説明

透明導電性積層体及びその色度均一性改善法

【課題】高い透過率を有すると共に、その透明導電性薄膜のパターンが視認できないようになっている透明導電性積層体の提供を目的とし、且つ、前記透明導電性積層体を形成する過程における透明導電性積層体の色度均一性改善法の提供をも目的とする。
【解決手段】基材1の一面上に、前記基材1の側から第1の薄膜2、第2の薄膜3及び透明導電性薄膜4が順に形成されている透明導電性積層体において、前記第2の薄膜3は、前記第1の薄膜1より低い屈折率を有し、前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜4が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜4が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とは、下記式(1)〜式(3):
式(1) b1 < 1.15
式(2) b2 < 1.15
式(3) Δb=|b1−b2| < 0.35
を満たすようにして、透明導電性積層体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置を構成する透明導電性積層体及びその色度均一性改善法に関し、特に、タッチパネル装置を構成する上部フィルム等に好適な透明導電性積層体、及び、該透明導電性積層体を形成する方法における透明導電性積層体の色度均一性改善法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル装置は、ディスプレイ装置への直接入力における入力デバイスとして、様々な電子機器に利用されるようになってきた。
【0003】
タッチパネル装置は、一般的に、透明導電性薄膜が下面に形成されている上部透明フィルムと、透明導電性薄膜が上面に形成されている下部透明ガラス板とからなっており、且つ、前記上部透明フィルム及び前記下部透明ガラス板のそれぞれにおける透明導電性薄膜は、互いに対向しており、使用者の押圧により互いに接触して通電することができるようになっている。
【0004】
このようなタッチパネル装置は、波長の短い可視光に対する透過率が低いので、タッチパネル装置を通してディスプレイ装置を見ると、ディスプレイ装置の色がやや黄色みがかる、という欠点がある。
【0005】
上記欠点を解決するために、ディスプレイ装置の表示波長領域の全域にわたって高い透過率を有する上部透明フィルム及び下部透明ガラス板を備える様々な透明導電性積層体がすでに開発されている(下記の特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−171147号公報
【特許文献2】特開2007−299534号公報
【特許文献3】特開2006−346878号公報
【特許文献4】特開2004−184579号公報
【特許文献5】特開2007−276322号公報
【特許文献6】特開2008−049518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記透明導電性積層体は、色度(b)を黄色から離れるように下げることによって、黄色みがかることは解消できたが、該透明導電性積層体をタッチパネル装置の構成に使用する際には、タッチパネル装置の内部に電気回路やコンデンサーを形成するため、透明導電性薄膜にパターニングをする必要があり、このパターニングをすると、タッチパネル装置の内部におけるパターン、特に上部透明フィルムにおける透明導電性薄膜のパターンが必ず見えるようになってしまい、更に、色が均一でなく乱雑に見えてしまい、ディスプレイ装置の表示品質が著しく低下するという問題が出る。
【0008】
上記問題点に鑑みて、本発明は、高い透過率を有すると共に、その透明導電性薄膜のパターンを視認できなくし、且つ色が均一に見えるようにする透明導電性積層体の提供を目的とする。また、前記透明導電性積層体を形成する過程における透明導電性積層体の色度均一性改善法の提供をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明者は、実験に実験を重ねて、ついに、色度(b)を黄色から離れるように下げると共に、透明導電性積層体において、透明導電性薄膜が被覆されていない時の色度(b1)と、被覆された後の色度(b2)との色度差(Δb)を下げることで、透明導電性薄膜内のパターンが見えないようにできることを発見し、以下のような本発明に係る透明導電性積層体及び該透明導電性積層体の形成過程における透明導電性積層体の色度均一性改善法を提供した。
【0010】
〔1〕透明導電性積層体
基材の一面上に、前記基材の側から第1の薄膜、第2の薄膜、透明導電性薄膜が順に形成されている透明導電性積層体において、
前記第2の薄膜は、前記第1の薄膜より低い屈折率を有し、
前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とは、下記式(1)〜式(3)を満たす透明導電性積層体。
式(1) b1 < 1.15
式(2) b2 < 1.15
式(3) Δb=|b1−b2| < 0.35
【0011】
〔2〕前記透明導電性積層体の形成過程における透明導電性積層体の色度均一性改善法
基材の一面上に、前記基材の側から第1の薄膜、第2の薄膜、透明導電性薄膜を順に積層して透明導電性積層体を形成する方法における透明導電性積層体の色度均一性改善法であって、
前記第2の薄膜として、屈折率が前記第1の薄膜よりも低いものを使用し、
前記第1及び第2の薄膜のそれぞれ光学膜厚を、前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とが、上記式(1)〜式(3)を満たすようにコントロールする透明導電性積層体の色度均一性改善法。
【0012】
前記〔1〕の透明導電性積層体の実施形態として、
〔1−1〕基材の一面上に、前記基材の側から第1の薄膜、第2の薄膜、透明導電性薄膜が順に積層されており、他面上に改質層が形成されている透明導電性積層体において、
前記第1の薄膜は、光学膜厚が11nm以上、16nm以下であり、
前記第2の薄膜は、光学膜厚が60nm以上、90nm以下であると共に、屈折率が前記第1の薄膜の屈折率より低く、
前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とは、上記式(1)〜式(3)を満たす透明導電性積層体、及び、
〔1−2〕基材の一面上に、前記基材の側から第1の薄膜、第2の薄膜、透明導電性薄膜が順に形成されている透明導電性積層体において、
前記第1の薄膜は、光学膜厚が20nm以上、29nm以下であり、
前記第2の薄膜は、光学膜厚が60nm以上、90nm以下であると共に、屈折率が前記第1の薄膜の屈折率より低く、
前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とは、上記式(1)〜式(3)を満たす透明導電性積層体が、挙げられる。
【0013】
また、前記〔2〕の前記透明導電性積層体の形成過程における透明導電性積層体の色度均一性改善法の実施形態として、
〔2−1〕前記基材の他面上に改質層を積層し、
前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とのコントロールを、前記第1の薄膜の光学膜厚が11nm以上、16nm以下、前記第2の薄膜の光学膜厚が60nm以上、90nm以下の範囲内で行う透明導電性積層体の色度均一性改善法、及び、
〔2−2〕前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とのコントロールを、前記第1の薄膜の光学膜厚が20nm以上、29nm以下、前記第2の薄膜の光学膜厚が60nm以上、90nm以下の範囲内で行う透明導電性積層体の色度均一性改善法が挙げられる。
【0014】
前記b(b1またはb2)は、国際照明委員会(CIE)の定めたCIE L表色系で、波長領域380〜780nmの光に対する色度を表す。bが大きければ大きいほど、黄色に近い。詳しく言うと、bが4であれば、真の黄色であり、4から2に下がるにつれて、だんだん薄くなるが、やはり多少は黄色みがかっている。しかし、1.15以下になると、本発明の場合では、まったく黄色みがかることはない。
【0015】
また、透明導電性薄膜のパターンは、エッチングで透明導電性積層体の透明導電性薄膜面から透明導電性薄膜の一部を剥離してなるものである。前記構成による本発明の透明導電性積層体においては、その透明導電性薄膜が被覆されていない時の色度(b1)と、被覆された後の色度(b2)との色度差(Δb)が0.35以下となっており、肉眼で判別できないほど小さい。すなわち、パターニングされている場合においても、そのパターンのある箇所(即ち、その透明導電性薄膜が剥離されていない箇所、または、透明導電性薄膜が被覆されている箇所)の色度(ほぼb1)とパターンのない箇所(即ち、その透明導電性薄膜が剥離されている箇所、または、透明導電性薄膜が被覆されていない箇所)の色度(ほぼb2)との色度差(Δb)が0.35以下となる。よって、パターンが視認できず、且つ色も均一に見えるようになる。
【0016】
なお、前記光学膜厚とは、物理膜厚に屈折率を掛けてなる数値を言う。
【発明の効果】
【0017】
本発明の透明導電性積層体は、前記第1及び第2の薄膜それぞれの光学膜厚を所定値に抑えると共に、上記式(1)〜式(3)を満たすようにコントロールすることで、黄色みがからず、透過率が高く、且つ、その透明導電性薄膜における、パターンが形成されている箇所の色とパターンが形成されていない箇所の色とが互いに区別できないほどほぼ均一になって、パターンが視認できないようになる。
【0018】
従って、本発明の透明導電性積層体及びその色度均一性改善法によれば、表示品質が従来より優れたディスプレイ装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態における実施例1〜6の透明導電性積層体を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1〜3及び比較例1〜4における透明導電性積層体の、第1の薄膜の光学膜厚に対する透明導電性薄膜の被覆前後の色度差(Δb)を示す図面である。
【図3】本発明の実施例5〜6及び比較例5〜6における透明導電性積層体の、第1の薄膜の光学膜厚に対する透明導電性薄膜の被覆前後の色度差(Δb)を示す図面である。
【図4】本発明の他の好ましい実施形態の透明導電性積層体を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における実施例7〜9の透明導電性積層体を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例7〜9及び比較例7〜8における透明導電性積層体の、第1の薄膜の光学膜厚に対する透明導電性薄膜の被覆前後の色度差(Δb)を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の、透明導電性積層体の色度均一性改善法は、従来の、黄色みがかる問題を解消する透過率改善法と異なり、図1に示したように、第1及び第2の薄膜2、3を、基材1と透明導電性薄膜4との間に形成し、且つ、該2層の薄膜2、3の光学膜厚をコントロールすることにより、前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が被覆されていない時の色度(b1)と、被覆された後の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とが、下記式(1)〜式(3)を満たすことで、透過率の改善はもちろん、透明導電性薄膜におけるパターンを見えないようにし、色を均一に見えるようにさせることもできる。
式(1) b1 < 1.15
式(2) b2 < 1.15
式(3) Δb=|b1−b2| < 0.35
〔第1実施形態〕
【0021】
図1に示したように、本発明の第1の実施形態に係る透明導電性積層体は、基材1と、第1の薄膜2と、第2の薄膜3と、透明導電性薄膜4と、改質層5とからなっている。第1の薄膜2、第2の薄膜3及び透明導電性薄膜4は、基材1の一面11上に、基材1の側から順に形成されており、改質層5は、基材1の他面12上に形成されている。
【0022】
基材1の素材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)などが挙げられる。そのうち、PETが好ましい。
【0023】
第1の薄膜2は、基材1の一面11に被覆されており、その材料として、例えば、TiO、Nb、NbO、CeO、インジウム錫酸化物(ITO)などが挙げられるが、Nbが特に好ましい。また、その光学膜厚は、11nm以上、16nm以下の範囲にあり、特に、12nm以上、15nm以下の範囲にあることが好ましい。
【0024】
第2の薄膜3は、第1の薄膜2の上面に被覆されている。その屈折率は、第1の薄膜2の屈折率より低いが、材料として、例えば、SiO、Si、MgFなどが挙げられ、特にSiOが好ましい。また、その光学膜厚は、60nm以上、90nm以下の範囲にあり、特に60nm以上、80nm以下の範囲にあることが好ましい。
【0025】
本実施形態の透明導電性薄膜4は、インジウム錫酸化物(ITO)からなっているものである。図1に示されている透明導電性薄膜4は、すでにエッチングを受けた後の、パターンが形成されているものであるので、第2の薄膜3の上面に被覆されている複数の被覆領域41(パターンが形成されている箇所)と、ITOが剥離されていて第2の薄膜3の上面が露出している複数の非被覆領域42(パターンが形成されていない箇所)とからなっている。複数の被覆領域41(パターンが形成されている箇所)は、透明導電性積層体の内部にある電気回路やコンデンサーが形成されている箇所である。
【0026】
改質層5としては、電子機器によって、内部に機能性粒子を含有した反応性硬化樹脂からなっている硬度の高い表面保護層、若しくは、他の素材からなっており、反射率が低く、且つ透過率の高いフィルム、又は、光を拡散する機能があって光をより均一に分散できるフィルムが挙げられる。そのうち、内部に機能性粒子を含有した反応性硬化樹脂からなっている硬度の高い表面保護層を改質層5として使用することが好ましい。その表面保護層としての改質層5によって、透明導電性積層体全体の硬度が高まるので、擦れたりして傷付くことを防ぐことができる。
【0027】
本発明は、第2の薄膜3として屈折率が第1の薄膜2の屈折率より低いものを使用することにより透明導電性積層体全体の透過率を高めると共に、透明導電性積層体における2層の薄膜2、3をそれぞれ特定の光学膜厚に限定する。即ち、透明導電性薄膜4が被覆されていない時の色度(b1)と被覆された後の色度(b2)を、共に、1.15以下に抑え、且つ該二つの色度の間の色度差(Δb)も0.35以下に調整する。それにより、エッチングされた後の本発明の透明導電性積層において、透明導電性薄膜4が被覆されていない箇所の色度(ほぼb1)と被覆されている箇所の色度(ほぼb2)は黄色から遠く離れる1.15以下になり、且つ該二つの色度の間の色度差(ほぼΔb)も肉眼で判別できない0.35以下になっているので、本発明の透明導電性積層体は、まったく黄色みがからず、その内部にある透明導電性薄膜4のパターンも視認できなくなり、色も均一に見えるようになる。
〔第2実施形態〕
【0028】
次に本発明の第2実施形態の透明導電性積層体を説明する。
【0029】
この実施形態の透明導電性積層体では、図4に示したように、改質層5が基材1の他面12ではなく、基材1の一面11と第1の薄膜2との間に介在していること以外、他の構成が全て第1実施形態の透明導電性積層体と同様である。
〔第3実施形態〕
【0030】
次に本発明の第3実施形態の透明導電性積層体を説明する。
【0031】
第3の実施形態の透明導電性積層体は、図5に示したように、改質層5が配置されておらず、第1の薄膜2の光学膜厚が第1及び第2の実施形態と異なること以外、他の構成が全て第1実施形態の透明導電性積層体と同様である。
【0032】
本実施形態における第1の薄膜2は、その光学膜厚が20nm以上、29nm以下の範囲にあり、特に、22nm以上、28nm以下の範囲にあることが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明の技術をより具体的に説明する。
(実施例1)
【0034】
改質層5が形成されている基材1(商品名:FE−RHPC56N)を用意し、基材の改質層のない表面上に真空蒸着法により、第1の薄膜2及び第2の薄膜3を表1に示した光学膜厚になるように形成し、透明導電性薄膜4が被覆されていない時の色度(b1)及び透過率を測定する。そして、第2の薄膜3上に透明導電性薄膜4を抵抗値が320Ω/mmになるように形成してから、透明導電性薄膜4が被覆された後の色度(b2)及び透過率を測定して、該二つの色度の間の色度差(Δb)を計算して表1に示す。
【0035】
改質層5が形成されている基材1は、その改質層5が硬度の高い表面保護層となっており、そのうち、基材1の厚さは125μmであり、改質層5の厚さは5μmである。
【0036】
透明導電性薄膜4の被覆前後に色度を測定し色度差を計算した値は、実際に図1の透明導電性積層体において、透明導電性薄膜4における複数の被覆領域41(透明導電性薄膜4の、パターンが形成されている箇所)と、複数の非被覆領域42(透明導電性薄膜4の、パターンが形成されていない箇所)との色度差とすることができるので、本発明の実施例及び比較例は、透明導電性薄膜4の被覆前後に測定した色度で色度差を計算する。
(実施例2〜4及び比較例1〜4)
【0037】
実施例2〜4及び比較例1〜4は、それぞれの第1の薄膜2及び第2の薄膜3の光学膜厚(表1に示す)が実施例1と異なる以外、他の部分は全て同様であり、実施例1と同じ手順で色度、透過率及び色度差を測定する。
(色度及び透過率の評価方法)
【0038】
分光測色計(コニカミノルタ社製、型番:CM3600D)を用いて、国際照明委員会(CIE)の定めたCIEL表色系で、波長領域380〜780nmの光に対する色度(b)及び透過率を測定する。
【表1】

【0039】
表1に示したデータから分かるように、比較例3及び4では、その第1の薄膜2の光学膜厚が9nm以下であり、また、その透明導電性積層体に透明導電性薄膜が被覆された後、やや黄色みがかっている。そして、比較例1〜4では、それらの色度差(Δb)が全て0.35以上にある。そのため、比較例1〜4は、いずれも黄色みがかる問題及び透明導電性薄膜のパターンが見られる問題を共に解決することができない。
【0040】
それに対し、本発明の実施例1〜4では、透明導電性薄膜4が被覆されていない時も、被覆された後も、色度(b1、b2)が全て1.15以下にあり、また、それらの色度差(Δb)が全て0.35以下にあるので、いずれも黄色みがかる問題及び透明導電性薄膜のパターンが見られる問題を解決することができる。(実施例5〜6及び比較例5〜6)
【0041】
実施例5〜6及び比較例5〜6は、基材と改質層との製造元、透明導電性薄膜の抵抗値、及びそれぞれの第1の薄膜2及び第2の薄膜3の光学膜厚(表2に示す)が実施例1と異なること以外、他の部分及び手順は、全て実施例1と同じである。
【0042】
実施例5〜6及び比較例5〜6は、株式会社きもと製のKIMOTO−GSABという、改質層5が形成されている基材1を使用する。その改質層5も硬度の高い表面保護層となっており、また、その透明導電性薄膜の抵抗値が、312Ω/mmである。
【表2】

【0043】
表2に示したデータから分かるように、比較例5〜6では、色度(b1、b2)が全て1.15以下にあり、それらの色度差(Δb)が全て0.35以上にある。そのため、比較例5及び6において、いずれも黄色みが帯びる問題は解決できるが、透明導電性薄膜のパターンが見える問題は解決することができない。
【0044】
それに対し、本発明の実施例5〜6では、透明導電性薄膜4が被覆されていない時も、被覆された後も、色度(b1、b2)が全て1.15以下にあり、また、それらの色度差(Δb)も全て0.35以下にあるので、いずれも黄色みが帯びる問題及び透明導電性薄膜のパターンが見える問題を解決することができる。
【0045】
また、表1における実施例1〜4と表2における実施例5〜6とを合わせてみれば、改質層5のある基材1を使用して本発明の改質層5のある透明導電性積層体を形成するとき、透明導電性積層体において、透明導電性薄膜4が被覆されていない時の色度(b1)と、被覆された後の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とを、式(1)〜式(3)を満たすようにコントロールするためには、第1の薄膜2の光学膜厚が11nm以上、16nm以下、第2の薄膜3の光学膜厚が60nm以上、90nm以下の範囲内で行えばよい。特に、第1の薄膜2の光学膜厚が12nm以上、15nm以下、第2の薄膜3の光学膜厚が60nm以上、80nm以下の範囲内で行うことがより好ましい。
(実施例7〜9及び比較例7〜8)
【0046】
実施例7〜9及び比較例7〜8は、改質層がないことと、基材の製造元、透明導電性薄膜の抵抗値、及びそれぞれの第1の薄膜2及び第2の薄膜3の光学膜厚(表3に示す)が実施例1と異なること以外、他の部分及び手順は、全て実施例1と同じである。
【0047】
実施例7〜9及び比較例7〜8は、基材1として、TOYOBO A4150(東洋紡績株式会社製)という、改質層がついていないPETフィルムを使用している。また、その透明導電性薄膜4の抵抗値は、290Ω/mmである。
【表3】

【0048】
表3に示したデータから分かるように、比較例7及び8では、色度(b1、b2)が全て1.15以下にあるが、それらの色度差(Δb)が全て0.35以上にある。そのため、比較例7及び8において、いずれも黄色みがかる問題は解決できるが、透明導電性薄膜のパターンが見える問題は解決することができない。
【0049】
それに対し、本発明の実施例7〜9では、透明導電性薄膜4が被覆されていない時も、被覆された後も、色度(b1、b2)が全て1.15以下にあり、また、それらの色度差(Δb)も全て0.35以下にあるので、いずれも黄色みがかる問題及び透明導電性薄膜のパターンが見える問題を解決することができる。
【0050】
また、実施例7〜9のデータをより詳しくみると、改質層5のない基材1を使用して本発明の透明導電性積層体(本発明の第3実施形態)を形成するとき、透明導電性積層体において、透明導電性薄膜4が被覆されていない時の色度(b1)と、被覆された後の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とが、式(1)〜式(3)を満たすようにコントロールするには、第1の薄膜2の光学膜厚が20nm以上、29nm以下、第2の薄膜3の光学膜厚が60nm以上、90nm以下の範囲内で行えばよい。特に、第1の薄膜2の光学膜厚が22nm以上、28nm以下、第2の薄膜3の光学膜厚が60nm以上、80nm以下との範囲内で行うことがより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述のように、本発明は、2層の薄膜2、3それぞれの光学膜厚が上記式(1)〜式(3)を満たすようにコントロールしながら透明導電性積層体を形成するので、作製された透明導電性積層体は、肉眼では黄色みが確認できないと共に透過率が非常に高く、且つ透明導電性薄膜におけるパターンも見えず、均一的に見える。従って、本発明の透明導電性積層体及びその色度均一性改善法によれば、表示品質が従来より優れたタッチパネルを提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…基材、2…第1の薄膜、3…第2の薄膜、4…透明導電性薄膜、41…被覆領域、42…非被覆領域、5…改質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面上に、前記基材の側から第1の薄膜、第2の薄膜及び透明導電性薄膜が順に形成されている透明導電性積層体において、
前記第2の薄膜は、前記第1の薄膜より低い屈折率を有し、
前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とは、下記式(1)〜式(3):
式(1) b1 < 1.15
式(2) b2 < 1.15
式(3) Δb=|b1−b2| < 0.35
を満たすことを特徴とする透明導電性積層体。
【請求項2】
基材の一面上に、前記基材の側から第1の薄膜、第2の薄膜及び透明導電性薄膜が順に形成されており、前記基材の前記一面上又は他面上に改質層が形成されている透明導電性積層体において、
前記第1の薄膜は、光学膜厚が11nm以上、16nm以下であり、
前記第2の薄膜は、光学膜厚が60nm以上、90nm以下であると共に屈折率が前記第1の薄膜の屈折率より低く、
前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とは、下記式(1)〜式(3):
式(1) b1 < 1.15
式(2) b2 < 1.15
式(3) Δb=|b1−b2| < 0.35
を満たすことを特徴とする透明導電性積層体。
【請求項3】
基材の一面上に、前記基材の側から第1の薄膜、第2の薄膜及び透明導電性薄膜が順に形成されている透明導電性積層体において、
前記第1の薄膜は、光学膜厚が20nm以上、29nm以下であり、
前記第2の薄膜は、光学膜厚が60nm以上、90nm以下であると共に屈折率が前記第1の薄膜の屈折率より低く、
前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とは、下記式(1)〜式(3):
式(1) b1 < 1.15
式(2) b2 < 1.15
式(3) Δb=|b1−b2| < 0.35
を満たすことを特徴とする透明導電性積層体。
【請求項4】
前記改質層は、前記基材の他面上に形成されており、且つ、硬度の高い反応性硬化樹脂からなっている表面保護層であることを特徴とする請求項2に記載の透明導電性積層体。
【請求項5】
前記第1の薄膜の光学膜厚は、12nm以上、15nm以下であることを特徴とする請求項2または請求項4に記載の透明導電性積層体。
【請求項6】
前記第1の薄膜の光学膜厚は、22nm以上、28nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の透明導電性積層体。
【請求項7】
前記第2の薄膜の光学膜厚は、60nm以上、80nm以下であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の透明導電性積層体。
【請求項8】
前記透明導電性薄膜は、インジウム錫酸化物(ITO)からなっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明導電性積層体。
【請求項9】
基材の一面上に、前記基材の側から第1の薄膜、第2の薄膜及び透明導電性薄膜を順に積層して透明導電性積層体を形成する方法における透明導電性積層体の色度均一性改善法であって、
前記第2の薄膜として、屈折率が前記第1の薄膜よりも低いものを使用し、 前記第1及び第2の薄膜のそれぞれ光学膜厚を、前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とが、下記式(1)〜式(3):
式(1) b1 < 1.15
式(2) b2 < 1.15
式(3) Δb=|b1−b2| < 0.35
を満たすようにコントロールすることを特徴とする、透明導電性積層体の色度均一性改善法。
【請求項10】
前記基材の他面上に改質層を積層し、
前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とのコントロールを、前記第1の薄膜の光学膜厚が11nm以上、16nm以下、前記第2の薄膜の光学膜厚が60nm以上、90nm以下との範囲内で行うことを特徴とする、請求項9に記載の透明導電性積層体の色度均一性改善法。
【請求項11】
前記透明導電性積層体において、前記透明導電性薄膜が形成されていない部分の色度(b1)と、前記透明導電性薄膜が形成されている部分の色度(b2)と、該二つの色度の間の色度差(Δb)とのコントロールを、前記第1の薄膜の光学膜厚が20nm以上、29nm以下、前記第2の薄膜の光学膜厚が60nm以上、90nm以下との範囲内で行うことを特徴とする、請求項9に記載の透明導電性積層体の色度均一性改善法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−37258(P2011−37258A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94087(P2010−94087)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(505283935)迎輝科技股▲分▼有限公司 (6)
【Fターム(参考)】