説明

車載用レーダ

【課題】
車載レーダにおいて、路面・自車・レーダ自身に起因するノイズを低減し、小型軽量かつ低コストでロードクラッタを防止し、検知性能を向上させたレーダ装置を提供する。
【解決手段】
直線偏波を放射する1又は複数の放射素子を有したアンテナと、このアンテナ面の前方に配置された金属板に複数のスリットを設けたスリット板と、アンテナとスリット板の間に発泡材を設けたことを特徴とする。
【効果】
アンテナの給電線路からの交差偏波が主成分となるサイドローブを低減でき、ロードクラッタを防止できる。また、固有振動数が車両の振動数以下となるスリットの共振を低減し、ノイズを抑制することができる。それによって、レーダ装置として優れた検知性能が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に搭載され、障害物の方位,移動体との相対距離,相対速度等を検出する車載用レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波を用いた車載用レーダは超音波レーダやレーザレーダと比較して、雨,霧,雪などの気象条件や、埃,騒音の影響を受けにくいため、自動車の衝突防止や追従走行などに最適なレーダとして注目されている。
【0003】
上述の用途では、図7に示すように、ミリ波車載用レーダ20は移動体21の前面に設置され、アンテナからメインローブmbによって送信信号をターゲット車両22に向かって放射し、ターゲット車両22で反射した信号の送信信号との周波数差,位相差,時間差などを観測することにより、ターゲット車両22までの距離とターゲット車両の速度等を求めることができる。
【0004】
このようなミリ波レーダは、移動体21が停止している時はノイズが小さく、良好な検知性能を持つ。
【0005】
しかし、移動体21の走行時、例えば、矢印で示した移動体の進行方向24に移動速度Vr で走行しているとすると、路面23に角度θで入射されるサイドローブsbからの反射波は次式の相対速度Vs を持つためクラッタノイズとして受信される。
【0006】
(数1)
s=Vrcosθ
したがって、メインローブmbによるターゲット車両22からの信号がノイズに埋もれ、検知距離劣化や誤検知等の問題を引き起こしていた。
【0007】
上記のような路面からの反射波によるクラッタ(以下、ロードクラッタ)の防止対策として、特開2001−201557号公報では、アンテナ前方下部に金属板を配置することでサイドローブを遮断し、クラッタノイズを低減することが論じられている。
【0008】
また、従来、ミリ波レーダ用アンテナとしては、PeterPeregrinus社出版、J R James著の“Handbook of MICROSTRIP ANTENNAS”の第980頁に記載がある。
【0009】
図8にパッチアンテナの概要を示す。パッチアンテナは底面に接地導体25を持つ誘電体基板4上に構成され、TEMモードが給電点28から同軸線路等により給電され、マイクロストリップ給電線路26を伝搬し、放射器であるパッチ素子27に電力分配する構造である。
【0010】
パッチ素子27上の矢印は主偏波の向きでアンテナの主偏波方向40であり、この向きの偏波が空間を伝搬する。このようにパッチアンテナは誘電体基板のケミカルエッチングで加工できることから低コスト,薄型であり、ミリ波レーダとして有望である。
【0011】
また、アンテナから放射される偏波の主偏波方向と直交する交差偏波を低減させる手法として、アイ・イー・イー・イー、トランザクション エー ピー35、ナンバー4
(1987年)(IEEE TRANS,vol.AP−35,No.4,April 1987.)にスリット板を用いた交差偏波低減について論じられている。
【0012】
アンテナ応用としての具体的な手法として、特開平9−51225号公報によれば、給電線路がトリプレート構造のパッチアンテナについて、パッチ素子の上部にスリット付の放射窓を設けたスリット板をアンテナ前面に設置し、地導体でアンテナとスリット板を覆うことが論じられている。
【0013】
また、特開2001−326530号公報では、平面アンテナの前面にストリップ線路で構成されたスリット板を配置し、平面アンテナと、スリット板とを、その平面アンテナの端部に設けた金属壁を介して接続することが論じられている。
【0014】
【特許文献1】特開2001−201557号公報
【特許文献2】特開平9−51225号公報
【特許文献3】特開2001−326530号公報
【非特許文献1】PeterPeregrinus社出版、J R James著の“Handbook of MICROSTRIPANTENNAS”の第980頁記載の図8
【非特許文献2】アイ・イー・イー・イー、トランザクション エー ピー35、ナンバー4(1987年)(IEEE TRANS,vol.AP−35,No.4,April1987.)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記ロードクラッタによるミリ波車載レーダ受信信号のノイズ上昇について図9を用いて説明する。横軸はレーダ搭載車に対するターゲットの相対速度を自車の絶対速度で規格化したもので、縦軸は受信信号強度である。
【0016】
レーダ搭載車が停止している場合のノイズレベルはNsで示され、レーダの電子回路部で発生するノイズ31によって決まっている。ターゲットからの受信信号29のレベルはStであるので、レーダ搭載車が停止している場合のSN比は(St−Ns)で表される。
【0017】
一方、レーダ搭載車が走行している場合は、ロードクラッタによるノイズ30が急激に上昇する。これは、レーダ搭載車走行中はサイドローブによる地面からの反射波が相対速度を持つため、クラッタノイズとして受信してしまうからである。
【0018】
これにより、レーダ搭載車が走行している場合のSN比は(St−Nr)で表され、停止時に比べてSN比は大きく劣化し、検知距離劣化や誤検知等の問題を引き起こす。特に路面に垂直に入射するサイドローブによる小相対速度のノイズレベルは、路面との距離が近い為、他相対速度に比べ大幅に劣化する。
【0019】
従って、小相対速度での感度が重要となるACC(自動追従)レーダ応用では、路面に垂直に入射するサイドローブを低減する必要がある。上記したアンテナ前方下部に金属板を配置しロードクラッタを防止する手法は、金属板に反射した信号による誤検知の可能性があり、また、サイドローブの遮蔽範囲を広くするためには金属板を大きくする必要があり、レーダサイズの大型化は免れなかった。
【0020】
一方、サイドローブの主要因は、パッチアンテナの給電線路からの不要放射である。ミリ波帯では給電線路や給電点からの不要放射が大きくアンテナの放射特性を劣化させていた。特にアンテナ面に対して水平な方向に放射されるサイドローブの主成分は交差偏波であることから、交差偏波の低減がロードクラッタ防止につながる。ただし、路面に垂直入射するサイドローブに関しては、アンテナと路面との距離が最短であることや、路面の反射係数が最大になることから、交差偏波のみならず微弱な主偏波さえも低減する必要がある。
【0021】
また、車載用レーダは車両によって搭載位置が様々であり、車体からの乱反射によるマルチパスの影響を最小限にするには路面入射以外の不要サイドローブもできるだけ低減する必要がある。
【0022】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、ロードクラッタを防止し、優れた検知性能を有するレーダ装置を提供することを目的とする。さらに、車載用レーダ装置として、小型軽量かつ低コストで搭載位置を選ばないレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、レーダ装置であって、直線偏波を放射する1又は複数の放射素子を有したアンテナと、このアンテナ面の前方に配置された金属板に複数のスリットを設けたスリット板と、アンテナとスリット板の間に発泡材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
このように構成することにより(パッチ)アンテナの給電線路からの交差偏波が主成分であるサイドローブを低減でき、ロードクラッタを防止できる。また、固有振動数が車両の振動数以下となるスリットの共振を低減し、ノイズを抑制することができる。それによって、レーダ装置として優れた検知性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の特徴を示す。
【0026】
本発明は、車両等の移動体に搭載され、直線偏波を放射する1又は複数の放射素子を有したアンテナと、このアンテナ面の前方に配置した金属板に複数のスリットを設けたスリット板と、アンテナとスリット板の間に発泡材を設けた障害物の方位,移動体との相対距離,相対速度等を検出するレーダ装置であり、特に、車載用レーダである。
【0027】
このように構成することで、パッチアンテナの給電線路からの交差偏波が主成分であるサイドローブを低減しロードクラッタを防止できると共に、固有振動数が車両の振動数以下となるスリットの共振を低減しノイズを抑制することで優れた検知性能が得られる。
【0028】
本発明は、また、スリット板を発泡材と両面テープによって固定し、スリット板のアンテナ面と対向する位置に配置したレドームでアンテナ面に加圧固定することにより、スリットの共振を低減しノイズを抑制することができ、優れた検知性能が得られる。
【0029】
さらに、本発明は、スリット板を発泡材にアウトサートしてこれをアンテナ面と対向する位置に配置したレドームでアンテナ面に加圧固定することで、スリットの共振を低減しノイズを抑制することができ、優れた検知性能が得られる。
【0030】
さらに、本発明は、発泡材の厚みを1/8実効波長から1/2実効波長とすることによりスリットとアンテナの距離を制御することができノイズを抑制することができ、優れた検知性能が得られる。
【0031】
次に、本発明によれば、スリットの一部をアンテナ方向に1/8実効波長から1/2実効波長押し出すことでスリットとアンテナの距離を制御することができノイズを抑制することができ、優れた検知性能が得られる。
【0032】
また、本発明によれば、アンテナとスリット板の間にアンテナパッチ面の法線方向のパッチ投影面以外に誘電体,金属、または電波吸収体のスペーサを配置することにより、スリットの共振を低減しノイズを抑制することで優れた検知性能が得られる。
【0033】
さらに、本発明によれば、スペーサの厚みを1/8実効波長から1/2実効波長とすることでスリットとアンテナの距離を制御することができノイズを抑制することで優れた検知性能が得られる。
【0034】
また、本発明は、スリット板のアンテナ面と対向する位置に配置したレドームでスリット板をアンテナ面に加圧固定することでスリットの共振を低減しノイズを抑制するので優れた検知性能が得られる。
【0035】
本発明は、スリットの長手方向を法線とする断面を厚み方向に湾曲,折り曲げまたは突出した形状とすることにより固有振動数は高くなり共振によるノイズを抑制するので優れた検知性能が得られる。
【0036】
また、本発明は、スリット板はフレキシブル基板で構成していても前述と同様の効果をえることができる。
【0037】
本発明の更なる詳細は、図面を用いて、以下に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、上述の特徴を有するものに適用される。
【実施例1】
【0038】
図1は本発明による車載用レーダの第1の実施形態を表す構成図である。矢印41aは車載用レーダを車両に取り付けた際の路面方向を表している。
【0039】
本実施形態では、送信パッチアンテナ1から送信信号を送信し、ターゲットで反射された信号を受信パッチアンテナ2a及び受信パッチアンテナ2bで受信して、これらの受信信号からターゲットの速度,距離,方位を検出する。誘電体基板4上に構成された送信パッチアンテナ1,受信パッチアンテナ2a,2bは金属から成るアンテナプレート3に配置され、アンテナプレート3はレーダ筐体5に取り付けられると共に、誘電体から成るレドーム6に覆われている。アンテナ前面に発泡シート7を挟んで設けられたスリット板8は波長に対して十分薄い金属から成り、幅Lのスリットが周期Pで構成されている。スリットの長さについては波長に対して十分な長さをとって、スリットでの電波共振によるアンテナ放射パターンの劣化を防止する必要がある。アンテナの主偏波方向は矢印40bで表され、スリットの長手方向が主偏波方向と直交するように構成することでスリット板8は主偏波のみを通過させ、交差偏波を反射させる特性を持つ。次式にスリット9の長手方向と平行な偏波のスリット板8の反射係数を示す。
【0040】
【数2】

【0041】
スリット9の長手方向と垂直な偏波のスリット板8の反射係数は次式で表される。
【0042】
【数3】

【0043】
なお、λは使用周波数における自由空間波長を表す。
【0044】
上記の2つの式により、交差偏波のみ反射させる本目的においてはP/λ=0.1〜0.3,L/P=0.4〜0.7程度が妥当である。
【0045】
パッチアンテナの主偏波方向を路面と水平にすることで、パッチ素子単体の指向性最小になる角度が路面方向となることから、路面からの反射波を低減できる。
【0046】
図2は本実施例における車載用レーダの図1に対応する断面図とブロック図を示す。スリット板8とアンテナ面との距離Dpは、1/8実効波長より小さくすると、アンテナ主偏波の放射パターンやインピーダンス特性を劣化させる。また、1/2実効波長以上にするとアンテナ面とスリット板8の間に伝搬モードがたち、スリット板8の交差偏波低減特性が劣化する。従って、距離Dpは1/8実効波長から1/2実効波長とすることが望ましい。
【0047】
スリット板8は固有振動数が車両の振動数以下となるため、発泡シート7を配置して共振を低減している。
【0048】
また、Dpを最適値に制御するために発泡シート7の厚みを1/8実効波長から1/2実効波長とし、かつスリット9の一部をアンテナ方向に1/8実効波長から1/2実効波長押し出している。
【0049】
本実施例ではターゲットの方位検出にモノパルス方式を用いており、送受信装置から、送信パッチアンテナ1を介して送信信号を送信し、障害物で反射された信号を受信パッチアンテナ2a及び受信パッチアンテナ2bで受信して、ハイブリッド回路10にてモノパルス信号である和信号,差信号が生成される。
【0050】
以下に送受信装置について説明する。
【0051】
発振器11のミリ波信号は電力増幅器12を経て送信パッチアンテナ1に加えられる。ハイブリッド回路10で生成された和信号Σ及び差信号Δは、それぞれミキサ13a及び13bに加えられ発振器11の出力信号と混合され、中間周波信号に変換され、信号処理回路によって構成される信号処理部200に入力される。信号処理回路は、和信号Σ及び差信号Δの周波数変換された信号を用いて被検出体の方位を検出する方位検出部220と、和信号Σを用いて、被検出体の速度を検出する速度検出部240,位置などを検出する位置検出部260とを含む。これらの検出結果は検出信号として出力され、必要に応じて、表示装置280などの出力装置に適した信号に変換され、出力装置に出力される。
【0052】
また、これらの検出信号は、車両制御に適用される。例えば、追従制御(Adaptive
Cruise Control)やプリクラッシュ制御などの機能を有する制御装置やエンジン制御装置へ入力され、先行車に追従した走行制御や障害物を検出して警報を発すること、又は、走行進路を変更すること等で衝突回避を行う衝突回避制御,プリクラッシュ制御に用いられる。
【0053】
更に、これらは、上述の制御とも関係するエンジン制御,制動制御,ステアリング制御へも適用される。エンジン制御は、エンジン制御装置によって、エンジンの吸入空気量,燃料噴射量,燃料噴射時期,点火時期,トルク制御,エンジン回転数などを制御するものである。制動制御はモータによる電動ブレーキ装置,モータなどの電動又は他の駆動力で駆動されるポンプによって油圧を発生させる油圧ブレーキ装置又は電動ブレーキと油圧ブレーキとを組み合わせたハイブリッド制動装置を制御するものである。ステアリング制御は、ステアリングをモータなどの電動で駆動するもの、油圧を発生するポンプを駆動するものを制御するものである。
【0054】
図3は本実施例における効果を表す図である。前方にターゲット車両が無い状態では路面に角度θで入射されるサイドローブが原因のクラッタノイズが受信信号(縦軸)として相対速度(横軸)として観測される。スリット板8等を用いないレドーム6のみの状態がAで示され、スリット板8を用いた状態がBで示され、発泡シート7を用いた状態がCで示されている。ピークXはレーダ搭載車の正面方向に存在する路面以外からの静止物からの微小信号の総和である。
【0055】
本効果より発泡シート7をはさむことによりスリットの共振Yを低減しノイズを抑制することで優れた検知性能が得られることが分かる。
【0056】
また、スリット板8を発泡シート7と両面テープによって固定し、スリット板8のアンテナ面と対向する位置に配置したレドーム6でアンテナ面に加圧固定することにより、スリット9の共振を低減しノイズを抑制することで優れた検知性能が得られる。
【0057】
また、発泡シート7の厚みを1/8実効波長から1/2実効波長とすることによりスリット9とアンテナの距離を制御することができノイズを抑制することで優れた検知性能が得られる。
【0058】
また、スリット9の一部をアンテナ方向に1/8実効波長から1/2実効波長押し出すことでスリット9とアンテナの距離を制御することができノイズを抑制することで優れた検知性能が得られる。
【実施例2】
【0059】
図4は本発明による車載用レーダの第2の実施形態を表す構成図である。第1の実施例のスリット板8と発泡シート7の代わりにスリット板8を発泡シート7にアウトサートしたものである。この場合もこれをアンテナ面と対向する位置に配置したレドーム6でアンテナ面に加圧固定することで、スリット9の共振を低減しノイズを抑制することで優れた検知性能が得られる。
【実施例3】
【0060】
図5は実施例1の発泡シート7の代わりにアンテナとスリット板8の間にアンテナパッチ面の法線方向のパッチ投影面以外に誘電体,金属、または電波吸収体のスペーサ14を配置したものである。
【0061】
この場合、スリット9の共振を低減しノイズを抑制すると同時にアンテナパッチ部は全て空気となる構成であるのでアンテナの電力損失も少なく非常にすぐれている。
【0062】
また、この厚みを1/8実効波長から1/2実効波長とすることによりスリット板8とアンテナの距離を制御することができノイズを抑制することで優れた検知性能が得られる。
【0063】
また、スリット板8のアンテナ面と対向する位置に配置したレドーム6でスリット板8をアンテナ面に加圧固定することでスリット9の共振を低減しノイズを抑制するので優れた検知性能が得られる。
【実施例4】
【0064】
図6は実施例1から3におけるスリット板8のスリット長手方向を法線とする断面を厚み方向に湾曲,折り曲げまたは突出した形状としたものである。
【0065】
これにより固有振動数を高くすることができ共振によるノイズを抑制するので優れた検知性能が得られる。
【0066】
また、スリット板8はフレキシブル基板で構成していても前述と同様の効果をえることができる。
【0067】
上述の実施例による効果を更にアプリケーションを用いて具体的に説明する。
【0068】
対象物の方位,移動体との相対距離,相対速度の少なくとも一つを検出し、車両を制御する車両制御システムは、車両に搭載され、対象物を検出するレーダセンサの直線偏波を放射する一つ又は複数の放射素子を有したアンテナが本実施例の構造を適用することにより、図3の効果得ることができる。
【実施例5】
【0069】
前述の、特に、自車の先行車に対して追従制御するシステムにおいては、先行車が自車の設定速度以下の速度で走行する場合、自車の目標速度は先行車と同じ速度、つまり相対速度が0である。図3の対策前(A)と後(C)を比較すると特に相対速度が0付近のノイズの改善量が大きいので、本発明は、特に先行車に対する追従制御に対して効果が大きいといえる。
【実施例6】
【0070】
前述で、特に衝突防止のために、自車に近づいてくる車両を検知するシステムにおいては、自車に対して近づいてくる方向の相対速度をもった車両を安定して検知する必要がある。図3の対策前(A)では、相対速度が小さい領域(規格化相対速度が0に近い領域)では、ノイズが高く、相対速度が大きい領域(規格化相対速度が1に近い領域)では、ノイズが小さくなっているが、対策後(C)では、ノイズレベルが規格化相対速度によらないので、検知対象車両の安定検知という点で大きい効果を得る事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、レーダ装置の検知の制度,信頼度を高めることができるので、これらの検知結果を用いた制御の信頼性の向上,安定,確実な制御に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施例。
【図2】本発明の第1の実施例の断面図とブロック図。
【図3】本発明の第1の実施例の効果を示す図。
【図4】本発明の第2の実施例。
【図5】本発明の第3の実施例。
【図6】本発明の第4の実施例。
【図7】従来の車載用レーダの説明図。
【図8】従来のパッチアンテナの説明図。
【図9】本発明の課題を表す説明図。
【符号の説明】
【0073】
1…送信パッチアンテナ、2a,2b…受信パッチアンテナ、3…アンテナプレート、4…誘電体基板、5…レーダ筐体、6…レドーム、7…発泡シート、8…スリット板、9…スリット、10…ハイブリッド回路、11…発振器、12…電力増幅器、13a,13b…ミキサ、14…スペーサ、20…ミリ波車載用レーダ、21…移動体、22…ターゲット車両、23…路面、24…移動体の進行方向、25…接地導体、26…マイクロストリップ給電線路、27…パッチ素子、28…給電点、29…ターゲットからの受信信号、
30…ロードクラッタによるノイズ、31…レーダの電子回路部で発生するノイズ、40…アンテナの主偏波方向、41…車載レーダの路面方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、対象物の方位,移動体との相対距離,相対速度の少なくとも1つを検出する車載用電波レーダ装置であって、直線偏波を放射する一つ又は複数の放射素子を有したアンテナと、前記アンテナ面の前方に配置される複数のスリットを設けたスリット板と、前記アンテナと前記スリット板の間に発泡材を設けたことを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記スリット板を発泡材と接着固定し、前記スリット板のアンテナ面に対向する位置に配置したレドームにより前記アンテナのアンテナ面に加圧固定することを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記スリット板を発泡材にインサートして形成することを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記発泡材の厚みは、使用するレーダ装置の電波の1/8実効波長から1/2実効波長の間の厚みに設定することを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記スリット板の少なくとも一部のスリットは、前記スリット板が形成される面の法線方向に使用する電波の1/8実効波長から1/2実効波長の間の長さ分押し出されていることを特徴とする車載用レーダ装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記スリット板が形成される面と平行な位置に少なくとも一部のスリットにより形成された他の面を有することを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項7】
移動体に搭載され、対象物の方位,移動体との相対距離,相対速度の少なくとも1つを検出する車載用電波レーダ装置であって、直線偏波を放射する一つ又は複数の放射素子からなるアンテナパッチを有したアンテナと、前記アンテナ面の前方に配置される複数のスリットを設けたスリット板と、前記アンテナと前記スリット板の間に前記アンテナパッチ面の法線方向に位置する前記アンテナパッチの投影面を除く領域に誘電体,金属、または、電波吸収体のスペーサを配置したことを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記スペーサの厚みは、使用する電波の1/8実効波長から1/2実効波長の間に設定することを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項9】
請求項7において、
前記スリット板は、前記スリット板のアンテナ面に対向する位置に配置したレドームによって前記アンテナのアンテナ面に加圧固定されていることを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項において前記スリット板は、前記スリットの長手方向を法線とする断面が前記スリットの厚み方向に湾曲,折り曲げまたは突出した形状に形成されていることを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項において、前記スリット板は、フレキシブル基板で構成されていることを特徴とする車載用電波レーダ装置。
【請求項12】
車両に搭載され、対象物の方位,移動体との相対距離,相対速度の少なくとも1つを検出し、車両を制御する車両制御システムであって、
直線偏波を放射する一つ又は複数の放射素子を有したアンテナと前記アンテナ面の前方に配置される複数のスリットを設けたスリット板と前記アンテナと前記スリット板の間に発泡材を設けてなるレーダ装置と、
前記アンテナからレーダ波を送信するための信号を出力する発信器と前記送信されたレーダ波が前記対象物から反射され、前記アンテナで反射されたレーダ波を受信し、前記対象物の方位,速度又は距離の少なくとも1つを検出する信号処理部と前記検出された検出結果を表示又は前記車両の制御に用いて車両制御を行うことを特徴とする車両制御システム。
【請求項13】
請求項12において、
前記車両制御は、追従制御又は衝突回避制御であることを特徴とする車両制御システム。
【請求項14】
請求項12において、
前記車両制御は、エンジン制御,制動制御又はステアリング制御であることを特徴とする車両制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−29834(P2006−29834A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205368(P2004−205368)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】