説明

透明導電膜、その形成方法および有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】高温、高湿度環境下においても、導電性の劣化が少なく、かつ膜剥がれが抑えられた透明導電膜、及び透明導電膜を用いた、発光寿命に優れ、高温保存時の輝度低下が抑えられた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】基材3上にパターン状に形成された金属材料からなる第1導電層1と、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する第2導電層を2有し、該バインダー樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理した事を特徴とする透明導電膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、太陽電池、電磁波シールド、電子ペーパー、タッチパネル等の各種分野において好適に用いることができる透明導電膜、さらに該透明導電膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以後、有機EL素子ともいう)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型テレビの需要の高まりに伴い、液晶・プラズマ・有機エレクトロルミネッセンス・フィールドエミッション等、各種方式のディスプレイ技術が開発されている。これら表示方式の異なる何れのディスプレイにおいても、透明電極は必須の構成技術となっている。又、テレビ以外でも、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子においても、透明電極は欠くことの出来ない技術要素となっている。
【0003】
従来透明電極は、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基材上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が主に使用されてきた。しかし、ITOに用いられているインジウムはレアメタルであり、且つ価格の高騰により、脱インジウムが望まれている。又、ディスプレイの大画面化、生産性向上に伴い、フレキシブル性のある基材を用いたロールtoロールの生産技術が所望されている。
【0004】
近年、このような大面積かつ低抵抗値が要求される製品にも対応できるよう、パターン状に形成された金属細線に導電性ポリマー等の透明導電性の膜を積層し、電流の面均一性と高い導電性を併せ持つ透明導電膜が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
しかしながら、このような構成では、有機電子デバイスのリークの原因となる金属細線の凹凸を、導電性ポリマー等の透明導電膜でなだらかにする必要があり、導電性ポリマーの厚膜化が必須となる。しかし、導電性ポリマーは可視光領域に吸収を有するため、厚膜化すると、透明電極の透明性が著しく低下してしまうという課題を有していた。
【0006】
透明性と導電性を両立する技術として、導電性ポリマーと相溶する高分子として、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルピリジン)とポリ(酢酸ビニル)とのコポリマー(PVPy−VAc)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)とポリ(メタクリル酸)とのコポリマー(PHEA−MAA)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルブチラール(PVB)とからなる群から選択されたポリマー又はコポリマーが開示されている(例えば、特許文献3)。
【0007】
しかしながら、この技術は、有機導電層の膜強度不足のため、蒸着やスピンコートによる積層を行なった場合膜表面が乱れ、有機電子デバイスを作製するとリークが発生するという課題や、450℃でベーク処理が必要で、基体の種類が限定され、汎用性がないという課題を有していた。
【0008】
また、透明性と平滑性を両立する技術として、導電性繊維と導電性ポリマーと水溶性バインダー樹脂の混合物からなる透明電極が開示されている(例えば、特許文献4)。水溶性バインダーとして、2−ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられている。
【0009】
しかしながら、この技術は、より厳しい高温高湿下保存において、表面抵抗の上昇や膜剥がれの課題、この透明電極を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、輝度の低下や、寿命低下の課題を有していた。
【0010】
これは、高温環境下での保存時に、水溶性バインダー樹脂に含まれるヒドロキシ基が架橋反応して水分が発生し、有機エレクトロルミネッセンス素子の性能劣化を引き起こしているためと推定している。
【0011】
導電性ポリマー等の透明導電膜を用いる場合、その透明導電膜中に水分が残留していると、有機電子デバイスの性能を劣化させることが知られており、透明導電膜中の水分除去が必須となる。しかし、透明基板についてフレキシブル性やコスト面から透明フィルムが用いられることが多くなってきている近年において、導電性ポリマー等の透明導電膜をフィルムが変形しないガラス転移温度Tg以下の低温で乾燥する事が必須である。
【0012】
比較的低い乾燥温度においても透明導電膜中に水分が残留することが無く、透明導電膜の形成に適したバインダーであって、且つ、高温、高湿環境下においても、導電性の劣化が少なく優れた導電膜を形成することが可能な導電膜形成方法が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−302508号公報
【特許文献2】特開2009−87843号公報
【特許文献3】特許3716167号公報
【特許文献4】特開2010−244747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高温、高湿度環境下においても、導電性の劣化が少なく、かつ膜剥がれが抑えられた透明導電膜、その形成方法及び透明導電膜を用いた、発光寿命に優れ、高温保存時の輝度低下が抑えられた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0016】
1.基材上にパターン状に形成された金属材料からなる第1導電層と、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する第2導電層を有し、該バインダー樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理したことを特徴とする透明導電膜。
【0017】
2.前記バインダー樹脂のヒドロキシ基を無置換または置換のカルボン酸、またはスルホン酸ハライドでエステル化処理したことを特徴とする前記1に記載の透明導電膜。
【0018】
3.前記カルボン酸が低級カルボン酸であることを特徴とする前記2に記載の透明導電膜。
【0019】
4.前記ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する樹脂であることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の透明導電膜。
【0020】
【化1】

【0021】
〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子または置換或いは無置換のアルキル基を表し、Aは置換或いは無置換アルキレン基、−(CHCHRbO)−(CHCHRb)−を表し、Rbは水素原子またはアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数で1〜100の数である。〕
5.前記1〜4の何れか1項に記載の透明導電膜を形成する透明導電膜の形成方法において、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する分散液中に無置換または置換のカルボン酸及び脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを添加し、塗布、乾燥することによりエステル化処理することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【0022】
6.前記1〜4の何れか1項に記載の透明導電膜を形成する透明導電膜の形成方法において、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する分散液を用いて皮膜を形成した後、該被膜上を、無置換または置換のカルボン酸及び脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを含有する処理液に浸漬することによりエステル化処理することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【0023】
7.前記1〜4の何れか1項に記載の透明導電膜を形成する透明導電膜の形成方法において、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する分散液を用いて塗布し、皮膜を形成した後、該被膜上に、無置換または置換のカルボン酸及び脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを含有する塗布液を塗布することによりエステル化処理することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【0024】
8.前記1〜4の何れか1項に記載の透明導電膜を具備することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
これまで透明導電膜塗布液としては、ポリチオフェンポリスチレンスルホネート等の水分散性導電性ポリマーとバインダー樹脂を含有する組成物が開発されてきた。ここにおいて、バインダー樹脂としては水分散性導電性ポリマーとの相溶性の観点から、ヒドロキシ基を有する親水性のバインダー樹脂が検討されてきた。しかし、透明基板としてフレキシブル性の要求が高まり、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを使用すると、フィルムが変形しないガラス転移温度Tg以下の低温で乾燥する必要がある。
【0026】
その結果、親水性バインダーの影響で膜中からの水分除去が困難となり、これらの透明導電膜を用いた素子性能を著しく劣化させていた。
【0027】
これらの現象を改良すべく鋭意検討した結果、
基材上にパターン状に形成された金属材料からなる第1導電層と、
導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する第2導電層を有し、該バインダー樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理することにより、
高温、高湿度環境下においても、導電性の劣化が少なく、かつ膜剥がれが抑えられた透明電極、及び該透明電極を用いた発光寿命に優れ、輝度低下が抑えられた有機エレクトロルミネッセンス素子が得られることを見出したものである。
【0028】
理由としては定かではないが、バインダー樹脂に含まれるヒドロキシ基は加熱による乾燥で、架橋構造を形成すると推定している。
【0029】
しかし、乾燥温度を低温にすると、架橋構造を形成しにくくなるため、乾燥後に未架橋のヒドロキシ基の残存量が増加する。このような透明導電膜を用いた素子を高温、高湿度環境下に保存すると残存するヒドロキシ基が架橋構造を形成して水分が発生するため、素子性能を著しく劣化させると推定している。
【0030】
これらの現象を改良すべく鋭意検討した結果、バインダー樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理することにより、ヒドロキシ基の残存量を減らすことで、高温、高湿度環境下においても、導電性の劣化が少なく、かつ膜剥がれが抑えられた透明電極、及び該透明電極を用いた発光寿命に優れ、輝度低下が抑えられた有機エレクトロルミネッセンス素子が得られることを見出したものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、高温、高湿度環境下においても導電性の劣化が少なく、かつ膜剥がれが抑えられた透明導電膜、及び透明導電膜を用いた、発光寿命に優れ、高温保存時の輝度低下が抑えられた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の透明導電膜の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0034】
これまで透明導電膜塗布液としては、導電性と透過率を両立させるために3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンポリスルホネート(PEDOT/PSS)等の水分散性導電性ポリマーと水溶性バインダーを含有する組成物が開発されてきた。ここにおいて、水溶性ポリマーとしては水分散性導電性ポリマーとの相溶性の観点から、水溶性のバインダーが検討されてきた。しかし、透明基板としてフレキシブル性の要求が高まり、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを使用する場合、フィルム変形を避けるとの観点から乾燥温度がガラス基板よりも低温となる。その結果、水溶性バインダーの影響で膜中からの水分除去、水分の発生原因となる未架橋のヒドロキシ基の低減が困難になり、これらの透明導電膜を用いた素子性能を著しく劣化させていた。これらの現象を改良すべく鋭意検討した結果、基材上にパターン状に形成された金属材料からなる第1導電層と、導電性ポリマーとバインダー樹脂を含有する第2導電層とを有し、該バインダー樹脂がヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂を無置換または置換の低級カルボン酸、またはスルホン酸ハライドでエステル化処理されたものである事により、汎用性の基体を使用し、高温、高湿度環境下においても導電性の劣化が少なく、かつ膜剥がれが抑えられた透明電極、及び該透明電極を用いた発光寿命に優れ、輝度低下が抑えられた有機エレクトロルミネッセンス素子が得られることを見出したものである。
【0035】
以下、本発明を実施するための形態について更に詳細に説明する。
【0036】
本発明の透明導電膜の構成の一例を図解した概略図を示すと図1の如くである。
【0037】
図1において、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A′線断面図を表す。1はパターン状に形成された金属材料からなる第1導電層、2は導電性ポリマーを含有する第2導電層、3は基材を示す。第1導電層と第2導電層は接していることが好ましい。
【0038】
《第2導電層》
第2導電層には導電性ポリマーとバインダー樹脂を少なくとも含有し、該バインダー樹脂がヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂を、エステル化処理したものである。
【0039】
〈ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂〉
本発明に係るヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂は導電性ポリマーとの相溶性が良好であるため水溶性の樹脂であることが好ましい。25℃の水100gに0.001g程度溶解する樹脂であってもよく、0.1g以上の溶解性のあることが好ましい。水への溶解性の程度は、ヘイズメーター、濁度計で測定することができる。
【0040】
本発明に係るヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂としては透明であることが好ましく、具体的には前記一般式(I)で表される構造単位を有する樹脂を含有することが好ましい。
【0041】
前記一般式(I)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、Aは置換もしくは無置換アルキレン基、または−(CHCHRbO)−(CHCHRb)−を表し、Rbは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。xは平均繰り返しユニット数で1〜100の数である。
【0042】
Ra、Rbで表されるアルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、あるいは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は置換基で置換されていてもよい。
【0043】
これら置換基の例としては、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等で置換されてもよい。これらのうち好ましくは、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基である。
【0044】
上記シクロアルキル基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましく、3〜8であることがさらに好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が含まれる。
【0045】
上記アルコキシ基は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基が含まれ、好ましくはエトキシ基である。
【0046】
上記アルキルチオ基の炭素数は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が含まれる。
【0047】
上記アリールチオ基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールチオ基の例にはフェニルチオ基及びナフチルチオ基等が含まれる。
【0048】
上記シクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜8である。シクロアルコキシ基の例には、シクロプロポキシ基、シクロブチロキシ基、シクロペンチロキシ基及びシクロヘキシロキシ基が含まれる。
【0049】
上記アリール基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例にはフェニル基及びナフチル基が含まれる。
【0050】
上記アリールオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の例にはフェノキシ基及びナフトキシ基が含まれる。
【0051】
上記ヘテロシクロアルキル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましく、3〜5であることがさらに好ましい。ヘテロシクロアルキル基の例にはピペリジノ基、ジオキサニル基及び2−モルホリニル基が含まれる。
【0052】
上記ヘテロアリール基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜10であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基の例にはチエニル基、ピリジル基が含まれる。
【0053】
上記アシル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アシル基の例にはホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
【0054】
上記アルキルカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルカルボンアミド基の例にはアセトアミド基等が含まれる。
【0055】
上記アリールカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アリールカルボンアミド基の例にはベンズアミド基等が含まれる。
【0056】
上記アルキルスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例にはメタンスルホンアミド基等が含まれる。
【0057】
上記アリールスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホンアミド基の例には、ベンゼンスルホンアミド基及びp−トルエンスルホンアミドが基含まれる。
【0058】
上記アラルキル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例にはベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が含まれる。
【0059】
上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例にはメトキシカルボニル基が含まれる。
【0060】
上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例にはフェノキシカルボニル基が含まれる。
【0061】
上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例にはベンジルオキシカルボニル基が含まれる。
【0062】
上記アシルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例にはアセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0063】
上記アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例に、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基が含まれる。
【0064】
上記アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例にはエチニル基が含まれる。
【0065】
上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニル基の例に、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が含まれる。
【0066】
上記アリールスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニル基の例に、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基が含まれる。
【0067】
上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は1〜20あることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルオキシスルホニル基の例に、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基が含まれる。
【0068】
上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシスルホニル基の例に、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基が含まれる。
【0069】
上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニルオキシ基の例に、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基が含まれる。
【0070】
上記アリールスルホニルオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニルオキシ基の例に、フェニルスルホニルオキシ基、ナフチルスルホニルオキシ基が含まれる。置換基は同一でも異なっていても良く、これら置換基がさらに置換されてもよい。
【0071】
一般式(I)において、Aは置換あるいは無置換アルキレン基、−(CHCHRbO)−(CHCHRb)−を表すが、アルキレン基は、例えば炭素原子数1〜5が好ましく、より好ましくはエチレン基、プロピレン基である。これらのアルキレン基は前述した置換基で置換されていてもよい。また、Rbは水素原子、アルキル基を表す。また、これらのアルキル基は前述の置換基で置換されていてもよい。さらに、「x」は平均繰り返しユニット数を表し、1〜100が好ましく、より好ましくは1〜10である。繰り返しユニット数は分布を有しており、表記は平均値を示し、小数点以下1桁で表記してもよい。
【0072】
一般式(I)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
【0073】
以下に、一般式(I)で表される一般式の代表的具体例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0074】
【化2】

【0075】
本発明に係る水溶性バインダーは、エステル化処理前に、一般式(I)で表される構造単位以外に構造単位を含有していてもよい。
【0076】
本発明に係る水溶性バインダーにおいて、エステル化処理前の一般式(I)で表されるヒドロキシル基を有する構造単位のモル比は50〜100%が好ましく、より好ましくは、70〜100%である。
【0077】
水溶性バインダーは一般式(I)で表わされる単独のモノマーから形成されたホモポリマーであっても良く、その共重合ポリマーであってもよい。
【0078】
本発明のヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂は汎用的な重合触媒を用いたラジカル重合により得ることができる。重合様式としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられ、好ましくは溶液重合である。重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
【0079】
本発明のヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂の分子量は3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。
【0080】
本発明のヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行なうことができる。使用する溶媒は、ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂が溶解すれば特に限りはなく、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、CHClが好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。
【0081】
<ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂のヒドロキシ基のエステル化処理>
本発明のバインダー樹脂はヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理したものである。
【0082】
理由としては定かではないが、バインダー樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理により、ヒドロキシ基の残存量を減らすことで、保存性劣化の原因となる水分の発生が減り、発光寿命に優れ、高温保存時の輝度低下が抑えられた有機エレクトロルミネッセンス素子が得られたと推定している。
【0083】
エステル化処理のタイミングは特に限定はないが、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する分散液の状態で処理する、分散液の塗布後に処理する、分散液の塗布乾燥後に処理する、等が挙げられる。
【0084】
ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂のヒドロキシ基のエステル化処理する方法に、特に限定はなく、例えば、無置換または置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドによるエステル化処理が挙げられる。
【0085】
例えば、下記のような処理方法が挙げられる。
【0086】
(1)導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する分散液に、無置換または置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを添加し、分散液を加熱することで樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理する方法。
【0087】
(2)置換または無置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドに導電膜を浸漬し、加熱することで樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理する方法。
【0088】
(3)無置換または置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを導電膜に塗布し、加熱することで樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理する方法。
【0089】
無置換または置換のカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、安息香酸、フルオロ酢酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸などのハロゲン酢酸、2−又は3−フルオロプロピオン酸、2−又は3−クロロプロピオン酸、2−又は3−ブロモプロピオン酸などのハロゲンプロピオン酸等が挙げられる。好ましくは、酢酸である。
【0090】
スルホン酸ハライドとしては、メタンスルホン酸クロライド、エタンスルホン酸クロライド、トリフルオロメタンスルホン酸クロライド、p−トルエンスルホン酸クロライド、o−トルエンスルホン酸クロライド、2−(1−ナフチル)エタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホン酸ブロミド等が挙げられる。好ましくは、芳香族スルホン酸ハライドである。
【0091】
無置換または置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドの量は、ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂のヒドロキシ基がエステル化処理でき、分散液に凝集物が発生したり、基材や導電層が損傷しない範囲で適宜設定することが好ましい。
【0092】
また、エステル化処理の別の方法として、酸無水物を用いる方法も挙げられる。
【0093】
酸無水物としては、カルボン酸無水物が好ましく、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸、トリクロロ酢酸無水物、ジクロロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、ブロモ酢酸無水物、ビス(ヨード酢酸)無水物等が挙げられる。
【0094】
(1)の方法において、無置換または置換のカルボン酸またはスルホン酸ハライドの量は、第2導電層のヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂に含まれるヒドロキシ基量に対して、モル比で0.1〜10倍添加する事が好ましく、より好ましくは、0.5〜5倍である。量が少なすぎるとエステル化処理が不十分となり、逆に多すぎると、分散液に凝集物が発生し、基材表面の平面性が劣化して、有機電子デバイスのリークの原因となる場合がある。
【0095】
(2)、(3)の方法において、無置換または置換のカルボン酸、またはスルホン酸ハライドの量は、第2導電層のヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂に含まれるヒドロキシ基量に対して、モル比で0.1〜100000倍で処理する事が好ましく、より好ましくは、100〜50000倍である。量が少なすぎるとエステル化処理が不十分となり、逆に多すぎると、基材表面の平面性が劣化して、有機電子デバイスのリークの原因となる場合がある。
【0096】
(1)の方法においては分散液中、(2)、(3)の方法においては、無置換または置換のカルボン酸に、脱水縮合剤を添加する。
【0097】
例えば、水溶性のものが好ましく、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルフォリニウム クロライド(DMT−MM)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DAMP)等があげられる。好ましくは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルフォリニウム クロライド(DMT−MM)である。
【0098】
脱水縮合剤の量は、第2導電層のヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂に含まれるヒドロキシ基量に対して、(1)の方法において、モル比で0.1〜10倍で処理する事が好ましく、より好ましくは、0.5〜5倍である。
【0099】
(2)、(3)の方法において、モル比で0.1〜100倍で処理する事が好ましく、より好ましくは、0.5〜50倍である。
【0100】
加熱温度は、(1)の方法において、樹脂のヒドロキシ基がエステル化でき、導電性ポリマー、バインダー樹脂、無置換または置換の低級カルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドが、分解、凝集が発生しない範囲で、適宜設定することが好ましい。好ましくは、40℃〜90℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜80℃である。
【0101】
(2)、(3)の方法において、ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂のヒドロキシ基がエステル化でき無置換または置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドの分解や揮発、基材や導電層が損傷しない範囲で、適宜設定することが好ましい。好ましくは、40℃〜180℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜120℃である。
【0102】
(2)、(3)の方法において、無置換または置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドは、溶媒で希釈しても良い。溶剤として特に限定はないが、基材や導電層が損傷せず、無置換または置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを溶解する溶媒が好ましく、例えば、水、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のようなハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等があげられる。好ましくは、水である。
【0103】
(1)〜(3)の方法において、加熱時間は、ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂のヒドロキシ基がエステル化でき、基材や導電層が損傷しない範囲で、適宜設定することが好ましい。エステル化処理の時間は、1分以上であることがより好ましい。時間の上限は特にないが、生産性を考えると300分以下であることが好ましく、180分以下であることがより好ましい。
【0104】
エステル化処理後、未反応の無置換または置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドや、塩酸等の反応残渣物を除去する事が好ましく、除去方法としては、導電膜の減圧乾燥や、基材や導電層が損傷せず、無置換または置換のカルボン酸、脱水縮合剤、スルホン酸ハライドおよび反応残渣物を溶解する溶媒を用いて、洗浄処理をおこなってもよい。
【0105】
エステル化処理が効率良くできる点から、(1)の方法で行う事が好ましい。
【0106】
(3)の方法において、無置換または置換のカルボン酸と脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを、導電膜に塗布する方法としては、後述する第2導電層の塗布で挙げたような塗布法が挙げられる。
【0107】
樹脂中に残存するヒドロキシ基の比率は、例えば次の方法によって測定することができる。
【0108】
透明導電膜を窒素ラインと3方コックを設置した500mlの3頭セパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内を減圧して窒素封入する作業を3回繰り返して、内部の窒素置換を行い、次に、セパラブルフラスコの3方コックより窒素をフローしながら、長い針を有するシリンジにて無水トリフルオロ酢酸を2ml添加し、60分間静置して樹脂中のヒドロキシ基にトリフルオロ酢酸を置換させ、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)により、フッ素元素比率の測定を行うことにより、導電膜中のヒドロキシ基量を把握することができる。
【0109】
導電膜の乾燥処理後に、エステル化処理行った場合あるいは行っていない場合のフッ素元素比率((イ)とする)と、導電膜の塗布を行っただけの場合のフッ素元素比率(ロ)より、下記の式より、得られた導電膜の残存するヒドロキシ基比率を、求めることができる。
【0110】
(式1) 残存するヒドロキシ基比率(%)=(イ)/(ロ)×100
好ましくは、残存するヒドロキシ基比率が35〜0%であり、さらに好ましくは25%以上がエステル化処理されている事である。
【0111】
〈導電性ポリマー〉
本発明では、第2導電層は導電性ポリマーを含有する。
【0112】
本発明に係る導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを有してなる導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
【0113】
(π共役系導電性高分子)
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンが最も好ましい。
【0114】
(π共役系導電性高分子前駆体モノマー)
π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0115】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0116】
(ポリ陰イオン)
本発明に用いられるポリ陰イオンは、置換もしくは未置換のポリアルキレン、置換もしくは未置換のポリアルケニレン、置換もしくは未置換のポリイミド、置換もしくは未置換のポリアミド、置換もしくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものが好ましい。
【0117】
このポリ陰イオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリ陰イオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0118】
ポリ陰イオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0119】
ポリ陰イオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0120】
また、化合物内にさらにF(フッ素原子)を有するポリ陰イオンであってもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることができる。
【0121】
これらのうち、スルホン酸を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、マイクロ波を照射する前に100〜120℃で5分以上の加熱乾燥処理を施してもよい。これにより架橋反応が促進するため、塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、好ましい。
【0122】
さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリ陰イオンは、ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂との相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
【0123】
ポリ陰イオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0124】
ポリ陰イオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有しないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0125】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/または重合触媒の存在下で、酸化重合またはラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/または重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
【0126】
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0127】
得られたポリマーがポリ陰イオン塩である場合には、ポリ陰イオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0128】
導電性ポリマーに含まれるπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンの比率、「π共役系導電性高分子」:「ポリ陰イオン」は質量比で1:1〜20が好ましい。導電性、分散性の観点からより好ましくは1:2〜10の範囲である。
【0129】
π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーをポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合して、本発明に係る導電性ポリマーを得る際に使用される酸化剤は、例えばJ.Am.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適する、いずれかの酸化剤である。実際的な理由のために、安価でかつ取扱い易い酸化剤、例えば鉄(III)塩、例えばFeCl、Fe(ClO、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩、または過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)またはアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム及び銅塩例えば四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン及びバナジウムイオンの存在下における空気及び酸素も使用することができる。過硫酸塩並びに有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。
【0130】
有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例としては炭素数1〜20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸;炭素数1〜20のアルキルスルホン酸、例えばメタンまたはドデカンスルホン酸;脂肪族炭素数1〜20のカルボン酸、例えば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族パーフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸及びパーフルオロオクタノン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸並びに殊に芳香族の、随時炭素数1〜20のアルキル置換されたスルホン酸、例えばベンゼセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩が挙げられる。
【0131】
こうした導電性ポリマーは、市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
【0132】
第2ドーパントとして有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。前記ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、等が挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0133】
第2導電層は、後述するパターン形成された第1導電層を完全に被覆してもよいし、一部を被覆または接触してもよい。第2導電層は導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂からなる分散液を塗布、乾燥して膜形成する。第2導電層の塗布は、後述のグラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。
【0134】
また、第1導電層の一部を第2導電層が被覆または接触している透明導電膜を作製する手段としては、転写フィルムに第1導電層を後述する方法で形成し、さらに第2導電層を上述の方法で積層したしたものを、基板に転写する方法が挙げられる。また、第1導電層の非導電部にインクジェット法等で公知の方法で、第2導電層を形成する方法等が挙げられる。
【0135】
第2導電層の導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂との比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂が30〜900質量部であることが好ましく、電流リーク防止ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂の導電性増強効果、透明性の観点から、ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂が100質量部以上であることがより好ましい。
【0136】
第2導電層の乾燥膜厚は30〜2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、電極の表面平滑性の点から、200nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
【0137】
第2導電層を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電層が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80〜250℃で10秒から10分程度の乾燥処理をすることが好ましい。これにより電極の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上し、さらに素子性能が向上する。特に、有機EL素子においては、駆動電圧の低減、寿命の向上といった効果が得られる。
【0138】
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。さらに、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0139】
《第1導電層》
本発明に係る第1導電層は、基材上に金属材料をパターン状に形成することを特徴とする。これにより金属材料からなる光不透過の導電部と透光性窓部を併せ持つ基板となり、透明性、導電性に優れた電極基板が作製できる。金属材料は、導電性に優れていれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属の他に合金でもよい。特に、後述のようにパターンの形成のしやすさの観点から金属材料の形状は、金属微粒子または金属ナノワイヤであることが好ましく、金属材料は導電性の観点から銀であることが好ましい。
【0140】
パターン形状には特に制限はないが、例えば、導電部がストライプ状、メッシュ状あるいはランダムな網目状であってもよいが、開口率は透明性の観点から80%以上であることが好ましい。開口率とは、光不透過の導電部が全体に占める割合である。例えば、導電部がストライプ状あるいはメッシュ状であるとき、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状パターンの開口率は、およそ90%である。パターンの線幅は10〜200μmが好ましい。細線の線幅が10μm未満では、所望の導電性が得られず、また200μmを超えると透明性が低下する。細線の高さは、0.1〜10μmが好ましい。細線の高さが0.1μm未満では、所望の導電性が得られず、また10μmを超えると有機電子デバイスの形成において、電流リークや機能層の膜厚し分布不良の要因となる。
【0141】
導電部がストライプ状またはメッシュ状の電極を形成する方法としては、特に、制限はなく、従来公知な方法が利用できる。例えば、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成できる。具体的には、基材上に全面に、印刷、蒸着、スパッタ、めっき等の1あるいは2以上の物理的または化学的形成手法を用いて導電体層を形成する、あるいは、金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状あるいはメッシュ状に加工できる。
【0142】
別な方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷により所望の形状に印刷する方法や、メッキ可能な触媒インクをグラビア印刷、あるいは、インクジェット方式で所望の形状に塗布した後、メッキ処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の[0076]−[0112]、及び実施例を参考にして実施できる。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施できる。
【0143】
ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載のような、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用できる。
【0144】
別な方法としては、例えば、特表2009−505358号公報に記載のような、金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布乾燥することで、金属ナノワイヤのランダムな網目構造を形成させる方法を利用できる。
【0145】
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。
【0146】
金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。金属ナノワイヤの平均短径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。金属ナノワイヤの目付け量は0.005〜0.5g/mが好ましく、0.01〜0.2g/mがより好ましい。
【0147】
金属ナノワイヤに用いられる金属としては、銅、鉄、コバルト、金、銀等を用いることができるが、導電性の観点から銀が好ましい。また、金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
【0148】
金属ナノワイヤの製造方法には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837、Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、好ましく適用することができる。
【0149】
また、第1導電層の細線部の表面比抵抗は、100Ω/□以下であることが好ましく、大面積化するには20Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0150】
また、第1導電層はフィルム基板にダメージを与えない範囲で加熱処理を施すことが好ましい。これにより、金属微粒子や金属ナノワイヤ同士の融着が進み、第1導電層の高導電化するため、特に好ましい。
【0151】
《基材》
本発明では、基材として、フィルム基板、ガラス基板などを用いることができる。本発明の透明導電膜に用いられるフィルム基材は、高い光透明性を有し、フレキシブル性に優れており、誘電損失係数が十分小さくて、マイクロ波の吸収が加熱対象である導電層よりも小さい材質であれば特に制限はない。例えば、樹脂基板、樹脂フィルム等が好適に挙げられるが、生産性の観点や軽量性と柔軟性といった性能の観点から透明樹脂フィルムを用いることができる。
【0152】
本発明において、「透明」とは、JIS K 7361−1(ISO 13468−1に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が50%以上であることをいう。好ましくは全光線透過率が80%以上である。
【0153】
透明樹脂フィルムであれば、外力による変形や衝撃に強く、割れにくい。好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に用いられるフィルム基板として好ましく用いられる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムがより好ましい。
【0154】
本発明に用いられるフィルム基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については、従来公知の技術を使用できる。
【0155】
例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0156】
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0157】
また、フィルム基板の表面または裏面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定した水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定した酸素透過度が、1×10−3ml/m・24h・atm以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0158】
本発明に用いることのできるガラス基板には特に限定は無い。中では無アルカリガラスが好ましく用いられる。
【0159】
その他、ロールトゥロールでの生産適性、有機エレクトロルミネッセンス素子用の透明導電膜に供した際の素子のフレキシビリティ等の観点からは、厚さが10〜200μmの薄膜ガラスを用いることが好ましい。更にガラス基板の厚さは50〜120μmであることが破損のしにくさ、ロール搬送の容易さの観点から望ましい。具体的には特開2010−132532号公報にガラスフィルムとして記載あるような薄膜ガラスを用いることができる。
【0160】
(平滑層)
本発明の透明導電膜は、中間層として平滑層を有してもよい。本発明に用いられる平滑層は、突起等が存在する基材の粗面を平坦化し、あるいは、基材に存在する突起により塗布層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、熱硬化性樹脂や感光性樹脂を硬化させて作製されることが好ましい。
【0161】
平滑層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
【0162】
高バリア性フィルムとするためにフィルム基板の表面または裏面に形成されるバリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0163】
《有機エレクトロルミネッセンス素子》
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、本発明の透明導電膜を有することを特徴とする。
【0164】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機発光層を含む有機層および本発明の透明導電膜を有する。
【0165】
本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子は、本発明の透明導電膜を陽極として用いることが好ましく、有機発光層、陰極については有機エレクトロルミネッセンス素子に一般的に使われている材料、構成等の任意のものを用いることができる。
【0166】
有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構成としては、陽極/有機発光層/陰極、陽極/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子注入層/陰極、等の各種の構成のものを挙げることができる。
【0167】
また、本発明において有機発光層に使用できる発光材料またはドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、および各種蛍光色素および希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。
【0168】
有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写などの方法が挙げられる。この有機発光層の厚みは0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
【0169】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、自発光型ディスプレイ、液晶用バックライト、照明等に用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、均一にムラなく発光させることができるため、照明用途で用いることが好ましい。
【0170】
本発明の透明導電膜は高い導電性と透明性を併せ持ち、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、電子ペーパー、有機太陽電池、無機太陽電池等の各種オプトエレクトロニクスデバイスや、電磁波シールド、タッチパネル等の分野において好適に用いることができる。その中でも、透明導電膜面の平滑性が厳しく求められる有機エレクトロルミネッセンス素子や有機薄膜太陽電池素子の透明導電膜として特に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0171】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0172】
<ポリマーの合成>
合成例1
(P−1の合成)
200ml三ツ口フラスコにTHF100mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。
【0173】
モノマーとして、I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(10.0g、86mmol、分子量:116.05)、AIBN(1.41g、8.5mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、3000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEK(メチルエチルケトン)をデカンテーション後、100mlのMEKで3回洗浄後、THF(テトラヒドロフラン)でポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量370000、分子量分布2.7、のヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂であるポリマーP−1を8.9g(収率89%)得た。
【0174】
尚、数平均分子量はGPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
【0175】
〈GPC測定条件〉
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414(Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
(P−2の合成)
P−1の合成において、モノマーとしてヒドロキシエチルアクリルアミド(I−19)を用いた。
【0176】
それ以外はP−1の合成と同様の方法により「P−2」を得た。
【0177】
(P−3の合成)
200ml三ツ口フラスコにTHF100mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(4.1g、35mmol、分子量:116.05)、ヒドロキシエチルアクリルアミド(I−19)(1.7g、15mmol、分子量:115.15)、AIBN(0.8g、5mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、3000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、100mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量33700、分子量分布2.4の「P−3」を10.3g(収率90%)得た。
【0178】
(P−4の合成)
下記の合成法に従って得られたモノマーM−1を用いて、ポリマー合成を行い、II−1の構造単位をもつ、数平均分子量35700、分子量分布2.3の樹脂P−4を2.4g(収率80%)得た。
【0179】
【化3】

【0180】
〈モノマー合成〉
200ml三ツ口フラスコに50ml滴下ロート、温度計を取り付け、フラスコ内にI−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(5.0g、43.1mmol、分子量:116.05)、トリエチルアミン(5.23g、51.7mmol、分子量:101.12)、塩化メチレン50mlを加えた。続いて、滴下ロートに酢酸クロリド(4.03g、51.7mmol、分子量:77.99)と塩化メチレン25mlを添加した。フラスコをアイスバスにて冷却し、液温が5℃以下になるのを確認後、酸クロリド溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、5℃以下を保持しながら30分撹拌後、アイスバスを取り除き室温で1時間撹拌した。反応液の不溶物を濾過後、塩化メチレンをロータリーエバポレーターにより減圧留去した。残留固形分をクーゲルロールにより精製することにより、M−1を4.97g(収率73%)得た。
【0181】
〈ポリマー合成〉
100ml三ツ口フラスコにTHF50mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。M−1(3.1g、19.0mmol、分子量:158.06)、AIBN(0.31g、1.9mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、1000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、100mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量35700、分子量分布2.3の樹脂P−4を2.55g(収率85%)得た。
【0182】
〈フィルム基板の作製〉
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績株式会社製)の下引き加工していない面に、JSR株式会社製UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材:OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の平均膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用して硬化条件1.0J/cmで硬化を行い、平滑層を形成した。
【0183】
次に、上記平滑層を設けた試料を、この上にガスバリア層を以下に示す条件で、形成した。
【0184】
(ガスバリア層塗布液)
パーヒドロポリシラザン(PHPS、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN320)の20質量%ジブチルエーテル溶液をワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が、0.30μmとなるように塗布し、塗布試料を得た。
【0185】
(第1工程;乾燥処理)
得られた塗布試料を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分処理し、乾燥試料を得た。
【0186】
(第2工程;除湿処理)
乾燥試料をさらに温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
【0187】
(改質処理A)
除湿処理を行った試料を下記の条件で改質処理を行い、ガスバリア層を形成した。改質処理時の露点温度は−8℃で実施した。
【0188】
(改質処理装置)
株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガス Xe
稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
【0189】
(改質処理条件)
エキシマ光強度 60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 1mm
ステージ加熱温度 70℃
照射装置内の酸素濃度 1%
エキシマ照射時間 3秒
上記のようにしてガスバリア性を有する透明電極用のフィルム基板を作製した。
【0190】
〈第1導電層の形成〉
上記で得られたガスバリア性を有する透明電極用フィルム基板上のガスバリア層のない面に、以下の方法で第1導電層を形成した。
【0191】
(細線格子)
細線格子(金属材料)については以下に示す、グラビア印刷または銀ナノワイヤにより作製した。
【0192】
(グラビア印刷)
銀ナノ粒子ペースト1(M−Dot SLP:三ツ星ベルト製)をRK Print Coat Instruments Ltd製グラビア印刷試験機K303MULTICOATERを用いて線幅50μm、高さ1.5μm、間隔1.0mmの細線格子を印刷した後、110℃、30分の乾燥処理を行った。
【0193】
(銀ナノワイヤによるランダムな網目構造)
ランダムな網目構造については以下に示すように銀ナノワイヤを用いて作製した。
【0194】
銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/mとなるように、銀ナノワイヤ分散液を、バーコート法を用いて塗布し110℃、5分乾燥加熱し、銀ナノワイヤ基板を作製した。
【0195】
銀ナノワイヤ分散液は、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、洗浄処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
【0196】
実施例1
《透明導電膜の作製》
〈透明導電膜TC−101の作製〉
〈第2導電層の形成〉
ガスバリア性を有する透明導電膜用のフィルム基板上にグラビア印刷にて第1導電層を形成した導電膜上に、下記塗布液Aを80℃180分間加熱後、押し出し法を用いて、乾燥膜厚300nmになるように押し出しヘッドのスリット間隙を調整して塗布し、110℃、5分で加熱乾燥し、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂からなる第2導電層を形成し、得られた導電膜を8×8cmに切り出した。得られた導電膜をオーブンを用いて110℃、5分加熱することで本発明の透明導電膜TC−101を作製した。
【0197】
(塗布液A)
ポリチオフェン:PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製) 1.59g
P−1(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
酢酸 0.036g
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)
0.12g
(透明導電膜TC−102〜114の作製)
透明導電膜TC−101の作製において、塗布液Aの樹脂P−1、酢酸およびその添加量、加熱温度、脱水縮合剤の種類およびその添加量を表1に示すように変更したこと以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−102〜114を作製した。
【0198】
(透明導電膜TC−115の作製)
透明導電膜TC−101の作製において、塗布液Aのポリチオフェンを、ポリアニリンM(固形分濃度6.0%、ティーエーケミカル株式会社製)0.5gに変更したこと以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−115を作製した。
【0199】
(透明導電膜TC−116の作製)
透明導電膜TC−101の作製において、細線格子状の第1導電層を有するフィルム基板に代え、上述したランダムな網目構造の金属導電層を有するフィルム基板の金属導電層上に、塗布液Aを塗布したこと以外は透明導電膜TC−101の作製と同様にして、透明導電膜TC−116を作製した。
【0200】
(比較透明導電膜TC−117〜120の作製)
透明導電膜TC−101の作製において、塗布液Aの樹脂P−1を表1に示すように変更し、酢酸によるエステル化処理を行わなかったこと以外は透明導電膜TC−101の作製と同様にして、比較透明導電膜TC−117〜120を作製した。
【0201】
なお上記作製した透明導電層の透過率は、「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した結果、可視光波長領域における全光線透過率が80%以上であった。
【0202】
表1に、作製した透明導電膜の主な構成と、ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂を置換処理するために用いたカルボン酸またはスルホン酸ハライドを記した。なお、表中、mol%は一般式(I)で表わされる構造単位を有する樹脂の比率を表し、パターン形状は、第1導電層の金属材料のパターンを表し、AgNWは銀ナノワイヤを表す。また、**は使用しなかったことを示す。以下の表でも同様に略記した。
【0203】
【表1】

【0204】
(評価)
作製した各透明導電膜TC−101〜TC−120について、表面抵抗、膜剥がれ、および樹脂中に残存するヒドロキシ基の比率の評価を下記に示す方法により評価した結果を表2に示す。又、高温、高湿度環境下における、導電性の劣化、膜剥がれを評価するため、80℃90%RHの環境下で120時間置く強制劣化試験後の透明導電膜の、表面抵抗及び膜剥がれを同じ方法で評価した結果を表2に示す。
【0205】
(表面抵抗)
導電性の尺度として、JIS K 7194:1994に準拠して、抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗を測定した。
【0206】
表面抵抗は100Ω/□以下であることが好ましく、有機電子デバイスを大面積にするには、30Ω/□以下であることが好ましい。
【0207】
(膜剥がれ)
導電層の膜の強度を、テープ剥離法により評価した。導電層の上に住友スリーエム社製スコッチテープを用いて、指の腹でフィルムに圧着させ、テープの端を持って塗膜面に直角に剥離する操作を10回繰り返し、導電層の脱落を目視観察し、下記基準で評価した。
【0208】
2または3回の圧着/剥離の繰り返しで剥離が見られるが、9割以上のパターンが残っている事が好ましい。
【0209】
◎:5回以上の圧着/剥離を繰り返しても、変化無し
○:4回の圧着/剥離の繰り返しまで、変化無し
△:2または3回の圧着/剥離の繰り返しで剥離が見られるが、9割以上のパターンが残っている
×:2または3回の圧着/剥離の繰り返しで剥離が見られ、残っているパターンが7割以上9割未満
××:2または3回の圧着/剥離の繰り返しで剥離が見られ、残っているパターンが7割未満
(樹脂中に残存するヒドロキシ基の比率の評価)
比較透明導電膜TC−117〜119の作製において、導電膜の塗布後、熱をかけずに自然乾燥させた透明導電膜TC−117(ロ)〜119(ロ)を作製した。
【0210】
作製した各透明導電膜TC−101〜TC−119、TC−117(ロ)〜119(ロ)を、1cm角にカットし、窒素ラインと3方コックを設置した500mlの3頭セパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内を減圧して窒素封入する作業を3回繰り返して、内部の窒素置換を行い、次に、セパラブルフラスコの3方コックより窒素をフローしながら、長い針を有するシリンジにて無水トリフルオロ酢酸を2ml添加し、60分間静置して樹脂中のヒドロキシ基にトリフルオロ酢酸を置換させた導電膜を作製した。
【0211】
XPS表面分析装置は、アルバックファイ製QuanteraSXMを用い、上記の処理を行った導電膜のフッ素元素比率の測定を行って、下記(式1)の(イ)、(ロ)に該当する値を求めた。
【0212】
具体的には、X線アノードにはアルミニウムを用い、モノクロメータを用いて単色化した。
【0213】
X線の出力は25W、加速電圧15kV、エミッション電流1.67mAで測定した。
【0214】
帯電中和のため、中和電子を照射しつつ測定を行った。
【0215】
測定室内の真空度は、5×10−7Paとした。
【0216】
なお、TC−120はヒドロキシ基を含有しないバインダー樹脂を使用しており、ヒドロキシ基測定は不要のため、測定を行っていない。
【0217】
透明導電膜TC−101〜119のフッ素元素比率が(イ)、透明導電膜TC−117(ロ)〜119(ロ)のフッ素元素濃比率が(ロ)に相当する。
【0218】
TC−101〜111およびTC−114〜117については、TC−117(ロ)、TC−112、118については、TC−118(ロ)、TC−113、119については、TC−119(ロ)のフッ素元素比率を用いて、下記の(式1)で残存するヒドロキシ基比率を求めた。
【0219】
(式1) 残存するヒドロキシ基比率(%)=(イ)/(ロ)×100
【0220】
【表2】

【0221】
表2に示した結果から、本発明の透明導電膜TC−101〜TC−116は、比較透明電極TC−117〜TC−120に対して、残存ヒドロキシ基比率が低く、導電性及び膜剥がれに優れると共に、高温、高湿度環境下においても、導電性の劣化が少なく、膜剥がれも少ないことが分かる。本発明の有効性が確認された。
【0222】
また、あらかじめ樹脂のヒドロキシ基にカルボン酸を置換させた構造単位を有するポリマーを使用した比較透明電極TC−120に対して、本発明の透明導電膜TC−101〜TC−116は、導電性及び膜剥がれに優れると共に、高温、高湿度環境下においても、導電性の劣化が少なく、膜剥がれも少ないことが分かる。本発明の有効性が確認された。
【0223】
実施例2
《透明導電膜の作製》
〈透明導電膜TC−201の作製〉
〈第2導電層の形成〉
実施例1の透明導電膜TC−101の作製において、第1導電層上に、下記塗布液Bを、押し出し法を用いて、乾燥膜厚300nmになるように押し出しヘッドのスリット間隙を調整して塗布を行って第2導電層を形成した以外は、透明導電膜TC−101の作製と同様な方法で、透明導電膜を作製した。
【0224】
(塗布液B)
ポリチオフェン:PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製) 1.59g
P−1(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
【0225】
【表3】

【0226】
表3に示したようにヒドロキシ基のモル量の50000倍量の酢酸及び脱水縮合剤の存在下に、100℃180分間浸漬してヒドロキシ基のエステル化処理を行い、次いで、透明導電膜を取りだし、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、常温で減圧乾燥を1時間行って、本発明の透明導電膜TC−201を作製した。
【0227】
〈透明導電膜TC−202〜TC−211〉
透明導電膜TC−201の作製において、酢酸、樹脂、脱水縮合剤、処理時間を表3に示すように変更したこと以外は透明導電膜TC−201の作製と同様にして、本発明の透明電極TC−202〜TC−211を作製した。
【0228】
〈比較透明導電膜TC−212〜TC−214の作製〉
透明導電膜TC−201の作製において、エタノールに透明導電膜を60分間浸漬させるに変更したこと、および樹脂を表3のように変えたこと以外は、透明導電膜TC−201の作製と同様にして、比較の透明導電膜TC−212〜TC−214を作製した。
【0229】
(評価)
作製した各透明導電膜TC−201〜TC−214について、実施例1と同様な方法により導電性、膜剥がれ、樹脂中に残存するヒドロキシ基の比率、高温、高湿度環境下における、導電性の劣化、膜剥がれを評価した結果を、表4に示す。
【0230】
なお、実施例2において、樹脂中に残存するヒドロキシ基の比率の評価は下記の方法で行った。
【0231】
比較透明導電膜TC−212〜214の作製において、導電膜の塗布後、熱をかけずに自然乾燥させた透明導電膜TC−212(ロ)〜214(ロ)を作製した。
【0232】
実施例1と同様な方法で、TC−201〜214およびTC−212(ロ)〜214(ロ)のフッ素元素比率をもとめた。
【0233】
透明導電膜TC−201〜214のフッ素元素比率が(イ)、透明導電膜TC−212(ロ)〜214(ロ)のフッ素元素比率が(ロ)に相当する。
【0234】
TC−201〜209、およびTC−212については、TC−212(ロ)、TC−210および213については、TC−213(ロ)、TC−211および214については、TC−214(ロ)のフッ素元素比率を用いて、上記の(式1)を用いて、残存するヒドロキシ基比率を求めた。
【0235】
【表4】

【0236】
実施例3
(有機エレクトロルミネッセンス素子の作製)
実施例1で作製した各透明導電膜No.TC−101〜TC−120を超純水で洗浄後、パターン辺長20mmの正方形タイル状透明パターン一個が中央に配置される様に30mm角に切り出し透明導電膜とした。各透明導電膜No.TC−101〜TC−120をアノード電極として用いて、以下の手順で正孔輸送層/有機発光層/正孔阻止層/電子輸送層/カソード電極/封止層の構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、No.OEL−101〜OEL−120とした。
【0237】
尚、正孔輸送層、有機発光層、正孔阻止層、電子輸送層、カソード電極は蒸着法で形成した。
【0238】
〈正孔輸送層の形成〉
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用ルツボに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層を設けた。
【0239】
〈有機発光層の形成〉
次に、以下の手順で各発光層を設けた。
【0240】
形成した正孔輸送層上に、化合物2が13.0質量%、化合物3が3.7質量%、化合物5が83.3質量%になる様に、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0241】
次いで、化合物4が10.0質量%、化合物5が90.0質量%になる様に、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で緑赤色燐光発光の有機発光層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0242】
〈正孔阻止層の形成〉
更に、形成した有機発光層と同じ領域に、化合物6を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成した。
【0243】
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、形成した正孔阻止層と同じ領域に、CsF(フッ化セシウム)を膜厚比で10%になる様に化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
【0244】
【化4】

【0245】
〈カソード電極の形成〉
形成した電子輸送層の上に、透明電極を陽極として陽極外部取り出し端子及び15mm×15mmの陰極形成用材料としてAlを5×10−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの陰極を形成した。
【0246】
更に、陰極及び陽極の外部取り出し端子が形成出来る様に、端部を除き陽極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材としAlを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止層を形成し、発光エリア15mm×15mmの有機EL素子を作製した。
【0247】
(評価)
作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子No.OEL−101〜OEL−120について高温環境保存時の輝度低下及び寿命を下記に示す方法で評価し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表5に示す。
【0248】
(高温環境保存時の輝度低下の評価方法)
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子に、1000cd/m発光時の電圧を印加し、その時の輝度を測定を行った。引き続いて、有機エレクトロルミネッセンス素子を80℃のサーモ機で保存し、12時間毎にサーモ機から取り出し、初期の1000cd/m発光時の電圧を印加し、その時の輝度を測定して、輝度が半減した時間を評価し、保存時間とした。
【0249】
アノード電極をITOとした有機エレクトロルミネッセンス素子を上記と同様な方法で作成して保存性を評価し、これに対する比率を求め、以下の指標で評価した。100%以上が好ましく、120%以上であることがより好ましい。
【0250】
◎:120%以上
○:100〜120%未満
△:80〜100%未満
×:80%未満
(発光寿命の評価方法)
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を、初期の輝度5000cd/mで連続発光させて、電圧を固定して、輝度が半減するまでの時間を求めた。アノード電極をITOとした有機エレクトロルミネッセンス素子を上記と同様の方法で作製し、これに対する比率を求め、以下の基準で評価した。100%以上が好ましく、150%以上であることがより好ましい。
【0251】
尚、輝度はコニカミノルタセンシング(株)製 分光放射輝度計 CS−2000で測定した。
【0252】
発光寿命の評価ランク
◎:150%以上
○:100以上、150%未満
△:80以上、100%未満
×:80%未満
【0253】
【表5】

【0254】
表5から、比較の透明電極を使用した有機エレクトロルミネッセンス素子OEL−117〜OEL−120が、高温環境保存時の輝度低下や、寿命が著しく劣化するのに対し、本発明の透明導電膜を使用した有機エレクトロルミネッセンス素子OEL−101〜OEL−116の高温環境保存時の輝度低下が少なく、発光寿命に優れることが判る。本発明の有効性が確認された。
【0255】
実施例4
(有機エレクトロルミネッセンス素子の作製)
実施例3の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と同様な方法で、実施例2で作製した各透明導電膜No.TC−201〜TC−214をアノード電極として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、No.OEL−201〜OEL−214とした。
【0256】
(評価)
作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子No.OEL−201〜OEL−214について、実施例3と同様な方法により評価した結果を表6に示す。
【0257】
【表6】

【0258】
表6から、比較の透明導電膜を使用した有機エレクトロルミネッセンス素子OEL−211〜OEL−214は、高温環境保存時の輝度低下や、寿命が著しく劣化するのに対し、本発明の透明導電膜を使用した有機エレクトロルミネッセンス素子OEL−201〜OEL−211は高温環境保存時の輝度低下が少なく、発光寿命に優れることが判る。本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0259】
1 パターン状に形成された金属材料からなる第1導電層
2 本発明のバインダー樹脂と導電性ポリマーを含有する第2導電層
3 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にパターン状に形成された金属材料からなる第1導電層と、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する第2導電層を有し、該バインダー樹脂のヒドロキシ基をエステル化処理したことを特徴とする透明導電膜。
【請求項2】
前記バインダー樹脂のヒドロキシ基を無置換または置換のカルボン酸、またはスルホン酸ハライドでエステル化処理したことを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項3】
前記カルボン酸が低級カルボン酸であることを特徴とする請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項4】
前記ヒドロキシ基を有する構造単位を含む樹脂が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の透明導電膜。
【化1】

〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子または置換或いは無置換のアルキル基を表し、Aは置換或いは無置換アルキレン基、−(CHCHRbO)−(CHCHRb)−を表し、Rbは水素原子またはアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数で1〜100の数である。〕
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の透明導電膜を形成する透明導電膜の形成方法において、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する分散液中に無置換または置換のカルボン酸及び脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを添加し、塗布、乾燥することによりエステル化処理することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載の透明導電膜を形成する透明導電膜の形成方法において、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する分散液を用いて皮膜を形成した後、該被膜上を、無置換または置換のカルボン酸及び脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを含有する処理液に浸漬することによりエステル化処理することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載の透明導電膜を形成する透明導電膜の形成方法において、導電性ポリマーとヒドロキシ基を有する構造単位を含むバインダー樹脂を含有する分散液を用いて塗布し、皮膜を形成した後、該被膜上に、無置換または置換のカルボン酸及び脱水縮合剤、またはスルホン酸ハライドを含有する塗布液を塗布することによりエステル化処理することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1〜4の何れか1項に記載の透明導電膜を具備することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【公開番号】特開2013−20869(P2013−20869A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154572(P2011−154572)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】