説明

車載用ナビゲーション装置及び経路探索方法

【課題】ランプ道の構造及び渋滞状況を考慮した最適な誘導経路を探索することができる「車載用ナビゲーション装置及び誘導経路探索方法」を提供すること。
【解決手段】道路をノードとリンクに抽象化したネットワークを用いて目的地までの経路探索を行う車載用ナビゲーション装置は、高速道路に接続するランプ道の情報を含む地図データを格納した地図データ記憶手段と、現在地から目的地に至る経路上に設定されたリンクのリンクコストを順次加算して通行コストを算出し通行コストが最小の経路を誘導経路とする制御手段と、を備える。制御手段は、現在地から目的地に向かうリンクがランプ道に対応していると判定したとき、ランプ道の評価要素となる構造及び使用規制に対応したコストを加算して当該ランプ道のリンクコストを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路に接続するランプ道を含む目的地までの最適な誘導経路を探索する機能を備えた車載用ナビゲーション装置及び経路探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の典型的な車載用ナビゲーション装置は、ナビゲーションに係る一切の処理を制御するCPU等の制御装置、地図データを予め記憶させたDVD(Digital Versatile Disk)−ROMやICメモリカード等の記憶装置、表示装置、GPS(Global Positioning System)受信機、ジャイロや車速センサ等の車両の現在位置及び現在方位を検出する検出装置等を有している。そして、制御装置により、車両の現在位置を含む地図データを記憶装置から読み出し、該地図データに基づいて車両位置の周囲の地図画像を表示装置の画面に表示すると共に、自車の現在位置を指示する車両位置マークを地図画像に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロール表示したり、地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させたりして、車両が現在どこを走行しているのかを一目で判るようにしている。
【0003】
車載用ナビゲーション装置には、通常、ユーザが目的地に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるように案内する機能(経路誘導機能)が搭載されている。この経路誘導機能によれば、制御装置により、地図データを用いて出発地(典型的には自車の現在位置)から目的地までを結ぶ最適な経路(典型的にはコストが最も低い経路)を、横型探索法やダイクストラ法等のシミュレーション計算を行って自動探索し、その探索した経路を誘導経路として記憶しておき、走行中、地図画像上にその誘導経路を他の道路とは識別可能に(例えば、色を変えたり、線幅を太くして)表示したり、また、自車が誘導経路上で進路を変更すべき交差点まで所定距離に近づいたときに、地図画像上にその交差点の案内図(交差点拡大図、該交差点での進行方向を示す矢印、該交差点までの距離、交差点名など)を表示したりすることで、いずれの道路を走行すればよいか、また、交差点でどの方向に進んだらよいかをユーザが把握できるようになっている。
【0004】
なお、コストとは、誘導経路としての適性の程度を数値化したものであり、ノード(経緯度で表現された点)に係るコストと、リンク(2つのノードを連結した部分、すなわち道路の一部分)に係るコストの2種類がある。リンクに係るコストは、距離(道路長)を基に、一般道か高速道路かなどを示す道路種別(道路クラス)、車線数、道路幅員などに応じてそれぞれ一定の規則に基づき定められた係数(所定の重み付けがなされた係数)を乗じた値(相対値)や車両の走行予測時間などである。一方、ノードに係るコストは、交差点での通過方向(右折角度、左折角度等)、交差点での信号機の有無などに応じてそれぞれ一定の規則に基づき定められた係数(所定の重み付けがなされた係数)を乗じた値(相対値)である。
【0005】
従来の車載用ナビゲーション装置において、目的地までの経路の計算は、走行する実際の道路をノードとリンクに抽象化したネットワークを用いて行われている。目的地までの「最適な経路」とは、出発地から目的地に至るまでの各リンク毎のリンクコストと各ノード毎の交差点通過方向コスト(右左折等角度コスト)とを合計した値(つまり、目的地までのトータルの通行コスト)が最小になるようなリンク列である。
【0006】
1つ1つのリンクを通行した場合の通行コストは、例えば、以下の式(1)により算出される。
【0007】
通行コスト=リンクコスト+交差点通過方向コスト
=道路クラスコスト×道路長+右左折等角度コスト …(1)
ここに、道路クラスコストは、道路の種別に応じて優先度の高い道路ほど小さくなるように定められた値であり、右左折等角度コストは、当該交差点を曲がる角度(通過方向)に応じて一定の規則に基づき定められた値(相対値)である。従来の技術では、出発地から目的地までの各リンクについて、上記の式(1)に基づいて通行コストを加算することでトータルの通行コストを求めている。
【0008】
このような経路探索に関連する技術として、特許文献1には、時刻や曜日などに対応した道路幅員係数や道路種別係数を用いて、リンクの評価値を算出し、経路設定時点の時刻・曜日・日時に応じた適切な経路を設定する技術が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、経路設定において、進行方向のリンク及び進行方向のリンクと交差するリンクに対して格差を設けるとともに、交差するノードにおける信号機の有無を考慮した経路評価値を算出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−148065号公報
【特許文献2】特許第3632593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の車載用ナビゲーション装置では、基本的に、出発地から目的地までのトータルの通行コストが最小になる経路を誘導経路(推奨経路)として案内している。
【0012】
しかしながら、出発地から目的地までに高速道路が含まれている場合に、一般道路から高速道路への経路であるランプ(Ramp)道の構造やランプ道の交通状況を考慮した誘導経路の探索は行われていない。
【0013】
特に米国では、車線数が1車線のランプ道や2車線以上のランプ道が存在したり、信号機が設置されているランプ道や信号機が設置されていないランプ道も存在する。このように、種々の構造のランプ道が存在しているため、ランプ道の構造上の相違を考慮せずに誘導経路として選択されると、その誘導経路が最適な経路とならないことが起こり得る。
【0014】
例えば、車線数が1車線のランプ道と2車線のランプ道が同じ高速道路に接続されている場合に自車位置に近い1車線のランプ道が誘導経路として選択されると、選択されなかった2車線のランプ道のほうが車両の流れがよくスムーズに高速道路に進入することができ、1車線のランプ道を使用したときの方が目的地までの到達時間がかかってしまうことになりかねない。
【0015】
また、走行しようとしたランプ道の車両数から渋滞していると判断し、車両数が少ないと判断した別のランプ道を走行した場合であっても、そのランプ道から高速道路への進入可能台数が1台ごとであり、結果的に目的地への到達時間がかかってしまうこともある。
【0016】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みなされたものであり、ランプ道の構造及び渋滞状況を考慮した最適な誘導経路を探索することができる車載用ナビゲーション装置及び誘導経路探索方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した従来技術の課題を解決するため、本発明の基本形態によれば、道路をノードとリンクに抽象化したネットワークを用いて目的地までの経路探索を行う車載用ナビゲーション装置であって、高速道路に接続するランプ道の情報を含む地図データを格納した地図データ記憶手段と、現在地から目的地に至る経路上に設定されたリンクのリンクコストを順次加算して通行コストを算出し当該通行コストが最小の経路を誘導経路とする制御手段と、を備え、前記制御手段は、現在地から目的地に向かうリンクがランプ道に対応していると判定したとき、当該ランプ道の評価要素となる構造及び使用規制に対応したコストを加算して当該ランプ道のリンクコストを算出することを特徴とする車載用ナビゲーション装置が提供される。
【0018】
この形態に係る車載用ナビゲーション装置において、前記ランプ道の構造に対応したコストは、ランプ道の車線数及びランプ道の信号機の設置位置に応じて定義され、前記ランプ道の使用規制に対応したコストは、ランプ道から高速道路への進入可能台数及びランプ道の時間帯交通規制の有無に応じて定義されるようにしてもよく、前記制御手段は、自車両が前記ランプ道に到達する時刻を推定し、当該時刻における前記ランプ道の時間帯交通規制に対応したコストを前記ランプ道のリンクコストに加算するようにしてもよく、さらに、交通渋滞状況を取得する手段を備え、前記制御手段は、ランプ道の交通渋滞状況を取得して、渋滞状況に対応したコストを前記ランプ道のリンクコストに加算するようにしてもよく、前記制御手段は、前記渋滞状況を解消する要因となる評価要素を決定し、前記ランプ道の当該評価要素に対応するコストと前記渋滞状況に対応したコストを基に、複数のランプ道のうちの最小のリンクコストのランプ道を含む経路を誘導経路とするようにしてもよい。
【0019】
また、本発明の他の形態によれば、高速道路に接続するランプ道の情報及び道路をノードとリンクに抽象化したネットワークで表される地図データを格納した地図データ記憶手段を備えた車載用ナビゲーション装置において行われる誘導経路探索方法であって、現在地から目的地に向かうリンクがランプ道に対応しているか否かを検出するステップと、リンクがランプ道に対応しているとき、ランプ道の評価要素となる構造及び使用規制に対応したコストを抽出するステップと、前記コストを加算して前記ランプ道のリンクコストを算出するステップと、リンクのリンクコストを順次加算して前記現在地から目的地に至る複数の経路から前記リンクコストの合計が最小の経路を誘導経路とするステップと、を有することを特徴とする誘導経路探索方法が提供される。
【0020】
この形態に係る経路探索方法において、前記ランプ道の構造に対応したコストは、ランプ道の車線数及びランプ道の信号機の設置位置に応じて定義され、前記ランプ道の使用規制に対応したコストは、ランプ道から高速道路への進入可能台数及びランプ道の時間帯交通規制の有無に応じて定義されるようにしてもよく、前記ランプ道のリンクコストを算出するステップは、自車両が前記ランプ道に到達する時刻を推定するステップと、前記時刻における前記ランプ道の時間帯交通規制に対応したコストを前記ランプ道のリンクコストに加算するステップと、を含むようにしてもよく、前記ランプ道のリンクコストを算出するステップは、交通渋滞状況を取得する手段から前記ランプ道の交通渋滞状況を取得するステップと、前記渋滞状況に対応したコストを前記ランプ道のリンクコストに加算するステップと、を含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車載用ナビゲーション装置及び経路探索方法によれば、一般道から高速道路を結ぶランプ道を含む誘導経路の探索において、ランプ道の評価要素となる構造及び使用規制に対応したコストを定義し、そのコストを適用して経路全体のリンクコストを算出するようにしている。これにより、複数のランプ道のうち最適なランプ道が選択された誘導経路を推奨することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】誘導経路の探索処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】ランプ道のリンクコストの算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】ランプ道の評価要素となる構造及び使用規制に対応したコストの一例である。
【図5】ランプ道に関する誘導経路の探索の一例を示す図(その1)である。
【図6】ランプ道に関する誘導経路の探索の一例を示す図(その2)である。
【図7】ランプ道に関する誘導経路の探索の一例を示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0024】
(車載用ナビゲーション装置の構成)
図1は本発明の実施形態に係る車載用ナビゲーション装置100の構成を示すブロック図である。
【0025】
図中、1はDVDドライブであり、1aは地図データその他の案内データが記憶されている記憶媒体である。本実施形態では、このようなデータを記憶する記憶媒体としてDVD−ROM1aを使用しているが、ハードディスク又はその他の記憶媒体を使用してもよい。ここに格納されている地図は、1/12500、1/25000、1/50000、1/100000等の各縮尺レベルに応じて適当な大きさの経度幅及び緯度幅に区切られており、この地図に含まれる道路、建築物、施設その他の各種物件は、経度及び緯度で表現された点(ノード)の座標集合として記憶されている。地図データは、(1)道路リンクデータ、交差点データ、ノードデータ等からなる道路レイヤ、(2)地図画像上に道路、建築物、公園、河川等を表示するための背景レイヤ、(3)市町村名などの行政区画名、道路名、交差点名などを指示する文字や地図記号等を表示するための文字・記号レイヤなどから構成されている。
【0026】
道路レイヤにおいて、道路リンクデータは各道路の属性情報を供給するものであり、道路を構成するリンク毎に道路の種別(国道、高速道路、都道府県道、その他の道路)、道路ネットワークの階層化レベル、リンクを構成するノードの数、道路番号(道路名称)、各ノードを接続するリンクの幅などのデータで構成される。交差点データは、交差点に結合されたリンク上のノードのうち交差点に最も近いノードのセットである。ノードデータは、道路を構成するすべてのノードのリストであり、各ノードに対する位置情報やノードが交差点か交差点でないかを識別する情報等で構成される。
【0027】
また、道路レイヤには、一般道と高速道路、又は高速道路間を結ぶランプ道に関する情報、例えば、ランプ道の車線数や、信号機の設置の有無などが格納されている。
【0028】
また、2はナビゲーション装置本体10を操作するための操作ボタン等が設けられた操作部である。本実施形態では、操作部2にリモコン送信機が含まれており、ユーザは手元のリモコン送信機でナビゲーション装置本体10を操作することもできる。
【0029】
また、3は複数のGPS衛星から送られてくるGPS信号を受信して車両の現在位置の経度、緯度、PDOP(Position DOP)値及びHDOP(Horizontal DOP)値等のGPSデータを生成して出力するGPS受信機を示す。4は自立航法センサを示す。この自立航法センサ4は、車両回転角度を検出するジャイロ等の角度センサと、一定の走行距離毎にパルスを発生する走行距離センサとにより構成されている。
【0030】
また、5は各種のサービスセンタと通信するための車載電話機等の通信機、6は電波ビーコン又は光ビーコンから送られてくるVICS(登録商標)(道路交通情報通信システム)情報を受信するVICS受信機を示す。これらのビーコンは路側に設置され、警察署、道路管理者及び統合センターに接続され、周辺の渋滞情報等を提供する。
【0031】
また、7は液晶パネル等の表示部であり、ナビゲーション装置本体10は、この表示部7に車両の現在位置の周囲の地図を表示したり、出発地から目的地までの誘導経路や車両マーク及びその他の案内情報を表示する。表示部7はその画面上にタッチパネルが設けられ、表示画面の表示内容と対になった各種のボタンが構成される。また、タッチパネルはこれら各種のボタンで示されるメニュー等を選択するための入力装置となる。8は音声によりユーザに案内情報を提供するためのスピーカーである。
【0032】
ナビゲーション装置本体10は以下のものから構成されている。11はDVDドライブ1を介してDVD−ROM1aから読み出された地図データを一時的に格納するバッファメモリを示す。
【0033】
12はマイクロコンピュータにより構成される制御部を示す。制御部12は、ナビゲーション用のプログラムを内蔵しており、このプログラムに従い、GPS受信機3から出力される信号や、自立航法センサ4から出力される信号に基づいて自車の現在位置を算出したり、表示させたい地図のデータをDVDドライブ1を介してDVD−ROM1aからバッファメモリ11に読み出したり、バッファメモリ11に読み出された地図データを用いて設定された探索条件で出発地から目的地までの誘導径路を探索するなど、種々の処理を実行する。特に、後述するように、誘導経路の探索において、ランプ道の構造や使用規制に対応するコストを用いて、適切なランプ道を探索する処理を行う。
【0034】
13はバッファメモリ11に読み出された地図データを用いて地図画像を生成する地図描画部、14は動作状況に応じた各種メニュー画面(操作画面)や車両位置マーク及びカーソル等の各種マークを生成する操作画面・マーク発生部である。
【0035】
15は制御部12で探索した誘導経路を記憶する誘導経路記憶部、16は誘導経路を描画する誘導経路描画部を示す。誘導経路記憶部15には、制御部12によって探索された誘導経路の全ノードが出発地から目的地まで記憶される。誘導経路描画部16は、地図を表示する際に、誘導経路記憶部15から誘導経路情報を読み出して、誘導経路を他の道路とは異なる色及び線幅で描画する。
【0036】
17は、制御部12に接続されたEEPROM等のメモリからなる通行コスト格納部を示す。この通行コスト格納部25には、DVD−ROM1aに格納されている地図データを構成する道路レイヤ(道路リスト、ノードテーブル、交差点構成ノードリスト、交差点ネットリスト等)のデータに対応させて、リンクコストと、当該リンクの他端ノード(交差点構成ノード)での交差点通過方向コスト(右左折等角度コスト)の各データが格納されている。
【0037】
リンクコストは、式(1)で定義したような道路クラスコストに相当し、道路種別に応じて走行速度の速い道路ほど小さくなるように定められた値(相対値)である。一方、交差点通過方向コスト(右左折等角度コスト)は、当該交差点での通過方向(右折角度、左折角度等)と、当該交差点に信号機が付属しているか否を指示する信号機識別情報等に応じて一定の規則に基づき定められた値(相対値)である。
【0038】
なお、本実施形態では、通行コスト格納用のメモリ(通行コスト格納部17)を地図データ格納用のDVD−ROM1aと別個に設けているが、DVD−ROM1aの記憶容量に十分な余裕がある場合には、通行コストの各データを地図データと共にDVD−ROM1aに格納するようにしてもよい。
【0039】
18は音声出力部を示し、制御部12からの信号に基づいて音声信号をスピーカー8に供給する。19は画像合成部を示し、地図描画部13で描画された地図画像に、操作画面・マーク発生部14で生成した各種マークや操作画面、誘導経路描画部22で描画した誘導経路などを重ね合わせて表示部7に表示させる。
【0040】
このように構成された車載用ナビゲーション装置100において、その基本的な動作として、制御部12は、GPS受信機3で受信したGPS信号と自立航法センサ4から入力した信号とに基づいて自車の現在位置を検出する。そして、DVDドライブ1を介してDVD−ROM1aから自車周囲の地図データを読み出してバッファメモリ11に格納する。地図描画部13は、バッファメモリ11に読み出された地図データに基づいて地図画像を生成し、画像合成部19を介して表示部7の画面上に自車周囲の地図画像を表示する。
【0041】
また、制御部12は、自車の移動に伴ってGPS受信機3及び自立航法センサ4から入力した各信号に基づいて自車の現在位置を検出し、その検出結果に応じて、表示部7の画面上に表示された地図画像に車両位置マークを重ね合わせて表示し、自車の移動に伴って車両位置マークを移動させたり、地図画像をスクロール表示する。
【0042】
さらに、ユーザが操作部2を操作して目的地及びその他必要な情報(目的地に至る途中の経由地の情報等)を設定すると、制御部12は、GPS受信機4及び自立航法センサ4からの各信号に基づいて検出した自車の現在位置を出発地とし、後述するように、出発地から目的地までの通行コストが最も低い経路をDVD-ROM1aの地図データを用いて探索する。そして、探索により得られた経路を誘導経路(データ)として誘導経路記憶部15に格納し、誘導経路描画部16及び画像合成部19を介して表示部7に対し、画面上の地図画像に誘導経路を重ね合わせて表示させる。このとき、誘導経路を、ユーザが識別しやすいように他の道路とは異なる表示態様(例えば、線幅を太くしたり、目立つ色で表示したりするなど)で表示させる。このように制御部12は、自車の走行に伴って適宜案内情報を出力し、自車を目的地まで誘導経路に沿って走行するように案内する。これによってユーザは、目的地まで自車が案内されるべき誘導経路を把握することができる。
【0043】
以下、本実施形態にかかる車載用ナビゲーション装置100の制御部12が行う経路探索に係る通行コストの算出処理について、その処理フローの一例を示す図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、誘導経路の探索処理の一例を示すフローチャートであり、図3は、図2のフローチャートにおけるランプ道に応じたリンクコストの算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0044】
まず、初期状態において、自車の現在地は交差点(ノード)上にあるものとする。この状態で、図2の最初のステップS11では、ユーザが操作部2(リモコン送信器)を操作して目的地を設定したことを検出する。説明の便宜上、この目的地についても交差点(ノード)上にあるものとする。
【0045】
次のステップS12では、操作部2を介して入力された目的地のデータと、GPS受信機3及び自立航法センサ4からの各信号に基づき検出した自車の現在位置を出発地として設定した出発地のデータとに基づき、出発地から目的地までが入る範囲の地図データをDVDドライブ1を介してDVD-ROM1aからバッファメモリ11に読み出す。そして、この読み出した地図データに基づいて、以下に記述するように出発地から目的地までのトータルの通行コストが最小となるような経路(最適な誘導経路)を横型探索法などにより探索する。
【0046】
次のステップS13では、1つのノード(最初は現在地のノード)から1つ先に探索枝となるリンクを伸ばす。
【0047】
次のステップS14では、リンクがランプ道に対応しているか否かを判定する。バッファメモリ11に読み出した地図データを基に、ランプ道か否かを判定する。ランプ道であればステップS15に移行し、ランプ道でなければステップS16に移行し、そのリンクに応じた通常のリンクコストを算出する。
【0048】
次のステップS15では、ランプ道に応じたリンクコストを算出する。ランプ道に応じたリンクコストは、ランプ道の構造及び使用規制に応じて予め定義された個々の評価要素のコストから算出する。
【0049】
図4は、ランプ道の評価要素毎のコストの一例を示している。図4に示すように、ランプ道は車線数、高速道路への進入可能台数、ランプ道の信号機の有無並びに信号機がある場合にはその設置位置によってそれぞれコストが設定されている。また、ランプ道における交通規制の時間帯の有無によってもコストが設定されている。
【0050】
ランプ道の評価要素となる構造に対するコストは、ランプ道の車線数及びランプ道の信号機の設置位置に応じて定義する。また、使用規制に対応したコストは、ランプ道から高速道路への進入可能台数及びランプ道の時間帯交通規制の有無に応じて定義する。
【0051】
車線数が多いランプ道のコストを車線数が少ないランプ道のコストよりも小さく設定する。これは、車線数が多いほうが混雑時にもスムーズに進行可能なためである。同様の理由から、高速道路への進入可能台数が多いランプ道のコストを進入可能台数が少ないランプ道のコストよりも小さく設定する。
【0052】
また、ランプ道に設置された信号機により、高速道路への進入規制が行われる。従って、信号機のある場合のほうがない場合よりも安全性の観点からは信号機があるほうがよい。しかし、信号機の設置位置が一般道側に設置されている場合には、ランプ道から高速道路に合流するときにスムーズな合流ができない可能性もあり、混雑時には信号機による規制によって一般道に渋滞を引き起こし、高速道路まで到達する時間がかかってしまう。これに対してランプ道の高速道路側に信号機が設置されている場合には、高速道路へスムーズに合流できるため一般道での渋滞を引き起こすことも少なくなる。以上の観点から、図4に示すように高速道路側に信号機が設置されている場合のコスト、信号機が設置されていない場合のコスト、信号機が一般道路側に設置されている場合のコストの順で大きくなるようにしている。
【0053】
図3は、ランプ道のリンクコストの算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0054】
まず、図3のステップS21では、初期設定として、リンクコストの変数Cを0とする。
【0055】
次のステップS22では、ランプ道への車両の到達時間を予測する。ランプ道への到達時間は、GPS受信機3の信号を基に検出した自車位置からランプ道までの経路上の距離と走行予定速度を基に算出する。
【0056】
次のステップS23では、ランプ道の時間帯交通規制があるか否かを判定する。時間帯交通規制がある場合はステップS24に移行し、ない場合はステップS26に移行する。
【0057】
次のステップS24では、車両のランプ道への到達予測時間がランプ道の交通規制の時間帯か否かを判定する。交通規制の時間帯であるときは、ステップS25に移行し、交通規制の時間帯でないときは、ステップS26に移行する。
【0058】
次のステップS25からステップS28は、ランプ道の各要素で定義されているコストを加算する。すなわち、ステップS25において、ランプ道の時間帯交通規制がある場合に対応するコストを加算し、ステップS26において、ランプ道の車線数に応じたコストを加算し、ステップS27において、高速道路への進入可能台数に応じたコストを加算し、ステップS28において、ランプ道の信号機の設置位置に応じたコストを加算して、ランプ道におけるリンクコストを算出する。
【0059】
図2のフローチャートに戻り、ステップS17において、当該リンクについての通行コストを前述した式(1)に従って算出する。すなわち、ステップS15又はステップS16で設定したリンクコスト(LCi)に交差点通過方向(右左折等角度)コスト(NCi)を加算して通過コスト(PCi)を算出する(PCi=LCi+NCi)。
【0060】
次のステップS18では、次のリンク以降、目的地までの各リンクについて、それぞれステップS13〜S17で行った処理と同様の処理を繰り返す。
【0061】
次のステップS19では、ステップS13〜S17の処理によって算出した出発地から目的地までの各リンク毎の通行コスト(PCi)を加算して、トータルの通行コスト(ΣPCi)を算出する。これによって、出発地(自車の現在位置)から目的地までの1つの経路についてその通行コスト(ΣPCi)が算出されたことになる。
【0062】
最後のステップS20では、ステップS19で算出した目的地までの複数の探索経路についての各々のトータルの通行コスト(ΣPCi)のうち、ΣPCiが最小となる経路のデータを誘導経路記憶部15に格納する。そして、本処理フローは「終了」となる。
【0063】
次に、上記ランプ道におけるリンクコストの設定処理の適用例を、図5から図7を参照して説明する。図5から図7は、誘導経路の探索のうちランプ道の探索について説明する図である。
【0064】
図5(a)の誘導経路57は図4のルートAに対応し、図5(b)の誘導経路58は図4のルートBに対応している。図5(a)、(b)は、一般道路52を走行している自車CMが目的地Gまでの最適な経路を探索する一例を示している。図5(a)、(b)の道路53及び道路54がランプ道であり、高速道路51に接続されている。
【0065】
ランプ道53は、車線数が1車線であり、高速道路51への進入可能台数が1台ずつであり、信号機55が一般道52側に設置されている。また、ランプ道54は、車線数が2車線以上であり、高速道路51への進入可能台数が2台ずつ以上であり、信号機56が高速道路51に設置されている。
【0066】
図4の各評価要素のコストを用いてランプ道のリンクコストを算出する。図5(a)の経路57(ルートA)のランプ道におけるリンクコストは11となり、図5(b)の経路58(ルートB)のランプ道におけるリンクコストは3となる。この結果、誘導経路探索においてランプ道54を通る経路が最適経路として選択される。
【0067】
図6は、別のランプ道62が存在する場合の例を示している。図6の誘導経路66は図4のルートCに対応している。ランプ道62は、車線が2車線以上であり、高速道路への進入可能台数が1台ずつであり、ランプ道62には信号機が設置されていない。このランプ道を使用する経路66(ルートC)のランプ道におけるリンクコストは7となる。このリンクコストはランプ道53のリンクコスト11より小さいがランプ道54のリンクコスト3よりも大きいため、この場合であってもリンクコスト3のランプ道54を通る経路が誘導経路として推奨される。
【0068】
ここで、ランプ道54の時間帯交通規制が「ある」ものとすると、ランプ道54のリンクコストは8になり、ランプ道62のリンクコストよりも大きくなる。この場合には、ランプ道62を通る経路が誘導経路として推奨される。すなわち、ランプ道54において信号機による通行規制が行われている時間帯は統計的に渋滞が起こる時間帯であるとみなされ、その時間帯においてはランプ道62を通るほうがスムーズに進行できることになる。
【0069】
なお、自車がそのランプ道62に到達する時間を自車位置、走行速度及び走行距離により推定し、交通規制がされている時間帯に到達する場合に時間帯交通規制情報コストをランプ道62のリンクコストに追加するようにする。
【0070】
図7は、別のランプ道71、72の例を示している。図7(a)の誘導経路75は図4のルートDに対応し、図7(b)の誘導経路76は図4のルートEに対応している。ランプ道71は、車線が2車線以上であり、高速道路への進入可能台数が2台ずつ以上であり、ランプ道71に信号機が設置されていない場合である。また、ランプ道72は、車線が1車線であり、高速道路への進入可能台数が2台ずつ以上であり、ランプ道72の高速道路51側に信号機73が設置されている場合である。
【0071】
図7(a)の誘導経路75(ルートD)のランプ道におけるリンクコストは5であり、図7(b)の誘導経路76(ルートE)のランプ道におけるリンクコストも5である。このようにリンクコストが同一の場合には、トータルの道路コストが同じであればランプ道に関しては自車位置に近いランプ道71が選択される。
【0072】
また、図7(a)、(b)において、ランプ道の渋滞状況を取得した場合には、その渋滞状況を考慮してランプ道を選択することも可能である。渋滞状況は、例えば、VICS受信機6を介して取得したり、通信機5を介して交通状況を監視している情報センターから取得できるものとする。
【0073】
例えば、図7(a)、(b)において、ランプ道71が渋滞であったとすると、誘導経路76(ルートE)が選択され、ランプ道72が渋滞であったとすると誘導経路75(ルートD)が選択される。
【0074】
また、渋滞の場合のコストを設定して、ランプ道のリンクコストに追加し、最適なランプ道を選択するようにしてもよい。このとき、渋滞が解消するための要因として最適な要素をランプ道の評価要素から選択し、選択された評価要素に渋滞のコストを追加したコストを用いて適切なランプ道を選択するようにしてもよい。例えば、渋滞のコストを1とし、渋滞の解消に最適な評価要素としてランプ道の車線情報を選択する。図7(a)、(b)において、ランプ道71が渋滞しているものとすると、渋滞解消に関する評価値は、車線情報コストと渋滞のコストとを加算して2となる。これに対し、渋滞していないランプ道72の車線情報コストは3である。従って、渋滞していたとしてもランプ道71を含む誘導経路75が選択される。
【0075】
また、渋滞のコストを1とし、渋滞の解消に最適な評価要素として信号機情報を選択する。図7(a)、(b)において、ランプ道72が渋滞し、ランプ道71は渋滞していないものとすると、ランプ道72の渋滞解消に関する評価値は2となり、渋滞していないランプ道71の信号機コスト3よりも小さくなる。従って、渋滞していたとしてもランプ道72を含む誘導経路76が選択される。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の車載用ナビゲーション装置及び経路探索方法によれば、一般道から高速道路を結ぶランプ道を含む誘導経路の探索において、ランプ道の評価要素となる構造及び使用規制に対応したコストを定義し、そのコストを適用して経路全体のリンクコストを算出するようにしている。これにより、複数のランプ道のうち最適なランプ道が選択された誘導経路を推奨することが可能となる。
【0077】
また、ランプ道の各種条件のうち、時間帯によって変動する条件(例えば時間帯交通規制や渋滞状況)に対して自車両がランプ道を利用する時間帯や渋滞状況も考慮してリンクコストを算出するようにしている。これにより、ユーザの利用状況にあわせた最適な誘導経路を提示することが可能となる。
【0078】
なお、本実施形態において説明したランプ道の評価要素のコストは一例であり、その値は最適なランプ道が選択されるように適宜変更してもよい。また、時間帯等に応じて特定の評価要素を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100…車載用ナビゲーション装置、
1a…DVD−ROM(地図データ記憶手段)、
2…操作部、
3…GPS受信機、
4…自立航法センサ、
7…表示部、
10…ナビゲーション装置本体、
11…バッファメモリ(地図データ記憶手段)、
12…制御部(制御手段)、
15…誘導経路記憶部、
16…誘導経路描画部、
17…通行コスト格納部、
53,54,62,71,72…ランプ道、
57,58,66,75,76…誘導経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路をノードとリンクに抽象化したネットワークを用いて目的地までの経路探索を行う車載用ナビゲーション装置であって、
高速道路に接続するランプ道の情報を含む地図データを格納した地図データ記憶手段と、
現在地から目的地に至る経路上に設定されたリンクのリンクコストを順次加算して通行コストを算出し当該通行コストが最小の経路を誘導経路とする制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、現在地から目的地に向かうリンクがランプ道に対応していると判定したとき、当該ランプ道の評価要素となる構造及び使用規制に対応したコストを加算して当該ランプ道のリンクコストを算出することを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記ランプ道の構造に対応したコストは、ランプ道の車線数及びランプ道の信号機の設置位置に応じて定義され、前記ランプ道の使用規制に対応したコストは、ランプ道から高速道路への進入可能台数及びランプ道の時間帯交通規制の有無に応じて定義されることを特徴とする請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記制御手段は、自車両が前記ランプ道に到達する時刻を推定し、当該時刻における前記ランプ道の時間帯交通規制に対応したコストを前記ランプ道のリンクコストに加算することを特徴とする請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
さらに、交通渋滞状況を取得する手段を備え、
前記制御手段は、ランプ道の交通渋滞状況を取得して、渋滞状況に対応したコストを前記ランプ道のリンクコストに加算することを特徴とする請求項3に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記渋滞状況を解消する要因となる評価要素を決定し、前記ランプ道の当該評価要素に対応するコストと前記渋滞状況に対応したコストを基に、複数のランプ道のうちの最小のリンクコストのランプ道を含む経路を誘導経路とすることを特徴とする請求項4に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
高速道路に接続するランプ道の情報及び道路をノードとリンクに抽象化したネットワークで表される地図データを格納した地図データ記憶手段を備えた車載用ナビゲーション装置において行われる誘導経路探索方法であって、
現在地から目的地に向かうリンクがランプ道に対応しているか否かを検出するステップと、
リンクがランプ道に対応しているとき、ランプ道の評価要素となる構造及び使用規制に対応したコストを抽出するステップと、
前記コストを加算して前記ランプ道のリンクコストを算出するステップと、
リンクのリンクコストを順次加算して前記現在地から目的地に至る複数の経路から前記リンクコストの合計が最小の経路を誘導経路とするステップと、
を有することを特徴とする誘導経路探索方法。
【請求項7】
前記ランプ道の構造に対応したコストは、ランプ道の車線数及びランプ道の信号機の設置位置に応じて定義され、前記ランプ道の使用規制に対応したコストは、ランプ道から高速道路への進入可能台数及びランプ道の時間帯交通規制の有無に応じて定義されることを特徴とする請求項6に記載の誘導経路探索方法。
【請求項8】
前記ランプ道のリンクコストを算出するステップは、
自車両が前記ランプ道に到達する時刻を推定するステップと、
前記時刻における前記ランプ道の時間帯交通規制に対応したコストを前記ランプ道のリンクコストに加算するステップと、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の誘導経路探索方法。
【請求項9】
前記ランプ道のリンクコストを算出するステップは、
交通渋滞状況を取得する手段から前記ランプ道の交通渋滞状況を取得するステップと、
前記渋滞状況に対応したコストを前記ランプ道のリンクコストに加算するステップと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の誘導経路探索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−266388(P2010−266388A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119435(P2009−119435)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】