説明

車高調整装置

【課題】主通路に設けられたシステム圧センサにより高圧タンク内の圧力を検出する場合に、高圧タンクの圧力低下を抑制する。
【解決手段】車高調整中ではなく、かつ、高圧タンク内圧力取得条件が満たされた場合に、コンプレッサ80を作動させることにより主通路68の圧力を上限圧まで高くする。その後、タンクバルブ92を開状態に切り換え、その開状態におけるシステム圧センサ96による検出値に基づいて高圧タンク内の圧力を検出する。高圧タンク内の圧力は上限圧以下にあるのが普通であるため、タンクバルブ92が開状態にされた場合に、高圧タンク82からの流体の流出を防止し、圧力が低下することを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)主通路と、(b)複数の車輪の各々に対応して、それぞれの車輪保持装置と車体との間に設けられ、前記主通路に接続された複数の流体アクチュエータと、(c)前記主通路に接続されたコンプレッサと、前記主通路に、少なくとも閉状態と開状態とに切り換え可能な蓄圧制御弁を介して接続され、流体を加圧した状態で蓄える高圧タンクとを含む高圧源と、(d)その高圧源から、前記主通路を経て前記複数の流体アクチュエータのうちの1つ以上各々への流体の供給を制御するとともに、前記複数の流体アクチュエータのうちの1つ以上各々からの流体の流出を制御することにより、前記複数の車輪の各々における、前記車輪保持装置と前記車体の前記流体アクチュエータに対応する部分との間の距離である車高をそれぞれ調整する流入・流出制御装置と、(e)前記主通路に設けられた流体圧センサとを含む車高調整装置における高圧タンク内の流体の圧力の検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上述の(a)主通路、(b)複数の流体アクチュエータ、(c)高圧源、(d)流入・流出制御装置および(e)流体圧センサを含む車高調整装置が記載されている。この車高調整装置においては、車高調整において流体アクチュエータに高圧のエアが供給された後の蓄圧制御弁の開状態における流体圧センサによる検出値に基づいて高圧タンク内の流体の圧力が検出される。
【特許文献1】特開2001−246919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、車高調整中ではない場合に、高圧タンク内の圧力を取得する場合に、高圧タンク内の流体の圧力低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0004】
請求項1に記載の車高調整装置は、前述の(a)主通路、(b)複数の流体アクチュエータ、(c)高圧源、(d)流入・流出制御装置、(f)前記主通路に設けられた流体圧センサを含み、前記流入・流出制御装置による車高調整中ではなく、かつ、予め定められた高圧タンク圧取得条件が満たされた場合に、前記コンプレッサを作動させて前記主通路の圧力を大気圧より高くした後に、前記蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換え、それの開状態における前記流体圧センサによる検出値に基づいて前記高圧タンク内の流体の圧力を取得するタンク圧取得装置を含むものとされる。
【0005】
本項に記載の車高調整装置においては、車高調整中ではなく、かつ、予め定められた高圧タンク圧取得条件が満たされた場合に、コンプレッサを作動させて主通路の圧力を大気圧より高くする。その状態で、蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換え、その開状態において、流体圧センサによる検出値が取得され、その検出値に基づいて高圧タンクに蓄えられる流体の圧力が取得される。
本項に記載の車高調整装置においては、流体圧センサが主通路に設けられる。そのため、高圧タンク内の流体の圧力を検出するためには蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換える必要がある。主通路の圧力が大気圧にある場合に、蓄圧制御弁が閉状態から開状態に切り換えられると、高圧タンクから多量の流体が流出し、高圧タンク内の圧力を蓄圧制御弁が開状態に切り換えられる以前の圧力まで戻すために多くのエネルギが必要となる。そこで、主通路の圧力を大気圧より高くした後に、蓄圧制御弁が閉状態から開状態に切り換えられるようにすれば、大気圧にある場合に開状態に切り換えられる場合より、高圧タンク内の圧力が同じである場合に、高圧タンクから流出する流体の量を少なくすることができ、圧力低下量を小さくすることができる。
【0006】
〔実施例〕において詳述するように、複数の流体アクチュエータの少なくとも1つにおいて流体の流入・流出が開始されてから、個別制御弁、蓄圧制御弁、排気制御弁等の複数の制御弁のうち車高調整に係るものすべてが閉状態に戻される等の終了処理が行われるまでの間を車高調整中であるとする。
高圧タンク圧取得条件は、例えば、(a)予め定められた設定時間に達したこと、(b)運転者によってタンク圧取得指示が出されたこと、(c)車高調整が終了したこと、(d)車高調整装置が異常であると検出されたこと、(e)推定された高圧タンク圧が予め定められた下限値、あるいは、異常判定しきい値以下になったこと、(f)イグニッションスイッチがOFF状態からON状態に切り換わったこと等のうちの1つ以上とすることができる。上述の下限値は、例えば、高圧タンク内の流体の圧力を利用して流体アクチュエータの圧力を高くする場合に低すぎると考えられる圧力とすることができ、異常判定しきい値は、高圧源が異常であると判定される圧力とすることができる。
高圧タンク内の圧力は、車高調整に必要な圧力以上に保たれるようにすることが望ましい。そのため、タンク圧が車高調整に必要な圧力以上に保たれるようにコンプレッサが制御される(以下、タンク圧制御と称する)ことが多い。この場合に、タンク圧制御の開始タイミングになった場合に、高圧タンク圧取得条件が満たされたとする(高圧タンク圧が取得されるようにする)ことができる。例えば、上述の(a)、(c)、(d)、(e)、(f)の少なくとも1つが満たされた場合に開始タイミングであるとすることができる。なお、タンク圧の制御が開始される場合に高圧タンク圧取得条件が満たされたとされる場合には、タンク圧の制御のために高圧タンク圧が取得されると考えることができる。
また、車高調整が終了した場合、特に、車高が高くされた場合には、主通路の圧力が大気圧より高いのが普通であり、この場合に、蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換えて、高圧タンク内の圧力を検出することは妥当なことである。
【0007】
請求項2に記載の車高調整装置においては、前記複数の流体アクチュエータの1つ以上が、それぞれ、前記主通路に、少なくとも閉状態と開状態とに切り換え可能な個別制御弁を介して接続され、前記タンク圧取得装置が、前記複数の個別制御弁が閉状態にある状態で前記コンプレッサを作動させる閉弁時コンプレッサ制御部を含むものとされる。
複数のすべての個別制御弁が閉状態にある場合には高圧源から複数のすべての流体アクチュエータへの流体の流入が阻止される。そこで、高圧タンク圧を取得する場合に、複数のすべての個別制御弁が閉状態にある状態でコンプレッサの作動が開始されるようにすれば、主通路の圧力を速やかに高くすることができ、圧力検出に要する時間を短くすることができる。
【0008】
請求項3に記載の車高調整装置においては、前記タンク圧取得装置が、前記主通路の圧力を、推定される前記高圧タンク内の流体の圧力以上まで高くした後に、前記蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換える推定圧依拠主通路圧制御部を含むものとされる。
主通路の圧力が流体アクチュエータの圧力以上とされれば、蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換えても、流体アクチュエータから主通路に流体が流出することを防止することができ、高圧タンクにおける圧力低下を防止することができる。
高圧タンク内の流体の圧力は、前回の検出値、蓄圧制御弁が開状態にある時間等に基づいて推定したり、タンク圧制御の態様に基づいて推定したりすることができる。高圧タンク内の圧力が、請求項4に記載のタンク圧制御装置によって制御される場合には、高圧タンク内の流体の圧力が設定圧より高くないと推定することができるのであり、主通路の圧力を設定圧以上にすれば、主通路の圧力は高圧タンク内の圧力以上となる。
【0009】
なお、車高調整装置は、前記(a)主通路、(b)複数の流体アクチュエータ、(c)高圧源、(d)流入・流出制御装置に加えて、(g)前記主通路に設けられた流体圧センサを含み、予め定められた高圧タンク圧取得条件が満たされ、かつ、前記主通路の圧力が大気圧より高い場合に、前記蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換え、それの開状態における前記流体圧センサによる検出値に基づいて前記高圧タンク内の流体の圧力を取得するタンク圧取得装置と、(h)そのタンク圧取得装置によって取得されたタンク圧が予め定められた設定圧より低い場合に、前記コンプレッサの作動により、前記高圧タンク内の圧力を設定圧以上に高くするタンク圧制御装置とを含むものとすることができる。
本項に記載の車高調整装置においては、高圧タンク圧取得条件が満たされ、かつ、主通路の圧力が大気圧より高い場合に、蓄圧制御弁が閉状態から開状態に切り換えられることにより、高圧タンク内の圧力が検出される。検出された圧力が設定圧より低い場合には、コンプレッサの作動により設定圧以上にされる。
例えば、車高が高くされた場合(例えば、蓄圧制御弁の閉状態においてコンプレッサの作動により車高が高くされる場合)には、主通路の圧力は大気圧より高くなっているのが普通である。この場合に蓄圧制御弁を開状態に切り換えれば、高圧タンク内の圧力低下を抑制することができる。なお、タンク圧制御装置によって高圧タンク内の圧力が設定圧以上に高くされる際には、流体アクチュエータと主通路との間に設けられた個別制御弁は閉状態とされることが望ましい。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の一実施例である車高調整装置について図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、符号10〜16は、車両に設けられた左右前後の車輪の各々に対応して、それぞれ、車輪保持装置20と車体22との間に設けられた流体アクチュエータとしてのエアばねを示す。本実施例においては、流体としてエアが利用される。エアばね10〜16により、それら車輪保持装置20と車体22のエアばねに対応する部分との間の距離である車高が変更される。
各車輪の各々に対応して、エアばね10〜16と並列にショックアブソーバ30〜36が設けられる。ショックアブソーバ30〜36は、それぞれ、シリンダ本体38が車輪保持装置20に連結され、ピストンロッド40が車体22に連結される。本実施例においては、エアばね10〜16とショックアブソーバ30〜36とが同軸状に設けられる。
エアばね10〜16は、それぞれ、車体22に取り付けられたチャンバ50と、チャンバ50に固定されたダイヤフラム52と、ダイヤフラム52に固定されるとともにショックアブソーバ30〜36のシリンダ本体38と上下方向に相対移動不能に設けられたエアピストン54とを含み、これらによって流体圧室としてのエア室56が形成される。エアばね10〜16の各々のエア室56は、それぞれ、個別通路60〜66によって主通路68に接続される。個別通路60〜66には、それぞれ、個別制御バルブ70〜76が設けられる。個別制御弁70〜76は常閉の電磁開閉弁である。
【0011】
主通路68には、コンプレッサ80、高圧タンク82、排気バルブ84が接続される。コンプレッサ80は電動モータ88を駆動源とし、電動モータ88によりポンプ90が作動させられ、大気から空気を汲み上げて吐出する。高圧タンク82は、コンプレッサ80から供給された圧縮エアを加圧した状態で蓄えるものであり、蓄圧制御弁としてのタンクバルブ92を介して主通路68に接続される。タンクバルブ92は常閉の電磁開閉弁である。排気バルブ84は常閉の電磁開閉弁であり、開状態において主通路68を大気に連通させる。なお、符号94はドライヤを示す。
主通路68には、流体圧センサとしてのシステム圧センサ96が設けられる。
本実施例においては、コンプレッサ80および高圧タンク82等により高圧源98が構成される。
【0012】
車高調整ECU200は、実行部202,記憶部204,入出力部206等を含むコンピュータを主体とするものである。入出力部206には、上述のシステム圧センサ96,複数の各車輪毎に設けられた車高センサ210〜216,車高調整指示スイッチ218,車両の走行状態を検出する走行状態検出装置220、イグニッションスイッチ222等が接続されるとともに、個別制御バルブ70〜76,排気バルブ84,タンクバルブ92の各ソレノイド、電動モータ88等が図示しない駆動回路を介して接続される。車高調整指示スイッチ218は、運転者によって操作されるスイッチで、車高を高くする場合、低くする場合等に操作される。走行状態検出装置220は、車速センサ、ヨーレイトセンサ、操舵角センサ、前後加速度センサ等の少なくとも1つを含み、車両の走行速度を検出したり、車両の旋回状態を検出したり、車両の制動・駆動状態を検出したりする。また、記憶部204には、図2のフローチャートで表される車高調整プログラム、図3のフローチャートで表されるタンク圧取得プログラム等が格納される。
【0013】
本実施例においては、車高調整指示スイッチ218の指示に応じて車高が高くされたり、低くされたりする。また、車両の走行状態に基づいて各車輪毎の車高が調整される。例えば、走行速度が設定速度以上である場合に車高が高くされたり、ロール姿勢やピッチ姿勢を抑制するように各輪の車高が調整されたりする。
例えば、左前輪について車高を高くする場合には、排気バルブ84,個別制御バルブ72〜76を閉状態に保ったまま、タンクバルブ92を開状態とするとともに個別制御バルブ70を開状態とする。高圧タンク82からエアばね10のエア室56に高圧のエアが供給され、車高が高くされる。車高が目標車高に達すると、個別制御バルブ70が閉状態とされ、タンクバルブ92が閉状態とされる。個別制御バルブ70を閉状態とするとともにタンクバルブ92を閉状態とすることを終了処理と称する。車高を高くする場合には、コンプレッサ80が作動させられる場合がある。このようにすれば、車高を速やかに上げることができる。この場合には、終了処理において、コンプレッサ80の作動も停止させられる。車高を低くする場合には、個別制御バルブ70が開状態とされるとともに排気バルブ84が開状態とされる。エアばね10のエア室56からエアが大気に放出されて、車高が低くされる。目標車高に達すると、個別制御バルブ70が閉状態されて排気バルブ84が閉状態とされる。個別制御バルブ70,排気バルブ84を閉状態とすることが終了処理である。
【0014】
図2のフローチャートで表される車高調整プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、車高調整指示スイッチ218の状態が読み込まれ、S2において、走行状態が検出される。これらに基づき、前後左右の各輪のうちの少なくとも1つにおいて、車高調整を行う必要があるか否かが判定される。車高調整を行う必要がある場合には、S3の判定がYESとなり、S4において、車高調整中フラグがセットされ、S5において、前述のように車高調整が行われる。車高調整を行う必要がない場合、車高が目標車高に達した場合には、S3の判定がNOとなり、S6において、前述のように終了処理が行われ、S7において、車高調整中フラグがリセットされる。
【0015】
高圧タンク82に蓄えられた流体圧は、車高を高くする際に利用されるものであるため、車高を高くするために必要な圧力(以下、下限圧と称する)以上に保たれることが望ましい。それに対して、システム圧センサ96は主通路68に設けられているため、高圧タンク内の圧力を検出するためには、タンクバルブ92を閉状態から開状態に切り換える必要がある。主通路68の圧力が大気圧にある場合にタンクバルブ92を閉状態から開状態に切り換えると、高圧タンク82から高圧の流体が多量に流出し、高圧タンク内の圧力が低下し、高圧タンク82の圧力を高くするのに多くのエネルギが必要となる。そこで、本実施例においては、主通路68の圧力が下限圧より高い予め定められた設定圧(以下、上限圧と称する)以上にされた後に、タンクバルブ92が閉状態から開状態に切り換えられる。
【0016】
また、本実施例においては、高圧タンク内の圧力が、上述の下限圧より低くならないようにコンプレッサ80が制御される(以下、タンク圧制御と称する)。このタンク圧制御は、予め定められた開始タイミングに達した場合に実行される。開始タイミングに達した場合に、高圧タンク圧が検出されて、検出された高圧タンク圧が上限圧より低い場合にはコンプレッサ80により上限圧以上とされる。このように、予め定められた開始タイミングに達した場合に高圧タンク圧取得条件が満たされたとされるのであり、本実施例においては、(i)予め定められた設定時間に達したこと、(ii)車高調整が終了したこと、(iii)推定された高圧タンク圧が上述の下限値、あるいは、異常判定しきい値以下になったこと、(iv)イグニッションスイッチ222がOFF状態からON状態に切り換えられたこととのうちの1つ以上が満たされた場合に、高圧タンク内の圧力が検出されて、タンク圧制御が行われる。タンク圧制御により、高圧タンク内の圧力が下限圧より低くなることを回避することができる。
【0017】
図3のフローチャートで表される高圧タンク圧取得プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。
S21において、車高調整中フラグがセット状態にあるか否かが判定され、S22において、上述の高圧タンク圧力取得条件が満たされたか否か(タンク圧制御の開始タイミングになったか否か)が判定される。本実施例においては、車高調整中ではない場合、すなわち、個別制御バルブ70〜76,タンクバルブ92,排気バルブ84がすべて閉状態にあり、かつ、コンプレッサ80が非作動状態にある場合に、高圧タンク内の圧力が検出されるのである。
車高調整中ではなく、かつ、高圧タンク圧力取得条件が満たされた場合に、S23において、コンプレッサ80の作動が開始させられ、S24において、システム圧センサ96により主通路68の流体圧が検出され、S25において、主通路68の流体圧が上限圧以上になったか否かが判定される。上限圧に達した場合には、S26において、タンクバルブ92が閉状態から開状態に切り換えられ、S27において、システム圧センサ96の検出値が読み込まれ、高圧タンク内の圧力が取得される。高圧タンク内の流体の圧力は、システム圧センサ96による検出値としても、検出値に基づいて、例えば、システム圧センサ96と高圧タンク82とを接続する通路の長さや形状等を考慮して取得された値としてもよい。
次に、S28において、高圧タンク82の圧力が上限圧になったか否かが判定される。上限圧に達すると、S29において、コンプレッサ80の作動が停止させられ、S30において、タンクバルブ92が閉状態に切り換えられる。
【0018】
この場合における主通路68,高圧タンク82の圧力は、図4に示すように変化する。S23のコンプレッサ80の作動により、主通路68の圧力は、一点鎖線に示すように増加し、上限圧に達すると、S25において、タンクバルブ92が開状態に切り換えられる。この場合には高圧タンク内の圧力は主通路68の圧力より低いため、主通路68から高圧タンク82に流体が流れ、それによって主通路68の圧力は低下し、高圧タンク内の圧力は高くなる。その後、コンプレッサ80の作動により、主通路68,高圧タンク82の圧力は、両方とも増加させられる。そして、上限圧に達すると、S29,30において、コンプレッサ80が停止させられ、タンクバルブ92が閉状態に切り換えられる。
【0019】
このように、本実施例においては、主通路68の圧力が高くされた状態でタンクバルブ92が開状態に切り換えられるため、主通路68の圧力が大気圧である状態で開状態に切り換えられる場合と比較して高圧タンク82から流出する流体の量を少なくすることができ、圧力低下量を小さくすることができる。
また、本実施例においては、主通路68の圧力が高圧タンク82内の圧力以上とされるため、高圧タンク82からのエアの流出を確実に防止することができる。
さらに、タンクバルブ92の閉状態において主通路68の圧力を大気圧から上限圧まで高くした後にタンクバルブ92を開状態に切り換えて、高圧タンク82の圧力を上限圧まで高くする方が、タンクバルブ92を開状態に切り換えた後に、主通路68および高圧タンク82の圧力を上限圧まで上げるよりコンプレッサ80の作動時間を短くすることができる。吐出圧力が低い場合における方が高い場合よりコンプレッサ80により効率よく圧力を高くすることができるからである。
本実施例においては、個別制御バルブ70〜76,車高調整ECU200の車高調整プログラムを記憶する部分、実行する部分等により流入・流出制御装置が構成され、システム圧センサ96および高圧タンク圧取得プログラムのS21〜30を記憶する部分、実行する部分等によりタンク圧取得装置が構成される。タンク圧取得装置のうちのS21〜23を記憶する部分、実行する部分等により閉弁時コンプレッサ制御部が構成され、S23〜26を記憶する部分、実行する部分等により推定圧依拠主通路圧制御部が構成される。推定圧依拠主通路圧制御部は、設定圧依拠主通路圧制御部でもある。
【0020】
なお、上記実施例においては、高圧タンク圧を取得する場合に、主通路68の圧力が上限圧とされたが、高圧タンク82の圧力を、前回の検出値(前回のタンク圧制御時の圧力であり、上限圧であるとすることができる)およびタンクバルブ92の開状態にある時間等に基づいて推定し、主通路68の圧力が、この推定された圧力以上となるように制御されるようにすることができる。この場合においても、高圧タンク82からのエアの流出を防止することができる。
また、上記実施例においては、高圧タンク内圧力取得条件が、タンク圧を制御するタイミングに達した場合とされたが、そのようにすることは不可欠ではない。任意の高圧タンク内の圧力が必要な場合に同様に取得されるようにすることができる。
さらに、車高調整装置の構造は、上記実施例におけるそれに限らない。例えば、コンプレッサ80の吐出側の電磁開閉弁を設けたり、低圧タンクを設けたりすることもできる。
また、車高調整が終了し、エアばねに高圧のエアが供給された後の、主通路68の圧力が高い状態で、コンプレッサ80を作動させて、主通路68の圧力を上限圧まで高くし、その後に、タンクバルブ92が開状態に切り換えられるようにすることもできる。この場合には、さらに、圧力検出に要する時間を短くすることができる。
その他、本発明は、前述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例である車高調整装置の全体を概念的に示す図である。
【図2】上記車高調整装置の車高調整ECUの記憶部に記憶された車高調整プログラムのを表すフローチャートである。
【図3】上記車高調整ECUの記憶部に記憶された高圧タンク内圧力検出プログラムを表すフローチャートである。
【図4】上記車高調整装置において主通路の圧力、高圧タンク内の圧力の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10〜16:エアばね 68:主通路 70〜76:個別制御バルブ 80:コンプレッサ 82:高圧タンク 92:タンクバルブ 96:システム圧センサ 98:高圧源 200:車高調整ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主通路と、
複数の車輪の各々に対応して、それぞれの車輪保持装置と車体との間に設けられ、前記主通路に接続された複数の流体アクチュエータと、
前記主通路に接続されたコンプレッサと、前記主通路に、少なくとも閉状態と開状態とに切り換え可能な蓄圧制御弁を介して接続され、流体を加圧した状態で蓄える高圧タンクとを含む高圧源と、
その高圧源から、前記主通路を経て前記複数の流体アクチュエータのうちの1つ以上各々への流体の供給を制御するとともに、前記複数の流体アクチュエータのうちの1つ以上各々からの流体の流出を制御することにより、前記複数の車輪の各々における、前記車輪保持装置と前記車体の前記流体アクチュエータに対応する部分との間の距離である車高をそれぞれ調整する流入・流出制御装置と、
前記主通路に設けられた流体圧センサを含み、前記流入・流出制御装置による車高調整中ではなく、かつ、予め定められた高圧タンク圧取得条件が満たされた場合に、前記コンプレッサを作動させて前記主通路の圧力を大気圧より高くした後に、前記蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換え、それの開状態における前記流体圧センサによる検出値に基づいて前記高圧タンク内の流体の圧力を取得するタンク圧取得装置と
を含むことを特徴とする車高調整装置。
【請求項2】
前記複数の流体アクチュエータの1つ以上が、それぞれ、前記主通路に、少なくとも閉状態と開状態とに切り換え可能な個別制御弁を介して接続され、前記タンク圧取得装置が、それら複数の個別制御弁が閉状態にある状態で前記コンプレッサを作動させる閉弁時コンプレッサ制御部を含む請求項1に記載の車高調整装置。
【請求項3】
前記タンク圧取得装置が、前記主通路の圧力を、推定される前記高圧タンク内の流体の圧力以上まで高くした後に、前記蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換える推定圧依拠主通路圧制御部を含む請求項1または2に記載の車高調整装置。
【請求項4】
当該車高調整装置が、前記コンプレッサを作動させることにより、前記高圧タンク内の流体の圧力が予め定められた設定圧より低い状態から前記設定圧に達すると、前記コンプレッサの作動を停止させるタンク圧制御装置を含み、前記タンク圧取得装置が、前記主通路の圧力を、前記設定圧以上まで高くした後に、前記蓄圧制御弁を閉状態から開状態に切り換える設定圧依拠主通路圧制御部を含む請求項3に記載の車高調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−219011(P2006−219011A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34438(P2005−34438)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】