説明

逆走警告装置、逆走警告方法

【課題】不要警告を抑制することができる逆走警告装置及び逆走警告方法を提供すること。
【解決手段】道路の逆走を検出する逆走検出条件が成立する場合に、自車両の乗員に警告する逆走警告装置100において、自車両の位置を検出する位置検出手段31と、走行中の道路の幅員を取得する幅員取得手段14と、自車両が反転を開始してから逆走検出条件が成立するまでの、自車両の旋回直径RGを算出する旋回直径算出手段34と、旋回直径が幅員よりも大きい場合、警告を禁止する警告禁止手段35と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行している道路を逆走するおそれがある場合に乗員に警告する逆走警告装置及び逆走警告方法に関し、特に、不要警告を低減した逆走警告装置及び逆走警告方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転中、運転者が逆方向に進路を変更したい場合がある。この場合、運転者は、走行中の車線から対向車線に車両を移動させる、いわゆるUターン走行を行う。しかしながら、片側の車線数が複数ある場合などは対向車線を走行するよう車両をUターンさせたつもりがそれまで走行していた車道を逆走してしまう場合がある。この点について、逆走を検出して乗員に警告する逆走検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の逆走検出装置は、車両に搭載されたフロントカメラで前方を撮影し、その画像を画像処理して逆走を検出する。例えば、前方を撮影した画像から中央分離帯が検出される場合は、道路標識の色情報及び道路の左側と右側の道路標識の大きさの違いに基づき逆走を検出する。また、中央分離帯が検出されない場合は、道路地図情報に記憶されている車線数と画像データから検出される車線数を比較して、自車線よりも右側の車線数が左側より少ない場合に逆走を検出する。
【0003】
また、特許文献2には、自車両の旋回角度が所定範囲内かつ旋回時の平均曲率が閾値より小さい場合、自車両がUターンしたと判定するUターン検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−140883号公報
【特許文献2】特開2006−030116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の逆走検出装置、及び、特許文献2に記載のUターン検出装置は、例えば図1に示すような道路形状において、走行車線を逆走すると誤判定するおそれがあるという問題がある。図1の走行車線101は片側3車線で、対向車線は省略した。走行車線101の最左車線にはランプ102が接続されており、ランプ102は走行車線101の下側を通過した後、走行車線101とは反対方向が走行方向になるように湾曲している。このような道路103では、特許文献1記載の逆走検出装置は、車両が走行車線101と反対方向を向いた場所で逆走を検出する場合がある。また、特許文献2記載のUターン検出装置は、旋回角度と旋回時の平均曲率が条件を満たした時点で、Uターンを検出する場合がある。
【0006】
しかし、車両はランプ102の走行方向に従い走行しているため、逆走やUターンを検出して乗員に警告する必要はなく、特許文献1に記載の逆走検出装置及び特許文献2に記載のUターン検出装置は、不要警告を出力してしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、不要警告を抑制することができる逆走警告装置及び逆走警告方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、自車両が走行中の道路の逆走検出条件が成立する場合に、乗員に警告する逆走警告装置において、自車両の位置を検出する位置検出手段と、走行中の道路の幅員を取得する幅員取得手段と、自車両が反転を開始してから逆走検出条件が成立するまでの、自車両の旋回直径を算出する旋回直径算出手段と、旋回直径が幅員よりも大きい場合、警告を禁止する警告禁止手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
不要警告を抑制することができる逆走警告装置及び逆走警告方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】複雑な道路形状の一例を示す図である。
【図2】逆走警告装置が逆走に対し警告を出力する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図3】逆走警告装置のハードウェア構成図の一例である。
【図4】ナビECUの機能ブロック図の一例である。
【図5】自車両が反転する過程を模式的に示す図と反転過程における旋回角度の一例を示す図である。
【図6】自車両が反転する過程を模式的に示す図と反転過程におけるヨー角の一例を示す図である。
【図7】警告禁止条件が成立したか否かの判定を説明する図である。
【図8】逆走警告装置が不要警告を抑制しながら逆走を検出して警告する手順を説明するフローチャート図の一例である。
【図9a】旋回直径2Rが幅員d以下の場合を説明する図の一例である。
【図9b】旋回直径2Rが幅員dより大きい場合を説明する図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図2は、逆走警告装置100が逆走に対し警告を出力する手順を示すフローチャート図の一例を示す。逆走警告装置100は、ステップS1において逆走の検出条件が成立するか否かを判定する。逆走の検出条件はどのようなものであってもよく、本実施形態の逆走警告装置100は逆走の検出条件が成立しても、ステップS2において道路形状を判定することに特徴がある。
【0012】
ステップS2において、逆走警告装置100は、自車両の旋回直径2R(R:旋回半径)が道路の幅員dよりも大きいか否かを判定する。道路を逆走するためには、幅員d以下の旋回直径2Rで方向転換又はUターン(以下、単に「反転する」という)する必要があるので、旋回して反転するまでの旋回直径2Rが幅員dよりも大きければ、走行していた道路と別の道路を順方向に走行している可能性が高い(以下、ステップS2の条件を「警告禁止条件」という)。
【0013】
したがって、ステップS2の警告禁止条件の判定の結果、自車両の旋回直径2Rが道路の幅員dより大きい場合、逆走警告装置100は乗員に警告しない(S3)。また、警告禁止条件の判定の結果、自車両の旋回直径2Rが道路の幅員dより大きくない場合、逆走警告装置100は乗員に警告する(S4)。
【0014】
こうすることで、図1に示したような複雑な道路形状を自車両が走行した場合、逆走したと誤判定して不要警告を出力することを防止できる。
【0015】
図3は、逆走警告装置100のハードウェア構成図の一例を示す。逆走警告装置100は、ナビECU(Electronic Control Unit)20により制御される。ナビECU20には、車輪速センサ11、ジャイロセンサ12、GPS受信機13、地図DB(Data Base)14、画像処理部16、メータパネル17、スピーカ18、及び、表示装置19が、CAN(Controller Area Network)、FlexRay、LIN(Local Interconnect Network)等の車載LANや専用線を介して接続されている。ナビECU20はCPU、RAM、ROM、EEPROM、通信ユニット及び入出力インターフェイスを備えたコンピュータ等を実体とする。また、本実施形態では、ナビECU20が逆走警告装置100を制御するが、他のECU(例えば、メータECU、エンジンECU、ボディECU等)が制御してもよい。
【0016】
車輪速センサ11は、例えば、自車両の各輪に備えられたロータの円周上に定間隔で設置された凸部が通過する際の磁束の変化をパルス波形に整形して、単位時間あたりのパルス数に基づき各輪毎に車輪速を計測する。車輪速にタイヤの外径や凸部の間隔に応じて定めた補正値を乗じれば車速Vが得られる。ジャイロセンサ12は、例えばマイクロマシニングで形成された震動片型の静電容量センサである。自車両が旋回走行すると、自車両の旋回速度に応じてコリオリ力が発生し、ジャイロセンサ12が備える震動片の電極間の距離が変化するので、この変化を電圧信号として取り出す。この電圧信号がヨーレートの大きさに相当する。ヨーレートを時間に対し積分すると旋回角度θが得られるので、ジャイロセンサ12の出力を時間積分することで旋回角度θ又は進行方向を検出することができる。
【0017】
GPS受信機13は、地球の周りを周回する好ましくは4つ以上のGPS衛星を捕捉して、各GPS衛星からの電波の到達時間に基づき、自車両の位置(緯度・経度・標高)を検出する。位置の知られた基準局が発信するFM放送の電波を利用して、GPSの計測結果の誤差を修正して高精度に自車両の位置を検出してもよい。また、地図DB14は、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の不揮発メモリで構成され、ノード(例えば、交差点や交差点から所定距離毎の位置)と、ノード間を連結するリンクとを互いに対応づけるテーブル型の道路地図情報を記憶している。ナビECU20は、ノードとリンクを辿ることで道路網を再現することができる。なお、地図DB14には、少なくもリンク(すなわち道路)の幅員が記憶されていることが好ましい。地図DB14に記憶された道路地図情報は、自車両又はナビゲーション装置の出荷時に記憶されていてもよいし、所定のサーバから自車両に配信されてもよい。自車両又はナビゲーション装置の出荷時に記憶されていても、ナビECU20が所定のサーバから道路地図情報を更新することができるようになっている。
【0018】
バックカメラ15と画像処理部16は、主に車線を区切る車線区分線(以下、白線という)を認識するためのカメラシステムとなる。バックカメラ15は、自車両の後部のバンパの略中央やリアガラスの上側略中央に、光軸を車両後方かつやや下向きに向けて配置される。バックカメラ15は、車軸に垂直な方向に光軸を有することが好適となる。バックカメラ15は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の光電変換素子を内蔵した撮像装置を有し、光電変換素子の電圧を読み出しこのアナログ信号をA/D変換して所定の輝度階調の画像データに変換する。なお、バックカメラ15はモノクロカメラ、カラーカメラのどちらでもよく、また、ステレオカメラであってもよい。また、バックカメラ15でなく、フロントカメラを用いてもよい。画像処理部16による白線の認識については後述する。
【0019】
メータパネル17は、運転席の前方のダッシュボードの下部に配置され、スピードメータ等のメータ類、シートベルトの非装着を知らせる警告ランプ等のランプ類、及び、液晶ディスプレイ等を有する。メータパネル17は、例えば、ランプ類のいずれかに逆走を警告する逆走警告ランプを有し、逆走の検出条件が成立し、かつ、警告禁止条件が成立しない場合、逆走警告装置100は逆走警告ランプを点灯する。スピーカ18は、音楽や音声メッセージの電気信号をアンプで増幅して出力する装置である。逆走警告装置100は、逆走の検出条件が成立し、かつ、警告禁止条件が成立しない場合、スピーカ18から警報音を吹鳴したり警告するためのメッセージを出力する。また、表示装置19は、液晶ディスプレイやヘッドアップディスプレイ等を実体とし、ナビECU20が道路地図を表示するために用いられる。逆走警告装置100は、逆走の検出条件が成立し、かつ、警告禁止条件が成立しない場合、表示装置19に警告するためのメッセージや逆走を意味するアイコンを表示するなどして乗員に警告する。逆走警告装置100は、メータパネル17、スピーカ18及び表示装置19のいずれか1以上を用いて、乗員に逆走を警告する。また、警告態様を乗員が選択できるようなっていてもよい。
【0020】
図4は、ナビECU20の機能ブロック図の一例を示す。ナビECU20は、CPUがプログラムを実行するか又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現される、位置検出部31、逆走検出部32、旋回直径算出部34,禁止条件判定部35及び警告制御部33を有する。位置検出部31は、GPS受信機13が検出した自車両の位置を起点に、ジャイロセンサ12が検出する進行方向に、車輪速センサ11が検出する走行距離を累積することで、自車両の位置を高精度に推定する。また、位置検出部31は、推定した自車両の位置に基づき地図DB14に記憶された道路地図情報を参照して、推定した自車両の位置に最も適切なリンクに、自車両の位置を修正する。こうすることで、位置検出部31は、常に自車両の位置を道路上に特定することができる。
【0021】
〔逆走の検出〕
本実施形態の逆走警告装置100は、どのように逆走を検出してもよいが、本実施形態では自車両の旋回角度θとヨー角αに基づき逆走を検出する態様をそれぞれ説明する。
・逆走の検出条件:旋回角度θ≧反転判定閾値θ
逆走検出部32は、自車両の旋回角度θが反転判定閾値θ(例えば、80〜180度程度)以上になると、逆走の検出条件が成立したと判定する。この検出条件だけでは、鋭角に右左折した場合にも検出条件が成立するおそれがあるので、自車両が右左折する可能性のない高速道路の本線を走行中であることを検出条件に含めることが好ましい。また、逆走するために進行方向を反転するには、運転者は車速Vが充分に小さくするとしてよい。したがって、具体的な逆走の検出条件は、次のようになる。
A1)高速道路の本線を走行中であること
A2)車速Vが所定値(反転開始車速判定閾値V)未満であること
A3)旋回角度θ≧反転判定閾値θであること
逆走検出部32は、A1)〜A3)の条件を全て満たす場合に、逆走の検出条件が成立したと判定する。A1)の条件が成立するか否かは、位置検出部31が検出した自車両が走行する道路の道路種別から判定される。なお、必ずしも高速道路の本線を走行していることを検出条件に含めなくてもよい。例えば、立体交差点や高速道路の下の一般道を走行中に、立体交差点や高速道路の下を通過して(右折して)対向車線にUターンすることがあり、この場合も警告を禁止すべきだからである。A2)の条件が成立するか否かは、車輪速センサ11が検出した車速Vから判定される。反転開始車速判定閾値Vは例えば20〔km/h〕以下の小さい値である。A3)の条件が成立するか否かは、ジャイロセンサ12が検出した旋回角度θから判定される。
【0022】
図5(a)は自車両が反転する過程を模式的に示す図を、図5(b)は自車両の反転過程における旋回角度θの一例を、それぞれ示す。図5(a)では車速Vが反転開始車速判定閾値Vよりも小さくなった時を状態「I」で示す。図5(b)に示すように状態「I」の旋回角度θはゼロになっている。
【0023】
自車両が反転を継続し、状態「II」を経て状態「III」となると自車両の車長方向はちょうど幅員方向を向くので、図5(b)に示すように、状態「III」では旋回角度θが約90度である。さらに、自車両が反転を継続し、状態「IV」を経て状態「V」となると自車両は道路の逆方向に反転するので、状態「V」の旋回角度θが約180度となる。
【0024】
反転判定閾値θは適宜設定できるが、例えば、80度〜180度の間とすることができる。80度のように反転判定閾値θに小さい値を設定しておけば、早期に逆走の検出条件が成立する。また、180度のように反転判定閾値θに大きな値を設定しておけば、逆走することが確実な場合に逆走を検出できるので、より不要警告を抑制しやすくなる。本実施形態では、不要警告を抑制するため、旋回直径算出部34が旋回直径2Rを算出することが必要となるので、旋回直径2Rを算出するために充分な反転判定閾値θとすることが好ましい。すなわち、旋回直径2Rは、旋回がある程度完了した時点で算出されるべきなので、反転判定閾値θは、例えば160度〜180度のような大きめの値である。逆走検出部32は、逆走の検出条件が成立したと判定すると、フラグ1をオンに操作する。
【0025】
・逆走の検出条件:白線に対する自車両のヨー角α>反転判定閾値θ
また、画像処理部16が認識した白線を利用して逆走の検出条件が成立するか否かを判定してもよい。なお、条件A1)A2)については、旋回角度θを逆走の検出条件とする場合と同じである。したがって、具体的な逆走の検出条件は、次のようになる。
A1)高速道路の本線を走行中であること
A2)車速Vが所定値(反転開始車速判定閾値V)未満であること
A3)自車両のヨー角α≧反転判定閾値θであること
高速道路には走行レーンを区切る白線が路面標示されているが、白線は走行レーンに平行な直線状の形状を有する。このため、自車両が反転を開始してから逆走を開始するまでの間に、自車両の車長方向と白線は必ず直角となる状態を経ると考えられる。このため、逆走検出部32が、バックカメラ15により撮影された白線の角度から自車両のヨー角αを監視することで、逆走の検出条件が成立したことを検出できる。
【0026】
図6(a)は自車両が反転する過程を模式的に示す図を、図6(b)は自車両の反転途中における画像データの一例を、それぞれ示す。図3の画像処理部16は、図6(b)のような画像データに白線認識処理を施す。白線の検出は、例えばLKAS(Lane Keeping Assist System)などで周知の方法を用いる。具体的には、1本の白線は路面に対し高周波成分たるエッジを有するので、画像データの輝度値を水平方向及び垂直方向に微分すると、白線の両端にピークが得られそれを結んだエッジ線が推定できる。推定した複数のエッジ線から白線の幅を考慮して一対となる複数組の白線の候補線を抽出し、複数組の白線の候補線のなかから、輝度や路面とのコントラストから定められる閾値や幅の閾値、線状の形状である等の特徴からマッチングなどの手法を適用して、白線と認められる1本の白線を選定する。選定した白線が有する複数エッジをハフ変換することで撮影された左右又は左右いずれかの白線の直線式が得られる。
【0027】
図6(a)では車速Vが車速判定閾値Vよりも小さくなった時を状態「I」で示す。状態「I」では自車両の車長方向は白線と略平行であるので、図6(b)の画像データでは白線が略ハの字になる。
【0028】
自車両が反転を継続すると、画像データにおける白線は時計回りに回転する。状態「III」では、画像データの白線は水平方向を向く。すなわち、状態「III」の時、自車両の車長方向と白線とは直交しヨー角αが90度になる。さらに、自車両が反転を継続すると、図6(a)の自車両は状態「IV」を経て状態「V」となり、これに伴い画像データにおける白線は時計回りに回転し、状態「V」では再び、画像データの白線が略ハの字になる。状態「V」の時、自車両のヨー角αが180度になる。
【0029】
逆走検出部32は、予め、画像データにおける白線の角度c(例えば、水平方向を基準とする)と、自車両のヨー角αを対応づけたテーブルを記憶しておく。そして、逆走検出部32は、画像データにおける白線の角度cに基づきテーブルを参照し、ヨー角αを決定する。
【0030】
なお、反転判定閾値θは、旋回角度θを逆走の検出条件とする場合と同様に、例えば160度〜180度のような大きめの値である。逆走検出部32は、逆走の検出条件が成立したと判定すると、フラグ1をオンに操作する。
【0031】
〔禁止条件の判定〕
図4に戻り、禁止条件判定部35は、警告禁止条件が成立したか否かを判定する。図7は、警告禁止条件が成立したか否かの判定を説明する図である。警告禁止条件は、2R>dである。このうち、幅員dは、禁止条件判定部35が、位置検出部31から取得する。位置検出部31は、自車両が走行している道路に基づき、地図DB14に記憶された道路地図情報から幅員dを読み出す。路車間通信により、路側装置から幅員dを取得してもよい。
【0032】
これに対し旋回直径2Rは不明なので、旋回直径算出部34は適当な方法で旋回直径2Rを算出する。旋回直径算出部34は、例えば車速Vが車速判定閾値Vよりも小さくなった時から、逆走の検出条件が成立するまでの走行距離Lに基づき、旋回直径2Rを算出する。走行距離Lは、車輪速センサ11により検出される。
【0033】
逆走の検出条件の反転判定閾値θを160度〜180度程度の大きな値にした場合、自車両の走行軌跡は半円であると仮定される。そこで、旋回直径2Rは次式により算出される。なお、走行軌跡が円にならないことが分かっている場合、係数を掛けて補正してもよい。2R=2L/π …(1)
また、旋回直径算出部34は、車速Vが車速判定閾値Vよりも小さくなった時の位置P1、逆走の検出条件が成立した時の位置P2、から旋回直径2Rを算出してもよい。位置P1,P2は位置検出部31により検出される。例えば、位置P1の座標を(x、y)、位置P2の座標を(x,y)とすると、旋回直径2Rは次式により算出される。
2R=√{(x−x+(y−y} …(2)
旋回直径算出部34は、式(1)又は(2)のいずれかで算出した旋回直径2Rと幅員dを比較し、2R>dの場合、フラグ2をオフに操作する。後述するよう、フラグ2は初期状態がオフなので、2R>dの場合、フラグ2はオフのままである。
【0034】
このように、2R>dか否かを判定することで、逆走警告装置100は、自車両が図1のような複雑な道路形状を走行してるため、逆走するおそれがないと判定できるので、不要警告を抑制できる。なお、算出には式(1)又は(2)のいずれを用いてもよく、両者の算出結果の平均、両者の算出結果のうち大きい方、又は、両者の算出結果のうち小さい方を用いてもよい。
【0035】
・より早期に逆走の検出条件が成立したか否か、及び、警告禁止条件が成立したか否かを判定したい場合
式(1)(2)では、逆走の検出条件の反転判定閾値θは、160度〜180度くらいの大きな値としたが、反転判定閾値θが大きいと、自車両が既に逆方向に反転しているので、逆走を解消するために運転者は、再度180度近く自車両を反転させる必要が生じる。このため、逆走警告装置100は、逆走の検出条件及び警告禁止条件が成立するか否かをより早期に判定することが好ましい。そこで、逆走警告装置100は、逆走の検出条件の反転判定閾値θを90度程度とすることもできる。
【0036】
図7に示したように、位置P3で自車両の旋回角度θ又はヨー角αは90度程度になる。位置P3では、旋回直径2Rのうち半分程度、すなわち旋回半径Rまで自車両が進んでいると考えられる。したがって、反転判定閾値θを90度とした場合、旋回半径Rとd/2、又は、旋回半径RGを2倍したものとdを比較することで、逆走警告装置100は、逆走の検出条件及び警告禁止条件が成立するか否かをより早期に判定することができる。
【0037】
旋回直径2Rは、式(1)又は式(2)を変形することで、算出される。
2R=4L/π …(1‘)
なお、自車両の位置P3までの走行軌跡が円周の1/4分の円弧であると仮定した。式(1‘)のLは円周の1/4と同じくらいである。
【0038】
また、位置P3の座標を(x、y)とすると、式(2)は次のように変形できる。なお、自車両の位置P3までの走行軌跡が円周の1/4分の円弧であると仮定した。
2R=2×(1/√2)×√{(x−x+(y−y} …(2‘)
このように、旋回直径2Rを旋回角度θ又はヨー角αが90度程度の時点で推測することで、自車両が反転を完了させる前に、逆走警告装置100は、逆走の検出条件及び警告禁止条件が成立するか否かをより早期に判定することができる。
【0039】
〔警告の出力〕
警告制御部33は、フラグ1がオン、かつ、フラグ2がオンの場合、警告を出力する。フラグ1、2は共にオフを初期状態とする。警告制御部33は、メータパネル17、スピーカ18、又は、表示装置19の少なくとも1以上を用いて、乗員に、逆走のおそれがあることを警告する。フラグ2は、2R>dの場合、オフのままなので、逆走のおそれがある場合にのみ、警告を出力することができる。警告音は、例えば「ピピピッ」等であり、メータパネル17や表示装置19に表示されるメッセージやスピーカ18から出力される音声メッセージは、例えば「逆走注意!」等である。
【0040】
〔動作手順〕
図8に、逆走警告装置100が、が不要警告を抑制しながら逆走を検出して警告する手順を説明するフローチャート図を示す。図8のフローチャート図は、例えば自車両が高速道路に進入するとスタートし、所定のサイクル時間毎に繰り返し実行される。なお、図8は、旋回角度θに基づき逆走の検出条件が成立したか否かを判定するフローチャート図であるが、ヨー角αを用いても同様に処理することができる。
【0041】
まず逆走検出部32は、位置検出部31が地図DB14から読み出した道路種別に基づき、自車両が高速道路の本線を走行しているか否かを判定する(S10)。路側に敷設された通信部から高速道路の本線を走行中である旨の情報を受信することで判定してもよい。高速道路の本線を走行していない場合(S10のNo)、逆走警告装置100は警告することなく図8の処理を終了する。
【0042】
高速道路の本線を走行している場合(S10のYes)、逆走検出部32は車輪速センサ11が検出する車速Vが車速判定閾値Vよりも小さいか否かを判定する(S20)。自車両を反転させるためには著しく車速Vを下げる必要があるため、車速Vが車速判定閾値Vよりも小さくない場合(S20のNo)、警告することなく図8の処理はそのまま終了する。
【0043】
車速Vが車速判定閾値Vよりも小さい場合(S20のYes)、逆走検出部32は車速Vが車速判定閾値V未満となった時の進行方向を記憶する(S30)。したがって、車速Vが車速判定閾値Vよりも小さくなった際の旋回角度θがゼロ度(基準値)になる。
【0044】
そして、ゼロ度とした進行方向を基準に自車両の旋回角度θの計測を開始する(S40)。上述したように、ジャイロセンサ12の出力を時間積分することで旋回角度θを検出できるので、例えば、微少時間毎のヨーレートを累積することで旋回角度θが検出される。
【0045】
逆走検出部32は、車速Vが車速判定閾値Vを超えるまでの間、旋回角度θが反転判定閾値θを超えたか否かを判定する(S50)。反転判定閾値θを90度とすれば、図5(a)又は図6(a)の状態「III」で自車両の逆走を検出することができ、反転判定閾値θを160〜180度とすれば、図5(a)又は図6(a)の状態「V」で自車両の逆走を検出することができる。旋回角度θが反転判定閾値θを超えない場合(S50のNo)、ステップS20からの処理を繰り返す。
【0046】
旋回角度θが反転判定閾値θを超えた場合(S50のYes)、逆走検出部32は逆走の検出条件が成立したと判定する。これにより、逆走検出部32はフラグ1をオンに操作する。
【0047】
ついで、禁止条件判定部35は、幅員dを取得し、また、旋回直径2Rを算出する(S60)。禁止条件判定部35は、反転判定閾閾値θが大きい場合は、式(1)又は式(2)の1以上を用いて、反転判定閾閾値θが小さい場合は、式(1‘)又は式(2’)の1以上を用いて、旋回直径2Rを算出する。
【0048】
そして、禁止条件判定部35は、2R>dか否かを判定する(S70)。
図9(a)は、旋回直径2Rが幅員d以下の場合を、図9(b)は旋回直径2Rが幅員dより大きい場合を、それぞれ説明する図の一例である。図9(a)では、自車両は、片側3車線の高速道路の本線において反転している。図示するように、高速道路の本線で反転する場合、旋回直径2Rは幅員d以下である。また、図9(b)では、自車両は、高速道路の本線から左側のランプを通過して、高速道路の本線と反対方向に回頭している。図示するように、ランプを通過して高速道路を迂回する場合、旋回直径2Rは幅員dより大きくなる。したがって、2R>dか否かを判定することで、自車両が逆走するか否かを判定できる。
【0049】
図8に戻り、2R>dでない場合(S70のNo)、禁止条件判定部35はフラグ2をオンに操作する。これにより、フラグ1と2が共にオンになるので、警告制御部33は警告を出力する(S80)。
【0050】
また、禁止条件判定部35は、2R>dの場合(S70のYes)、フラグ2をオフに操作する。この場合、警告制御部33は警告を出力しない(S90)。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の逆走警告装置100は、立体交差などの複雑な道路形状を自車両が走行した場合、逆走したと誤判定して不要警告となることを防止できる。
【符号の説明】
【0052】
11 車輪速センサ
12 ジャイロセンサ
13 GPS受信機
14 地図DB
15 バックカメラ
17 メータパネル
18 スピーカ
19 表示装置
20 ナビECU
100 逆走警告装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の逆走を検出する逆走検出条件が成立する場合に、自車両の乗員に警告する逆走警告装置において、
自車両の位置を検出する位置検出手段と、
走行中の道路の幅員を取得する幅員取得手段と、
自車両が反転を開始してから前記逆走検出条件が成立するまでの、自車両の旋回直径を算出する旋回直径算出手段と、
前記旋回直径が前記幅員よりも大きい場合、警告を禁止する警告禁止手段と、
を有することを特徴とする逆走警告装置。
【請求項2】
前記旋回直径算出手段は、
自車両が反転を開始した時の進行方向を基準に、旋回角度又はヨー角が約90度となるまでの旋回半径を算出し、
前記警告禁止手段は、前記旋回半径を2倍した値が前記幅員よりも大きい場合、警告を禁止する、
ことを特徴とする請求項1記載の逆走警告装置。
【請求項3】
前記旋回直径算出手段は、
自車両が反転を開始した時の進行方向を基準に、旋回角度又はヨー角が約180度となるまでの前記旋回直径を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の逆走警告装置。
【請求項4】
路面を含む所定範囲を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段が撮影した画像データから走行レーンに平行な対象物を認識する画像処理手段と、
画像データにおける前記対象物の長手方向の向きから、自車両のヨー角を検出する逆走検出手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載の逆走警告装置。
【請求項5】
前記旋回直径算出手段は、
自車両が反転を開始した時から逆走の検出条件が成立するまでの走行軌跡を半円とみなし、自車両が反転を開始した時から逆走の検出条件が成立するまでの走行距離に基づき、前記旋回直径を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の逆走警告装置。
【請求項6】
前記旋回直径算出手段は、
自車両が反転を開始した時の位置と、逆走の検出条件が成立した時の位置の二点間の距離に基づき、前記旋回直径を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の逆走警告装置。
【請求項7】
前記旋回直径算出手段は、
自車両が反転を開始した時から逆走の検出条件が成立するまでの走行軌跡を1/4円とみなし、自車両が反転を開始した時から逆走の検出条件が成立するまでの走行距離に基づき、前記旋回半径を算出する、
ことを特徴とする請求項2記載の逆走警告装置。
【請求項8】
前記逆走検出条件は、
前記位置検出手段が検出した自車両の位置が高速道路の本線であること、
車速が所定値以下であること、
旋回角度又はヨー角が反転判定閾値より大きいこと、
の全てを満たすことを条件とする、
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の逆走警告装置。
【請求項9】
前記逆走検出条件は、
車速が所定値以下であること、
旋回角度又はヨー角が反転判定閾値より大きいこと、
の全てを満たすことを条件とする、
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の逆走警告装置。
【請求項10】
道路の逆走を検出する逆走検出条件が成立する場合に、自車両の乗員に警告する逆走警告装置の逆走警告方法において、
位置検出手段が、自車両の位置を検出するステップと、
幅員取得手段が、走行中の道路の幅員を取得するステップと、
旋回直径算出手段が、自車両が反転を開始してから逆走の検出条件が成立するまでの、自車両の旋回直径を算出するステップと、
前記旋回直径が前記幅員よりも大きい場合、警告禁止手段が警告を禁止するステップと、
を有することを特徴とする逆走警告方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−204748(P2010−204748A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47039(P2009−47039)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】