説明

車載カメラ校正システム、車載カメラ制御装置、設備制御装置、車載カメラ校正方法

【課題】より精度の高い校正を行うことができる車載カメラ校正システム、車載カメラ制御装置、設備制御装置、車載カメラ校正方法を提供する。
【解決手段】車載カメラ校正システム1は、設備側に設置された校正指標8の位置情報を記憶する記憶手段3aと、車両に搭載された車載カメラ2の校正を車載カメラ2の撮像した画像内に位置する校正指標8と位置情報に基づいて行う校正手段3bと、校正指標8の現在位置情報を測定する校正指標測定手段7と、位置情報を現在位置情報に基づいて修正する修正手段3cを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用して好適な車載カメラの校正に用いられる車載カメラ校正システム、車載カメラ制御装置、設備制御装置、車載カメラ校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両においては、運転者の駐車に係わる操作を支援するためのIPA(Intelligent Parking Assist)や、高速道路や自動車専用道路において車線の中央を維持して走行するように操舵支援を行うLKA(Lane Keep Assist)等の運転者を支援するためのシステムが車両に搭載されることがあり、このようなシステムにおいては、車両に搭載されたCCDカメラ又はCMOSカメラに代表される車載カメラにより撮像した、車両の周辺の画像データを用いて、路面の車線の両側に位置する白線を二値化処理等により検出する等の処理が行われる。
【0003】
このような車載カメラを車両の製造段階において車両に取り付けるにあたっては、車載カメラが所望の方向及び範囲を撮像することができるように画像処理上の校正を行うことが必要となる。このような校正については、例えば特許文献1に記載されているような手法が用いられており、車両外の車載カメラの撮像範囲に校正指標を設置して、表示画面上に画像データに基づいて画像を表示するとともに調整枠を表示して、この調整枠の中に校正指標が収まるように表示された調整枠を上下左右に移動又は回転させて画像処理上の校正を行うことが行われている。
【特許文献1】特開2001−245326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような特許文献1に記載の校正の手法においては、車両外に設置された校正指標が移設又は変更されておらず設置にあたっての誤差がないものとみなして、車両に対する相対距離を含む位置情報が設計値と常に一致していることを前提として、前述した調整枠をこの設計値に基づいて表示画面上において画像とともに表示しており、この調整枠に校正指標が収まるように校正作業がなされているため、例えば、作業員によりこの校正指標が移設、移動された場合には、校正指標と車両との相対距離が異なることとなり、位置情報が設計値とは一致しない事態を招いて、精度の高い校正作業を実行することができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、より精度の高い校正を行うことができる車載カメラ校正システム、車載カメラ制御装置、設備制御装置、車載カメラ校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明に係る車載カメラ校正システムは、
設備側に設置された校正指標の位置情報を記憶する記憶手段と、
車両に搭載された車載カメラの校正を前記車載カメラの撮像した画像内に位置する前記校正指標と前記位置情報に基づいて行う校正手段と、
前記校正指標の現在位置情報を測定する校正指標測定手段と、
前記位置情報を前記現在位置情報に基づいて修正する修正手段を、
備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係わる上記車載カメラ校正システムによれば、前記校正指標測定手段により、前記校正指標が工場ライン改修や変更に伴って又は伴わないで作業員により移設又は変更された場合に、移設又は変更された後の位置情報である前記現在位置情報を測定して、前記修正手段により、前記位置情報を前記現在位置情報に基づいて修正し適宜最新の位置情報に更新することができるので、前記校正手段は修正されて更新された後の正確な前記位置情報に基づいて前記車載カメラの校正を行うことができ、より精度の高い校正を行うことができる。
【0008】
ここで前記車載カメラ校正システムにおいて、
前記位置情報及び前記現在位置情報が、前記校正指標の前記車両に対する相対距離と、相対角度の少なくとも何れかを含むこととする。より具体的には、例えば、前記車両の前後方向、左右方向、上下方向の相対距離と、前後方向周り、左右方向周り、上下方向周りの相対角度を含むことができる。
【0009】
さらに、前記車載カメラ校正システムにおいて、
前記校正指標測定手段が前記設備側に設置されることが好ましい。
【0010】
これによれば、前記校正指標測定手段を前記設備側に設置することで、前記車両側に設置することに較べて、前記車両側に設置することに伴う重量、外形寸法、設置箇所等の要件を満たす必要が生じることを回避することができるので、より高性能な前記校正指標測定手段を導入することができる。
【0011】
これとともに、校正作業以外においては必要のない前記校正指標測定手段を構成する例えばCCDカメラやCMOSカメラ、レーザレーダ、ミリ波レーダ、赤外線カメラ等の構成要素を前記車両側に常時備えて、複数の前記車両に重複して備えることとなることを回避して、部品増大によるコスト増大や重量増大を招くことを防止することができる。
【0012】
より現実的な構成として、前記車載カメラ校正システムにおいては、
前記車載カメラを制御する車載カメラ制御装置と、
前記設備を制御する設備制御装置を備えるとともに、
前記車載カメラ制御装置が前記記憶手段と前記校正手段と前記修正手段を含み、
前記設備側制御装置が前記校正指標測定手段を制御することが好ましい。
【0013】
これによれば、前記車載カメラ校正システムにおいて、前記校正作業以外においては必要のない前記校正指標測定手段を前記設備側に設置して前記設備制御装置とすることにより、より効率的に前記車載カメラ校正システムの構成要素を前記車両側と前記設備側とで振り分けて配置することができる。
【0014】
なお、前記車載カメラ制御装置は例えば車載カメラECU(Electronic Control Unit)により構成し、前記設備制御装置はMI(Multiple Inspection)により構成することができ、前記車載カメラ制御装置と前記設備制御装置とはCAN(Controller Area Network)等の通信規格により適宜外部配線を用いて接続される。
【0015】
さらに、前記車載カメラ校正システムにおいては、
前記設備制御装置が、前記現在位置情報を前記車載カメラ制御装置に送信する送信手段を備えることとなるが、
この場合において、
前記設備制御装置が、前記位置情報と前記現在位置情報が一致するか否かを判定する判定手段を備えるとともに、
前記判定手段が否定と判定する場合に、前記送信手段が前記現在位置情報を前記車載カメラ制御装置に送信することにより、
前記位置情報と前記現在位置情報が一致している場合には、前述した前記校正指標の移設、移動は行われておらず、前記現在位置情報を前記車載カメラ制御装置に送信する必要がないことから、前記判定手段により一致が成立しているか否かを判定して、成立している場合には、送信を停止して通信負荷を低減し、前記車載カメラ制御装置における前記修正をも省略して処理負荷を軽減することができる。
【0016】
さらに、前記車載カメラ校正システムにおいて、
前記設備が前記車両の前輪を固定する固定装置を含み、前記校正指標測定手段が前記固定装置に設置されることが好ましい。なお、前記固定装置とは前記車両の前輪を固定する機能を有するとともに、前記車両の車輪のトー方向の調整を行う機能を有していても良い。
【0017】
これによれば、通常工場においては必須の設備である前記固定装置を利用して前記校正指標測定手段を設置して、前記校正指標測定手段の設置位置と前記車両の前輪位置を合致させることができるので、前記校正指標測定手段により直接的に測定される、前記校正指標測定手段と前記校正指標との相対位置関係から、前記車載カメラと前記校正指標との相対位置関係である前記現在位置情報を、より簡易な式により求めることができる。
【0018】
また、上記の問題を解決するため、本発明に係る設備制御装置は、
設備側に設置された校正指標の現在位置情報を測定する校正指標測定手段と、
前記現在位置情報を車載カメラ制御装置に送信する送信手段を備えることを特徴とする。
【0019】
これによれば、前記校正指標測定手段により測定した前記校正指標の前記現在位置情報を適宜前記車載カメラに送信することができる。
【0020】
ここでも、前述した車載カメラ校正システムと同様に、
設備側に設置された校正指標の位置情報を記憶する設備側記憶手段を備え、前記位置情報と前記現在位置情報が一致するか否かを判定する判定手段を備えるとともに、前記判定手段が否定と判定する場合に、前記送信手段が前記現在位置情報を車載カメラ制御装置に送信することが好ましい。
【0021】
これによれば、前記校正指標の移設、移動が行われていて、前記修正が必要な場合にのみ前記現在位置情報の送信と、前記修正を実行することができるので、通信負荷と処理負荷の双方を低減することができる。
【0022】
また、上記の問題を解決するため、本発明に係る車載カメラ制御装置は、
設備側に設置された校正指標の位置情報を記憶する車載側記憶手段を備え、
車両に搭載された車載カメラの校正を前記車載カメラの撮像した画像内に位置する校正指標と前記位置情報に基づいて行う校正手段と、
前記位置情報を設備制御装置から送信された前記校正指標の前記現在位置情報に基づいて修正する修正手段を備えることを特徴とする。
【0023】
これによれば、前記設備制御装置から送信された前記校正指標に前記現在位置情報に基づいて前記位置情報を適宜修正することができる。
【0024】
さらに、上記の課題を解決するため、本発明に係わる車載カメラ校正方法は、
設備側に設置された校正指標の位置情報を記憶する記憶ステップと、
車両に搭載された車載カメラの校正を前記車載カメラの撮像した画像内に位置する前記校正指標と前記位置情報に基づいて行う校正ステップと、
前記校正指標の現在位置情報を測定する校正指標測定ステップと、
前記位置情報を前記現在位置情報に基づいて修正する修正ステップを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の車載カメラ校正方法によれば、校正指標測定ステップにより、前記校正指標の現在位置情報、すなわち、前記校正指標が工場ライン改修や変更に伴って又は伴わないで作業員により移設又は変更された場合に、移設又は変更された後の位置情報を測定して、前記修正ステップにより、前記位置情報を前記現在位置情報に基づいて修正し適宜最新の位置情報に更新することができるので、前記校正ステップにおいては、修正されて更新された後の正確な前記位置情報に基づいて前記車載カメラの校正を行うことができ、より精度の高い校正を行うことができる。
【0026】
さらに、前記車載カメラ校正方法においても、
前記修正ステップが車載カメラ制御装置において実行され、前記校正指標測定ステップが設備側制御装置において実行されるとともに、前記現在位置情報を車載カメラ制御装置に送信する送信ステップを備えることが好ましい。
【0027】
加えて、前記車載カメラ校正方法において、
前記位置情報と前記現在位置情報が一致するか否かを判定する判定ステップを備えるとともに、前記判定ステップにおいて否定と判定される場合に、前記送信ステップを実行することが好ましい。
【0028】
これによれば、前記車載カメラ校正方法において、通信負荷と処理負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、より精度の高い校正を行うことができる車載カメラ校正システム、車載カメラ制御装置、設備制御装置、車載カメラ校正方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0031】
図1は、本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態を示す模式図であり、図2は、本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態の車載側と設備側の接続態様を主として示す模式図である。図3〜4は、本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態の位置関係を主として示す模式図である。図5は、本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態における修正態様を示す模式図である。
【0032】
本実施例の車載カメラ校正システム1は、図1に示すように、車両に搭載されたリアカメラ2と、車載カメラECU3(Electronic Control Unit)と、ディスプレイ4と、設備側の工場に備えられたMI5(Multiple Inspection)と、工場に備えられたトー調整装置6と、校正指標測定装置7と、リアカメラ校正マーカー8を備えて構成される。
【0033】
MI5及びトー調整装置6と、校正指標測定装置7とは、図1で示すように、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して接続されるとともに、車載カメラECU3とMI5は、図2で示すように外部配線9で接続されてCAN(Controller Area Network)等の通信規格で通信可能に構成されている。
【0034】
リアカメラ2は、例えばCCDカメラまたはCMOSカメラであって、図3に示すように、車両後方を指向するように車両の後端部に設置されており、車両後方の風景を、リアカメラ校正マーカー8を含んで撮像して、撮像された画像データを車載カメラECU3に出力するものであって、車載カメラを構成する。
【0035】
リアカメラ校正マーカー8は校正指標を構成するものであって、図3に示すように、車両Vの後端から後方に相対距離A1の位置に載置される平板状のボード8aの前面に左右方向に延びるターゲットバーが印刷又は塗装されることにより構成される。ボード8aは、図4に示すように、ボード8aの下端部が土台8bに対して図示しないアクチュエータにより左右方向中心を中心として回転可能に支持されている。
【0036】
さらに、図4に示すように、車両Vの前輪はトー調整装置6により固定されており、トー調整装置6は固定装置を構成する。このトー調整装置6の上部に校正指標測定装置7が載置される。校正指標測定装置7は、例えばCCDカメラまたはCMOSカメラとコンピュータを含むものであって校正指標測定手段を構成するものである。図4に示すように、校正指標測定装置7は、車両後方の風景を、リアカメラ校正マーカー8を含んで撮像して、撮像した画像データから図4に示す、前後方向における校正指標測定装置7とリア校正マーカー8のボード8aとの相対距離A2と、相対角度θを測定して、図3及び図4により求まる幾何学的関係式よりリアカメラ2とリアカメラ校正マーカー8との、前後方向における今回の相対距離A1(n)を現在位置情報として測定し求める。
【0037】
なお、図3に示す記号は、WBがホイールベースを、Lが車両Vの全長を、Wが車両Vの全幅を、Rが車両Vの後端から後輪中心までの前後方向の距離を、Xがリアカメラ2と車両Vの前後方向の距離を、Yがリアカメラ2と車両Vの左右方向中心との距離を、Zがリアカメラ2と車両Vの直下の路面との鉛直方向の距離を示し、例えば、図4に示すA2が、図3に示すようにA1+R+WBであることからA1=A2−R−WBの関係式が求まりこの関係式をコンピュータが予め備えることにより、校正指標測定装置7、相対距離A1を求めることができる。より厳密に相対距離A1(n)を求める場合には、全幅W、鉛直方向距離Z、左右方向距離Yを用いて適宜補正を行う。
【0038】
車載カメラECU3は、例えばCPU、ROM、RAM、EEPROMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う記憶手段3a、校正手段3b、修正手段3cとして機能するものであって、車載カメラ制御装置を構成する。記憶手段3aは、校正手段3bがディスプレイ4に図5に示すような調整枠Cを表示するにあたって用いる位置情報としてデフォルト値つまりは設計値である相対距離A1(n−1)を記憶している。
【0039】
MI5は例えばCPU、ROM、RAM、EEPROMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェース及び画面表示装置から構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う送信手段5aと、判定手段5bを構成するものであって、工場内の設備全般を制御する設備制御装置を構成する。
【0040】
MI5は外部配線9により車両Vに車載されているCANに接続されて、車載された各種ECUの自己診断を実施するダイアグツールとしても機能し、工場内の設備全般の調整統括、検査設備の制御をも行うとともに、前述したリアカメラ校正マーカー8のボード8aの左右方向中心を中心とした角度の調整をリアカメラ校正マーカー8の含むアクチュエータを制御して行い、トー調整装置6による車両Vの前輪のロック及び解除、トー調整作業をも統括して制御する。
【0041】
MI5の判定手段5bは校正指標測定手段7が測定した今回の相対距離A1(n)及び相対角度θを含むデータフレームをLANにより取得するとともに、相対距離A1(n−1)を車載カメラECU3の記憶手段3aからCANにより取得して、相対距離A1(n−1)と相対距離A1(n)が一致しているか否かを判定し、否定である場合に、送信手段5aは、相対距離A1(n)を含むデータフレームを車載カメラECU3にCANにより送信する。
【0042】
さらに判定手段5bは相対角度θが閾値θthより大きいか否かを判定し、肯定と判定する場合には、ディスプレイ4の表示に基づいて相対角度θが公差範囲外でありリアカメラ校正マーカー8のボード8aの角度を調節する必要が生じたことを作業員に通知する、又は、リアカメラ校正マーカー8のボード8aの左右方向中心を中心とする角度が前後方向に垂直となるようにリアカメラ校正マーカー8が含む図示しないアクチュエータを制御する。
【0043】
車載カメラECU3の修正手段3cは、MI5から今回の相対距離A1(n)を受信した場合には、図5に示すように、記憶手段3a内に記憶されている設計値である相対距離A1(n−1)を今回の相対距離A1(n)に書き換えて更新し修正して、記憶手段3aは相対距離A(n)を記憶する。修正手段3cは、MI5から今回の相対距離A1(n)を受信しない場合には、記憶手段3a内に記憶されている相対距離A1(n−1)を修正せず、記憶手段3aは設計値である相対距離A(n−1)をそのまま継続して記憶する
ディスプレイ4は、車載カメラECU3の校正手段3bの制御により、画像データに基づいて画像を表示する。以下ディスプレイ4の表示内容及び校正手順について図を用いて説明する。図6は、本発明に係わる車載カメラ校正システム1の表示内容及び校正手順を示す模式図である。
【0044】
図6に示すように、ディスプレイ4は車載カメラECU3の校正手段3bの制御に基づいて、左右方向に又は左右方向に対して若干傾斜して延在する細長い長方形状の調整枠Cを記憶手段3aの記憶している今回測定した相対距離A1(n)又は設計値の相対距離A1(n−1)に基づいて表示し、調整枠C及び画像を上下左右に移動させる四つのシンボルDと回転させる二つのシンボルA、Bを表示する。
【0045】
さらに、ディスプレイ4は、図6に示すような、シンボルA、B、Dに作業者の指が触れた場合にはタッチパネルすなわち入力装置としても機能して、作業者がどのシンボルに触れたかによって、画像及び調整枠Cを上下左右に移動又は回転させる。作業者はこの作業を繰り返し行うことにより、画像内に表示される棒状のリアカメラ校正マーカー8が調整枠C内に位置するようにリアカメラ2の画像を校正することができる。なおこの校正作業は、作業者のシンボルの接触操作を伴わずに、車載カメラECU3の校正手段3bの自動制御により実行することもできる。
【0046】
以下に以上述べた本実施例の車載カメラ校正システム1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図7は、本発明に係わる車載カメラ校正システム1の制御内容を完成車両の検査工程を含んで示すフローチャートである。図8は、本発明に係わる車載カメラ校正システム1のMI5の制御内容を示すフローチャートである。図9は、本発明に係わる車載カメラ校正システム1の車載カメラECU3の制御内容を示すフローチャートである。
【0047】
図7に示すように、ステップS1において、工場内の製造ラインにおいて製造工程が終了した完成車両を完成車両検査工程に通して、ステップS2において、検査工程に入った完成車両を図4に示したようなトー調整装置6に対して前輪を載置するように入れる。さらにステップS3において、トー調整装置6により完成車両の前輪をロックして固定し、完成車両が正対するように調整すなわちトー方向の調整を実施して、完成車両の平行度を公差以内に押さえる。
【0048】
続いて、ステップS4において、校正指標測定装置7によりリアカメラ校正マーカー8とリアカメラ2との前後方向の今回の相対距離A1(n)及び相対角度θを測定し、続いてステップS5において、MI5の判定手段5bは、相対角度θが閾値θthより大きく公差範囲外であるか否かを判定し、否定である場合にはステップS6にすすみ、肯定である場合にはステップS7にすすんで、リアカメラ校正マーカー8が含むアクチュエータによりボード8aの角度を調整する。
【0049】
ステップS6において、MI5の判定手段5bはCANを介して車載カメラECU3の記憶手段3aから設計値の相対距離A1(n−1)を取得し、校正指標測定装置7からLANを介して取得した今回の相対距離A1(n)を取得して、両者の値が異なるか否かを判定し肯定である場合には、ステップS8にすすみ、MI5の送信手段5aはCANを介して測定した今回の相対距離A1(n)を車載カメラECU3に送信する。
【0050】
ステップ6で否定と判定される場合又はステップ8が終了した場合においてステップS9にすすみ、ステップ9において、完成車両のリアカメラ2校正を作業員のタッチパネル4のシンボルの操作に基づいて手動により、又は、車載カメラECU3の制御に基づいて自動により校正を行う。さらに、ステップS10において、トー調整装置6による完成車両の前輪のロックを解除して、完成車両をリアカメラ検査工程から外す。
【0051】
次に、MI5の制御内容及び車載カメラECU3の制御内容について図8及び図9を用いて説明する。図8のステップS11に示すように、トー調整装置6に完成車両の前輪を載置するように移動させた後、作業員によりMI5に対してスタート指示が行われ、ステップS12において、MI5のLANを介した指令に基づいてトー調整装置6により完成車両の前輪をロックさせ、完成車両が正対するように調整を実行させる。
【0052】
さらに、ステップS13において、ステップS12の作業内容が終了した後、MI5がLANを介して校正指標測定装置7に対して測定指令を出力し、校正指標測定装置7は今回の相対距離A1(n)及び相対角度θを測定する。続いて、ステップS14において、MI5の判定手段5bは相対角度θが閾値θthより大きく公差範囲外であるかを判定し、肯定である場合には、ステップS16にすすんで、リアカメラ校正マーカー8のボード8aの角度を再調節することをMI5の備える表示画面に出力し、作業員による手動により又はリアカメラ校正マーカー8の含む図示しないアクチュエータによりボード8aの角度を再調節する。
【0053】
ステップS14において否定であると判定される場合には、ステップS15にすすんで、リアカメラ校正マーカー8とリアカメラ2との今回測定した相対距離A1(n)と設計値の相対距離A1(n−1)が異なるか否かを判定し、肯定である場合にはステップS17にすすんで車載カメラECU3に今回測定した相対距離A1(n)を含むデータフレームをCANにより送信する。ステップS15において否定であると判定される場合、ステップ17の処理内容が終了した場合には、リアカメラ校正調整を終了する。
【0054】
図9のステップS21に示すように、車載カメラECU3の修正手段3cは、今回測定した相対距離A1(n)を含むデータフレームを受信したか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS22にすすんで記憶手段3aがEEPROM内の所定領域に記憶している設計値の相対距離A1(n−1)を今回測定した相対距離A1(n)に書き換える。ステップS21において否定と判定される場合には書き換えは行わない。
【0055】
以上述べた図7に示したフローチャートにおいて、本発明に係わる車載カメラ校正方法の設備側に設置された校正指標の位置情報を記憶する記憶ステップと、車両に搭載された車載カメラの校正を車載カメラの撮像した画像内に位置する校正指標と位置情報に基づいて行う校正ステップと、校正指標の現在位置情報を測定する校正指標測定ステップと、位置情報と現在位置情報が一致するか否かを判定する判定ステップと、判定ステップにおいて否定と判定される場合に、現在位置情報を車載カメラ制御装置に送信する送信ステップと、位置情報を現在位置情報に基づいて修正する修正ステップが実行される。
【0056】
これらの制御内容により実現される本実施例の車載カメラ校正システム1及びそれにより実行される車載カメラ校正方法によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、校正指標測定装置7により、リアカメラ校正マーカー8の現在位置情報、すなわち、リアカメラ校正マーカー8が工場ライン改修や変更に伴って又は伴わないで作業員により移設又は変更された場合において、移設又は変更された後の位置情報である現在位置情報である相対距離A1(n)を測定して、車載カメラECU3の修正手段3cにより、記憶手段3aが記憶している位置情報である設計値の相対距離A1(n−1)を今回測定した相対距離A1(n)に基づいて修正し更新することができるので、車載カメラECU3の校正手段3bは修正されて更新された後の正確な相対距離A1(n)に基づいて、ディスプレイ4に調整枠Cを表示することができ、このより正確に表示された調整枠Cに基づいてリアカメラ2の校正を行うことができ、より精度の高い校正を行うことができる。
【0057】
つまり、リアカメラ校正マーカー8が工場の改修、ラインの変更に伴って移設された、又は作業員が不要意に接触して移動してしまった場合、又は、初期設置にあたって誤差があった場合において、日常の管理が徹底していない場合においても、本実施例の車載カメラ校正システム1においては、校正を行う直前において校正指標測定装置7によりその都度、現在位置情報、ここでは相対距離A1(n)を測定し、設計値からずれていて一致しない場合には現在位置情報に基づいて車載カメラECU3の記憶手段3aが記憶している設計値を修正し更新するので、より正確な校正を行うことができる。換言すれば、上述した項目を厳密に管理する作業を廃することができる。
【0058】
さらに、校正指標測定装置7を車両側に設置する場合には、校正指標測定装置7が車載に伴う、重量、外形寸法、電源容量及び設置箇所等の種々の要件を満たす必要があるため、例えば解像度や処理速度の点において高性能ではあるが車載に伴う要件を満たさない校正指標測定装置7を使用することが困難であるところを、本実施例の車載カメラ校正システム1においては、校正指標測定装置7を設備側に設置することにより、上述した車載に伴う要件に起因する制約を受けないことから、より高性能な校正指標測定装置7を導入して用いることができる。これにより、前述した、移設又は変更された後の現在位置情報である相対距離A1(n)の測定精度をより高めることができ、より正確な校正を実現することができる。
【0059】
加えて、車両Vの製造工程における校正作業以外においては不要である校正指標測定装置7を車両V側に常時備えて、複数の車両Vに重複して含む事態を招くことを回避して、部品増大によるコスト増大や重量増大を招くことを防止することができるとともに、車載カメラ校正システム1を校正する装置をより効率的に車両側と設備側とで振り分けて配置することができる。
【0060】
さらに、車載カメラ校正システム1においては、MI5の判定手段5bが、位置情報すなわち設計値の相対距離A1(n−1)と現在位置情報すなわち今回の相対距離A1(n)が一致するか否かを判定して、この判定が否定である場合に、MI5の送信手段5aが現在位置情報を含むデータフレームをCANにより車載カメラECU3に送信することとしているので以下のような作用効果を得ることができる。
【0061】
つまり、相対距離A1(n−1)と相対距離A1(n)が異なっておらず一致している場合には、リアカメラ校正マーカー8の移設、移動は行われておらず、設置段階での誤差もないものとみなすことができ、相対距離A1(n)を含むデータフレームを車載カメラECU3に送信して車載カメラECU3の修正手段3cにより修正させる必要がないことから、MI5の判定手段5bにより一致が成立しているか否かを判定して、成立している場合には、送信を停止してCAN上の通信負荷を低減し、車載カメラECU3の修正処理をも省略して処理負荷を軽減することができる。
【0062】
さらに、本実施例の車載カメラ校正システム1においては、トー調整装置6の直上に校正指標測定装置7が設置されることとしているので、車両Vを製造し検査工程を実施する工場においては必須の設備であるトー調整装置6を利用して校正指標測定装置7を設置することができるとともに、校正指標測定装置7の設置位置と車両Vの前輪の前後方向の位置を合致させることができる。
【0063】
このため、校正指標測定装置7は、校正指標測定装置7自身により直接的に測定される、校正指標測定装置7とリアカメラ校正マーカー8との相対距離A2から、リアカメラ2とリアカメラ校正マーカー8との相対距離A1を、図3において説明したようなより簡易な式により求め測定することができる。
【0064】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0065】
例えば上述した実施例の車載カメラ校正システム1においては、位置情報及び現在位置情報として車両Vの前後方向におけるリアカメラ2とリアカメラ校正マーカー8の相対距離A1を用いたが、位置情報及び現在位置情報が、相対距離のみならず相対角度含むこととすることもでき、例えば、車両Vの前後方向、左右方向、上下方向の相対距離と、前後方向周り、左右方向周り、上下方向周りの相対角度をも含むこともできる。
【0066】
また、車載カメラとしては上述した実施例においては例示的にリアカメラ2を対象としたが、車両前方を撮像するカメラ、車両側方を撮像するカメラを対象とすることももちろん可能である。
【0067】
さらに、校正指標については上述した実施例に示したリアカメラ校正マーカー8の形態に限るものではなく、例えば工場内の路面に載置又は塗布されたターゲットバーとすることもできる。また、リアカメラ校正マーカー8に例えば加速度センサを設けて作業員による移設が行われた可能性があるか否かをMI5により常時監視して、移設が行われた可能性がある場合にのみ、校正指標測定装置7による測定と、判定手段5bによる一致判定を実行することとすることもできる。
【0068】
また、相対角度θが閾値θthより大きく公差範囲外であるか否かの判定は校正指標測定装置7において行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の車載カメラ校正システム、車載カメラ制御装置、設備制御装置、車載カメラ校正方法によれば、より精度の高い校正を行うことができるので、本発明は乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態の車載側と設備側の接続態様を主として示す模式図である。
【図3】本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態の位置関係を主として示す模式図である。
【図4】本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態の位置関係を主として示す模式図である。
【図5】本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態における修正態様を示す模式図である。
【図6】本発明に係わる車載カメラ校正システムの一実施形態における表示内容及び校正手順を示す模式図である。
【図7】本発明に係わる車載カメラ校正システムの制御内容を完成車両の検査工程を含んで示すフローチャートである。
【図8】本発明に係わる車載カメラ校正システムの制御内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係わる車載カメラ校正システムの車載カメラ制御装置の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1 車載カメラ校正システム
2 リアカメラ(車載カメラ)
3 車載カメラECU(車載カメラ制御装置)
3a 記憶手段
3b 校正手段
3c 修正手段
4 ディスプレイ
5 MI(設備制御装置)
5a 送信手段
5b 判定手段
6 トー調整装置(固定装置)
7 校正指標測定装置(校正指標測定手段)
8 リアカメラ校正マーカー(校正指標)
9 外部配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備側に設置された校正指標の位置情報を記憶する記憶手段と、車両に搭載された車載カメラの校正を前記車載カメラの撮像した画像内に位置する前記校正指標と前記位置情報に基づいて行う校正手段と、前記校正指標の現在位置情報を測定する校正指標測定手段と、前記位置情報を前記現在位置情報に基づいて修正する修正手段を備えることを特徴とする車載カメラ校正システム。
【請求項2】
前記位置情報及び前記現在位置情報が、前記校正指標の前記車両に対する相対距離と、相対角度の少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項1に記載の車載カメラ校正システム。
【請求項3】
前記校正指標測定手段が前記設備側に設置されることを特徴とする請求項2に記載の車載カメラ校正システム。
【請求項4】
前記車載カメラを制御する車載カメラ制御装置と、前記設備を制御する設備制御装置を備えるとともに、前記車載カメラ制御装置が前記記憶手段と前記校正手段と前記修正手段を含み、前記設備側制御装置が前記校正指標測定手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の車載カメラ校正システム。
【請求項5】
前記設備制御装置が、前記現在位置情報を前記車載カメラ制御装置に送信する送信手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の車載カメラ校正システム。
【請求項6】
前記設備制御装置が、前記位置情報と前記現在位置情報が一致するか否かを判定する判定手段を備えるとともに、前記判定手段が否定と判定する場合に、前記送信手段が前記現在位置情報を前記車載カメラ制御装置に送信することを特徴とする請求項5に記載の車載カメラ校正システム。
【請求項7】
前記設備が前記車両の前輪を固定する固定装置を含み、前記校正指標測定手段が前記固定装置に設置されることを特徴とする請求項6に記載の車載カメラ校正システム。
【請求項8】
設備側に設置された校正指標の現在位置情報を測定する校正指標測定手段と、前記現在位置情報を車載カメラ制御装置に送信する送信手段を備えることを特徴とする設備制御装置。
【請求項9】
設備側に設置された校正指標の位置情報を記憶する設備側記憶手段を備え、前記位置情報と前記現在位置情報が一致するか否かを判定する判定手段を備えるとともに、前記判定手段が否定と判定する場合に、前記送信手段が前記現在位置情報を車載カメラ制御装置に送信することを特徴とする請求項8に記載の設備制御装置。
【請求項10】
設備側に設置された校正指標の位置情報を記憶する車載側記憶手段を備え、車両に搭載された車載カメラの校正を前記車載カメラの撮像した画像内に位置する校正指標と前記位置情報に基づいて行う校正手段と、前記位置情報を設備制御装置から送信された前記校正指標の前記現在位置情報に基づいて修正する修正手段を備えることを特徴とする車載カメラ制御装置。
【請求項11】
設備側に設置された校正指標の位置情報を記憶する記憶ステップと、車両に搭載された車載カメラの校正を前記車載カメラの撮像した画像内に位置する前記校正指標と前記位置情報に基づいて行う校正ステップと、前記校正指標の現在位置情報を測定する校正指標測定ステップと、前記位置情報を前記現在位置情報に基づいて修正する修正ステップを備えることを特徴とする車載カメラ校正方法。
【請求項12】
前記修正ステップが車載カメラ制御装置において実行され、前記校正指標測定ステップが設備側制御装置において実行されるとともに、前記現在位置情報を車載カメラ制御装置に送信する送信ステップを備えることを特徴とする請求項11に記載の車載カメラ校正方法。
【請求項13】
前記位置情報と前記現在位置情報が一致するか否かを判定する判定ステップを備えるとともに、前記判定ステップにおいて否定と判定される場合に、前記送信ステップを実行することを特徴とする請求項12に記載の車載カメラ校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−173481(P2010−173481A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18436(P2009−18436)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】