに閉断面を形成して高い剛性を有するように構成されている。また、図5に示すように、上記フレーム後部46は、車体の後方まで延びてその後端部が上記クロスメンバ16に接合されている。
【0025】
以上のように構成されたフロントサイドフレーム42は、車両の衝突(前突)時に車体前端部から入力される衝撃荷重をその他の車体各部に分散・吸収させることにより、衝突に伴う衝撃を緩和して車室内の乗員を保護する機能を有している。具体的には、車両前突時の衝撃荷重に応じてフレーム前部44が前側から順に圧潰するとともに、その後端部からフレーム連結部45、フレーム後部46の順に衝撃荷重が伝達され、さらにこのフレーム後部46を介して車室フロア5、サイドシル11、クロスメンバ16等の車体各部に上記衝撃荷重が伝達されることにより、衝突に伴う衝撃が緩和されてキャビンの変形が抑制されるようになっている。
【0026】
図6および図7に示すように、車幅方向中心部に配設された上記運転席シート6(図1)の足元部にあたる車室内の前端部中央付近には、アクセルペダル52およびブレーキペダル54からなる操作ペダル56や、乗員の左足が載置されるフットレスト58が配設されている。そして、これら操作ペダル56やフットレスト58の設置部よりも車幅方向外側に、上記一対のフロントサイドフレーム42,42が配設されるようになっている。
【0027】
また、図2および図5〜7に示すように、車室フロア5(フロントフロア部12)の前端部には、上記フロントサイドフレーム42のフレーム連結部45の設置部に対応する左右2箇所に、周囲よりも上方に隆起する一対の補強部50,50が設けられている。この補強部50は、車室フロア5の他の部分と一体に形成されて上方に隆起しており、その前端面がダッシュパネル10下端部の車室内側面に接合されるようになっている。そして、このように構成された補強部50は、上記フレーム連結部45との間で大きな閉断面を形成してその剛性をさらに高める役割を果たしている。
【0028】
上記ダッシュパネル10の後方であってかつ上記補強部50の設置部上方には、インストルメントパネル40やその内部に配設される車載機器(例えばオーディオや空調ユニット)、および上記ステアリング9等を支持するためのインパネメンバ60が設置されている。このインパネメンバ60は、丸パイプ材等からなり、上記インストルメントパネル40の内部において車幅方向に延びるとともに、その両端部がブラケット61を介して車室左右の側壁に固定されている。
【0029】
上記インパネメンバ60は、図6および図7に示す連結ブラケット62を介して上記一対の補強部50,50のうちの一方と連結されている。この連結ブラケット62は、上記インパネメンバ60の外周面を包む車幅方向に延びる筒状体等からなるボス部66と、このボス部66と上記一方の補強部50とを連結するように上下方向に延びる脚部64と、これらボス部66および脚部64の剛性を確保するための補強リブ68とを有している。
【0030】
上記ボス部66は、車室内の車幅方向中心部から上記一方の補強部50の設置部上方までの範囲に亘ってインパネメンバ60の外周面を包むように設置されており、このインパネメンバ60の車幅方向中心部に対応するボス部66の一端側には、ステアリングシャフト9aを支持するステアリング支持部70が設けられている。そして、このステアリング支持部70の設置部から車幅方向外側にオフセットした位置に配置されたボス部66の他端側に、上記脚部64の上端部が結合されるようになっている。一方、脚部64の下端部は、ボルト等によって上記補強部50の側壁と締結されている。
【0031】
以上のように車室の側面部に形成された乗降用開口部1,2と、この乗降用開口部1,2を開閉するサイドドア3,4と、車室フロア5上の車幅方向中心部に配設された運転席シート6と、エンジンルームの前部から上記車室フロア5の下面部に亘って車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のフロントサイドフレーム42,42と、車室内の前端部において車幅方向に延びるように設置されたインストルメントパネル40と、このインストルメントパネル40の車幅方向中心部から後方に突出するステアリング9とを備えた自動車の車体構造において、上記インストルメントパネル40の内部に、車幅方向に延びて上記ステアリング9等を支持するインパネメンバ60を設置するとともに、上記フロントサイドフレーム42が設置される部分の車室フロア5(より具体的には当該部に形成された車室フロア5の補強部50)と上記インパネメンバ60とを連結ブラケット62を介して連結するようにしたため、上記インパネメンバ60の支持剛性を車体構造に応じた適正な構成で効果的に向上させることができるという利点がある。
【0032】
すなわち、上記構成によれば、車室フロア5の下面部等に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム42,42を設けるとともに、このフロントサイドフレーム42が設置される部分の車室フロア5と上記インパネメンバ60とを連結ブラケット62を介して連結するようにしたため、車室フロア5上の車幅方向中心部にフロアトンネルが突設されているか否かにかかわらず、上記インパネメンバ60を車室フロア5上の高剛性部(フロントサイドフレーム42により剛性が強化された部分)に連結することができ、これに応じてインパネメンバ60の支持剛性を効果的に向上させることができる。
【0033】
例えば、通常の自動車では、車室フロア5上の車幅方向中心部に、車体の前後方向に延びるフロアトンネルが突設され、上記インパネメンバ60とこのフロアトンネルの前端部とが連結されることにより、上記インパネメンバ60の支持剛性が確保されるようになっていることが多いが、車室フロア5上の車幅方向中心部に運転席シート6が配設された上記構成の自動車においてこれと同様の構成を採用すると、運転席シート6に着座した乗員の足元スペースが上記フロアトンネルによって阻害される等の問題が生じるおそれがある。したがって、車幅方向中心部に運転席シート6が配設された自動車では、上記実施形態と同様にフロアトンネルを省略した方が望ましいと考えられるが、このようにフロアトンネルを省略してしまうと、このフロアトンネルと上記インパネメンバ60とを連結するという従来と同様の構成を採用することができなくなる。これに対し、上記構成のように、フロントサイドフレーム42の存在によって剛性が強化された部分の車室フロア5とインパネメンバ60とを連結した場合には、上記のようなフロアトンネルの有無にかかわらず、インパネメンバ60の支持剛性を効果的に向上させることができ、このインパネメンバ60にステアリング9や各種車載機器等を安定して支持させることができる。
【0034】
また、上記実施形態のように、フロントサイドフレーム42(のフレーム連結部45)が設置される部分の車室フロア5を隆起させて高剛性な補強部50を形成し、この補強部50と上記インパネメンバ60とを連結するようにした場合には、インパネメンバ60の支持剛性をより効果的に向上させることができるという利点がある。
【0035】
また、上記補強部50の存在によりフレーム連結部45を効果的に補強できるため、車両の衝突時にその前方のフレーム前部44から入力される衝撃荷重を上記補強されたフレーム連結部45を介して効率よくフレーム後部46に伝達し、これに応じて上記衝撃荷重を車体各部に効果的に分散・吸収させて車室内の乗員を適正に保護することができるという利点がある。すなわち、ダッシュパネル10の下端部および車室フロア5の前端部の形状に沿って屈曲形成されるフレーム連結部45は、単独で高い剛性をもたせることが比較的困難な部材であるため、上記のような補強部50が設けられていない場合には、車両の衝突(前突)時に上記フレーム連結部45の設置部であるキャビン前方部が集中的につぶれて後側のフレーム後部46に効率よく衝突荷重を伝達できないおそれがあるが、上記のようにフレーム連結部45を補強部50により補強するように構成すれば、キャビン前方部が大きくつぶれることを効果的に抑制しながら衝突時の衝撃荷重をこのフレーム連結部45を介して効率よく後側のフレーム後部46に伝達し、さらにこのフレーム後部46を介して車室フロア5、サイドシル11、クロスメンバ16等の車体各部に伝達することができる。この結果、簡単な構成で衝突時の衝撃荷重を車体各部に効率よく分散・吸収させることができ、衝突に伴う衝撃を緩和してキャビンの変形を効果的に抑制することができる。
【0036】
さらに、運転席シート6に着座した乗員の足元部にあたる車室内の前端部中央付近に操作ペダル56やフットレスト58を配設し、これら操作ペダル56等の設置部よりも車幅方向外側に上記一対のフロントサイドフレーム42,42を配設した上記実施形態によれば、このフロントサイドフレーム42の設置部に対応して設けられる上記補強部50が、乗員の足元スペースを狭めたり、上記操作ペダル56の適正位置への設置を阻害したりする事態を有効に回避できるという利点がある。
【0037】
また、上記実施形態のように、インパネメンバ60に沿って車幅方向に延びる連結ブラケット62のボス部66に、インパネメンバ60の車幅方向中心部に位置してステアリング9を支持するステアリング支持部70を設け、このステアリング支持部70から車幅方向外側にオフセットした位置に、上記ボス部66と補強部50とを連結する脚部64の上端部を結合させた場合には、上記インパネメンバ60にその車幅方向中心部を節とした比較的大きな2次振動が生じることを有効に回避しながら、インパネメンバ60やこれに支持されるステアリング9の支持剛性を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0038】
すなわち、例えばインパネメンバ60の車幅方向中心部付近にのみボス部66を設け、この車幅方向中心部に設置される上記ステアリング支持部70に近接して、上記脚部64とボス部66との結合部を配置することも可能であるが、このようにした場合には、インパネメンバ60に、その車幅方向中心部(および左右両端部)を節とした比較的大きな2次振動が生じるおそれがある。これに対し、上記のように脚部64とボス部66との結合部をインパネメンバ60の車幅方向中心部からオフセットした位置に配置した場合には、上記のような2次振動が発生するのを有効に回避することができるため、上記インパネメンバ60に支持されるステアリング9等に不快な振動が生じるのを防止して乗員の快適性を良好に維持することができる。また、インパネメンバ60に沿って車幅方向に延びる上記ボス部66の存在により、インパネメンバ60の剛性を効果的に向上させることができるとともに、このボス部66に設けられたステアリング支持部70にステアリング9を高剛性に支持させることができる。さらには、車幅方向中心部に位置する上記操作ペダル56等の設置部を回避して上記脚部64を容易に配設できるという利点もある。
【0039】
また、上記実施形態のように、運転席シート6の後方部と側面視で重複するとともに、平面視で上記運転席シート6を左右から挟むような位置に左右一対の後席シート7,8を設けた場合には、乗員の足元スペースを比較的広く確保しつつ、車体をコンパクトかつ軽量に構成できるという利点がある。
【0040】
すなわち、運転席シート6を車室フロア5上の車幅方向中心部に設置した上で、この運転席シート6の後部が上記一対の後席シート7,8と側面視で重複するように、上記運転席シート6と後席シート7,8とを互いに近接して配設した場合には、搭乗可能な乗員の人数を確保しつつ、室内スペースの前後長が大きくなるのを防止でき、これに応じて車体を効果的にコンパクトかつ軽量に構成できるという利点がある。また、平面視で運転席シート6を左右から挟むような位置に上記一対の後席シート7,8を配設したことにより、これら後席シート7,8の前方側のスペースが運転席シート6により遮られて後席乗員の足元スペースが狭くなるのを効果的に防止できるため、上記のように運転席シート6と後席シート7,8とが近接して配置された状況下においても、乗員の足元スペースを比較的広く確保することができる。
【0041】
特に、上記実施形態のように、左右の後席シート7,8を、それぞれの前面が車外側を指向するように設定された傾斜ラインA,Aに沿って配設した場合には、この後席シート7,8のシート幅を充分に広く確保できるとともに、図1の仮想線で示す後席乗員がその足を斜め前方に向けて伸ばした状態で着座する際に、運転席シート6に邪魔されることなくその足元スペースを充分に確保できるという利点がある。
【0042】
なお、上記実施形態では、フロントサイドフレーム42(のフレーム連結部45)が設置される部分の車室フロア5を隆起させて補強部50を形成し、この補強部50と上記インパネメンバ60とを連結するようにしたが、特に問題なければ上記補強部50を省略することも可能である。このように補強部50を省略した例を図8に示す。この図8の例では、連結ブラケット62の脚部64の下端部にフランジ部64aが形成され、このフランジ部64aが、車室フロア5およびフレーム連結部45のフランジ部45aと合わさった3枚重ねの状態でこれらと強固に締結されることにより、上記インパネメンバ60の支持剛性が充分に確保されるようになっている。
【0043】
また、上記実施形態では、車室フロア5の一部を隆起させることによって(車室フロア5と一体に)補強部50を形成したが、補強部50を別部材によって構成し、これを平面状の車室フロア5に溶接等により接合するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車体構造を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】車室フロア部の構成を示す平面図である。
【図6】車室内の前方部を示す斜視図である。
【図7】図2のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】本発明の変形実施例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0045】
1,2 乗降用開口部
3,4 サイドドア
5 車室フロア
6 運転席シート
7,8 後席シート
9 ステアリング
40 インストルメントパネル
42 フロントサイドフレーム
50 補強部
56 操作ペダル
60 インパネメンバ
62 連結ブラケット
64 脚部
66 ボス部
70 ステアリング支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の側面部に形成された乗降用開口部と、この乗降用開口部を開閉するサイドドアと、車室フロア上の車幅方向中心部に配設された運転席シートと、エンジンルームの前部から上記車室フロアの下面部に亘って車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のフロントサイドフレームと、車室内の前端部において車幅方向に延びるように設置されたインストルメントパネルと、このインストルメントパネルの車幅方向中心部から後方に突出するステアリングとを備えた自動車の車体構造であって、
上記インストルメントパネルの内部には、車幅方向に延びて上記ステアリングを支持するインパネメンバが設置されており、
上記フロントサイドフレームが設置される部分の車室フロアと上記インパネメンバとが連結ブラケットを介して連結されていることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の車体構造において、
上記車室フロアは、上記フロントサイドフレームの設置部に、周囲よりも上方に隆起する補強部を有し、
上記連結ブラケットは、上記車室フロアの補強部と上記インパネメンバとを連結するものであることを特徴とする車体構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車体構造において、
上記連結ブラケットは、上記インパネメンバに沿って車幅方向に延びるボス部と、このボス部と車室フロアとを連結するように上下方向に延びる脚部とを有し、
上記ボス部には、上記インパネメンバの車幅方向中心部に対応する位置に、上記ステアリングを支持するステアリング支持部が設けられており、このステアリング支持部の設置部から車幅方向外側にオフセットしたボス部の所定部位に、上記脚部の上端部が結合されていることを特徴とする車体構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体構造において、
上記運転席シートの後方部と側面視で重複するとともに、平面視で上記運転席シートを左右から挟むように配設された一対の後席シートを備えることを特徴とする車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−37305(P2008−37305A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215620(P2006−215620)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】