送受信機
【課題】マルチバンド通信用電圧制御発振器の個数の増加、広帯域化、位相雑音の増加を軽減すること。
【解決手段】送受信機は、発振器34、複数の通信ブロックTx_Blk1…4を含む。各通信ブロックは、分周器11…14、ミキサー9、10を含む。1つの通信ブロックTx_Blk1の分周器11の分周数が偶数の整数に設定され、分周器からミキサーに供給される通信用ローカル信号は90度の位相差を有するクォドラチャー信号となる。他の通信ブロックTx_Blk4の他の分周器14の分周数が非整数に設定され、分周器14からミキサーに供給される通信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャー信号となる。送受信機は、オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を他の通信ブロックTx_Blk4のミキサーに関係する通信アナログ信号に付与する変換ユニット35を更に含む。
【解決手段】送受信機は、発振器34、複数の通信ブロックTx_Blk1…4を含む。各通信ブロックは、分周器11…14、ミキサー9、10を含む。1つの通信ブロックTx_Blk1の分周器11の分周数が偶数の整数に設定され、分周器からミキサーに供給される通信用ローカル信号は90度の位相差を有するクォドラチャー信号となる。他の通信ブロックTx_Blk4の他の分周器14の分周数が非整数に設定され、分周器14からミキサーに供給される通信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャー信号となる。送受信機は、オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を他の通信ブロックTx_Blk4のミキサーに関係する通信アナログ信号に付与する変換ユニット35を更に含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話、無線LAN等のRF通信に利用される受信機と送信機とを具備する送受信機に関するものであり、特に電圧制御発振器の個数の増加もしくは通信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減する有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GSM、GPRS、EDGE、WCDMA、DCS、PCSに代表されるセルラーや無線LAN等の各種通信方式が発展しているが、近年、1つの端末で複数の通信方式や送受信周波数帯域に対応したマルチモード/マルチバンド送受信機が渇望されている。尚、GSMはGlobal System for Mobile Communicationの略であり、GPRSはGeneral Packet Radio Serviceの略である。EDGEは、Enhanced Data for GSM Evolution; Enhanced Data for GPRSの略である。WCDMAは、Wideband Code Division Multiple Accessの略である。DCSは、Digital Cellular Systemの略である。PCSは、Personal Communication Systemの略である。
【0003】
下記特許文献1には、マルチバンドに対応した送受信機が記載されている。この送信機は、送信ベースバンド信号を中間周波数送信信号にアップコンバートする直交変調器と、バンドパスフィルタと、中間周波数送信信号とRF局部信号とからRF送信信号を生成するアップコンバータと、高出力増幅器とにより構成されている。直交変調器は、局部発振器からの200MHzの中間周波数局部信号が供給されるπ/2移相器と、送信ベースバンド信号とπ/2移相器により生成されるπ/2(90度)の位相差の2つの中間周波数局部信号が供給される2個のミキサーと、2個のミキサーに接続された加算器により構成されている。マルチバンド送信に対応するために、2個のRF局部発振器と2個の分周器とが使用されている。
【0004】
下記非特許文献1には、世界規模の使用のための2100、1900、850/800MHzのトライ・バンドの第3世代セルラートランシーバー用集積回路(IC)が記載されている。このRFトランシーバーは、トライ・バンド・WCDMAとクワッド・バンド・GSM/EDGEとのベースバンド信号処理ICを集積化している。また、下記非特許文献1には、3GPPが提唱する下記6個の周波数帯が記載されている。尚、3GPPは、3-rd Generation Partnership Projectの略である。
【0005】
バンド アップリンク ダウンリンク 単位 地域
バンドI :1920〜1980 2110〜2170 MHz 欧州
バンドII :1850〜1910 1930〜1990 MHz 米国
バンドIII :1710〜1785 1805〜1880 MHz 欧州
バンドIV :1710〜1755 2110〜2155 MHz 米国
バンドV : 824〜 849 869〜 894 MHz 米国
バンドVI : 830〜 840 875〜 885 MHz 日本
更に、下記非特許文献1に記載されたRF集積化トランシーバーは、上記バンドIII、Vのダウンリンク周波数のRF受信信号が供給されるレシーバーと、上記バンドIII、Vのアップリンク周波数のRF送信信号を形成するトランスミッターと、周波数シンセサイザとを含んでいる。周波数シンセサイザは、レシーバーとトランスミッターとのための2個の集積化電圧制御発振器(VCO)と伴に2個のフラクショナルNシンセサイザとで構成されている。良く知られているように、フラクショナルNシンセサイザを用いることにより、PLL回路の分周器の分周数を整数だけではなく分数(フラクション)に設定することで基準周波数の整数倍以外の発振周波数を電圧制御発振器(VCO)の出力から得られるものである。
【0006】
上記レシーバーは、バンドIとバンドIIの略2GHzのダウンリンク周波数を持つRF受信信号が供給される第1受信ミキサーと、バンドVの略0.9GHzのダウンリンク周波数を持つRF受信信号が供給される第2受信ミキサーとを含む。3476〜4340MHzの周波数帯域をカバーする受信用電圧制御発振器(RxVCO)と第1受信ミキサーおよび第2受信ミキサーとの間には、分周数が2と4とに設定可能な受信用分周器が接続されている。
【0007】
上記トランスミッターは、バンドIとバンドIIの略1.9GHzのアップリンク周波数を持つRF送信信号を生成する第1送信ミキサーと、バンドVの略0.8GHzのアップリンク周波数を持つRF送信信号を生成する第2送信ミキサーとを含む。3296〜3960MHzの周波数帯域をカバーする送信用電圧制御発振器(TXVCO)と第1送信ミキサーとの間には分周数が2に設定された第1送信用分周器が接続され、この送信用電圧制御発振器(TXVCO)と第2送信ミキサーとの間には分周数が4に設定可された第2送信用分周器が接続されている。
【0008】
一方、下記非特許文献2には、WCDMAのRF受信信号とGSM900のRF受信信号とDCS1800のRF受信信号との3つの周波数バンドが供給されるRFフロントエンド・レシーバー・チップが記載されている。尚、WCDMAのRF受信信号の周波数は2110〜2170MHzであり、GSM900のRF受信信号の周波数は925〜960MHzであり、DCS1800のRF受信信号の周波数は1805〜1880MHzである。WCDMAのRF受信信号は、外付ローノイズアンプ(LNA)と表面弾性波フィルタ(SAW)の段間バンドパスフィルタとを介して内蔵WCDMAローノイズアンプの入力に供給される。DCS1800のRF受信信号とGSM900のRF受信信号とは、内蔵DCS1800ローノイズアンプの入力と内蔵GSM900ローノイズアンプの入力とにそれぞれ供給される。
【0009】
内蔵WCDMAローノイズアンプのRF受信増幅出力信号は第1I、Qダウンコンバージョンミキサー対の一方の入力端子に供給される。チップ外部の受信用電圧制御発振器(VCO)からの外部受信ローカル信号は分周数が2に設定された第1分周器に供給され、第1分周器の出力からの90°の位相差を持つ第1受信ローカル信号が第1I、Qダウンコンバージョンミキサー対の他方の入力端子に供給される。
【0010】
内蔵DCS1800ローノイズアンプのRF受信増幅出力信号は第2I、Qダウンコンバージョンミキサー対の一方の入力端子に供給される。チップ外部の受信用電圧制御発振器(VCO)からの外部受信ローカル信号は分周数が2に設定された第2分周器に供給され、第2分周器の出力からの90°の位相差を持つ第2受信ローカル信号が第2I、Qダウンコンバージョンミキサー対の他方の入力端子に供給される。
【0011】
内蔵GSM900ローノイズアンプのRF受信増幅出力信号は第3I、Qダウンコンバージョンミキサー対の一方の入力端子に供給される。チップ外部の受信用電圧制御発振器(VCO)からの外部受信ローカル信号は分周数が4に設定された第3分周器に供給され、第3分周器の出力からの90°の位相差を持つ第3受信ローカル信号が第3I、Qダウンコンバージョンミキサー対の他方の入力端子に供給される。
【0012】
尚、WCDMA用第1I、Qダウンコンバージョンミキサー対は、出力周波数がベースバンド信号であるゼロIFアーキテクチャーを採用している。しかし、GSMのDCS1800用第2ダウンコンバージョンミキサー対とGSM900用第2ダウンコンバージョンミキサー対とは、出力周波数がベースバンド信号周波数よりも高い低中間周波(ローIF)アーキテクチャーを採用している。また、これらのダウンコンバージョンミキサーには、良く知られているダブルバランスド型ギルバートセルのミキサーが使用されている。
【0013】
また、90°の位相差を持つ受信ローカル信号を生成する第1分周器、第2分周器、第3分周器として、ECLライクのD型フリップフロップの2段または4段のカスケード接続により構成されている。D型フリップフロップは、サンプリングステージとラッチステージとにより構成される。サンプリングステージはゲートに非反転クロックCLKが供給されソースが電流源を介して接地電圧に接続された第1MOSトランジスタを含み、ラッチステージはゲートに反転クロック/CLKが供給されソースが上述の電流源を介して接地電圧に接続された第2MOSトランジスタを含んでいる。サンプリングステージは、更にゲートに非反転入力信号Dと反転入力信号/Dとが供給されソースが第1MOSトランジスタのドレインに共通接続された第3と第4のMOSトランジスタを含み、第3と第4のMOSトランジスタのドレインはそれぞれ抵抗を介して電源電圧に接続される。ラッチステージは、更にゲートがサンプリングステージの第4と第3のMOSトランジスタのドレインに接続されソースが第2MOSトランジスタのドレインに共通接続された第5と第6のMOSトランジスタを含んでいる。サンプリングステージの第3MOSトランジスタのドレインとラッチステージの第5MOSトランジスタのドレインと第6MOSトランジスタのゲートとは、非反転出力端子Qに共通接続されている。サンプリングステージの第4MOSトランジスタのドレインとラッチステージの第6MOSトランジスタのドレインと第5MOSトランジスタのゲートとは、反転出力端子/Qに共通接続されている。尚、ECLは、高速バイポーラ論理回路であるEmitter Coupled Logicの略である。
また、下記特許文献2には、複数の電圧制御発振器と、送受信ミキサー部と、変復調部とを有するマルチバンド送受信機が記載されている。この構成では、発振周波数が異なる各バンドに対応した電圧制御発振器を複数個配置して、制御部から所望の周波数帯域に応じて切り換え指令を出力して、電圧制御発振器を切り換えることで、マルチバンド送受信に対応している。
【0014】
【非特許文献1】D.L.Kaczman et al, “A Single−Chip Tri−Band (2100, 1900, 850/800 MHz) WCDMA/HSDPA Cellular Transceicer”, IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.41, NO.5, MAY 2006, PP.1122−1132.
【非特許文献2】Chun−Lin Ko et al, “A CMOS Dual−Mode RF Front−End Receiver for GSM and WCDMA”, 2004 IEEE Asia−Pacific Conference on Advanced System Integrated Circuit(AP−ASIC2004), Aug.4−5, 2004, PP.374−377.
【特許文献1】特開2002−280924号 公報
【特許文献2】特開2000−269848号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者等は、本発明に先立ってWCDMA/マルチバンドの通信が可能な通信用RFICの研究・開発に従事した。ここでRFICはRadio Frequency Integrated Circuitの略である。この通信用RFICの送信機には、ダイレクトアップコンバージョンアーキテクチャーの採用が検討された。
【0016】
《本発明に先立って検討されたRFIC》
図2は、本発明に先立って検討された通信用RFICのWCDMA/マルチバンド対応ダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。送信バンドIの送信周波数は1920〜1980MHz、送信バンドVIの送信周波数は830〜840MHz、送信バンドIIの送信周波数は1850〜1910MHz、送信バンドXIの送信周波数は1428〜1453MHzである。送信バンドI、送信バンドVI、送信バンドII、送信バンドXIは、それぞれ送信ブロックTx_Blk1、送信ブロックTx_Blk2、送信ブロックTx_Blk3、送信ブロックTx_Blk4から基地局に送信されるものである。
【0017】
図2のディジタルI、Q信号入力端子26、27に供給されるディジタルベースバンド送信信号DI、DQは、D/A変換器22、25でアナログ信号に変換され、可変利得増幅器21、24で増幅され、ローパスフィルタ20、23で不要信号を除去される。ローパスフィルタ20、23からのアナログベースバンド送信信号は、各バンドに対応した送信ブロックTx_Blk1、2、3、4にそれぞれ配置されたI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の一方の入力端子に供給される。尚、可変利得増幅器21、24は、固定利得増幅器によって置換されることができる。送信バンド切り換え制御部15からは、各送信ブロックTx_Blk1、2、3、4のON/OFF制御を行う送信ブロック選択信号Tx_Blk_SSが出力される。
【0018】
RFIC内部には、送信ローカル信号発生用に2個の送信用電圧制御発振器(VCO)16、18が配置されている。まず、送信バンドI、VI、IIが選択された時には、3320〜3960MHzの発振周波数で発振する一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16がONに制御される。しかし、送信バンドXIが選択された時には、2856〜2896MHzの発振周波数で発振する他方の送信用電圧制御発振器(TXVCOB)18がONに制御される。
【0019】
以下の説明では、送信バンドIが選択された時の動作について示す。この時には送信ブロックTx_Blk1のみがONとなり、他の送信ブロックTx_Blk2、3、4はOFF状態とされる。送信バンドIが選択された時には、送信ブロックTx_Blk1のための一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16は、PLL回路17によって3840〜3960MHzの発振周波数帯域にロックされる。従って、分周数が2に設定された分周器11には、3840〜3960MHzの送信用電圧制御発振信号が供給される。それにより、分周比が1/2に設定された分周器11の2つの出力端子から一対のミキサー9、10の他方の入力端子に、90度(π/2)位相の異なる1920〜1980MHzの送信用ローカル信号32、33が供給される。一対のミキサー9、10のRF出力信号は合成された後、可変利得増幅器7で増幅され、バンドパスフィルタ6で不要信号を除去した後、電力増幅器5で増幅され、送信端子28から1920〜1980MHzの送信周波数の送信バンドIのRF送信信号として出力される。
【0020】
次に、送信バンドVIが選択された時の動作について示す。この時には送信ブロックTx_Blk2のみがONとなり、他の送信ブロックTx_Blk1、3、4はOFF状態とされる。送信バンドVIが選択された時には、送信ブロックTx_Blk2のための一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16は、PLL回路17によって3320〜3360MHzの発振周波数帯域にロックされる。従って、分周数が4に設定された分周器12には、3320〜3360MHzの送信用電圧制御発振信号が供給される。それにより、分周比が1/4に設定された分周器12の2つの出力端子から一対のミキサー9、10の他方の入力端子に、90度(π/2)位相の異なる830〜840MHzの送信用ローカル信号が供給される。一対のミキサー9、10のRF出力信号は合成された後、可変利得増幅器7で増幅され、バンドパスフィルタ6で不要信号を除去した後、電力増幅器5で増幅され、送信端子29から830〜840MHzの送信周波数の送信バンドVIのRF送信信号として出力される。
【0021】
次に、送信バンドIIが選択された時の動作について示す。この時には送信ブロックTx_Blk3のみがONとなり、他の送信ブロックTx_Blk1、2、4はOFF状態とされる。送信バンドIIが選択された時には、送信ブロックTx_Blkのための一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16は、PLL回路17によって3700〜3820MHzの発振周波数帯域にロックされる。従って、分周数が2に設定された分周器13には、3700〜3820MHzの送信用電圧制御発振信号が供給される。それにより、分周比が1/2に設定された分周器13の2つの出力端子から一対のミキサー9、10の他方の入力端子に、90度(π/2)位相の異なる1850〜1910MHzの送信用ローカル信号が供給される。一対のミキサー9、10のRF出力信号は合成された後、可変利得増幅器7で増幅され、バンドパスフィルタ6で不要信号を除去した後、電力増幅器5で増幅され、送信端子30から1850〜1910MHzの送信周波数の送信バンドIIのRF送信信号として出力される。
【0022】
最後に、送信バンドXIが選択された時の動作について示す。この時には送信ブロックTx_Blk4のみがONとなり、他の送信ブロックTx_Blk1、2、3はOFF状態とされる。送信バンドXIが選択された時には、送信ブロックTx_Blk4のための他方の送信用電圧制御発振器(TXVCOB)18は、PLL回路17によって2856〜2906MHzの発振周波数帯域にロックされる。従って、分周比が2に設定された分周器14には、2856〜2906MHzの送信用電圧制御発振信号が供給される。それにより、分周比が1/2に設定された分周器14の2つの出力端子から一対のミキサー9、10の他方の入力端子に、90度(π/2)位相の異なる1428〜1453MHzの送信用ローカル信号が供給される。一対のミキサー9、10のRF出力信号は合成された後、可変利得増幅器7で増幅され、バンドパスフィルタ6で不要信号を除去した後、電力増幅器5で増幅され、送信端子31から1428〜1453MHzの送信周波数の送信バンドXIのRF送信信号として出力される。
【0023】
《デュアル送信用電圧制御発振器》
図2のダイレクトアップコンバージョン送信機の構成では、2個の送信用電圧制御発振器(VCO)16、18と4個の分周器11、12、13、14の組み合わせで各バンドに対応したクォドラチャーローカル信号を作成している。4個の分周器11、12、13、14の分周数は2、4のいずれかを用いているので、4個の分周器11、12、13、14による分周比は1/2、1/4のいずれかとなる。一般的に分周器の分周数が偶数の時、2つの出力信号位相差を90度(π/2)とすることができ、クォドラチャー(直交)ローカル信号を生成できる。以上の理由から、図2の送信機では、上記非特許文献1と同様に4個の分周器11、12、13、14の分周数を2、4のいずれかに設定している。しかし、4個の分周器の分周数を2、4の偶数から選択するように制約することで、発振周波数範囲が制限された電圧制御発振器(VCO)から作成可能なローカル信号の周波数帯域も制限される。
【0024】
このような理由のために、送信ローカル信号周波数選択の自由度を向上するためには、電圧制御発振器(VCO)の発振周波数の広帯域化を行うか、もしくは上記特許文献2の記載のように電圧制御発振器(VCO)を各帯域毎に複数個配置する必要があった。
【0025】
図3は、図2に示した送信機における電圧制御発振器(VCO)の発振周波数帯域とローカル信号周波数帯域の関係を示す図である。
【0026】
図3の右上欄に示すように、一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16の発振周波数帯域は3320〜3960MHzに設定され、過大に発振周波数帯域を広げないようにしている。また、図3の下欄に示すように、送信バンドXIについても1/2分周器を用いて送信用クォドラチャーローカル信号を生成するために、発振周波数帯域は2856〜2906MHzに設定された他方の送信用電圧制御発振器(TXVCOB)18を追加している。そのため、図2の本発明に先立って検討された通信用RFICでは、他方の送信用電圧制御発振器(TXVCOB)18の追加により、RFICチップ面積が大きくRFICの製造コストが高いと言う問題があった。
【0027】
《シングル送信用電圧制御発振器》
また、図5も、図2と同様に本発明に先立って検討された他の通信用RFICのWCDMA/マルチバンド対応ダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。図5のRFICでは、発振周波数帯域が2856〜3960MHzと極めて広帯域に設定された単一の送信用電圧制御発振器(TXVCOC)34が、WCDMA/マルチバンドの通信をカバーしている。図5において、図2と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
図4は、図5に示した送信機における電圧制御発振器(VCO)の発振周波数帯域とローカル信号周波数帯域の関係を示す図である。
【0029】
図5の送信機システムは、図2の送信機システムのデュアル電圧制御発振器(VCO)と比較して、WCDMA/マルチバンドの通信をカバーするシングル送信用電圧制御発振器(VCO)で構成されている。しかし、図5の送信機システムでは、単一の送信用電圧制御発振器(TXVCOC)34の発振周波数帯域は上述のように2856〜3960MHzと極めて広帯域に設定され、発振周波数の比帯域幅は27.9%となっている。
【0030】
図5の送信機システムは、単一の送信用電圧制御発振器(TXVCOC)34の採用によってRFICチップ面積とRFICの製造コストとを低減が可能となるが、単一の送信用電圧制御発振器の発振周波数の広帯域化に伴って位相雑音が増加すると言う問題が本発明者等の検討により明らかとされた。
【0031】
本発明は、以上のような本発明に先立った本発明者等の検討の結果、なされたものである。
【0032】
従って、本発明の目的とするところは、マルチバンドの送信用もしくは受信用のための通信用電圧制御発振器の個数の増加もしくは通信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減することの可能な送受信機を提供することにある。
【0033】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0035】
すなわち、本発明の1つの代表的な送受信機は、通信用電圧制御発振器(34)と、複数の周波数帯域のRF信号の通信を行う複数の通信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)とを含む。前記複数の通信ブロックのそれぞれは、分周器(11、12、13、14)と、ミキサー(9、10)とを含む。
【0036】
前記複数の通信ブロックでは、前記分周器は前記通信用電圧制御発振器(34)から供給される通信用発振出力信号を分周して生成した一対の通信用ローカル信号を前記ミキサー(9、10)に供給する。
【0037】
前記複数の通信ブロックの少なくとも1つの通信ブロック(Tx_Blk1、2、3)に含まれる1つの分周器(11、12、13)の分周数は、偶数の整数に設定される。この設定により、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた分周器からミキサーに供給される通信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となる。
【0038】
前記複数の通信ブロックの他の通信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた他の分周器(14)の他の分周数は、非整数に設定される。この設定により、前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた分周器(14)からミキサーに供給される通信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となる。
【0039】
送受信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の通信ブロック(Tx_Blk4)に含まれたミキサー(9、10)に関係する一対の通信アナログ信号に付与する変換ユニット(35)を更に含むことを特徴とする(図1参照)。
【発明の効果】
【0040】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0041】
すなわち、本発明によれば、マルチバンドの送信用もしくは受信用のための通信用電圧制御発振器の個数の増加もしくは通信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
《代表的な実施の形態》
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態による送受信機(19)は、受信機(99)と、送信機とを具備する。
【0043】
前記受信機(99)は、RF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートする受信復調器を含む。
【0044】
前記送信機は、送信用電圧制御発振器(34)と、複数の周波数帯域のRF送信信号を生成する複数の送信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)とを含むものである。
【0045】
前記複数の送信ブロックのそれぞれは、分周器(11、12、13、14)と、送信用変調器(8、9、10)とを含むものである。
【0046】
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記送信用電圧制御発振器(34)から供給される送信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の送信用ローカル信号を前記送信用変調器(8、9、10)に供給するものである。
【0047】
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記送信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の送信用ローカル信号により送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートするものである。
【0048】
前記複数の送信ブロックの少なくとも1つの送信ブロック(Tx_Blk1、2、3)に含まれた少なくとも1つの分周器(11、12、13)の分周数は、偶数の整数に設定されている。
【0049】
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する送信用変調器に供給される該当する一対の送信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものである。
【0050】
前記複数の送信ブロックの他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた他の分周器(14)の他の分周数は、非整数に設定されている。
【0051】
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた前記他の分周器(14)から他の送信用変調器(8、9、10)に供給される他の一対の送信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものである。
【0052】
前記送信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた前記他の送信用変調器に供給される一対の送信アナログ信号に付与する変換ユニット(35)を更に含むことを特徴とする(図1参照)。
【0053】
前記実施の形態によれば、特定の周波数帯域のRF送信信号を生成する前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた前記送信用変調器(8、9、10)において、以下の動作が実行される。すなわち、前記送信用変調器において、前記一対の送信用非クォドラチャーローカル信号の前記オフセット角度は、前記変換ユニット(35)により前記一対の非クォドラチャー送信アナログ信号に付与された前記補償オフセット量によりキャンセルされる。その結果、前記送信用変調器(8、9、10)において、理想的なクォドラチャー(直交)変調が行われ、送信アナログ信号から特定の周波数帯域のRF送信信号へのアップコンバートが実行されることができる。また、送信用電圧制御発振器の個数の増加もしくは送信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減することができる。
【0054】
好適な実施の形態では、前記送信機は、一対の送信ディジタル信号を前記一対の送信アナログ信号に変換する一対のD/A変換器(22、25)を更に含み、前記一対のD/A変換器(22、25)は、前記複数の送信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)によって共有されている(図1参照)。
【0055】
前記好適な実施の形態によれば、前記送信機とベースバンド処理ユニットとのディジタル送信インターフェースが可能となり、この送信インターフェースでのRF信号干渉の影響を軽減することができる。また、前記一対のD/A変換器(22、25)が前記複数の送信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)によって共有されることにより、送信機のコストを低減することができる。
【0056】
他の好適な実施の形態では、前記変換ユニット(35)は、前記一対のD/A変換器(22、25)の一対の入力端子に接続される。前記変換ユニット(35)が前記一対の送信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記一対のD/A変換器(22、25)の一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された前記一対の送信アナログ信号が生成される(図1参照)。
【0057】
前記他の好適な実施の形態によれば、オフセット補償をディジタル信号処理により高精度に実現することができる。
【0058】
更に他の好適な実施の形態では、前記変換ユニット(36)は、前記一対のD/A変換器(22、25)の一対の出力端子に接続される。前記変換ユニット(36)が一対の送信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記変換ユニット(36)の一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された一対の送信アナログ出力信号が生成される(図7参照)。
【0059】
前記更に他の好適な実施の形態によれば、オフセット補償をアナログ信号処理により簡易に実現することができる。
【0060】
より好適な実施の形態では、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の送信ブロック(Tx_Blk1)と第2の送信ブロック(Tx_Blk3)とにそれぞれ含まれた第1の分周器(11)と第2の分周器(13)の分周数は、それぞれ2と4とに設定されている。
【0061】
前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた前記他の分周器(14)の分周数は、2.5の非整数に設定されている。
【0062】
前記送信用電圧制御発振器(34)から生成される前記送信用発振出力信号の周波数は、略3GHzから略4GHzの間に設定可能とされている。
【0063】
前記第1の送信ブロックは略1.8GHzから略2GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記第2の送信ブロックは略0.8GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記他の送信ブロックは略1.4GHzの送信バンドのRF送信信号を生成する(図6参照)。
【0064】
具体的な実施の形態では、前記送信用電圧制御発振器(34)と前記複数の送信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)とを含む前記送信機は、ダイレクトアップコンバージョン送信機アーキテクチャーと低IFアップコンバージョン送信機アーキテクチャーとのいずれか一方である。
【0065】
最も具体的な実施の形態では、前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機は、半導体チップに構成されている。
〔2〕本発明の代表的な実施の形態による本発明の代表的な送受信機(19)は、受信機と、送信機(100)とを具備する。
【0066】
前記送信機(100)は、送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートする送信変調器を含む。
【0067】
前記受信機は、受信用電圧制御発振器(75)と、複数の周波数帯域のRF受信信号を受信する複数の受信ブロック(Rx_Blk1、2、3、4)とを含むものである。
【0068】
前記複数の受信ブロックのそれぞれは、分周器(62、63、64、65)と、受信用復調器(60、61)とを含むものである。
【0069】
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記受信用電圧制御発振器(75)から供給される受信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の受信用ローカル信号を前記受信用復調器(60、61)に供給するものである。
【0070】
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記受信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の受信用ローカル信号によりRF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートするものである。
【0071】
前記複数の受信ブロックの少なくとも1つの受信ブロック(Rx_Blk1、2、3)に含まれた少なくとも1つの分周器(62、63、64)の分周数は、偶数の整数に設定されている。
【0072】
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの受信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する受信用復調器に供給される該当する一対の受信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものである。
【0073】
前記複数の受信ブロックの他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた他の分周器(65)の他の分周数は、非整数に設定されている。
【0074】
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた前記他の分周器(65)から他の受信用復調器(60、61)に供給される他の一対の受信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものである。
【0075】
前記受信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた前記他の受信用復調器から生成される一対の受信アナログ信号に付与する変換ユニット(72)を更に含むことを特徴とする(図10参照)。
【0076】
前記実施の形態によれば、特定の周波数帯域のRF受信信号を生成する前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた前記受信用復調器(60、61)において、以下の動作が実行される。すなわち、前記受信用復調器に供給された前記一対の受信用非クォドラチャーローカル信号の前記オフセット角度の影響は、前記変換ユニット(72)により前記受信用復調器から生成される一対の受信アナログ信号に付与された前記補償オフセット量によりキャンセルされる。その結果、前記受信機の前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)と前記変換ユニット(72)とにより、理想的なクォドラチャー(直交)復調が行われ、特定の周波数帯域のRF受信信号から受信アナログ信号へのダウンコンバートが実行されることができる。また、受信用電圧制御発振器の個数の増加もしくは受信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減することができる。
【0077】
好適な実施の形態では、前記受信機は、前記一対の受信アナログ信号を一対の受信ディジタル信号に変換する一対のA/D変換器(70、71)を更に含み、前記一対のA/D変換器(70、71)は、前記複数の受信ブロック(Rx_Blk1、2、3、4)によって共有されている(図10参照)。
【0078】
前記好適な実施の形態によれば、前記受信機とベースバンド処理ユニットとのディジタル受信インターフェースが可能となり、この受信インターフェースでのRF信号干渉の影響を軽減することができる。また、前記一対のA/D変換器(70、71)が前記複数の受信ブロック(Rx_Blk1、2、3、4)によって共有されることにより、受信機のコストを低減することができる。
【0079】
他の好適な実施の形態では、前記変換ユニット(78)は、前記一対のA/D変換器(70、71)の一対の出力端子に接続される。前記変換ユニット(72)が前記一対の受信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に間接的に付与されるものである(図10参照)。
【0080】
前記他の好適な実施の形態によれば、オフセット補償をディジタル信号処理により高精度に実現することができる。
【0081】
更に他の好適な実施の形態では、前記変換ユニット(78)は、前記一対のA/D変換器(70、71)の一対の入力端子に接続される。前記変換ユニット(78)が一対の受信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に直接的に付与されるものである(図12参照)。
【0082】
前記更に他の好適な実施の形態によれば、オフセット補償をアナログ信号処理により簡易に実現することができる。
【0083】
より好適な実施の形態では、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の受信ブロック(Rx_Blk1)と第2の受信ブロック(Rx_Blk3)とにそれぞれ含まれた第1の分周器(62)と第2の分周器(64)の分周数は、それぞれ2と4とに設定されている。
【0084】
前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた前記他の分周器(65)の分周数は、2.5の非整数に設定されている。
【0085】
前記受信用電圧制御発振器(76)から生成される前記受信用発振出力信号の周波数は、略3.5GHzから略4.5GHzの間に設定可能とされている。
【0086】
前記第1の受信ブロックは略1.9GHzから略2.2GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記第2の受信ブロックは略0.8GHzから略0.9GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記他の受信ブロックは略1.4GHzから略1.5Hzの受信バンドのRF受信信号を受信する(図11参照)。
【0087】
具体的な実施の形態では、前記受信用電圧制御発振器(76)と前記複数の受信ブロック(Rx_Blk1、2、3、4)とを含む前記受信機は、ダイレクトダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーと低IFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーとのいずれか一方である。
【0088】
最も具体的な実施の形態として、前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機は、半導体チップに構成されている。
【0089】
《実施の形態の説明》
次に、実施の形態について更に詳述する。以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0090】
《ダイレクトアップコンバージョン送信機》
図1は、本発明の1つの実施の形態によるマルチバンド/マルチモード通信用のダイレクトアップコンバージョン(DUC)送信機を示す図である。
【0091】
《RFICのトータルシステム》
図1の通信用RFIC(19)は、半導体チップの上部と下部とに配置された送信機と受信機99とを具備する。上部の送信機は送信アナログベースバンド信号をRF送信信号に変換する送信用変調器をRF送信信号の周波数帯域毎に含み、下部の受信機99は受信したRF受信信号を受信アナログベースバンド信号に変換する受信用復調器をRF受信信号の周波数帯域毎に含む。また、このRFIC(19)は、ディジタル位相変換ユニット35、D/A変換器22、25、可変利得増幅器21、24、ローパスフィルタ20、23、送信用電圧制御発振器(TXVCO)34、送信用PLL回路17、送信用バンド切り換え制御ブロック15を半導体チップに含んでいる。
【0092】
図1のRFIC(19)の上部の送信機は、図2と同様に送信周波数1920〜1980MHzの送信バンドI、送信周波数1850〜1910MHzの送信バンドII、送信周波数830〜840MHzの送信バンドVI、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIのマルチバンド送信が可能である。送信バンドI、送信バンドII、送信バンドVI、送信バンドXIは、送信ブロックTx_Blk1、送信ブロックTx_Blk2、送信ブロックTx_Blk3、送信ブロックTx_Blk4から基地局にそれぞれ送信されるものである。
【0093】
各送信ブロックTx_Blk1、2、3、4は、一対のミキサー9、10と加算器8とで構成された送信用クォドラチャー変調器と、可変利得増幅器7と、バンドパスフィルタ6と、電力増幅器5と、M/N分周器11、12、13、14をそれぞれ含んでいる。各送信ブロックTx_Blk1、2、3、4のバンドパスフィルタ6と電力増幅器5とは、RFIC(19)の半導体チップの外部部品として構成されている。M/N分周器11、12、13、14のそれぞれは、分周比M/Nに関してMは、M≧1の自然数、N≧2の自然数の関係に設定されている。
【0094】
《送信バンドXIを送信するための非整数の分周数に設定された分周器》
特に、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIを送信するための送信ブロックTx_Blk4の分周器14の分周比M4/N4は2/5に設定されており、分周数は分周比の逆数の2.5の非整数に設定されている。送信用バンド切り換え制御ブロック15とPLL回路17とにより3570〜3632.5MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、送信ブロックTx_Blk4の分周器14の分周比M4/N4の2/5で分周される。送信ブロックTx_Blk4から、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIが送信されることができる。
【0095】
《他の送信バンドを送信するための整数の分周数に設定された分周器》
送信周波数1920〜1980MHzの送信バンドIを送信するための送信ブロックTx_Blk1の分周器11の分周比M1/N1は、1/2に設定されており、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。送信用バンド切り換え制御ブロック15とPLL回路17とにより3840〜3960MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、送信ブロックTx_Blk1の分周器11の分周比M1/N1の1/2で分周される。送信ブロックTx_Blk1から、送信周波数1920〜1980MHzの3GPP規格の送信バンドIが送信されることができる。尚、3GPPは、3-rd Generation Partnership Projectの略である。
【0096】
送信周波数1850〜1910MHzの送信バンドIIを送信するための送信ブロックTx_Blk2の分周器12の分周比M2/N2は、1/2に設定されており、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。送信用バンド切り換え制御ブロック15とPLL回路17とにより3700〜3820MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、送信ブロックTx_Blk2の分周器12の分周比M2/N2の1/2で分周される。送信ブロックTx_Blk2から、送信周波数1850〜1910MHzの3GPP規格の送信バンドIIが送信されることができる。
【0097】
送信周波数830〜840MHzの送信バンドVIを送信するための送信ブロックTx_Blk3の分周器13の分周比M3/N3は、1/4に設定されており、分周数は分周比の逆数の4の整数に設定されている。送信用バンド切り換え制御ブロック15とPLL回路17とにより3320〜3360MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、送信ブロックTx_Blk3の分周器13の分周比M3/N3の1/4で分周される。送信ブロックTx_Blk3から、送信周波数830〜840MHzの3GPP規格の送信バンドVIが送信されることができる。
【0098】
《送信ブロックの分周器》
図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk1、2、3、4は、上述したように分周比M/Nで分周数が分周比の逆数である分周器11、12、13、14を具備している。
【0099】
《整数の分周数の分周器》
送信バンドIを送信するための送信ブロックTx_Blk1の分周器11の分周比M1/N1は、1/2に設定され、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。送信バンドIIを送信するための送信ブロックTx_Blk2の分周器12の分周比M2/N2は、1/2に設定され、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。送信バンドVIを送信するための送信ブロックTx_Blk3の分周器13の分周比M3/N3は、1/4に設定され、分周数は分周比の逆数の4の整数に設定されている。このように、送信バンドI、II、VIを送信するための送信ブロックTx_Blk1、2、3の分周器11、12、13は、分周数は2または4の偶数の整数に設定されている。
【0100】
分周数が2または4の偶数の整数の分周器は上記非特許文献2に記載されたECLライクのD型フリップフロップの2段または4段のカスコード接続により構成され、この分周器から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が形成されることができる。
【0101】
上記非特許文献2に記載された分周数が2または4の偶数の整数であり90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号を形成する分周器を、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk1、2、3の分周器11、12、13として使用することが可能である。ローパスフィルタ20、23からのアナログベースバンド送信信号は、送信ブロックTx_Blk1、2、3のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の一方の入力端子に供給される。分周器11、12、13の出力から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が、送信ブロックTx_Blk1、2、3のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の他方の入力端子に供給される。その結果、送信ブロックTx_Blk1、2、3のI/Q変調器においてRF送信信号を形成するクォドラチャー(直交)変調が行われ、加算器8でベクトル合成されたRF送信信号は可変利得増幅器7、バンドパスフィルタ6、電力増幅器5に供給される。
【0102】
《非整数の分周数の分周器》
しかし、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIを送信するための送信ブロックTx_Blk4の分周器14の分周比M4/N4の2/5に設定され、分周数は分周比の逆数の2.5の非整数に設定されている。従って、上記非特許文献2に記載の分周数が2または4の偶数の整数の分周器は、当然、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk4の分周器14として使用することは不可能である。
【0103】
《非整数の分周によるローカル信号の位相オフセット》
後に詳細に説明するように、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk4で分周数が2.5の非整数を有する分周器14は、図8に示す複雑な回路構成のロジック分周器により構成される。図8の複雑な回路構成のロジック分周器は、図9に示すように供給されるクロック入力信号CLKに応答して2.5倍の周期を持ちデューティー比が40%の一対のローカル信号LI、LQを生成する。しかし、一対のローカル信号LI、LQの位相差は、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°と90度ではない一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQが生成される。72度の位相差を有する一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQは、理想の位相差90度に対して、72°−90°=−18°の誤差オフセット角度を持つものとなる。
【0104】
《位相変換ユニットによる位相変換ユニットの補償》
この送信バンドXIの送信時に、送信用バンド切り換え制御ブロック15により制御されたディジタル位相変換ユニット35でのアナログ換算での補償位相オフセット量は+18度に設定される。すなわち、一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQの誤差オフセット角度とディジタル位相変換ユニット35でのアナログ換算での補償位相オフセット量とは、極性が反対で絶対値が略同一となるように、調整される。
【0105】
すなわち、ディジタル位相変換ユニット35の一対の入力端子26(DI)、27(DQ)には、図示されていないベースバンド処理ユニットからアナログ換算で90度の位相差を有する一対のディジタルベースバンド送信入力信号が供給される。送信用バンド切り換え制御ブロック15の制御の下でディジタル位相変換ユニット35は、一対の入力端子26(DI)、27(DQ)の一対のディジタルベースバンド送信入力信号に応答してアナログ換算で108度の位相差を有する一対のディジタルベースバンド送信出力信号を一対の出力端子DI´、DQ´に生成する。
【0106】
ディジタル位相変換ユニット35の出力端子DI´、DQ´の一対のディジタルベースバンド送信出力信号はD/A変換器22、25の入力端子に供給されることより、D/A変換器22、25の出力端子から108度のアナログ位相差を有する一対のアナログベースバンド送信出力信号が生成される。108度のアナログ位相差を有する一対のアナログベースバンド送信出力信号は、可変利得増幅器21、24、ローパスフィルタ20、23を介して送信ブロックTx_Blk4のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の一方の入力端子に供給される。一方、送信ブロックTx_Blk4のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の他方の入力端子には、分周数が2.5の非整数に設定された分周器14から72度の位相差を有する一対の非クォドラチャーローカル信号が供給されている。その結果、送信ブロックTx_Blk4のI/Q変調器において、−18°の誤差オフセット角度は18度の補償位相オフセット量でキャンセルされて、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIのRF送信信号を形成するクォドラチャー(直交)変調が行われる。送信ブロックTx_Blk1、2、3と同様に、送信ブロックTx_Blk4の加算器8でベクトル合成された送信バンドXIのRF送信信号は可変利得増幅器7、バンドパスフィルタ6、電力増幅器5に供給される。
【0107】
尚、送信バンドI、II、VIを送信する際には、分周数が2または4の整数に設定された分周器11、12、13の出力から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が、送信ブロックTx_Blk1、2、3のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の他方の入力端子に供給されている。この時には、誤差オフセット角度はゼロ度であるので、送信用バンド切り換え制御ブロック15はディジタル位相変換ユニット35での補償位相オフセット量もゼロ度に制御するものである。
【0108】
図6は、図1の通信用RFIC(19)の送信機が送信バンドI、II、VI、XIをそれぞれ送信する送信動作での電圧制御発振器34の発振周波数帯域、RF送信信号周波数帯域、各送信ブロックの分周器の分周比、一対のローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。
【0109】
≪アナログ位相変換ユニットを含む送信機≫
図7は本発明の他の1つの実施形態によるマルチバンド/マルチモード通信用のダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【0110】
図7の送信機は、図1の送信機のディジタル位相変換ユニット35を削除する代わりに、アナログ位相変換ユニット36をD/A変換器22、25の出力端子と可変利得増幅器21、24の入力端子との間に接続したものである。
【0111】
図7において、アナログ換算で90度の位相差を持つディジタルベースバンド送信信号DI(t)、DQ(t)がD/A変換器22、25の入力端子26、27に供給され、D/A変換器22、25の出力からのアナログベースバンド送信信号I(t)、Q(t)がアナログ位相変換ユニット36に供給される。アナログ位相変換ユニット36は、下記のマトリックスと供給されるアナログベースバンド送信信号I(t)、Q(t)との行列演算を実行して、2つの位相変換アナログベースバンド送信信号I´(t)、Q´(t)を生成する。
【0112】
【数1】
【0113】
ここでマトリックスの位相選択信号θnは送信用バンド切り換え制御ブロック15での送信ブロック選択信号により選択された送信ブロックTx_Blk1、2、3、4に含まれる分周器11、12、13、14の分周比N/Mより、計算式θn=180*M/N*A(A=1、2、…)で与えられる。位相選択信号θnの値は、分周器11、12、13、14からの一対の送信用ローカル信号の位相差に等しく、送信バンドI、II、VIを送信する送信動作では90度となり、送信バンドXIを送信する送信動作では108度となる。
【0114】
送信ブロックTx_Blk1、2、3、4において、送信用のクォドラチャー変調器を構成する一方のミキサー9では一方の位相変換アナログベースバンド送信信号I´(t)=I(t)+cot(θn)・Q(t)と一方の送信用ローカル信号LI(t)=cos(ωt)とのアナログ乗算が行われる。他方のミキサー10では他方の位相変換アナログベースバンド送信信号Q´(t)=−Q(t)/sin(θn)と他方の送信用ローカル信号LQ(t)=cos(ωt―θn)とのアナログ乗算が行われる。その結果、ミキサー1、2の出力に接続された加算器8から正確なクォドラチャー変調出力信号が得られることができる。
【0115】
≪ロジック分周器≫
図8は、図1に示した本発明の1つの実施の形態によるマルチバンド/マルチモード通信用RFICのダイレクトアップコンバージョンアーキテクチャーの送信機に含まれた分周数が2.5と非整数のロジック分周器の構成を示す図である。従って、図8のロジック分周器の分周比は2/5と分周数の逆数となっている。一方、図9は、図8に示したロジック分周器の内部の波形を示す図である。
【0116】
図8のロジック分周器は、4個のD型フリップフロップ(FF)38、39、40、41と否定論理和回路(NOR)37で構成された1/5分周器、2つの論理積回路(AND)43、44と論理和回路(OR)45とで構成されたトリガー信号生成部、2つのD型フリップフロップ(FF)46、47で構成された1/2分周器を含んでいる。
【0117】
ロジック分周器の入力端子42には送信用電圧制御発振器34よりクロック入力信号CLKが供給され、1/5分周器の2つのD型フリップフロップ(FF)38、41からはクロック信号周波数の1/5の周波数でデューティー比が40%の一対の信号D1、D4が出力される。尚、1/5分周信号D1、D4の位相差は180度であり、トリガー信号生成部の論理積回路(AND)43、44に入力される。一方の論理積回路(AND)43では、クロック入力信号CLKの逆相とD型フリップフロップ(FF)38からの出力との論理和Aが生成され、論理和回路(OR)45に入力される。また他方の論理積回路(AND)44では、クロック入力信号CLKの正相とD型フリップフロップ(FF)41からの出力との論理和Bが生成され、こちらの出力も同様に論理和回路(OR)45に入力される。論理積回路(AND)43、44の出力信号(A、B)は論理和回路(OR)45で論理和が演算され、後段の1/2分周器へ供給されるトリガー信号(C)が生成される。D型フリップフロップ(FF)46、47で構成された1/2分周器部では、トリガー信号(C)のポジティブエッジに同期したI側ローカル信号(LI)とネガティブエッジに同期したQ側ローカル信号(LQ)との一対のローカル信号が生成される。ここで、2つのD型フリップフロップ(FF)38、41の出力の否定論理和から演算されるリセット信号(D)を、1/2分周器部のリセット信号として使用している。すなわち、図8の複雑な回路構成のロジック分周器は、図9に示すように供給されるクロック入力信号CLKに応答して2.5倍の周期を持つ一対のローカル信号LI、LQを生成する。また、一対のローカル信号LI、LQの位相差は、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°と90度ではない一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQが生成される。
【0118】
このようにして、図8に示す複雑な回路構成のロジック分周器により図8に示す複雑な回路構成のロジック分周器により、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk4で分周数が2.5の非整数を有する分周器14を構成することができる。
【0119】
また、本発明は一対の送信ミキサーを含む変調器を具備する送信機だけではなく、下記に説明するように一対の受信ミキサーを含む復調器を具備する受信機に適用することができる。
【0120】
≪ダイレクトダウンコンバージョン受信機≫
すなわち、図10は本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトダウンコンバージョン(DDC)受信機の主要部を示す図である。
【0121】
図10の通信用RFIC(19)は、半導体チップの上部と下部とに配置された送信機100と受信機とを具備する。上部の送信機100は送信アナログベースバンド信号をRF送信信号に変換する送信用変調器をRF送信信号の周波数帯域毎に含み、下部の受信機は受信したRF受信信号を受信アナログベースバンド信号に変換する受信用復調器をRF受信信号の周波数帯域毎に含む。また、このRFIC(19)は、ローパスフィルタ66、67、可変利得増幅器68、69、A/D変換器70、71、ディジタル位相変換ユニット72、受信用電圧制御発振器(RXVCO)75、受信用PLL回路76、受信用バンド切り換え制御部77を半導体チップに含んでいる。
【0122】
図10のRFIC(19)の下部の受信機は、受信周波数2110〜2170MHzの受信バンドI、受信周波数1930〜1990MHzの受信バンドII、受信周波数875〜885MHzの受信バンドVI、送信周波数1476〜1501MHzの受信バンドXIのマルチバンド受信が可能である。受信バンドI、受信バンドII、受信バンドVI、受信バンドXIは、受信ブロックRx_Blk1、受信ブロックRx_Blk2、受信ブロックRx_Blk3、受信ブロックRx_Blk4にて基地局からそれぞれ受信されるものである。
【0123】
各受信ブロックRx_Blk1、2、3、4は、ローノイズアンプ58と、バンドパスフィルタ59と、一対のミキサー60、61で構成された受信用クォドラチャー復調器と、M/N分周器62、63、64、65をそれぞれ含んでいる。各受信ブロックRx_Blk1、2、3、4のローノイズアンプ58とバンドパスフィルタ59とは、RFIC(19)の半導体チップの外部部品として構成されているが、他の実施の形態ではRFIC(19)の半導体チップ内部に形成される場合もある。M/N分周器62、63、64、65のそれぞれは、分周比M/Nに関してMは、M≧1の自然数、N≧2の自然数の関係に設定されている。
【0124】
《受信バンドXIを送信するための非整数の分周数に設定された分周器》
特に、送信周波数1476〜1501MHzの送信バンドXIを受信するための受信ブロックRx_Blk4の分周器65の分周比M4/N4は2/5に設定されており、分周数は分周比の逆数の2.5の非整数に設定されている。受信用バンド切り換え制御部77と受信用PLL回路76とにより3690〜3752.5MHzの発振周波数に設定された受信用電圧制御発振器(RXVCO)75の発振出力信号は、受信ブロックRx_Blk4の分周器65の分周比M4/N4の2/5で分周される。受信ブロックRx_Blk4にて、送信周波数1476〜1501MHzの送信バンドXIが受信されることができる。
【0125】
《他の受信バンドを受信するための整数の分周数に設定された分周器》
受信周波数2110〜2170MHzの受信バンドIを受信するための受信ブロックRx_Blk1の分周器62の分周比M1/N1は、1/2に設定されており、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。受信用バンド切り換え制御部77と受信用PLL回路76とにより4220〜4340MHzの発振周波数に設定された受信用電圧制御発振器(RXVCO)75の発振出力信号は、受信ブロックRx_Blk1の分周器62の分周比M1/N1の1/2で分周される。受信ブロックRx_Blk1にて、受信周波数2110〜2170MHzの3GPP規格の受信バンドIが受信されることができる。
【0126】
受信周波数1930〜1990MHzの受信バンドIIを受信するための受信ブロックRx_Blk2の分周器63の分周比M2/N2は、1/2に設定されており、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。受信用バンド切り換え制御部77と受信用PLL回路76とにより3860〜3980MHzの発振周波数に設定された受信用電圧制御発振器(RXVCO)75の発振出力信号は、受信ブロックRx_Blk2の分周器63の分周比M2/N2の1/2で分周される。受信ブロックRx_Blk2から、受信周波数1930〜1990MHzの3GPP規格の受信バンドIIが受信されることができる。
【0127】
受信周波数875〜885MHzの受信バンドVIを送信するための受信ブロックRx_Blk3の分周器64の分周比M3/N3は、1/4に設定されており、分周数は分周比の逆数の4の整数に設定されている。受信用バンド切り換え制御部77と受信用PLL回路76とにより3500〜3540MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、受信ブロックRx_Blk3の分周器64の分周比M3/N3の1/4で分周される。受信ブロックRx_Blk3から、受信周波数875〜885MHzの3GPP規格の受信バンドVIが受信されることができる。
【0128】
《受信ブロックの分周器》
図10のRFIC(19)の受信ブロックRx_Blk1、2、3、4は、上述したように分周比M/Nで分周数が分周比の逆数である分周器62、63、64、65を具備している。
【0129】
《整数の分周数の分周器》
受信バンドIを受信するための受信ブロックRx_Blk1の分周器62の分周比M1/N1は、1/2に設定され、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。受信バンドIIを受信するための受信ブロックRx_Blk2の分周器63の分周比M2/N2は、1/2に設定され、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。受信バンドVIを受信するための受信ブロックRx_Blk3の分周器64の分周比M3/N3は、1/4に設定され、分周数は分周比の逆数の4の整数に設定されている。このように、受信バンドI、II、VIを送信するための受信ブロックRx_Blk1、2、3の分周器62、63、64は、分周数は2または4の偶数の整数に設定されている。
【0130】
分周数が2または4の偶数の整数の分周器は上記非特許文献2に記載されたECLライクのD型フリップフロップの2段または4段のカスコード接続により構成され、この分周器から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が形成されることができる。
【0131】
上記非特許文献2に記載された分周数が2または4の偶数の整数であり90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号を形成する分周器を、図10のRFIC(19)の受信ブロックRx_Blk1、2、3の分周器62、63、64として使用することが可能である。受信ブロックRx_Blk1、2、3でローノイズアンプ58、バンドパスフィルタ59を経由したRF受信信号はI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の一方の入力端子に供給される。分周器62、63、64の出力から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が、受信ブロックRx_Blk1、2、3のI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の他方の入力端子に供給される。従って、受信ブロックRx_Blk1、2、3のI/Q復調器において、90度の位相差を有する一対のアナログベースバンド受信信号を形成するクォドラチャー(直交)復調が行われる。その結果、一対のアナログベースバンド受信信号は、ローパスフィルタ66、67、可変利得増幅器68、69を介してA/D変換器70、71に供給される。
【0132】
《非整数の分周数の分周器》
しかし、受信周波数1476〜1501MHzの受信バンドXIが受信するための受信ブロックRx_Blk4の分周器65の分周比M4/N4の2/5に設定され、分周数は分周比の逆数の2.5の非整数に設定されている。従って、上記非特許文献2に記載の分周数が2または4の偶数の整数の分周器は、当然、図10のRFIC(19)の受信ブロックRx_Blk4の分周器65として使用することは不可能である。
【0133】
しかし、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk4の分周器14と同様に、図10のRFIC(19)の受信ブロックRx_Blk4で周数が2.5の非整数を有する分周器65は、図8に示す複雑な回路構成のロジック分周器により構成されことができる。図8の複雑な回路構成のロジック分周器は、図9に示すように供給されるクロック入力信号CLKに応答して2.5倍の周期を持つ一対のローカル信号LI、LQを生成する。しかし、一対のローカル信号LI、LQの位相差は、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°と90度ではない一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQが生成される。72度の位相差を有する一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQは、理想の位相差90度に対して、72°−90°=−18°の誤差オフセット角度を持つものとなる。
【0134】
従って、図10において、受信バンドXIの受信時に、受信ブロックRx_Blk4のI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の出力から得られる一対のアナログベースバンド受信信号の位相差も、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°となる。72度の位相差を有する一対のアナログベースバンド受信信号は、理想の位相差90度に対して、72°−90°=−18°の誤差オフセット角度を持つものとなる。
【0135】
《位相変換ユニットによる位相変換ユニットの補償》
この受信バンドXIの受信時に、受信用バンド切り換え制御部77により制御されたディジタル位相変換ユニット72でのアナログ換算での補償位相オフセット量は+18度に設定される。すなわち、一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQの誤差オフセット角度とディジタル位相変換ユニット72でのアナログ換算での補償位相オフセット量とは、極性が反対で絶対値が略同一となるように、調整される。
【0136】
すなわち、受信バンドXIの受信時には図10のRFIC(19)のディジタル位相変換ユニット72の一対の入力端子DI´、DQ´には、A/D変換器70、71を介して理想のアナログ換算の位相差90度に対して−18°の誤差オフセット角度を持つ一対のディジタル受信ベースバンド入力信号が供給される。
【0137】
従って、ディジタル位相変換ユニット72において、−18°の誤差オフセット角度は18度の補償位相オフセット量でキャンセルされる。その結果、受信周波数1476〜1501MHzの受信バンドXIのRF受信信号をダウンコンバートした理想のアナログ換算の位相差90度を持つ一対のディジタル受信ベースバンド入力信号が、ディジタル位相変換ユニット72一対の出力端子73(DI、74(DQ)に生成されることができる。
【0138】
尚、受信バンドI、II、VIを受信する際には、分周数が2または4の整数に設定された分周器62、63、64の出力から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が、受信ブロックRx_Blk1、2、3のI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の他方の入力端子に供給されている。この時には、誤差オフセット角度はゼロ度であるので、受信用バンド切り換え制御部77はディジタル位相変換ユニット72での補償位相オフセット量もゼロ度に制御するものである。
【0139】
図11は、図10の通信用RFIC(19)の受信機が受信バンドI、II、VI、XIをそれぞれ受信する受信動作での電圧制御発振器75の発振周波数帯域、RF受信信号周波数帯域、各受信ブロックの分周器の分周比、一対のローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。
【0140】
≪アナログ位相変換ユニットを含む受信機≫
図12は本発明の他の1つの実施形態によるマルチバンド/マルチモード通信用のダイレクトダウンコンバージョン受信機を示す図である。
【0141】
図12の受信機は、図10の受信機のディジタル位相変換ユニット72を削除する代わりに、アナログ位相変換ユニット78を可変利得増幅器68、69の出力端子とA/D変換器70、71の入力端子との間に接続したものである。
【0142】
図12において、受信バンドXIの受信時に、受信ブロックRx_Blk4のI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の出力から得られる一対のアナログベースバンド受信信号の位相差は、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°となる。72度の位相差を有する一対のアナログベースバンド受信信号は、理想の位相差90度に対して、72°−90°=−18°の誤差オフセット角度を持つものとなる。
【0143】
すなわち、図12に示す受信機では、可変利得増幅器68、69の出力端子で−18°の誤差オフセット角度を持つ一対のアナログベースバンド受信信号は、18度の補償オフセット量を持つアナログ位相変換ユニット78によって90度の位相差を持つ一対の変換アナログベースバンド信号I、Qに変換される。アナログ位相変換ユニット78により直接アナログ変換された90度の位相差を持つ一対の変換アナログベースバンド信号I、QはA/D変換器70、71の入力端子に供給され、受信機の一対の出力端子73、74から90度の位相差の正確なクォドラチャー復調ディジタルベースバンド受信信号が得られる。尚、アナログ位相変換ユニット78では、マトリックスのアナログ演算を実行する。
【0144】
【数2】
【0145】
ここでマトリックスの位相オフセット量選択信号θnは受信用バンド切り換え制御部77での受信ブロック選択信号により選択された受信ブロックRx_Blk1、2、3、54に含まれる分周器62、63、64、65の分周比N/Mより、計算式θn=180*M/N*A(A=1、2、…)で与えられる。位相オフセット量選択信号θnの値は、分周器62、63、64、65からの一対の受信用ローカル信号の位相差に等しく、受信バンドI、II、VIを送信する受信動作では90度となり、受信バンドXIを受信する受信動作では108度となる。
【0146】
≪ダイレクトコンバージョン送受信機≫
図13は、図1に示したDUCアーキテクチャーの送信機と図10に示したDDCアーキテクチャーの受信機を組み合わせた本発明の更に他の実施の形態によるマルチバンド/マルチモード通信用RFICのダイレクトコンバージョン(DC)送受信機の構成を示す図である。
【0147】
図13の送受信機は3つの送信ブロックTx_Blk1、Tx_Blk2、Tx_Blk3と3つの受信ブロックRx_Blk1、Rx_Blk2、Rx_Blk3から構成されており、トリプルバンド送受信に対応している。尚、他の送信ブロックと他の受信ブロックを更に並列に追加することで、更に多くのバンド送受信にも対応可能となる。
【0148】
各送信ブロックTx_Blk1、Tx_Blk2、Tx_Blk3は、電力増幅器5、バンドパスフィルタ6、可変利得増幅器7、クォドラチャー変調器用ミキサー9、10、送信用分周器11、13、14を含んでいる。
【0149】
送信バンドXIを送信するための送信ブロックTx_Blk3の送信用分周器14の分周数が2.5の非整数に設定されている。しかし、送信バンドIを送信するための送信ブロックTx_Blk1の送信用分周器11の分周数が2の偶数の整数に設定され、送信バンドVIを送信するための送信ブロックTx_Blk2の送信用分周器13の分周数が4の偶数の整数に設定されている。
【0150】
上述したように分周数が偶数に設定された送信用分周器が選択された時には、一対の送信用ローカル信号の位相差は90度となる。一方、分周数が非整数に設定された送信用分周器を使用する時には、一対の送信用ローカル信号の位相差は90度に対して誤差オフセット角度を持つ。この時には、送信用ディジタル位相変換ユニット35では、送信用ローカル信号の位相差の誤差オフセット角度に対応した2つの位相変換ディジタルベースバンド送信信号TDI´、TDQ´を生成する。2つの位相変換ディジタルベースバンド送信信号TDI´、TDQ´は、アナログ換算誤差オフセット角度と反対極性で絶対値の等しい補償位相オフセット量を持っている。
【0151】
送信用ディジタル位相変換ユニット35は2つのディジタル乗算器81、82とディジタル加算器80で構成され、ディジタル乗算器81、82の係数は選択された分周器14で生成される一対の送信用ローカル信号の位相差θnに応じて下記のように計算される。
【0152】
【数3】
【0153】
送信用ディジタル位相変換ユニット35を配置することによって、分周数が2.5の非整数に設定された送信用分周器14を含む送信バンドXIを送信するための送信ブロックTx_Blk3の一対のミキサー9、10と加算器8から形成されるI/Q変調器の出力で直交変調を実現することができる。
【0154】
また、各受信ブロックRx_Blk1、Rx_Blk2、Rx_Blk3は、ローノイズアンプ58、バンドパスフィルタ59、クォドラチャー復調器用ミキサー60、61、受信用分周器62、64、65を含んでいる。
【0155】
受信バンドXIを受信するための受信ブロックRx_Blk3の受信用分周器65の分周数が2.5の非整数に設定されている。しかし、受信バンドIを受信するための受信ブロックRx_Blk1の受信用分周器62の分周数が2の偶数の整数に設定され、受信バンドVIを受信するための受信ブロックRx_Blk2の送信用分周器64の分周数が4の偶数の整数に設定されている。
【0156】
上述したように分周数が偶数に設定された受信用分周器が選択された時には、一対の受信用ローカル信号の位相差は90度となる。一方、分周数が非整数に設定された受信用分周器を使用する時には、一対の受信用ローカル信号の位相差は90度に対して誤差オフセット角度を持つ。この時には、受信用ディジタル位相変換ユニット72では、受信用ローカル信号の位相差の誤差オフセット角度に対応した2つの位相変換ディジタルベースバンド受信信号RDI、RDQを生成する。2つの位相変換ディジタルベースバンド受信信号RDI、RDQは、アナログ換算で誤差オフセット角度と反対極性で絶対値の等しい補償位相オフセット量を持っている。
【0157】
受信用位相変換ユニット72は、2つのディジタル乗算器83、84とディジタル加算器85で構成され、ディジタル乗算器83、84の係数は選択された分周器65で生成される一対の受信用ローカル信号の位相差θnに応じて下記のように計算される。
【0158】
【数4】
【0159】
受信用位相変換ユニット72を配置することによって、受信バンドXIを受信するための受信ブロックRx_Blk4の受信用分周器65の分周数を2.5の非整数に設定しても、受信用位相変換ユニット72の出力73、74から一対のクォドラチャー・ディジタルベースバンド受信信号を出力することができる。
【0160】
図14は、図13の通信用RFICの送受信機が送受信バンドI、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIの送受信動作での電圧制御発振器75の発振周波数帯域、RF信号周波数帯域、各ブロックの分周器の分周比、一対のローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。図14の上が、携帯電話端末から基地局へのアップリンク(UL)の送信動作を示しており、図14の下が、基地局から携帯電話端末へのダウンリンク(DL)の受信動作を示している。
【0161】
図14の上の基地局へのアップリンク(UL)の送信バンドVIIの送信動作では、図13の通信用RFICの送信ブロックTx_Blk3の送信用分周器14の分周数が、1.5の非整数(分周比が2/3)に設定される。それによって、送信用電圧制御発振器17の3750〜3855MHzを分周数1.5によって分周した周波数と略等しい送信周波数が2500〜2570MHzの送信バンドVIIのRF送信信号が生成されることができる。
【0162】
図14の下の基地局へのダウンリンク(DL)の受信バンドVIIの受信動作では、図13の通信用RFICの受信ブロックRx_Blk3の受信用分周器65の分周数が、1.5の非整数(分周比が2/3)に設定される。それによって、受信用電圧制御発振器75の3930〜4035MHzを分周数1.5によって分周した周波数と等しい受信周波数が2620〜2690MHzの送信バンドVIIのRF送信信号が生成されることができる。
【0163】
図15も、図14と同様に図13のRFICの送受信機が送受信バンドI、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIの送受信動作での電圧制御発振器の発振周波数帯域、RF信号周波数帯域、各ブロックの分周器の分周比、一対のローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。図15の上が、携帯電話端末から基地局へのアップリンク(UL)の送信動作を示しており、図15の下が、基地局から携帯電話端末へのダウンリンク(DL)の受信動作を示している。
【0164】
図15の上と下との送受信バンドVIIの送受信動作では、図13の通信用RFICの送受信分周器の分周数が1.5の非整数(分周比が2/3)に設定され、送信周波数2500〜2570MHzの送信と受信周波数2620〜2690MHzの送信とが可能となる。同様に、図15の上と下との送受信バンドIII、送信バンドIV、送受信バンドIX、送信バンドXでは分周数が2.25の非整数(分周比が4/9)に設定され、図15の上と下との送受信バンドV、送受信バンドVIの送受信動作では送受信分周器の分周数が4.5の非整数(分周比が2/9)に設定されている。
【0165】
図15の送受信動作では、送受信分周器の分周数の変化範囲が大きく設定されているので、図14の送受信での電圧制御発振器の比帯域幅と比較して図15の送受信での電圧制御発振器の比帯域幅を削減することが可能となる。
【0166】
図16は、図13のRFICの送受信機がWCDMAの送受信バンドI〜送受信バンドX、XIを送受信すると伴に5GHzと2.4GHzの無線LANの送受信動作での電圧制御発振器の発振周波数帯域、RF信号周波数帯域、各ブロックの分周器の分周比、ローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。尚、5GHz無線LANは規格IEEE802.11aに準拠しており、2.4GHz無線LANは規格IEEE802.11b、gに準拠している。
【0167】
図16の送受信動作では、5GHz無線LANの極めて高いRF信号を送受信するために送受信用電圧制御発振器の発振周波数は略10GHzと高い値に設定されている。また、WCDMAの送受信バンドI〜送受信バンドX、バンドXIと無線LANのIEEE802.11a、b、gのバンドと極めて多くのマルチモードに対応するために、送受信分周器の分周数は整数と非整数とを含め極めて大きな変化範囲に設定されている。
【0168】
≪受信キャリブレーション回路を含む送受信機≫
図17は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチバンド/マルチモード通信用RFICのダイレクトコンバージョン送受信機の構成を示す図である。
【0169】
図17に示す送受信機では、図13に示した受信機の受信用位相変換ユニット72と比較すると、受信機の受信用データ変換ユニット98の構成が異なっている。すなわち、図17に示す送受信機では、受信用データ変換ユニット98には受信用I/Qキャリブレーション回路97が追加されている。追加された受信用I/Qキャリブレーション回路97は、I側受信ディジタルベースバンド信号RDIとQ側受信ディジタルベースバンド信号RDQとの理想値である90度からの位相誤差を検出する。更に受信用I/Qキャリブレーション回路97では、検出された受信ディジタルベースバンド信号RDI、RDQの位相差に対して、位相変換回路83、84のキャリブレーション係数値が算出される。従って、最終的な受信ディジタルベースバンド信号RDI、RDQは、理想値の90度と実質的に等しい位相差を持つ一対のクォドラチャー(直交)受信ディジタル信号となる。
【0170】
≪送信用のI/Q変調器の位相誤差によるイメージ抑圧量の変化≫
図18は、図17に示す通信用RFICのダイレクトアップコンバージョンアーキテクチャーの送信機の分周器11、13、14から生成される一対の送信用ローカル信号の位相差によるイメージ抑圧量の変化を示す図である。図18の横軸は送信用ローカル信号の位相誤差または一対のアナログベースバンド送信信号の位相誤差であり、縦軸はイメージ抑圧量である。
【0171】
図17の分周器11の分周数が2の整数であり一対のローカル信号位相差が90度の時の特性は、図18の直線L1に示すように位相誤差の変化に対するイメージ抑圧量が大きく良好な特性である。
【0172】
一方、図17の分周器14の分周数が2.5の非整数の分周器を用いることで一対のローカル信号位相差が72度となる一方、図13や図17の位相変換ユニット35によるアナログ換算で108度の位相補償を行わない時の特性は、図18の直線L4に示すようにイメージ抑圧量が低く不良な特性である。また、一対のローカル信号位相差が144度となった場合の特性も、図18の直線L3に示すようにイメージ抑圧量が低く不良な特性である。
【0173】
しかし、図17の分周器14の分周数が2.5の非整数の分周器を用いることで一対のローカル信号位相差が72度となっても、図13や図17の位相変換ユニット35によるアナログ換算で108度の位相補償を行った時の特性は、図18の直線L2に示すように位相誤差の変化に対するイメージ抑圧量が大きく良好な特性である。従って、分周数が2.5の非整数の分周器を用いることで一対のローカル信号位相差が72度となっても位相変換ユニット35を使用することにより、分周器の分周数が2の整数であり一対のローカル信号位相差が90度の時の特性L1と同等の特性が得られることが理解できる。
【0174】
《マルチモード/マルチバンド対応の通信用RFIC》
図19は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド対応の通信用RFICを示すブロック図である。この通信用RFICは、WCDMA方式のバンドI、バンドIX、バンドVI、バンドXIの送受信を行うとともに、GSM850、GSM900、DCS1800、PCS1900の方式の送受信を行うことが可能である。
【0175】
WCDMA方式の各バンドにおける送受信帯域については図14に示す通りである。一方、GSM850の場合、無線通信端末のRF送信信号TXの周波数帯域が824〜849MHzであるのに対して、無線通信端末のRF受信信号RXの周波数帯域は869〜894MHzとなっている。GSM900の場合、無線通信端末のRF送信信号TXの周波数帯域が880〜915MHzであるのに対して、無線通信端末のRF受信信号RXの周波数帯域は925〜960MHzとなっている。DCS1800の場合、無線通信端末のRF送信信号TXの周波数帯域が1710〜1785MHzであるのに対して、無線通信端末のRF受信信号RXの周波数帯域は1805〜1880MHzとなっている。PCS1900の場合、無線通信端末のRF送信信号TXの周波数帯域が1850〜1910MHzであるのに対して、無線通信端末のRF受信信号RXの周波数帯域は1930〜1990MHzとなっている。このように、いずれの周波数帯域(バンド)においても、受信帯域周波数RXが送信帯域周波数TXよりも高いFDD方式が採用されている。尚、FDDは、Frequency Division Duplexの略である。
【0176】
≪WCDMA方式の送受信回路≫
図19に示したRFICの左上部の回路RX_SPU_WCDMAはWCDMA方式のバンドI、バンドIX、バンドVI、バンドXIの受信のための回路である。図19に示したRFICの下部の回路TX_SPU_WCDMAはWCDMA方式のバンドI、バンドIX、バンドVI、バンドXIの送信のための回路である。
【0177】
≪GSM方式の送受信回路≫
図19に示したRFICの左下部の回路RX_SPU_GSMは、GSM850、GSM900、DCS1800、PCS1900の受信のための回路である。図19に示したRFICの中央部TX_SPU_GSMは、GSM850、GSM900、DCS1800、PCS1900の送信のための回路である。
【0178】
図19に示したRFICの中央の回路Frct_Synthは、RFICのGSM用送受信ローカル信号を形成するフラクショナルシンセサイザである。このフラクショナルシンセサイザFrct_Synthは、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMと、システム基準電圧制御発振器(DCX−VCO)を内蔵したフェーズロックループ(PLL)と、複数の分周器と、複数のスイッチとを含んでいる。
【0179】
≪WCDMA方式の受信のための位相変換ユニット≫
いずれの通信方式の「受信モード」においても、WCDMA方式受信回路RX_SPU_WCDMAの出力または他方式受信回路RX_SPU_GSMの出力にI、Qアナログベースバンド受信信号が形成される。この信号はローパスフィルタ86、88、90と可変利得増幅器(PGA)87、89、91を介してA/D変換器92I、92Qに供給されることにより、I、Qディジタルベースバンド受信信号に変換される。ベースバンド受信信号は、受信用ディジタル位相変換ユニット72と、受信系ディジタルインターフェース94を介してベースバンド信号処理LSIに供給される。図19に示したWCDMA方式受信回路RX_SPU_WCDMAの各分周器62、63、64、65の分周数はバンドI用分周器62とバンドIX用分周器63とが2の整数、バンドVI用分周器64が4の整数、バンドXI用分周器65が5/2=2.5の非整数にそれぞれ設定されている。この時、受信用電圧制御発振器75(RX−VCO)からの発振出力に応答して一対の受信ミキサー60、61に供給される一対の受信用ローカル信号の位相差はバンドIとバンドIXとバンドVIのモードが90度、バンドXIのモードが72度となる。
【0180】
図19の他方式受信回路RX_SPU_GSMの各分周器95、96の分周数は、DCS1800、PCS1900用分周器95が2の整数に、GSM850、GSM900用分周器96が4の整数にそれぞれ設定されている。この時、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMからの発振出力に応答して一対の受信ミキサー60、61に供給される一対の受信用ローカル信号の位相差はGSM850、GSM900、DCS1800、PCS1900の全てのモードで90度となる。A/D変換器92I、92Qに接続された受信用ディジタル位相変換ユニット72は、WCDMA方式の受信でもGSM方式の受信でも、図10のディジタル位相変換ユニット72と同様に、その2つの出力端子から得られる2つのディジタル受信信号がアナログ換算で90度の位相差となるようにデータ変換を行うものである。
【0181】
≪WCDMA方式の送信のための位相変換ユニット≫
一方、ベースバンド信号処理LSIからのディジタルベースバンド送信信号TxDBI、TxDBQはRFICの送信系ディジタルインターフェース93により受信された後、送信用ディジタル位相変換ユニット35にてデータ変換される。
【0182】
送信用ディジタル位相変換ユニット35の2つの入力端子のディジタルベースバンド送信入力信号はアナログ換算で90度の位相差をもつ一方、ディジタル位相変換ユニット35の2つの出力端子のディジタル変換信号はアナログ換算でのアナログ信号位相差が90度と送信用ローカル信号位相差に応じた所定のアナログオフセット角度を有するものである。このオフセット角度は、WCDMA方式送信回路TX_SPU_WCDMAのバンドXI用分周器14の分周数が2.5の非整数の分周器を用いることで一対のローカル信号位相差が72度となっても、分周数が2の整数であり一対のローカル信号位相差が90度の時の特性と同等の特性が得られためのものである。ディジタル位相変換ユニット35の2つの出力端子のディジタル変換信号は、D/A変換器22、25によりアナログベースバンド送信信号に変換される。D/A変換器22、25の出力のアナログベースバンド送信信号のアナログ信号位相差は、90度と送信用ローカル信号位相差に応じた所定のアナログオフセット角度を有するものである。
【0183】
≪位相変換ユニットを利用したWCDMA方式の送信≫
WCDMA方式の送信では、D/A変換器22、25の出力のアナログベースバンド信号はローパスフィルタ20、23と可変利得増幅器(PGA)21、24を介してWCDMA方式送信回路TX_SPU_WCDMAの一対のミキサー9、10の一方の入力端子に供給される。また、図19のWCDMA方式送信回路TX_SPU_WCDMAの各分周器11、12、13、14の分周数は、バンドI用分周器11とバンドIX用分周器12とが2の整数、バンドVI用分周器13が4の整数、バンドXI用分周器14が5/2=2.5の非整数にそれぞれ設定されている。この時、送信用電圧制御発振器34(TXVCO)からの発振出力に応答して一対のミキサー9、10の他方の入力端子に供給される一対の送信用ローカル信号の位相差はバンドIとバンドIXとバンドVIのモードが90度、バンドXIのモードが72度となる。特に、バンドXIのモードの時には、アナログベースバンド信号にはローカル信号の位相差に応じた所定のオフセット角度がディジタル位相変換ユニット35によって付加されている。その結果、ローカル信号オフセット角度と所定のアナログベースバンド信号オフセット角度との和が、実質的にゼロとなる。よって、全てのバンドの送信モードにおいて、一対の送信ミキサー9、10と加算器8とからなる送信用変調器で、正確なクォドラチャー変調が可能となる。
【0184】
≪GSM方式の送信≫
GSM方式の送信では、可変利得増幅器(PGA)21、24の出力のアナログベースバンド信号は、他方式送信回路TX_SPU_GSMの一対の送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qの一方の入力端子に供給される。フラクショナルシンセサイザFrct_Synthの電圧制御発振器RX−VCO―GSMの発振信号は、中間周波数分周器DIV2(1/NIF)を介してローカル分周器DIV5に供給される。図19の他方式送信回路TX_SPU_GSMのローカル分周器DIV5は、分周器DIV2(1/NIF)の出力の中間周波数信号に応答して一対の送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qに供給される一対の送信用中間周波数ローカル信号を生成し、そのローカル信号位相差は90度である。従って、一対の送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qと加算器とからなる送信用変調器で、正確なクォドラチャー変調が可能となる。
【0185】
送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLは、GSM850のRF送信信号Tx_GSM850とGSM900のRF送信信号Tx_GSM900との送信動作に対応する必要が有る。そのため、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMの発振周波数は分周数2に設定された2個の分周器DIV1(1/2)、DIV4(1/2)を介して位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの一方の入力端子に供給される。また、送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qのための分周器DIV5に接続された中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周数NIFは、13に設定されている。
【0186】
≪GSM850とGSM900との送信動作≫
一方、GSM送信用電圧制御発振器TXVCO_GSMの発振出力信号が、分周数2に設定された分周器DIV3を介して、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの他方の入力端子に供給されている。その結果、ダウンミキサーDWN_MIX_PMでは、一方の入力信号と他方の入力信号とのミキシングが行われる。従って、ダウンミキサーDWN_MIX_PMの出力から、2つの入力信号の差の周波数の帰還信号が形成されて、送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLの位相比較器PCの他方の入力端子に供給される。また、位相比較器PCの一方の入力端子には、送信ミキサーTX−MIX_I、Qの出力に接続された加算器の出力のベクトル合成された中間周波送信信号fIFが基準信号として供給されている。中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周数NIFである13と分周器DIV5での分周数2とで、合計分周数は26となっている。従って、中間周波送信信号fIFの周波数は、受信用電圧制御発振器Rx−VCO―GSMの周波数の1/26となる。また、送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLの負帰還制御によって、位相比較器PCの一方の入力端子の基準信号と他方の入力端子のダウンミキサーDWN_MIX_PMから帰還信号とは一致するようになる。結果としては、0.8GHzのRF送信信号のGSM850と0.9GHzのRF送信信号のGSM900との送信動作に、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMは略4倍の略3.2GHzから略3.8GHz、GSM送信用電圧制御発振器TXVCO_GSMは送信周波数の略2倍の略1.6GHzから略1.9GHzで発振すれば良くなる。
【0187】
≪DCS1800とPSC1900との送信動作≫
また送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLは、DCS1800のRF送信信号Tx_DCS1800とPSC1900のRF送信信号Tx_PSC1900との送信動作に対応する必要が有る。そのため、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMの発振周波数は、分周数2に設定された分周器DIV1(1/2)を介して位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの一方の入力端子に供給される。また、送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qのための分周器DIV5に接続された中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周数NIFは、13に設定されている。一方、GSM送信用電圧制御発振器TXVCO_GSMの発振出力信号が、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの他方の入力端子に供給されている。その結果、ダウンミキサーDWN_MIX_PMでは、一方の入力信号と他方の入力信号とのミキシングが行われる。従って、ダウンミキサーDWN_MIX_PMの出力から、2つの入力信号の差の周波数の帰還信号が形成されて、送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLの位相比較器PCの他方の入力端子に供給される。また、位相比較器PCの一方の入力端子には、送信ミキサーTX−MIX_I、Qの出力に接続された加算器の出力のベクトル合成された中間周波送信信号fIFが基準信号として供給されている。中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周数NIFである13と分周器DIV5での分周数2とで、合計分周数は26となっている。従って、中間周波送信信号fIFの周波数は、受信用電圧制御発振器Rx−VCO―GSMの周波数の1/26となる。
【0188】
また、送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLの負帰還制御によって、位相比較器PCの一方の入力端子の基準信号と他方の入力端子のダウンミキサーDWN_MIX_PMから帰還信号とは一致するようになる。結果としては、1.7GHzのRF送信信号のDCS1800と1.9GHzのRF送信信号のPCS1900との送信動作に、受信用電圧制御発振器Rx−VCO―GSMは略2倍の略3.2GHzから略3.8GHz、GSM送信用電圧制御発振器TXVCO_GSMは送信周波数の略1倍の略1.6GHzから略1.9GHzで発振すれば良くなる。
【0189】
≪携帯電話の構成≫
図20は、上記で説明した本発明の実施の形態によるRFICと、アンテナスイッチMMICとRF電力増幅器とを内蔵したRFモジュールと、ベースバンド信号処理LSIとを搭載した携帯電話の構成を示すブロック図である。尚、MMICは、Microwave Monolithic ICの略である。
【0190】
同図で、携帯電話の送受信用アンテナANTにはRFモジュールRF_MLのアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の共通の入出力端子I/Oが接続されている。ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの制御信号B.B_Cntは、RFアナログ信号処理半導体集積回路(RF_IC)を経由して高出力電力増幅器モジュール(HPA_ML)のコントローラ集積回路(CNT_IC)に供給される。送受信用アンテナANTから共通の入出力端子I/OへのRF信号の流れは携帯電話の受信動作RXとなり、共通の入出力端子I/Oから送受信用アンテナANTへのRF信号の流れは携帯電話の送信動作TXとなる。
【0191】
RFIC(RF_IC)は、ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、TxDBQをRF送信信号に周波数アップコンバージョンを行う。逆に、RFIC(RF_IC)は、送受信用アンテナANTで受信されたRF受信信号を受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、RxDBQに周波数ダウンコンバージョンを行いベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)に供給する。
【0192】
RFモジュールRF_MLのアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)は共通の入出力端子I/Oと送信端子Tx1、Tx2、受信端子Rx1、Rx2、送受信端子TRx1、TRx2、TRx3、TRx4のいずれかの端子の間で信号経路を確立して、受信動作RXと送信動作TXとのいずれかを行う。このアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)は受信動作RXと送信動作TXとのいずれかのために確立した信号経路以外の信号経路のインピーダンスを極めて高い値に設定することで、必要なアイソレーションが得られるものである。アンテナスイッチの分野では、共通の入出力端子I/Oはシングルポール(Single Pole)と呼ばれ、送信端子Tx1、Tx2、受信端子Rx1、Rx2、送受信端子TRx1、TRx2、TRx3、TRx4の合計8個の端子は8スロー(8 throw)と呼ばれる。従って、図28のアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)は、シングルポール8スロー(SP8T; Single Pole 8 throw)型のスイッチである。
【0193】
尚、ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)は図示されていない外部不揮発性メモリと図示されていないアプリケーションプロセッサとに接続されている。アプリケーションプロセッサは、図示されていない液晶表示装置と図示されていないキー入力装置とに接続され、汎用プログラムやゲームを含む種々のアプリケーションプログラムを実行することができる。携帯電話等のモバイル機器のブートプログラム(起動イニシャライズプログラム)、オペレーティングシステムプログラム(OS)、ベースバンド信号処理LSIの内部のディジタルシグナルプロセッサ(DSP)によるGSM方式等の受信ベースバンド信号に関する位相復調と送信ベースバンド信号に関する位相変調のためのプログラム、種々のアプリケーションプログラムは、外部不揮発性メモリに格納されることができる。
【0194】
≪GSM850、GSM900による送受信動作≫
BB_LSIからの送信ベースバンド信号TxDBI、QがGSM850のバンドに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をGSM850のバンドへの周波数アップコンバージョンを行って、GSM850のRF送信信号Tx_GSM850が生成される。BB_LSIからの送信ベースバンド信号がGSM900のバンドに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をGSM900のバンドへの周波数アップコンバージョンを行って、GSM900のRF送信信号Tx_GSM900が生成される。GSM850のRF送信信号Tx_GSM850とGSM900のRF送信信号Tx_GSM900とは、高出力電力増幅器モジュール(HPA_ML)の高出力電力増幅器HPA2で電力増幅される。高出力電力増幅器HPA2のRF出力は、ローパスフィルタLPF2を経由してアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の送信端子Tx2に供給される。送信端子Tx2に供給されたGSM850のRF送信信号Tx_GSM850とGSM900のRF送信信号Tx_GSM900とは共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0195】
送受信用アンテナANTで受信されたGSM850のRF受信信号Rx_GSM850とGSM900のRF受信信号Rx_GSM900とは、アンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の受信端子Rx2から得られるGSM850のRF受信信号Rx_GSM850とGSM900のRF受信信号Rx_GSM900とは表面弾性波フィルタSAW2を介してRFICのローノイズアンプLNA5、6で増幅される。その後、これらのRF受信信号は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、GSM850のRF受信信号Rx_GSM850またはGSM900のRF受信信号Rx_GSM900から受信ベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0196】
GSM850の送受信モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送信端子Tx2との接続によるRF送信信号Tx_GSM850の送信と入出力端子I/Oとの受信端子Rx2との接続によるRF受信信号Tx_GSM850の受信とを時分割で行う。同様に、GSM900の送受信モードでも、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送信端子Tx2との接続によるRF送信信号Tx_GSM900の送信と入出力端子I/Oとの受信端子Rx2との接続によるRF受信信号Rx_GSM900の受信とを時分割で行う。
【0197】
≪DCS1800、PCS1900による送受信動作≫
BB_LSIからの送信ベースバンド信号TxDBI、QがDCS1800のバンドに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をDCS1800のバンドへの周波数アップコンバージョンを行って、DCS1800のRF送信信号Tx_DCS1800が生成される。BB_LSIからの送信ベースバンド信号がPCS1900のバンドに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をPCS1900のバンドへの周波数アップコンバージョンを行って、PCS1900のRF送信信号Tx_PCS1900が生成される。DCS1800のRF送信信号Tx_DCS1800とPCS1900のRF送信信号Tx_PCS1900とは、高出力電力増幅器モジュール(HPA_ML)の高出力電力増幅器HPA1で電力増幅される。高出力電力増幅器HPA1のRF出力は、ローパスフィルタLPF1を経由してアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の送信端子Tx1に供給される。送信端子Tx1に供給されたDCS1800のRF送信信号Tx_DCS1800とPCS1900のRF送信信号Tx_PCS1900とは共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0198】
送受信用アンテナANTで受信されたDCS1800のRF受信信号Rx_DCS1800とPCS1900のRF受信信号Rx_PCS1900とは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの受信端子Rx1から得られるDCS1800のRF受信信号Rx_DCS1800は表面弾性波フィルタSAW1を介してRFIC(RF_IC)のローノイズアンプLNA7、8で増幅される。アンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の受信端子Rx1から得られるPCS1900のRF受信信号Rx_PCS1900は表面弾性波フィルタSAW1を介してRFICのローノイズアンプLNA7、8で増幅される。その後、DCS1800のRF受信信号Rx_DCS1800とPCS1900のRF受信信号Rx_PCS1900は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、DCS1800のRF受信信号Rx_DCS1800またはPCS1900のRF受信信号Rx_PCS1900から受信ベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0199】
DCS1800の送受信モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送信端子Tx1との接続によるRF送信信号Tx_DCS1800の送信と入出力端子I/Oとの受信端子Rx1との接続によるRF受信信号Rx_DCS1800の受信とを時分割で行う。同様に、PCS1900の送受信モードでも、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送信端子Tx1との接続によるRF送信信号Tx_PCS1900の送信と入出力端子I/Oとの受信端子Rx1との接続によるRF受信信号Rx_PCS1900の受信とを時分割で行う。
【0200】
≪WCDMAによる送受信動作≫
ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、Qが、WCDMA方式のバンドIに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をWCDMA方式のバンドIの周波数アップコンバージョンを行う。WCDMA方式のバンドIのRF送信信号Tx_WCDMA band1は、高出力電力増幅器W_PA1で電力増幅され、デュープレクサDUP1を経由してアンテナスイッチMMICの送受信端子TRx1に供給される。送受信端子TRx1に供給されたWCDMA方式のバンドIのRF送信信号Tx_WCDMA バンドIは、共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0201】
WCDMA方式では、コード分割により送信動作と受信動作とが並列に処理されることができる。すなわち、送受信用アンテナANTで受信されたWCDMA方式のバンドIのRF受信信号Rx_WCDMA bandIは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの送受信端子TRx1から得られるWCDMA方式のバンドIのRF受信信号Rx_WCDMA bandIはデュープレクサDUP1を経由してRFICのローノイズアンプLNA1で増幅され、その後、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、WCDMA方式のバンドIのRF受信信号Rx_WCDMA bandIから受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。WCDMA方式のバンドIによる送信と受信との並列処理モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送受信端子TRx1との間の定常接続によりRF送信信号の送信とRF受信信号の受信とを並列して行う。
【0202】
ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QがWCDMA方式のバンドIXに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QをWCDMA方式のバンドIXへの周波数アップコンバージョンを行う。WCDMA方式のバンドIXのRF送信信号Tx_WCDMA bandIXは、高出力電力増幅器W_PA2で電力増幅され、デュープレクサDUP2を経由してアンテナスイッチMMICの送受信端子TRx2に供給される。送受信端子TRx2に供給されたWCDMA方式のバンドIXのRF送信信号Tx_WCDMA bandIXは、共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0203】
送受信用アンテナANTで受信されたWCDMA方式のバンドIXのRF受信信号Rx_WCDMA bandIXは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの送受信端子TRx2から得られるWCDMA方式のバンドIXのRF受信信号Rx_WCDMA bandIXはデュープレクサDUP2を経由してRFICのローノイズアンプLNA2で増幅される。ローノイズアンプLNA2の増幅信号は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、WCDMA方式のバンドIXのRF受信信号Rx_WCDMA bandIXから受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0204】
WCDMA方式のバンドIXによる送信とWCDMA方式のバンドIXによる受信との並列処理モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送受信端子TRx2との間の定常接続によりRF送信信号の送信とRF受信信号の受信とを並列して行うものである。
【0205】
ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QがWCDMA方式のバンドVIに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QをWCDMA方式のバンドVIへの周波数アップコンバージョンを行う。WCDMA方式のバンドVIのRF送信信号Tx_WCDMA bandVIは、高出力電力増幅器W_PA3で電力増幅され、デュープレクサDUP3を経由してアンテナスイッチMMICの送受信端子TRx3に供給される。送受信端子TRx3に供給されたWCDMA方式のバンドVIのRF送信信号Tx_WCDMA bandVIは、共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0206】
送受信用アンテナANTで受信されたWCDMA方式のバンドVIのRF受信信号Rx_WCDMA bandVIは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの送受信端子TRx3から得られるWCDMA方式のバンドVIのRF受信信号Rx_WCDMA bandVIはデュープレクサDUP3を経由してRFICのローノイズアンプLNA3で増幅される。ローノイズアンプLNA3の増幅信号は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、WCDMA方式のバンドVIのRF受信信号Rx_WCDMA bandVIから受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0207】
WCDMA方式のバンドVIによる送信とWCDMA方式のバンドVIによる受信との並列処理モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送受信端子TRx3との間の定常接続によりRF送信信号の送信とRF受信信号の受信とを並列して行うものである。
【0208】
ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QがWCDMA方式のバンドXIに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QをWCDMA方式のバンドXIへの周波数アップコンバージョンを行う。WCDMA方式のバンドXIのRF送信信号Tx_WCDMA bandXIは、高出力電力増幅器W_PA4で電力増幅され、デュープレクサDUP4を経由してアンテナスイッチMMICの送受信端子TRx4に供給される。送受信端子TRx4に供給されたWCDMA方式のバンドXIのRF送信信号Tx_WCDMA bandXIは、共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0209】
送受信用アンテナANTで受信されたWCDMA方式のバンドXIのRF受信信号Rx_WCDMA bandXIは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの送受信端子TRx4から得られるWCDMA方式のバンドXIのRF受信信号Rx_WCDMA bandXIはデュープレクサDUP4を経由してRFICのローノイズアンプLNA4で増幅される。ローノイズアンプLNA4の増幅信号は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、WCDMA方式のバンドXIのRF受信信号Rx_WCDMA bandXIから受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0210】
WCDMA方式のバンドXIによる送信とWCDMA方式のバンドXIによる受信との並列処理モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送受信端子TRx4との間の定常接続によりRF送信信号の送信とRF受信信号の受信とを並列して行うものである。
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能であることは言うまでもない。
【0211】
例えば、図20に示す携帯電話では通信用RFICとベースバンド信号処理LSIとはそれぞれ別の半導体チップで構成されていたが、別な実施形態ではそれらは1つの半導体チップに統合された統合ワンチップとされることができる。
【0212】
また、本発明はダイレクトアップコンバージョン(DUC)アーキテクチャーやダイレクトダウンコンバージョン(DDC)アーキテクチャーに限定されるものではない。例えば、受信RF信号を比較的低い中間周波数受信信号に変換する低IFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーや、ディジタルIFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャー、または比較的低い中間周波数送信信号を送信RF信号に変換する低IFアップコンバージョン送信機アーキテクチャーに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】図1は、本発明の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【図2】図2は、本発明に先立って検討されたマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【図3】図3は、図2に示した送信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図4】図4は、図5に示した送信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図5】図5は、本発明に先立って検討されたマルチモード/マルチバンド通信用RFICの他の方式によるダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【図6】図6は、図1に示した送信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図7】図7は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【図8】図8は、図1に示した本発明の1つの実施の形態による通信用RFICのダイレクトアップコンバージョンアーキテクチャーの送信機に含まれた分周数が非整数のロジック分周器の構成を示す図である。
【図9】図9は、図8に示したロジック分周器の内部の波形を示す図である。
【図10】図10は、本発明の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトダウンコンバージョン受信機を示す図である。
【図11】図11は、図10に示した受信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図12】図12は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトダウンコンバージョン受信機を示す図である。
【図13】図13は、本発明の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトコンバージョン送受信機を示す図である。
【図14】図14は、図13に示した送受信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図15】図15は、図13に示した送受信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図16】図16は、図13に示した送受信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図17】図17は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトコンバージョン送受信機を示す図である。
【図18】図18は、通信用RFICのダイレクトアップコンバージョン送信機のロジック分周器の分周数による送信用のI/Q変調器の位相誤差によるイメージ抑圧量の変化を示す図である。
【図19】図19は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトコンバージョン送受信機を示す図である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態によるRFICと、アンテナスイッチMMICとRF電力増幅器とを内蔵したRFモジュールと、ベースバンド信号処理LSIとを搭載した携帯電話の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0214】
Tx_Blk1、2、3、4 送信ブロック
5 RF電力増幅器
6 バンドパスフィルタ
7 RF可変利得増幅器
8 加算器
9、10 ミキサー
11、12、13、14 分周器
15 バンド切り換え制御ブロック
16、18、34 電圧制御発振器
17 PLL回路
19 RFIC
20、23 ローパスフィルタ
21、24 可変利得増幅器
22、25 D/A変換器
26、27 ディジタルベースバンド送信信号入力端子
28、29、30、31 RF送信信号出力端子
32、33 送信用ローカル信号
35 ディジタル位相変換ユニット
36 アナログ位相変換ユニット
37、101 否定論理積回路
38、39、40、41、46、47 D型フリップフロップ
42 クロック信号入力端子
43、44 論理和回路
45 論理積回路
48、49 ローカル信号出力端子
50、51、52、53 RF受信信号入力端子
Rx_Blk1、2、3、4 受信ブロック
58 ローノイズアンプ
59 バンドパスフィルタ
60、61 ミキサー
62、63、64、65 分周器
66、67 ローパスフィルタ
68、69 可変利得増幅器
70、71 A/Dコンバータ
72 ディジタル位相変換ユニット
73、74 ディジタルベースバンド信号出力端子
75 電圧制御発振器
76 PLL回路
77 バンド切り換え制御部
78 アナログ位相変換ユニット
79 バンド切り換え制御部
80、85 加算器
8182、83、84 乗算器
86I、86Q、88I、88Q、90I、90Q ローパスフィルタ
87I、87Q、89I、89Q、91I、91Q 可変利得増幅器
92I、92Q A/Dコンバータ
93 送信用ディジタルインターフェース
94 受信用ディジタルインターフェース
95、96 分周器
97 受信用I/Qキャリブレーション回路
98 位相変換ユニット
99 受信機
100 送信機
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話、無線LAN等のRF通信に利用される受信機と送信機とを具備する送受信機に関するものであり、特に電圧制御発振器の個数の増加もしくは通信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減する有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GSM、GPRS、EDGE、WCDMA、DCS、PCSに代表されるセルラーや無線LAN等の各種通信方式が発展しているが、近年、1つの端末で複数の通信方式や送受信周波数帯域に対応したマルチモード/マルチバンド送受信機が渇望されている。尚、GSMはGlobal System for Mobile Communicationの略であり、GPRSはGeneral Packet Radio Serviceの略である。EDGEは、Enhanced Data for GSM Evolution; Enhanced Data for GPRSの略である。WCDMAは、Wideband Code Division Multiple Accessの略である。DCSは、Digital Cellular Systemの略である。PCSは、Personal Communication Systemの略である。
【0003】
下記特許文献1には、マルチバンドに対応した送受信機が記載されている。この送信機は、送信ベースバンド信号を中間周波数送信信号にアップコンバートする直交変調器と、バンドパスフィルタと、中間周波数送信信号とRF局部信号とからRF送信信号を生成するアップコンバータと、高出力増幅器とにより構成されている。直交変調器は、局部発振器からの200MHzの中間周波数局部信号が供給されるπ/2移相器と、送信ベースバンド信号とπ/2移相器により生成されるπ/2(90度)の位相差の2つの中間周波数局部信号が供給される2個のミキサーと、2個のミキサーに接続された加算器により構成されている。マルチバンド送信に対応するために、2個のRF局部発振器と2個の分周器とが使用されている。
【0004】
下記非特許文献1には、世界規模の使用のための2100、1900、850/800MHzのトライ・バンドの第3世代セルラートランシーバー用集積回路(IC)が記載されている。このRFトランシーバーは、トライ・バンド・WCDMAとクワッド・バンド・GSM/EDGEとのベースバンド信号処理ICを集積化している。また、下記非特許文献1には、3GPPが提唱する下記6個の周波数帯が記載されている。尚、3GPPは、3-rd Generation Partnership Projectの略である。
【0005】
バンド アップリンク ダウンリンク 単位 地域
バンドI :1920〜1980 2110〜2170 MHz 欧州
バンドII :1850〜1910 1930〜1990 MHz 米国
バンドIII :1710〜1785 1805〜1880 MHz 欧州
バンドIV :1710〜1755 2110〜2155 MHz 米国
バンドV : 824〜 849 869〜 894 MHz 米国
バンドVI : 830〜 840 875〜 885 MHz 日本
更に、下記非特許文献1に記載されたRF集積化トランシーバーは、上記バンドIII、Vのダウンリンク周波数のRF受信信号が供給されるレシーバーと、上記バンドIII、Vのアップリンク周波数のRF送信信号を形成するトランスミッターと、周波数シンセサイザとを含んでいる。周波数シンセサイザは、レシーバーとトランスミッターとのための2個の集積化電圧制御発振器(VCO)と伴に2個のフラクショナルNシンセサイザとで構成されている。良く知られているように、フラクショナルNシンセサイザを用いることにより、PLL回路の分周器の分周数を整数だけではなく分数(フラクション)に設定することで基準周波数の整数倍以外の発振周波数を電圧制御発振器(VCO)の出力から得られるものである。
【0006】
上記レシーバーは、バンドIとバンドIIの略2GHzのダウンリンク周波数を持つRF受信信号が供給される第1受信ミキサーと、バンドVの略0.9GHzのダウンリンク周波数を持つRF受信信号が供給される第2受信ミキサーとを含む。3476〜4340MHzの周波数帯域をカバーする受信用電圧制御発振器(RxVCO)と第1受信ミキサーおよび第2受信ミキサーとの間には、分周数が2と4とに設定可能な受信用分周器が接続されている。
【0007】
上記トランスミッターは、バンドIとバンドIIの略1.9GHzのアップリンク周波数を持つRF送信信号を生成する第1送信ミキサーと、バンドVの略0.8GHzのアップリンク周波数を持つRF送信信号を生成する第2送信ミキサーとを含む。3296〜3960MHzの周波数帯域をカバーする送信用電圧制御発振器(TXVCO)と第1送信ミキサーとの間には分周数が2に設定された第1送信用分周器が接続され、この送信用電圧制御発振器(TXVCO)と第2送信ミキサーとの間には分周数が4に設定可された第2送信用分周器が接続されている。
【0008】
一方、下記非特許文献2には、WCDMAのRF受信信号とGSM900のRF受信信号とDCS1800のRF受信信号との3つの周波数バンドが供給されるRFフロントエンド・レシーバー・チップが記載されている。尚、WCDMAのRF受信信号の周波数は2110〜2170MHzであり、GSM900のRF受信信号の周波数は925〜960MHzであり、DCS1800のRF受信信号の周波数は1805〜1880MHzである。WCDMAのRF受信信号は、外付ローノイズアンプ(LNA)と表面弾性波フィルタ(SAW)の段間バンドパスフィルタとを介して内蔵WCDMAローノイズアンプの入力に供給される。DCS1800のRF受信信号とGSM900のRF受信信号とは、内蔵DCS1800ローノイズアンプの入力と内蔵GSM900ローノイズアンプの入力とにそれぞれ供給される。
【0009】
内蔵WCDMAローノイズアンプのRF受信増幅出力信号は第1I、Qダウンコンバージョンミキサー対の一方の入力端子に供給される。チップ外部の受信用電圧制御発振器(VCO)からの外部受信ローカル信号は分周数が2に設定された第1分周器に供給され、第1分周器の出力からの90°の位相差を持つ第1受信ローカル信号が第1I、Qダウンコンバージョンミキサー対の他方の入力端子に供給される。
【0010】
内蔵DCS1800ローノイズアンプのRF受信増幅出力信号は第2I、Qダウンコンバージョンミキサー対の一方の入力端子に供給される。チップ外部の受信用電圧制御発振器(VCO)からの外部受信ローカル信号は分周数が2に設定された第2分周器に供給され、第2分周器の出力からの90°の位相差を持つ第2受信ローカル信号が第2I、Qダウンコンバージョンミキサー対の他方の入力端子に供給される。
【0011】
内蔵GSM900ローノイズアンプのRF受信増幅出力信号は第3I、Qダウンコンバージョンミキサー対の一方の入力端子に供給される。チップ外部の受信用電圧制御発振器(VCO)からの外部受信ローカル信号は分周数が4に設定された第3分周器に供給され、第3分周器の出力からの90°の位相差を持つ第3受信ローカル信号が第3I、Qダウンコンバージョンミキサー対の他方の入力端子に供給される。
【0012】
尚、WCDMA用第1I、Qダウンコンバージョンミキサー対は、出力周波数がベースバンド信号であるゼロIFアーキテクチャーを採用している。しかし、GSMのDCS1800用第2ダウンコンバージョンミキサー対とGSM900用第2ダウンコンバージョンミキサー対とは、出力周波数がベースバンド信号周波数よりも高い低中間周波(ローIF)アーキテクチャーを採用している。また、これらのダウンコンバージョンミキサーには、良く知られているダブルバランスド型ギルバートセルのミキサーが使用されている。
【0013】
また、90°の位相差を持つ受信ローカル信号を生成する第1分周器、第2分周器、第3分周器として、ECLライクのD型フリップフロップの2段または4段のカスケード接続により構成されている。D型フリップフロップは、サンプリングステージとラッチステージとにより構成される。サンプリングステージはゲートに非反転クロックCLKが供給されソースが電流源を介して接地電圧に接続された第1MOSトランジスタを含み、ラッチステージはゲートに反転クロック/CLKが供給されソースが上述の電流源を介して接地電圧に接続された第2MOSトランジスタを含んでいる。サンプリングステージは、更にゲートに非反転入力信号Dと反転入力信号/Dとが供給されソースが第1MOSトランジスタのドレインに共通接続された第3と第4のMOSトランジスタを含み、第3と第4のMOSトランジスタのドレインはそれぞれ抵抗を介して電源電圧に接続される。ラッチステージは、更にゲートがサンプリングステージの第4と第3のMOSトランジスタのドレインに接続されソースが第2MOSトランジスタのドレインに共通接続された第5と第6のMOSトランジスタを含んでいる。サンプリングステージの第3MOSトランジスタのドレインとラッチステージの第5MOSトランジスタのドレインと第6MOSトランジスタのゲートとは、非反転出力端子Qに共通接続されている。サンプリングステージの第4MOSトランジスタのドレインとラッチステージの第6MOSトランジスタのドレインと第5MOSトランジスタのゲートとは、反転出力端子/Qに共通接続されている。尚、ECLは、高速バイポーラ論理回路であるEmitter Coupled Logicの略である。
また、下記特許文献2には、複数の電圧制御発振器と、送受信ミキサー部と、変復調部とを有するマルチバンド送受信機が記載されている。この構成では、発振周波数が異なる各バンドに対応した電圧制御発振器を複数個配置して、制御部から所望の周波数帯域に応じて切り換え指令を出力して、電圧制御発振器を切り換えることで、マルチバンド送受信に対応している。
【0014】
【非特許文献1】D.L.Kaczman et al, “A Single−Chip Tri−Band (2100, 1900, 850/800 MHz) WCDMA/HSDPA Cellular Transceicer”, IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.41, NO.5, MAY 2006, PP.1122−1132.
【非特許文献2】Chun−Lin Ko et al, “A CMOS Dual−Mode RF Front−End Receiver for GSM and WCDMA”, 2004 IEEE Asia−Pacific Conference on Advanced System Integrated Circuit(AP−ASIC2004), Aug.4−5, 2004, PP.374−377.
【特許文献1】特開2002−280924号 公報
【特許文献2】特開2000−269848号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者等は、本発明に先立ってWCDMA/マルチバンドの通信が可能な通信用RFICの研究・開発に従事した。ここでRFICはRadio Frequency Integrated Circuitの略である。この通信用RFICの送信機には、ダイレクトアップコンバージョンアーキテクチャーの採用が検討された。
【0016】
《本発明に先立って検討されたRFIC》
図2は、本発明に先立って検討された通信用RFICのWCDMA/マルチバンド対応ダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。送信バンドIの送信周波数は1920〜1980MHz、送信バンドVIの送信周波数は830〜840MHz、送信バンドIIの送信周波数は1850〜1910MHz、送信バンドXIの送信周波数は1428〜1453MHzである。送信バンドI、送信バンドVI、送信バンドII、送信バンドXIは、それぞれ送信ブロックTx_Blk1、送信ブロックTx_Blk2、送信ブロックTx_Blk3、送信ブロックTx_Blk4から基地局に送信されるものである。
【0017】
図2のディジタルI、Q信号入力端子26、27に供給されるディジタルベースバンド送信信号DI、DQは、D/A変換器22、25でアナログ信号に変換され、可変利得増幅器21、24で増幅され、ローパスフィルタ20、23で不要信号を除去される。ローパスフィルタ20、23からのアナログベースバンド送信信号は、各バンドに対応した送信ブロックTx_Blk1、2、3、4にそれぞれ配置されたI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の一方の入力端子に供給される。尚、可変利得増幅器21、24は、固定利得増幅器によって置換されることができる。送信バンド切り換え制御部15からは、各送信ブロックTx_Blk1、2、3、4のON/OFF制御を行う送信ブロック選択信号Tx_Blk_SSが出力される。
【0018】
RFIC内部には、送信ローカル信号発生用に2個の送信用電圧制御発振器(VCO)16、18が配置されている。まず、送信バンドI、VI、IIが選択された時には、3320〜3960MHzの発振周波数で発振する一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16がONに制御される。しかし、送信バンドXIが選択された時には、2856〜2896MHzの発振周波数で発振する他方の送信用電圧制御発振器(TXVCOB)18がONに制御される。
【0019】
以下の説明では、送信バンドIが選択された時の動作について示す。この時には送信ブロックTx_Blk1のみがONとなり、他の送信ブロックTx_Blk2、3、4はOFF状態とされる。送信バンドIが選択された時には、送信ブロックTx_Blk1のための一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16は、PLL回路17によって3840〜3960MHzの発振周波数帯域にロックされる。従って、分周数が2に設定された分周器11には、3840〜3960MHzの送信用電圧制御発振信号が供給される。それにより、分周比が1/2に設定された分周器11の2つの出力端子から一対のミキサー9、10の他方の入力端子に、90度(π/2)位相の異なる1920〜1980MHzの送信用ローカル信号32、33が供給される。一対のミキサー9、10のRF出力信号は合成された後、可変利得増幅器7で増幅され、バンドパスフィルタ6で不要信号を除去した後、電力増幅器5で増幅され、送信端子28から1920〜1980MHzの送信周波数の送信バンドIのRF送信信号として出力される。
【0020】
次に、送信バンドVIが選択された時の動作について示す。この時には送信ブロックTx_Blk2のみがONとなり、他の送信ブロックTx_Blk1、3、4はOFF状態とされる。送信バンドVIが選択された時には、送信ブロックTx_Blk2のための一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16は、PLL回路17によって3320〜3360MHzの発振周波数帯域にロックされる。従って、分周数が4に設定された分周器12には、3320〜3360MHzの送信用電圧制御発振信号が供給される。それにより、分周比が1/4に設定された分周器12の2つの出力端子から一対のミキサー9、10の他方の入力端子に、90度(π/2)位相の異なる830〜840MHzの送信用ローカル信号が供給される。一対のミキサー9、10のRF出力信号は合成された後、可変利得増幅器7で増幅され、バンドパスフィルタ6で不要信号を除去した後、電力増幅器5で増幅され、送信端子29から830〜840MHzの送信周波数の送信バンドVIのRF送信信号として出力される。
【0021】
次に、送信バンドIIが選択された時の動作について示す。この時には送信ブロックTx_Blk3のみがONとなり、他の送信ブロックTx_Blk1、2、4はOFF状態とされる。送信バンドIIが選択された時には、送信ブロックTx_Blkのための一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16は、PLL回路17によって3700〜3820MHzの発振周波数帯域にロックされる。従って、分周数が2に設定された分周器13には、3700〜3820MHzの送信用電圧制御発振信号が供給される。それにより、分周比が1/2に設定された分周器13の2つの出力端子から一対のミキサー9、10の他方の入力端子に、90度(π/2)位相の異なる1850〜1910MHzの送信用ローカル信号が供給される。一対のミキサー9、10のRF出力信号は合成された後、可変利得増幅器7で増幅され、バンドパスフィルタ6で不要信号を除去した後、電力増幅器5で増幅され、送信端子30から1850〜1910MHzの送信周波数の送信バンドIIのRF送信信号として出力される。
【0022】
最後に、送信バンドXIが選択された時の動作について示す。この時には送信ブロックTx_Blk4のみがONとなり、他の送信ブロックTx_Blk1、2、3はOFF状態とされる。送信バンドXIが選択された時には、送信ブロックTx_Blk4のための他方の送信用電圧制御発振器(TXVCOB)18は、PLL回路17によって2856〜2906MHzの発振周波数帯域にロックされる。従って、分周比が2に設定された分周器14には、2856〜2906MHzの送信用電圧制御発振信号が供給される。それにより、分周比が1/2に設定された分周器14の2つの出力端子から一対のミキサー9、10の他方の入力端子に、90度(π/2)位相の異なる1428〜1453MHzの送信用ローカル信号が供給される。一対のミキサー9、10のRF出力信号は合成された後、可変利得増幅器7で増幅され、バンドパスフィルタ6で不要信号を除去した後、電力増幅器5で増幅され、送信端子31から1428〜1453MHzの送信周波数の送信バンドXIのRF送信信号として出力される。
【0023】
《デュアル送信用電圧制御発振器》
図2のダイレクトアップコンバージョン送信機の構成では、2個の送信用電圧制御発振器(VCO)16、18と4個の分周器11、12、13、14の組み合わせで各バンドに対応したクォドラチャーローカル信号を作成している。4個の分周器11、12、13、14の分周数は2、4のいずれかを用いているので、4個の分周器11、12、13、14による分周比は1/2、1/4のいずれかとなる。一般的に分周器の分周数が偶数の時、2つの出力信号位相差を90度(π/2)とすることができ、クォドラチャー(直交)ローカル信号を生成できる。以上の理由から、図2の送信機では、上記非特許文献1と同様に4個の分周器11、12、13、14の分周数を2、4のいずれかに設定している。しかし、4個の分周器の分周数を2、4の偶数から選択するように制約することで、発振周波数範囲が制限された電圧制御発振器(VCO)から作成可能なローカル信号の周波数帯域も制限される。
【0024】
このような理由のために、送信ローカル信号周波数選択の自由度を向上するためには、電圧制御発振器(VCO)の発振周波数の広帯域化を行うか、もしくは上記特許文献2の記載のように電圧制御発振器(VCO)を各帯域毎に複数個配置する必要があった。
【0025】
図3は、図2に示した送信機における電圧制御発振器(VCO)の発振周波数帯域とローカル信号周波数帯域の関係を示す図である。
【0026】
図3の右上欄に示すように、一方の送信用電圧制御発振器(TXVCOA)16の発振周波数帯域は3320〜3960MHzに設定され、過大に発振周波数帯域を広げないようにしている。また、図3の下欄に示すように、送信バンドXIについても1/2分周器を用いて送信用クォドラチャーローカル信号を生成するために、発振周波数帯域は2856〜2906MHzに設定された他方の送信用電圧制御発振器(TXVCOB)18を追加している。そのため、図2の本発明に先立って検討された通信用RFICでは、他方の送信用電圧制御発振器(TXVCOB)18の追加により、RFICチップ面積が大きくRFICの製造コストが高いと言う問題があった。
【0027】
《シングル送信用電圧制御発振器》
また、図5も、図2と同様に本発明に先立って検討された他の通信用RFICのWCDMA/マルチバンド対応ダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。図5のRFICでは、発振周波数帯域が2856〜3960MHzと極めて広帯域に設定された単一の送信用電圧制御発振器(TXVCOC)34が、WCDMA/マルチバンドの通信をカバーしている。図5において、図2と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
図4は、図5に示した送信機における電圧制御発振器(VCO)の発振周波数帯域とローカル信号周波数帯域の関係を示す図である。
【0029】
図5の送信機システムは、図2の送信機システムのデュアル電圧制御発振器(VCO)と比較して、WCDMA/マルチバンドの通信をカバーするシングル送信用電圧制御発振器(VCO)で構成されている。しかし、図5の送信機システムでは、単一の送信用電圧制御発振器(TXVCOC)34の発振周波数帯域は上述のように2856〜3960MHzと極めて広帯域に設定され、発振周波数の比帯域幅は27.9%となっている。
【0030】
図5の送信機システムは、単一の送信用電圧制御発振器(TXVCOC)34の採用によってRFICチップ面積とRFICの製造コストとを低減が可能となるが、単一の送信用電圧制御発振器の発振周波数の広帯域化に伴って位相雑音が増加すると言う問題が本発明者等の検討により明らかとされた。
【0031】
本発明は、以上のような本発明に先立った本発明者等の検討の結果、なされたものである。
【0032】
従って、本発明の目的とするところは、マルチバンドの送信用もしくは受信用のための通信用電圧制御発振器の個数の増加もしくは通信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減することの可能な送受信機を提供することにある。
【0033】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0035】
すなわち、本発明の1つの代表的な送受信機は、通信用電圧制御発振器(34)と、複数の周波数帯域のRF信号の通信を行う複数の通信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)とを含む。前記複数の通信ブロックのそれぞれは、分周器(11、12、13、14)と、ミキサー(9、10)とを含む。
【0036】
前記複数の通信ブロックでは、前記分周器は前記通信用電圧制御発振器(34)から供給される通信用発振出力信号を分周して生成した一対の通信用ローカル信号を前記ミキサー(9、10)に供給する。
【0037】
前記複数の通信ブロックの少なくとも1つの通信ブロック(Tx_Blk1、2、3)に含まれる1つの分周器(11、12、13)の分周数は、偶数の整数に設定される。この設定により、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた分周器からミキサーに供給される通信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となる。
【0038】
前記複数の通信ブロックの他の通信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた他の分周器(14)の他の分周数は、非整数に設定される。この設定により、前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた分周器(14)からミキサーに供給される通信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となる。
【0039】
送受信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の通信ブロック(Tx_Blk4)に含まれたミキサー(9、10)に関係する一対の通信アナログ信号に付与する変換ユニット(35)を更に含むことを特徴とする(図1参照)。
【発明の効果】
【0040】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0041】
すなわち、本発明によれば、マルチバンドの送信用もしくは受信用のための通信用電圧制御発振器の個数の増加もしくは通信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
《代表的な実施の形態》
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態による送受信機(19)は、受信機(99)と、送信機とを具備する。
【0043】
前記受信機(99)は、RF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートする受信復調器を含む。
【0044】
前記送信機は、送信用電圧制御発振器(34)と、複数の周波数帯域のRF送信信号を生成する複数の送信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)とを含むものである。
【0045】
前記複数の送信ブロックのそれぞれは、分周器(11、12、13、14)と、送信用変調器(8、9、10)とを含むものである。
【0046】
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記送信用電圧制御発振器(34)から供給される送信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の送信用ローカル信号を前記送信用変調器(8、9、10)に供給するものである。
【0047】
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記送信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の送信用ローカル信号により送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートするものである。
【0048】
前記複数の送信ブロックの少なくとも1つの送信ブロック(Tx_Blk1、2、3)に含まれた少なくとも1つの分周器(11、12、13)の分周数は、偶数の整数に設定されている。
【0049】
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する送信用変調器に供給される該当する一対の送信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものである。
【0050】
前記複数の送信ブロックの他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた他の分周器(14)の他の分周数は、非整数に設定されている。
【0051】
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた前記他の分周器(14)から他の送信用変調器(8、9、10)に供給される他の一対の送信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものである。
【0052】
前記送信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた前記他の送信用変調器に供給される一対の送信アナログ信号に付与する変換ユニット(35)を更に含むことを特徴とする(図1参照)。
【0053】
前記実施の形態によれば、特定の周波数帯域のRF送信信号を生成する前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた前記送信用変調器(8、9、10)において、以下の動作が実行される。すなわち、前記送信用変調器において、前記一対の送信用非クォドラチャーローカル信号の前記オフセット角度は、前記変換ユニット(35)により前記一対の非クォドラチャー送信アナログ信号に付与された前記補償オフセット量によりキャンセルされる。その結果、前記送信用変調器(8、9、10)において、理想的なクォドラチャー(直交)変調が行われ、送信アナログ信号から特定の周波数帯域のRF送信信号へのアップコンバートが実行されることができる。また、送信用電圧制御発振器の個数の増加もしくは送信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減することができる。
【0054】
好適な実施の形態では、前記送信機は、一対の送信ディジタル信号を前記一対の送信アナログ信号に変換する一対のD/A変換器(22、25)を更に含み、前記一対のD/A変換器(22、25)は、前記複数の送信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)によって共有されている(図1参照)。
【0055】
前記好適な実施の形態によれば、前記送信機とベースバンド処理ユニットとのディジタル送信インターフェースが可能となり、この送信インターフェースでのRF信号干渉の影響を軽減することができる。また、前記一対のD/A変換器(22、25)が前記複数の送信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)によって共有されることにより、送信機のコストを低減することができる。
【0056】
他の好適な実施の形態では、前記変換ユニット(35)は、前記一対のD/A変換器(22、25)の一対の入力端子に接続される。前記変換ユニット(35)が前記一対の送信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記一対のD/A変換器(22、25)の一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された前記一対の送信アナログ信号が生成される(図1参照)。
【0057】
前記他の好適な実施の形態によれば、オフセット補償をディジタル信号処理により高精度に実現することができる。
【0058】
更に他の好適な実施の形態では、前記変換ユニット(36)は、前記一対のD/A変換器(22、25)の一対の出力端子に接続される。前記変換ユニット(36)が一対の送信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記変換ユニット(36)の一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された一対の送信アナログ出力信号が生成される(図7参照)。
【0059】
前記更に他の好適な実施の形態によれば、オフセット補償をアナログ信号処理により簡易に実現することができる。
【0060】
より好適な実施の形態では、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の送信ブロック(Tx_Blk1)と第2の送信ブロック(Tx_Blk3)とにそれぞれ含まれた第1の分周器(11)と第2の分周器(13)の分周数は、それぞれ2と4とに設定されている。
【0061】
前記他の送信ブロック(Tx_Blk4)に含まれた前記他の分周器(14)の分周数は、2.5の非整数に設定されている。
【0062】
前記送信用電圧制御発振器(34)から生成される前記送信用発振出力信号の周波数は、略3GHzから略4GHzの間に設定可能とされている。
【0063】
前記第1の送信ブロックは略1.8GHzから略2GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記第2の送信ブロックは略0.8GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記他の送信ブロックは略1.4GHzの送信バンドのRF送信信号を生成する(図6参照)。
【0064】
具体的な実施の形態では、前記送信用電圧制御発振器(34)と前記複数の送信ブロック(Tx_Blk1、2、3、4)とを含む前記送信機は、ダイレクトアップコンバージョン送信機アーキテクチャーと低IFアップコンバージョン送信機アーキテクチャーとのいずれか一方である。
【0065】
最も具体的な実施の形態では、前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機は、半導体チップに構成されている。
〔2〕本発明の代表的な実施の形態による本発明の代表的な送受信機(19)は、受信機と、送信機(100)とを具備する。
【0066】
前記送信機(100)は、送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートする送信変調器を含む。
【0067】
前記受信機は、受信用電圧制御発振器(75)と、複数の周波数帯域のRF受信信号を受信する複数の受信ブロック(Rx_Blk1、2、3、4)とを含むものである。
【0068】
前記複数の受信ブロックのそれぞれは、分周器(62、63、64、65)と、受信用復調器(60、61)とを含むものである。
【0069】
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記受信用電圧制御発振器(75)から供給される受信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の受信用ローカル信号を前記受信用復調器(60、61)に供給するものである。
【0070】
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記受信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の受信用ローカル信号によりRF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートするものである。
【0071】
前記複数の受信ブロックの少なくとも1つの受信ブロック(Rx_Blk1、2、3)に含まれた少なくとも1つの分周器(62、63、64)の分周数は、偶数の整数に設定されている。
【0072】
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの受信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する受信用復調器に供給される該当する一対の受信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものである。
【0073】
前記複数の受信ブロックの他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた他の分周器(65)の他の分周数は、非整数に設定されている。
【0074】
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた前記他の分周器(65)から他の受信用復調器(60、61)に供給される他の一対の受信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものである。
【0075】
前記受信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた前記他の受信用復調器から生成される一対の受信アナログ信号に付与する変換ユニット(72)を更に含むことを特徴とする(図10参照)。
【0076】
前記実施の形態によれば、特定の周波数帯域のRF受信信号を生成する前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた前記受信用復調器(60、61)において、以下の動作が実行される。すなわち、前記受信用復調器に供給された前記一対の受信用非クォドラチャーローカル信号の前記オフセット角度の影響は、前記変換ユニット(72)により前記受信用復調器から生成される一対の受信アナログ信号に付与された前記補償オフセット量によりキャンセルされる。その結果、前記受信機の前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)と前記変換ユニット(72)とにより、理想的なクォドラチャー(直交)復調が行われ、特定の周波数帯域のRF受信信号から受信アナログ信号へのダウンコンバートが実行されることができる。また、受信用電圧制御発振器の個数の増加もしくは受信用電圧制御発振器の広帯域化とそれに伴う位相雑音の増加とを軽減することができる。
【0077】
好適な実施の形態では、前記受信機は、前記一対の受信アナログ信号を一対の受信ディジタル信号に変換する一対のA/D変換器(70、71)を更に含み、前記一対のA/D変換器(70、71)は、前記複数の受信ブロック(Rx_Blk1、2、3、4)によって共有されている(図10参照)。
【0078】
前記好適な実施の形態によれば、前記受信機とベースバンド処理ユニットとのディジタル受信インターフェースが可能となり、この受信インターフェースでのRF信号干渉の影響を軽減することができる。また、前記一対のA/D変換器(70、71)が前記複数の受信ブロック(Rx_Blk1、2、3、4)によって共有されることにより、受信機のコストを低減することができる。
【0079】
他の好適な実施の形態では、前記変換ユニット(78)は、前記一対のA/D変換器(70、71)の一対の出力端子に接続される。前記変換ユニット(72)が前記一対の受信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に間接的に付与されるものである(図10参照)。
【0080】
前記他の好適な実施の形態によれば、オフセット補償をディジタル信号処理により高精度に実現することができる。
【0081】
更に他の好適な実施の形態では、前記変換ユニット(78)は、前記一対のA/D変換器(70、71)の一対の入力端子に接続される。前記変換ユニット(78)が一対の受信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に直接的に付与されるものである(図12参照)。
【0082】
前記更に他の好適な実施の形態によれば、オフセット補償をアナログ信号処理により簡易に実現することができる。
【0083】
より好適な実施の形態では、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の受信ブロック(Rx_Blk1)と第2の受信ブロック(Rx_Blk3)とにそれぞれ含まれた第1の分周器(62)と第2の分周器(64)の分周数は、それぞれ2と4とに設定されている。
【0084】
前記他の受信ブロック(Rx_Blk4)に含まれた前記他の分周器(65)の分周数は、2.5の非整数に設定されている。
【0085】
前記受信用電圧制御発振器(76)から生成される前記受信用発振出力信号の周波数は、略3.5GHzから略4.5GHzの間に設定可能とされている。
【0086】
前記第1の受信ブロックは略1.9GHzから略2.2GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記第2の受信ブロックは略0.8GHzから略0.9GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記他の受信ブロックは略1.4GHzから略1.5Hzの受信バンドのRF受信信号を受信する(図11参照)。
【0087】
具体的な実施の形態では、前記受信用電圧制御発振器(76)と前記複数の受信ブロック(Rx_Blk1、2、3、4)とを含む前記受信機は、ダイレクトダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーと低IFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーとのいずれか一方である。
【0088】
最も具体的な実施の形態として、前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機は、半導体チップに構成されている。
【0089】
《実施の形態の説明》
次に、実施の形態について更に詳述する。以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0090】
《ダイレクトアップコンバージョン送信機》
図1は、本発明の1つの実施の形態によるマルチバンド/マルチモード通信用のダイレクトアップコンバージョン(DUC)送信機を示す図である。
【0091】
《RFICのトータルシステム》
図1の通信用RFIC(19)は、半導体チップの上部と下部とに配置された送信機と受信機99とを具備する。上部の送信機は送信アナログベースバンド信号をRF送信信号に変換する送信用変調器をRF送信信号の周波数帯域毎に含み、下部の受信機99は受信したRF受信信号を受信アナログベースバンド信号に変換する受信用復調器をRF受信信号の周波数帯域毎に含む。また、このRFIC(19)は、ディジタル位相変換ユニット35、D/A変換器22、25、可変利得増幅器21、24、ローパスフィルタ20、23、送信用電圧制御発振器(TXVCO)34、送信用PLL回路17、送信用バンド切り換え制御ブロック15を半導体チップに含んでいる。
【0092】
図1のRFIC(19)の上部の送信機は、図2と同様に送信周波数1920〜1980MHzの送信バンドI、送信周波数1850〜1910MHzの送信バンドII、送信周波数830〜840MHzの送信バンドVI、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIのマルチバンド送信が可能である。送信バンドI、送信バンドII、送信バンドVI、送信バンドXIは、送信ブロックTx_Blk1、送信ブロックTx_Blk2、送信ブロックTx_Blk3、送信ブロックTx_Blk4から基地局にそれぞれ送信されるものである。
【0093】
各送信ブロックTx_Blk1、2、3、4は、一対のミキサー9、10と加算器8とで構成された送信用クォドラチャー変調器と、可変利得増幅器7と、バンドパスフィルタ6と、電力増幅器5と、M/N分周器11、12、13、14をそれぞれ含んでいる。各送信ブロックTx_Blk1、2、3、4のバンドパスフィルタ6と電力増幅器5とは、RFIC(19)の半導体チップの外部部品として構成されている。M/N分周器11、12、13、14のそれぞれは、分周比M/Nに関してMは、M≧1の自然数、N≧2の自然数の関係に設定されている。
【0094】
《送信バンドXIを送信するための非整数の分周数に設定された分周器》
特に、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIを送信するための送信ブロックTx_Blk4の分周器14の分周比M4/N4は2/5に設定されており、分周数は分周比の逆数の2.5の非整数に設定されている。送信用バンド切り換え制御ブロック15とPLL回路17とにより3570〜3632.5MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、送信ブロックTx_Blk4の分周器14の分周比M4/N4の2/5で分周される。送信ブロックTx_Blk4から、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIが送信されることができる。
【0095】
《他の送信バンドを送信するための整数の分周数に設定された分周器》
送信周波数1920〜1980MHzの送信バンドIを送信するための送信ブロックTx_Blk1の分周器11の分周比M1/N1は、1/2に設定されており、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。送信用バンド切り換え制御ブロック15とPLL回路17とにより3840〜3960MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、送信ブロックTx_Blk1の分周器11の分周比M1/N1の1/2で分周される。送信ブロックTx_Blk1から、送信周波数1920〜1980MHzの3GPP規格の送信バンドIが送信されることができる。尚、3GPPは、3-rd Generation Partnership Projectの略である。
【0096】
送信周波数1850〜1910MHzの送信バンドIIを送信するための送信ブロックTx_Blk2の分周器12の分周比M2/N2は、1/2に設定されており、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。送信用バンド切り換え制御ブロック15とPLL回路17とにより3700〜3820MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、送信ブロックTx_Blk2の分周器12の分周比M2/N2の1/2で分周される。送信ブロックTx_Blk2から、送信周波数1850〜1910MHzの3GPP規格の送信バンドIIが送信されることができる。
【0097】
送信周波数830〜840MHzの送信バンドVIを送信するための送信ブロックTx_Blk3の分周器13の分周比M3/N3は、1/4に設定されており、分周数は分周比の逆数の4の整数に設定されている。送信用バンド切り換え制御ブロック15とPLL回路17とにより3320〜3360MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、送信ブロックTx_Blk3の分周器13の分周比M3/N3の1/4で分周される。送信ブロックTx_Blk3から、送信周波数830〜840MHzの3GPP規格の送信バンドVIが送信されることができる。
【0098】
《送信ブロックの分周器》
図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk1、2、3、4は、上述したように分周比M/Nで分周数が分周比の逆数である分周器11、12、13、14を具備している。
【0099】
《整数の分周数の分周器》
送信バンドIを送信するための送信ブロックTx_Blk1の分周器11の分周比M1/N1は、1/2に設定され、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。送信バンドIIを送信するための送信ブロックTx_Blk2の分周器12の分周比M2/N2は、1/2に設定され、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。送信バンドVIを送信するための送信ブロックTx_Blk3の分周器13の分周比M3/N3は、1/4に設定され、分周数は分周比の逆数の4の整数に設定されている。このように、送信バンドI、II、VIを送信するための送信ブロックTx_Blk1、2、3の分周器11、12、13は、分周数は2または4の偶数の整数に設定されている。
【0100】
分周数が2または4の偶数の整数の分周器は上記非特許文献2に記載されたECLライクのD型フリップフロップの2段または4段のカスコード接続により構成され、この分周器から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が形成されることができる。
【0101】
上記非特許文献2に記載された分周数が2または4の偶数の整数であり90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号を形成する分周器を、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk1、2、3の分周器11、12、13として使用することが可能である。ローパスフィルタ20、23からのアナログベースバンド送信信号は、送信ブロックTx_Blk1、2、3のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の一方の入力端子に供給される。分周器11、12、13の出力から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が、送信ブロックTx_Blk1、2、3のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の他方の入力端子に供給される。その結果、送信ブロックTx_Blk1、2、3のI/Q変調器においてRF送信信号を形成するクォドラチャー(直交)変調が行われ、加算器8でベクトル合成されたRF送信信号は可変利得増幅器7、バンドパスフィルタ6、電力増幅器5に供給される。
【0102】
《非整数の分周数の分周器》
しかし、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIを送信するための送信ブロックTx_Blk4の分周器14の分周比M4/N4の2/5に設定され、分周数は分周比の逆数の2.5の非整数に設定されている。従って、上記非特許文献2に記載の分周数が2または4の偶数の整数の分周器は、当然、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk4の分周器14として使用することは不可能である。
【0103】
《非整数の分周によるローカル信号の位相オフセット》
後に詳細に説明するように、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk4で分周数が2.5の非整数を有する分周器14は、図8に示す複雑な回路構成のロジック分周器により構成される。図8の複雑な回路構成のロジック分周器は、図9に示すように供給されるクロック入力信号CLKに応答して2.5倍の周期を持ちデューティー比が40%の一対のローカル信号LI、LQを生成する。しかし、一対のローカル信号LI、LQの位相差は、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°と90度ではない一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQが生成される。72度の位相差を有する一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQは、理想の位相差90度に対して、72°−90°=−18°の誤差オフセット角度を持つものとなる。
【0104】
《位相変換ユニットによる位相変換ユニットの補償》
この送信バンドXIの送信時に、送信用バンド切り換え制御ブロック15により制御されたディジタル位相変換ユニット35でのアナログ換算での補償位相オフセット量は+18度に設定される。すなわち、一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQの誤差オフセット角度とディジタル位相変換ユニット35でのアナログ換算での補償位相オフセット量とは、極性が反対で絶対値が略同一となるように、調整される。
【0105】
すなわち、ディジタル位相変換ユニット35の一対の入力端子26(DI)、27(DQ)には、図示されていないベースバンド処理ユニットからアナログ換算で90度の位相差を有する一対のディジタルベースバンド送信入力信号が供給される。送信用バンド切り換え制御ブロック15の制御の下でディジタル位相変換ユニット35は、一対の入力端子26(DI)、27(DQ)の一対のディジタルベースバンド送信入力信号に応答してアナログ換算で108度の位相差を有する一対のディジタルベースバンド送信出力信号を一対の出力端子DI´、DQ´に生成する。
【0106】
ディジタル位相変換ユニット35の出力端子DI´、DQ´の一対のディジタルベースバンド送信出力信号はD/A変換器22、25の入力端子に供給されることより、D/A変換器22、25の出力端子から108度のアナログ位相差を有する一対のアナログベースバンド送信出力信号が生成される。108度のアナログ位相差を有する一対のアナログベースバンド送信出力信号は、可変利得増幅器21、24、ローパスフィルタ20、23を介して送信ブロックTx_Blk4のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の一方の入力端子に供給される。一方、送信ブロックTx_Blk4のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の他方の入力端子には、分周数が2.5の非整数に設定された分周器14から72度の位相差を有する一対の非クォドラチャーローカル信号が供給されている。その結果、送信ブロックTx_Blk4のI/Q変調器において、−18°の誤差オフセット角度は18度の補償位相オフセット量でキャンセルされて、送信周波数1428〜1453MHzの送信バンドXIのRF送信信号を形成するクォドラチャー(直交)変調が行われる。送信ブロックTx_Blk1、2、3と同様に、送信ブロックTx_Blk4の加算器8でベクトル合成された送信バンドXIのRF送信信号は可変利得増幅器7、バンドパスフィルタ6、電力増幅器5に供給される。
【0107】
尚、送信バンドI、II、VIを送信する際には、分周数が2または4の整数に設定された分周器11、12、13の出力から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が、送信ブロックTx_Blk1、2、3のI/Q変調器を構成する一対のミキサー9、10の他方の入力端子に供給されている。この時には、誤差オフセット角度はゼロ度であるので、送信用バンド切り換え制御ブロック15はディジタル位相変換ユニット35での補償位相オフセット量もゼロ度に制御するものである。
【0108】
図6は、図1の通信用RFIC(19)の送信機が送信バンドI、II、VI、XIをそれぞれ送信する送信動作での電圧制御発振器34の発振周波数帯域、RF送信信号周波数帯域、各送信ブロックの分周器の分周比、一対のローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。
【0109】
≪アナログ位相変換ユニットを含む送信機≫
図7は本発明の他の1つの実施形態によるマルチバンド/マルチモード通信用のダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【0110】
図7の送信機は、図1の送信機のディジタル位相変換ユニット35を削除する代わりに、アナログ位相変換ユニット36をD/A変換器22、25の出力端子と可変利得増幅器21、24の入力端子との間に接続したものである。
【0111】
図7において、アナログ換算で90度の位相差を持つディジタルベースバンド送信信号DI(t)、DQ(t)がD/A変換器22、25の入力端子26、27に供給され、D/A変換器22、25の出力からのアナログベースバンド送信信号I(t)、Q(t)がアナログ位相変換ユニット36に供給される。アナログ位相変換ユニット36は、下記のマトリックスと供給されるアナログベースバンド送信信号I(t)、Q(t)との行列演算を実行して、2つの位相変換アナログベースバンド送信信号I´(t)、Q´(t)を生成する。
【0112】
【数1】
【0113】
ここでマトリックスの位相選択信号θnは送信用バンド切り換え制御ブロック15での送信ブロック選択信号により選択された送信ブロックTx_Blk1、2、3、4に含まれる分周器11、12、13、14の分周比N/Mより、計算式θn=180*M/N*A(A=1、2、…)で与えられる。位相選択信号θnの値は、分周器11、12、13、14からの一対の送信用ローカル信号の位相差に等しく、送信バンドI、II、VIを送信する送信動作では90度となり、送信バンドXIを送信する送信動作では108度となる。
【0114】
送信ブロックTx_Blk1、2、3、4において、送信用のクォドラチャー変調器を構成する一方のミキサー9では一方の位相変換アナログベースバンド送信信号I´(t)=I(t)+cot(θn)・Q(t)と一方の送信用ローカル信号LI(t)=cos(ωt)とのアナログ乗算が行われる。他方のミキサー10では他方の位相変換アナログベースバンド送信信号Q´(t)=−Q(t)/sin(θn)と他方の送信用ローカル信号LQ(t)=cos(ωt―θn)とのアナログ乗算が行われる。その結果、ミキサー1、2の出力に接続された加算器8から正確なクォドラチャー変調出力信号が得られることができる。
【0115】
≪ロジック分周器≫
図8は、図1に示した本発明の1つの実施の形態によるマルチバンド/マルチモード通信用RFICのダイレクトアップコンバージョンアーキテクチャーの送信機に含まれた分周数が2.5と非整数のロジック分周器の構成を示す図である。従って、図8のロジック分周器の分周比は2/5と分周数の逆数となっている。一方、図9は、図8に示したロジック分周器の内部の波形を示す図である。
【0116】
図8のロジック分周器は、4個のD型フリップフロップ(FF)38、39、40、41と否定論理和回路(NOR)37で構成された1/5分周器、2つの論理積回路(AND)43、44と論理和回路(OR)45とで構成されたトリガー信号生成部、2つのD型フリップフロップ(FF)46、47で構成された1/2分周器を含んでいる。
【0117】
ロジック分周器の入力端子42には送信用電圧制御発振器34よりクロック入力信号CLKが供給され、1/5分周器の2つのD型フリップフロップ(FF)38、41からはクロック信号周波数の1/5の周波数でデューティー比が40%の一対の信号D1、D4が出力される。尚、1/5分周信号D1、D4の位相差は180度であり、トリガー信号生成部の論理積回路(AND)43、44に入力される。一方の論理積回路(AND)43では、クロック入力信号CLKの逆相とD型フリップフロップ(FF)38からの出力との論理和Aが生成され、論理和回路(OR)45に入力される。また他方の論理積回路(AND)44では、クロック入力信号CLKの正相とD型フリップフロップ(FF)41からの出力との論理和Bが生成され、こちらの出力も同様に論理和回路(OR)45に入力される。論理積回路(AND)43、44の出力信号(A、B)は論理和回路(OR)45で論理和が演算され、後段の1/2分周器へ供給されるトリガー信号(C)が生成される。D型フリップフロップ(FF)46、47で構成された1/2分周器部では、トリガー信号(C)のポジティブエッジに同期したI側ローカル信号(LI)とネガティブエッジに同期したQ側ローカル信号(LQ)との一対のローカル信号が生成される。ここで、2つのD型フリップフロップ(FF)38、41の出力の否定論理和から演算されるリセット信号(D)を、1/2分周器部のリセット信号として使用している。すなわち、図8の複雑な回路構成のロジック分周器は、図9に示すように供給されるクロック入力信号CLKに応答して2.5倍の周期を持つ一対のローカル信号LI、LQを生成する。また、一対のローカル信号LI、LQの位相差は、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°と90度ではない一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQが生成される。
【0118】
このようにして、図8に示す複雑な回路構成のロジック分周器により図8に示す複雑な回路構成のロジック分周器により、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk4で分周数が2.5の非整数を有する分周器14を構成することができる。
【0119】
また、本発明は一対の送信ミキサーを含む変調器を具備する送信機だけではなく、下記に説明するように一対の受信ミキサーを含む復調器を具備する受信機に適用することができる。
【0120】
≪ダイレクトダウンコンバージョン受信機≫
すなわち、図10は本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトダウンコンバージョン(DDC)受信機の主要部を示す図である。
【0121】
図10の通信用RFIC(19)は、半導体チップの上部と下部とに配置された送信機100と受信機とを具備する。上部の送信機100は送信アナログベースバンド信号をRF送信信号に変換する送信用変調器をRF送信信号の周波数帯域毎に含み、下部の受信機は受信したRF受信信号を受信アナログベースバンド信号に変換する受信用復調器をRF受信信号の周波数帯域毎に含む。また、このRFIC(19)は、ローパスフィルタ66、67、可変利得増幅器68、69、A/D変換器70、71、ディジタル位相変換ユニット72、受信用電圧制御発振器(RXVCO)75、受信用PLL回路76、受信用バンド切り換え制御部77を半導体チップに含んでいる。
【0122】
図10のRFIC(19)の下部の受信機は、受信周波数2110〜2170MHzの受信バンドI、受信周波数1930〜1990MHzの受信バンドII、受信周波数875〜885MHzの受信バンドVI、送信周波数1476〜1501MHzの受信バンドXIのマルチバンド受信が可能である。受信バンドI、受信バンドII、受信バンドVI、受信バンドXIは、受信ブロックRx_Blk1、受信ブロックRx_Blk2、受信ブロックRx_Blk3、受信ブロックRx_Blk4にて基地局からそれぞれ受信されるものである。
【0123】
各受信ブロックRx_Blk1、2、3、4は、ローノイズアンプ58と、バンドパスフィルタ59と、一対のミキサー60、61で構成された受信用クォドラチャー復調器と、M/N分周器62、63、64、65をそれぞれ含んでいる。各受信ブロックRx_Blk1、2、3、4のローノイズアンプ58とバンドパスフィルタ59とは、RFIC(19)の半導体チップの外部部品として構成されているが、他の実施の形態ではRFIC(19)の半導体チップ内部に形成される場合もある。M/N分周器62、63、64、65のそれぞれは、分周比M/Nに関してMは、M≧1の自然数、N≧2の自然数の関係に設定されている。
【0124】
《受信バンドXIを送信するための非整数の分周数に設定された分周器》
特に、送信周波数1476〜1501MHzの送信バンドXIを受信するための受信ブロックRx_Blk4の分周器65の分周比M4/N4は2/5に設定されており、分周数は分周比の逆数の2.5の非整数に設定されている。受信用バンド切り換え制御部77と受信用PLL回路76とにより3690〜3752.5MHzの発振周波数に設定された受信用電圧制御発振器(RXVCO)75の発振出力信号は、受信ブロックRx_Blk4の分周器65の分周比M4/N4の2/5で分周される。受信ブロックRx_Blk4にて、送信周波数1476〜1501MHzの送信バンドXIが受信されることができる。
【0125】
《他の受信バンドを受信するための整数の分周数に設定された分周器》
受信周波数2110〜2170MHzの受信バンドIを受信するための受信ブロックRx_Blk1の分周器62の分周比M1/N1は、1/2に設定されており、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。受信用バンド切り換え制御部77と受信用PLL回路76とにより4220〜4340MHzの発振周波数に設定された受信用電圧制御発振器(RXVCO)75の発振出力信号は、受信ブロックRx_Blk1の分周器62の分周比M1/N1の1/2で分周される。受信ブロックRx_Blk1にて、受信周波数2110〜2170MHzの3GPP規格の受信バンドIが受信されることができる。
【0126】
受信周波数1930〜1990MHzの受信バンドIIを受信するための受信ブロックRx_Blk2の分周器63の分周比M2/N2は、1/2に設定されており、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。受信用バンド切り換え制御部77と受信用PLL回路76とにより3860〜3980MHzの発振周波数に設定された受信用電圧制御発振器(RXVCO)75の発振出力信号は、受信ブロックRx_Blk2の分周器63の分周比M2/N2の1/2で分周される。受信ブロックRx_Blk2から、受信周波数1930〜1990MHzの3GPP規格の受信バンドIIが受信されることができる。
【0127】
受信周波数875〜885MHzの受信バンドVIを送信するための受信ブロックRx_Blk3の分周器64の分周比M3/N3は、1/4に設定されており、分周数は分周比の逆数の4の整数に設定されている。受信用バンド切り換え制御部77と受信用PLL回路76とにより3500〜3540MHzの発振周波数に設定された送信用電圧制御発振器(TXVCO)34の発振出力信号は、受信ブロックRx_Blk3の分周器64の分周比M3/N3の1/4で分周される。受信ブロックRx_Blk3から、受信周波数875〜885MHzの3GPP規格の受信バンドVIが受信されることができる。
【0128】
《受信ブロックの分周器》
図10のRFIC(19)の受信ブロックRx_Blk1、2、3、4は、上述したように分周比M/Nで分周数が分周比の逆数である分周器62、63、64、65を具備している。
【0129】
《整数の分周数の分周器》
受信バンドIを受信するための受信ブロックRx_Blk1の分周器62の分周比M1/N1は、1/2に設定され、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。受信バンドIIを受信するための受信ブロックRx_Blk2の分周器63の分周比M2/N2は、1/2に設定され、分周数は分周比の逆数の2の整数に設定されている。受信バンドVIを受信するための受信ブロックRx_Blk3の分周器64の分周比M3/N3は、1/4に設定され、分周数は分周比の逆数の4の整数に設定されている。このように、受信バンドI、II、VIを送信するための受信ブロックRx_Blk1、2、3の分周器62、63、64は、分周数は2または4の偶数の整数に設定されている。
【0130】
分周数が2または4の偶数の整数の分周器は上記非特許文献2に記載されたECLライクのD型フリップフロップの2段または4段のカスコード接続により構成され、この分周器から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が形成されることができる。
【0131】
上記非特許文献2に記載された分周数が2または4の偶数の整数であり90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号を形成する分周器を、図10のRFIC(19)の受信ブロックRx_Blk1、2、3の分周器62、63、64として使用することが可能である。受信ブロックRx_Blk1、2、3でローノイズアンプ58、バンドパスフィルタ59を経由したRF受信信号はI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の一方の入力端子に供給される。分周器62、63、64の出力から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が、受信ブロックRx_Blk1、2、3のI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の他方の入力端子に供給される。従って、受信ブロックRx_Blk1、2、3のI/Q復調器において、90度の位相差を有する一対のアナログベースバンド受信信号を形成するクォドラチャー(直交)復調が行われる。その結果、一対のアナログベースバンド受信信号は、ローパスフィルタ66、67、可変利得増幅器68、69を介してA/D変換器70、71に供給される。
【0132】
《非整数の分周数の分周器》
しかし、受信周波数1476〜1501MHzの受信バンドXIが受信するための受信ブロックRx_Blk4の分周器65の分周比M4/N4の2/5に設定され、分周数は分周比の逆数の2.5の非整数に設定されている。従って、上記非特許文献2に記載の分周数が2または4の偶数の整数の分周器は、当然、図10のRFIC(19)の受信ブロックRx_Blk4の分周器65として使用することは不可能である。
【0133】
しかし、図1のRFIC(19)の送信ブロックTx_Blk4の分周器14と同様に、図10のRFIC(19)の受信ブロックRx_Blk4で周数が2.5の非整数を有する分周器65は、図8に示す複雑な回路構成のロジック分周器により構成されことができる。図8の複雑な回路構成のロジック分周器は、図9に示すように供給されるクロック入力信号CLKに応答して2.5倍の周期を持つ一対のローカル信号LI、LQを生成する。しかし、一対のローカル信号LI、LQの位相差は、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°と90度ではない一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQが生成される。72度の位相差を有する一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQは、理想の位相差90度に対して、72°−90°=−18°の誤差オフセット角度を持つものとなる。
【0134】
従って、図10において、受信バンドXIの受信時に、受信ブロックRx_Blk4のI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の出力から得られる一対のアナログベースバンド受信信号の位相差も、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°となる。72度の位相差を有する一対のアナログベースバンド受信信号は、理想の位相差90度に対して、72°−90°=−18°の誤差オフセット角度を持つものとなる。
【0135】
《位相変換ユニットによる位相変換ユニットの補償》
この受信バンドXIの受信時に、受信用バンド切り換え制御部77により制御されたディジタル位相変換ユニット72でのアナログ換算での補償位相オフセット量は+18度に設定される。すなわち、一対の非クォドラチャーローカル信号LI、LQの誤差オフセット角度とディジタル位相変換ユニット72でのアナログ換算での補償位相オフセット量とは、極性が反対で絶対値が略同一となるように、調整される。
【0136】
すなわち、受信バンドXIの受信時には図10のRFIC(19)のディジタル位相変換ユニット72の一対の入力端子DI´、DQ´には、A/D変換器70、71を介して理想のアナログ換算の位相差90度に対して−18°の誤差オフセット角度を持つ一対のディジタル受信ベースバンド入力信号が供給される。
【0137】
従って、ディジタル位相変換ユニット72において、−18°の誤差オフセット角度は18度の補償位相オフセット量でキャンセルされる。その結果、受信周波数1476〜1501MHzの受信バンドXIのRF受信信号をダウンコンバートした理想のアナログ換算の位相差90度を持つ一対のディジタル受信ベースバンド入力信号が、ディジタル位相変換ユニット72一対の出力端子73(DI、74(DQ)に生成されることができる。
【0138】
尚、受信バンドI、II、VIを受信する際には、分周数が2または4の整数に設定された分周器62、63、64の出力から90度の位相差を有する一対のクォドラチャーローカル信号が、受信ブロックRx_Blk1、2、3のI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の他方の入力端子に供給されている。この時には、誤差オフセット角度はゼロ度であるので、受信用バンド切り換え制御部77はディジタル位相変換ユニット72での補償位相オフセット量もゼロ度に制御するものである。
【0139】
図11は、図10の通信用RFIC(19)の受信機が受信バンドI、II、VI、XIをそれぞれ受信する受信動作での電圧制御発振器75の発振周波数帯域、RF受信信号周波数帯域、各受信ブロックの分周器の分周比、一対のローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。
【0140】
≪アナログ位相変換ユニットを含む受信機≫
図12は本発明の他の1つの実施形態によるマルチバンド/マルチモード通信用のダイレクトダウンコンバージョン受信機を示す図である。
【0141】
図12の受信機は、図10の受信機のディジタル位相変換ユニット72を削除する代わりに、アナログ位相変換ユニット78を可変利得増幅器68、69の出力端子とA/D変換器70、71の入力端子との間に接続したものである。
【0142】
図12において、受信バンドXIの受信時に、受信ブロックRx_Blk4のI/Q復調器を構成する一対のミキサー60、61の出力から得られる一対のアナログベースバンド受信信号の位相差は、90度とならず、M4・π/N4=180°/2.5=72°となる。72度の位相差を有する一対のアナログベースバンド受信信号は、理想の位相差90度に対して、72°−90°=−18°の誤差オフセット角度を持つものとなる。
【0143】
すなわち、図12に示す受信機では、可変利得増幅器68、69の出力端子で−18°の誤差オフセット角度を持つ一対のアナログベースバンド受信信号は、18度の補償オフセット量を持つアナログ位相変換ユニット78によって90度の位相差を持つ一対の変換アナログベースバンド信号I、Qに変換される。アナログ位相変換ユニット78により直接アナログ変換された90度の位相差を持つ一対の変換アナログベースバンド信号I、QはA/D変換器70、71の入力端子に供給され、受信機の一対の出力端子73、74から90度の位相差の正確なクォドラチャー復調ディジタルベースバンド受信信号が得られる。尚、アナログ位相変換ユニット78では、マトリックスのアナログ演算を実行する。
【0144】
【数2】
【0145】
ここでマトリックスの位相オフセット量選択信号θnは受信用バンド切り換え制御部77での受信ブロック選択信号により選択された受信ブロックRx_Blk1、2、3、54に含まれる分周器62、63、64、65の分周比N/Mより、計算式θn=180*M/N*A(A=1、2、…)で与えられる。位相オフセット量選択信号θnの値は、分周器62、63、64、65からの一対の受信用ローカル信号の位相差に等しく、受信バンドI、II、VIを送信する受信動作では90度となり、受信バンドXIを受信する受信動作では108度となる。
【0146】
≪ダイレクトコンバージョン送受信機≫
図13は、図1に示したDUCアーキテクチャーの送信機と図10に示したDDCアーキテクチャーの受信機を組み合わせた本発明の更に他の実施の形態によるマルチバンド/マルチモード通信用RFICのダイレクトコンバージョン(DC)送受信機の構成を示す図である。
【0147】
図13の送受信機は3つの送信ブロックTx_Blk1、Tx_Blk2、Tx_Blk3と3つの受信ブロックRx_Blk1、Rx_Blk2、Rx_Blk3から構成されており、トリプルバンド送受信に対応している。尚、他の送信ブロックと他の受信ブロックを更に並列に追加することで、更に多くのバンド送受信にも対応可能となる。
【0148】
各送信ブロックTx_Blk1、Tx_Blk2、Tx_Blk3は、電力増幅器5、バンドパスフィルタ6、可変利得増幅器7、クォドラチャー変調器用ミキサー9、10、送信用分周器11、13、14を含んでいる。
【0149】
送信バンドXIを送信するための送信ブロックTx_Blk3の送信用分周器14の分周数が2.5の非整数に設定されている。しかし、送信バンドIを送信するための送信ブロックTx_Blk1の送信用分周器11の分周数が2の偶数の整数に設定され、送信バンドVIを送信するための送信ブロックTx_Blk2の送信用分周器13の分周数が4の偶数の整数に設定されている。
【0150】
上述したように分周数が偶数に設定された送信用分周器が選択された時には、一対の送信用ローカル信号の位相差は90度となる。一方、分周数が非整数に設定された送信用分周器を使用する時には、一対の送信用ローカル信号の位相差は90度に対して誤差オフセット角度を持つ。この時には、送信用ディジタル位相変換ユニット35では、送信用ローカル信号の位相差の誤差オフセット角度に対応した2つの位相変換ディジタルベースバンド送信信号TDI´、TDQ´を生成する。2つの位相変換ディジタルベースバンド送信信号TDI´、TDQ´は、アナログ換算誤差オフセット角度と反対極性で絶対値の等しい補償位相オフセット量を持っている。
【0151】
送信用ディジタル位相変換ユニット35は2つのディジタル乗算器81、82とディジタル加算器80で構成され、ディジタル乗算器81、82の係数は選択された分周器14で生成される一対の送信用ローカル信号の位相差θnに応じて下記のように計算される。
【0152】
【数3】
【0153】
送信用ディジタル位相変換ユニット35を配置することによって、分周数が2.5の非整数に設定された送信用分周器14を含む送信バンドXIを送信するための送信ブロックTx_Blk3の一対のミキサー9、10と加算器8から形成されるI/Q変調器の出力で直交変調を実現することができる。
【0154】
また、各受信ブロックRx_Blk1、Rx_Blk2、Rx_Blk3は、ローノイズアンプ58、バンドパスフィルタ59、クォドラチャー復調器用ミキサー60、61、受信用分周器62、64、65を含んでいる。
【0155】
受信バンドXIを受信するための受信ブロックRx_Blk3の受信用分周器65の分周数が2.5の非整数に設定されている。しかし、受信バンドIを受信するための受信ブロックRx_Blk1の受信用分周器62の分周数が2の偶数の整数に設定され、受信バンドVIを受信するための受信ブロックRx_Blk2の送信用分周器64の分周数が4の偶数の整数に設定されている。
【0156】
上述したように分周数が偶数に設定された受信用分周器が選択された時には、一対の受信用ローカル信号の位相差は90度となる。一方、分周数が非整数に設定された受信用分周器を使用する時には、一対の受信用ローカル信号の位相差は90度に対して誤差オフセット角度を持つ。この時には、受信用ディジタル位相変換ユニット72では、受信用ローカル信号の位相差の誤差オフセット角度に対応した2つの位相変換ディジタルベースバンド受信信号RDI、RDQを生成する。2つの位相変換ディジタルベースバンド受信信号RDI、RDQは、アナログ換算で誤差オフセット角度と反対極性で絶対値の等しい補償位相オフセット量を持っている。
【0157】
受信用位相変換ユニット72は、2つのディジタル乗算器83、84とディジタル加算器85で構成され、ディジタル乗算器83、84の係数は選択された分周器65で生成される一対の受信用ローカル信号の位相差θnに応じて下記のように計算される。
【0158】
【数4】
【0159】
受信用位相変換ユニット72を配置することによって、受信バンドXIを受信するための受信ブロックRx_Blk4の受信用分周器65の分周数を2.5の非整数に設定しても、受信用位相変換ユニット72の出力73、74から一対のクォドラチャー・ディジタルベースバンド受信信号を出力することができる。
【0160】
図14は、図13の通信用RFICの送受信機が送受信バンドI、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIの送受信動作での電圧制御発振器75の発振周波数帯域、RF信号周波数帯域、各ブロックの分周器の分周比、一対のローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。図14の上が、携帯電話端末から基地局へのアップリンク(UL)の送信動作を示しており、図14の下が、基地局から携帯電話端末へのダウンリンク(DL)の受信動作を示している。
【0161】
図14の上の基地局へのアップリンク(UL)の送信バンドVIIの送信動作では、図13の通信用RFICの送信ブロックTx_Blk3の送信用分周器14の分周数が、1.5の非整数(分周比が2/3)に設定される。それによって、送信用電圧制御発振器17の3750〜3855MHzを分周数1.5によって分周した周波数と略等しい送信周波数が2500〜2570MHzの送信バンドVIIのRF送信信号が生成されることができる。
【0162】
図14の下の基地局へのダウンリンク(DL)の受信バンドVIIの受信動作では、図13の通信用RFICの受信ブロックRx_Blk3の受信用分周器65の分周数が、1.5の非整数(分周比が2/3)に設定される。それによって、受信用電圧制御発振器75の3930〜4035MHzを分周数1.5によって分周した周波数と等しい受信周波数が2620〜2690MHzの送信バンドVIIのRF送信信号が生成されることができる。
【0163】
図15も、図14と同様に図13のRFICの送受信機が送受信バンドI、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIの送受信動作での電圧制御発振器の発振周波数帯域、RF信号周波数帯域、各ブロックの分周器の分周比、一対のローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。図15の上が、携帯電話端末から基地局へのアップリンク(UL)の送信動作を示しており、図15の下が、基地局から携帯電話端末へのダウンリンク(DL)の受信動作を示している。
【0164】
図15の上と下との送受信バンドVIIの送受信動作では、図13の通信用RFICの送受信分周器の分周数が1.5の非整数(分周比が2/3)に設定され、送信周波数2500〜2570MHzの送信と受信周波数2620〜2690MHzの送信とが可能となる。同様に、図15の上と下との送受信バンドIII、送信バンドIV、送受信バンドIX、送信バンドXでは分周数が2.25の非整数(分周比が4/9)に設定され、図15の上と下との送受信バンドV、送受信バンドVIの送受信動作では送受信分周器の分周数が4.5の非整数(分周比が2/9)に設定されている。
【0165】
図15の送受信動作では、送受信分周器の分周数の変化範囲が大きく設定されているので、図14の送受信での電圧制御発振器の比帯域幅と比較して図15の送受信での電圧制御発振器の比帯域幅を削減することが可能となる。
【0166】
図16は、図13のRFICの送受信機がWCDMAの送受信バンドI〜送受信バンドX、XIを送受信すると伴に5GHzと2.4GHzの無線LANの送受信動作での電圧制御発振器の発振周波数帯域、RF信号周波数帯域、各ブロックの分周器の分周比、ローカル信号の誤差オフセット角度を纏めた図である。尚、5GHz無線LANは規格IEEE802.11aに準拠しており、2.4GHz無線LANは規格IEEE802.11b、gに準拠している。
【0167】
図16の送受信動作では、5GHz無線LANの極めて高いRF信号を送受信するために送受信用電圧制御発振器の発振周波数は略10GHzと高い値に設定されている。また、WCDMAの送受信バンドI〜送受信バンドX、バンドXIと無線LANのIEEE802.11a、b、gのバンドと極めて多くのマルチモードに対応するために、送受信分周器の分周数は整数と非整数とを含め極めて大きな変化範囲に設定されている。
【0168】
≪受信キャリブレーション回路を含む送受信機≫
図17は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチバンド/マルチモード通信用RFICのダイレクトコンバージョン送受信機の構成を示す図である。
【0169】
図17に示す送受信機では、図13に示した受信機の受信用位相変換ユニット72と比較すると、受信機の受信用データ変換ユニット98の構成が異なっている。すなわち、図17に示す送受信機では、受信用データ変換ユニット98には受信用I/Qキャリブレーション回路97が追加されている。追加された受信用I/Qキャリブレーション回路97は、I側受信ディジタルベースバンド信号RDIとQ側受信ディジタルベースバンド信号RDQとの理想値である90度からの位相誤差を検出する。更に受信用I/Qキャリブレーション回路97では、検出された受信ディジタルベースバンド信号RDI、RDQの位相差に対して、位相変換回路83、84のキャリブレーション係数値が算出される。従って、最終的な受信ディジタルベースバンド信号RDI、RDQは、理想値の90度と実質的に等しい位相差を持つ一対のクォドラチャー(直交)受信ディジタル信号となる。
【0170】
≪送信用のI/Q変調器の位相誤差によるイメージ抑圧量の変化≫
図18は、図17に示す通信用RFICのダイレクトアップコンバージョンアーキテクチャーの送信機の分周器11、13、14から生成される一対の送信用ローカル信号の位相差によるイメージ抑圧量の変化を示す図である。図18の横軸は送信用ローカル信号の位相誤差または一対のアナログベースバンド送信信号の位相誤差であり、縦軸はイメージ抑圧量である。
【0171】
図17の分周器11の分周数が2の整数であり一対のローカル信号位相差が90度の時の特性は、図18の直線L1に示すように位相誤差の変化に対するイメージ抑圧量が大きく良好な特性である。
【0172】
一方、図17の分周器14の分周数が2.5の非整数の分周器を用いることで一対のローカル信号位相差が72度となる一方、図13や図17の位相変換ユニット35によるアナログ換算で108度の位相補償を行わない時の特性は、図18の直線L4に示すようにイメージ抑圧量が低く不良な特性である。また、一対のローカル信号位相差が144度となった場合の特性も、図18の直線L3に示すようにイメージ抑圧量が低く不良な特性である。
【0173】
しかし、図17の分周器14の分周数が2.5の非整数の分周器を用いることで一対のローカル信号位相差が72度となっても、図13や図17の位相変換ユニット35によるアナログ換算で108度の位相補償を行った時の特性は、図18の直線L2に示すように位相誤差の変化に対するイメージ抑圧量が大きく良好な特性である。従って、分周数が2.5の非整数の分周器を用いることで一対のローカル信号位相差が72度となっても位相変換ユニット35を使用することにより、分周器の分周数が2の整数であり一対のローカル信号位相差が90度の時の特性L1と同等の特性が得られることが理解できる。
【0174】
《マルチモード/マルチバンド対応の通信用RFIC》
図19は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド対応の通信用RFICを示すブロック図である。この通信用RFICは、WCDMA方式のバンドI、バンドIX、バンドVI、バンドXIの送受信を行うとともに、GSM850、GSM900、DCS1800、PCS1900の方式の送受信を行うことが可能である。
【0175】
WCDMA方式の各バンドにおける送受信帯域については図14に示す通りである。一方、GSM850の場合、無線通信端末のRF送信信号TXの周波数帯域が824〜849MHzであるのに対して、無線通信端末のRF受信信号RXの周波数帯域は869〜894MHzとなっている。GSM900の場合、無線通信端末のRF送信信号TXの周波数帯域が880〜915MHzであるのに対して、無線通信端末のRF受信信号RXの周波数帯域は925〜960MHzとなっている。DCS1800の場合、無線通信端末のRF送信信号TXの周波数帯域が1710〜1785MHzであるのに対して、無線通信端末のRF受信信号RXの周波数帯域は1805〜1880MHzとなっている。PCS1900の場合、無線通信端末のRF送信信号TXの周波数帯域が1850〜1910MHzであるのに対して、無線通信端末のRF受信信号RXの周波数帯域は1930〜1990MHzとなっている。このように、いずれの周波数帯域(バンド)においても、受信帯域周波数RXが送信帯域周波数TXよりも高いFDD方式が採用されている。尚、FDDは、Frequency Division Duplexの略である。
【0176】
≪WCDMA方式の送受信回路≫
図19に示したRFICの左上部の回路RX_SPU_WCDMAはWCDMA方式のバンドI、バンドIX、バンドVI、バンドXIの受信のための回路である。図19に示したRFICの下部の回路TX_SPU_WCDMAはWCDMA方式のバンドI、バンドIX、バンドVI、バンドXIの送信のための回路である。
【0177】
≪GSM方式の送受信回路≫
図19に示したRFICの左下部の回路RX_SPU_GSMは、GSM850、GSM900、DCS1800、PCS1900の受信のための回路である。図19に示したRFICの中央部TX_SPU_GSMは、GSM850、GSM900、DCS1800、PCS1900の送信のための回路である。
【0178】
図19に示したRFICの中央の回路Frct_Synthは、RFICのGSM用送受信ローカル信号を形成するフラクショナルシンセサイザである。このフラクショナルシンセサイザFrct_Synthは、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMと、システム基準電圧制御発振器(DCX−VCO)を内蔵したフェーズロックループ(PLL)と、複数の分周器と、複数のスイッチとを含んでいる。
【0179】
≪WCDMA方式の受信のための位相変換ユニット≫
いずれの通信方式の「受信モード」においても、WCDMA方式受信回路RX_SPU_WCDMAの出力または他方式受信回路RX_SPU_GSMの出力にI、Qアナログベースバンド受信信号が形成される。この信号はローパスフィルタ86、88、90と可変利得増幅器(PGA)87、89、91を介してA/D変換器92I、92Qに供給されることにより、I、Qディジタルベースバンド受信信号に変換される。ベースバンド受信信号は、受信用ディジタル位相変換ユニット72と、受信系ディジタルインターフェース94を介してベースバンド信号処理LSIに供給される。図19に示したWCDMA方式受信回路RX_SPU_WCDMAの各分周器62、63、64、65の分周数はバンドI用分周器62とバンドIX用分周器63とが2の整数、バンドVI用分周器64が4の整数、バンドXI用分周器65が5/2=2.5の非整数にそれぞれ設定されている。この時、受信用電圧制御発振器75(RX−VCO)からの発振出力に応答して一対の受信ミキサー60、61に供給される一対の受信用ローカル信号の位相差はバンドIとバンドIXとバンドVIのモードが90度、バンドXIのモードが72度となる。
【0180】
図19の他方式受信回路RX_SPU_GSMの各分周器95、96の分周数は、DCS1800、PCS1900用分周器95が2の整数に、GSM850、GSM900用分周器96が4の整数にそれぞれ設定されている。この時、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMからの発振出力に応答して一対の受信ミキサー60、61に供給される一対の受信用ローカル信号の位相差はGSM850、GSM900、DCS1800、PCS1900の全てのモードで90度となる。A/D変換器92I、92Qに接続された受信用ディジタル位相変換ユニット72は、WCDMA方式の受信でもGSM方式の受信でも、図10のディジタル位相変換ユニット72と同様に、その2つの出力端子から得られる2つのディジタル受信信号がアナログ換算で90度の位相差となるようにデータ変換を行うものである。
【0181】
≪WCDMA方式の送信のための位相変換ユニット≫
一方、ベースバンド信号処理LSIからのディジタルベースバンド送信信号TxDBI、TxDBQはRFICの送信系ディジタルインターフェース93により受信された後、送信用ディジタル位相変換ユニット35にてデータ変換される。
【0182】
送信用ディジタル位相変換ユニット35の2つの入力端子のディジタルベースバンド送信入力信号はアナログ換算で90度の位相差をもつ一方、ディジタル位相変換ユニット35の2つの出力端子のディジタル変換信号はアナログ換算でのアナログ信号位相差が90度と送信用ローカル信号位相差に応じた所定のアナログオフセット角度を有するものである。このオフセット角度は、WCDMA方式送信回路TX_SPU_WCDMAのバンドXI用分周器14の分周数が2.5の非整数の分周器を用いることで一対のローカル信号位相差が72度となっても、分周数が2の整数であり一対のローカル信号位相差が90度の時の特性と同等の特性が得られためのものである。ディジタル位相変換ユニット35の2つの出力端子のディジタル変換信号は、D/A変換器22、25によりアナログベースバンド送信信号に変換される。D/A変換器22、25の出力のアナログベースバンド送信信号のアナログ信号位相差は、90度と送信用ローカル信号位相差に応じた所定のアナログオフセット角度を有するものである。
【0183】
≪位相変換ユニットを利用したWCDMA方式の送信≫
WCDMA方式の送信では、D/A変換器22、25の出力のアナログベースバンド信号はローパスフィルタ20、23と可変利得増幅器(PGA)21、24を介してWCDMA方式送信回路TX_SPU_WCDMAの一対のミキサー9、10の一方の入力端子に供給される。また、図19のWCDMA方式送信回路TX_SPU_WCDMAの各分周器11、12、13、14の分周数は、バンドI用分周器11とバンドIX用分周器12とが2の整数、バンドVI用分周器13が4の整数、バンドXI用分周器14が5/2=2.5の非整数にそれぞれ設定されている。この時、送信用電圧制御発振器34(TXVCO)からの発振出力に応答して一対のミキサー9、10の他方の入力端子に供給される一対の送信用ローカル信号の位相差はバンドIとバンドIXとバンドVIのモードが90度、バンドXIのモードが72度となる。特に、バンドXIのモードの時には、アナログベースバンド信号にはローカル信号の位相差に応じた所定のオフセット角度がディジタル位相変換ユニット35によって付加されている。その結果、ローカル信号オフセット角度と所定のアナログベースバンド信号オフセット角度との和が、実質的にゼロとなる。よって、全てのバンドの送信モードにおいて、一対の送信ミキサー9、10と加算器8とからなる送信用変調器で、正確なクォドラチャー変調が可能となる。
【0184】
≪GSM方式の送信≫
GSM方式の送信では、可変利得増幅器(PGA)21、24の出力のアナログベースバンド信号は、他方式送信回路TX_SPU_GSMの一対の送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qの一方の入力端子に供給される。フラクショナルシンセサイザFrct_Synthの電圧制御発振器RX−VCO―GSMの発振信号は、中間周波数分周器DIV2(1/NIF)を介してローカル分周器DIV5に供給される。図19の他方式送信回路TX_SPU_GSMのローカル分周器DIV5は、分周器DIV2(1/NIF)の出力の中間周波数信号に応答して一対の送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qに供給される一対の送信用中間周波数ローカル信号を生成し、そのローカル信号位相差は90度である。従って、一対の送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qと加算器とからなる送信用変調器で、正確なクォドラチャー変調が可能となる。
【0185】
送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLは、GSM850のRF送信信号Tx_GSM850とGSM900のRF送信信号Tx_GSM900との送信動作に対応する必要が有る。そのため、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMの発振周波数は分周数2に設定された2個の分周器DIV1(1/2)、DIV4(1/2)を介して位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの一方の入力端子に供給される。また、送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qのための分周器DIV5に接続された中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周数NIFは、13に設定されている。
【0186】
≪GSM850とGSM900との送信動作≫
一方、GSM送信用電圧制御発振器TXVCO_GSMの発振出力信号が、分周数2に設定された分周器DIV3を介して、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの他方の入力端子に供給されている。その結果、ダウンミキサーDWN_MIX_PMでは、一方の入力信号と他方の入力信号とのミキシングが行われる。従って、ダウンミキサーDWN_MIX_PMの出力から、2つの入力信号の差の周波数の帰還信号が形成されて、送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLの位相比較器PCの他方の入力端子に供給される。また、位相比較器PCの一方の入力端子には、送信ミキサーTX−MIX_I、Qの出力に接続された加算器の出力のベクトル合成された中間周波送信信号fIFが基準信号として供給されている。中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周数NIFである13と分周器DIV5での分周数2とで、合計分周数は26となっている。従って、中間周波送信信号fIFの周波数は、受信用電圧制御発振器Rx−VCO―GSMの周波数の1/26となる。また、送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLの負帰還制御によって、位相比較器PCの一方の入力端子の基準信号と他方の入力端子のダウンミキサーDWN_MIX_PMから帰還信号とは一致するようになる。結果としては、0.8GHzのRF送信信号のGSM850と0.9GHzのRF送信信号のGSM900との送信動作に、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMは略4倍の略3.2GHzから略3.8GHz、GSM送信用電圧制御発振器TXVCO_GSMは送信周波数の略2倍の略1.6GHzから略1.9GHzで発振すれば良くなる。
【0187】
≪DCS1800とPSC1900との送信動作≫
また送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLは、DCS1800のRF送信信号Tx_DCS1800とPSC1900のRF送信信号Tx_PSC1900との送信動作に対応する必要が有る。そのため、受信用電圧制御発振器RX−VCO―GSMの発振周波数は、分周数2に設定された分周器DIV1(1/2)を介して位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの一方の入力端子に供給される。また、送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qのための分周器DIV5に接続された中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周数NIFは、13に設定されている。一方、GSM送信用電圧制御発振器TXVCO_GSMの発振出力信号が、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの他方の入力端子に供給されている。その結果、ダウンミキサーDWN_MIX_PMでは、一方の入力信号と他方の入力信号とのミキシングが行われる。従って、ダウンミキサーDWN_MIX_PMの出力から、2つの入力信号の差の周波数の帰還信号が形成されて、送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLの位相比較器PCの他方の入力端子に供給される。また、位相比較器PCの一方の入力端子には、送信ミキサーTX−MIX_I、Qの出力に接続された加算器の出力のベクトル合成された中間周波送信信号fIFが基準信号として供給されている。中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周数NIFである13と分周器DIV5での分周数2とで、合計分周数は26となっている。従って、中間周波送信信号fIFの周波数は、受信用電圧制御発振器Rx−VCO―GSMの周波数の1/26となる。
【0188】
また、送信系オフセットPLL回路TX_OFFset_PLLの負帰還制御によって、位相比較器PCの一方の入力端子の基準信号と他方の入力端子のダウンミキサーDWN_MIX_PMから帰還信号とは一致するようになる。結果としては、1.7GHzのRF送信信号のDCS1800と1.9GHzのRF送信信号のPCS1900との送信動作に、受信用電圧制御発振器Rx−VCO―GSMは略2倍の略3.2GHzから略3.8GHz、GSM送信用電圧制御発振器TXVCO_GSMは送信周波数の略1倍の略1.6GHzから略1.9GHzで発振すれば良くなる。
【0189】
≪携帯電話の構成≫
図20は、上記で説明した本発明の実施の形態によるRFICと、アンテナスイッチMMICとRF電力増幅器とを内蔵したRFモジュールと、ベースバンド信号処理LSIとを搭載した携帯電話の構成を示すブロック図である。尚、MMICは、Microwave Monolithic ICの略である。
【0190】
同図で、携帯電話の送受信用アンテナANTにはRFモジュールRF_MLのアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の共通の入出力端子I/Oが接続されている。ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの制御信号B.B_Cntは、RFアナログ信号処理半導体集積回路(RF_IC)を経由して高出力電力増幅器モジュール(HPA_ML)のコントローラ集積回路(CNT_IC)に供給される。送受信用アンテナANTから共通の入出力端子I/OへのRF信号の流れは携帯電話の受信動作RXとなり、共通の入出力端子I/Oから送受信用アンテナANTへのRF信号の流れは携帯電話の送信動作TXとなる。
【0191】
RFIC(RF_IC)は、ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、TxDBQをRF送信信号に周波数アップコンバージョンを行う。逆に、RFIC(RF_IC)は、送受信用アンテナANTで受信されたRF受信信号を受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、RxDBQに周波数ダウンコンバージョンを行いベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)に供給する。
【0192】
RFモジュールRF_MLのアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)は共通の入出力端子I/Oと送信端子Tx1、Tx2、受信端子Rx1、Rx2、送受信端子TRx1、TRx2、TRx3、TRx4のいずれかの端子の間で信号経路を確立して、受信動作RXと送信動作TXとのいずれかを行う。このアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)は受信動作RXと送信動作TXとのいずれかのために確立した信号経路以外の信号経路のインピーダンスを極めて高い値に設定することで、必要なアイソレーションが得られるものである。アンテナスイッチの分野では、共通の入出力端子I/Oはシングルポール(Single Pole)と呼ばれ、送信端子Tx1、Tx2、受信端子Rx1、Rx2、送受信端子TRx1、TRx2、TRx3、TRx4の合計8個の端子は8スロー(8 throw)と呼ばれる。従って、図28のアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)は、シングルポール8スロー(SP8T; Single Pole 8 throw)型のスイッチである。
【0193】
尚、ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)は図示されていない外部不揮発性メモリと図示されていないアプリケーションプロセッサとに接続されている。アプリケーションプロセッサは、図示されていない液晶表示装置と図示されていないキー入力装置とに接続され、汎用プログラムやゲームを含む種々のアプリケーションプログラムを実行することができる。携帯電話等のモバイル機器のブートプログラム(起動イニシャライズプログラム)、オペレーティングシステムプログラム(OS)、ベースバンド信号処理LSIの内部のディジタルシグナルプロセッサ(DSP)によるGSM方式等の受信ベースバンド信号に関する位相復調と送信ベースバンド信号に関する位相変調のためのプログラム、種々のアプリケーションプログラムは、外部不揮発性メモリに格納されることができる。
【0194】
≪GSM850、GSM900による送受信動作≫
BB_LSIからの送信ベースバンド信号TxDBI、QがGSM850のバンドに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をGSM850のバンドへの周波数アップコンバージョンを行って、GSM850のRF送信信号Tx_GSM850が生成される。BB_LSIからの送信ベースバンド信号がGSM900のバンドに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をGSM900のバンドへの周波数アップコンバージョンを行って、GSM900のRF送信信号Tx_GSM900が生成される。GSM850のRF送信信号Tx_GSM850とGSM900のRF送信信号Tx_GSM900とは、高出力電力増幅器モジュール(HPA_ML)の高出力電力増幅器HPA2で電力増幅される。高出力電力増幅器HPA2のRF出力は、ローパスフィルタLPF2を経由してアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の送信端子Tx2に供給される。送信端子Tx2に供給されたGSM850のRF送信信号Tx_GSM850とGSM900のRF送信信号Tx_GSM900とは共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0195】
送受信用アンテナANTで受信されたGSM850のRF受信信号Rx_GSM850とGSM900のRF受信信号Rx_GSM900とは、アンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の受信端子Rx2から得られるGSM850のRF受信信号Rx_GSM850とGSM900のRF受信信号Rx_GSM900とは表面弾性波フィルタSAW2を介してRFICのローノイズアンプLNA5、6で増幅される。その後、これらのRF受信信号は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、GSM850のRF受信信号Rx_GSM850またはGSM900のRF受信信号Rx_GSM900から受信ベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0196】
GSM850の送受信モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送信端子Tx2との接続によるRF送信信号Tx_GSM850の送信と入出力端子I/Oとの受信端子Rx2との接続によるRF受信信号Tx_GSM850の受信とを時分割で行う。同様に、GSM900の送受信モードでも、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送信端子Tx2との接続によるRF送信信号Tx_GSM900の送信と入出力端子I/Oとの受信端子Rx2との接続によるRF受信信号Rx_GSM900の受信とを時分割で行う。
【0197】
≪DCS1800、PCS1900による送受信動作≫
BB_LSIからの送信ベースバンド信号TxDBI、QがDCS1800のバンドに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をDCS1800のバンドへの周波数アップコンバージョンを行って、DCS1800のRF送信信号Tx_DCS1800が生成される。BB_LSIからの送信ベースバンド信号がPCS1900のバンドに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をPCS1900のバンドへの周波数アップコンバージョンを行って、PCS1900のRF送信信号Tx_PCS1900が生成される。DCS1800のRF送信信号Tx_DCS1800とPCS1900のRF送信信号Tx_PCS1900とは、高出力電力増幅器モジュール(HPA_ML)の高出力電力増幅器HPA1で電力増幅される。高出力電力増幅器HPA1のRF出力は、ローパスフィルタLPF1を経由してアンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の送信端子Tx1に供給される。送信端子Tx1に供給されたDCS1800のRF送信信号Tx_DCS1800とPCS1900のRF送信信号Tx_PCS1900とは共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0198】
送受信用アンテナANTで受信されたDCS1800のRF受信信号Rx_DCS1800とPCS1900のRF受信信号Rx_PCS1900とは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの受信端子Rx1から得られるDCS1800のRF受信信号Rx_DCS1800は表面弾性波フィルタSAW1を介してRFIC(RF_IC)のローノイズアンプLNA7、8で増幅される。アンテナスイッチMMIC(ANT_SW)の受信端子Rx1から得られるPCS1900のRF受信信号Rx_PCS1900は表面弾性波フィルタSAW1を介してRFICのローノイズアンプLNA7、8で増幅される。その後、DCS1800のRF受信信号Rx_DCS1800とPCS1900のRF受信信号Rx_PCS1900は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、DCS1800のRF受信信号Rx_DCS1800またはPCS1900のRF受信信号Rx_PCS1900から受信ベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0199】
DCS1800の送受信モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送信端子Tx1との接続によるRF送信信号Tx_DCS1800の送信と入出力端子I/Oとの受信端子Rx1との接続によるRF受信信号Rx_DCS1800の受信とを時分割で行う。同様に、PCS1900の送受信モードでも、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送信端子Tx1との接続によるRF送信信号Tx_PCS1900の送信と入出力端子I/Oとの受信端子Rx1との接続によるRF受信信号Rx_PCS1900の受信とを時分割で行う。
【0200】
≪WCDMAによる送受信動作≫
ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、Qが、WCDMA方式のバンドIに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ベースバンド信号をWCDMA方式のバンドIの周波数アップコンバージョンを行う。WCDMA方式のバンドIのRF送信信号Tx_WCDMA band1は、高出力電力増幅器W_PA1で電力増幅され、デュープレクサDUP1を経由してアンテナスイッチMMICの送受信端子TRx1に供給される。送受信端子TRx1に供給されたWCDMA方式のバンドIのRF送信信号Tx_WCDMA バンドIは、共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0201】
WCDMA方式では、コード分割により送信動作と受信動作とが並列に処理されることができる。すなわち、送受信用アンテナANTで受信されたWCDMA方式のバンドIのRF受信信号Rx_WCDMA bandIは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの送受信端子TRx1から得られるWCDMA方式のバンドIのRF受信信号Rx_WCDMA bandIはデュープレクサDUP1を経由してRFICのローノイズアンプLNA1で増幅され、その後、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、WCDMA方式のバンドIのRF受信信号Rx_WCDMA bandIから受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。WCDMA方式のバンドIによる送信と受信との並列処理モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送受信端子TRx1との間の定常接続によりRF送信信号の送信とRF受信信号の受信とを並列して行う。
【0202】
ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QがWCDMA方式のバンドIXに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QをWCDMA方式のバンドIXへの周波数アップコンバージョンを行う。WCDMA方式のバンドIXのRF送信信号Tx_WCDMA bandIXは、高出力電力増幅器W_PA2で電力増幅され、デュープレクサDUP2を経由してアンテナスイッチMMICの送受信端子TRx2に供給される。送受信端子TRx2に供給されたWCDMA方式のバンドIXのRF送信信号Tx_WCDMA bandIXは、共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0203】
送受信用アンテナANTで受信されたWCDMA方式のバンドIXのRF受信信号Rx_WCDMA bandIXは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの送受信端子TRx2から得られるWCDMA方式のバンドIXのRF受信信号Rx_WCDMA bandIXはデュープレクサDUP2を経由してRFICのローノイズアンプLNA2で増幅される。ローノイズアンプLNA2の増幅信号は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、WCDMA方式のバンドIXのRF受信信号Rx_WCDMA bandIXから受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0204】
WCDMA方式のバンドIXによる送信とWCDMA方式のバンドIXによる受信との並列処理モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送受信端子TRx2との間の定常接続によりRF送信信号の送信とRF受信信号の受信とを並列して行うものである。
【0205】
ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QがWCDMA方式のバンドVIに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QをWCDMA方式のバンドVIへの周波数アップコンバージョンを行う。WCDMA方式のバンドVIのRF送信信号Tx_WCDMA bandVIは、高出力電力増幅器W_PA3で電力増幅され、デュープレクサDUP3を経由してアンテナスイッチMMICの送受信端子TRx3に供給される。送受信端子TRx3に供給されたWCDMA方式のバンドVIのRF送信信号Tx_WCDMA bandVIは、共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0206】
送受信用アンテナANTで受信されたWCDMA方式のバンドVIのRF受信信号Rx_WCDMA bandVIは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの送受信端子TRx3から得られるWCDMA方式のバンドVIのRF受信信号Rx_WCDMA bandVIはデュープレクサDUP3を経由してRFICのローノイズアンプLNA3で増幅される。ローノイズアンプLNA3の増幅信号は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、WCDMA方式のバンドVIのRF受信信号Rx_WCDMA bandVIから受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0207】
WCDMA方式のバンドVIによる送信とWCDMA方式のバンドVIによる受信との並列処理モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送受信端子TRx3との間の定常接続によりRF送信信号の送信とRF受信信号の受信とを並列して行うものである。
【0208】
ベースバンド信号処理LSI(BB_LSI)からの送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QがWCDMA方式のバンドXIに周波数アップコンバージョンされるべき場合を想定する。この場合には、RFICの送信信号処理ユニットTx_SPUは送信ディジタルベースバンド信号TxDBI、QをWCDMA方式のバンドXIへの周波数アップコンバージョンを行う。WCDMA方式のバンドXIのRF送信信号Tx_WCDMA bandXIは、高出力電力増幅器W_PA4で電力増幅され、デュープレクサDUP4を経由してアンテナスイッチMMICの送受信端子TRx4に供給される。送受信端子TRx4に供給されたWCDMA方式のバンドXIのRF送信信号Tx_WCDMA bandXIは、共通の入出力端子I/Oを介して送受信用アンテナANTから送信されることができる。
【0209】
送受信用アンテナANTで受信されたWCDMA方式のバンドXIのRF受信信号Rx_WCDMA bandXIは、アンテナスイッチMMICの共通の入出力端子I/Oに供給される。アンテナスイッチMMICの送受信端子TRx4から得られるWCDMA方式のバンドXIのRF受信信号Rx_WCDMA bandXIはデュープレクサDUP4を経由してRFICのローノイズアンプLNA4で増幅される。ローノイズアンプLNA4の増幅信号は、受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUでは、WCDMA方式のバンドXIのRF受信信号Rx_WCDMA bandXIから受信ディジタルベースバンド信号RxDBI、Qへの周波数ダウンコンバージョンが行われる。
【0210】
WCDMA方式のバンドXIによる送信とWCDMA方式のバンドXIによる受信との並列処理モードでは、アンテナスイッチMMICは制御信号B.B_Cntに応答して入出力端子I/Oと送受信端子TRx4との間の定常接続によりRF送信信号の送信とRF受信信号の受信とを並列して行うものである。
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能であることは言うまでもない。
【0211】
例えば、図20に示す携帯電話では通信用RFICとベースバンド信号処理LSIとはそれぞれ別の半導体チップで構成されていたが、別な実施形態ではそれらは1つの半導体チップに統合された統合ワンチップとされることができる。
【0212】
また、本発明はダイレクトアップコンバージョン(DUC)アーキテクチャーやダイレクトダウンコンバージョン(DDC)アーキテクチャーに限定されるものではない。例えば、受信RF信号を比較的低い中間周波数受信信号に変換する低IFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーや、ディジタルIFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャー、または比較的低い中間周波数送信信号を送信RF信号に変換する低IFアップコンバージョン送信機アーキテクチャーに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】図1は、本発明の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【図2】図2は、本発明に先立って検討されたマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【図3】図3は、図2に示した送信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図4】図4は、図5に示した送信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図5】図5は、本発明に先立って検討されたマルチモード/マルチバンド通信用RFICの他の方式によるダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【図6】図6は、図1に示した送信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図7】図7は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトアップコンバージョン送信機を示す図である。
【図8】図8は、図1に示した本発明の1つの実施の形態による通信用RFICのダイレクトアップコンバージョンアーキテクチャーの送信機に含まれた分周数が非整数のロジック分周器の構成を示す図である。
【図9】図9は、図8に示したロジック分周器の内部の波形を示す図である。
【図10】図10は、本発明の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトダウンコンバージョン受信機を示す図である。
【図11】図11は、図10に示した受信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図12】図12は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトダウンコンバージョン受信機を示す図である。
【図13】図13は、本発明の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトコンバージョン送受信機を示す図である。
【図14】図14は、図13に示した送受信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図15】図15は、図13に示した送受信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図16】図16は、図13に示した送受信機の各モードの周波数の関係を示す図である。
【図17】図17は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトコンバージョン送受信機を示す図である。
【図18】図18は、通信用RFICのダイレクトアップコンバージョン送信機のロジック分周器の分周数による送信用のI/Q変調器の位相誤差によるイメージ抑圧量の変化を示す図である。
【図19】図19は、本発明の他の1つの実施の形態によるマルチモード/マルチバンド通信用RFICのダイレクトコンバージョン送受信機を示す図である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態によるRFICと、アンテナスイッチMMICとRF電力増幅器とを内蔵したRFモジュールと、ベースバンド信号処理LSIとを搭載した携帯電話の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0214】
Tx_Blk1、2、3、4 送信ブロック
5 RF電力増幅器
6 バンドパスフィルタ
7 RF可変利得増幅器
8 加算器
9、10 ミキサー
11、12、13、14 分周器
15 バンド切り換え制御ブロック
16、18、34 電圧制御発振器
17 PLL回路
19 RFIC
20、23 ローパスフィルタ
21、24 可変利得増幅器
22、25 D/A変換器
26、27 ディジタルベースバンド送信信号入力端子
28、29、30、31 RF送信信号出力端子
32、33 送信用ローカル信号
35 ディジタル位相変換ユニット
36 アナログ位相変換ユニット
37、101 否定論理積回路
38、39、40、41、46、47 D型フリップフロップ
42 クロック信号入力端子
43、44 論理和回路
45 論理積回路
48、49 ローカル信号出力端子
50、51、52、53 RF受信信号入力端子
Rx_Blk1、2、3、4 受信ブロック
58 ローノイズアンプ
59 バンドパスフィルタ
60、61 ミキサー
62、63、64、65 分周器
66、67 ローパスフィルタ
68、69 可変利得増幅器
70、71 A/Dコンバータ
72 ディジタル位相変換ユニット
73、74 ディジタルベースバンド信号出力端子
75 電圧制御発振器
76 PLL回路
77 バンド切り換え制御部
78 アナログ位相変換ユニット
79 バンド切り換え制御部
80、85 加算器
8182、83、84 乗算器
86I、86Q、88I、88Q、90I、90Q ローパスフィルタ
87I、87Q、89I、89Q、91I、91Q 可変利得増幅器
92I、92Q A/Dコンバータ
93 送信用ディジタルインターフェース
94 受信用ディジタルインターフェース
95、96 分周器
97 受信用I/Qキャリブレーション回路
98 位相変換ユニット
99 受信機
100 送信機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機と、送信機とを具備した送受信機であって、
前記受信機は、RF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートする受信復調器を含み、
前記送信機は、送信用電圧制御発振器と、複数の周波数帯域のRF送信信号を生成する複数の送信ブロックとを含むものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれは、分周器と、送信用変調器とを含むものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記送信用電圧制御発振器から供給される送信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の送信用ローカル信号を前記送信用変調器に供給するものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記送信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の送信用ローカル信号により送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートするものであり、
前記複数の送信ブロックの少なくとも1つの送信ブロックに含まれた少なくとも1つの分周器の分周数は、偶数の整数に設定されており、
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する送信用変調器に供給される該当する一対の送信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記複数の送信ブロックの他の送信ブロックに含まれた他の分周器の他の分周数は、非整数に設定されており、
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の送信ブロックに含まれた前記他の分周器から他の送信用変調器に供給される他の一対の送信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記送信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の送信ブロックに含まれた前記他の送信用変調器に供給される一対の送信アナログ信号に付与する変換ユニットを更に含むことを特徴とする送受信機。
【請求項2】
請求項1において、
前記送信機は、一対の送信ディジタル信号を前記一対の送信アナログ信号に変換する一対のD/A変換器を更に含み、前記一対のD/A変換器は、前記複数の送信ブロックによって共有されていることを特徴とする送受信機。
【請求項3】
請求項2において、
前記変換ユニットは、前記一対のD/A変換器の一対の入力端子に接続され、
前記変換ユニットが前記一対の送信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記一対のD/A変換器の一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された前記一対の送信アナログ信号が生成されることを特徴とする送受信機。
【請求項4】
請求項2において、
前記変換ユニットは、前記一対のD/A変換器の一対の出力端子に接続され、
前記変換ユニットが一対の送信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記変換ユニットの一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された一対の送信アナログ出力信号が生成されることを特徴とする送受信機。
【請求項5】
請求項2において、
前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の送信ブロックと第2の送信ブロックとにそれぞれ含まれた第1の分周器と第2の分周器の分周数は、それぞれ2と4とに設定されており、
前記他の送信ブロックに含まれた前記他の分周器の分周数は、2.5の非整数に設定されており、
前記送信用電圧制御発振器から生成される前記送信用発振出力信号の周波数は、略3GHzから略4GHzの間に設定可能とされており、
前記第1の送信ブロックは略1.8GHzから略2GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記第2の送信ブロックは略0.8GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記他の送信ブロックは略1.4GHzの送信バンドのRF送信信号を生成することを特徴とする送受信機。
【請求項6】
請求項5において、
前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機は、ダイレクトアップコンバージョン送信機アーキテクチャーと低IFアップコンバージョン送信機アーキテクチャーとのいずれか一方であることを特徴とする送受信機。
【請求項7】
請求項6において、
前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機は、半導体チップに構成されていることを特徴とする送受信機。
【請求項8】
受信機と、送信機とを具備した送受信機であって、
前記送信機は、送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートする送信変調器を含み、
前記受信機は、受信用電圧制御発振器と、複数の周波数帯域のRF受信信号を受信する複数の受信ブロックとを含むものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれは、分周器と、受信用復調器とを含むものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記受信用電圧制御発振器から供給される受信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の受信用ローカル信号を前記受信用復調器に供給するものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記受信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の受信用ローカル信号によりRF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートするものであり、
前記複数の受信ブロックの少なくとも1つの受信ブロックに含まれた少なくとも1つの分周器の分周数は、偶数の整数に設定されており、
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの受信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する受信用復調器に供給される該当する一対の受信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記複数の受信ブロックの他の受信ブロックに含まれた他の分周器の他の分周数は、非整数に設定されており、
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の受信ブロックに含まれた前記他の分周器から他の受信用復調器に供給される他の一対の受信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記受信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の受信ブロックに含まれた前記他の受信用復調器から生成される一対の受信アナログ信号に付与する変換ユニットを更に含むことを特徴とする送受信機。
【請求項9】
請求項8において、
前記受信機は、前記一対の受信アナログ信号を一対の受信ディジタル信号に変換する一対のA/D変換器を更に含み、前記一対のA/D変換器は、前記複数の受信ブロックによって共有されていることを特徴とする送受信機。
【請求項10】
請求項9において、
前記変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の出力端子に接続され、
前記変換ユニットが前記一対の受信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に間接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項11】
請求項9において、
前記変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の入力端子に接続され、
前記変換ユニットが一対の受信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に直接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項12】
請求項9において、
前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の受信ブロックと第2の受信ブロックとにそれぞれ含まれた第1の分周器と第2の分周器の分周数は、それぞれ2と4とに設定されており、
前記他の受信ブロックに含まれた前記他の分周器の分周数は、2.5の非整数に設定されており、
前記受信用電圧制御発振器から生成される前記受信用発振出力信号の周波数は、略3.5GHzから略4.5GHzの間に設定可能とされている。
前記第1の受信ブロックは略1.9GHzから略2.2GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記第2の受信ブロックは略0.8GHzから略0.9GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記他の受信ブロックは略1.4GHzから略1.5Hzの受信バンドのRF受信信号を受信することを特徴とする送受信機。
【請求項13】
請求項9において、
前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機は、ダイレクトダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーと低IFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーとのいずれか一方であることを特徴とする送受信機。
【請求項14】
請求項13において、
前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機は、半導体チップに構成されていることを特徴とする送受信機。
【請求項15】
受信機と、送信機とを具備した送受信機であって、
前記受信機は、RF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートする受信復調器を含み、
前記送信機は、送信用電圧制御発振器と、複数の周波数帯域のRF送信信号を生成する複数の送信ブロックとを含むものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれは、分周器と、送信用変調器とを含むものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記送信用電圧制御発振器から供給される送信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の送信用ローカル信号を前記送信用変調器に供給するものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記送信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の送信用ローカル信号により送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートするものであり、
前記複数の送信ブロックの少なくとも1つの送信ブロックに含まれた少なくとも1つの分周器の分周数は、偶数の整数に設定されており、
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する送信用変調器に供給される該当する一対の送信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記複数の送信ブロックの他の送信ブロックに含まれた他の分周器の他の分周数は、非整数に設定されており、
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の送信ブロックに含まれた前記他の分周器から他の送信用変調器に供給される他の一対の送信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記送信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の送信ブロックに含まれた前記他の送信用変調器に供給される一対の送信アナログ信号に付与する送信変換ユニットを更に含み、
前記送信機は、送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートする送信変調器を含み、
前記受信機は、受信用電圧制御発振器と、複数の周波数帯域のRF受信信号を受信する複数の受信ブロックとを含むものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれは、分周器と、受信用復調器とを含むものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記受信用電圧制御発振器から供給される受信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の受信用ローカル信号を前記受信用復調器に供給するものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記受信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の受信用ローカル信号によりRF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートするものであり、
前記複数の受信ブロックの少なくとも1つの受信ブロックに含まれた少なくとも1つの分周器の分周数は、偶数の整数に設定されており、
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの受信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する受信用復調器に供給される該当する一対の受信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記複数の受信ブロックの他の受信ブロックに含まれた他の分周器の他の分周数は、非整数に設定されており、
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の受信ブロックに含まれた前記他の分周器から他の受信用復調器に供給される他の一対の受信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記受信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の受信ブロックに含まれた前記他の受信用復調器から生成される一対の受信アナログ信号に付与する受信変換ユニットを更に含むことを特徴とする送受信機。
【請求項16】
請求項15において、
前記送信機は、一対の送信ディジタル信号を前記一対の送信アナログ信号に変換する一対のD/A変換器を更に含み、前記一対のD/A変換器は、前記複数の送信ブロックによって共有されており、
前記受信機は、前記一対の受信アナログ信号を一対の受信ディジタル信号に変換する一対のA/D変換器を更に含み、前記一対のA/D変換器は、前記複数の受信ブロックによって共有されていることを特徴とする送受信機。
【請求項17】
請求項16において、
前記送信変換ユニットは、前記一対のD/A変換器の一対の入力端子に接続され、
前記送信変換ユニットが前記一対の送信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記一対のD/A変換器の一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された前記一対の送信アナログ信号が生成され、
前記受信変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の出力端子に接続され、
前記受信変換ユニットが前記一対の受信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に間接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項18】
請求項16において、
前記送信変換ユニットは、前記一対のD/A変換器の一対の出力端子に接続され、
前記送信変換ユニットが一対の送信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記変換ユニットの一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された一対の送信アナログ出力信号が生成され、
前記受信変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の入力端子に接続され、
前記受信変換ユニットが一対の受信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に直接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項19】
請求項16において、
前記受信変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の出力端子に接続され、
前記受信変換ユニットの出力は、I/Qキャリブレーション回路の入力に接続され、
前記I/Qキャリブレーション回路では、前記補償オフセット量が算出され、
前記I/Qキャリブレーション回路の出力は、前記受信変換ユニットの補償オフセット量入力端子に接続され、
前記受信変換ユニットでは、前記一対の受信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記I/Qキャリブレーション回路で算出された前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に間接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項20】
請求項16において、
前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の送信ブロックと第2の送信ブロックとにそれぞれ含まれた第1の分周器と第2の分周器の分周数は、それぞれ2と4とに設定されており、
前記他の送信ブロックに含まれた前記他の分周器の分周数は、2.5の非整数に設定されており、
前記送信用電圧制御発振器(から生成される前記送信用発振出力信号の周波数は、略3GHzから略4GHzの間に設定可能とされており、
前記第1の送信ブロックは略1.8GHzから略2GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記第2の送信ブロックは略0.8GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記他の送信ブロックは略1.4GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、
前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の受信ブロックと第2の受信ブロックとにそれぞれ含まれた第1の分周器と第2の分周器の分周数は、それぞれ2と4とに設定されており、
前記他の受信ブロックに含まれた前記他の分周器の分周数は、2.5の非整数に設定されており、
前記受信用電圧制御発振器から生成される前記受信用発振出力信号の周波数は、略3.5GHzから略4.5GHzの間に設定可能とされており、
前記第1の受信ブロックは略1.9GHzから略2.2GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記第2の受信ブロックは略0.8GHzから略0.9GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記他の受信ブロックは略1.4GHzから略1.5Hzの受信バンドのRF受信信号を受信することを特徴とする送受信機。
【請求項21】
請求項20において、
前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機は、ダイレクトアップコンバージョン送信機アーキテクチャーと低IFアップコンバージョン送信機アーキテクチャーとのいずれか一方であり、前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機は、ダイレクトダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーと低IFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーとのいずれか一方であり、
前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機と、前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機とは、半導体チップに構成されていることを特徴とする送受信機。
【請求項1】
受信機と、送信機とを具備した送受信機であって、
前記受信機は、RF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートする受信復調器を含み、
前記送信機は、送信用電圧制御発振器と、複数の周波数帯域のRF送信信号を生成する複数の送信ブロックとを含むものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれは、分周器と、送信用変調器とを含むものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記送信用電圧制御発振器から供給される送信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の送信用ローカル信号を前記送信用変調器に供給するものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記送信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の送信用ローカル信号により送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートするものであり、
前記複数の送信ブロックの少なくとも1つの送信ブロックに含まれた少なくとも1つの分周器の分周数は、偶数の整数に設定されており、
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する送信用変調器に供給される該当する一対の送信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記複数の送信ブロックの他の送信ブロックに含まれた他の分周器の他の分周数は、非整数に設定されており、
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の送信ブロックに含まれた前記他の分周器から他の送信用変調器に供給される他の一対の送信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記送信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の送信ブロックに含まれた前記他の送信用変調器に供給される一対の送信アナログ信号に付与する変換ユニットを更に含むことを特徴とする送受信機。
【請求項2】
請求項1において、
前記送信機は、一対の送信ディジタル信号を前記一対の送信アナログ信号に変換する一対のD/A変換器を更に含み、前記一対のD/A変換器は、前記複数の送信ブロックによって共有されていることを特徴とする送受信機。
【請求項3】
請求項2において、
前記変換ユニットは、前記一対のD/A変換器の一対の入力端子に接続され、
前記変換ユニットが前記一対の送信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記一対のD/A変換器の一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された前記一対の送信アナログ信号が生成されることを特徴とする送受信機。
【請求項4】
請求項2において、
前記変換ユニットは、前記一対のD/A変換器の一対の出力端子に接続され、
前記変換ユニットが一対の送信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記変換ユニットの一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された一対の送信アナログ出力信号が生成されることを特徴とする送受信機。
【請求項5】
請求項2において、
前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の送信ブロックと第2の送信ブロックとにそれぞれ含まれた第1の分周器と第2の分周器の分周数は、それぞれ2と4とに設定されており、
前記他の送信ブロックに含まれた前記他の分周器の分周数は、2.5の非整数に設定されており、
前記送信用電圧制御発振器から生成される前記送信用発振出力信号の周波数は、略3GHzから略4GHzの間に設定可能とされており、
前記第1の送信ブロックは略1.8GHzから略2GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記第2の送信ブロックは略0.8GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記他の送信ブロックは略1.4GHzの送信バンドのRF送信信号を生成することを特徴とする送受信機。
【請求項6】
請求項5において、
前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機は、ダイレクトアップコンバージョン送信機アーキテクチャーと低IFアップコンバージョン送信機アーキテクチャーとのいずれか一方であることを特徴とする送受信機。
【請求項7】
請求項6において、
前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機は、半導体チップに構成されていることを特徴とする送受信機。
【請求項8】
受信機と、送信機とを具備した送受信機であって、
前記送信機は、送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートする送信変調器を含み、
前記受信機は、受信用電圧制御発振器と、複数の周波数帯域のRF受信信号を受信する複数の受信ブロックとを含むものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれは、分周器と、受信用復調器とを含むものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記受信用電圧制御発振器から供給される受信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の受信用ローカル信号を前記受信用復調器に供給するものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記受信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の受信用ローカル信号によりRF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートするものであり、
前記複数の受信ブロックの少なくとも1つの受信ブロックに含まれた少なくとも1つの分周器の分周数は、偶数の整数に設定されており、
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの受信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する受信用復調器に供給される該当する一対の受信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記複数の受信ブロックの他の受信ブロックに含まれた他の分周器の他の分周数は、非整数に設定されており、
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の受信ブロックに含まれた前記他の分周器から他の受信用復調器に供給される他の一対の受信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記受信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の受信ブロックに含まれた前記他の受信用復調器から生成される一対の受信アナログ信号に付与する変換ユニットを更に含むことを特徴とする送受信機。
【請求項9】
請求項8において、
前記受信機は、前記一対の受信アナログ信号を一対の受信ディジタル信号に変換する一対のA/D変換器を更に含み、前記一対のA/D変換器は、前記複数の受信ブロックによって共有されていることを特徴とする送受信機。
【請求項10】
請求項9において、
前記変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の出力端子に接続され、
前記変換ユニットが前記一対の受信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に間接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項11】
請求項9において、
前記変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の入力端子に接続され、
前記変換ユニットが一対の受信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に直接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項12】
請求項9において、
前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の受信ブロックと第2の受信ブロックとにそれぞれ含まれた第1の分周器と第2の分周器の分周数は、それぞれ2と4とに設定されており、
前記他の受信ブロックに含まれた前記他の分周器の分周数は、2.5の非整数に設定されており、
前記受信用電圧制御発振器から生成される前記受信用発振出力信号の周波数は、略3.5GHzから略4.5GHzの間に設定可能とされている。
前記第1の受信ブロックは略1.9GHzから略2.2GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記第2の受信ブロックは略0.8GHzから略0.9GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記他の受信ブロックは略1.4GHzから略1.5Hzの受信バンドのRF受信信号を受信することを特徴とする送受信機。
【請求項13】
請求項9において、
前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機は、ダイレクトダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーと低IFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーとのいずれか一方であることを特徴とする送受信機。
【請求項14】
請求項13において、
前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機は、半導体チップに構成されていることを特徴とする送受信機。
【請求項15】
受信機と、送信機とを具備した送受信機であって、
前記受信機は、RF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートする受信復調器を含み、
前記送信機は、送信用電圧制御発振器と、複数の周波数帯域のRF送信信号を生成する複数の送信ブロックとを含むものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれは、分周器と、送信用変調器とを含むものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記送信用電圧制御発振器から供給される送信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の送信用ローカル信号を前記送信用変調器に供給するものであり、
前記複数の送信ブロックのそれぞれでは、前記送信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の送信用ローカル信号により送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートするものであり、
前記複数の送信ブロックの少なくとも1つの送信ブロックに含まれた少なくとも1つの分周器の分周数は、偶数の整数に設定されており、
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する送信用変調器に供給される該当する一対の送信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記複数の送信ブロックの他の送信ブロックに含まれた他の分周器の他の分周数は、非整数に設定されており、
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の送信ブロックに含まれた前記他の分周器から他の送信用変調器に供給される他の一対の送信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記送信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の送信ブロックに含まれた前記他の送信用変調器に供給される一対の送信アナログ信号に付与する送信変換ユニットを更に含み、
前記送信機は、送信アナログ信号をRF送信信号にアップコンバートする送信変調器を含み、
前記受信機は、受信用電圧制御発振器と、複数の周波数帯域のRF受信信号を受信する複数の受信ブロックとを含むものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれは、分周器と、受信用復調器とを含むものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記分周器は前記受信用電圧制御発振器から供給される受信用発振出力信号を分周することによって生成した一対の受信用ローカル信号を前記受信用復調器に供給するものであり、
前記複数の受信ブロックのそれぞれでは、前記受信用変調器は前記分周器から供給された前記一対の受信用ローカル信号によりRF受信信号を受信アナログ信号にダウンコンバートするものであり、
前記複数の受信ブロックの少なくとも1つの受信ブロックに含まれた少なくとも1つの分周器の分周数は、偶数の整数に設定されており、
前記偶数の整数への前記分周数の設定により、前記少なくとも1つの受信ブロックに含まれた前記少なくとも1つの分周器から該当する受信用復調器に供給される該当する一対の受信用ローカル信号は、実質的に90度の位相差を有するクォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記複数の受信ブロックの他の受信ブロックに含まれた他の分周器の他の分周数は、非整数に設定されており、
前記非整数への前記他の分周数の設定により、前記他の受信ブロックに含まれた前記他の分周器から他の受信用復調器に供給される他の一対の受信用ローカル信号は、90度と所定のオフセット角度の位相差を有する非クォドラチャーローカル信号となるものであり、
前記受信機は、前記オフセット角度と極性が反対で略同一の絶対値を持つ補償オフセット量を前記他の受信ブロックに含まれた前記他の受信用復調器から生成される一対の受信アナログ信号に付与する受信変換ユニットを更に含むことを特徴とする送受信機。
【請求項16】
請求項15において、
前記送信機は、一対の送信ディジタル信号を前記一対の送信アナログ信号に変換する一対のD/A変換器を更に含み、前記一対のD/A変換器は、前記複数の送信ブロックによって共有されており、
前記受信機は、前記一対の受信アナログ信号を一対の受信ディジタル信号に変換する一対のA/D変換器を更に含み、前記一対のA/D変換器は、前記複数の受信ブロックによって共有されていることを特徴とする送受信機。
【請求項17】
請求項16において、
前記送信変換ユニットは、前記一対のD/A変換器の一対の入力端子に接続され、
前記送信変換ユニットが前記一対の送信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記一対のD/A変換器の一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された前記一対の送信アナログ信号が生成され、
前記受信変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の出力端子に接続され、
前記受信変換ユニットが前記一対の受信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に間接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項18】
請求項16において、
前記送信変換ユニットは、前記一対のD/A変換器の一対の出力端子に接続され、
前記送信変換ユニットが一対の送信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記変換ユニットの一対の出力端子から前記補償オフセット量が付与された一対の送信アナログ出力信号が生成され、
前記受信変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の入力端子に接続され、
前記受信変換ユニットが一対の受信アナログ入力信号をアナログ信号処理することによって、前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に直接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項19】
請求項16において、
前記受信変換ユニットは、前記一対のA/D変換器の一対の出力端子に接続され、
前記受信変換ユニットの出力は、I/Qキャリブレーション回路の入力に接続され、
前記I/Qキャリブレーション回路では、前記補償オフセット量が算出され、
前記I/Qキャリブレーション回路の出力は、前記受信変換ユニットの補償オフセット量入力端子に接続され、
前記受信変換ユニットでは、前記一対の受信ディジタル信号をディジタル信号処理することによって、前記I/Qキャリブレーション回路で算出された前記補償オフセット量が前記受信用復調器からの前記一対の受信アナログ信号に間接的に付与されるものであることを特徴とする送受信機。
【請求項20】
請求項16において、
前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の送信ブロックと第2の送信ブロックとにそれぞれ含まれた第1の分周器と第2の分周器の分周数は、それぞれ2と4とに設定されており、
前記他の送信ブロックに含まれた前記他の分周器の分周数は、2.5の非整数に設定されており、
前記送信用電圧制御発振器(から生成される前記送信用発振出力信号の周波数は、略3GHzから略4GHzの間に設定可能とされており、
前記第1の送信ブロックは略1.8GHzから略2GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記第2の送信ブロックは略0.8GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、前記他の送信ブロックは略1.4GHzの送信バンドのRF送信信号を生成して、
前記少なくとも1つの送信ブロックに含まれた第1の受信ブロックと第2の受信ブロックとにそれぞれ含まれた第1の分周器と第2の分周器の分周数は、それぞれ2と4とに設定されており、
前記他の受信ブロックに含まれた前記他の分周器の分周数は、2.5の非整数に設定されており、
前記受信用電圧制御発振器から生成される前記受信用発振出力信号の周波数は、略3.5GHzから略4.5GHzの間に設定可能とされており、
前記第1の受信ブロックは略1.9GHzから略2.2GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記第2の受信ブロックは略0.8GHzから略0.9GHzの受信バンドのRF受信信号を受信して、前記他の受信ブロックは略1.4GHzから略1.5Hzの受信バンドのRF受信信号を受信することを特徴とする送受信機。
【請求項21】
請求項20において、
前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機は、ダイレクトアップコンバージョン送信機アーキテクチャーと低IFアップコンバージョン送信機アーキテクチャーとのいずれか一方であり、前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機は、ダイレクトダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーと低IFダウンコンバージョン受信機アーキテクチャーとのいずれか一方であり、
前記送信用電圧制御発振器と前記複数の送信ブロックとを含む前記送信機と、前記受信用電圧制御発振器と前記複数の受信ブロックとを含む前記受信機とは、半導体チップに構成されていることを特徴とする送受信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−147790(P2009−147790A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324657(P2007−324657)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
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