説明

転写用導電性フィルム及びそれを用いた透明導電層が付与された物体

【課題】対象物体の表面に高温高湿環境下においても安定した低い電気抵抗値を有する均一厚みの透明導電層を形成するための転写用導電性フィルムを提供し、それを用いた透明導電層が形成された物体を提供する。
【解決手段】支持体1と、支持体1上の支持体1とは剥離可能な導電層4と、導電層4上の接着剤層5とを少なくとも含む転写用導電性フィルムであって、導電層4は、導電性微粒子の圧縮層であり、接着剤層5は、シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物と、前記シランカップリング剤(S)以外の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性成分(C)とを少なくとも含む接着剤組成物から形成されている転写用導電性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写用導電性フィルム、それを用いた透明導電層が付与された物体に関する。
【0002】
透明導電層は、プラズマディスプレイパネル電極、エレクトロルミネッセンスパネル電極、エレクトロクロミック素子電極、液晶電極、透明面発熱体、タッチパネルのような透明電極として用いることができるほか、透明な電磁波遮蔽膜として用いることができる。
【背景技術】
【0003】
現在、透明導電膜は主にスパッタリング法によって製造されている。スパッタリング法は、ある程度大きな面積のものでも、表面電気抵抗の低い導電膜を形成できる点で優れている。しかし、装置が大掛かりで成膜速度が遅いという欠点がある。
【0004】
塗布法による透明導電膜の製造も試みられている。従来の塗布法では、導電性微粒子がバインダー溶液中に分散された導電性塗料を基板上に塗布して、乾燥し、硬化させ、導電膜を形成する。塗布法では、大面積の導電膜を容易に形成しやすく、装置が簡便で生産性が高く、スパッタリング法よりも低コストで導電膜を製造できるという長所がある。塗布法では、導電性微粒子同士が接触することにより電気経路を形成し導電性が発現される。しかしながら、従来の塗布法で作製された導電膜ではバインダーの存在のために導電性微粒子同士の接触が不十分で、得られる導電膜の電気抵抗値が高い(導電性に劣る)という欠点があり、その用途が限られてしまう。
【0005】
バインダー樹脂を用いない塗布法として、例えば、特開平8−199096号公報には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粉末、溶媒、カップリング剤、金属の有機酸塩もしくは無機酸塩からなる、バインダーを含まない導電膜形成用塗料をガラス板に塗布し、300℃以上の温度で焼成する方法が開示されている。この方法では、バインダーを用いないので、導電膜の電気抵抗値は低くなる。しかしながら、高温での焼成が必要であり、基材としては、ガラス板のように高温にも耐え得る材料のものに限られてしまう。
【0006】
特開平6−103839号公報には、透明導電性基板を転写によって製造する方法が開示されている。
【0007】
WO01/87590号公報には、対象物体表面上に透明導電層を形成するための転写用導電性フィルムが開示されている。転写用導電性フィルムの導電層は、導電性微粒子を圧縮することにより形成されたものである。
【0008】
WO2005/022559号公報には、対象物体表面上に透明導電層を形成するための転写用導電性フィルムが開示されている。転写用導電性フィルムの導電層は、導電性微粒子を圧縮することにより形成され、導電性微粒子の間隙には、導電性の金属酸化物に転換されるべき有機基含有金属酸化物が含浸されている。導電層が対象物体表面上に転写された後、有機基含有金属酸化物は導電性の金属酸化物に転換される。
【0009】
特開2006−12737号公報には、対象物体表面上に透明導電層を形成するための転写用導電性フィルムが開示されている。転写用導電性フィルムは、支持体上に導電性ポリマー樹脂層を有し、前記導電性ポリマー樹脂層上に導電性微粒子の圧縮層からなる透明導電層を有し、前記導電層上にさらに接着剤層を有しており、前記導電性ポリマー樹脂層は前記透明導電層と共に、前記支持体とは剥離可能に設けられている。この転写用導電性フィルムを用いると、物体表面に接着層を有し、前記接着層上に導電性微粒子の圧縮層からなる透明導電層を有し、前記透明導電層上にさらに導電性ポリマー樹脂層を有する、透明導電層が付与された物体が得られる。
【0010】
【特許文献1】特開平8−199096号公報
【特許文献2】特開平6−103839号公報
【特許文献3】WO01/87590号公報
【特許文献4】WO2005/022559号公報
【特許文献5】特開2006−12737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
塗布により形成された導電性微粒子からなる導電層は、空気中の水分により、その電気抵抗値が上昇する傾向がある。これは、導電性微粒子の表面に水和物、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)の場合には水和物In(OH)3 が発生するためと考えられる。電気抵抗値の変化が大きすぎると、そのような導電層を空気に曝露されるような環境下で使用すること、例えば、空気に曝露されるような構造の電極として使用することはできない。上記特開2006−12737号公報によれば、この問題を解決するための一つの提案がなされている。
【0012】
本発明の目的は、対象物体の表面に高温高湿環境下においても安定した低い電気抵抗値を有する均一厚みの透明導電層を形成するための転写用導電性フィルムを提供することにある。また、本発明の目的は、物体の表面に高温高湿環境下においても安定した低い電気抵抗値を有する均一厚みの透明導電層が形成された物体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、転写用導電性フィルムにおいて、導電性微粒子の圧縮層からなる導電層の上に設ける接着剤層に、シランカップリング剤と、前記シランカップリング剤以外の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性成分とを含有させることによって、高温高湿環境下においても経時安定性に優れる透明導電層が得られることを見いだした。
【0014】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) 支持体と、前記支持体上の前記支持体とは剥離可能な導電層と、前記導電層上の接着剤層とを少なくとも含む転写用導電性フィルムであって、
前記導電層は、導電性微粒子の圧縮層であり、
前記接着剤層は、シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物と、前記シランカップリング剤(S)以外の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性成分(C)とを少なくとも含む接着剤組成物から形成されている、転写用導電性フィルム。
【0015】
前記導電性微粒子の圧縮層は、導電性微粒子を分散した液を支持体上に、塗布、乾燥して形成された導電性微粒子含有層を圧縮することにより得ることができる。前記導電性微粒子の圧縮層は、44N/mm2 以上の圧縮力で圧縮することにより得られたものであることが好ましい。
【0016】
前記転写用導電性フィルムを製造するに際して、前記導電性微粒子の分散液は、少量の樹脂を含んでも良いが、特に樹脂を含まないことが好ましい。前記導電性微粒子の分散液が樹脂を含む場合には、前記樹脂の含有量は、体積で表して、前記導電性微粒子の体積を100としたとき、25未満の体積であることが好ましい。導電性微粒子含有層の圧縮の際に樹脂が含まれていないか、あるいは含まれていても少量であることにより、圧縮後に、導電性微粒子相互間の接触点が増え、導電層の膜強度が増すと共に導電性が良好となる。
【0017】
前記導電性微粒子の圧縮層中の導電性微粒子相互の間には、空隙が存在している。この空隙中に、圧縮層上に形成される接着剤層の接着剤組成物が含浸する。
【0018】
(2) 前記シランカップリング剤(S)は、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有するものである、前記(1)に記載の転写用導電性フィルム。
【0019】
(3) 前記硬化性成分(C)は、アクリル系モノマー(M)を含んでいる、前記(1)又は(2)に記載の転写用導電性フィルム。
【0020】
(4) 前記接着剤層中において、前記シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物は、未反応のシランカップリング剤(S)の量として表して、前記シランカップリング剤(S)以外の成分の合計量100重量部(不揮発分として)に対して0.1〜5重量部含まれている、前記(1)〜(3)のうちのいずれかに記載の転写用導電性フィルム。
【0021】
(5) 前記導電性微粒子は、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、硼素ドープ酸化亜鉛、及び酸化カドミウムからなる群から選ばれる導電性無機微粒子である、前記(1)〜(4)のうちのいずれかに記載の転写用導電性フィルム。
【0022】
(6) 表面に接着剤層を有し、前記接着剤層上に透明導電層を有する透明導電層が付与された物体であって、
前記導電層は、導電性微粒子の圧縮層であり、
前記接着剤層は、シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物と、前記シランカップリング剤(S)以外の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性成分(C)とを少なくとも含む接着剤組成物から形成されており、
前記導電層には、接着剤組成物が含浸されている、透明導電層が付与された物体。
【0023】
このような透明導電層が付与された物体は、上記本発明の転写用導電性フィルムを用いて、転写用導電性フィルムの導電層を接着剤層を介して対象物体表面に転写することにより得ることができる。接着剤層を構成する接着剤組成物にはシランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物と硬化性成分(C)とが含まれている。導電層中には接着剤組成物が含浸され、接着剤組成物は透明導電層の表層部にも存在している。導電層中において、錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の導電性微粒子の−OH基とシランカップリング剤(S)の加水分解で生じた−OH基とが縮合し、導電性微粒子の表面にシランカップリング剤(S)が結合される。あるいは、導電性微粒子の−OH基とシランカップリング剤(S)の加水分解で生じた−OH基とが水素結合を形成する。そして、シランカップリング剤(S)の(メタ)アクリロイル基又はビニル基と、アクリル系モノマー(M)等の硬化性成分(C)とが、活性エネルギー線照射によって反応し結合する。このため、特に硬化後においては、導電性微粒子と接着剤組成物との間への水分の侵入が抑制される。その結果、導電性微粒子の表面に水和物が形成されることが抑制され、電気抵抗値の上昇が起こりにくいと考えられる。
【0024】
なお、本発明において、「支持体とは剥離可能な導電層」あるいは「支持体から剥離可能な導電層」とは、支持体と導電層とが互いに剥離可能な状態であることを意味する。本発明の転写用導電性フィルムを実際に使用する際には、接着剤層を介して対象物体表面上に貼り付けられた導電層から支持体を剥離することが多い。
【0025】
本発明の転写用導電性フィルムにおいて、転写に際して支持体から導電層を剥離しやすくするために、支持体と導電層との間に中間層を有することも好ましい。
【0026】
本発明において、転写後の導電層がパターニングされている場合もある。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、対象物体の表面に高温高湿環境下においても安定した低い電気抵抗値を有する均一厚みの透明導電層を形成するための転写用導電性フィルムが提供される。この転写用導電性フィルムは、導電性微粒子の分散液の塗布、圧縮による導電性微粒子の圧縮層の形成、その後の接着剤層の塗布形成という簡便な操作で製造することができる。
【0028】
上記本発明の転写用導電性フィルムを用いて、転写用導電性フィルムの導電層を接着剤層を介して対象物体表面に転写することにより、対象物体表面に、高温高湿環境下においても安定した低い電気抵抗値を有する均一厚みの透明導電層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
まず、本発明の転写用導電性フィルム(以下、単に導電性フィルムとも記す)について説明する。
【0030】
図1は、転写用導電性フィルムの層構成例を示す断面図である。図1の導電性フィルムにおいて、支持体(1) 上に下地層(3) が形成され、下地層(3) 上に透明導電層(4) が形成され、透明導電層(4) 上に接着剤層(5) が形成されている。透明導電層(4) は、導電性微粒子の圧縮層からなり、支持体(1) とは剥離可能に設けられている。また、使用時まで接着剤層面を保護するために、接着剤層(5) 上に図示されない剥離フィルムが付与されていてもよい。
【0031】
本発明における透明とは、可視光を透過することを意味し、光をある程度散乱しても透明の概念に含まれる。光の散乱度合いについては、転写用導電性フィルムの用途すなわち導電層が転写形成される対象物体の用途により要求されるレベルが異なり、一般に半透明といわれるような光の散乱のある場合も透明の概念に含まれる。
【0032】
本発明において、支持体(1) として、後述する圧縮工程の圧縮力を大きくしても割れることがない可撓性樹脂フィルムが好適である。本発明では、転写用導電性フィルムの製造において、高温での加圧工程や、焼成工程がないので、樹脂フィルムを支持体として用いることができる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム等が挙げられる。
【0033】
下地層(3) は、導電性微粒子の圧縮層からなる導電層(4) を支持体上に形成し保持する役割を果たすために、ある程度の硬さとクッション性を有していることが好ましく、また一方で、転写に際して下地層(3) と導電層(4) との間で剥離されるために、下地層(3) は比較的硬いことが好ましく、支持体(1) と下地層(3) との密着性は、下地層(3) と導電層(4) との密着性よりも高いことが好ましい。下地層(3) は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等の中から選定して、樹脂の溶液を支持体(1) 上に塗布、乾燥して形成するとよい。この際の塗布は、公知の方法により行うことができる。例えば、エクストルージョンノズル法、ブレード法、ナイフ法、バーコート法、キスコート法、グラビアロール法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、カーテン法、スクイズ法などの塗布法によって行うことができる。下地層(3) の厚みは、限定されないが、例えば、0.5〜20μm程度とすればよい。
【0034】
下地層(3) 上に、導電性微粒子の分散液を用いて透明導電層(4) を形成する。導電性微粒子としては、例えば、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、硼素ドープ酸化亜鉛、酸化カドミウム等の導電性無機微粒子が用いられる。ITOがより優れた導電性が得られる点で好ましい。あるいは、ATO、ITO等の無機材料を硫酸バリウム等の透明性を有する微粒子の表面にコーティングしたものを用いることもできる。これら微粒子の粒子径は、導電層の用途に応じて必要とされる光散乱の度合いにより異なり、また、粒子の形状により一概には言えないが、一般に1.0μm以下であり、5nm〜100nmが好ましく、5nm〜80nmがより好ましい。
【0035】
導電性微粒子を分散する分散媒としては、特に限定されることなく、既知の各種液体を使用することができる。例えば、液体として、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。これらのなかでも、極性を有する液体が好ましく、特にメタノール、エタノール等のアルコール類、NMP等のアミド類のような水と親和性のあるものは、分散剤を使用しなくても分散性が良好であり好適である。これら液体は、単独でも2種以上の混合したものでも使用することができる。また、液体の種類により、分散剤を使用することもできる。
【0036】
また、分散媒として、水も使用可能である。水を用いる場合には、支持体(1) (下地層がない場合)又は支持体上に設けられた下地層(3) の表面が親水性のものである必要がある。樹脂フィルムや下地樹脂層は通常疎水性であるため水をはじきやすく、均一な膜が得られにくい。このような場合には、水にアルコールを混合するとか、あるいは下地樹脂層の表面をコロナ処理などにより親水性にする必要がある。
【0037】
用いる分散媒の量は、特に制限されず、前記微粒子の分散液が塗布に適した粘度を有するようにすればよい。例えば、前記微粒子100重量部に対して、液体100〜100,000 重量部程度である。前記微粒子と分散媒の種類に応じて適宜選択するとよい。
【0038】
前記微粒子の分散媒中への分散は、公知の分散手法により行うとよい。例えば、サンドグラインダーミル法により分散する。分散に際しては、微粒子の凝集をほぐすために、ジルコニアビーズ等のメディアを用いることも好ましい。
【0039】
調製した導電性微粒子の分散液を支持体(1) (下地層がない場合)又は支持体上に設けられた下地層(3) 上に、塗布、乾燥し、導電性微粒子含有層を形成する。前記微粒子分散液の塗布は、特に限定されることなく、公知の方法により行うことができ、例えば、下地層の塗布で説明した方法と同様の塗布法によって行うことができる。乾燥温度は分散に用いた分散媒の種類によるが、10〜150℃程度が好ましい。10℃未満では空気中の水分の結露が起こりやすく、150℃を越えると樹脂フィルム支持体が変形する。
【0040】
その後、前記導電性微粒子含有層をシートプレス、ロールプレス等により圧縮し、導電性微粒子の圧縮層を形成する。圧縮することで導電性微粒子相互間の接触点が増え接触面が増加する。このため、塗膜強度が上がると共に、電気抵抗値が低下する。導電性に優れ、膜強度に優れる導電層を得るために、圧縮は44N/mm2 以上の圧縮力で行うことが好ましく、135N/mm2 以上の圧縮力がより好ましく、180N/mm2 の圧縮力が更に好ましい。圧縮力を高くするほど装置の耐圧を上げなくてはならないので、一般には1000N/mm2 までの圧縮力が適当である。
【0041】
このようにして、導電性微粒子の圧縮層からなる透明導電層(4) が形成される。導電性微粒子圧縮層の厚みは、用途にもよるが、0.1〜10μm程度とすればよい。また、10μm程度の厚い圧縮層を得るために、微粒子の分散液の塗布、乾燥、圧縮の一連の操作を繰り返し行っても良い。
【0042】
次に、透明導電層(4) 上に接着剤組成物からなる接着剤層(5) を形成する。得られた導電性微粒子の圧縮層中の導電性微粒子相互の間には空隙が存在しているので、接着剤組成物は圧縮層中に含浸する。
【0043】
本発明において、シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物と、前記シランカップリング剤(S)以外の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性成分(C)とを必須成分として含んでおり、導電性フィルムの前記導電層(4) と転写対象物体の表面の双方に対して親和性があり、両者を強力に接着できる接着剤組成物を用いる。例えば、接着剤組成物は、シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物と、高分子樹脂(P)と、シランカップリング剤(S)以外の硬化性成分(C)と、好ましくは光重合開始剤とを含む。
【0044】
高分子樹脂(P)成分と、硬化性成分(C)(例えばアクリル系モノマー(M))とを併用して粘度調整することによって、粘着性を有しながら、紫外線等の活性エネルギー線照射によって硬化物となるような接着剤層を容易に形成できる。適度な粘着性を有していればよい。
【0045】
高分子樹脂(P)としてはアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。アクリル系樹脂としては、公知のものを用いることができ、例えばアクリル樹脂103B、1BR−305(いずれも大成化工(株)製)等が挙げられる。
【0046】
前記硬化性成分(C)は、シランカップリング剤(S)以外のものであり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の活性エネルギー線反応性基を有する化合物である。硬化後の接着剤組成物の十分な硬度を得るため、前記硬化性成分は、1つの分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上の活性エネルギー線反応性基を含む多官能モノマーもしくはオリゴマーを含んでいることが好ましい。
【0047】
前記硬化性成分(C)は、好ましくはアクリル系モノマー(M)を含んでいる。アクリル系モノマー(M)としては、具体的には、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。また、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等も挙げられる。
【0048】
アクリル系モノマー(M)としては、公知のものを用いることができ、例えば、KAYARAD GPO-303 、KAYARAD TMPTA 、KAYARAD THE-330 (いずれも日本化薬(株)製)等の3官能以上のアクリル系モノマーが挙げられる。
【0049】
また、前記硬化性成分(C)として、ビニル基を有する化合物を用いてもよい。ビニル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ヒドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0050】
前記シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物は、導電層に含浸することによって、導電性微粒子と接着剤組成物との間への水分の侵入を抑制し、導電性微粒子の表面に水和物が形成されることを抑制するために含有される。
【0051】
前記シランカップリング剤(S)は、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有するものが、前記硬化性成分(C)との活性エネルギー線照射による反応性の観点から好ましい。
【0052】
ビニル基を有するシランカップリング剤(S)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−2−メトキシエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジ−2−メトキシエトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤(S)としては、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
導電層中に含浸した接着剤組成物中に前記シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物が存在することによって、導電層中において、錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の導電性微粒子の−OH基とシランカップリング剤(S)の加水分解で生じた−OH基とが縮合し、導電性微粒子の表面にシランカップリング剤(S)が結合される。あるいは、導電性微粒子の−OH基とシランカップリング剤(S)の加水分解で生じた−OH基とが水素結合を形成し、導電性微粒子表面の非常に近接した位置にシランカップリング剤(S)が存在する。そして、導電層中に含浸した接着剤組成物中には活性エネルギー線反応性基を有する硬化性成分(C)が存在しているので、紫外線等の活性エネルギー線照射によって、シランカップリング剤(S)の(メタ)アクリロイル基又はビニル基と、硬化性成分(C)の活性エネルギー線反応性基とが反応し結合する。このため、透明導電層中に含浸した接着剤組成物によって対象物体への転写後において、導電性微粒子と硬化後の接着剤組成物との間への水分の侵入が抑制される。その結果、高温高湿環境下であっても導電性微粒子の表面に水和物が形成されることが抑制され、電気抵抗値は低く維持される。
【0055】
前記接着剤組成物中において、前記シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物は、未反応のシランカップリング剤(S)の量として表して、前記シランカップリング剤(S)以外の成分の合計量の100重量部(不揮発分として)に対して0.1〜5重量部含まれていることが好ましい。この範囲のシランカップリング剤(S)によって、対象物体への転写後においても高温高湿環境下であっても導電層の低い電気抵抗値の維持効果が得られる。シランカップリング剤(S)が0.1重量部未満であると、効果が少ない。シランカップリング剤(S)が5重量部を超えると、この化合物(S)又はその部分反応物が導電層表面にブリードアウトしやすい。
【0056】
前記接着剤組成物中において、高分子樹脂(P)と硬化性成分(C)(好ましくはアクリル系モノマー(M))との混合比率によって、粘度、タック性、及び塗膜の硬化後の硬さが変化する。高分子樹脂(P)が多くなると接着剤組成物の粘度が高くなる。高分子樹脂(P)が適度な比率であれば、良好なタック性が得られ、硬化性成分(C)(好ましくはアクリル系モノマー(M))が多いほど硬化後の硬さが得られる。これらのことを考慮して、高分子樹脂(P)と硬化性成分(C)との配合比率を適宜決定すればよく、硬化性成分(C)としてアクリル系モノマー(M)を用いる場合には、高分子樹脂(P)とアクリル系モノマー(M)とは、不揮発分として重量比率P/M=0/100〜80/20で含まれることが好ましく、P/M=1/99〜50/50で含まれることがより好ましく、P/M=2/98〜30/70で含まれることがさらに好ましい。
【0057】
前記接着剤組成物中には、通常、さらに光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、種々のものを用いることができ、例えば、 KAYACURE DETX-S(日本化薬(株)製)が挙げられる。光重合開始剤の量は、アクリル系樹脂(P)とアクリル系モノマー(M)を含む硬化性成分(C)の合計(P+C)重量に対して、0.01〜20重量%程度とすればよい。接着剤層が紫外線等の活性エネルギー線照射によって硬化することによって、転写用導電性フィルムを対象物体に接着させる際の生産性が高まる。また、光重合開始剤として、アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えた公知のものを用いてもよい。アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えたものとしては、例えば、紫外線硬化型樹脂SD−318(大日本インキ化学工業(株)製)、XNR5535(長瀬産業(株)製)等が挙げられる。
【0058】
前記接着剤組成物中には、必要に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の添加剤やオリゴマーを含ませてもよい。
【0059】
本発明の転写用導電性フィルムの接着剤層(5) 上に剥離フィルムを付与し、使用時まで接着剤層面を保護してもよい。
【0060】
接着剤層(5) の形成は、導電層(4) 上への接着剤組成物溶液の塗布、乾燥により行うことができる。接着剤組成物溶液の塗布は、特に限定されることなく、公知の方法により行うことができ、例えば、下地層の塗布で説明した方法と同様の塗布法によって行うことができる。塗布後に乾燥する。あるいは、別に用意した剥離処理された剥離用支持体上に接着剤組成物溶液を塗布、乾燥して接着剤層を形成し、剥離用支持体上のこの接着剤層と、支持体(1) 上の導電層(4) とが接するようにラミネートして接着(密着)させることによって、導電層(4) 上に接着剤層(5) を設けてもよい。この場合には、接着剤層(5) の形成と同時に、接着剤層上に剥離用支持体が付与され、使用時まで接着剤層面が保護される。
【0061】
導電層(4) 中には、接着剤組成物の一部が含浸される。接着剤層の厚みは、接着剤のタック性などによるが、硬化前において、0.1μm〜20μm程度とすればよく、0.5μm〜10μmが好ましく、1.0μm〜5μmがより好ましい。
【0062】
以上のようにして、本発明の転写用導電性フィルムを製造することができる。
【0063】
次に、本発明の透明導電層が付与された物体について説明する。
図2は、透明導電層が付与された物体の層構成例を示す断面図である。図2において、物体(6) 表面上に接着剤層(5) を介して導電性微粒子の圧縮層からなる透明導電層(4) が付与されている。
【0064】
対象となる物体(6) には、特に限定されることなく、可撓性のシートないしはフィルムの他、例えば、均一厚みの塗布層を形成しにくい板状の可撓性に乏しい物体ないしは支持体、圧縮層を直接的には形成しにくいガラスやセラミックス、金属のような物体等が含まれる。例えば、タッチパネル等の各種ディスプレイは本発明における対象物体の具体例として挙げられる。
【0065】
本発明の透明導電層が付与された物体を得るには、まず、上述の転写用導電性フィルムの導電層(4) を支持体(1) から対象物体(6) 上に転写する。すなわち、導電性フィルムを対象物体(6) 面に、支持体(1) が外側となるように導電性フィルムの接着剤層(5) を介して貼り付け、貼り付け後、接着剤層(5) を好ましくは紫外線照射により硬化させ、その後、導電性フィルムの支持体(1) を剥離する。また、対象物体(6) 面上にも予め接着剤層(5) と同様の接着剤を塗布しておいてもよい。接着剤層(5) を硬化させた後の導電性フィルムの支持体(1) の剥離に際しては、転写に際して下地層(3) と導電層(4) との間で剥離が起こる。透明導電層(4) 表面は露出状態である。
【0066】
接着剤層(5) を構成する接着剤組成物には、シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物と硬化性成分(C)とが含まれている。接着剤組成物の一部は透明導電層(4) 中に含浸している。透明導電層(4) 中に含浸している接着剤組成物によって、導電性微粒子と硬化後の接着剤組成物との間への水分の侵入が抑制される。その結果、高温高湿環境下であっても導電性微粒子の表面に水和物が形成されることが抑制され、電気抵抗値は低く維持される。
【0067】
導電層の転写に際して、転写対象物体を予め表面処理しておいてもよい。例えば、転写対象物体がガラスの場合、その表面をシランカップリング剤等で表面処理してもよい。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
図1に示すように、支持体(1) 上に下地樹脂層(3) 、透明導電層(4) 及び感光性接着剤層(5) をこの順で有する転写用導電性フィルムを次の手順で作成した。
【0070】
(下地樹脂層の形成)
硬い下地樹脂層用にシリコーン樹脂を用いた。シリコーン樹脂溶液フレッセラN−180(松下電工製)のA液100重量部とB液300重量部を混合し、樹脂層用の塗布液とした。75μm厚のPETフィルム(1) (HSL、帝人デュポンフィルム製)の片面にコロナ処理を施した。PETフィルム(1) のコロナ処理された面に前記塗布液を塗布、乾燥し、70℃、24時間で硬化させ、0.7μm厚のシリコーン樹脂層(3) を形成した。
【0071】
(透明導電層の形成)
一次粒径20nmのITO微粒子SUFP−HX(住友金属鉱山(株)製)100重量部にエタノール300重量部を加え、メディアをジルコニアビーズとして分散機にて分散した。得られた塗液を前記樹脂層(3) 上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥した。得られたフィルムを圧縮前ITOフィルムと称する。ITO含有塗膜の厚みは1.7μmであった。
【0072】
まず、圧縮圧力の確認のための予備実験を行った。
一対の直径140mmの金属ロール(ロール表面にハードクロムめっき処理が施されたもの)を備えるロールプレス機を用いて、ロールを回転させず且つ前記ロールの加熱を行わないで室温(23℃)にて、前記圧縮前ITOフィルムを挟み圧縮した。この時、フィルム幅方向の単位長さ当たりの圧力は660N/mmであった。次に、圧力を解放し、圧縮された部分のフィルム長手方向の長さを調べたら1.9mmであった。この結果から、単位面積当たりに347N/mm2 の圧力で圧縮したことになる。
【0073】
次に、予備実験に使用したものと同様の前記圧縮前ITOフィルムを金属ロール間に挟み660N/mmの圧力で圧縮し、ロールを回転させ5m/分の送り速度で圧縮した。このようにして、硬い下地樹脂層(3) 上に圧縮されたITO層を有するフィルム(これを圧縮されたITOフィルムと称する)を得た。ITO圧縮層(4) の厚みは1.0μmであった。
【0074】
(シランカップリング剤の加水分解)
この実施例においては、接着剤層用塗布液の調製に先立って、シランカップリング剤の加水分解を行った。
ビニルトリメトキシシランKBM−1003(信越シリコーン(株)製)と純水をKBM−1003/純水の重量比が1/0.35となるように混合し、pHが3〜5になるように1N酢酸を加え、透明な溶液が得られるまでよく攪拌し、加水分解を終了させた。
KBM−1003/純水/1N酢酸の重量比=1/0.35/0.017
【0075】
(感光性接着剤層の形成)
アクリル樹脂1BR−305(固形分:39.5重量%、大成化工(株)製)100重量部に、紫外線硬化型樹脂液XNR5535(長瀬産業(株)製)158重量部、KBM−1003の上記加水分解液0.98重量部、及びメチルエチルケトン236重量部を加えて、接着剤層用塗布液とした。
まず、シリコーン処理された剥離PETフィルム S314(東レ(株)製)に接着剤層用塗布液を塗布、乾燥して剥離PETフィルム上に8μm厚の接着剤層を形成した。
次に、前記ITO圧縮層(4) が形成されたフィルムと接着剤層が形成された剥離PETフィルムとを、ITO圧縮層(4) と接着剤層が接するようにラミネートした。このようにして、ITO圧縮層(4) 上に接着剤層(5) を形成し、転写用導電性フィルムとした。
【0076】
(転写によるPETフィルムへの透明導電層の付与)
得られた転写用導電性フィルムのシリコーン剥離PETフィルムS314を剥がして、接着剤層(5) を露出させ、接着剤層(5) が188μm厚のPETフィルム(6) に接するようにラミネーターにて貼り付けた。紫外線を照射して、接着剤層(5) を硬化させた。その後、支持体PETフィルム(1) を剥がした。シリコーン樹脂層(3) と支持体(1) との密着性は、シリコーン樹脂層(3) とITO圧縮層(4) との密着性よりも高く、シリコーン樹脂層(3) は支持体(1) と共に剥がされた。PETフィルム(6) 上に露出したITO圧縮層(4) が形成された。図2に示すように、PETフィルム(6) 上に接着剤層(5) を介してITO圧縮層(4) が付与された。このようにして、透明導電層を有する導電性PETフィルムを得た。
【0077】
[実施例2]
接着剤層用塗布液におけるKBM−1003の上記加水分解液の添加量を3.95重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、転写用導電性フィルムを得た。得られた転写用導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にして、PETフィルムへの透明導電層の付与を行い、透明導電層を有する導電性PETフィルムを得た。
【0078】
[実施例3]
接着剤層用塗布液におけるKBM−1003の上記加水分解液の添加量を7.9重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、転写用導電性フィルムを得た。得られた転写用導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にして、PETフィルムへの透明導電層の付与を行い、透明導電層を有する導電性PETフィルムを得た。
【0079】
[実施例4]
接着剤層用塗布液におけるKBM−1003の上記加水分解液3.95重量部を、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランKBM−503(信越シリコーン(株)製)7.9重量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、転写用導電性フィルムを得た。用いたKBM−503は、KBM−1003の場合と同様に予め加水分解されたものである。KBM−503/純水/1N酢酸の重量比=1/0.22/0.017
得られた転写用導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にして、PETフィルムへの透明導電層の付与を行い、透明導電層を有する導電性PETフィルムを得た。
【0080】
[比較例1]
アクリル樹脂1BR−305(固形分:39.5重量%、大成化工(株)製)100重量部に、紫外線硬化型樹脂液XNR5535(長瀬産業(株)製)158重量部、及びメチルエチルケトン236重量部を加えて、接着剤層用塗布液とした。
この接着剤層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、転写用導電性フィルムを得た。得られた転写用導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にして、PETフィルムへの透明導電層の付与を行い、透明導電層を有する導電性PETフィルムを得た。
【0081】
(電気抵抗値)
得られた各導電性PETフィルムについて、高温高湿環境下保存試験を次のようにして行った。
各導電性PETフィルムを温度60℃、相対湿度90%の高温高湿環境下に保存した。抵抗測定装置(ロレスタEP、三菱化学(株)製)を用いて、透明導電層が付与された表面の電気抵抗値(Ω/□)を4端子法で測定した。測定は、初期と、高温高湿環境下24、250、500、1000時間保存後にそれぞれ行った。表1に、初期の電気抵抗値を基準とした保存後の電気抵抗値の変化率(=保存後の電気抵抗値/初期の電気抵抗値)を示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1より、シランカップリング剤の存在によって、高温高湿環境下においても低い電気抵抗値が維持された。比較例1では、接着剤層用塗布液にシランカップリング剤が含まれていないので、高温高湿環境下において電気抵抗の上昇が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の転写用導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の透明導電層が付与された物体の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0085】
(1) :支持体
(3) :下地樹脂層
(4) :透明導電層
(5) :接着剤層
(6) :対象物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体上の前記支持体とは剥離可能な導電層と、前記導電層上の接着剤層とを少なくとも含む転写用導電性フィルムであって、
前記導電層は、導電性微粒子の圧縮層であり、
前記接着剤層は、シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物と、前記シランカップリング剤(S)以外の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性成分(C)とを少なくとも含む接着剤組成物から形成されている、転写用導電性フィルム。
【請求項2】
前記シランカップリング剤(S)は、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有するものである、請求項1に記載の転写用導電性フィルム。
【請求項3】
前記硬化性成分(C)は、アクリル系モノマー(M)を含んでいる、請求項1又は2に記載の転写用導電性フィルム。
【請求項4】
前記接着剤層中において、前記シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物は、未反応のシランカップリング剤(S)の量として表して、前記シランカップリング剤(S)以外の成分の合計量100重量部(不揮発分として)に対して0.1〜5重量部含まれている、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の転写用導電性フィルム。
【請求項5】
前記導電性微粒子は、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、硼素ドープ酸化亜鉛、及び酸化カドミウムからなる群から選ばれる導電性無機微粒子である、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の転写用導電性フィルム。
【請求項6】
表面に接着剤層を有し、前記接着剤層上に透明導電層を有する透明導電層が付与された物体であって、
前記導電層は、導電性微粒子の圧縮層であり、
前記接着剤層は、シランカップリング剤(S)及び/又はその加水分解物と、前記シランカップリング剤(S)以外の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性成分(C)とを少なくとも含む接着剤組成物から形成されており、
前記導電層には、接着剤組成物が含浸されている、透明導電層が付与された物体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−257964(P2007−257964A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79801(P2006−79801)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】