説明

車載用音響処理装置

【課題】車室内音響空間において、使用条件にしたがう最適なハンズフリー通話および音声認識環境を提供する。
【解決手段】車室内に設置された複数のマイクロフォンM−1〜M−Nを備えた車載用音響処理装置(ヘッドユニット30)であって、座席位置、および車室内音響空間の状態に基づき選択されるマイクロフォンと、選択されたマイクロフォンの指向特性を制御する補正パラメータとが予め記憶された記憶手段(記憶部311)と、話者の座席位置と話者が発話したとき車室内音響空間の状態を検知し、記憶手段を参照して複数のマイクロフォンの中からマイクロフォンを選択し、選択されたマイクロフォンに対応する補正パラメータに基づきマイクロフォンの指向特性を可変制御する制御手段(条件判定部308、座標位置入力部309、エアコン使用状態通知部310)とにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に複数のマイクロフォンとスピーカが設置された状態で、ハンズフリー通話や音声認識に用いて好適な、車載用音響処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、車載用ハンズフリー通話、あるいは、目的地検索等を行う車載ナビゲーション装置で使用される音声認識は、運転手をその利用対象としている。
したがって、運転席以外の座席に着座した同乗者がそれらを利用する場合、発話の際に、例えば、車載用ハンズフリー通話においては通話の相手に対して声が通りにくく(声が遠くに聴こえる)、また、音声認識においては認識率が悪くなる、といった問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、従来、マイクロフォンで取り込んだ音声からマイクロフォンの指向性を調整するか、音声を出力するスピーカを制御することで対処していた。
例えば、マイクロフォンから取り込んだ音声から音声発生源が変化した位置に追従させる装置(例えば、特許文献1参照)、マイクロフォンから取り込んだ音声の振幅、遅延時間、座席位置から、話者の方向に指向性が最大になるように制御する車載用音声認識装置(例えば、特許文献2参照)、助手席の同乗者に対して相手側からの通話音声が聴こえてしまうのを抑えるために、その通話音声を助手席から遠いほうの耳付近に設置されたスピーカから出力させるハンズフリー通話装置(例えば、特許文献3参照)等、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−508642号公報
【特許文献2】特開平11−219193号公報
【特許文献3】特開2003−224653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、上記した問題以外に、マイクロフォンによって取り込まれる音声の中には、発話者や同乗者により発せられる音声以外に、エアコン、エンジン音、走行音等、車室内音響空間の状態によっては雑音が混入し、このため、ハンズフリー通話時には発話内容がわかりにくく、また、音声認識時には誤認識の原因となる、といった更なる問題がある。これらの問題については、上記した特許文献1〜3に開示された技術によっては解決されない。
また、ハンズフリー通話時における相手側の音声や音声認識時のガイダンス音声は、運転手の利用を対象として車載スピーカから出力されるため、運転席以外に着座した同乗者がそれらを利用する場合、車載スピーカから出力される相手側の音声やガイダンス音声がうまく聴き取れないことがある。また、ハンズフリー通話時、通話している人以外の同乗者にも受話音声が聴こえるため、プライバシーに関わる通話は行えないといった問題もあった。
【0006】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、車室内音響空間において、使用条件にしたがう最適なハンズフリー通話、および音声認識環境を与えることができる車載用音響処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために本発明の車載用音響処理装置は、車室内に設置された複数のマイクロフォンを備えた車載用音響処理装置であって、座席位置、および車室内音響空間の状態に基づき選択されるマイクロフォンと、前記選択されたマイクロフォンの指向特性を制御する補正パラメータとが予め記憶された記憶手段と、話者の座席位置と話者が発話したときの車室内音響空間の状態を検知し、前記記憶手段を参照して前記複数のマイクロフォンの中からマイクロフォンを選択し、前記選択されたマイクロフォンに対応する補正パラメータに基づき前記マイクロフォンの指向特性を可変制御する制御手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車室内音響空間において、使用条件にしたがう最適なハンズフリー通話、および音声認識環境を与えることのできる、車載用音響処理装置を提供することかできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1〜4に係る車載用音響処理装置の車室内音響空間を説明するために示した図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る車載用音響処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る車載用音響処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態3に係る車載用音響処理装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態3に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態4に係る車載用音響処理装置の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態4に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図13を参照しながら、本発明の実施の形態1〜4に係る車載用音響処理装置について詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1〜4に係る車載用音響処理装置の車室内音響空間を説明するために示した図である。ここでは、5人乗りの普通車両(以下、単に車両1という)が例示されている。
【0011】
図1に示されるように、車両1内には、運転席11、助手席12、後部座席13が配置され、運転席11右には、フロント窓17、助手席12左には、フロント窓18、後部座席13の左右両側にはリア窓19、20がそれぞれ取り付けられている。
これらの窓17、18、19、20は、乗員の操作により電装系ECU(電子制御ユニット)22を介して自動的に開閉制御(パワーウインドウ)される。また、運転席11の右前方、助手席12の左前方、後部座席13の中央前方には、それぞれエアコン吹き出し口14、15、16が取り付けられており、このエアコン吹き出し口14、15、16から、電装系ECU22を介して制御される不図示のエアコンプレッサからの暖冷却風が供給される。
【0012】
また、上記した車両1内には、本発明の実施の形態1〜4に係る車載用音響処理装置が実装されるナビゲーション用、もしくはカーオーディオ用のヘッドユニット30が搭載され、このヘッドユニット30には、ハンズフリー携帯電話31の他に、各座席11、12、13近傍にそれぞれ配置されるマイクロフォン32、33、34、35、32’、33’、34’、35’およびスピーカ36、37、38、39が接続されている。ヘッドユニット30には、更に、エンジン(ENG)を制御する、エンジン系ECU21、ならびに上記した電装系ECU22も接続されている。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態1に係る車載用音響処理装置の構成を示すブロック図であり、ここでは、ヘッドユニット30の内部構成を示す。
図2に示されるように、ヘッドユニット30は、音声入力部301と、音声処理部302と、音声出力部303と、音声認識部304と、音声認識ボタン305と、電話制御部307と、条件判定部308と、座席位置入力部309と、エアコン使用状態通知部310と、記憶部311と、スピーカ出力部312と、により構成される。
【0014】
なお、図2において、記号S−1、S−2、…、S−Nは、図1に示すスピーカ36、37、38、39であり、ここでは、受話/音声案内出力用に用いられる。また、記号M−1、M−2、…、M−(N−1)、M−Nは、図1に示すマイクロフォン32、33、34、35であり、ここでは、送話マイク/音声認識用に用いられる。
これらスピーカS−1〜S−N、およびマイクロフォンは、各座席11〜13に最適な位置に必要数設置されるものとし、図1に示されるように、座席毎に1個とは限らない。
【0015】
音声入力部301は、複数のマイクロフォンで集音された音声を取り込みA/D(Analog/Digital)変換を行い、この変換により得られるデジタル音声信号を音声処理部302へ出力する。
音声処理部302は、音声入力部301でA/D変換されたデシタル音声信号が入力され、ここで入力されたデジタル音声信号は、後述する条件判定部308で判定される最適なマイクロフォンと指向性に関する補正パラメータとに基づき、選択したマイクロフォンで取得した音声を最適な指向性に音声処理をし、音声出力部303に出力する。
【0016】
音声出力部303は、音声認識時、音声処理部302で処理されたデジタル音声信号を音声認識部304へ出力し、ハンズフリー通話時、音声処理部302で処理されたデジタル音声信号を電話制御部307へ出力する。
音声認識部304は、入力された音声信号から音声認識を行い、認識した文字やコマンドにより、カーナビゲーションやカーオーディオの操作を行う。また、音声認識部304によるガイダンス音声をスピーカ出力部312に出力する。なお、音声認識ボタン305は、音声認識を起動する際に乗員により押下されるボタンである。
【0017】
電話制御部307は、音声出力部303から出力される送話音声に対してエコーキャンセルやノイズキャンセル等の処理を行い、ハンズフリー携帯電話31に出力する。電話制御部307はまた、相手側からの音声をスピーカ出力部312に転送する。
条件判定部308は、座席位置入力部309により入力された座席位置、もしくは入力音声から判定される座席位置と、エアコン使用状態通知部310により通知されるエアコン使用状態とに基づき、記憶部311の選択マイク・指向性定義ファイルを参照することで、最適なマイクロフォンの選択と、選択されたマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータを読み出し、音声処理部302に出力する。条件判定部308はまた、上記により入力され、もしくは判定される発話者の座標位置に基づき、音声案内ガイダンスやハンズフリーの受話音声を出力するスピーカを、座席位置に最も近いスピーカに決定してスピーカ出力部312に通知する。
【0018】
座席位置入力部309は、乗員によって入力されるハンズフリー通話や音声認識を行う座席位置を取り込んで条件判定部308に通知する。この座席位置入力部309は、各座席に取り付けられボタン押下により入力する他、カーナビゲーションあるいはカーオーディオの適当なボタンを押下することにより入力するのでも代替可能である。また、座席位置判定においては、座席位置入力部309を設置することなく、例えば、上述した特許文献2に開示されているように、各種マイクロフォン入力音声から発話者位置を自動判定しても良い。
エアコン使用状態通知部310は、電装系ECU22経由でエアコンの使用状態を検出して条件判定部308に使用状態に関する情報を通知するものである。ここで、通知されるエアコン使用状態に関する情報とは、エアコンの使用状態が車室内音響空間に及ぼす影響の度合いを示す情報であり、ここでは、エアコン吹き出し口14、15、16から吹き出される空気の温度と風量とにより予め区分されるレベル情報とする。例えば、温度が一定値以上、もしくは一定値以下であって、風量が比較的大きい場合をレベル5とし、温度が一定値内であって比較的風量が少ない場合をレベル0とし、その間にレベル1〜4を割り付けるものとする。
【0019】
スピーカ出力部312は、音声認識部304から入力された音声認識部のガイダンス音声や電話制御部307から入力されたハンズフリー通話時の受話音声を、条件判定部308から通知された発話者の座席位置から最も近いスピーカからのみ音声出力し、それ以外のスピーカ出力音はミュート制御する。
なお、本発明の記憶手段として用いられる記憶部311には、選択マイク・指向性定義ファイルが記憶されており、この選択マイク・指向性定義ファイルには、座席位置、および車室内音響空間の状態に基づき選択されるマイクロフォンと、このマイクロフォンの指向性を制御する補正パラメータとが予め設定される。ここで、補正パラメータとは、エアコンの使用状態を複数のレベルに分割した場合のレベル毎の基準値に対する指向性補正パラメータをいう。
【0020】
このため、ヘッドユニット30が有する構成のうち、特に、条件判定部308と、座席位置入力部309と、エアコン使用状態通知部310とが協働して動作することにより、本発明の「話者の座席位置と話者が発話したとき車室内音響空間の状態を検知し、前記記憶手段を参照して前記複数のマイクロフォンの中からマイクロフォンを選択し、前記選択されたマイクロフォンに対応する補正パラメータに基づき前記マイクロフォンの指向特性を可変制御する」制御手段、として機能する。
【0021】
図3、図4は、本発明の実施の形態1に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
以下、図3、図4のフローチャートを参照しながら、本発明の実施の形態1に係る車載用音響処理装置の動作について詳細に説明する。
【0022】
ヘッドユニット30は、まず、ハンズフリー携帯電話31を使用した乗員からの発信、または相手携帯電話から着信があると(ステップST301、またはST302)、ヘッドユニット30に接続されたハンズフリー携帯電話31による通話が開始され、(ステップST303)、もしくは、音声認識ボタン305の押下が検知されることにより(ステップST304)、音声認識部304による音声認識が開始される(ステップST305)。
なお、ハンズフリー通話開始時や音声認識開始時は、マイクロフォンの選択と、選択されたマイクロフォン指向性は、デフォルトで運転席11乗員用に合せておくものとする。
【0023】
ハンズフリー通話や音声認識の発話者が運転席11以外の場合は(ステップST306“NO”)、座席付近に設けられたそれぞれの座席位置入力部309からその座席位置情報が入力され、もしくは、マイクロフォン入力音声からその座席位置が推定される(ステップST307)。なお、音声認識時は、座席位置入力部309と音声認識ボタン305とを併用し、各座席に設けられた音声認識ボタン305を押下することで座席位置を認識してもよい。
また、ヘッドユニット30は、座席位置以外にも、エアコン使用状況を電装系ECU22経由で車両1から取り込み、現在のエアコン使用状況に関する情報を、条件判定部308に通知する(ステップST308)。
【0024】
条件判定部308は、座席位置入力部309により入力された、あるいは推定された座席位置に関する情報と、エアコン使用状態通知部310により通知されるエアコン使用状況に関するレベル情報とから車室内音響空間の状況を判定し(ステップST309)、この車室内音響空間の状況に基づき、記憶部311の選択マイク・指向性定義ファイルを参照して、選択される適切なマイクロフォンと、このマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータとを検索して音声処理部302に出力する。
【0025】
音声処理部302は、音声入力部301で取り込んだマイクロフォン音声を、選択されたマイクロフォンM−1〜M−Nと、選択されたマイクロフォンM−1〜M−Nの指向性に関する補正パラメータから選択されたマイクロフォンの指向性を可変とし音声処理を行う(ステップST310)。
なお、記憶部311に記憶される選択マイク・指向性定義ファイルに設定されたマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータは、座席毎にエアコン使用状態に応じて選択されたマイクロフォンの指向性を鋭くし、発話音声にエアコンの風切り音の混入を減少させるための指向性を補正するデータである。
【0026】
音声処理部302により出力される音声信号は、ハンズフリー通話時、電話制御部307で、エコーキャンセル処理およびノイズキャンセル処理を行い、相手の携帯電話に送信される(ステップST312)。また、音声認識時、音声認識部304で認識された文字やコマンドにしたがいカーナビゲーションやカーオーディオの操作を行う(ステップST313)。
一方、音声認識時の音声認識ガイダンスは音声認識部304からスピーカ出力部312に取り込まれ、スピーカ出力部312は、条件判定部308で判定された発話者の座席位置に最も近いスピーカS−1〜S−Nのみから音声信号を出力し、それ以外のスピーカ出力をミュート制御する(ステップST311)。また、ハンズフリー通話時の受話音声は、電話制御部307からスピーカ出力部312に取り込まれ、スピーカ出力部312は、条件判定部308で判定された発話者の座席位置に最も近いスピーカS−1〜S−Nのみから音声信号を出力し、それ以外のスピーカから出力される音声信号をミュート制御する(ステップST311)。
【0027】
ハンズフリー通話や音声認識時、発話者を変更する場合(ステップST314)、座席位置入力部309から座席位置に関する情報を入力し直し、もしくは、マイクロフォン入力から座席位置が変更になったと推定されれば、条件判定部308に通知され(ステップST315)、現在の座席位置情報が変更される(ステップST316)。
また、ヘッドユニット30は、所定の周期で電装系ECU22との通信によりエアコンの使用状況を取得し(ステップST317)、ここでエアコンの使用状況が変更になれば(ステップST318“YES”)、エアコン使用状態通知部310は、その旨、条件判定部308に通知してエアコン使用状況の変更を行う(ステップST319)。
【0028】
これを受け、条件判定部308は、通知された座席位置とエアコン使用状況とから変更後の車室内音響空間を判定する(ステップST320)。
ここで、車室内音響空間に変更があれば(ステップST321“YES”)、条件判定部308は、記憶部311に記憶されてある選択マイク・指向性定義ファイルを参照し、先に判定された車室内音響空間に対応したマイクロフォンの選択と、選択されたマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータとを取り込み、選択されたマイクロフォンの指向性を変更し(ステップST322)、音声入力部301で取り込まれたマイクロフォン音声を変更した選択マイクロフォンとマイクロフォンの指向性により音声処理部302で音声処理を行う。
【0029】
音声処理部302で音声処理を行った音声信号は、ハンズフリー通話時、電話制御部307でエコーキャンセル処理、およびノイズキャンセル処理を行い、相手方の携帯電話に送信される(ステップST324)。また、音声認識時、入力音声は音声認識部304に入力され、音声認識部304で音声認識された文字やコマンドにより、カーナビゲーションやカーオーディオの操作が実行される(ステップST325)。
さらに、スピーカ出力部312は、条件判定部308による制御の下、音声認識時の音声認識ガイダンスやハンズフリー通話時の受話音声を出力するスピーカを、座席位置の変更に応じて、発話者の座席位置に最も近くに位置するスピーカからのみ出力させる(ステップST323)。
【0030】
なお、ハンズフリー通話もしくは音声認識の終了を選択することで(ステップST326“YES”)、ハンズフリー通話もしくは音声認識を終えることができる(ステップST327、ST328)。
【0031】
上記した本発明の実施の形態1に係る車載用音響処理装置は、制御手段(条件判定部308、座席位置入力部309、エアコン使用状態通知部310)が、車室内におけるエアコンの使用状況を検知し、検知されたエアコンの使用状況が車室内音響空間に及ぼす影響の度合いを検知し、記憶部311を参照して選択されるマイクロフォンの指向特性を可変制御する。このことにより、ハンズフリー通話や音声認識を行う際に、発話者の座席位置、およびエアコン使用状況に応じて、最も適切なマイクロフォンを選択し、指向性を最適にすることができ、このため、相手側に送信される発話者の音声レベルや音声認識率を高めることができる。更に、マイクロフォンにより集音されるエアコンの風切り音を減少させる効果があり、発話者の音声は聞き取りやすく取り込みやすく、また、音声認識率も高めることができる。
【0032】
具体的に、ハンズフリー通話や音声認識を行う話者が、運転席以外のいかなる座席で発話した場合にも、ハンズフリー通話時の相手側に送信される発話音声や音声認識時の発話者音声の音声レベルが小さくならず、さらにエアコンの使用状態に応じて選択されるマイクロフォンや選択されたマイクロフォンの指向性を調整することで、マイクロフォン音声に含まれるエアコンの風切り音を減少させることができる。このため、ハンズフリー通話時の発話者の通話音声が聴き取りやすくなり、音声認識時の音声認識率を高めることができる。
また、ハンズフリー通話時の受話音声や音声認識時のガイダンス音声を発話者の座席位置から最も近いスピーカのみに出力させることで、発話者にはハンズフリー通話時の受話音声や音声認識時のガイダンス音声が明瞭に聴こえ、発話者以外には小音量で聴こえるため、使用条件にあったハンズフリー環境、および音声認識のための入力環境を提供することができ、発話者のプライバシーも保護される。
【0033】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る車載用音響処理装置の構成を示すブロック図である。
以下に説明する本発明の実施の形態2において、上述した実施の形態1との構成上の差異は、エアコン使用状態通知部310に代わってエンジン回転数通知部313が、条件判定部308に接続されたことにある。
【0034】
エンジン回転数通知部313は、ヘッドユニット30に接続されるエンジン系ECU21と一定の周期で通信を行い、エンジン系ECU21からエンジンの回転数を含む車両状態に関するデータを取得する。エンジン回転数を含む車両状態に関するデータとは、例えば、エンジン回転数の場合、回転数を所定の範囲毎に区分し、それぞれに車室内音響空間に及ぼす影響の度合いをレベルとして割り付けたものである。例えば、回転数4000rpm以上をレベル5、回転数1000rpm以下をレベル0とし、その間にレベル1〜4を割り付けるものとする。
【0035】
このため、記憶部311に記憶される選択マイク・指向性定義ファイルには、発話者の座席位置や、エンジン回転数の一定範囲毎に最適なマイクロフォンの選択と、選択されたマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータが予め設定されるものとする。条件判定部308は、座席位置入力部309、エンジン回転数通知部313によって入力され、もしくはマイクロフォン入力音声から判定した座席位置と、エンジン回転数のレベル情報に応じて最適なマイクロフォンと、このマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータとを記憶部311に記憶された選択マイク・指向性定義ファイルから取り込んで音声処理部302に出力する。他の構成は、図2に示す実施の形態1と同様であるため、説明の重複を回避する意味でここではその説明を省略する。
【0036】
図6、図7は、本発明の実施の形態2に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
以下、図6、図7のフローチャートを参照しながら、本発明の実施の形態2に係る車載用音響処理装置の動作について、実施の形態1との差異にのみ着目して説明する。
【0037】
まず、ハンズフリー通話や音声認識が開始されると(ステップST601〜ST606)、座席位置入力部309を介して発話者の座席位置が取り込まれ(ステップST607)、また、エンジン回転数通知部313は、エンジン系ECU21から取得したエンジン回転数に関する情報を条件判定部308に通知する(ステップST608)。
これを受けて条件判定部308は、通知されたエンジン回転数と、座席位置とにより、車室内音響空間を判定する(ステップST609)。条件判定部308は、ここで判定された車室内音響空間に対応したマイクロフォンの選択と、マイクロフォンの指向性に関し、記憶部311に記憶された選択マイク・指向性定義ファイルから取り込み(ステップST610)、音声入力部301により取り込んだマイクロフォン音声を音声処理部302で音声処理する。なお、選択マイク・指向性定義ファイルに設定されているマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータは、座席毎、エンジン回転数のレベルが高くなるにつれて鋭くなるように指向性を補正し、ハンズフリー通話や音声認識時の発話音声にエンジン音の混入を減少させるものとする。
【0038】
ハンズフリー通話中、あるいは音声認識中、エンジン回転数通知部313は、エンジン系ECU21と所定の周期で通信を行うことでエンジン回転数の変動を検知し、条件判定部308に出力している(ステップST617)。
今、エンジン回転数が、現在設定されているエンジン回転数範囲から変動すると(ステップST618“YES”)、エンジン回転数通知部313は、エンジン回転数範囲のレベルを最新のエンジン回転数範囲のレベルに変更し、条件判定部308へ通知する(ステップST619)。
【0039】
これを受けて条件判定部308は、車室内音響空間を判定し(ステップST620)、記憶部311に記憶された選択マイク・指向性定義ファイルを参照して、最新のエンジン回転数範囲のレベルと座席位置に対応した最適なマイクロフォンと、そのマイクロフォンの指向性の補正パラメータとを取り込んで音声処理部302に出力する。
音声処理部302は、新たに設定された選択マイクロフォンと、そのマイクロフォンの指向性の補正パラメータとから指向性を可変とし(ステップST622)、音声入力部301で取り込んだマイクロフォン音声の音声処理を行う。
【0040】
上記した本発明の実施の形態2に係る車載用音響処理装置は、制御手段(条件判定部308、座席位置入力部309、エンジン回転数通知部313)が、エンジン回転数を含む車両状態を検知し、検知された車両状態が車室内音響空間に及ぼす影響の度合いを検知し、記憶部311を参照して選択されたマイクロフォンの指向特性を可変制御するものである。
このことにより、ハンズフリー通話や音声認識を行う際に、発話者の座席位置、およびエンジン回転数を含む車両状態に応じて、最も適切なマイクロフォンを選択することができ、また、マイクロフォンの指向性を最適に補正することで、通話相手に送信される発話者の音声レベルや音声認識率を高める効果がある。さらに、マイクロフォンによって集音されるエンジン音を減少させる効果があり、このため、ハンズフリー通話時の発話者の音声は聴き取りやすく、また、音声認識時の音声認識率も高めることができる。
【0041】
具体的に、ハンズフリー通話や音声認識を行う発話者が、運転席以外のいかなる座席で発話した場合にも、ハンズフリー通話時に相手側に送信される発話者音声や音声認識時に発話者音声の音声レベルが小さくならず、更に、エンジン回転数に対して、適切なマイクロフォンを選択し、選択されたマイクロフォンの指向性を調整することで、マイクロフォン音声に含まれるエンジン音を減少させることができる。そのため、発話者の通話音声が聴き取りやすく、また、音声認識率を高めることができる。
また、ハンズフリー通話時、発話者の座席位置により出力スピーカを変更することにより、発話者には相手側の音声が明瞭に聴こえ、それ以外の乗員には音声が聴き取りにくくなるといった効果も得られる。また、音声認識時、発話者の座席位置により、音声認識ガイダンス音声の出力スピーカ位置を可変とすることで、発話者から最も近くに位置するスピーカからガイダンス音声を流すことができ、したがって、ガイダンス音声を聴き取りやすくする効果も得られる。
【0042】
なお、上記した実施の形態2では、エンジン回転数を条件判定部308による車室内音響空間の判定条件の一つとしたが、他に、車速等、エンジン系ECU21から取得可能な車両状態情報で代替しても良い。
【0043】
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3に係る車載用音響処理装置の構成を示すブロック図である。
以下に説明する本発明の実施の形態3において、上述した実施の形態1、2との構成上の差異は、エアコン使用状態通知部310、あるいはエンジン回転数通知部313に代わって、窓開閉状態通知部314が、条件判定部308に接続されたことにある。
【0044】
窓開閉状態通知部314は、ヘッドユニット30に接続される電装系ECU22と一定の周期で通信を行い、電装系ECU22からパワーウインドウによる各窓(図1の17、18、19、20)の開閉状態に関するデータを取得する。このデータとは、例えば、窓の開閉状態を0〜5の6段階で区分し、それぞれに車室内音響空間に及ぼす影響の度合いをレベルとして割り付けたものである。例えば、窓が全開の場合をレベル5、窓が全閉の場合をレベル0とし、その間にレベル1〜4を割り付けるものとする。
【0045】
このため、記憶部311に記憶される選択マイク・指向性定義ファイルには、発話者の座席位置や、窓の開閉状況に応じて一定範囲毎に最適なマイクロフォンの選択と、選択されたマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータが予め設定されるものとする。
条件判定部308は、座席位置入力部309、窓開閉状態通知部314によって入力され、もしくはマイクロフォン入力音声から判定した座席位置と、窓開閉状況のレベル情報に応じて最適なマイクロフォンと、このマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータとを記憶部311の選択マイク・指向性定義ファイルから取り込んで音声処理部302に出力する。他の構成は、図1に示す実施の形態1と同様であるため、説明の重複を回避する意味でここではその説明を省略する。
【0046】
図9、図10は、本発明の実施の形態3に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
以下、図9、図10のフローチャートを参照しながら、本発明の実施の形態3に係る車載用音響処理装置の動作について、実施の形態1との差異に着目して説明する。
【0047】
まず、ハンズフリー通話や音声認識が開始されると(ステップST901〜ST906)、座席位置入力部309を介して発話者の座席位置が取り込まれ(ステップST907)、また、窓開閉状態通知部314は、電装系ECU22から取得した窓開閉状況に関する情報を条件判定部308に通知する(ステップST908)。
これを受けて条件判定部308は、通知された窓開閉状況に関するレベル情報と、座席位置とにより、車室内音響空間を判定する(ステップST909)。条件判定部308は、ここで判定された車室内音響空間に対応したマイクロフォンの選択と、マイクロフォンの指向性に関し、記憶部311に記憶された選択マイク・指向性定義ファイルから取り込み(ステップST910)、音声入力部301により取り込んだマイクロフォン音声を音声処理部302で音声処理する。
【0048】
なお、選択マイク・指向性定義ファイルに設定されているマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータは、座席毎、窓が全開状態になるにつれて鋭くなるように指向性を補正し、ハンズフリー通話や音声認識時の発話音声に車両の走行音を含む車外の騒音の混入を減少させるものとする。
【0049】
ハンズフリー通話中、あるいは音声認識中、窓開閉状態通知部314は、電装系ECU22と所定の周期で通信を行うことで、窓開閉による走行音を含む雑音混入についての変動を検知し、条件判定部308に出力している(ステップST917)。
今、窓開閉のレベル、現在設定されているレベルから変動すると(ステップST918“YES”)、窓開閉状態通知部314は、窓開閉のレベルを最新のレベルに変更し、条件判定部308へ通知する(ステップST919)。
【0050】
これを受けて条件判定部308は、車室内音響空間を判定し(ステップST920)、記憶部311に記憶された選択マイク・指向性定義ファイルを参照して、最新の窓開閉のレベルと座席位置に対応した最適なマイクロフォンと、そのマイクロフォンの指向性の補正パラメータとを取り込んで音声処理部302に出力する。
音声処理部302は、新たに設定された選択マイクロフォンと、そのマイクロフォンの指向性の補正パラメータとから指向性を可変とし(ステップST922)、音声入力部301で取り込んだマイクロフォン音声の音声処理を行う。
【0051】
上記した本発明の実施の形態3に係る車載用音響処理装置は、制御手段(条件判定部308、座席位置入力部309、窓開閉状態通知部314)が、車室内における窓の開閉状況を検知し、検知された窓の開閉状況が車室内音響空間に及ぼす影響の度合いを検知し、記憶部311(選択マイク・指向性定義ファイル)を参照して選択されたマイクロフォンの指向特性を可変制御するものである。
このことにより、ハンズフリー通話や音声認識を行う際に、発話者の座席位置、および車室内の窓の開閉状況に応じて、最も適切なマイクロフォンを選択し、指向性を最適にすることで、相手側に送信される発話者の音声レベルや音声認識率を高める効果がある。さらに、マイクロフォンに入り込む風切り音や走行騒音を減少させる効果があり、ハンズフリー通話時の発話者の音声は聴き取りやすくなり、また音声認識時の音声認識率も高めることができる。また、ハンズフリー通話時、発話者の座席位置により出力スピーカを変更することにより、発話者には通話相手の音声が明瞭に聴こえ、それ以外の乗員には音声が聴き取りにくくなるといった効果も得られる。また、音声認識時、発話者の座席位置により、音声認識ガイダンス音声の出力スピーカ位置を可変とすることで、発話者から最も近くに位置するスピーカからガイダンス音声を流すことができ、したがって、ガイダンス音声を聴き取りやすくする効果も得られる。
【0052】
具体的に、ハンズフリー通話や音声認識の発話者が運転席以外のいかなる座席で発話した場合にも、ハンズフリー通話時の相手側に送信される発話者音声や、音声認識時の発話者音声の音声レベルが小さくならず、更に、窓開閉状態に対して、選択マイクロフォンやそのマイクロフォンの指向性を調整することで、マイクロフォン音声に含まれる走行騒音を減少させることができる。そのため、発話者の通話音声が聴き取りやすくなり、また、音声認識率を高めることができる。
【0053】
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4に係る車載用音響処理装置の構成を示すブロック図である。
以下に説明する実施の形態4では、実施の形態1〜3に示した、エアコン使用状態通知部310、エンジン回転数通知部313、窓開閉状態通知部314の少なくとも2つが条件判定部308に接続されるものであり、ここでは、全てが接続された例が示されている。
【0054】
このため、記憶部311に記憶される選択マイク・指向性定義ファイルには、発話者の座席位置や、エアコン使用状況、エンジン回転数、窓開閉状況のそれぞれに応じて、最適なマイクロフォンの選択と、マイクロフォンの指向性に関する補正パラメータとが設定されている。
条件判定部308は、入力された座席位置、もしくはマイクロフォン入力音声から判定した座席位置と、エアコンの使用状況、エンジン回転数、窓開閉状況に応じた最適なマイクロフォンと、このマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータとを記憶部311の選択マイク・指向性定義ファイルから取り込み、音声処理部302に出力する。他の構成は、図2に示す実施の形態1と同様であるため、説明の重複を回避する意味でここではその説明を省略する。
【0055】
図12、図13は、本発明の実施の形態4に係る車載用音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
以下、図12、図13のフローチャートを参照しながら、本発明の実施の形態4に係る車載用音響処理装置の動作について、実施の形態1との差異に着目して説明する。
【0056】
まず、ハンズフリー通話や音声認識が開始されると(ステップST121〜ST125)、エアコン使用状態通知部310、エンジン回転数通知部313、窓開閉状態通知部314のそれぞれは、エンジン系ECU21、電装系ECU22のそれぞれと通信を行い、エアコン使用状況、エンジン回転数、窓開閉状況に関するそれぞれの情報を取り込み、条件判定部308に設定する(ステップST128〜ST130)。
これを受けた条件判定部308は、通知された座席位置、およびエアコン使用状況、エンジン回転数、窓開閉状況、のそれぞれにより車室内音響空間を判定する(ステップST131)。条件判定部308はまた、ここで判定された車室内音響空間に対応した選択マイクロフォン、およびこのマイクロフォンの指向性に関する補正パラメータを、記憶部311に記憶された選択マイク・指向性定義ファイルを参照することによって取り込み(ステップST132)、音声入力部301で取り込んだマイクロフォン音声を音声処理部302で音声処理をする。
【0057】
なお、選択マイク・指向性定義ファイルに設定されてあるマイクロフォンの指向性は、座席毎に、エアコン使用状況、エンジン回転数、窓開閉状況に応じてマイクロフォンの指向性を鋭くし、ハンズフリー通話や音声認識時の発話音声にエアコンや走行騒音、エンジン音の混入を減少させるようになっている。
【0058】
次に、ハンズフリー通話中や音声認識中に、エアコン使用状況、エンジン回転数、窓開閉状況が変更になれば(ステップST140“YES”、ST143“YES”、ST146“YES”)、エアコン使用状態通知部310、エンジン回転数通知部313、窓開閉状態通知部314のそれぞれは、条件判定部308にその旨を通知し、エアコン使用状況、エンジン回転数、窓開閉状況の変更を行う(ステップST141、ST144、ST147)。
【0059】
条件判定部308はまた、通知された座席位置と、エアコン使用状況、エンジン回転数、窓開閉状況から変更後の車室内音響空間を判定する(ステップST148)。
条件判定部308は、判定した車室内音響空間に対応したマイクロフォンの選択と、マイクロフォンの指向性に関する補正パラメータを、記憶部311に記憶された選択マイク・指向性定義ファイルを参照して取り込み、適切なマイクロフォンを選択し、このマイクロフォンの指向性を変更して音声処理部302に引き渡す(ステップST150)。これを受けて音声処理部302は、音声入力部301で取り込んだマイクロフォン音声を、変更した最適なマイクロフォンと、このマイクロフォンの指向性により音声処理を行う。
【0060】
上記した本発明の実施の形態4に係る車載用音響処理装置は、制御手段(条件判定部308、座席位置入力部309、エアコン使用状態通知部310、エンジン回転数通知部313、窓開閉状態通知部314)が、車室内におけるエアコン使用状況、エンジン回転数、窓の開閉状況の少なくとも2つを検知し、検知されたエアコン使用状況、エンジン回転数、窓の開閉状況が車室内音響空間に及ぼす影響の度合いを検知し、記憶部311(選択マイク・指向性定義ファイル)を参照して適切なマイクロフォンを選択し、この選択されたマイクロフォンの指向特性を可変制御するものである。
【0061】
このことにより、ハンズフリー通話や音声認識を行う際に、発話者の座席位置、およびエアコン使用状況、エンジン回転数、車室内窓開閉状況に応じて、最も適切なマイクロフォンを選択することができ、その指向性を最適化することで、相手側に送信される発話者の音声レベルや音声認識率を高める効果が得られる。また、マイクロフォンに入り込むエアコンの風切り音、エンジン音、走行騒音等を減少させる効果があり、結果的に、ハンズフリー通話時の発話者の音声が聴き取りやすくなり、更に、音声認識時の音声認識率も向上する。
具体的に、ハンズフリー通話や音声認識の発話者が運転席以外のいかなる座席で発話した場合にも、ハンズフリー通話時の相手側に送信される発話者音声や音声認識時の発話者音声の音声レベルが小さくならず、更に、エアコンの使用状況、エンジン回転数、窓開閉状況に対して、適切なマイクロフォンを選択し、このマイクロフォンの指向性を調整することで、マイクロフォン音声に含まれるエアコンや走行騒音、エンジン音を減少させることができる。そのため、発話者の通話音声が聴き取りやすくなり、音声認識率を高めることができる。
【0062】
また、ハンズフリー通話時、発話者の座席位置により出力スピーカを変更することにより、発話者には相手側の音声が明瞭に聴こえ、それ以外の乗員には音声が聴き取りにくくなるといった効果も得られる。また、音声認識時、発話者の座席位置により、音声認識ガイダンス音声の出力スピーカ位置を可変とすることで、発話者から最も近くに位置するスピーカからガイダンス音声を流すことができ、したがって、ガイダンス音声を聴き取りやすくする効果も得られる。
【0063】
なお、図2、図5、図8、図11にそれぞれ示す制御手段(条件判定部308、座席位置入力部309、エアコン使用状態通知部310、エンジン回転数通知部313、窓開閉状態通知部314)が有する機能は、全てをソフトウェアによって実現しても、あるいはその少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。
例えば、話者の座席位置と話者が発話したとき車室内音響空間の状態を検知し、記憶手段(記憶部311)を参照して複数のマイクロフォンの中から最適なマイクロフォンを選択し、選択されたマイクロフォンに対応する補正パラメータに基づきマイクロフォンの指向特性を可変制御するデータ処理は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現してもよく、また、その少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 車両、11 運転席、12 助手席、13 後部座席、14、15、16 エアコン吹き出し口、17、18、19、20 窓、21 エンジン系ECU、22 電装系ECU、30 ヘッドユニット、301 音声入力部、302 音声処理部、303 音声出力部、304 音声認識部、305 音声認識ボタン、307 電話制御部、308 条件判定部、309 座席位置入力部、310 エアコン使用状態通知部、311 記憶部、312 スピーカ出力部、313 エンジン回転数通知部、314 窓開閉状態通知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設置された複数のマイクロフォンを備えた車載用音響処理装置であって、
座席位置、および車室内音響空間の状態に基づき選択されるマイクロフォンと、前記選択されたマイクロフォンの指向特性を制御する補正パラメータとが予め記憶された記憶手段と、
話者の座席位置と話者が発話したとき車室内音響空間の状態を検知し、前記記憶手段を参照して前記複数のマイクロフォンの中からマイクロフォンを選択し、前記選択されたマイクロフォンに対応する補正パラメータに基づき前記マイクロフォンの指向特性を可変制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする車載用音響処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
車室内におけるエアコンの使用状態を検知し、前記検知されたエアコンの使用状態が前記車室内音響空間に及ぼす影響の度合いを検知し、前記記憶手段を参照して選択されるマイクロフォンの指向特性を可変制御することを特徴とする請求項1記載の車載用音響処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
エンジン回転数を含む車両状態を検知し、前記検知された車両状態が前記車室内音響空間に及ぼす影響の度合いを検知し、前記記憶手段を参照して選択されたマイクロフォンの指向特性を可変制御することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車載用音響処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
車室内における窓の開閉状態を検知し、前記検知された窓の開閉状態が前記車室内音響空間に及ぼす影響の度合いを検知し、前記記憶手段を参照して選択されたマイクロフォンの指向特性を可変制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載の車載用音響処理装置。
【請求項5】
車室内に設置された複数のスピーカと、
ハンズフリーによる発着信を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
ハンズフリー通話時、話者の座席位置を検出して前記記憶手段を参照し、前記複数のスピーカの中から着信音声を出力するスピーカを選択する、
ことを特徴とする請求項1記載の車載用音響処理装置。
【請求項6】
車室内に設置された複数のスピーカと、
音声認識を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
音声認識時、話者の座席位置を検出して前記記憶手段を参照し、前記複数のスピーカの中から音声認識ガイダンスを出力するスピーカを選択する、
ことを特徴とする請求項1記載の車載用音響処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−283506(P2010−283506A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134073(P2009−134073)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】