説明

軸受ならびに軸受を用いたモータ

【課題】軸受の潤滑油中の添加剤は、継続使用によって消耗し、潤滑油の機能低下と共に軸受の性能低下を招いていたが、部品として組み込まれた構造の軸受においては、潤滑油の交換等のメンテナンスに困難を要していた。
【解決手段】潤滑油に含まれる添加剤、あるいは同等の機能を有する添加剤を、潤滑油と接する構造材中に配合し、潤滑油と構造材が接することにより、構造材中から添加剤が潤滑油中に徐放され、使用によって消耗する潤滑油中の添加剤を補給する。これにより、潤滑油中の添加剤の消耗を抑制し、潤滑油の劣化を抑えて軸受の性能低下を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受に用いる潤滑油は、軸受の機能に重要な影響を与える添加剤を潤滑油の中に予め含んだ状態で用いられていた。しかしながら、部品として組み込まれ、取り外しができない構造の軸受においては、使用による添加剤の消耗と、それに伴う潤滑油の劣化に際して、潤滑油の交換や添加剤の追加等のメンテナンスが困難であった。
【特許文献1】特開2002−206544号公報
【特許文献2】特開2004−347053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータ等の軸受に用いる潤滑油には、軸受の機能に有効な添加剤が含まれているが、この添加剤は継続使用によって消耗し、潤滑油の劣化とそれに伴う機能低下により、軸受の性能の低下を招いていた。このため、使用者は潤滑油のメンテナンスを行うが必要があったが、部品として組み込まれた構造の軸受においては、潤滑油の交換は困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために本発明は、従来潤滑油に含まれていた添加剤、あるいは同等の機能を有する添加剤を、潤滑油と接する構造材から徐放させて供給することにより、潤滑油中の添加剤量の消耗、潤滑油自身の劣化、さらには特性の低下を抑制することを可能にする。
【0005】
また、使用者などによるメンテナンスの労力を低減し、潤滑油の長寿命化を図り、軸受の性能低下の抑制を可能とする。
【0006】
具体的には、潤滑油と接する構造材中に潤滑油の機能に対して有効な添加剤を配合し、潤滑油と構造材が接することにより、構造材中に配合した添加剤が潤滑油中に徐放され、使用によって消耗する潤滑油中の添加剤を潤滑油中に補給することを可能にする。
【発明の効果】
【0007】
潤滑油に接する構造材中に含まれる添加剤が、潤滑油中に徐放されることにより、潤滑油に添加剤を追加した場合と同様の効果を付与できる。また、構造材中より徐放させることにより、当初から潤滑油中に存在する添加剤が完全に失われる条件においても構造材中より供給される添加剤により、潤滑剤の劣化や機能低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いる潤滑油は、鉱油、合成油の場合はエステル類または合成炭化水素類、フェニルエーテル類、炭酸エステル類とする。
【0009】
また、添加剤を含有させる構造材は樹脂とし、この樹脂はPTFEやPOM、PEEK等の潤滑油に不溶性の樹脂とする。
【0010】
構造材中に添加する添加剤は、潤滑油の機能に対して有効であると共に構造材の樹脂に対しても有効な酸化防止剤等を用いる。
【0011】
なお、上記の構成を有する軸受の構造としては、流体軸受が挙げられるが、他の構造でも構造材として用いる樹脂が潤滑油に接するものであれば、適用が可能である。
【実施例1】
【0012】
以下に、流体軸受など、潤滑油と樹脂が接する構成の軸受における実施の形態を、図面および効果事例を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の軸受における基材(樹脂)と潤滑油および添加物の構成を示している。基材である樹脂1は潤滑油2に接しており、樹脂1の中には添加剤3が溶解または分散して含有されている。樹脂1に含まれる添加剤3は、潤滑油2に逐次溶解、除放する。
【0014】
樹脂1の材質は、PE、PP、ナイロン、POM、PPE、UHPE、PSF、PES、PPS、PAR、PEI、PEEK、PI、PAI、LCP、PTFE、エポキシ等から選択する。また、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0015】
添加剤3は、潤滑油2に溶解し、かつ潤滑油の劣化とそれに伴う機能低下を抑制する効果を付与する。
【0016】
添加剤3には、酸化防止剤、金属不活性化剤、極圧添加剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、酸捕捉剤、導電性付与剤、防錆―防蝕剤、抗摩耗剤、摩擦改良剤、分散剤、過酸化物分解剤、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、水分捕捉剤のうち1種ないし2種以上を用いるものとする。添加材3には、1種ないし2種以上の効果を示すものもあるが、その効果が重複する場合であっても同時に用いても良い。
【0017】
上記添加剤3として用いる酸化防止剤には、フェノール類化合物やアミン類化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、2−6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、チオフェノール類、チオエーテル類などが挙げられる。上記酸化防止剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
【0018】
また、上記添加剤3として用いる金属不活性化剤には、ベンゾトリアゾール等の潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、イミダゾリン類、ピリミジン誘導体類、アルキルチアジアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、ベンゾトリアゾール又はその誘導体類、ベンゾイミダゾール類、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。上記金属不活性化剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
【0019】
また、上記添加剤3として用いる極圧添加剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、リン酸エステル類、フォスフィン類、モノスルフィド類、ポリスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、チオスルフィネート類、硫化油脂、チオカーボネート類、チオフェン類、チアゾール類、メタンスルホン酸エステル類などのリン化合物類または硫黄化合物類の極圧添加剤があり、また、高級アルコール類などのアルコール類の極圧添加剤が挙げられる。極圧添加剤としては前記リン化合物または硫黄化合物が好ましい。上記極圧添加剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
【0020】
また、上記添加剤3として用いる流動点降下剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、アルキル化ナフタレン誘導体類、メタクリレ
ート-エチレン-酢酸ビニル3元共重合体類のようなポリメタクリレート類、尿素とナフタレンまたはフェノールの縮合生成物類が挙げられる。
【0021】
また、上記添加剤3として用いる粘度指数向上剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、ポリメタクリレート類、ポリイソブチレン類、エチレン−プロピレン共重合体類、スチレン−ジエン水素化共重合体類などが挙げられる。
【0022】
また、上記添加剤3として用いる酸捕捉剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、グリシジルエーテル基含有化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル類、エポキシ化油脂、エポキシシクロアルキル基含有化合物などが挙げられる。上記酸捕捉剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
【0023】
また、上記添加剤3として用いる導電性付与剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。特に、有機金属化合物類および連続した不飽和結合を持つアミンまたはイオウを含む炭化水素類の混合物などが挙げられる。
【0024】
また、上記添加剤3として用いる防錆―防蝕剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、ベンゾトリアゾール類、トリルトリアゾール類、チアジアゾール類、及びイミダゾール類化合物等が挙げられる。
【0025】
また、上記添加剤3として用いる抗摩耗剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、硫黄又はリン又は双方を含む化合物をベースとし、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩類が挙げられる。
【0026】
また、上記添加剤3として用いる摩擦改良剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、多価アルコールのエステル類、グリセロールモノオレエート類、長鎖ポリカルボン酸のジオールとのエステル類、オキサゾリン化合物類、アルコキシル化アルキル置換モノアミン類、アルキルエーテルアミン類、エトキシル化牛脂アミン類、エトキシル化牛脂エーテルアミン類などが挙げられる。
【0027】
また、上記添加剤3として用いる分散剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。また、分散剤は無灰型のものが好まれる。具体的には、カルボキシル基やアミド基、イミド基といった官能基を持つコハク酸類などが挙げられる。
【0028】
また、上記添加剤3として用いる過酸化物分解剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、亜リン酸類や次亜リン酸類といったリン酸を含む化合物類、チオールを含む炭化水素類、前記リン酸ならびにチオール類を含む化合物類、リン酸ならびにチオール類を含む有機金属化合物類が挙げられる。上記過酸化物分解剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
【0029】
また、上記添加剤3として用いる染料には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、ナフタルイミド類、クマリン類、イミダゾール類、ジアミノスチルベン類、アントラキノン類、キノリン類、フタロシアニン類、フタロシアニン金属塩類、ピリミジン類、ピラゾール類、キノフタロン類、インドフェノール類、ペリノン類、ニトロアリールアミン類、ベンゾジフラン類、キナクリドン類、オキサジン類、ベンズアントロン類、インダントロン類、インディゴ類、チオインディゴ類、キサンテン類、アクリジン類、アジン類などが挙げられる。また、これら染料は1種あるいは2種以上の化合物を含有させることができる。
【0030】
また、上記添加剤3として用いる紫外線吸収剤ならびに光安定剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類などが挙げられる。また、これら染料は1種あるいは2種以上の化合物を含有させることができる。
【0031】
また、上記添加剤3として用いる消泡剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)類、ポリメタクリレート類、パーフルオロ類などが挙げられる。
【0032】
また、上記添加剤3として用いる水分捕捉剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、エポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化植物油などを単独で又は複数混合して使用することができる。これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物及びエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもアルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物もしくはこれらの混合物がより好ましい。これらのエポキシ化合物を添加することにより、基材の安定性、特に加水分解安定性が向上する。
【0033】
添加剤3は、潤滑油1に樹脂2から溶出し、添加目的である酸化防止などの機能を潤滑油3に付与するものである。
【0034】
潤滑油2に接する基材1中に加えた添加剤3が潤滑油2中に徐放されることにより、潤滑油2に添加剤3を加えたときと同様の効果を付与できる。上記添加剤3を、基材1中より潤滑油2へ徐放させることにより、当初から潤滑油2中に存在する添加剤3が完全に失われる条件においても基材1中より供給される添加剤3により、潤滑油2の劣化や機能低下を抑制することができる。これにより、潤滑油2の交換などの保守作業が軽減でき、高い信頼性を持つ軸受装置を提供することが可能となる。
【0035】
図2に、本発明の実験例を示す。
【0036】
本実験例では、一般に市販されているフェノール類酸化防止剤またはアミン類酸化防止剤を、個別にアクリル類樹脂に対して0.01〜30重量%を添加し、潤滑油と接したまま100℃の高温槽に保存した。樹脂に2重量%を添加した添加剤の配合量を潤滑油に対して500ppmとなるように調整し、劣化の判断は、潤滑油が酸化され、劣化物が急激に発生するまでの時間とした。
【0037】
上記実験によれば、図2に示すように、潤滑油に溶解する添加剤含む樹脂を、潤滑油と共存させた場合、劣化の進行を抑えるという結果を得ることができた。このことから、樹脂中に添加した酸化防止剤が潤滑油中に溶出することによって、潤滑油の劣化を抑制していることがわかる。
【実施例2】
【0038】
図3および図4は本発明の実施の形態を示す玉軸受の断面図である。4は内輪とし、合金鋼等の鋼材にて構成し、外周部分に転動面を持つ。5は外輪とし、合金鋼等の鋼材にて構成し、内周部分に転動面を持つ。6は転動体である玉であり、4および5に形成された転動面で転がる。
【0039】
グリース7を構成する潤滑油は、鉱油、合成炭化水素類、エステル類、エーテル類、フェニルエーテル類、炭酸エステル類のなから1種ないし2種以上用いる。
【0040】
グリース7に用いる潤滑油は40℃における粘度を1cSt〜300cStの間のものを用いる。
【0041】
保持器8または封止材10は転動体である玉が内輪および外輪に挟まれた環状の保持器であり、玉同士の接触を防ぐため、環状の保持器にて構成する。
【0042】
保持器8または封止材10を構成する材質として金属および樹脂が代表的なものであるが、添加剤を配合しやすい樹脂が適している。
【0043】
保持器8または封止材10を構成する樹脂は、PE、PP、ナイロン、POM、PPE、UHPE、PSF、PES、PPS、PAR、PEI、PEEK、PI、PAI、LCP、PTFE、エポキシの各種樹脂から1種ないし2種以上選択して用いる。
【0044】
保持器8または封止材10を構成する樹脂に添加する添加剤9は、軸受に使用する潤滑油に効果を示し、潤滑油中に溶解するものとする。
【0045】
添加剤9には、酸化防止剤、金属不活性化剤、極圧添加剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、酸捕捉剤、導電性付与剤、防錆―防蝕剤、抗摩耗剤、摩擦改良剤、分散剤、過酸化物分解剤、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、水分捕捉剤の中から1種ないし2種以上を用いるものとする。
【0046】
また、上記添加剤9は、1種ないし2種以上の効果を示すものもあるが、その効果が重複する場合であっても同時に用いても良い。
【0047】
また上記添加剤9に用いる酸化防止剤には、フェノール類化合物やアミン類化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、2−6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、チオフェノール類、チオエーテル類などが挙げられる。上記酸化防止剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
【0048】
また、上記添加剤9に用いる金属不活性化剤には、ベンゾトリアゾール等の潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、イミダゾリン類、ピリミジン誘導体類、アルキルチアジアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、ベンゾトリアゾール又はその誘導体類、ベンゾイミダゾール類、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。上記金属不活性化剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
【0049】
また、上記添加剤9に用いる極圧添加剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、リン酸エステル類、フォスフィン類、モノスルフィド類、ポリスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、チオスルフィネート類、硫化油脂、チオカーボネート類、チオフェン類、チアゾール類、メタンスルホン酸エステル類などのリン化合物類または硫黄化合物類の極圧添加剤があり、また、高級アルコール類などのアルコール類の極圧添加剤が挙げられる。極圧添加剤としては前記リン化合物または硫黄化合物が好ましい。上記極圧添加剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量
で含有させることができる。
【0050】
また、上記添加剤9に用いる流動点降下剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、アルキル化ナフタレン誘導体類、メタクリレート-エチレン-酢酸ビニル共重合体類のようなポリメタクリレート類、尿素とナフタレンまたはフェノールの縮合生成物類が挙げられる。
【0051】
また、上記添加剤9に用いる粘度指数向上剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、ポリメタクリレート類、ポリイソブチレン類、エチレン−プロピレン共重合体類、スチレン−ジエン水素化共重合体類などが挙げられる。
【0052】
また、上記添加剤9に用いる酸捕捉剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、グリシジルエーテル基含有化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル類、エポキシ化油脂、エポキシシクロアルキル基含有化合物などが挙げられる。上記酸捕捉剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
【0053】
また、上記添加剤9に用いる導電性付与剤には、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。特に、有機金属化合物類および連続した不飽和結合を持つアミンまたはイオウを含む炭化水素類の混合物などが挙げられる。
【0054】
また、上記添加剤9に用いる防錆―防蝕剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、ベンゾトリアゾール類、トリルトリアゾール類、チアジアゾール類、及びイミダゾール類化合物等が挙げられる。
【0055】
また、上記添加剤9に用いる抗摩耗剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、硫黄又はリン又は双方を含む化合物をベースとし、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩類が挙げられる。
【0056】
また、上記添加剤9に用いる摩擦改良剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、多価アルコールのエステル類、グリセロールモノオレエート類、長鎖ポリカルボン酸のジオールとのエステル類、オキサゾリン化合物類、アルコキシル化アルキル置換モノアミン類、アルキルエーテルアミン類、エトキシル化牛脂アミン類、エトキシル化牛脂エーテルアミン類などが挙げられる。
【0057】
また、上記添加剤9に用いる分散剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。また、分散剤は無灰型のものが好まれる。具体的には、カルボキシル基やアミド基、イミド基といった官能基を持つコハク酸類などが挙げられる。
【0058】
また、上記添加剤9に用いる過酸化物分解剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、亜リン酸類や次亜リン酸類といったリン酸を含む化合物類、チオールを含む炭化水素類、前記リン酸ならびにチオール類を含む化合物類、リン酸ならびにチオール類を含む有機金属化合物類が挙げられる。上記過酸化物分解剤は、1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
【0059】
また、上記添加剤9に用いる染料には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、ナフタルイミド類、クマリン類、イミダゾール類、ジアミノスチルベン類、アントラキノン類、キノリン類、フタロシアニン類、フタロシアニン金属塩類、ピリミジン類、ピラゾール類、キノフタロン類、インドフェノール類、ペリノン
類、ニトロアリールアミン類、ベンゾジフラン類、キナクリドン類、オキサジン類、ベンズアントロン類、インダントロン類、インディゴ類、チオインディゴ類、キサンテン類、アクリジン類、アジン類などが挙げられる。また、これら染料は1種あるいは2種以上の化合物を含有させることができる。
【0060】
また、上記添加剤9に用いる紫外線吸収剤ならびに光安定剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類などが挙げられる。また、これら染料は1種あるいは2種以上の化合物を含有させることができる。
【0061】
また、上記添加剤9に用いる消泡剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)類、ポリメタクリレート類、パーフルオロ類などが挙げられる。
【0062】
また、上記添加剤9に用いる水分捕捉剤には、一般的に潤滑油に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、エポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化植物油などを単独で又は複数混合して使用することができる。これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物及びエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもアルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物もしくはこれらの混合物がより好ましい。これらのエポキシ化合物を添加することにより、基材の安定性、特に加水分解安定性が向上する。
【0063】
添加剤9は、グリース8に保持器7または封止材10から溶出し、添加目的である酸化防止などの機能をグリース8に付与するものである。
【0064】
添加剤である9は、潤滑油である8に樹脂である7から溶出し、添加目的である酸化防止などの機能を潤滑油に付与するものである。
【0065】
潤滑油に接する構造材中に加えた添加剤が潤滑油中に徐放されることにより、潤滑油に添加剤を加えたときと同様の効果を付与できる。また、構造材中より徐放させることにより、初期に潤滑油中に存在する添加剤が完全に失われる条件においても構造材中より供給される添加剤により、劣化の発生や機能変化を抑制することができる。これにより、潤滑油の交換などの保守作業が軽減でき、高い信頼性を持つ装置を提供することが可能となる。
【0066】
玉軸受以外の転がり軸受の場合においても、玉軸受と同様に、樹脂で構成する保持器または封止材の部分に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、記憶媒体駆動用モータに用いる軸受や送風用ファン等の、メンテナンスを行うことのできないモータの軸受に使用する潤滑油に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1における添加剤配合樹脂と潤滑油を示す図
【図2】添加剤含有樹脂と潤滑油の共存試験結果を示すグラフ
【図3】本発明の実施例2における軸受の径方向断面図
【図4】本発明の実施例2における軸受の軸の長さ方向断面図
【符号の説明】
【0069】
1 基材(樹脂)
2 潤滑油
3 添加剤
4 内輪
5 外輪
6 転動体
7 合成樹脂製の保持器
8 グリース
9 添加剤
10 封止板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と外輪および転動体で構成される軸受において、内・外輪軌道面及び転動体表面に潤滑油が存在し、合成樹脂製の保持器を介して複数個の転動体を略等間隔で転動自在に保持し、前記保持器が前記潤滑油中に溶解し徐放される添加物を含有する樹脂製の構造材で構成されたことを特徴とする軸受。
【請求項2】
保持器または封止材または両方を構成する樹脂製の構造材中の添加剤に、潤滑油に溶解する酸化防止剤、金属不活性化剤、極圧添加剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、酸捕捉剤、導電性付与剤、防錆、防蝕剤、抗摩耗剤、摩擦改良剤、分散剤、過酸化物分解剤、染料、紫外線吸収剤、消泡剤、水分捕捉剤を用いた請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
構造材として用いる樹脂に、ナイロン、POM、PPE、UHPE、PSF、PES、PPS、PAR、PEI、PEEK、PI、PAI、LCP、PTFE、エポキシ等のエンジニアリングプラスチックと呼ばれる各種樹脂から1種ないし2種以上を用いた請求項1から請求項3のいずれかに記載の軸受。
【請求項4】
軸受に用いる潤滑油を、エステル類潤滑油または鉱油類潤滑油、合成炭化水素類潤滑油、エーテル類潤滑油、フェニルエーテル類潤滑油、フッ素類潤滑油から1種ないし2種以上用いた請求項1から請求項3のいずれかに記載の軸受。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の転がり軸受を用いたモータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−39052(P2008−39052A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214102(P2006−214102)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】