説明

近赤外吸収膜組成物

【課題】近赤外吸収膜組成物を提供する。
【解決手段】(i)1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系染料、及び(ii)1種または複数種のキャスト溶媒を含む、硬化性組成物を提供する。本発明は、硬化性組成物の架橋形態で構成される固体の近赤外吸収膜も対象とする。本発明はさらに、固体近赤外吸収膜のコーティングを含むマイクロエレクトロニクス基板、並びに近赤外吸収膜がマイクロエレクトロニクス基板とフォトレジスト膜の間にある場合に、マイクロエレクトロニクス基板上にコートされたフォトレジスト層をパターニングする方法も対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年8月18日に出願された「近赤外吸収膜組成物」と題する米国特許出願第12/543,003号の利益を主張するものであり、その内容をその全体で参照により本明細書に援用する。
【0002】
背景
本発明は一般には、半導体集積ウェハをパターニングする際のZレベル補正方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体チップ製造中の集積シリコン・ウエハのアライメントおよびパターニングでは、下層の複雑なトポグラフィ上で感光層(フォトレジスト)の塗布、検知および描画を行う。こうした埋め込みトポグラフィは通常、金属材料、誘電性材料、絶縁材料またはセラミック材料、およびこれらの組み合わせを含む多層スタックからなり、これらの材料がパターニングされ、チップに垂直および面内の機能性を与える。こうした多層スタック上のフォトレジストのパターニングには、感光性層上の焦点面位置を適切に判定するため、ウエハのプリアライメントおよび表面の平坦度の検知が必要とされる。このため、広帯域の赤外線源と光センサとを併用して、フォトレジスト表面の焦点位置を判定する。下層のトポグラフィが、パターニングされた反射構造からなる場合、こうした埋め込み微細構造からの反射が、焦点面の判定を誤らせる恐れがある。さらに、パターニングされた金属性材料(たとえば、銅、アルミニウム、およびタングステンなどの金属)を下層が含む場合、望ましくない反射ノッチングまたは正反射が、高さレベルの不正確な測定を助長することもある。こうして焦点の測定を誤ると、描画がぼやけ、コントラストが不十分になり、描画のプリントが不完全なものになる。
【0004】
提案されているZレベルの補正法には、下層のトポグラフィの上に金属層などの高反射性コーティングを使用すること、あるいは、高さ方向の感度が高いアライメント装置を使用することが含まれる。この第1の場合には、金属層は、機能的な三次元構造の製造の時点で集積化の問題を起こし、したがって、一般に有効な解決策ではない。第2の場合として、たとえば、AGILEまたはオフラインでの校正法(FEM+「フォーカス・マッパ」で、基板別に光学的レベリング系の校正を行う。しかしながら、このアプローチには、あらゆるウエハで実施するには遅すぎるのが一般的であるうえ、ロット内(ウエハ全体、およびウエハ間)の基板の変化に対応しないなど、いくつかの欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当該技術分野では、一般に利用しやすくて、正確かつ容易にマイクロエレクトロニクス製造プロセスと統合でき、上述の欠点を持たないZレベル補正法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は全般的に、近IR領域のフォーカス・レベリング・センサの信号を一部または全部カバーする吸収域を有する1種または複数種の発色団(すなわち、色素)を含む近赤外(NIR:near−infrared)吸収膜形態の平坦化層の使用に関する。こうした層は、多層スタックに塗布すると、吸収により広帯域のNIR線を遮断し、それによりフォーカス・レベリング・センサで検出される多層スタック内の任意の深さにある下層のトポグラフィの特徴を抑制することによって機能する。ウエハの上面のみを検知することにより、結像面内にフォトレジスト層を正確に配置することができる。
【0007】
第1の態様では、本発明は、(i)1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素、および(ii)1種または複数種のキャスティング溶媒を含む、硬化性液体組成物を対象とする。好ましい一実施形態においては、トリフェニルアミン系色素は以下の一般式を有する。
【0008】
【化1】

【0009】
上記式(1)においては、R、R、R、R、RおよびRは独立に、水素原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素基であり、炭化水素基は、場合によっては、窒素、酸素、硫黄およびハライド原子から選択される1個以上のヘテロ原子を含む。好ましくは、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個は炭化水素基である。上記式(1)の1個以上の窒素原子はカチオンラジカルであり、1個以上のカチオンラジカルは1個以上のアニオンによって電荷が平衡化されている。
【0010】
式(1)の特定の一実施形態においては、色素分子は、少なくとも1個、2個または3個以上の架橋性基を含む(すなわち、R、R、R、R、RおよびRの1個、2個または3個以上は架橋性部分を含む。)。R、R、R、R、RおよびRのいずれかは、2個以上の架橋性基を含むこともできる。
【0011】
第2の態様では、本発明は、(i)1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素、(ii)1種または複数種の架橋性ポリマー、および(iii)1種または複数種のキャスティング溶媒を含む、硬化性液体組成物を対象とする。
【0012】
第3の態様では、本発明は、(i)1種または複数種の架橋性近赤外吸収トリフェニルアミン系色素、および(ii)1種または複数種のキャスティング溶媒を含む、硬化性液体組成物を対象とする。
【0013】
第4の態様では、本発明は、上述の硬化性液体組成物のいずれかの架橋体である固体の近赤外吸収膜を対象とする。一実施形態では、近赤外吸収膜は、1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素、および1種または複数種の架橋ポリマーを含む。別の実施形態では、近赤外吸収膜は、トリフェニルアミン系色素上の1個以上の架橋基によって架橋された1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素を含む。
【0014】
第5の態様では、本発明は、(a)マイクロエレクトロニクス基板、(b)マイクロエレクトロニクス基板を被覆する上述のような固体の近赤外吸収膜、および(c)近赤外吸収膜を被覆するフォトレジスト膜を含む、マイクロエレクトロニクス構造体を対象とする。
【0015】
第6の態様では、本発明は、マイクロエレクトロニクス基板上にコーティングされたフォトレジスト層をパターニングする方法を対象とする。本方法は好ましくは、(i)マイクロエレクトロニクス基板を用意すること、(ii)マイクロエレクトロニクス基板を被覆する上述のような固体の近赤外吸収膜を形成すること、(iii)近赤外吸収層上にフォトレジスト層を形成すること、(iv)近赤外吸収層およびフォトレジスト層を含むマイクロエレクトロニクス基板から反射する近赤外光を検知することにより、フォトレジスト層の焦点面位置をアライメントしてフォーカス制御すること、および(v)フォトレジスト層を露光ビームに露光して、フォトレジスト層をパターニングすることを含む。
【0016】
この問題に対する現在知られている解決策と異なり、本発明は、機械の型式および数に関係なく使用することができ、先行投資がほとんどない。さらに、本発明は、処理量を低下させるものではなく、管理に手間がかからないうえ、二次的な計測にも応用できる(RIE制御、欠陥検出、等)。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の例示的色素であるトリス(4−[N−エチル,N−グリシジルアミノ]フェニル)アミン(5)の合成を示す一般的模式図である。
【図2】本発明の例示的色素であるトリス(4−[N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)アミノ]フェニル)アミン(10)の合成を示す一般的模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用する「炭化水素基」という用語は、第1の実施形態では、炭素および水素のみからなる化学基をいう。異なる実施形態では、1つまたは複数の炭化水素基は、正確に、または最低でも、または最大でも、たとえば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、もしくは18個の炭素原子を含んでもよいし、あるいは前述の炭素数のいずれかの間の特定の範囲の炭素原子を含んでもよい。
【0019】
炭化水素基は、たとえば、飽和直鎖基(すなわち、直鎖アルキル基)であってもよい。直鎖アルキル基の一部の例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、およびn−オクタデシル基が挙げられる。
【0020】
あるいは、炭化水素基は、飽和分岐基(すなわち、分岐アルキル基)であってもよい。分岐アルキル基の一部の例として、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、およびC、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18の多くの飽和分岐炭化水素基が挙げられる。
【0021】
あるいは、炭化水素基は、飽和環式基(すなわち、シクロアルキル基)であってもよい。シクロアルキル基の一部の例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。シクロアルキル基はまた、2つの環基の間に結合を有する多環式(たとえば、二環式)基(たとえば、ジシクロヘキシル)であっても、あるいは、共有する(すなわち、縮合された)辺を有する多環式(たとえば、二環式)基(たとえば、デカリンおよびノルボルナン)であってもよい。
【0022】
あるいは、炭化水素基は、不飽和直鎖基(すなわち、直鎖オレフィン基またはアルケニル基)であってもよい。直鎖オレフィン基の一部の例として、ビニル、2−プロペン−1−イル、3−ブテン−1−イル、2−ブテン−1−イル、ブタジエニル、4−ペンテン−1−イル、3−ペンテン−1−イル、2−ペンテン−1−イル、2,4−ペンタジエン−1−イル、5−ヘキセン−1−イル、4−ヘキセン−1−イル、3−ヘキセン−1−イル、3,5−ヘキサジエン−1−イル、1,3,5−ヘキサトリエン−1−イル、6−ヘプテン−1−イル、エチニル、プロパルギル(2−プロピニル)、およびC、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18の多くの不飽和の直鎖炭化水素基が挙げられる。
【0023】
あるいは、炭化水素基は、不飽和分岐基(すなわち、分岐オレフィン基またはアルケニル基)であってもよい。分岐オレフィン基の一部の例として、2−プロペン−2−イル、3−ブテン−2−イル、3−ブテン−3−イル、4−ペンテン−2−イル、4−ペンテン−3−イル、3−ペンテン−2−イル、3−ペンテン−3−イル、2,4−ペンタジエン−3−イル、およびC、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18の多くの不飽和分岐炭化水素基が挙げられる。
【0024】
あるいは、炭化水素基は、不飽和環式基(すなわち、シクロアルケニル基またはシクロアルケニレンリンカー)であってもよい。不飽和および環状炭化水素基の一部の例として、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタジエニル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、およびシクロオクタテトラエニル基が挙げられる。不飽和環状炭化水素基はまた、2つの環基の間に結合を有する多環式(たとえば、二環式または三環式)基(たとえば、ビフェニル)であっても、あるいは、共有する(すなわち、縮合された)辺を有する多環式(たとえば、二環式または三環式)基(たとえば、ナフタレン、アントラセン、およびフェナントレン)であってもよい。
【0025】
炭化水素基は、1個または複数個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはハライド原子など1個または複数個のヘテロ原子をさらに含んでもよい。異なる実施形態では、炭化水素基は、1個または複数個の窒素原子のみを含み、他のヘテロ原子を含まなくてもよいし、あるいは、1個または複数個の酸素原子のみを含み、他のヘテロ原子を含まなくてもよいし、あるいは、硫黄原子のみを含み、他のヘテロ原子を含まなくてもよいし、あるいは、窒素および酸素のみを含み、硫黄を含まなくてもよいし、あるいは、窒素および硫黄のみを含み、酸素を含まなくてもよいし、あるいは、酸素および硫黄のみを含み、窒素を含まなくてもよい。酸素含有基の一部の特定の例として、式−XRの基が挙げられ、式中、XはOまたはSであり、Rは水素原子、あるいは、上記のような、または、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から選択される1個または複数個のヘテロ原子を任意に含む、炭化水素基である。他の酸素含有基は、カルボニル基(たとえば、ケトン官能基、アルデヒド官能基、エステル官能基、アミド官能基、または尿素官能基)を含む。−XR基はまた、ポリエチレンオキシド基などのポリアルキレンオキシド基であってもよい。窒素含有基の一部の特定の例として、式−NR10の基が挙げられ、式中、RおよびR10は、各々独立に水素原子、あるいは、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から選択される1個または複数個のヘテロ原子を任意に含む炭化水素基である。さらに、窒素含有基は、第一級アミン基でも、第二級アミン基でも、第三級アミン基でも、または第四級アミン基でもよい。他の一部の窒素含有基は、シアン化物、アミド(すなわち、−C(O)NR、式中、Rは水素原子および炭化水素基から選択される)、ニトロ基、尿素基、およびカルバマート基を含んでもよく、この場合、第四級アミン基は必ず正電荷を有し、対アニオンを必要とすることが理解されよう。硫黄含有基の一部の例として、チオエーテル(すなわち、スルフィド)基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、スルホネート基、およびスルフェート基が挙げられる。本明細書で検討されるハライド原子は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含む。フッ素含有炭化水素基(すなわち、フルオロカーボン基)の一部の例として、部分置換された変異体(たとえば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、および同種のもの)、およびペルフルオロ置換された変異体(たとえば、ペルフルオロメチル、ペルフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、および同種のもの)が挙げられる。
【0026】
炭化水素基は、1個または複数個(たとえば、1個、2個、3個、または4個)の環窒素原子を含む環構造(たとえば、単環式環系または多環式環系)をさらに含んでもよい。窒素を含む環は、たとえば、飽和単環式でも、飽和多環式でも、不飽和単環式でも、または不飽和多環式でもよい。一実施形態では、窒素を含む環基または環系は、酸素原子または硫黄原子などの他の環ヘテロ原子をさらに含んでもよい。別の実施形態では、窒素を含む環基または環系は、他の環ヘテロ原子を含まない。窒素を含む飽和単環式環基の一部の例として、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、およびモルホリン基が挙げられる。窒素を含む不飽和単環式環基の一部の例として、ピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピリジン基、ピラジン基、1,3,5−トリアジン基、ピリミジン基、オキサゾール基、チアゾール基、およびチアジン基が挙げられる。窒素を含む飽和多環式環系の一部の例として、デカヒドロキノリン基およびデカヒドロ−1,8−ナフチリジン基が挙げられる。窒素を含む不飽和多環式環系の一部の例として、インドール基、プリン基、ベンゾイミダゾール基、4,4’−ビピリジン基、2,2’−ビピリジン基、1,8−ナフチリジン基、キノリン基、キナゾリン基、フェナジン基、ベンゾキサゾール基、ベンゾチアゾール基、2−フェニルピリジン基、2,6−ジフェニルピリジン基、およびベンゾチアジン基が挙げられる。
【0027】
炭化水素基は、1個または複数個(たとえば、1個、2個、3個、または4個)の環酸素原子を含む環構造をさらに含んでもよい。酸素を含む環は、たとえば、飽和単環式でも、飽和多環式でも、不飽和単環式でも、または不飽和多環式でもよい。一実施形態では、酸素を含む環基または環系は、窒素原子または硫黄原子などの他の環ヘテロ原子をさらに含んでもよい。別の実施形態では、酸素を含む環基または環系は、他の環ヘテロ原子を含まない。酸素を含む飽和単環式環基の一部の例として、テトラヒドロフラン基、テトラヒドロピラン基、1,4−ジオキサン基、1,3−ジオキサン基、1,3−ジオキソラン基、および1,4−オキサチアン基が挙げられる。酸素を含む不飽和単環式環基の一部の例として、フラン基、ピラン基、および1,4−ジオキシン基が挙げられる。酸素を含む飽和多環式環系の例として、オクタヒドロ−1−ベンゾピラン基が挙げられる。酸素を含む不飽和多環式環系の一部の例として、1−ベンゾピラン(クロメン)基、2−ベンゾピラン(イソクロメン)基、2−フェニルフラン基、2−フェニルピラン基、クマリン基、および1,4−ベンゾピロン(クロモン)基が挙げられる。
【0028】
炭化水素基は、1個または複数個(たとえば、1個、2個、3個、または4個)の環硫黄原子を含む環構造をさらに含んでもよい。硫黄を含む環は、たとえば、飽和単環式でも、飽和多環式でも、不飽和単環式でも、または不飽和多環式でもよい。一実施形態では、硫黄を含む環基または環系は、窒素原子または酸素原子などの他の環ヘテロ原子をさらに含んでもよい。別の実施形態では、硫黄を含む環基または環系は、他の環ヘテロ原子を含まない。硫黄を含む飽和単環式環基の一部の例として、テトラヒドロチオフラン基、テトラヒドロチオピラン基、1,4−ジチアン基、1,3−ジチアン基、1,2−ジチオラン基、および1,4−ジチオラン基が挙げられる。硫黄を含む不飽和単環式環基の一部の例として、チオフェン基、チオピラン基、および1,4−ジチイン基が挙げられる。硫黄を含む飽和多環式環系の例として、オクタヒドロ−1−ベンゾチオピラン基が挙げられる。硫黄を含む不飽和多環式環系の一部の例として、1−チオベンゾピラン(チオクロメン)基、2−ベンゾチオピラン(イソチオクロメン)基、2−フェニルチオフェン基、2−フェニルチオフラン基、2,6−ジフェニルチオピラン基、およびチオクマリン基が挙げられる。
【0029】
一態様においては、本発明は、少なくとも(i)1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素(すなわち、「色素」)、および(ii)1種または複数種のキャスティング溶媒を含む、硬化性組成物を対象とする。色素は、電磁放射の近赤外波長を吸収する任意のトリフェニルアミン系色素とすることができる。さらに、2種類以上の色素を使用して、赤外波長の好ましい範囲内で吸収することができる。本明細書で検討されている近赤外波長は広く、500nm〜5,000nm以内の波長のいずれかを包含する。異なる実施形態では、色素は、最小で、たとえば、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、または850nmの波長、最大で、たとえば、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nm、1050nm、1100nm、1150nm、1200nm、1250nm、1300nm、1400nm、1500nm、2000nm、2500nm、3000nm、3500nm、4000nm、4500nm、および5000nmの波長の間の範囲の近赤外波長を吸収する。本明細書では、前述の最小値および最大値のいずれかの組み合わせにより決定される任意の範囲が、適用可能である。さらに、色素は、好ましくは不活性であり、すなわち、光活性ではない。前述の例示的な吸収域は、単一の色素、またはあるいは、2種以上の色素(たとえば、2、3、または4種の色素)を使用することにより、達成することができる。
【0030】
かかるトリフェニルアミン系色素の一部の例としては、トリフェニルアミン、並びに1個、2個、3個、4個、5個、6個以上の炭化水素基で置換されたトリフェニルアミン(例えば、ジフェニルナフチルアミン、トリス(p−トリル)アミン、トリス(o−トリル)アミン、ジナフチルフェニルアミン、ジフェニルアントラセニルアミン、ジフェニルフェナントレニルアミン、トリス(p−ブロモ)アミン、トリス(p−クロロ)アミンおよびトリス(p−フルオロ)アミン)が挙げられる。
【0031】
好ましくは、トリフェニルアミン系色素は、以下の一般式で表される構造を有する。
【0032】
【化2】

【0033】
色素分子が1個または0個の架橋性基を含む(すなわち、1個または0個の架橋性基がR、R、R、R、RおよびR基の中に含まれる)特別な場合においては、1種または複数種の架橋性ポリマーを含むことが、組成物を硬化可能にするのに望ましい。色素分子が少なくとも2つの架橋性基を含む(すなわち、2個以上の架橋性基がR、R、R、R、RおよびR基の中に含まれる)特定の場合には、必要に応じて架橋性ポリマーを加えてもよいが、色素分子間の架橋のみを所望する場合、架橋性ポリマーなしで済ませてもよい。
【0034】
上記式(1)においては、R、R、R、R、RおよびRは独立に、水素原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素基であり、炭化水素基は、上述したように、場合によっては、窒素、酸素、硫黄およびハライド原子から選択される1個または複数個のヘテロ原子を含む。ただし、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個は炭化水素基である。一実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRのすべてが水素原子であり、それによって化合物トリス(p−アミノフェニル)アミンが生成する。異なる実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRのうちの1個、2個、3個、4個、5個またはすべてが(場合によってはヘテロ原子で誘導体化された)炭化水素基であり、残りの基は水素原子である。特定の実施形態においては、1個または複数個の炭化水素基は、ちょうど若しくは少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個若しくは12個、またはそれ以下の炭素原子、またはこれらの炭素数のいずれかの間のある範囲の炭素原子を含む。一実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRはいずれも、それが結合した窒素原子に直接結合した芳香環(例えば、フェニルまたはナフチル)を含まず、別の実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRのうちの1個、2個、3個、4個、5個またはすべてが、それが結合した窒素原子に直接結合した芳香環を含む。
【0035】
式(1)は、同じ窒素原子上に存在する1個または複数個の基(すなわち、RとR、RとR、若しくはRとR、またはその全部の1個または複数個)が相互に連結して窒素含有複素環を形成する可能性も含む。上記窒素含有複素環のいずれも本明細書で適用することができる。
【0036】
式(1)の特定の一実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個は、1個または複数個の架橋性基、すなわち、色素分子間、または色素分子と1個または複数個の架橋性ポリマーとの間で架橋可能な基を含む。架橋性基は、別の化学基と架橋可能な任意の適切な基を含むことができる。好ましくは、1個または複数個の架橋性基は、反応性環式エーテル基(例えば、オキサシクロブチルまたはエポキシド基)およびヒドロキシ基から選択される。異なる実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRのうちの1個、2個、3個、4個、5個またはすべては、1個または複数個架橋性基を含む。特定の一実施形態においては、RとRの少なくとも1個、RとRの少なくとも1個、およびRとRの少なくとも1個は、反応性酸素含有環またはヒドロキシ基を含む炭化水素基である。
【0037】
好ましい一実施形態においては、1個または複数個のエポキシ含有基は、以下の式に従う。
【0038】
【化3】

【0039】
好ましい一実施形態においては、1個または複数個のヒドロキシ含有基は、以下の式に従う。
【0040】
【化4】

【0041】
上記式(2)および(3)の、下付き文字nは、好ましくは、異なる実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12のいずれか、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12、または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12、またはこれらの数の任意の2個によって規定される範囲内の数である。
【0042】
式(1)の特定の実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRは、(i)炭化水素基(特に、炭素原子1〜12個の直鎖または分枝アルキル基)、(ii)エポキシ含有基、および(iii)ヒドロキシ含有基から独立に選択される。例えば、異なる実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRは、すべて炭化水素基、またはすべてエポキシ含有基、またはすべてヒドロキシ含有基、または炭化水素基とエポキシ含有基の混合物、または炭化水素基とヒドロキシ含有基の混合物、またはエポキシ含有基とヒドロキシ含有基の混合物とすることができる。
【0043】
式(1)の第1の実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRの1個または複数個は炭化水素基であり、R、R、R、R、RおよびRの1個以上はエポキシ含有基である。特定の実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも2、3、4または5個はエポキシ含有基であり、残りの基は炭化水素基である。例えば、特定の一実施形態においては、R、RおよびRはエポキシ含有基であり、R、RおよびRは炭化水素基である。
【0044】
式(1)の第2の実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRの1個または複数個は炭化水素基であり、R、R、R、R、RおよびRの1個または複数個はヒドロキシ含有基である。特定の実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも2個、3個、4個または5個はヒドロキシ含有基であり、残りの基は炭化水素基である。例えば、特定の一実施形態においては、R、RおよびRはヒドロキシ含有基であり、R、RおよびRは炭化水素基である。
【0045】
式(1)の第3の実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRのうちの1個または複数個はエポキシ含有基であり、R、R、R、R、RおよびRのうちの1個または複数個はヒドロキシ含有基である。特定の実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも2個、3個、4個または5個はエポキシ含有基であり、残りの基はヒドロキシ含有基である。別の特定の実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも2個、3個、4個または5個はヒドロキシ含有基であり、残りの基はエポキシ含有基である。例えば、特定の一実施形態においては、R、RおよびRはヒドロキシ含有基であり、R、RおよびRはエポキシ含有基である。
【0046】
式(1)の特定の一実施形態においては、式に示されるように、同じ窒素原子上のR、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも2個は、p−アミノ置換フェニル基である。かかる色素は、好ましくは、以下の式で表される。
【0047】
【化5】

【0048】
色素分子が1個または0個の架橋性基を含む(すなわち、1個または0個の架橋性基がR、R、R、R、R、R、RおよびR基の中に含まれる)特別な場合においては、1種または複数種の架橋性ポリマーを含むことが、組成物を硬化可能にするのに望ましい。色素分子が少なくとも2個の架橋性基を含む(すなわち、2個以上の架橋性基がR、R、R、R、R、R、RおよびR基の中に含まれる)特定の場合には、必要に応じて架橋性ポリマーを加えてもよいが、色素分子間の架橋のみを所望する場合、架橋性ポリマーなしで済ませてもよい。
【0049】
上記式(4)においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立に、水素原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素基であり、炭化水素基は、上述したように、場合によっては、窒素、酸素、硫黄およびハライド原子から選択される1個または複数個のヘテロ原子を含む。好ましくは、R、R、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個は炭化水素基である。一実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRのすべてが水素原子であり、それによって化合物テトラキス−[N,N,N’,N’−(p−アミノフェニル)]フェニレンジアミンが生成する。異なる実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRのうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個またはすべてが(場合によってはヘテロ原子で誘導体化された)炭化水素基であり、残りの基は水素原子である。特定の実施形態においては、1個以上の炭化水素基は、ちょうど若しくは少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個若しくは12個、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個若しくは12個以下の炭素原子、またはこれらの炭素数のいずれかの間のある範囲の炭素原子を含む。一実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRはいずれも、それが結合した窒素原子に直接結合した芳香環(例えば、フェニルまたはナフチル)を含まず、別の実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRのうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個またはすべてが、それが結合した窒素原子に直接結合した芳香環を含む。
【0050】
式(1)と同様に、式(4)は、同じ窒素原子上に存在する1個以上の基(すなわち、RとR、RとR、RとR、若しくはRとR、またはその全部の1個以上)が相互に連結して窒素含有複素環を形成する可能性も含む。上記窒素含有複素環のどれでも本明細書で適用することができる。
【0051】
式(4)の特定の一実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個は、1個または複数個の架橋性基、すなわち、色素分子間、または色素分子と1個または複数個の架橋性ポリマーとの間で架橋可能な基を含む。架橋性基は、別の化学基と架橋可能な任意の適切な基を含むことができる。好ましくは、1個または複数個の架橋性基は、(上記式2および3によって例示されるように)反応性環式エーテル基(例えば、オキサシクロブチルまたはエポキシド基)およびヒドロキシ基から選択される。異なる実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRのうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個またはすべては、1個以上の架橋性基を含む。特定の一実施形態においては、RとRの少なくとも1個、RとRの少なくとも1個、RとRの少なくとも1個、およびRとRの少なくとも1個は、反応性酸素含有環またはヒドロキシ基を含む炭化水素基である。
【0052】
式(4)の特定の実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、(i)炭化水素基(特に、炭素原子1〜12個の直鎖または分枝アルキル基)、(ii)エポキシ含有基、および(iii)ヒドロキシ含有基から独立に選択される。例えば、異なる実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、すべて炭化水素基、またはすべてエポキシ含有基、またはすべてヒドロキシ含有基、または炭化水素基とエポキシ含有基の混合物、または炭化水素基とヒドロキシ含有基の混合物、またはエポキシ含有基とヒドロキシ含有基の混合物とすることができる。
【0053】
式(4)の第1の実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRの1個または複数個は炭化水素基であり、R、R、R、R、R、R、RおよびRの1個または複数個はエポキシ含有基である。特定の実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個または7個はエポキシ含有基であり、残りの基は炭化水素基である。例えば、特定の一実施形態においては、R、R、RおよびRはエポキシ含有基であり、R、R、RおよびRは炭化水素基である。
【0054】
式(4)の第2の実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRの1個または複数個は炭化水素基であり、R、R、R、R、R、R、RおよびRの1個または複数個はヒドロキシ含有基である。特定の実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個または7個はヒドロキシ含有基であり、残りの基は炭化水素基である。別の特定の一実施形態においては、R、R、RおよびRはヒドロキシ含有基であり、R、R、RおよびRは炭化水素基である。
【0055】
式(4)の第3の実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRの1個または複数個はエポキシ含有基であり、R、R、R、R、R、R、RおよびRの1個または複数個はヒドロキシ含有基である。特定の実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個または7個はエポキシ含有基であり、残りの基はヒドロキシ含有基である。別の特定の実施形態においては、R、R、R、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個または7個はヒドロキシ含有基であり、残りの基はエポキシ含有基である。別の特定の一実施形態においては、R、R、RおよびRはヒドロキシ含有基であり、R、R、RおよびRはエポキシ含有基である。
【0056】
簡潔にするために、式(1)および(4)は、すべての窒素原子を(カチオンラジカルとしてではなく)無電荷として示す。しかし、これらの式は、(示されていようといまいと)1個以上の窒素原子がカチオンラジカルの形であることを含み、カチオンラジカルは全電荷が等しい1個以上のアニオンによって必ず電荷が平衡化されていると理解される。式(1)および(4)のカチオンラジカル体は、色素が近赤外領域において吸収するようにする。異なる実施形態においては、例えば、示した、または示していない、式(1)または(4)の1個、2個、3個、4個、5個、6個以上の窒素原子は、カチオンラジカルの形である。これらは、それぞれ、アミニウム、ジアミニウム、トリアミニウム、テトラアミニウム、ペンタアミニウム、ヘキサアミニウム(および一般に、ポリアミニウム)化合物と称することができる。
【0057】
アニオンは、当分野で公知のアニオンのいずれかとすることができる。アニオンの幾つかの特に好ましい例としては、SbF、ハロゲン化物(例えば、Cl、Br、I)、ClO、CHSO、CSO、CSO、N(SOCF、N(SO、N(SO、N(SOおよびC(SOCFが挙げられる。
【0058】
特定の一実施形態においては、本発明は、(i)1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素、および(ii)1種または複数種のキャスティング溶媒を含む、硬化性組成物を対象とする。トリフェニルアミン系色素は、好ましくは、一般式(1)若しくは(4)またはその両方を有し、色素分子の少なくとも一部は、色素分子1個当たり少なくとも2個の(色素分子間で架橋可能な)架橋性基を有する。例えば、式(1)の色素では、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも2個は1個以上の架橋性基を含み、式(4)の色素では、R、R、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも2個は1個以上の架橋性基を含む。架橋性基は、上述したように、色素分子間で架橋可能な任意の適切な基(例えば、エポキシド基およびヒドロキシ基)とすることができる。
【0059】
1種または複数種の架橋性ポリマーは、当該技術分野において公知の多くの手段により(たとえば、化学硬化法、熱硬化法もしくは放射性硬化法またはその全部により)架橋し得る、当該技術分野において公知のポリマーのいずれであってもよい。ポリマーは、ホモポリマーでも、コポリマーでも、ターポリマーでも、またはより高次のポリマーでもよい。架橋性ポリマーは、好ましくはマイクロエレクトロニクス基板上に固体の犠牲層または保護層(特に薄膜)を形成するのに好適である。こうしたポリマーの一部のクラスとして、一般的に反射防止コーティング(特にBARC(bottom anti−reflective)層)に使用されるポリマー組成物、SITHベースのポリマー、およびROMPポリマー系が挙げられる。架橋性ポリマーはまた、好ましくは本明細書に意図される色素と好ましくない反応を起こさない。
【0060】
一実施形態では、1種または複数種の架橋性ポリマーの少なくとも1つは、ポリマー単位の少なくとも一部にオキサシクロブチル基またはエポキシド基(すなわち、エチレンオキシドの環部分)などの反応性の環状エーテル基を含む。別の実施形態では、1種または複数種の架橋性ポリマーの少なくとも1つは、ポリマー単位の少なくとも一部に1種または複数種のアクリレート単位またはメタクリレート単位を含む。アクリレートまたはメタクリレートは、酸形態またはエステル形態のどちらであってもよく、エステル形態は、上述の(任意にヘテロ原子で置換されている)炭化水素基のいずれのエステルであってもよい。本明細書に意図される1つまたは複数のアクリレート単位またはメタクリレート単位は、好ましくは、下記式で表される。
【0061】
【化6】

【0062】
式(5)および(6)では、
Rは、任意に1個または複数個のO原子、N原子、またはS原子でヘテロ原子誘導体となっている上述の炭化水素基のいずれかを表す。特定の実施形態では、このポリマーのアクリレート単位またはメタクリレート単位の少なくとも1つは、反応性の環状エーテル(たとえば、エポキシド)基としてRを有する。別の実施形態では、ポリマーのアクリレート単位またはメタクリレート単位の少なくとも1つは、単環式環系または多環式環系を含み、そのいずれも、飽和もしくは不飽和の脂肪族でも、または飽和もしくは不飽和の芳香族でもよい。単環または多環系は、好ましくは、1個以上の反応性環式エーテルまたはヒドロキシ含有基を含む。本明細書では一部の特定の多環系としては、ノルボルニルおよびアダマンチル基が挙げられる。
【0063】
別の実施形態では、1種または複数種の架橋性ポリマーの少なくとも1つは、ポリマー単位の少なくとも一部にビニル炭化水素重合単位(たとえば、ポリプロピレン、ポリスチレン、および同種のもの)を含む。本明細書に意図される1つまたは複数のビニル炭化水素単位は、好ましくは、下記式で表される。
【0064】
【化7】

【0065】
式(7)では、
Rは、任意に1個または複数個のO原子、N原子、またはS原子でヘテロ原子誘導体となっている上述の炭化水素基のいずれかを表す。特定の実施形態では、ポリマー中のビニル炭化水素単位の少なくとも1つは、反応性の環状エーテル(たとえば、エポキシド)基としてRを有する。別の実施形態では、ポリマー中のビニル炭化水素単位の少なくとも1つは、単環式環系または多環式環系を含み、そのいずれも、飽和もしくは不飽和の脂肪族でも、または飽和もしくは不飽和の芳香族でもよい。
【0066】
幾つかの特に好ましいポリマー単位としては、以下が挙げられる。
【0067】
【化8】

【0068】
上述の化学構造の集合は、他のポリマー単位、特に上記の化学構造の集合に記載された他のポリマー単位、と組み合わせることができる個々のポリマー単位(すなわち、式中、nの値は少なくとも1である)を示す。一実施形態では、ポリマーは、上述のポリマー単位のいずれかのホモポリマーである。別の実施形態では、ポリマーは、上記に例示したポリマー単位のいずれかのコポリマーである。別の実施形態では、ポリマーは、上記に例示したポリマー単位のいずれかのターポリマー、またはより高次のポリマーである。コポリマー、ターポリマー、およびより高次のポリマーは、たとえば、ブロックコポリマーでも、グラフトコポリマーでも、またはランダムコポリマーでもよい。ポリマー、コポリマー、ターポリマーの1つの組み合わせ(すなわち、混合物)、ならびにこれらの複数の組み合わせも意図している。
【0069】
幾つかの特に好ましい架橋性コポリマーとしては、以下の化学構造のものが挙げられる。
【0070】
【化9】

【0071】
上記の化学式17〜22では、下付き文字n、m、w、x、y、およびzは各々独立に、少なくとも1、2、3、または4であり、最大、たとえば、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1000、またはそれ以上である。あるいは、これらの下付き文字は、モル百分率と考えてもよく、たとえば、n+m=100である。この方法では、nまたはmのどちらかは、たとえば、1モルパーセント、2モルパーセント、5モルパーセント、10モルパーセント、15モルパーセント、20モルパーセント、25モルパーセント、30モルパーセント、35モルパーセント、40モルパーセント、45モルパーセント、または50モルパーセントでも、またはこれらの間の範囲でもよい。
【0072】
1種または複数種のキャスト溶媒は、色素を効率的に可溶化する当該技術分野において公知の任意の溶媒である。この溶媒は、スピンコート法と共に従来から使用され、NIR吸収層組成物の性能に好ましくない影響をあまり与えない任意の溶媒であってもよい。溶媒の一部の例として、3−ペンタノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、プロピレングリコールメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、メチルセロソルブ(2−メトキシエタノール)、酢酸ブチル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールプロピルエーテル(1−プロポキシ−2−プロパノール、Dowanol PnP)、4−ヘプタノン、3−ヘプタノン、2−ヘプタノン、N,N−ジメチルホルムアミド、アニソール、乳酸エチル、シクロヘキサノン、セロソルブアセテート(エチレングリコールエチルエーテルアセテート)、N,N−ジメチルアセトアミド、ジグリム(2−メトキシエチルエーテル)、エチル3−エトキシプロピオネート、ジメチルスルホキシド、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル(Dowanol(R))、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル、ジエチルマロネート、2−(2−ブトキシエトキシエタノール)(DEGBE)、およびγ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0073】
基板に塗布する組成物中の溶媒の量は典型的には、固形分が約1〜20wt%になるように選択される。固形分の配合量が多くなると、一般にコーティング層が厚くなる。本開示の組成物は、当該技術分野において公知であってもよい微量の補助成分(たとえば、塩基添加剤、界面活性剤等)をさらに含んでもよい。
【0074】
組成物は任意に、硬化ステップを容易にするため1種または複数種の共重合体架橋剤(すなわち、「架橋成分」)を含んでもよい。1種または複数種の共重合体架橋剤は、異なるポリマー鎖の官能基を連結することにより機能する任意の分子またはポリマーである。たとえば、ジオール化合物もしくはポリマー、トリオール化合物もしくはポリマー、テトラオール化合物もしくはポリマー、またはより高度のポリオール化合物もしくはポリマーは、エポキシ化ポリマーの架橋に効果的であり、またはあるいは、ジ−エポキシ化合物もしくはポリマー、トリ−エポキシ化合物もしくはポリマー、またはポリ−エポキシ化合物もしくはポリマーは、ヒドロキシ、アミノ、またはエポキシを含むポリマーの架橋に効果的である。架橋成分は典型的には、発生した酸もしくは加熱またはその両方により触媒する形で、反射防止コーティング組成物中に存在するすべてのポリマー成分と反応し得るクロスリンカである。一般に、本発明の反射防止コーティング組成物に使用される架橋成分は、ネガ型フォトレジストの技術分野で知られる任意の好適な架橋剤であるほか、反射防止コーティング組成物の他の選択された成分に適合する架橋剤である。架橋剤は典型的には、発生した酸の存在下でポリマー成分を架橋する働きをする。典型的な架橋剤として、サイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)からPOWDERLINK(R)という商標で入手可能なテトラメトキシメチルグリコールウリル、メチルプロピルテトラメトキシメチルグリコールウリル、およびメチルフェニルテトラメトキシメチルグリコールウリルなどのグリコールウリル化合物がある。他に考えられる架橋剤として、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール化合物、たとえば特開平1−293339号に開示されたものなど、エーテル化アミノ樹脂、たとえば、メチル化またはブチル化メラミン樹脂(それぞれN−メトキシメチル−メラミン、またはN−ブトキシメチル−メラミン)、および、たとえばカナダ特許第1 204 547号に開示されたようなメチル化/ブチル化グリコールウリルが挙げられる。また、ビス−エポキシまたはビス−フェノールなどの他の架橋剤(たとえば、ビスフェノール−A)を使用してもよい。いくつかの実施形態では、架橋剤の組み合わせが好ましい場合がある。
【0075】
ポリマー間または色素間架橋剤の一部の特定の例を以下に示す。
【0076】
【化10】

【0077】
組成物は任意に、硬化ステップを容易にするため1種または複数種の酸発生剤を含んでもよい。酸発生剤は典型的には、熱処理時に酸を遊離する熱酸発生剤化合物である。熱酸発生剤の一部の例として、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロフェニルトシレート、および他の有機スルホン酸のアルキルエステルが挙げられる。活性化時にスルホン酸基を発生する化合物は、一般に好適である。他の好適な熱活性化酸発生剤については、米国特許第5,886,102号および同第5,939,236号に記載されている。必要に応じて、放射線感受性酸発生剤を熱活性化酸発生剤に代わる酸発生剤として、または、熱活性化酸発生剤と組み合わせて使用してもよい。好適な放射線感受性酸発生剤の例についても、米国特許第5,886,102号および同第5,939,236号に記載されている。また、NIR吸収組成物の他の成分に適合する限り、レジスト分野で知られる他の放射線感受性酸発生剤を使用してもよい。放射線感受性酸発生剤を使用する場合、適切な放射線を照射して組成物の硬化(架橋)温度を下げて酸の発生を誘導し、その結果架橋反応を触媒してもよい。放射線感受性酸発生剤を使用する場合でも、架橋プロセスを速めるため組成物を熱処理すること(たとえば、生産ラインのウエハのため)が好ましい。いくつかの実施形態では、酸発生剤の混合物を使用することが好ましい。
【0078】
熱酸発生体の一部の特定の例を以下に示す。
【0079】
【化11】

【0080】
組成物は任意に、1種または複数種の界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤を含ませると、たとえば、レベリング剤として働くことでNIR吸収膜のウエハにおける膜厚の均一性を改善することができる。界面活性剤は、湿潤剤として使用するとき、NIR吸収膜のスピンコーティングの際に、基板表面の濡れ(wetting)が不十分なために起こる欠陥生成を減少させることもできる。
【0081】
一実施形態では、1種または複数種の界面活性剤は、イオン性界面活性剤を含み、イオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤でも、カチオン性界面活性剤でも、または両性イオン界面活性剤でもよい。アニオン性界面活性剤の一部の例として、フッ素化および非フッ素化カルボキシラート(たとえば、ペルフルオロオクタノエート、ペルフルオロデカノエート、ペルフルオロテトラデカノエート、オクタノエート、デカノエート、テトラデカノエート、脂肪酸塩)、フッ素化および非フッ素化スルホネート(たとえば、ペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロデカンスルホネート、オクタンスルホネート、デカンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート)、フッ素化および非フッ素化スルフェート(たとえば、ドデシルスルフェート、ラウリルスルフェート、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ペルフルオロドデシルスルフェート、および他のアルキルおよびペルフルオロアルキルスルフェート塩)が挙げられる。カチオン性界面活性剤の大部分は、第四級アンモニウム界面活性剤、たとえば、アルキル基が典型的には、少なくとも4個の炭素原子、および最大14個、16個、18個、20個、22個、24個、または26個の炭素原子を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩に見られるような、正に荷電した窒素原子を含む。カチオン性界面活性剤の一部の例として、第四級アンモニウム界面活性剤(たとえば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウム)、ピリジニウム界面活性剤(たとえば、塩化セチルピリジニウム)、およびポリエトキシル化アミン界面活性剤(たとえば、ポリエトキシル化タローアミン)が挙げられる。両性イオン界面活性剤の一部の例として、ベタイン(たとえば、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン)およびグリシネートが挙げられる。非イオン界面活性剤の一部の例として、アルキルポリエチレンオキシド、アルキルフェノールポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのコポリマー(たとえば、ポロキサマーおよびポロキサミン)、アルキルポリグルコシド(たとえば、オクチルグルコシド、デシルマルトシド)、脂肪アルコール、(たとえば、セチルアルコール、オレイルアルコール)、脂肪アミド(たとえば、コカミドMEA、コカミドDEA)、およびポリソルベート(たとえば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80)が挙げられる。
【0082】
あるいは、組成物は、上記架橋性ポリマー、若しくはポリマー間(色素間)架橋剤、またはその両方に連結された近赤外吸収トリフェニルアミン系色素を含むことができる。
【0083】
固体の近赤外吸収膜を生成するには、上述の組成物に、当該技術分野において公知の多くの手段のいずれかにより(たとえば、化学硬化法、熱硬化法もしくは放射性硬化法またはその全部により)架橋ステップを行う。一般には、硬化プロセス中に実質的にすべてのキャスト溶媒を除去する。膜は、任意の好適な厚さであればよい。膜の厚さは一般に、塗布する場所によって限定される。異なる実施形態では、膜の厚さは、少なくともまたは最大で1nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、250nm、400nm、500nm、750nm、1μm、2μm、5μm、10μm、50μm、または100μmであるか、または前述の任意の2つの値により決定される厚さの任意の特定の範囲である。好ましい実施形態では、NIR吸収膜の厚さは、1000nm以下、好ましくは1000nm未満である。特に好ましい膜の厚さは、30〜400nmの範囲である。NIR吸収膜は、好ましくは600〜1200nmの範囲内の吸収極大でk値が0.15を超える。NIR吸収膜は、一層好ましくは、こうした範囲のk値が0.45を超え、より一層好ましくは、0.7を超える。
【0084】
本明細書では、その表面に上述の近赤外吸収膜を有するマイクロエレクトロニクス(すなわち、半導体)基板を特に意図している。このために、NIR吸収膜は、当該技術分野において公知の技法のいずれかにより、マイクロエレクトロニクス基板(または他の表面)にコーティングすることができる。特定の実施形態では、NIR吸収膜を溶媒キャスト法により塗布し、硬化させる。下部構造から反射され膜スタックを通過するレベリング信号のNIR光のかなりの部分(たとえば、少なくとも30%)、または相当な部分(好ましくは、少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%)をNIR吸収膜に吸収させることが望ましい。必要に応じて、より厚いNIR吸収膜をコーティングするか、あるいは、広範囲のNIRスペクトルにわたりk値が比較的高くなるようにNIR吸収膜を設計することにより、反射光の吸収を大きくすることができる。
【0085】
特定の実施形態では、上記のようなNIR吸収膜により被覆されたマイクロエレクトロニクス基板は、NIR吸収膜を被覆しているレジスト(たとえば、フォトレジスト)膜をさらに含む(すなわち、NIR吸収膜は、マイクロエレクトロニクス基板とフォトレジスト膜との間にある)。フォトレジスト膜は、当該技術分野において公知のポジ型フォトレジスト膜、またはネガ型フォトレジスト膜のいずれであってもよい。一実施形態では、レジストは、NIR吸収膜を直接被覆する(すなわち、レジストは、NIR吸収膜に結合しているか、または接触している)。別の実施形態では、レジストは、レジストとNIR吸収膜との間に1つまたは複数の他の膜があることにより、NIR吸収膜を直接被覆していない(すなわち、レジストは、NIR吸収膜に結合していないか、または接触していない)。たとえば、マイクロエレクトロニクス基板とNIR吸収膜との間、またはNIR吸収膜とフォトレジストとの間に、1つまたは複数の他のコーティングの任意の層が存在していてもよい。別の実施形態では、上述のNIR吸収膜は、感光性成分を含むため、NIR吸収膜がフォトレジスト膜でもある。
【0086】
さらに、1つまたは複数の他の膜が、レジスト層を被覆してもよい。レジスト層の被覆に使用する膜の1種の例として、液浸トップコート膜がある。液浸トップコート膜は典型的には、レジスト成分が水などの液浸媒体に溶出するのを防ぐ働きをする。
【0087】
垂直方向のアライメントを適切に行うには、広帯域のNIR源からフォーカス・レベリング・センサ光を放射させる。この光は、マイクロエレクトロニクス構造に入射し、マイクロエレクトロニクス構造から反射する。次いで反射光をレベリング光センサで検出し、その後オート・フォーカス機構によりz高さを調整して、フォトレジスト層を結像焦点面内に配置する。下部構造から反射する任意のNIR光は、表面反射光に干渉し、z高さの調整を不適切なものにする。有利には、本明細書に記載するようなNIR吸収膜を加えると、下層のマイクロエレクトロニクス基板の埋め込みトポグラフィから放射する赤外波長の反射または回折が実質的に最小限に抑えられるか、あるいは、さらには除去される。したがって、ウエハの上面をより正確に検知することが可能になる。上面の検知が改善すれば、表面の特徴をより正確に配置したり、あるいは、表面を操作(たとえば、フォトレジストのパターニング)したりすることができる。
【0088】
マイクロエレクトロニクス構造では、固体の近赤外吸収膜は典型的には、裏面反射防止(BARC)コーティング、平坦化下層(UL)、または特別な中間層など反射防止コーティングとして機能する。BARC層およびUL層は通常どちらも、描画波長での著しい吸収性、もしくは酸素を含むプラズマに対するエッチング耐性、またはその両方を要求されるため、上述の架橋性ポリマー中に芳香族部分もしくは多環式部分またはその両方を持つことが好ましい。
【0089】
別の態様では、本発明は、マイクロエレクトロニクス基板であって、マイクロエレクトロニクス基板とフォトレジスト膜との間に上記のNIR吸収膜を有する、マイクロエレクトロニクス基板上に被覆されたフォトレジスト層をパターニングするための方法を対象とする。NIR吸収層は、それを通過するNIR光を十分に吸収する。本方法は、マイクロエレクトロニクス構造から反射する近赤外光を検知し、検知された光に基づき露光装置およびマイクロエレクトロニクス基板の相対的な位置を調整することにより、フォトレジスト膜の焦点面位置をアライメントしてフォーカス制御することを含む。フォトレジスト膜をアライメントしてフォーカス制御したら、パターニング露光ビームに曝すことにより、フォトレジスト層をパターニングする。本方法は、マイクロエレクトロニクスまたは半導体処理の当該技術分野において一般に利用される他の多くのステップをさらに含んでもよい。たとえば、フォトレジストのパターニング後、当該技術分野において公知の方法のいずれかにより、フォトレジストを現像するのが一般的である。
【0090】
以下に、本発明を図示し、本発明のある種の具体的な実施形態を説明するため、実施例を記載する。ただし、本発明の範囲は、本明細書に記載される例により、いかなる意味においても限定されるものではない。
【実施例1】
【0091】
トリス(4−アミノフェニル)アミンの合成
(図1の化合物2)
500mLフラスコに、10.0gのトリス(4−ニトロフェニルアミン)(Sigma−Aldrichから得られる化合物1)(26.3mmol)を入れ、42gのスズ顆粒を入れた。85mLのエタノール(EtOH)、60mLの水および50mLの塩酸(37%)を添加し、混合物を16時間還流させた。大きいビーカーにそれを注ぐことによって、熱い混合物を残りのスズから移した。室温(すなわち、約15〜25℃)に冷却すると、オフホワイトの結晶が沈殿し、それを濾別した。結晶を熱水に再溶解させ、生成した透明溶液を濾過した。大過剰の水酸化ナトリウム(50%溶液)を添加した。白色沈殿を濾過し、水で徹底的に洗浄し、次いで減圧乾燥させた。収率7.3g(25.2mmol、95.7%)。
【実施例2】
【0092】
トリス(4−アセトアミドフェニル)アミンの合成
(図1の化合物3)
6.7gの化合物2(23.1mmol)を100mLの無水ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。これに10.1gの無水トリエチルアミン(100mmol、4.3当量)を添加した。フラスコを氷冷し、次いで塩化アセチル(7.85g、7.1mL、100mmol、4.3当量)を添加漏斗から徐々に添加すると、トリエチルアンモニウム塩酸塩が沈殿した。混合物を1時間撹拌し、次いで濾過した。濾液を500mLの氷水に入れて、生成物を沈殿させた。黄褐色沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥させた。収率8.4g(20.2mmol、87.4%)。
【実施例3】
【0093】
トリス(4−[N−エチルアミノ]フェニル)アミンの合成
(図1の化合物4)
50mLの無水テトラヒドロフラン(THF)中の4gのLiAlHに化合物3(5.95g、14.3mmol)を室温で徐々に添加した。混合物を終夜窒素下で還流させ、次いで室温(r.t.)に冷却し、続いて水および10%NaOH溶液を添加して慎重に加水分解した。無機沈殿をろ過して廃棄し、残りのTHF溶液を乾燥、蒸発させて化合物4、2.3g(6.15mmol、43%)を得た。
【実施例4】
【0094】
トリス(4−[N−エチル,N−グリシジルアミノ]フェニル)アミンの合成
(図1の化合物5)
0.5gの化合物4(1.3mmol)を20mLのエピクロロヒドリンに溶解させ、次いで1gのKCOを添加し、混合物をN下110℃で16時間撹拌した。混合物を室温に冷却後、アセトンを添加し、混合物をろ過した。アセトンを蒸留除去し、次いで幾らかのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加した。過剰のエピクロロヒドリンを減圧除去し、加熱してDMSOをできるだけ除去した。収率はほぼ100%であった。
【実施例5】
【0095】
コハク酸モノメチルの合成
(図2の化合物7)
20.33gの無水コハク酸(化合物6)(0.2mol)を150mLのメタノールに溶解させた。DMF1滴を添加後、混合物を6時間還流させ、次いで過剰のメタノール(MeOH)を蒸発させ、残留塊を減圧乾燥させた。収率22.1g(0.17mol、82.5%)。
【実施例6】
【0096】
メチルスクシニル塩化物の合成
(図2の化合物8)
22.1gのコハク酸モノメチル(化合物7)(0.17mol)を50mLのSOClに溶解させ、生成した溶液を100℃に30分間加熱した。続いて、SOClの大部分を蒸留除去した。混合物を室温に冷却し、16時間減圧した。次いで、生成物を蒸留した。収率15.5g(0.1mol、60.6%)。
【実施例7】
【0097】
トリス(4−[N−エチル−N−(4−メトキシカルボニルプロピオンアミド)]フェニル)アミンの合成
(図2の化合物9)
7.55gの化合物4(20.2mmol)を150mLの無水THFに溶解させ、7.0gの無水トリエチルアミン(69mmol、3.4当量)を添加した。続いて、10.4gの化合物8(69mmol、3.4当量)を滴下した。混合物を室温で1時間撹拌した後、濾過し、蒸発させた。粗生成物を化合物10の合成に更に精製せずに使用した。
【実施例8】
【0098】
トリス(4−[N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)アミノ]フェニル)アミンの合成
(図2の化合物10)
粗製化合物9を150mLの無水THFに溶解させ、大モル過剰のLiAlHを添加した。混合物を終夜N下で還流させ、次いで0℃に冷却し、続いて水および10%NaOH溶液を添加して慎重に加水分解した。濾過および乾燥後、THFを蒸発させ、生成物を塩化メチレンに溶解させ、水で抽出(2x)して、更に精製した。塩化メチレンをMgSOで脱水し、次いで蒸発によって除去した。生成物を36時間減圧乾燥させた。収率5.05g(化合物4、42.4%)。
【実施例9】
【0099】
N,N−ジブチル−4−ブロモアニリンの合成
1−ブロモブタン(41.1g、300mmol)、4−ブロモアニリン(17.2g、100mmol)およびKOH(16.8g、300mmol)を窒素ガス下で約18時間加熱還流させた。冷却後、混合物を水とヘキサンに分配し、有機層を水続いてかん水で洗浄した。MgSOで脱水し、ろ過後、溶媒を蒸発させ、混合物を減圧下で蒸留した。25〜100℃および圧力360〜210mTorrで収集された留出物画分は、生成物と出発材料の混合物を含んだ。100〜107℃および圧力200mTorrで収集された画分は、純粋な生成物12.1g(43%)を与えた。
【実施例10】
【0100】
テトラキス−[N,N,N’,N’−(p−(N”,N”−ジ−(n−ブチル)アミノ)フェニル)]フェニレンジアミンの合成(LT−535)
実施例9のN,N−ジブチル−4−ブロモアニリン(5.62g、19.8mmol)、1,4−フェニレンジアミン(520mg、4.8mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(2.12g、22mmol)、Pddba(90mg)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(250mg、0.52mmol)およびジオキサン(20mL)を100℃で約18時間加熱した。冷却後、混合物を水とエーテルに分配した。水相をエーテルでもう一度抽出し、混合有機物を1M塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、MgSOを用いて脱水した。ろ過およびエーテル蒸発後、生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって分離した。ヘキサンで溶出させ、酢酸エチル濃度を0から5%v/vに徐々に増加させて、2つの画分(赤および緑)が得られた。緑画分をエーテルに溶解させ、ヒドロ亜硫酸ナトリウム溶液と一緒に短時間振とうして、赤味を帯びた材料に戻した。理論に拘泥するものではないが、ブチル側鎖は、生成物のより容易な酸化をもたらし、それによって緑色ラジカル種を与えると考えられる。生成物を例えばAgNH(SOCFでアセトン中45℃で2時間処理することによってラジカルカチオン(単数または複数)を形成することができる。生成物は、以下の構造(または構造の混合物)を有すると考えられる。
【0101】
【化12】

【0102】
式中、R=n−ブチルであり、分子は1個以上のラジカルカチオンを含み(典型的には、N1とN2の一方または両方がラジカルカチオンである。)、対アニオンはN(SOCFなどの適切なアニオンとすることができる。
【実施例11】
【0103】
3−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−アダマンチルメタクリレートとグリシジルメタクリレート(GCMA:glycidyl methacrylate)とのコポリマー(PHEADMAGCMA(20/80))の合成
【0104】
【化13】

【0105】
冷却器、温度計、アルゴン入口およびマグネチック・スターラ・バーを備えた丸底フラスコに、3−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−アダマンチルメタクリレート(HEADMA)モノマー(3.365g、0.012モル)、グリシジルメタクリレート(GCMA)モノマー(6.823g、0.048モル)、AIBN(0.394g、各モノマーの総モル数の4%)、および約40gのTHFを加えた。反応混合物を室温で撹拌し、マントルヒーターに入れる前にアルゴン(Ar)を45分間流してバブリングを行った。この反応をAr不活性雰囲気下、72℃で一晩行った。次いでこの反応液を室温まで冷却し、ヘキサンで沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過し、ヘキサンで洗浄した。集めた固体を真空オーブンにより40℃で一晩乾燥させた。分子量(MW:molecular weight)は、ウォーターズ(Waters)モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:gel permeation chromatography)により測定したところ、約23,050g/molと測定された。
【実施例12】
【0106】
3−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−アダマンチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー(PHEADMAGCMA(50/50))および(PHEADMAGCMA(35/65))の合成
実施例11に記載されているのと同じ手順で2つのコポリマーを合成した。下記表1に、この反応に使用した各モノマーの量を示す。
【0107】
【表1】

【0108】
以下の表2に、ウォーターズ・モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定した分子量を示す。
【0109】
【表2】

【実施例13】
【0110】
5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボ−γ−ラクトンとグリシジルメタクリレートとのコポリマー(PNLMGCMA(35/65))の合成
【0111】
【化14】

【0112】
冷却器、温度計、アルゴン入口およびマグネチック・スターラ・バーを備えた丸底フラスコに、5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボ−γ−ラクトン(NLM)モノマー(5.84g、0.0263モル)、グリシジルメタクリレート(GCMA)モノマー(6.93g、0.0488モル)、AIBN(0.492g、各モノマーの総モル数の4%)、および約50gのTHFを加えた。反応混合物を室温で撹拌し、マントルヒーターに入れる前にArを45分間流してバブリングを行った。この反応をAr不活性雰囲気下、72℃で一晩行った。次いでこの反応液を室温まで冷却し、ヘキサンで沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過し、ヘキサンで洗浄した。集めた固体を真空オーブンにより40℃で一晩乾燥させた。分子量(MW)は、ウォーターズ・モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、約19,291g/molと測定された。
【実施例14】
【0113】
グリシジルメタクリレートのホモポリマー(PGCMA)の合成
【0114】
【化15】

【0115】
冷却器、温度計、アルゴン入口およびマグネチック・スターラ・バーを備えた丸底フラスコに、グリシジルメタクリレート(GCMA)モノマー(11.372g、0.08モル)、AIBN(0.525g、各モノマーの総モル数の4%)、および約40gのTHFを加えた。反応混合物を室温で撹拌し、マントルヒーターに入れる前にArを45分間流してバブリングを行った。この反応をAr不活性雰囲気下、72℃で一晩行った。次いでこの反応液を室温まで冷却し、ヘキサンで沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過し、ヘキサンで洗浄した。集めた固体を真空オーブンにより室温で一晩乾燥させた。分子量(MW)は、ウォーターズ・モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、約18,768g/molと測定された。
【実施例15】
【0116】
2−ヒドロキシエチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー(PHEMAGCMA(35/65))の合成
【0117】
【化16】

【0118】
冷却器、温度計、アルゴン入口およびマグネチック・スターラ・バーを備えた丸底フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)モノマー(3.64g、0.028モル)、グリシジルメタクリレート(GCMA)モノマー(7.39g、0.052モル)、AIBN(0.525g、各モノマーの総モル数の4%)、および約40gのTHFを加えた。反応混合物を室温で撹拌し、マントルヒーターに入れる前にArを45分間流してバブリングを行った。この反応をAr不活性雰囲気下、72℃で一晩行った。次いでこの反応液を室温まで冷却し、ヘキサンで沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過し、ヘキサンで洗浄した。集めた固体を真空オーブンにより室温で3日間乾燥させた。分子量(MW)は、ウォーターズ・モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、約25,028g/molと測定された。
【実施例16】
【0119】
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー(PHFIPAGCMA(50/50))の合成
【0120】
【化17】

【0121】
冷却器、温度計、アルゴン入口およびマグネチック・スターラ・バーを備えた丸底フラスコに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート(HFIPA)モノマー(3.33g、0.015モル)、グリシジルメタクリレート(GCMA)モノマー(2.13g、0.015モル)、AIBN(0.197g、各モノマーの総モル数の4%)、および約20gのTHFを加えた。反応混合物を室温で撹拌し、マントルヒーターに入れる前にArを45分間流してバブリングを行った。この反応をAr不活性雰囲気下、72℃で一晩行った。次いでこの反応液を室温まで冷却し、ヘキサンで沈殿させた。沈殿させたポリマーをヘキサンで洗浄し、次いで真空オーブンにより室温で一晩乾燥させた。分子量(MW)は、ウォーターズ・モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、約12,499g/molと測定された。
【実施例17】
【0122】
1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−ペンタン−2−オール−4−イルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー(PIPRHFAMAGCMA(40/60))の合成
【0123】
【化18】

【0124】
冷却器、温度計、アルゴン入口およびマグネチック・スターラ・バーを備えた丸底フラスコに、1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−ペンタン−2−オール−4−イルメタクリレート)(IPRHFAMA)モノマー(5.88g、0.02モル)、グリシジルメタクリレート(GCMA)モノマー(4.26g、0.03モル)、AIBN(0.328g、各モノマーの総モル数の4%)、および約35gのTHFを加えた。反応混合物を室温で撹拌し、マントルヒーターに入れる前にArを45分間流してバブリングを行った。この反応をAr不活性雰囲気下、72℃で一晩行った。次いでこの反応液を室温まで冷却し、ヘキサンで沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過し、ヘキサンで洗浄した。集めた固体を真空オーブンにより室温で一晩乾燥させた。分子量(MW)は、ウォーターズ・モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、約26,180g/molと測定された。
【実施例18】
【0125】
1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−ペンタン−2−オール−4−イルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー(PiPrHFAMAGCMA(20/80))の合成
【0126】
【化19】

【0127】
冷却器、温度計、アルゴン入口およびマグネチック・スターラ・バーを備えた丸底フラスコに、1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−ペンタン−2−オール−4−イルメタクリレート)(iPrHFAMA)モノマー(4.41g、0.015モル)、グリシジルメタクリレート(GCMA)モノマー(8.53g、0.06モル)、AIBN(0.328g、各モノマーの総モル数の4%)、および約40gのTHFを加えた。反応混合物を室温で撹拌し、マントルヒーターに入れる前にArを45分間流してバブリングを行った。この反応をAr不活性雰囲気下、70℃で一晩行った。次いでこの反応液を室温まで冷却し、ヘキサンで沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過し、ヘキサンで洗浄した。集めた固体を真空オーブンにより室温で一晩乾燥させた。分子量(MW)は、ウォーターズ・モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、約26,862g/molと測定された。
【実施例19】
【0128】
3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートのホモポリマー(PEPCHMMA)の合成
【0129】
【化20】

【0130】
冷却器、温度計、アルゴン入口およびマグネチック・スターラ・バーを備えた丸底フラスコに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(EPCHMMA)モノマー(3.92g、0.02モル)、AIBN(0.131g、各モノマーの総モル数の4%)、および約16gのTHFを加えた。反応混合物を室温で撹拌し、マントルヒーターに入れる前にArを45分間流してバブリングを行った。この反応をAr不活性雰囲気下、70℃で一晩行った。次いでこの反応液を室温まで冷却し、ヘキサンで沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過し、ヘキサンで洗浄した。集めた固体を真空オーブンにより室温で一晩乾燥させた。分子量(MW)は、ウォーターズ・モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、約27,828g/molと測定された。
【実施例20】
【0131】
3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートとスチレンとのコポリマー(PEPCHMMAST(70/30))の合成
【0132】
【化21】

【0133】
冷却器、温度計、アルゴン入口およびマグネチック・スターラ・バーを備えた丸底フラスコに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(EPCHMMA)モノマー(6.86g、0.035モル)、スチレン(ST)モノマー(1.56g、0.015モル)、AIBN(0.328g、各モノマーの総モル数の4%)、および約44gのTHFを加えた。反応混合物を室温で撹拌し、マントルヒーターに入れる前にArを45分間流してバブリングを行った。この反応をAr不活性雰囲気下、70℃で一晩行った。次いでこの反応液を室温まで冷却し、ヘキサンで沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過し、ヘキサンで洗浄した。集めた固体を真空オーブンにより室温で一晩乾燥させた。分子量(MW)は、ウォーターズ・モデル150−Cを用いて、THFを使用し28℃で行い、ポリスチレン標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定したところ、約13,534g/molと測定された。
【実施例21】
【0134】
レベリング・センサを使用したNIR色素の評価
異なる量のTriaminic NIR色素Epolite 2057(Epolineから入手可能)をシクロヘキサノンに溶解させて、それぞれ固形分1.86wt%、3.71wt%および7.42wt%の3個の溶液を得た。低温酸化ケイ素層(LTO)の下にNIR反射性下部構造を含む12インチのウェーハの上に回転速度1500rpmで各処方をスピンコートした。スピンコーティング後に得られたNIR色素層の厚さは、それぞれ1.86wt%で約50nm、3.71wt%で約100nm、7.42wt%で約200nmであった。Z高さをASML193nmステッパ内でASMLレベル・センサ信号を使用して測定し、IBM内部で開発されたソフトウェアを使用してレベル・データをプロットした。各測定は各スリットに沿って7個のデータ点を含み、領域を54回スキャンした。XMaxDev、Z Std DevおよびZ rangを含む3個の重要なパラメータを分析した。次いで、レベル・センサを使用して得られたレベル・データを、AGILE(機械式空気マイクロメータを備えたASMLツール)を使用して得られたデータと比較して、表面形態を測定した。下記表3に示すように、NIR吸収色素コーティングではかなりの改善が認められた。
【0135】
【表3】

【実施例22】
【0136】
レベリング・センサを使用したNIR色素とエポキシド・ポリマーのブレンドの評価
下記表4に示すように、エポキシド・ポリマーとNIR色素のブレンドを含む架橋性組成物を(ポリマーに対して)5wt%でPGMEAとGBLの混合溶媒中で処方した。
【0137】
【表4】

【0138】
表4の各試料を上記実施例21に記載のようにASMLレベル・センサを使用して評価した。これらの試料について得られたレベル・データを下記表5に示す。
【0139】
【表5】

【実施例23】
【0140】
NIR吸収層上のレジストのリソグラフィ試験
上記実施例22に記載のNIR17を、LTOの下に反射性下部構造を有する12インチのシリコン・ウェーハ上にスピンコートし、塗布後ベーク(PAB)を約185℃で約60秒間実施した。(日本合成ゴム製)フッ化アルゴン(ArF)レジストAR2073をNIR17上にスピンコートした。レジストの塗布後ベーク(PAB)を約110℃で約60秒間実施した。ウェーハをASMLステッパ(0.93NA、外側0.84および内側0.64シグマ環状照明)上で、線量20から30ミリジュール/センチメートル(mj/cm)および焦点+0.1から−0.1マイクロメートルで波長193nmの光に露光した。次いで、ウェーハの露光後ベーク(PEB)を約100℃で約60秒間実施した。次いで、膜を単一たまり(puddle)現像プロセスによって0.263N水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)現像剤(Moses Lake’s AD−10)を使用して約30秒現像した。次いで、露光領域内の幾つかの異なる位置における現像されたフォトレジスト・パターンの限界寸法(critical dimensions)(CD)をAMAT CDSEMツールを使用して測定し、次いでウェーハ全体のすべての領域で同じ測定を繰り返した。次いで、焦点および線量条件に対応する各領域位置のCDデータを露光領域最適焦点(best focus)分析に使用した。次いで、露光領域内の各位置の最適焦点を生成した。露光領域内の最適焦点分布を使用して、露光領域レベリング性能を決定した。NIR17の焦点誤差は、通常のBARCよりも減少した。
【0141】
本発明の好ましい実施形態と現在考えられるものを示し、説明してきたが、当業者であれば、本出願に記載した本発明の精神および範囲を逸脱しない範囲で他の別の実施形態が可能であり、本出願は、本明細書に記載された特許請求の範囲の所期の範囲内にある、そうした修正をすべて含むことを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)以下の一般式を有する1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素であって、
【化1】

式中、R、R、R、R、RおよびRは独立に、水素原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素基であり、炭化水素基は、任意に窒素、酸素、硫黄およびハライド原子から選択される1個または複数個のヘテロ原子を含み、1個以上の窒素原子はカチオンラジカルであり、前記1個以上のカチオンラジカルは、1個以上のアニオンによって電荷が平衡化されており、および
(ii)1種または複数種のキャスト溶媒
を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
酸発生剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1種または複数種の架橋剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記1種または複数種のトリフェニルアミン系色素は500nm〜1200nmの波長域内の電磁放射線を吸収する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1種または複数種の架橋性ポリマーを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1種または複数種の架橋性ポリマーがエポキシド含有基を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記1種または複数種の架橋性ポリマーが芳香族基を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記1種または複数種の架橋性ポリマーが多環式基を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
、R、R、R、RおよびR基の少なくとも2個は、各基が1個または複数個の架橋性基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記架橋性基がエポキシド含有基およびヒドロキシ基から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記1種または複数種のトリフェニルアミン系色素が以下の一般式で表されるものであり、
【化2】

式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立に、水素原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素基であり、炭化水素基は、任意に窒素、酸素、硫黄およびハライド原子から選択される1個以上のヘテロ原子を含み、1個以上の窒素原子はカチオンラジカルであり、前記1個以上のカチオンラジカルは、1個以上のアニオンによって電荷が平衡化されている
請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
(a)マイクロエレクトロニクス基板、
(b)前記マイクロエレクトロニクス基板上の固体の近赤外吸収膜であって、前記近赤外吸収膜は、1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素を含み、および
(c)前記近赤外吸収膜上のフォトレジスト膜
を含む、マイクロエレクトロニクス構造体。
【請求項13】
前記1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素は500nm〜1200nmの波長域内の電磁放射線を吸収する、請求項12に記載のマイクロエレクトロニクス構造体。
【請求項14】
前記1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素が以下の一般式を有し、
【化3】

式中、R、R、R、R、RおよびRは独立に、水素原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素基であり、炭化水素基は、任意に窒素、酸素、硫黄およびハライド原子から選択される1個または複数個のヘテロ原子を含み、1個以上の窒素原子はカチオンラジカルであり、前記1個以上のカチオンラジカルは、1個以上のアニオンによって電荷が平衡化されている
請求項12に記載のマイクロエレクトロニクス構造体。
【請求項15】
前記固体近赤外吸収膜は反射防止層である、請求項12に記載のマイクロエレクトロニクス構造体。
【請求項16】
前記反射防止層は裏面反射防止層である、請求項12に記載のマイクロエレクトロニクス構造体。
【請求項17】
前記反射防止層は下層である、請求項15に記載のマイクロエレクトロニクス構造体。
【請求項18】
マイクロエレクトロニクス基板上にコートされたフォトレジスト層をパターニングする方法であって、
(i)マイクロエレクトロニクス基板を用意すること、
(ii)前記マイクロエレクトロニクス基板上に近赤外吸収層を形成することであって、前記近赤外吸収層は、1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素を含み、
(iii)前記近赤外吸収層の上にフォトレジスト層を形成すること、
(iv)前記近赤外吸収層およびフォトレジスト層を含む前記マイクロエレクトロニクス基板から反射する近赤外光を検知することによって、前記フォトレジスト層の焦点面位置をアライメントしてフォーカス制御すること、および
(v)前記フォトレジスト層を露光ビームに曝して、前記フォトレジスト層をパターニングすること
を含む方法。
【請求項19】
前記1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素は500nm〜1200nmの波長域内の電磁放射線を吸収する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1種または複数種の近赤外吸収トリフェニルアミン系色素は以下の一般式を有し、
【化4】

式中、R、R、R、R、RおよびRは独立に、水素原子、または少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素基であり、炭化水素基は、任意に窒素、酸素、硫黄およびハライド原子から選択される1個または複数個のヘテロ原子を含み、1個以上の窒素原子はカチオンラジカルであり、前記1個以上のカチオンラジカルは、1個以上のアニオンによって電荷が平衡化されている
請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−502611(P2013−502611A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525606(P2012−525606)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/044631
【国際公開番号】WO2011/022221
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】