説明

車載用ナビゲーション装置及びプログラム

【課題】高高地を走行中、あるいは高高地へ進入する前において、高高地でハードディスクドライブが作動しないことに起因する機能制限を補うための情報提供を行うための技術を提供する。
【解決手段】現在位置が高高地エリア内であると判定している間(S110:YES,S170:NO)、ハードディスクドライブの作動を禁止し(S150)、地図表示の代わりに当該高高地エリアから脱するまでの距離や、目的地までの距離・方向等の案内情報を表示や音声により報知する(S160)。一方、現在位置が高高地エリアではないと判定している間(S110:NO)に高高地エリアへ所定の距離まで接近した場合(S130:YES)、現在地付近に存在する高高地エリアまでの距離・方向や、地図が表示されなくなる区間の長さ等の事前案内情報を、当該高高地に進入する事前に表示や音声にて報知する(S140)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブを有する車載用ナビゲーション装置に関し、特に、標高の高い地域でハードディスクドライブの作動を制限した場合のユーザに対する情報提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データに基づいて現在位置周辺の地図をディスプレイに表示したり、目的地までの最適な経路を計算して走行案内を行う車載用ナビゲーション装置等の車載装置において、地図データ等を記憶するための記憶媒体としてハードディスクドライブを用いたものが広く普及している。また、ハードディスクドライブの大量な記憶容量を利用して、地図データだけでなく、車載用ナビゲーション装置が作動するためのアプリケーションソフトウェアや、車載用ナビゲーション装置に一体化されたオーディオ機能で利用するための音楽データや映像データ等をハードディスクドライブに記憶させるものがある。
【0003】
ハードディスクドライブは、磁性体を塗布した記憶媒体であるディスクに磁気ヘッドを用いて情報を記録又は読み出す記憶装置である。ハードディスクドライブの作動時においては、高速で回転するディスクと共に回転する空気の圧力によってディスク上方に位置する磁気ヘッドがディスクから極わずかだけ浮き上がる構造となっている。よって、周辺の気圧が著しく低下している環境下でハードディスクドライブが作動すると、磁気ヘッドを浮上させる空気圧の低下によりディスクと磁気ヘッドとの間隔を適正な状態に維持できなくなる。その結果、ディスクと磁気ヘッドが衝突することでディスクを損傷してしまうおそれがある。そして、気圧は高度が上昇するにつれて低下するため、ハードディスクドライブには高度による使用限界がある。一般的には、ハードディスクドライブの高度に対する動作保証は、高度3000m(約0.7気圧)〜5000m(約0.5気圧)程度までとなっている。
【0004】
したがって、ハードディスクドライブを搭載した車載装置においては、ハードディスクドライブの作動が保証されている高度を超えるような高高地(例えば、3000m級、あるいは4000〜5000m級の道路)での使用が想定される場合、ハードディスクドライブの破損を防止するための対策が必要となる。
【0005】
そこで、車両が所定の高度(例えば3000m)以上に到達したときに、ハードディスクドライブに記憶されている地図データの一部を外部メモリに記憶した後、ハードディスクドライブを停止し、3000m以上の高高地を走行中には外部メモリに記憶されている地図データに基づいて経路案内を行う技術が案出されている(例えば、特許文献1参照)。このような技術により、高高地においてハードディスクドライブを停止させることでハードディスクドライブの破損を防止しながらも、経路案内を継続可能にすることを実現している。
【特許文献1】特開2004−317385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のように、高高地内を走行中に必要となる範囲の地図データを外部メモリに記憶するには、それ相応の大量の記憶容量を必要とする。そのため、そのような大量の記憶容量を有する記憶媒体を備えることは、製品コストの高騰につながる。よって、高高地で地図データを外部メモリに退避してハードディスクドライブの停止中にも経路案内を継続するという機能は、製品コスト等の事情を考慮した結果、製品によっては実装されないことも考えられる。
【0007】
このような製品では、高高地でハードディスクドライブの作動を停止することで地図データを読み出せなくなり、地図を表示できなくなる。その結果、高高地で地図が表示されなくなることに対してユーザが不安や不満を感じ、製品に対するユーザの信頼を損ねてしまうおそれがある。そこで、高高地で地図データを外部メモリに退避して経路案内を継続する方法以外に、高高地でハードディスクドライブが作動しないことに起因する機能制限を補うための情報提供を行うことで、ユーザの不安や不満を緩和することが肝要である。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされており、高高地を走行中、あるいは高高地へ進入する前において、高高地でハードディスクドライブが作動しないことに起因する機能制限を補うための情報提供をユーザに対して行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置は、次のような特徴を有する。
地図データを記憶する記憶装置としてハードディスクドライブを備え、このハードディスクドライブから読み出した地図データに基づいて目的地までの経路を設定して、これに基づく経路案内を行い、さらに、車両の現在位置を検出する位置検出手段を備え、この位置検出手段により検出された現在位置が所定の高高度以上の地域を含む高高地エリアであると判定した場合、ハードディスクドライブの作動を禁止する機能を有する車載用ナビゲーション装置であって、記憶手段と、報知手段と、高高地判定手段と、報知制御手段とを備える。
【0010】
記憶手段は、高高地判定エリアデータを記憶する。この高高地判定エリアデータは、位置検出手段により検出される位置座標に対応する座標平面に対して、高高地エリアである範囲と高高地エリアではない範囲とを定義するものである。報知手段は、ユーザに対して情報を報知する。高高地判定手段は、位置検出手段により検出された位置座標を、記憶手段に記憶されている高高地判定エリアデータに照らし合わせることで現在位置が高高地エリアであるか否かを判定する。報知制御手段は、高高地判定手段により現在位置が高高地エリア内であると判定されている間、高高地判定エリアデータに基づき、現在位置から当該高高地エリアの外へ出るまでの道程及び方向を、報知手段を介して報知する。
【0011】
なお、ここでいう所定の高高度とは、例えばハードディスクドライブの作動が保証されている高度の上限値、あるいは、ハードディスクドライブの作動が保証される気圧の下限値に到達する高度とすることが考えられる。また、報知手段は、画像の表示によりユーザに対して情報を提示するものであってもよいし、音声の出力によってユーザに対して情報を報知するものであってもよい。
【0012】
このように構成された車載用ナビゲーション装置によれば、高高地エリア内でハードディスクドライブが停止して地図が表示できない状況下において、当該高高地エリアを脱して地図表示が再開されるまでの目安となる情報をユーザに対して提供できる。これにより、高高地エリア内でハードディスクドライブが作動しないことに起因する機能制限を補うことができ、高高地エリア内で地図が表示されないことに対するユーザの不安や不満を緩和できる。
【0013】
なお、現在位置から高高地エリアの外へ出るまでの道程及び方向を報知する場合、例えば、請求項2に記載のように、現在位置から当該高高地エリアの外へ出るまでの最短距離及びその方向を報知することが考えられる。あるいは、請求項3に記載のように、目的地が予め設定されているならば、現在位置からこの目的地へ向けた方向で当該高高地エリアの外へ出るまでの距離及びその方向を報知するようにしてもよい。さらに、請求項4に記載のように、目的地までの経路が設定されているならば、現在位置から当該高高地エリア内における当該経路上の任意の地点へ向けた方向で、当該高高地エリアの外へ出るまでの距離及びその方向を報知するようにしてもよい。この場合、高高地内における当該経路上の任意の地点を、例えば当該高高地エリアの境界と進行方向前方の経路との交点、すなわち、経路上における当該高高地エリアからの出口とすることが考えられる。
【0014】
つぎに、請求項5に記載の車載用ナビゲーション装置は、高高地エリア内において、当該高高地エリアから脱するまでの道程及び方向を報知することに加え、現在位置から目的地までの道程及び方向を報知することを特徴とする。
【0015】
このようにすることで、高高地エリア内でハードディスクドライブが停止して地図が表示できない状況下において、自車両が進行すべき方向や目的地までの道程の目安となる情報をユーザに対して提供できる。これにより、高高地エリア内でハードディスクドライブが作動しないことに起因する機能制限を更に補うことができ、高高地エリア内で地図が表示されないことに対するユーザの不安や不満をより一層緩和できる。
【0016】
なお、現在位置から目的地までの道程及び方向を報知する場合、例えば、請求項6に記載のように、現在位置から目的地までの最短距離及びその方向を報知することが考えられる。あるいは、請求項7に記載のように、目的地までの経路が設定されているならば、現在位置から当該経路に沿ってこの目的地へ至る距離及びその方向を報知するようにしてもよい。さらに、請求項8に記載のように、目的地までの経路に沿って当該経路上のある地点から目的地へ至るまでの道程が算出されている場合、当該地点から現在位置に至るまでの自車両の走行距離をこの道程から差し引いた値を、この目的地までの道程として報知するようにしてもよい。
【0017】
つぎに、請求項9に記載の車載用ナビゲーション装置は、高高地判定手段により現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、高高地判定エリアデータに基づき、現在位置から直近の高高地エリアまでの道程及び方向を、報知手段を介して報知することを特徴とする。
【0018】
このように構成された車載用ナビゲーション装置によれば、車両が高高地エリアに進入する前の段階から、現在位置から高高地エリアまでの道程及び方向を事前情報としてユーザに提供することができる。よって、高高地エリア内に進入することによる機能制限に対する事前の心構えをユーザに促すことができ、ユーザの不安や不満を緩和できる。
【0019】
なお、現在位置から直近の高高地エリアまでの道程及び方向を報知する場合、例えば、請求項10に記載のように、現在位置から直近の高高地エリアまでの最短距離及びその方向を報知することが考えられる。あるいは、請求項11に記載のように、目的地が設定されている場合、現在位置からこの目的地へ向けた方向において直近となる高高地エリアまでの距離及びその方向を報知するようにしてもよい。さらに、請求項12に記載のように、目的地までの経路が設定されている場合、現在位置から進行方向前方の当該経路上に存在する直近の高高地エリアまでの、当該経路に沿った道程及びその方向を報知するようにしてもよい。
【0020】
つぎに、請求項13に記載の車載用ナビゲーション装置は、現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、高高地エリアまでの道程及び方向を報知することに加え、さらに、当該高高地エリア内の道程を報知することを特徴とする。
【0021】
このように構成された車載用ナビゲーション装置によれば、車両が高高地エリアに進入する前の段階から、当該高高地エリアへ進入することで地図表示ができなくなると予想される期間を事前情報としてユーザに提供することができる。よって、高高地エリア内に進入することによる機能制限がどの程度の期間に及ぶのかをユーザが事前に知ることができ、ユーザの不安や不満を更に緩和できる。
【0022】
なお、高高地エリア内の道程を報知する場合、例えば請求項14に記載のように、現在位置から当該高高地エリアへの距離が最短となる方向で当該高高地エリア内を通る距離を、当該高高地エリア内の道程として報知することが考えられる。あるいは、請求項15に記載のように、目的地が設定されている場合、現在位置からこの目的地へ向けた方向において直近となる高高地エリア内を現在位置から目的地へ向けた方向で通る距離を、当該高高地エリア内の道程として報知するようにしてもよい。さらに、請求項16に記載のように、目的地までの経路が設定されている場合、現在位置から進行方向前方の当該経路上に存在する直近の高高地エリア内を当該経路に沿って通る道程を、当該高高地エリア内の道程として報知するようにしてもよい。
【0023】
以上で説明したような車載用ナビゲーション装置における報知制御手段をコンピュータシステムで実現するには、請求項17に記載のようにコンピュータシステム上で稼動するプログラムとして備えればよい。このようなプログラムは、例えば磁気/光/光磁気ディスク、ハードディスク、ROM、RAM等のコンピュータにて読取可能な記憶媒体に記録し、必要に応じてコンピュータにロードすることにより、上記報知制御手段としての機能を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
[1.車載用ナビゲーション装置1の構成の説明]
図1は、実施形態の車載用ナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、車載用ナビゲーション装置1は、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群22と、地図データやプログラム等を記憶する大容量記憶装置であるハードディスクドライブ(HDD)23と、各種情報を記憶する外部メモリ24と、地図表示画面等の各種表示を行うための表示装置25と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力装置26と、制御部29とを備えている。
【0026】
位置検出器21は、GPS用の人工衛星からの送信電波をGPSアンテナを介して受信し、車両の位置座標を検出するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の角速度に応じた検出信号を出力するジャイロスコープ21bと、車両の速度に応じた検出信号を出力する車速センサ21cとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21cは、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら使用するように構成されている。
【0027】
操作スイッチ群22は、表示装置25と一体に構成され表示面上に設置されるタッチパネル及び表示装置25の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等が用いられる。
ハードディスクドライブ23は、情報を記憶するハードディスクと、ハードディスクに対して情報を読み書きするための磁気ヘッド、駆動部、制御部等からなるコントローラとが一体となった記憶装置である。ハードディスクドライブ23は、制御部29からの制御に基づいてハードディスクからデータを読み出し、これを制御部29へ入力する。ハードディスクドライブ23が記憶しているデータは、マップマッチング、経路探索、経路誘導等に用いる道路データ、地図表示に必要な各種データからなる描画データ等からなる地図データや、経路案内用データ、車載用ナビゲーション装置1の作動のためのプログラム等を含む各種データである。なお、このハードディスクドライブ23は、高度5000m以下、又は0.5気圧以上での使用環境において正常な作動が保証されているものと想定する。
【0028】
外部メモリ24は、高高地判定エリアデータ(詳細な内容については後述する)や、後述の経路案内処理において設定された目的地や、この目的地までの経路等の各種データを記憶するためのものである。この外部メモリ24には、電気的又は磁気的に記憶内容を書き換え可能で、かつ、電源を切っても記憶内容を保持できる記憶装置(例えば、不揮発性半導体メモリ等)を用いる。
【0029】
表示装置25は、液晶ディスプレイ等の表示面を有するカラー表示装置である。表示装置25は、制御部29からの映像信号の入力に応じて各種画像を表示面に表示可能である。例えば、車両が走行中においては、ナビゲーション画面として位置検出器21にて検出した車両の現在位置とハードディスクドライブ23等から入力された地図データとから特定した現在位置を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種ランドマークのシンボル等の付加データとが重ねて表示される。
【0030】
音声出力装置26は、各種情報を音声にてユーザに報知できるように構成されている。これによって、表示装置25による表示と音声出力装置26からの音声出力との両方でユーザに対してルート案内等の各種案内をすることができる。
【0031】
制御部29は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、上述した各部構成を制御する。この制御部29は、ROMやハードディスクドライブ23、外部メモリ24等から読み込んだプログラムや各種データに従って種々の処理を実行する。
【0032】
例えば、ナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理等が挙げられる。地図表示処理は、位置検出器21からの各検出信号に基づいて車両の現在位置を算出し、ハードディスクドライブ23から読み込んだ現在位置付近の地図等を表示装置25に表示する処理である。また、経路案内処理は、ハードディスクドライブ23に格納された地点データと、操作スイッチ群22等の操作に従って設定された目的地とに基づいて、現在位置から目的地までの最適な経路である目的地経路を算出し、現在位置と目的地経路との関係を考慮して目的までの走行案内を行う処理である。このように自動的に最適な経路を設定する手法として、ダイクストラ法によるコスト計算等の手法が知られている。また、設定された目的地や目的地までの経路を示すデータを外部メモリ24に格納するようにしてもよい。
【0033】
また、車載用ナビゲーション装置1は、ハードディスクドライブ23の正常な作動が保証されている高度の上限(5000m)を超える地域での使用が想定されている。そのため、制御部29は、車両の走行中に高度5000m以上の地域を含む高高地エリアへ進入した場合、ハードディスクドライブ23の作動を禁止し、高度5000m以上の地域でハードディスクドライブ23を作動させることによる破損を防止する。
【0034】
このとき、高高地エリア内においてハードディスクドライブ23の作動を禁止するため、上述の地図表示処理においてハードディスクドライブ23から地図表示に必要なデータを読み出すことができなくなる。その結果、高高地エリア内を走行中には表示装置25に地図を表示できなくなる。そこで、制御部29は、本発明の特徴的な処理として、次のような「高高地情報報知処理」を実行する。
【0035】
制御部29は、現在位置が高高地エリア内であると判定している間、地図表示の代わりに当該高高地エリアから脱するまでの距離や、目的地までの距離・方向等を示す案内情報を表示や音声によりユーザへ報知する。一方、現在位置が高高地エリアではないと判定している間に高高地エリアへ所定の距離まで接近した場合、現在地付近に存在する高高地エリアまでの距離・方向や、当該高高地エリア内の道程すなわち、地図が表示されなくなる区間の長さ等を示す事前案内情報を、当該高高地に進入する事前に表示や音声にてユーザに対して報知する。なお、この「高高地情報報知処理」のより詳細な内容については、後述する。
【0036】
以上、車載用ナビゲーション装置1の概略構成について説明したが、本実施形態における車載用ナビゲーション装置1の構成と特許請求の範囲に記載した構成との対応は次のとおりである。本実施形態における車載用ナビゲーション装置1の位置検出器21が、特許請求の範囲における位置検出手段に相当する。また、外部メモリ24が記憶手段に相当する。また、表示装置25及び音声出力装置26が、報知手段に相当する。また、制御部29が高高地判定手段及び報知制御手段に相当する。
【0037】
[2.「高高地判定エリアデータ制御処理」の説明]
以下、制御部29が実行する上述の「高高地情報報知処理」の詳細な内容について、図2のフローチャート及び図3,4,5の説明図に基づいて説明する。
【0038】
図2は、制御部29が実行する「高高地情報報知処理」の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両の走行中において上述の地図表示処理や経路案内処理等と並行して実行される。
【0039】
制御部29は、まず、位置検出器21からの入力信号に基づいて車両の現在位置を検出する(S100)。そして、この検出した現在位置を外部メモリ24に記憶されている高高地判定エリアデータに照合することで、現在位置が高高地エリア内であるか否かを判定する(S110)。
【0040】
ここで、高高地判定エリアデータについて、図3に基づき説明する。図3は、高高地判定エリアデータの概要を模式的に示す説明図である。高高地判定エリアデータは、地図座標平面を所定の緯度・経度ごとに区切ったメッシュ状の分割エリアに対して、それぞれ高高地エリアであるか否かを識別するための符号を割り当てたデータである。
【0041】
例えば、図3(a)に示すように、緯度・経度の座標(X1,Y1),(X2,Y1),(X1,Y2),(X2,Y2)を頂点とする地図座標領域の中央付近において、高度5000m以上の高高度地域が斑状に分布すると仮定する。この地図座標領域に対応する高高地判定エリアデータを作成する場合、この地図座標領域をさらに細かく分割した分割エリアを定義する。そして、図3(b)に示すように、高度5000m以上の高高度地域が一部でも含まれる分割エリアに対しては、当該分割エリアが高高地エリアである旨を示す「1」の符号を割り当てる。一方、高度5000m以上の高高度地域が含まれない分割エリアに対しては、当該分割エリアが高高地エリア以外である旨を示す「0」の符号を割り当てる。このようにして定義される高高地判定エリアデータは、ハードディスクドライブ23に格納されている地図データで示される地図座標領域の一部又は全部について、この地図座標領域を分割した個々の分割エリアごとに高高地エリアであるか否かを定義するテーブルデータとして外部メモリ24に予め格納されている。
【0042】
図2の説明に戻る。上述のS110においては、まず、高高地判定エリアデータのテーブルから、S100で検出した現在位置の座標に該当する分割エリアの部分を参照し、この分割エリアに割り当てられた符号(「1」,「0」)を読み取る。そして、高高地判定エリアデータを参照した結果に基づき、現在位置が高高地エリアに該当するか否かを判定する。ここで、現在位置が高高地エリアに該当しないと判定した場合(S110:NO)、すなわち、現在位置に該当する分割エリアの高高地判定エリアデータが「0」を示す場合、高高地判定エリアデータに基づいて、現在位置周辺に存在する高高地エリアまでの距離を算出し(S120)、この算出した距離が所定の値(例えば、数km)以下であるか否かを判定する(S130)。
【0043】
ここで、現在位置から高高地エリアまでの距離が所定の値より大きいと判定した場合(S130:NO)、S100の処理へ戻る。一方、現在位置から高高地エリアまでの距離が所定の値以下であると判定した場合(S130:YES)、高高地判定エリアデータにおける現在位置周辺の高高地エリアの分布状況に基づいて、高高地エリア進入までの事前案内情報を表示装置25や音声出力装置26を介して報知する(S140)。
【0044】
以下、S140で報知する事前案内情報の具体的な内容について、図4に基づき説明する。図4は、高高地エリア進入までの事前案内情報の具体例を模式的に示す説明図である。なお、事前案内情報は、目的地や目的地までの経路が予め設定されているか否かによって、その報知内容が異なる。
【0045】
(1)目的地及び目的地までの経路の何れも設定されていない場合、図4(a)に示すように、現在位置から直近の高高地エリアまでの最短距離及びその方向を算出し、これを表示や音声出力によって報知する。さらに、この方向で当該高高地エリア内を通る距離を算出し、これを地図表示が不能となる区間として表示や音声出力によって報知する。また、高高地エリアへ進入することでハードディスクドライブ23が停止し、地図が表示されなくなることを事前にユーザに説明する旨のメッセージも併せて報知する。
【0046】
(2)目的地のみが設定されている(経路の設定なし)場合、図4(b)に示すように、現在位置からこの目的地へ向けた方向において直近となる高高地エリアまでの距離及びその方向を算出し、これを表示や音声出力によって報知する。さらに、当該高高地エリア内を現在位置から目的地へ向けた方向で通る距離を算出し、これを地図表示が不能となる区間として表示や音声出力によって報知する。また、高高地エリアへ進入することでハードディスクドライブ23が停止し、地図が表示されなくなることを事前にユーザに説明する旨のメッセージも併せて報知する。
【0047】
(3)目的地までの経路が設定されている場合、図4(c)に示すように、現在位置から進行方向前方の経路上に存在する直近の高高地エリアまでの、当該経路に沿った道程及びその方向を算出し、これを表示や音声出力によって報知する。さらに、当該高高地エリア内を経路に沿って通る道程を算出し、これを地図表示が不能となる区間として表示や音声出力によって報知する。また、高高地エリアへ進入することでハードディスクドライブ23が停止し、地図が表示されなくなることを事前にユーザに説明する旨のメッセージも併せて報知する。
【0048】
図2のフローチャートの説明に戻る。一方、S110で現在位置が高高地エリアに該当すると判定した場合(S110:YES)、すなわち、現在位置に該当する分割エリアの高高地判定エリアデータが「1」を示す場合、ハードディスクドライブ23の作動を禁止する(S150)。このとき、ハードディスクドライブ23から地図データが読み出せなくなるため、表示装置25における地図表示も停止する。そして、高高地判定エリアデータにおける現在位置の高高地エリアの分布状況に基づいて、高高地エリア内進行中の案内情報を表示装置25や音声出力装置26を介して報知する(S160)。
【0049】
以下、S160で報知する高高地エリア内進行中の案内情報の具体的な内容について、図5に基づき説明する。図5は、高高地エリア内進行中の案内情報の具体例を模式的に示す説明図である。なお、高高地エリア内進行中の案内情報は、目的地や目的地までの経路が外部メモリ24に記憶されているか否かによって、その報知内容が異なる。
【0050】
(1)目的地及び目的地までの経路の何れも設定されていない場合、図5(a)に示すように、現在位置から高高地エリアの外へ出るまで最短となる距離及びその方向を算出し、これを地図表示が再開されるまでの距離及び方向として表示や音声出力によって報知する。
【0051】
(2)目的地が設定されており、これが外部メモリ24に記憶されている場合、図5(b)に示すように、現在位置からこの目的地へ向けた方向で当該高高地エリアの外へ出るまでの距離及びその方向を算出し、これを地図表示が再開されるまでの距離及び方向として表示や音声出力によって報知する。あるいは、目的地だけでなく目的地までの経路が設定されており、これが外部メモリ24に記憶されている場合、現在位置から高高地エリア内における経路上の任意の地点へ向けた方向で、高高地エリアの外へ出るまでの距離及びその方向を算出し、これを地図表示が再開されるまでの距離及び方向として表示や音声出力によって報知する。この場合、高高地内における経路上の任意の地点を、例えば経路上における高高地エリアの出口とすることが考えられる。
【0052】
さらに、目的地が外部メモリ24に記憶されている場合、現在位置から目的地までの最短距離及びその方向を算出し、これも併せて表示や音声出力によって報知する。あるいは、目的地までの経路が外部メモリ24に記憶されている場合、現在位置からこの経路に沿ってこの目的地へ至る距離及びその方向を算出し、これを表示や音声出力によって報知する。また、経路上のある地点(例えば、経路上における高高地エリアの入口に該当する地点)から目的地へ至るまでの道程を予め算出しておき、この地点から現在位置に至るまでの走行距離を当該地点から目的地へ至るまでの道程から差し引いた値を算出し、これを現在位置から目的地までの道程として報知するようにしてもよい。なお、自車両の走行距離は、GPS受信機21aによる測位結果から生成される走行軌跡や、車速センサ21cの検出値の時間積分によって算出できる。
【0053】
図2のフローチャートの説明に戻る。高高地エリア内進行中の案内情報の報知(S160)に続き、S170では、高高地判定エリアデータに基づいて現在位置が高高地エリア外であるか否かを判定する。ここで、現在位置が高高地エリア内であると判定した場合(S170:NO)、S160の処理へ戻って高高地エリア内進行中の案内情報の報知を継続する。一方、現在位置が高高地エリア外であると判定した場合(S170:YES)、禁止していたハードディスクドライブ23の作動を解禁し(S180)、S100の処理へ戻る。
【0054】
[3.効果]
実施形態の車載用ナビゲーション装置1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)高高地エリア内でハードディスクドライブ23が停止して地図が表示できない状況下において、当該高高地エリアを脱して地図表示が再開されるまでの目安となる情報をユーザに対して提供できる。また、高高地エリア内でハードディスクドライブ23が停止して地図が表示できない状況下において、目的地の方向や目的地までの道程の目安となる情報をユーザに対して提供できる。これにより、高高地エリア内でハードディスクドライブ23が作動しないことに起因する機能制限を補うことができ、高高地エリア内で地図が表示されないことに対するユーザの不安や不満を緩和できる。
【0055】
(2)車両が高高地エリアに進入する前の段階から、現在位置から高高地エリアまでの道程及び方向を事前案内情報としてユーザに提供することができる。これにより、高高地エリア内に進入することによる機能制限に対する事前の心構えをユーザに促すことができ、ユーザの不安や不満を緩和できる。また、車両が高高地エリアに進入する前の段階から、当該高高地エリアへ進入することで地図表示ができなくなると予想される期間を事前案内情報としてユーザに提供することができる。これにより、高高地エリア内に進入することによる機能制限がどの程度の期間に及ぶのかをユーザが事前に知ることができ、ユーザの不安や不満を更に緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態の車載用ナビゲーション装置1の概略構成を示すフローチャートである。
【図2】「高高地情報報知処理」の手順を示すフローチャートである。
【図3】高高地判定エリアデータの概要を模式的に示す説明図である。
【図4】高高地エリア進入までの事前案内情報の具体例を模式的に示す説明図である。
【図5】高高地エリア内進行中の案内情報の具体例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1…車載用ナビゲーション装置、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…車速センサ、22…操作スイッチ群、23…ハードディスクドライブ、24…外部メモリ、25…表示装置、26…音声出力装置、29…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記憶する記憶装置としてハードディスクドライブを備え、このハードディスクドライブから読み出した地図データに基づいて目的地までの経路を設定して、これに基づく経路案内を行い、さらに、車両の現在位置を検出する位置検出手段を備え、この位置検出手段により検出された現在位置が所定の高高度以上の地域を含む高高地エリアであると判定した場合、前記ハードディスクドライブの作動を禁止する機能を有する車載用ナビゲーション装置であって、
前記位置検出手段により検出される位置座標に対応する座標平面に対して、前記高高地エリアである範囲と前記高高地エリアではない範囲とを定義する高高地判定エリアデータを記憶する記憶手段と、
ユーザに対して情報を報知する報知手段と、
前記位置検出手段により検出された位置座標を、前記記憶手段に記憶されている高高地判定エリアデータに照らし合わせることで現在位置が前記高高地エリアであるか否かを判定する高高地判定手段と、
前記高高地判定手段により現在位置が高高地エリア内であると判定されている間、前記高高地判定エリアデータに基づき、現在位置から当該高高地エリアの外へ出るまでの道程及び方向を、前記報知手段を介して報知する報知制御手段とを備えること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、現在位置から当該高高地エリアの外へ出るまでの最短距離及びその方向を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、目的地が設定されている場合、現在位置からこの目的地へ向けた方向で当該高高地エリアの外へ出るまでの距離及びその方向を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、目的地までの経路が設定されている場合、現在位置から当該高高地エリア内における当該経路上の任意の地点へ向けた方向で、当該高高地エリアの外へ出るまでの距離及びその方向を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、目的地が設定されている場合、さらに、現在位置からこの目的地までの道程及び方向を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、現在位置から目的地までの最短距離及びその方向を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、目的地までの経路が設定されている場合、現在位置から当該経路に沿ってこの目的地へ至る距離及びその方向を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、目的地までの経路に沿って当該経路上のある地点から目的地へ至るまでの道程が算出されている場合、当該地点から現在位置に至るまでの自車両の走行距離をこの道程から差し引いた値を、この目的地までの道程として報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、前記高高地判定手段により現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、前記高高地判定エリアデータに基づき、現在位置から直近の高高地エリアまでの道程及び方向を、前記報知手段を介して報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、現在位置から直近の高高地エリアまでの最短距離及びその方向を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、目的地が設定されている場合、現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、現在位置からこの目的地へ向けた方向において直近となる高高地エリアまでの距離及びその方向を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項12】
請求項9ないし請求項11の何れか1項に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、目的地までの経路が設定されている場合、現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、現在位置から進行方向前方の当該経路上に存在する直近の高高地エリアまでの、当該経路に沿った道程及びその方向を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項13】
請求項9ないし請求項12の何れか1項に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、さらに、当該高高地エリア内の道程を報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項14】
請求項13に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、現在位置から当該高高地エリアへの距離が最短となる方向で当該高高地エリア内を通る距離を、当該高高地エリア内の道程として報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、目的地が設定されている場合、現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、現在位置からこの目的地へ向けた方向において直近となる高高地エリア内を現在位置から目的地へ向けた方向で通る距離を、当該高高地エリア内の道程として報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項16】
請求項13ないし請求項15の何れか1項に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記報知制御手段は、目的地までの経路が設定されている場合、現在位置が高高地エリアではないと判定されている間、現在位置から進行方向前方の当該経路上に存在する直近の高高地エリア内を当該経路に沿って通る道程を、当該高高地エリア内の道程として報知すること
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項17】
請求項1ないし請求項16の何れか1項に記載の車載用ナビゲーション装置に用いられるコンピュータを制御するためのプログラムであって、当該コンピュータを前記報知制御手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−80040(P2009−80040A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250007(P2007−250007)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】