説明

車速制限装置

【課題】無用な加減速が生じない車速制限装置を提供する。
【解決手段】車両の走行速度を検出する車速センサ11と、乗員により設定された制限速度を記憶する記憶部15と、乗員のアクセル操作に関わらず走行速度が制限速度以下となるように車速制限制御を行う電子制御装置20と、乗員の操作により車速制限制御を中断する中断スイッチ14と、乗員の操作により車速制限制御を再開する再開/増加スイッチ13と、を備えた車速制限装置1において、乗員の操作により制限速度を変更する制限速度変更手段を備え、電子制御装置20は、走行速度が記憶部15に記憶されている制限速度よりも所定値以上大きいときに制限速度変更手段が操作された場合には、制限速度を制限速度変更手段が操作されたときに車速センサ11により検出された走行速度とほぼ等しい値に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車速制限装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗員のアクセル操作に関わらず、自車両の走行速度が乗員により設定された制限速度を超えないように車速制限制御を行う車速制限装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車速制限装置には、車速制限制御を前回実行した際に設定した制限速度を記憶する記憶手段を備え、車速制限制御再開スイッチにより車速制限制御を再開したときには、前記記憶手段に記憶されている制限速度(以下、前回の制限速度という)に基づいて車速制限制御を実行するように構成されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−294215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図11に示すように、前記車速制限制御再開スイッチにより車速制限制御を再開した後に、乗員が今回の制限速度を、現在の自車両の車速よりも小さく、且つ前回の制限速度よりも大きくしたいと希望する場合がある。この場合、乗員は制限速度増減スイッチを操作して今回希望する制限速度に変更する。
【0006】
この制限速度増減スイッチが、変更前の制限速度を基準にして、制限速度増減スイッチを一操作する毎に一定値だけ増減するように構成されていた場合、変更前の制限速度と今回希望する制限速度との偏差が大きいと、変更操作にある程度の時間がかかる。
【0007】
しかしながら、乗員が制限速度の変更操作をしている間も車速制限制御が実行されているため、変更操作をしている間に自車両の走行速度が一時的に今回希望する制限速度よりも低下し、その後、変更後の制限速度まで加速していくという無用な加減速が生じる場合がある。
このような無用な加減速は、燃費の悪化を招くだけでなく、乗員に違和感を感じさせるという課題があった。
【0008】
そこで、この発明は、制限速度を変更しても無用な加減速が生じない車速制限装置を提供するものである
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る車速制限装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両の走行速度を検出する走行速度検出手段(例えば、後述する実施例における車速センサ11)と、乗員により設定された制限速度を記憶する制限速度記憶手段(例えば、後述する実施例における記憶部15)と、乗員のアクセル操作に関わらず前記走行速度検出手段により検出される走行速度が前記制限速度以下となるように車速制限制御を行う車速制限手段(例えば、後述する実施例における電子制御装置20)と、乗員の操作により車速制限制御を中断する車速制限制御中断手段(例えば、後述する実施例における中断スイッチ14)と、乗員の操作により車速制限制御を再開する車速制限制御再開手段(例えば、後述する実施例における再開/増加スイッチ13)と、を備えた車速制限装置(例えば、後述する実施例における車速制限装置1)において、乗員の操作により制限速度を変更する制限速度変更手段(例えば、後述する実施例における設定/減少スイッチ12、再開/増加スイッチ13、制限速度変更スイッチ19)を備え、前記車速制限手段は、走行速度が前記制限速度記憶手段に記憶されている制限速度よりも所定値以上大きいときに前記制限速度変更手段が操作された場合には、制限速度を該制限速度変更手段が操作されたときに前記走行速度検出手段により検出された走行速度とほぼ等しい値に変更することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記制限速度変更手段は、該制限速度変更手段が操作されたときに前記走行速度検出手段により検出された走行速度と変更前の制限速度との偏差が所定値未満の場合には乗員の操作に応じて制限速度を一定量変化させ、前記制限速度変更手段が操作されたときに前記走行速度検出手段により検出された走行速度と変更前の制限速度との偏差が前記所定値以上の場合には制限速度を前記制限速度変更手段が操作されたときに前記走行速度検出手段により検出された走行速度とほぼ等しい値に変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1および請求項2に係る発明によれば、乗員の所望する制限速度に迅速に変更することができ、無用な加減速を防止することができるので、運転者は違和感を感じなくて済み、燃費も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に関連する技術の参考例の車速制限装置におけるブロック図である。
【図2】前記参考例の車速制限装置における減速抑制制御の一例を示すタイムチャートである。
【図3】前記参考例の車速制限装置における減速抑制制御の他の例を示すタイムチャートである。
【図4】前記参考例の車速制限装置における減速抑制制御の別の例を示すタイムチャートである。
【図5】前記参考例の車速制限装置における車速制限制御のフローチャートである。
【図6】この発明に係る車速制限装置の実施例1におけるブロック図である。
【図7】実施例1の車速制限装置における制限速度変更制御のフローチャート(その1)である。
【図8】実施例1の車速制限装置における制限速度変更制御のフローチャート(その2)である。
【図9】実施例1の車速制限装置における制限速度変更制御の一例を示すタイムチャートである。
【図10】この発明に係る車速制限装置の実施例2におけるブロック図である。
【図11】従来の車速制限装置における車速制限制御のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明に係る車速制限装置の実施例を図6から図10の図面を参照して説明する。
<参考例>
初めに、この発明に係る車速制限装置に関連する技術の参考例を図1から図5の図面を参照して説明する。
参考例における車速制限装置1は車両に搭載され、図1のブロック図に示すように、車速センサ(走行速度検出手段)11と、設定/減少スイッチ(制限速度減少手段)12と、再開/増加スイッチ(車速制限制御再開手段、制限速度増加手段)13と、中断スイッチ(車速制限制御中断手段)14と、記憶部(制限速度記憶手段)15と、加速装置16と、減速装置17と、制限速度表示装置18と、電子制御装置(車速制限手段)20と、を備えている。
車速センサ11は、自車両の走行速度を検出し、検出結果に応じた出力信号を電子制御装置20へ出力する。
【0014】
設定/減少スイッチ12は、制限速度設定用のスイッチと、制限速度を減少するスイッチとを兼ねたものである。
車速制限制御を実行していないときに運転者(乗員)が設定/減少スイッチ12を操作すると、その出力信号が電子制御装置20へ出力され、電子制御装置20においてその時点における自車両の走行速度が制限速度として設定され、設定された制限速度に基づいて車速制限制御が実行される。
一方、車速制限制御が実行されているときに運転者が設定/減少スイッチ12を操作すると、その出力信号が電子制御装置20へ出力され、電子制御装置20において設定/減少スイッチ12の1回の操作に対して一定値(例えば1km/h)ずつ制限速度を減少する処理が実行される。
【0015】
中断スイッチ14は、実行されている車速制限制御を停止し、車速制限を行わない走行に戻すときに操作するスイッチであり、運転者が中断スイッチ14を操作すると、その出力信号が電子制御装置20へ出力される。
【0016】
再開/増加スイッチ13は、車速制限制御再開スイッチと、制限速度を増加するスイッチとを兼ねたものである。
中断スイッチ14により車速制限制御を停止した後に、運転者がこの再開/増加スイッチ13を操作すると、その出力信号が電子制御装置20へ出力され、電子制御装置20において、車速制限制御を停止する前に設定されていた制限速度が再び制限速度に設定され、設定された制限速度に基づいて車速制限制御が実行される。
【0017】
一方、車速制限制御実行中に運転者が再開/増加スイッチ13を操作すると、その出力信号が電子制御装置20へ出力され、電子制御装置20において再開/増加スイッチ13の1回の操作に対して一定値(例えば1km/h)ずつ制限速度を増加する処理が実行される。
つまり、設定/減少スイッチ12と再開/増加スイッチ13の操作により運転者は制限速度を所望の値に設定することができる。
【0018】
記憶部15は、設定/減少スイッチ12や再開/増加スイッチ13の操作に基づいて電子制御装置20において設定された最新の制限速度を記憶する。また、再開/増加スイッチ13の操作により車速制限制御が再開されたときには、記憶部15に記憶された制限速度が読み出され、車速制限制御再開時の制限速度として電子制御装置20へ出力される。
【0019】
電子制御装置20は、制限速度設定部21と、判定時間設定部22と、車速制限制御部23とを備えている。
制限速度設定部21は、設定/減少スイッチ12、再開/増加スイッチ13、車速センサ11、記憶部15からの入力信号等に基づいて制限速度を設定する。
判定時間設定部22は、車速制限制御再開時に後述する判定時間を設定および変更する。
【0020】
車速制限制御部23は、車速センサ11、制限速度設定部21、判定時間設定部22からの入力信号等に基づいて、運転者のアクセル操作に関わらず、車速センサ11により検出される自車両の走行速度が、制限速度設定部21において設定された制限速度以下となるように車速制限制御を行う。
【0021】
詳述すると、車速制限制御部23は、運転者によりアクセルペダルの踏み込み操作があった場合に、自車両の走行速度が制限速度を超えないようにエンジン(図示略)の出力制限制御による駆動力制御を行ったり、自車両の走行速度が制限速度を超えているときには、エンジンの出力制限制御による駆動力制御(駆動力ゼロを含む)を行う。なお、必要に応じてブレーキ圧制御などによる制動制御を行って自車両を減速させる制御を行ってもよい。
加速装置16は例えばエンジンへの燃料供給装置などから構成され、減速装置17は例えばブレーキ装置などから構成されており、いずれも電子制御装置20の車速制限制御部23からの指令信号に従って制御される。
【0022】
制限速度表示装置18は、電子制御装置20からの入力信号に基づいて、設定された制限速度を表示する。制限速度表示装置18は、例えば独立した表示装置として速度計などと並べて配置されていてもよいし、速度計に併設されていてもよく、また、デジタルあるいはアナログのいずれの表示方式も採用可能である。
【0023】
前述したように、この車速制限装置1では、再開/増加スイッチ13を操作して車速制限制御を再開したときには、記憶部15に記憶されている前回の制限速度(換言すると、前回の車速制限制御を中断する直前における制限速度)が今回の制限速度として設定される。
このように再開/増加スイッチ13の操作により車速制限制御を再開した直後に、運転者が制限速度を、現在の自車両の走行速度よりも小さく且つ前回の制限速度よりも大きい速度に変更したいと希望する場合がある。このときには、制限速度表示装置18に表示される制限速度が所望する制限速度に一致するまで、運転者は再開/増加スイッチ13の操作を繰り返す。
【0024】
従来は、このように制限速度を増加する操作をしているときも、この変更中の制限速度に基づいて車速制限制御を実行していたため、前述したように自車両の走行速度が今回変更しようとしている制限速度よりも低下し、その後、変更後の制限速度まで加速していくという無用な加減速が生じる場合があった。
【0025】
そこで、この車速制限装置1では、車速制限制御を再開した時に車速センサ11により検出された自車両の車速(走行速度)が、記憶部15に記憶されていた前回の制限速度よりも所定値以上(例えば、5km/h以上)大きい場合には、車速制限制御を再開してから所定の時間(以下、判定時間という)が経過するまでの間は自車両の減速を抑制する制御(以下、減速抑制制御という)を行うことにより、運転者が再開/増加スイッチ13を操作して制限速度を増加させている間に自車両の走行速度が、運転者が今回変更しようとしている制限速度よりも低下するのを防止し、無用な加減速が行われないようにした。また、判定時間を設けることにより、制限速度の変更操作の時間を確保できるようにした。
そして、車速制限制御を再開してから前記判定時間が経過した後は、通常の車速制限制御に戻すことにより、自車両の走行速度が速やかに変更後の制限速度以下となるようにする。
【0026】
前記減速抑制制御としては次の第1から第3の3つの制御方法があるが、参考例では第1の制御方法と第2の制御方法のいずれかの制御方法を採用することができる。
第1の制御方法は、図2に示すように、再開/増加スイッチ13を操作して車速制限制御を再開してから前記判定時間が経過するまでは、車速制限制御再開時に車速センサ11によって検出された自車両の車速(走行速度)を仮の制限速度とし、この仮の制限速度に基づいて車速制限制御を行う。
【0027】
第2の制御方法は、図3に示すように、再開/増加スイッチ13を操作して車速制限制御を再開してから前記判定時間が経過するまでは、時々刻々に車速センサ11により検出される自車両の車速(走行速度)を仮の制限速度とし、この仮の制限速度に基づいて車速制限制御を行う。このように制限速度を設定した場合には、実質的には制限制御を行わないのと同じとなる。
【0028】
第3の制御方法は、図4に示すように、再開/増加スイッチ13を操作して車速制限制御を再開してから前記判定時間が経過するまでは、車速制限制御における通常の減速度よりも小さい減速度により車速制限制御を行う。例えば、自車両の車速が前回の制限速度よりも大きいときに、通常制御時には減速度を例えば0.1Gとして減速制御を行うのに対して、減速抑制制御時には減速度を例えば0.025Gとして減速制御を行う。なお、これら減速度の数値(0.1G,0.025G)はあくまでも例示である。
また、通常の減速度よりも小さい減速度により車速制限制御を行う際に、小さい減速度に基づいて仮の制限速度を算出し、該仮の制限速度に基づいて車速制限制御を行ってもよい。
【0029】
また、減速抑制制御時の前記減速度は、車速センサ11により検出される自車両の車速(走行速度)と前回の制限速度との偏差、または自車両の加減速度、または運転者による加減速操作の有無もしくは加減速操作量の少なくともいずれか一つに基づいて変更することが可能である。
例えば、自車両の走行速度と前回の制限速度との偏差が大きいほど減速度を小さくする。
また、自車両が加速しているときには減速度を小さくし、減速しているときには減速度を通常制御時の減速度とする。
また、運転者による加速操作(例えばアクセルペダルの踏み込みなど)が検出されたときには減速度を小さくし、その加速操作量が大きいほど減速度を小さくする。一方、運転者による減速操作(例えばアクセルペダルの踏み込みがないことやブレーキペダルの踏み込みなど)が検出されたときには減速度を通常制御時の減速度とする。
【0030】
これは次の理由による。運転者による減速操作中(あるいは車両の減速中)は運転者に減速意志があると推定されるため通常の減速度による減速制御としても、運転者は違和感を感じない。一方、運転者による加速操作中(あるいは車両の加速中)は運転者に減速意志があるとは考えられにくいため、この場合には判定時間中の減速制御を緩やかなものとし(減速度を小さくし)、これにより運転者に違和感を感じさせないようにしつつ減速制御を行う。
【0031】
また、前記判定時間(換言すると、減速抑制制御の実行期間)は、車速センサ11により検出される自車両の車速(走行速度)と前回の制限速度との偏差、または自車両の加減速度、または運転者による加減速操作の有無もしくは加減速操作量の少なくともいずれか一つに基づいて変更することが可能である。
例えば、自車両の走行速度と前回の制限速度との偏差が大きいほど判定時間を長くする。
また、自車両が加速しているときには判定時間を長くし、減速しているときには判定時間を短くする。
また、運転者による加速操作(例えばアクセルペダルの踏み込みなど)が検出されたときには判定時間を長くし、その加速操作量が大きいほど判定時間を長くする。一方、運転者による減速操作(例えばアクセルペダルの踏み込みがないことやブレーキペダルの踏み込みなど)が検出されたときには判定時間を短くする。
【0032】
これは次の理由による。運転者による減速操作中(あるいは車両の減速中)は運転者に減速意志があると推定されるため通常の減速制御としても、運転者は違和感を感じない。一方、運転者による加速操作中(あるいは車両の加速中)は運転者に減速意志があるとは考えられにくいので、この場合には減速制御を緩やかなものとするために判定時間を通常よりも長くし、これにより運転者に違和感を感じさせないようにしつつ減速制御を行う。
【0033】
また、運転者により再開/増加スイッチ13が操作されることにより車速制限制御が再開されてから判定時間内に、再び運転者により再開/増加スイッチ13が操作されて制限速度を増加する操作が行われた場合には、判定時間を延長するようにしてもよい。このように判定時間を延長することによって、運転者が制限速度を増加させる場合にも、自車両の車速が運転者が今回変更しようとしている制限速度よりも低下するのを確実に防止することができる。
【0034】
また、運転者により再開/増加スイッチ13が操作されることにより車速制限制御が再開されてから判定時間内に、運転者により設定/減少スイッチ12が操作されて制限速度を減少する操作が行われた場合には、判定時間を短縮するようにしてもよい。運転者が設定/減少スイッチ12を操作して制限速度を減少させているということは、運転者は自車両の車速をより低い値に制限したいと考えているので、自車両の車速が運転者が今回変更しようとしている制限速度よりも低下するのを防止する必要がなく、したがって判定時間を短縮することが可能である。また、判定時間を短縮することにより、自車両の車速を速やかに制限速度以下に制御することができる。
【0035】
次に、車速制限制御を図5のフローチャートに従って説明する。図5のフローチャートに示す車速制限制御ルーチンは、電子制御装置20によって一定時間毎に繰り返し実行される。
【0036】
まず、ステップS101において、再開/増加スイッチ13が操作されることにより車速制限制御が再開されたか否かを判定する。
ステップS101における判定結果が「YES」である場合には、ステップS102に進み、再開時に車速センサ11により検出された自車両の車速(すなわち、車速制限制御再開時の自車両の走行速度)Vsと再開時に記憶部15から読み出され設定された制限速度(すなわち、前回車速制限制御終了時の制限速度)Lrとの速度偏差ΔV(ΔV=Vs−Lr)が予め設定された閾値A(例えば5km/h)よりも大きいか否かを判定する。
【0037】
ステップS102における判定結果が「NO」(ΔV≦A)である場合には、減速抑制制御を行う必要がないので、ステップS103に進み、判定時間Tをゼロに設定してステップS108に進む。
ステップS102における判定結果が「YES」(ΔV>A)である場合には、ステップS104に進み、自車両の走行状態が減速状態か、定速状態か、加速状態かを判定する。
【0038】
ステップS104において自車両が減速状態であると判定された場合には、ステップS105に進み、判定時間Tとして第1の判定時間ts(例えば1秒)を設定し、ステップS108に進む。
ステップS104において自車両が定速状態であると判定された場合には、ステップS106に進み、判定時間Tとして第2の判定時間tm(例えば2秒)を設定し、ステップS108に進む。
ステップS104において自車両が加速状態であると判定された場合には、ステップS107に進み、判定時間Tとして第3の判定時間tl(例えば4秒)を設定し、ステップS108に進む。
【0039】
ここで、第2の判定時間tmは第1の判定時間tsよりも大きい値に設定し、第3の判定時間tlは第2の判定時間tmよりも大きい値に設定する。これは、前述したように、運転者に減速意志があるときには減速制御を緩やかにしなくても運転者は違和感を感じないのに対して、運転者に加速意志があるときには判定時間を通常よりも長くして減速制御を緩やかにしないと、運転者が違和感を感じるからである。
【0040】
一方、ステップS101における判定結果が「NO」(再開でない)である場合には、ステップS102〜S107の処理を実行することなく、ステップS108に進む。
なお、ステップS101において肯定(YES)判定されるのは、図5に示される車速制限制御ルーチンの初回実行時だけであり、再開/増加スイッチ13により車速制限制御が再開された場合であっても、図5に示される車速制限制御ルーチンの2回目以降における実行ではステップS101において否定(NO)判定される。換言すると、ステップS102〜S107の処理は図5に示される車速制限制御ルーチンの初回実行時にのみ実行される。
【0041】
ステップS108では判定時間Tが0より大きいか否かを判定する。
ステップS108における判定結果が「YES」(T>0)である場合には、ステップS109に進み、制限速度の変更があったか否か、すなわち設定/減少スイッチ12または再開/増加スイッチ13が操作されたか否かを判定する。
【0042】
ステップS109において制限速度を減少していると判定された場合には、ステップS110に進み、判定時間Tをゼロにする。これは、前述したように、運転者は今回の制限速度を前回の制限速度よりも低い値にしようとしているので、自車両の車速が今回の制限速度よりも低下するのを防止する必要がなく、したがって判定時間を短縮しても何ら問題がないからであり、自車両の車速を速やかに今回の制限速度以下に制御するためである。
そして、ステップS110からステップS111に進み、通常の車速制限制御を実行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。ここで、通常の車速制限制御とは、運転者により設定された制限速度(変更前の制限速度あるいは変更後の制限速度)に基づく車速制限制御を言う。
【0043】
また、ステップS109において制限速度を増加していると判定された場合には、ステップS112に進み、判定時間Tに所定の延長時間ta(例えば1秒)を加算することにより判定時間Tを延長する。この判定時間Tの延長処理は、再開/増加スイッチ13が操作されている間、繰り返し実行される。
そして、ステップS112からステップS113に進み、減速抑制制御を実行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。減速抑制制御は、前述した第1の制御方法(制限制御再開時の自車両の車速を仮の制限速度とする制御方法)、第2の制御方法(現在の自車両の車速を仮の制限速度とする制御方法))のいずれの制御方法であってもよい。
【0044】
ステップS109において制限速度を変更していないと判定された場合には、ステップS114に進み、判定時間Tから一定時間td(例えば 0.1秒)を減算した値を判定時間Tに設定する。
そして、ステップS114からステップS113に進み、減速抑制制御を実行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
また、ステップS108における判定結果が「NO」(T≦0)である場合には、ステップS111に進み、通常の車速制限制御を実行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0045】
<実施例1>
次に、この発明に係る車速制限装置1の実施例1を図6〜図9を参照して説明する。
前述した参考例では、車速制限制御再開直後に制限速度を増加する操作をしている間に自車両の走行速度が今回変更しようとしている制限速度よりも低下するのを防止するために、判定時間と減速抑制制御を採用したが、この実施例1では、設定/減少スイッチ12と再開/増加スイッチ13の制限速度変更時の機能を切り替え可能にすることで、運転者が所望する制限速度に極めて短時間で変更することができるようにし、これにより無用な加減速を防止することができるようにした。
【0046】
実施例1における車速制限装置1の構成を図6に示す。実施例1における車速制限制御1が参考例の車速制限装置1と相違する点は、電子制御装置20が判定時間設定部22を備えていない点と、設定/減少スイッチ12と、再開/増加スイッチ13の機能にあり、その他の構成は参考例の車速制限装置1と同じである。
【0047】
以下、設定/減少スイッチ12と再開/増加スイッチ13の機能について説明する。
実施例1における設定/減少スイッチ12は、制限速度設定用スイッチと、制限速度減少用スイッチとを兼ねている点は参考例の場合と同じであるが、実施例1では、制限速度減少用スイッチとして操作する場合に、操作時の自車両の走行速度と変更前の制限速度との速度偏差の大きさに応じて、変更値を異にする。
【0048】
詳述すると、設定/減少スイッチ12を制限速度減少用スイッチとして操作されたときに、自車両の走行速度と変更前の制限速度との偏差が所定値未満の場合には、1回の操作によって制限速度を一定値だけ減少するようにし、自車両の走行速度と変更前の制限速度との偏差が前記所定値以上の場合には設定/減少スイッチ12を操作したときの自車両の走行速度とほぼ等しい値に制限速度を変更する。
【0049】
図7のフローチャートに従って、設定/減少スイッチ12の制限速度変更制御を説明する。
まず、ステップS201において、設定/減少スイッチ12の操作が車速制限制御中における操作か否かを判定する。
ステップS201における判定結果が「NO」である場合には、設定/減少スイッチ12は制限速度設定用スイッチとして操作されているので、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0050】
ステップS201における判定結果が「YES」である場合には、ステップS202に進み、車速センサ11により検出された現在の自車両の車速(実車速)Vと変更前の制限速度VLimとの速度偏差ΔV(ΔV=V−VLim)が、予め設定された閾値A(例えば5km/h)よりも大きいか否かを判定する。
ステップS202における判定結果が「YES」(ΔV>A)である場合には、ステップS203に進み、現在の車速Vから所定値Va(例えば1km/h)を減算した値を制限速度VLimとして設定し(VLim=V−Va)、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、ステップS202における判定結果が「NO」(ΔV≦A)である場合には、ステップS204に進み、変更前の制限速度VLimから一定値(例えば1km/h)を減算した値を制限速度VLimとして設定し(VLim=VLim−1km/h)、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0051】
また、実施例1における再開/増加スイッチ13は、車速制限制御再開スイッチと、制限速度増加用スイッチとを兼ねている点は参考例の場合と同じであるが、実施例1では、制限速度増加用スイッチとして操作する場合に、操作時の自車両の走行速度と変更前の制限速度との速度偏差の大きさに応じて、変更値を異にする。
【0052】
詳述すると、再開/増加スイッチ13を制限速度増加用スイッチとして操作されたときに、自車両の走行速度と変更前の制限速度との偏差が所定値未満の場合には、1回の操作によって制限速度を一定値だけ増加するようにし、自車両の走行速度と変更前の制限速度との偏差が前記所定値以上の場合には再開/増加スイッチ13を操作したときの自車両の走行速度とほぼ等しい値に制限速度を変更する。
【0053】
図8のフローチャートに従って、再開/増加スイッチ13の制限速度変更制御を説明する。
まず、ステップS301において、再開/増加スイッチ13の操作が車速制限制御中における操作か否かを判定する。
ステップS301における判定結果が「NO」である場合には、再開/増加スイッチ13は車速制限制御再開スイッチとして操作されているので、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0054】
ステップS301における判定結果が「YES」である場合には、ステップS302に進み、車速センサ11により検出された現在の自車両の車速(実車速)Vと変更前の制限速度VLimとの速度偏差ΔV(ΔV=V−VLim)が、予め設定された閾値A(例えば5km/h)よりも大きいか否かを判定する。
ステップS302における判定結果が「YES」(ΔV>A)である場合には、ステップS303に進み、現在の車速Vに所定値Va(例えば1km/h)を加算した値を制限速度VLimとして設定し(VLim=V+Va)、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、ステップS302における判定結果が「NO」(ΔV≦A)である場合には、ステップS304に進み、変更前の制限速度VLimに一定値(例えば1km/h)を加算した値を制限速度VLimとして設定し(VLim=VLim+1km/h)、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0055】
図9は、自車両の走行速度Vと変更前の制限速度VLimとの偏差が閾値A以上あるときに、再開/増加スイッチ13を制限速度増加用スイッチとして操作した場合の制限速度の変化の様子を示している。
【0056】
このようにすると、運転者が所望する制限速度に極めて短時間で変更することができ、これにより、無用な加減速を防止することができる。その結果、運転者は違和感を感じなくて済み、燃費も向上する。
【0057】
<実施例2>
次に、この発明に係る車速制限装置1の実施例2を図10を参照して説明する。
前述した実施例1では、設定/減少スイッチ12と再開/増加スイッチ13の制限速度変更時の機能を切り替え可能にしたが、実施例2では、設定/減少スイッチ12と再開/増加スイッチ13の機能は参考例の場合と同様とし、その代わりとして、制限速度変更用のスイッチを別に設けることで、運転者が所望する制限速度に極めて短時間で変更することができるようにした。
【0058】
実施例2における車速制限装置1の構成を図10に示す。実施例2における車速制限制御1が参考例の車速制限装置1と相違する点は、電子制御装置20が判定時間設定部22を備えていない点と、制限速度変更スイッチ19を備えている点であり、その他の構成は参考例の車速制限装置1と同じである。
【0059】
実施例2においては、再開/増加スイッチ13の操作により車速制限制御を再開した後に、この制限速度変更スイッチ19を操作すると、この操作時に車速センサ11で検出された自車両の車速とほぼ等しい値に制限速度を設定することができるようにされている。
【0060】
このようにすると、運転者が所望する制限速度に極めて短時間で変更することができ、これにより無用な加減速を防止することができる。その結果、運転者は違和感を感じなくて済み、燃費も向上する。
【0061】
なお、制限速度変更スイッチ19の操作による制限速度変更後は、設定/減少スイッチ12あるいは再開/増加スイッチ13を操作することにより制限速度の微調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車速制限装置
11 車速センサ(走行速度検出手段)
12 設定/減少スイッチ(制限速度変更手段、制限速度減少手段)
13 再開/増加スイッチ(車速制限制御再開手段、制限速度変更手段、制限速度増加手段)
14 中断スイッチ(車速制限制御中断手段)
15 記憶部(制限速度記憶手段)
19 制限速度変更スイッチ(制限速度変更手段)
20 電子制御装置(車速制限手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行速度を検出する走行速度検出手段と、
乗員により設定された制限速度を記憶する制限速度記憶手段と、
乗員のアクセル操作に関わらず前記走行速度検出手段により検出される走行速度が前記制限速度以下となるように車速制限制御を行う車速制限手段と、
乗員の操作により車速制限制御を中断する車速制限制御中断手段と、
乗員の操作により車速制限制御を再開する車速制限制御再開手段と、
を備えた車速制限装置において、
乗員の操作により制限速度を変更する制限速度変更手段を備え、
前記車速制限手段は、走行速度が前記制限速度記憶手段に記憶されている制限速度よりも所定値以上大きいときに前記制限速度変更手段が操作された場合には、制限速度を該制限速度変更手段が操作されたときに前記走行速度検出手段により検出された走行速度とほぼ等しい値に変更することを特徴とする車速制限装置。
【請求項2】
前記制限速度変更手段は、該制限速度変更手段が操作されたときに前記走行速度検出手段により検出された走行速度と変更前の制限速度との偏差が所定値未満の場合には乗員の操作に応じて制限速度を一定量変化させ、前記制限速度変更手段が操作されたときに前記走行速度検出手段により検出された走行速度と変更前の制限速度との偏差が前記所定値以上の場合には制限速度を前記制限速度変更手段が操作されたときに前記走行速度検出手段により検出された走行速度とほぼ等しい値に変更することを特徴とする請求項1に記載の車速制限装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−136218(P2012−136218A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−50498(P2012−50498)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【分割の表示】特願2007−202948(P2007−202948)の分割
【原出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】