説明

透明導電部材

【課題】導電性ペーストを印刷して得られた導電体パターン層の金属反射を抑制した透明導電部材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】透明基材と、該透明基材上に形成された透明プライマー層と、該透明プライマー層上に所定のパターンで形成された導電体パターン層を有する透明導電部材であって、該導電体パターン層は、該透明プライマー層上に形成された導電体粒子と樹脂バインダーを含み、少なくとも該樹脂バインダーの一部が着色されてなる、透明導電部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のパターンで形成された導電性層を有し、電磁波シールド部材、透明タッチパネル基板などに用いることができる透明導電性部材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビやパーソナルコンピュータのモニター等の画像表示装置(ディスプレイ装置ともいう)として、例えば、陰極線管(CRT)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、プラズマディスプレイ装置(PDP)、電場発光(EL)ディスプレイ装置等が知られている。これらのディスプレイ装置のうち、大画面ディスプレイ装置の分野で注目されているプラズマディスプレイ装置は、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、漏洩する電磁波をシールドするためのフィルム状の電磁波シールド材を設けるのが一般的である。
【0003】
電磁波シールド材は今までに種々検討されているが、例えば特許文献1には、透明基材上に無電解めっき触媒ペーストをメッシュパターンでスクリーン印刷し、その上に金属層を無電解めっきしてなる電磁波シールド材が提案されている。また、特許文献2には、導電性インキ組成物をメッシュパターンで転写体に凹版オフセット印刷し、転写体上のメッシュパターンを透明基材上に転写し、透明基材上のメッシュパターンに金属層を電気めっきしてなる電磁波シールド材が提案されている。また、特許文献3には、導電性インキ組成物をメッシュパターンで透明基材に直接凹版印刷し、その透明基材上のメッシュパターンに金属層を電気めっきしてなる電磁波シールド材が提案されている。
一方、本出願人は、凹版印刷により導電性材料組成物を透明基材上に転写し、導電性を有するパターンを形成してなる電磁波シールド材において、導電性材料組成物の転写不良に基づくパターンの断線、形状不良、転移率不足や低密着性等の不具合が生じない電磁波シールド材について、WO2008/149969で提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−170420号公報
【特許文献2】特開2001−102792号公報
【特許文献3】特開平11−174174号公報
【特許文献4】WO2008/149969号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電磁波シールド材は、微細パターンの形成が難しいスクリーン印刷でメッシュパターンを形成するとともに、成膜速度の遅い無電解めっきで金属層を形成するので、生産性の点で劣り、コスト低減を図ることができないという難点がある。また、特許文献2に記載の電磁波シールド材は、凹版印刷でメッシュパターンを形成するので微細パターンの形成は可能であるが、オフセット印刷を採用するので、凹版から転写体(ブランケット胴)に転写した後に転写体から透明基材に2回目の転写を行うので、原版である凹版のメッシュパターンが忠実に透明基材に転写されないことがある。
【0006】
さらに、特許文献2,3に記載の電磁波シールド材は、凹版から転写体又は透明基材に直接導電性インキ組成物を転写する方式の為、かかるオフセット印刷特有のブランケット胴によるパターン歪みの問題は無くなる。又、シルクスクリーン印刷に比べて微細パターン形成が可能である。但し、電磁波シールド材に適用する場合は、導電性インキの如き流動性の悪いインキを高塗布量で転写(転移とも言う)させる必要が有る。それ故に、新たに発生して来る問題として、導電性インキを転写する際に、未転写部が発生したり、密着性に劣る転写不良が発生したりすることがある。 さらに、微細な凹版凹部内に充填された低流動性で高粘度の導電性インキの多くは該凹部内に残留する為、導電性インキの転移率〔=(凹部から転移したインキの体積/凹部の体積)×100%〕は低く、最大でも20%程度が限度であった。それ故、十分な厚みがあり十分な電気伝導度のパターンを形成することが困難となり、十分な電磁波シールド性を得ることが困難であった。
【0007】
一方、本出願人による特許文献4に記載の電磁波シールド部材の製造は、プラーマー層に未硬化で流動性のUV樹脂等を用いて、凹版内部に充填された導電ペーストを効率よく転移させるものであり、一定の線幅、厚みの導電ペーストパターンを効率よく、高い密着性で形成できる。
さらに、本発明者らは、未公開の先願発明中に於いて、特許文献4に記載の印刷方式で得られた初期の抵抗値が約0.9〜2Ω/□程度の電磁波シールド部材に対して、更に、特定の電気抵抗低減化処理を施すことで、高コストな銅メッキ処理を施すことなく、電磁波シールド部材として好ましい0.8Ω/□以下の抵抗を有する新規な電磁波シールド部材を見出した。かかる特定の電気抵抗低減化処理とは、高温高湿環境下での処理、温水処理、酸溶液処理などである。
しかしながら、この新規な電磁波シールド部材においても、メッシュ部の金属反射を低減することが求められている。
【0008】
ところで、従来においては、電磁波シールド部材は、導電部分に金属が用いられることが一般的であり、導電性組成物を印刷した場合でも、導電体パターン層中には金属粒子を含有する。其の為、通常そのままでは金属光沢の影響で白っぽく見えてしまうため、黒化処理が施される。黒化処理は一般的に金属箔の黒色めっきが用いられている。また、導電ペーストを印刷するような方式では、導電ペーストにカーボンを添加し、黒っぽくするという処理も取られる。しかしながら、黒色めっきはコストが高い上に抵抗値が高い(導電性が低い)という課題がある。また導電ペーストにカーボンなどを添加して着色しようとすると抵抗値が増大してしまい、シールド性低下や、追加で電解めっきをする場合の生産性が低下してしまう、などといった課題があった。
このように、従来においては、メッシュ部の金属反射を抑えるための処理を簡便に行う方法は、未だ提案されていない。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、簡便方法で、且つ低コストで、メッシュ部の金属反射を抑制でき、且つメッシュ部の電気抵抗の増大も抑制できる透明導電部材及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、透明基材と、該透明基材上に形成された透明プライマー層と、該透明プライマー層上に導電体粒子と樹脂バインダーとにより所定のパターンで形成された導電体パターン層において、少なくとも該樹脂バインダーの一部が着色された透明導電部材とすることで解決しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)透明基材と、該透明基材上に形成された透明プライマー層と、該透明プライマー層上に所定のパターンで形成された導電体パターン層を有する透明導電部材であって、
該導電体パターン層は、該透明プライマー層上に形成された導電体粒子と樹脂バインダーを含み、該樹脂バインダーの少なくとも一部が着色されてなる、ことを特徴とする透明導電部材、
(2)前記透明プライマー層が架橋硬化した樹脂からなり、前記導電体パターン層の樹脂バインダーが非架橋樹脂からなる、前記(1)記載の透明導電部材、
(3)前記透明プライマー層のうち前記導電体パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電体パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、且つ該導電体パターン層中の該導電体粒子の分布は、相対的に、該透明プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電パターン層の頂部近傍において密である、前記(1)又は(2)に記載の透明導電部材、
(4)前記導電体パターン層の横断面内において、複数の導電体粒子が部分的に融合した連なり(経路)の長さが、導電体パターン層幅の1/2を超える連なりを、少なくとも1以上有する、前記(3)に記載の透明導電部材、
(5)透明基材の一方の面に所定のパターンで導電体パターン層が形成されてなる前記(1)〜(4)のいずれかに記載の透明導電部材の製造方法であって、
未硬化で流動状態の透明プライマー層が一方の面に形成された透明基材を準備する透明基材準備工程と、
所定のパターンで凹部が形成された版面に、硬化後導電体パターン層を形成できる導電性材料組成物を塗布した後、前記凹部内以外に付着した該導電性材料組成物を掻き取って該凹部内に該導電性材料組成物を充填する充填工程と、
前記透明基材準備工程後の透明基材の透明プライマー層側と前記導電性材料組成物充填工程後の版面の凹部側とを圧着して、前記透明プライマー層と前記凹部内の導電性材料組成物とを空隙無く密着する圧着工程と、
前記圧着工程後に前記透明プライマー層を硬化するプライマー硬化工程と、
前記硬化工程後に前記透明基材を前記版面から剥がして前記凹部内の導電性材料組成物を前記透明プライマー層上に転写する転写工程と、
前記転写工程後或いは前記透明プライマー層硬化工程と同時に、前記透明プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性材料組成物層を硬化させて導電体パターン層を形成する硬化工程と、
前記導電体パターン層を形成する硬化工程後に、着色用処理液に浸漬して、前記導電体パターン層の樹脂バインダーの少なくとも一部を着色する導電体パターン層着色工程を、
有することを特徴とする透明導電部材の製造方法、
(6)前記導電体パターン層を形成する硬化工程と同時又は硬化工程以降に該導電体パターン層の電気抵抗を低減させる処理を施す電気抵抗低減化処理工程を含む前記(5)に記載の透明導電部材の製造方法、
(7)前記導電体パターン層着色工程において使用する着色用処理液が、塩化第二鉄水溶液である、前記(5)〜(6)のいずれかに記載の透明導電部材の製造方法、
(8)前記(1)〜(4)のいずれか1に記載の透明導電部材が電磁波シールド材であることを特徴とする電磁波シールド材、及び
(9)前記(8)に記載の電磁波シールド材を前面フィルタに用いてなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の透明導電部材は、表面に黒化めっきをするわけではないので、低コストであり、かつ生産性も高く、導電体パターン層の樹脂バインダー(空隙を含む)に着色用処理液(黒化液)を浸透させるため、パターンが選択的に着色された透明導電部材を提供できる。また、導電体パターン層に塗布やディッピングなど、簡便な方法での着色化(黒化)も可能であり、低コストの透明導電部材を提供できる。さらに、印刷前の導電性ペーストを着色して黒くするわけではなく、又導電体パターン表面を高電気抵抗の黒化層で被覆するわけでもないので、塗工適性や導電性の低下等の制約が少なく、所望のメッシュ形状等の設計パターンに基づく透明導電部材を提供できる。
さらに、本発明の透明導電部材の製造方法によれば、導電性ペーストを印刷する工程を経由する透明導電部材の製造において、本発明における着色(黒化)方法を用いることにより、効率的に着色(黒化)することができ、外観の良い部材を低コストで製造することができる。
また、本発明の透明導電部材は、電磁波シールド材として好適であり、金属光沢の反射を抑制できるので、特に画像表示装置の前面に設置する電磁波シールドフィルタ用として提供できる。
【0012】
本発明により得られる透明導電部材は、その導電体パターン層を構成する導電性組成物が導電体粒子とバインダー樹脂を含み、而かも該導電体粒子の分布が、相対的に、該透明プライマー層近傍において分布が疎に、又該凸状パターンの頂部近傍において密であるよう構成することができる。そのようにすれば、該凸状パターンが細線化し、幾何学的因子的には高電気抵抗の環境下(R=ρL/SにおいてSが小;Rは電気抵抗、ρは体積固有抵抗、Lは長さ、Sは断面積)でも、限られた添加量の導電体粒子が、該凸状パターンの頂部近傍の密度を高く保たれ、ここで集中的に各導電体粒子同士の電気的接触が確保される。同時に該透明プライマー層近傍での界面剥離、脱落が抑えられ高い密着性が確保される。其の為、該パターンの線幅を微細化した場合においても、高電磁波シールド性と機械的強度、及び高透明性による高解像度とが両立できると云う効果を奏する。
【0013】
加えて、該導電体パターン層の該透明プライマー層側の界面において、該導電体粒子の分布が疎である為、ここでの光の鏡面反射率は低減される。その為、該導電体粒子の分布が疎な面側を外光側(画像観察者側)に向けた場合には、外光による画像の白化、コントラスト低下を防止出来る。一方、該導電体粒子の分布が疎な面側をディスプレイ装置側に向けた場合には、画像光の画面への反射による画像の白化、コントラスト低下を防止出来る。
【0014】
さらに、導電体パターン層を形成する硬化工程と同時又は以降に該導電体パターン層を高温高湿環境での放置、温水洗浄、酸処理などの比較的安価な電気抵抗低減化処理をする場合には、高コストな銅めっき処理を用いずに、未処理の場合は0.9〜2Ω/□である表面抵抗値を0.8Ω/□以下に低減できるという効果を奏する。
また、本発明の透明導電部材は、焼成をしないにもかかわらず粒子の結合が形成されており、焼成時に起きる基材ダメージや導電性組成物の密着低下による剥落等の懸念がない。
本発明の電磁波シールド材の製造方法は、導電性ペーストを印刷する工程を経由する電磁波シールド部材の製造において、本印刷方法を用いることにより、効率的に精度良く基材上への印刷をすることができ、品質の良い電磁波シールド部材を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の透明導電部材を電磁波シールド材とした一例を示す模式的な平面図である。
【図2】図1におけるA−A’断面の拡大図である。
【図3】図2の一部をさらに拡大して示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の電磁波シールドの製造方法の一例を示す工程図である。
【図5】本発明の製造方法を実施する装置の概略構成図である。
【図6】導電体パターン層凸状部の着色状態を示す模式図
【図7】導電体パターン層と透明プライマー層との界面形態の模式的な断面図であり、(A)界面形態が第1態様、(B)界面形態が第2態様、(C)界面形態が第3態様を示す。
【図8】実施例1の導電性パターン層のメッシュ部の凸状パターンの断面SEM写真である。
【図9】図7の湿熱処理後の凸状パターンの断面SEM写真における導電体粒子の融合経路を表示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について、特に、透明導電部材を電磁波シールド材として用いる形態を、例を挙げて詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
[透明導電部材]
図1は、本発明の透明導電部材を電磁波シールド材とした場合の一例を示す模式的な平面図であり、図2は、図1におけるA−A’断面の拡大図である。また、図3は、図2の一部をさらに拡大して示す模式的な断面図である。本発明の透明導電部材(以下、「電磁波シールド材」ということがある。)10は、透明基材1と、透明基材1上に形成された透明プライマー層2と、透明プライマー層2上にメッシュ形状に代表される所定のパターンで形成された導電体パターン層3とを有し、必要に応じてさらに保護層9を有する。
なお、図1中、符号7は電磁波シールドパターン部であり、符号8は接地部である。
以下、本発明の構成を詳しく説明する。
【0018】
(透明基材)
透明基材1は、可視光線領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、或いは樹脂板など板状体の剛直物でもよい。ただし、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
【0019】
樹脂フィルム、樹脂板の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド(PI)系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートはその2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
透明無機物としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、鉛硝子等の硝子、或いはPLZT、石英等の透明セラミックス等である。
【0020】
透明基材の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。樹脂や透明無機物の板を利用する場合、例えば、500〜5000μm程度である。
また、以下に述べる透明プライマー層2との密着性を確保するために、透明基材表面に別途密着性改善のための表面処理や、易接着層、下地層などが設けられていてもよい。
【0021】
(透明プライマー層)
透明プライマー層2は、その主目的が導電体パターン層3の印刷形成時に、版から被印刷物(透明基材)へのインキ(導電性組成物)転移性を向上させ、転移後の導電性組成物と被印刷物との密着性を向上させるための層である。すなわち、透明基材及び導電体パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(導電体パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層でもある。なお、透明プライマー層の「透明」とは無着色であり、導電体パターンと比較して相対的に低彩度で、且つ高透過率であることを意味し、完全に無色透明でなくてもよい。
また、好ましい態様としては、この透明プライマー層2は、流動性を保持できる状態で透明基材1上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から硬化させる層として形成される層であり、最終的な電磁波シールド材が形成されたときに固化している層である。
【0022】
かかる透明プライマー層を構成する材料としては、本来特に限定はないが、本発明では、未硬化状態において液状(流動性)の電離放射線重合性化合物を含む電離放射線硬化性組成物を塗工し、該化合物分子の架橋反応によって硬化(固体化)してなる層、すなわち架橋硬化した樹脂層が好適に用いられる。以下、この材料を中心に詳述する。
該電離放射線重合性化合物としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。尚、ここで(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
【0023】
電離放射線として、紫外線、又は可視光線を採用する場合には、通常は、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が、又カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤は、上記モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加する。
なお、電離放射線としては、紫外線、又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線、各種イオン線等の荷電粒子線を用いることもできる。
【0024】
透明プライマー層には離型剤を添加することができる。離型剤は、電磁波シールド材の製造において、プライマー硬化工程を経た透明基材上の透明プライマー層が、版面からの剥離に要する力(剥離力)を小さくして、円滑に剥がれるように剥離性を向上させるための機能を有するものが好ましい。かかる離型剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等が挙げられる。
【0025】
高級脂肪酸エステルとしては、炭素数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は完全エステルであるものが好ましい。一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は完全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、べヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
これらの中では、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のステアリン酸エステルが、透明性、離型性の観点から特に好ましい。
これらの離型剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
離型剤は、透明プライマー層を形成する電離放射線硬化性組成物全量に基づき、0.1〜5質量%添加することが好ましく、0.5〜3質量%が特に好ましい。0.1質量%未満では、透明プライマー層の版面からの離型性が向上せず、5質量%を超えて添加しても離型性能は飽和し経済的でない。
【0026】
当該電離放射線硬化性組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要となるため、溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ)であることが好ましい。
【0027】
透明プライマー層2の厚さは、(TB;図3の如く、導電体パターン層3の非形成部の厚みで評価)は特に限定されないが、通常は硬化後の厚さで1μm〜100μm程度となるように形成される。また、透明プライマー層2の厚さ(TB)は、通常は、導電体パターン層3と透明プライマー層2との合計値(総厚。図3(A)でいうと導電体パターン層3の頂部と透明基材1の表面との高度差)の1〜50%程度である。
【0028】
(導電性組成物からなる導電体パターン層)
本発明における電磁波シールド材(透明導電フィルム)は、導電性組成物からなる導電体パターン層3が、透明プライマー層2上に所定のパターンで設けられたものである。該パターン形状としてはメッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、其の他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、モアレを軽減する目的で、ランダム網目状、または擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(電磁波シールドパターンの全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。またメッシュの電磁シールドパターンとは別に、其の周辺部の全周又は其の一部にそれと導通を保ちつつ隣接した全ベタ等の接地パターンが設けられる場合もある。
なお、線幅は、より高透明のものを得る為により一層微細化することが求められている観点から、30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。
【0029】
また、導電体パターン層3の厚さは、その導電体パターン層3の抵抗値によっても異なるが、電磁波シールド性能と該導電体パターン層上への他部材の接着適性との兼ね合いから、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
この導電体パターン層3は、導電体粒子とバインダー樹脂を含む導電性組成物(導電性インキ或は導電性ペースト)を、後述する凹版印刷法により透明プライマー層2上に形成することで得ることができる。
また、前記導電体パターン層の表面に電解めっきにより金属層を形成することなく電磁波シールド材とするためには、該導電性組成物から成る導電体パターン層の表面抵抗率は低い程好ましい。具体的には、表面抵抗率が2Ω/□以下、となるよう構成することが好ましい。更に、電磁波シールドメッシュとして多用される線幅が25μm以下、線厚みが20μm以下の領域にて十分な電磁波シールド性を発現せしめる為には、該導電性組成物から成る導電体パターン層の表面抵抗率は、更に低い程好ましい。具体的には、表面抵抗率が1.2Ω/□以下、より好ましくは0.8Ω/□以下となるよう構成すると良い。該導電体パターン層の表面抵抗率を0.8Ω/□以下とする為には、後述の様に、該導電体粒子の材料として体積抵抗率の低い銀、金、銅等の金属を選択すること、該導電体粒子の平均粒子径を1μm以下とすること、該導電体粒子の粒子径を小粒子径粒子と大粒子径粒子との混合系にすること、該導電体パターン層の頂部に於ける該導電体粒子の密度を密にすること、及び該導電体パターン層を透明プライマー層上に転写して以降、水分存在化且つ高温下にて処理する、或いは酸で処理する等の電気抵抗低減化処理を施すことが有効である。電気抵抗低減化処理は、これらのうち1乃至2以上の手段を併用すると良い。
【0030】
導電性組成物自体の導電性を示す体積抵抗率は、印刷する形状により見かけの値が変化する。例えば、市販の導電ペーストをベタ形状(開口部がない形状)で形成した場合の体積抵抗率に比べ、下記の式で計算した、パターンで形成した場合の見かけの体積抵抗率は、形成するパターン形状を微細にするほど大きくなる。
(式):見かけの体積抵抗率〔Ω・cm〕=パターン部の表面抵抗率〔Ω/□〕×
パターン部厚み〔cm〕×パターン占有率
・パターン部厚み:パターン形成部の厚み− パターン非形成部(開口部)の全厚み
・パターン占有率:単位面積のうち、パターン形成されている部分の面積の割合
例えば、市販の乾燥硬化型銀ペーストをベタ塗りし乾燥させた場合の体積抵抗率は、通常10-5〔Ω・cm〕以下のオーダーであるが、実際にメッシュパターン印刷すると、見かけの体積抵抗率は1桁以上高くなることが多い。これは銀粒子の充填率や粒子同士の接触の機会が低減することによる。ここで上記の各種手段を用いれば、この体積抵抗率上昇を抑えられる。特に、温度と湿度による処理(電気抵抗低減化処理工程)を行うことで、見掛けの体積抵抗率は該処理を行う前に比べて、80〜50%の値に低減する。
また、酸処理によっても、見掛けの体積抵抗率は該処理を行う前に比べて、80〜50%の値に低減することができる。
【0031】
導電性組成物を構成する導電体粒子としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子、或は芯材粒子としての高抵抗率金属粒子、樹脂粒子、無機粒子等の表面が金や銀などの低抵抗率金属で被覆された粒子、黒鉛粒子、導電性高分子粒子、導電性セラミックス粒子等を挙げることができる。
導電体粒子の形状は、正多面体状、截頭多面体状等の各種の多面体状、球状、回転楕円体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。特に、多面体状、球状、又は回転楕円体状が好ましい。これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。
導電体粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、好ましくは、平均粒子径が0.01〜10μm程度のものを用いることができる。得られる導電体パターン層の電気抵抗を低く〔前記の如く、好ましくは、表面抵抗率(単に、表面抵抗とも略称)が0.8Ω/□以下〕して良好な電磁波シールド性を得る為には、平均粒子径は小さい方が好ましく、此の観点からは平均粒子径0.1〜1μmが好ましい。又、粒子径の分布については、得られる凸状パターンの電気抵抗を低くする為には、分布幅が狭く単一粒子径に近いよりも、相対的に大粒子径の粒子と相対的に小粒子径の粒子との混合系から成る方が良い。例えば、粒子径が0.01μm〜1μmの範囲の小粒子径粒子と粒子径5〜10μmの範囲の大粒子径粒子との混合系が好ましい。かかる混合系に於ける両粒子の混合比は、小粒子径粒子数:大粒子径粒子数=1:9〜9:1、特に、小粒子径粒子数:大粒子径粒子数=5:5〜9:1の範囲が好ましい。
【0032】
該導電体粒子の粒子径を小粒子径粒子と大粒子径粒子との混合系にすると該導電性組成物(から成る導電体パターン層)の表面抵抗率が低下する理由としては、かかる系から成る導電体パターン層の断面を顕微鏡観察すると、大粒子径粒子の分布する間隙に小粒子径粒子が充填されて分布した形態が観察されることから推して、大粒子径粒子同士の接触が無い部分の間隙を、そこに介在する小粒子径粒子の接触によって補強し、導電性組成物内に分散する大小粒子相互の電気的接触面積の総和が増大する為(前記の式R=ρL/Sにおいて断面積Sが増加したことに相当)と考えられる。
【0033】
また、該導電体パターン層内に於ける該導電体粒子の分布は、所望の特性や製造適性に応じて各種形態を選択可能であるが、特に好ましい形態としては、該導電体パターン層の頂部近傍(透明プライマー層から遠ざかる方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が小さく、粒子数密度、即ち単位体積当りの粒子数が高く(密)なり、一方、該導電体パターン層の底部近傍(透明プライマー層に近付く方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が大きく、粒子数密度が低く(疎或いは粗)になる分布が挙げられる。
かかる分布形態の場合は、本発明の電磁波シールド材を画像表示装置の画面に設置する汎用の使用形態、即ち、該導電体パターン層側が画像表示装置側に向かい、該透明基材側が画像の観察者側に向かう向きで使用する場合において、観察者側に対峙する該導電体粒子は、密度が粗の為、外来光(電燈光、日光等)を散乱させて、観察者の目に入る反射光、特に鏡面反射光を低減する。その結果、外来光存在下に於ける画像の白化、周囲の風景の映り込みを防止し、画像コントラストの低下を防止することが出来、好ましい。この効果をより一層有効に発現させる為には、該導電体粒子形状としては、鱗片状よりも、多面体状、球状、又は回転楕円体状の形状を選択する方が、該導電体パターン層の頂部側表面に鏡面に近い面が形成され難い為、好ましい。又、該導電体粒子形状としては、鱗片状の物を採用する場合は、該導電体パターン層中の鱗片状導電体粒子の配向方向(例えば、該鱗片の一番広い面の法線方向として定義される)を乱雑(random)に分布するようにすると、鏡面反射が低減し、好ましい。尚、該導電体粒子形状が多面体状、球状、又は回転楕円体状の形状の場合でも、其の配向方向を乱雑化することは、鏡面反射光の低減の点では好ましい。
且つ、同時に、画像表示装置側に対峙する該導電体粒子は、緻密に集合し、各粒子間の電気的接触も良好になり、電気抵抗が下がり、電磁波シールド効果も高まる。尚、当然、かかる高密度に分布する導電体粒子は可視光線の反射率も高いが、該導電体粒子は画像観察者の目に触れない側(観察者と反対側)の面側に位置すれば、画像コントラスト等の低下の心配は無い。
【0034】
しかし、本発明においては、該導電体粒子の緻密な層が画像観察者側に位置するように設置して用いる場合を考慮し、斯かる仕様形態に於いても、導電体パターン層表面での外光反射による画像コントラスト低下を防止し得る為に、樹脂バインダーの少なくとも一部を、着色するものである。
該導電体パターン層中に於ける該導電体粒子の密度分布を制御し、相対的に、該透明プライマー層近傍において分布が疎であり、又該凸状パターンの頂部近傍において密である様にしたり、或いは該透明プライマー層近傍において粒子の配向方向が乱雑になり、且つ該導電体パターン層の頂部において平行乃至略平行に配向せしめる為には、例えば、凹版印刷法を応用した本発明の電磁波シールド材の製造方法において、版面凹部内に充填された導電性組成物上面の凹みに、透明基材上の流動状態の透明プライマー層を押圧する圧力を高めに設定すると共に、未硬化状態に於ける該導電性組成物の粘度を低めに設定し、更に該導電性組成物を凹版凹部内で固化させずに、反面から離型後固化せしめることが有効である。其の他、これら導電体粒子の密度分布や配向状態は、導電性組成物のバインンダー樹脂の種類、導電体粒子の材料と粒子径と粒子形状、バインダー樹脂と導電体粒子との配合比、及び該導電性組成物の塗工条件や固化条件等に依存する。現実には、これら導電体粒子の密度分布や配向状態に影響する各種条件から実験的に、求める導電体粒子の密度分布及び配向に合致する条件を決定することになる。
該導電性組成物中の導電体粒子の含有量は、導電体粒子の導電性や導電体粒子の形態に応じて任意に選択されるが、例えば導電性組成物の固形分100質量部のうち、導電体粒子を40〜99質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した値を指している。
また、本発明の透明導電フィルムは、導電体パターン層の横断面(線條をなす導電体パターン2の延長方向と直交する断面)内において、複数の導電体粒子が部分的に融合した連なり(経路)の長さが、導電体パターン層幅の1/2を超える連なりを、少なくとも1以上有するものとすることができる。
【0035】
導電性組成物を構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として前記した物を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。
熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
また、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。導電性ペーストとして用いる溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤の中から適宜選択して使用できるが、透明プライマー層2の安定硬化を阻害したり、硬化後の透明プライマー層を膨潤、白化、溶解させたりしないものが好ましい。溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ないほうが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
【0036】
なお、本発明に使用する樹脂バインダーは、着色のし易さの観点から、上述の熱可塑性樹脂等から選択される非架橋樹脂が望ましく、特に熱可塑性のアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が好適に用いられる。これらの樹脂は、1種のみで、或は2種以上混合して使用する。
また、導電性組成物の流動性や安定性を改善するために、導電性や、透明プライマー層との密着性に悪影響を与えない限りにおいて適宜充填剤や増粘剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、沈降防止剤、可塑剤などを添加してもよい。
【0037】
本発明の透明導電フィルムの着色は、少なくとも樹脂バインダーを着色することによって達成される。本発明において、着色とは、透明プライマー層と比較して相対的に、低明度、低透過率乃至低反射率であることを意味し、色相は変化しなくともよい。色味として黒色系が望ましいが、赤黒、赤茶など赤味を帯びた色味等であってもよい。
斯かる着色を施した形態の電磁波シールド材は、導電体パターン層3が画像観察者側を向いて設置される形態の場合に於いて、外光反射を防止し、画像コントラストを向上させる效果を奏するものである。
但し、斯かる着色を施した形態の電磁波シールド材は、導電体パターン層3が画像表示装置側を向いて設置される形態に使用した場合に於いても、該導電体パターン層3表面で反射した画像光が画面に反射して画面が白化することを防止する効果が期待できるものである。
着色されている光学的な形態としては、樹脂バインダーの、(i)樹脂自身が着色している形態、すなわち樹脂分子中に可視光線帯域を共鳴吸収する共役二重結合、原子団(基)を発生、(ii)樹脂中に着色剤(染料、顔料)の粒子が分散、(iii)樹脂中に可視光帯域を共鳴吸収するイオン(Fe2+、Cu2+等)が侵入している形態を挙げることができる。
【0038】
図6は、導電性パターン層3の1断面が着色されている代表的な形態を模式的に示す説明図であり、着色部を6で示す。
同図(A)は導電体粒子3Pと樹脂バインダー3Rとから成る未着色の導電パターン層、(B)は一部の導電体粒子の表面近傍が着色された樹脂バインダーで被覆されて着色された状態を示し、(C)は樹脂バインダーの中腹から頂上にかけての表面側近傍の空隙が選択的に着色された状態、(D)は樹脂バインダーの内部及び空隙が着色された状態を模式的に示している。尚、図6(C)及び(D)では、導電体パターン層3表面近傍の導電体粒子3Pの外表面側は露出している。
【0039】
[透明導電部材(電磁波シールドフィルム)の製造方法]
本発明の透明導電部材(電磁波シールドフィルム)の製造方法は、(1)透明プライマー層が一方の面に形成された透明基材を準備する透明基材準備工程と、(2)所定のパターンで凹部が形成された板状又は円筒状の版面に、硬化後導電体パターン層を形成できる導電性材料組成物を塗布した後、前記凹部内以外に付着した該導電性材料組成物を掻き取って該凹部内に該導電性材料組成物を充填する充填工程と、(3)前記透明基材準備工程後の透明基材の透明プライマー層側と前記導電性材料組成物充填工程後の版面の凹部側とを圧着して、前記透明プライマー層と前記凹部内の導電性材料組成物とを空隙無く密着する圧着工程と、(4)前記圧着工程後に前記透明プライマー層を硬化するプライマー硬化工程と、(5)前記硬化工程後に前記透明基材を前記版面から剥がして前記凹部内の導電性材料組成物を前記透明プライマー層上に転写する転写工程と、(6)前記転写工程後或いは前記透明プライマー層硬化工程と同時に、前記透明プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性材料組成物層を硬化させて導電体パターン層を形成する硬化工程と、(7)前記導電体パターン層を形成する硬化工程後に、着色用処理液に浸漬して、前記導電体パターン層の少なくとも樹脂バインダーの一部を着色する導電体パターン層着色工程を、有する。
また、前記工程にさらに、導電体パターン層を形成する硬化工程と同時又は硬化工程以降に(8)該導電体パターン層の電気抵抗を低減させる処理を施す電気抵抗低減化処理工程を有することができる。
以下、本発明の透明導電フィルム(電磁波シールド材)の製造方法について図により説明する。
図4は、本発明の電磁波シールドの製造方法の一例を示す工程図である。また、図5は、本発明の製造方法の要部を実施する装置の概略構成図であり、図6は、導電体パターン層に着色を施した形態を模式的に示す説明図である。
【0040】
本発明の透明導電部材(電磁波シールドフィルム)の製造方法は、前述の工程(1)〜(6)は、WO2008/149969号パンフレットに記載の方法に準ずればよく、要部のみを説明する。
【0041】
(樹脂充填工程)
透明プライマー層用樹脂組成物に対する導電性材料組成物の組合せは特に限定されず、透明プライマー層用樹脂組成物の硬化処理と導電性材料組成物の硬化処理との方式が異なっていてもよいが、特に、導電体パターン層を選択的に着色し、透明プライマー層の着色を避ける観点から、透明プライマー層には架橋硬化性樹脂を使用し、導電性材料組成物15としては、導電体粒子と非架橋樹脂からなる樹脂バインダーを含む組成を組み合わせて使用することが好ましい。透明プライマー層の架橋硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂を採用することが好ましい。
【0042】
なお、図5に示す導電性材料組成物15の塗布法は、透明プライマー層2を有する透明基材1を円筒状の版である凹版ロール62に圧着する前に行われる工程の一例であり、具体的には、ピックアップロール61は導電性材料組成物充填容器68に下方で接触し、導電性材料組成物15を引き上げて凹版ロール62の版面63に塗布する。このとき、版面63上の凹部64以外の部分に導電性材料組成物15が乗らないように、ドクターブレード65で掻き落とす。尚、版の形態(形状)としては、図5の如き円筒状、(図示は省くが)平板状等が代表的なものである。
【0043】
(硬化工程)
硬化工程は、ニップロール66の付勢力による圧着工程後に透明プライマー層2を硬化する工程であり、圧着した後の状態で硬化処理することにより、透明プライマー層2と導電性材料組成物15とが密着した状態で硬化させることができる。具体的には、透明プライマー層用樹脂組成物が電離放射線硬化型樹脂組成物である場合には、照射ゾーン(図5にUVゾーンの符号で示す、凹版ロール62の上方に位置する)で電離放射線が照射され、硬化処理される。この場合、透明プライマー層は透明基材と版面にはさまれた形になり、空気中の酸素による硬化阻害を受けないため、窒素パージ装置などは必ずしも必要ない。
なお、硬化処理は、流動状態の透明プライマー層2を固体化(非流動化)せしめる処理であり、上記と同様、透明プライマー層用樹脂組成物の種類に応じて選択される。例えば、透明プライマー層用樹脂組成物が電離放射線硬化型樹脂組成物の場合には電離放射線照射処理が施される。又、透明プライマー層用樹脂組成物が熱硬化型樹脂組成物の場合には加熱、透明プライマー層用樹脂組成物が加熱熔融した熱可塑性樹脂組成物の場合には冷却処理等の硬化処理が施される。一方、導電性材料組成物15の硬化は、透明プライマー層2と同時に硬化させても、或は透明プライマー層2硬化とは別工程(透明プライマー層2と導電体パターン層3との密着性、及び導電体パターン層3の良好な転写性の点で、好ましくは透明プライマー層硬化後)に硬化させても何れでも良い。導電性材料組成物15の樹脂バインダーとして電離放射線硬化型樹脂組成物を用いた場合は、電離放射線照射によって透明プライマー2層と導電性組成物15とを同時に硬化させることが出来る。又、導電性材料組成物15の樹脂バインダーとして非架橋樹脂を用いた場合は、溶媒の揮発のための乾燥、冷却によって導電性パターン層が硬化(固化)される。
【0044】
(転写工程)
転写工程は、図5に示すように、硬化工程後に透明基材1を凹版ロール62の版面63から剥がして凹部64内の導電性材料組成物15をプライマー層2上に転写する工程である。プライマー層2は、この工程前のプライマー硬化工程で硬化しているので、透明基材1を凹版ロール62の版面63から剥がすことにより、プライマー層2に密着した導電性材料組成物15は凹部内から離れてプライマー層2上に綺麗に転写し、導電性材料組成物層3’となる。引き剥がしは、図5に示すように、出口側に設けられたニップロール67により行われる。なお、転写工程において導電性材料組成物15は必ずしも硬化させる必要はなく、導電性材料組成物15に溶剤が含まれた状態でも転移させることができる。この理由は今のところ不明であるが、空隙なく密着した状態で硬化させたプライマー層2と導電性材料組成物15の間の密着力が、凹版ロールの凹部64の内壁と導電性材料組成物15の間の密着力よりも大きくなっているためと推測される。
着色工程及び電気抵抗低減化処理工程は、以下の通りである。
【0045】
(着色工程)
着色をする方法としては、転写工程後の電磁波シールドフィルムを、化学反応、染色、着色イオンの浸透、又は着色顔料の浸透によって樹脂を着色し得る着色用処理液中に所定時間浸漬或いは塗布した後、必要に応じて更に、水又は有機溶剤で導電体粒子表面上に残留する処理液を洗浄し、乾燥し、導電体パターン層の樹脂バインダーを着色する方法が挙げられる。これによって、導電性パターン層3を構成する樹脂バインダー3Rの少なくとも一部を化学反応、染色、着色イオンの浸透、又は着色顔料の浸透によって着色せしめる。
着色する色としては、電燈光、日光等の外光を十分に吸収し、画像コントラストの低下、画面の白化を低減し得る色、低明度の色(暗色)であれば良い。具体的には、黒、濃い灰色等の無彩色、或いは褐色(黄褐色、赤褐色、黒褐色等)、臙脂色、紺色、深緑色、濃紫色等の有彩色が用いられる。
また、着色用処理液としては、塩化第二鉄水溶液、硫酸銅等の電解質溶液、各種の染料、各種の顔料を含む溶液乃至は組成物を好適に用いることができる。
さらに、着色工程の後に、必要に応じて防錆処理や防硫処理を行ってもよい。
【0046】
(電気抵抗低減化処理工程)
該導電性組成物を凹版凹部内から該透明プライマー層を介して透明基材上に転写させて導電体パターン層とした後、更に、(i)水分存在下、且つ高温下にて処理するか、或いは(ii)酸に接触させることによって、該凸状パターンの体積(電気)抵抗率が低下し、透明導電フィルムの電磁波シールド性能が向上する。(i)の水分存在下での電気抵抗低減化処理工程においては、転写(凹版印刷)工程後、該透明導電フィルム(電磁波シールド材)を水分と接触した状態の下で室温よりも高温状態に適宜時間放置するものである。水分存在下の条件としては、水蒸気を含む空気中への放置、或いは液体の水中への浸漬の何れでも良い。水蒸気を含む空気中への放置の場合、放置する空気(雰囲気)の相対湿度は70%RH以上、好ましくは85%以上とする。かかる高温状態の温度(水蒸気を含む空気中への放置の場合は雰囲気温度、水中浸漬の場合は水温)は摂氏30℃以上、好ましくは60℃以上である。但し、余り高温になると樹脂バインダーや透明基材の変質、変更を生じることになる為、通常の材料の場合、120℃以下とする。
【0047】
電気抵抗低減化処理工程によって、体積抵抗率が減少する理由について、考察すると、図8は、銀粒子を用いた実施例1により得られた電気抵抗低減化処理の導電体パターン層の横断面のSEM写真であるが、複数の粒子が結合して連接した連なり(経路)を形成しているのが観察され、その経路を結ぶと、図9の実折れ線で示される。複数の粒子が融合した連結(「クラスター」ともいう。)、好ましくは、その長さが線幅(導電体パターンの延長方向と直交する横断面の幅)の1/2程度に連なった融合部(クラスター)があれば、必ずしも、その部位の断面写真では融合が確認できないが、延長方向の1側端部から他の側端部まで連結した経路が他の断面の部位で存在している確率が高いと推測され、結果的に体積抵抗率の低減が達成できているものと考えられる。
【0048】
工程が少し前後するが、図3は、転写工程後の透明プライマー層2の形態と導電性材料層3’の形態を観察すると、透明プライマー層2のうち導電性材料層3が転写された部分Aの厚さTAは、導電性材料層3が転写されていない部分Bの厚さTBよりも大きい。そして、厚さの大きい部分Aのサイドエッジ5,5は、厚さの小さい部分Bの側に導電性材料層3が回り込んでいる。こうした形態は、流動性を保持した透明プライマー層2が形成された透明基材1の透明プライマー層2側と、樹脂充填工程後の版面63の凹部64側とを圧着することにより、凹部64内の導電性材料組成物上部に生じやすい凹みに流動性のある透明プライマー層2が充填されることにより発現する。
即ち、電磁波シールド用パターン部の横断面(例えば図3)において、該透明プライマー層2の断面形状は、透明基材1から遠ざかる方向に向かって凸になった、半円、半楕円等の所謂釣鐘型形状、3角形、台形、5角形等の所謂山形形状、或いはこれらに類似の形状をなす。
本発明の透明導電フィルム(電磁波シールド材)は、特に、導電体パターン層形成部における透明プライマー層と導電体パターン層との界面に特徴があるように構成することができる。
【0049】
〔導電体パターン層と透明プライマー層の界面の断面形態〕
本発明における透明導電フィルムの1形態として、導電性組成物からなる導電体パターン層3と透明プライマー層2の界面は、図7(A)〜(C)に示すような3つの態様の断面形態をとり得るものであり、導電体パターン層3と透明プライマー層2との界面11が、(a)透明プライマー層2と導電体パターン層3との界面11が非直線状に入り組んでいる断面形態(以下、「第1態様」という)、(b)透明プライマー層2を構成する成分と導電体パターン層3を構成する成分とが混合している層を有する断面形態(以下、「第2態様」という)、及び、(c)導電体パターン層3を構成する導電性組成物中に透明プライマー層2に含まれる成分が存在している断面形態(以下、「第3態様」という、また、断面形態を「界面形態」ともいう。)が密着性、導電性組成物の転移性の点で好ましい結果を与えている。
【0050】
界面形態の第1態様は、図7(A)に示すように、透明プライマー層2と導電体パターン層3との界面11が、透明プライマー層2側と凸状メッシュパターン層3側とに交互に非直線状に入り組んだ形態である。
なお、この界面形態の第1態様において、入り組んだ界面は、全体としては中央が高い山型の断面形態となっている。
この形態において、その界面11が、透明プライマー層2を構成する樹脂と導電体パターン層3を構成するバインダー樹脂又は充填固体粒子との界面であるように構成されていても良い。この場合の「充填固体粒子」とは、任意の粒子乃至粉末であり、前記の導電体粒子であっても、或いは体質顔料等の非導電体粒子であっても構わない。例えば、導電性組成物が導電体粒子末とバインダー樹脂とで構成されている場合には、その界面は、導電体パターン層3中の導電体粒子と透明プライマー層2を構成する樹脂とが入り組んだ非直線状の態様で形成される。このときの入り組みの程度と形態は、導電体粒子乃至粉末の形状や大きさ、透明プライマー層2を凹部内に圧着する際の圧力等によって影響を受ける。或いは、この界面11が、透明プライマー層2を構成する樹脂と導電体パターン層3を構成するバインダー樹脂との界面で構成されていても良い。
【0051】
こうした界面形態の第1態様は、そもそも平坦面でない山型の透明プライマー層2上に導電体パターン層3が形成されていることを以ってしても密着性が良いのに加え、上記のように界面11が入り組んだ形態になっているので、所謂投錨効果により、透明プライマー層2と導電体パターン層3との密着性が著しく高くなっている。さらに、こういう界面形態をとるゆえに、版凹部内に充填された導電性組成物が透明プライマー層2上に極めて高い転移率(ほぼ100%)で転写されるという格別の効果を備えている。
【0052】
界面形態の第2態様は、図7(B)に示すように、透明プライマー層2と導電体パターン層3との界面11の近傍に、透明プライマー層に含まれるプライマー成分と、導電体パターン層を構成する成分とが混合する領域21が存在している形態である。図7(B)では界面が明確に現れているが、実際には、明瞭でない曖昧な界面が現れる。また、図7(B)では混合領域21は、界面11を上下に挟むように存在する。この場合は、透明プライマー層中のプライマー成分と導電体パターン層3中の任意の成分とが両層内に相互に侵入する場合である。なお、混合領域21は界面11の上側(透明基材とは反対側)に存在しても下側(透明基材側)に存在してもよい。混合領域21が界面11の上側に存在する場合としては、透明プライマー層中のプライマー成分が導電体パターン層内に侵入し、導電体パターン層中の成分が透明プライマー層内に侵入しない場合であり、一方、混合領域21が界面11の下側に存在する場合としては、導電体パターン層中の任意の成分が透明プライマー層内に侵入し、透明プライマー層中のプライマー成分が導電体パターン層内に侵入しない場合である。
【0053】
こうした界面形態の第2態様は、そもそも平坦面でない山型の透明プライマー層2上に凸状メッシュパターン層3が形成されていることを以ってしても密着性が良いのに加え、上記のように界面11近傍に混合領域21を有するので、透明プライマー層2と導電体パターン層3との密着性が著しく高くなっている。さらに、こういう界面形態をとるゆえに、版凹部内に充填された導電性組成物が透明プライマー層2上に極めて高い転移率(ほぼ100%)で転写されるという格別の効果を備えている。
【0054】
界面形態の第3態様は、図7(C)示すように、導電体パターン層3中に広く、透明プライマー層2に含まれるプライマー成分31が存在している形態である。図7(C)ではプライマー成分31が界面11付近で多く、頂部に向かって少なくなって態様を模式的に表しているが、こうした態様には特に限定されない。プライマー成分31は、導電体パターン層3の頂部から検出される程度に導電体パターン層3内に侵入していてもよいし、主として界面近傍で検出される程度であってもよい。なお、第3態様において、特に、プライマー成分31が導電体パターン層内に存在している領域が界面11の近傍に局在化している場合が、上記第2態様において混合領域が界面11の上側にのみ存在する形態に相当するといえる。
【0055】
こうした界面形態の第3態様も上記第1及び第2形態の場合と同様、そもそも平坦面でない山型の透明プライマー層2上に導電体パターン層3が形成されていることを以ってしても密着性が良いのに加え、上記のようにプライマー成分31が導電体パターン層3に侵入しているので、透明プライマー層2と導電体パターン層3との密着性が著しく高くなっている。さらに、こういう界面形態をとるゆえに、版凹部内に充填された導電性組成物が透明プライマー層2上に極めて高い転移率(ほぼ100%)で転写されるという格別の効果を備えている。
【0056】
本発明における導電性組成物からなる導電体パターン層3と透明プライマー層2の界面11は、上記の第1〜第3態様の界面形態の特徴を少なくとも1つ有するようにすることができるが、それらの特徴を2つ以上有していてもよく、3つの全てを有していてもよい。
【0057】
〔導電体パターン層〕
導電体パターン層が、特に、メッシュ形状となる形態(この形態を凸状メッシュパターン層とも呼称する)では、互いに方向の異なる2群以上の平行線群がから成る線部が交差して、これら線部に囲繞されて開口部(パターン非形成部)が形成される。尚、3群以上の平行線群(線部)が交叉する場合も、其の基本的な設計要領及び作用効果は共通の為、以下、通常広く用いられている2群の場合を例に絞って説明する。又、各線群の交叉角度、即ち、第一方向線部と第二方向線部との交叉角度θは、0°<θ<180°の範囲から選択できるが、θ=90°が通常広く用いられている。
【0058】
本発明の透明性導電フィルムは、必要に応じて、図2の如く保護層9を設けてもよい。保護層は、平坦化層とは別に導電体パターン層の凹凸を充填、表面平坦化はせずに、単に導電体パターン層表面を被覆し保護する層である。例えばアクリル系の光硬化性樹脂を用いて形成することができる。
【0059】
〔光学フィルタ〕
こうして得られた透明性導電部材は、例えば電磁波シールド材として、単品で用いることも出来るが、その他該電磁波シールド材の表面、裏面、或いは表裏両面に光学調整層を設けて電磁波シールド機能と光学機能との両機能を具備する光学フィルタとして利用することができる。光学調整層としては、従来公知のものをそのまま用いればよく、例えば近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、紫外線吸収層、反射防止層、防眩層、及び特開2007−272161号公報等に記載の微小ルーバ構造による外光反射防止層等を挙げることが出来る。又、必要に応じて、該光学フィルタには、更に、光学機能以外の機能を発現する層を複合することが出来る。かかる層としては耐衝撃層、帯電防止層、ハードコート層、及び防汚層等を挙げることができる。
ここで、導電体パターン層側の面上に反射防止層などの光学調整層を直接形成すると、導電体パターン層と(透明プライマー層被覆)透明基材とで構成される凹凸により、反射防止層などの塗りムラや気泡の混入が起こり、気泡が画像光を散乱して画質低下をもたらし、反射防止効果なども不十分となる。この問題を解決するために、導電体パターン層と(透明プライマー層被覆)透明基材との凹凸を埋めて平坦化するための透明な平坦化層を設け、その上面に反射防止層などの光学調整層を設けることが好ましい。なお、平坦化層に用いる樹脂へ、近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、紫外線吸収剤などを添加することもできる。
【0060】
本発明は、透明導電部材が電磁波シールド材である電磁波シールド材、及び該電磁波シールド材を前面フィルタに用いてなるプラズマディスプレイパネルをも提供する。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
実施例1
【0062】
〔透明基材の準備及び透明プライマー層の形成〕
透明基材1として、片面に易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムを用いた。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、通常のグラビアリバース方式で、架橋硬化型の透明プライマー層を形成すべく紫外線硬化性樹脂組成物を該PETフィルムの易接着処理面に硬化後の厚み5μmになるように塗布形成した。紫外線硬化性樹脂組成物は、エポキシアクリレートプレポリマー35重量部、ウレタンアクリレートプレポリマー12重量部、フェノキシエチルアクリレートからなる単官能モノマー44重量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能モノマー9重量部、さらに光開始剤としてイルガキュア184(物質名;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、製造元;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)3重量部添加したものを使用した。このときの粘度は約1300cps(液温25℃、B型粘度計)であり、塗布後のプライマー層は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなかった。
【0063】
〔透明導電フィルムの製造〕
次に、図5に示すように未硬化状のプライマー層2'が形成されたPETフィルム1を転移工程が行われる凹版ロール62に供するが、それに先だって、線幅が17μmで線ピッチが270μm、版深12μmの正方格子状のメッシュパターンとなる凹部が形成された凹版ロール62の版面に、導電体パターン層を形成する導電性材料組成物15をピックアップロール61で塗布し、ドクターブレード65で凹部64内以外の導電性材料組成物15を掻き取って凹部64内のみに導電性材料組成物15を充填させた。導電性材料組成物を凹部内に充填させた状態の凹版ロール62と、ニップロール66との間に、プライマー層2'が形成されたPETフィルム1を供し、凹版ロールに対するニップロール66の押圧力によって、導電性材料組成物とプライマー層とを隙間なく密着させた。なお、用いた導電性材料組成物は、導電性粉末として平均粒径1μmの銀粉末、バインダー樹脂として非架橋樹脂である熱可塑性のアクリル系樹脂からなる、固形分約88.5%の導電性材料組成物を使用した。
【0064】
次いで行われる導電体パターン層の転移工程について説明する。先ず、未硬化状のプライマー層が形成されたPETフィルムを、そのプライマー層が凹版ロールの版面側に対向した状態で、凹版ロール62とニップロール66との間に挟む。その凹版ロールとニップロールとの間でPETフィルムのプライマー層は版面に押し付けられる。プライマー層は流動性を有しているので、版面に押し付けられたプライマー層は、導電性材料組成物が充填した凹部内にも流入し、プライマー層は導電性材料組成物に対して隙間なく密着した状態となる。その後、さらに凹版ロールが回転して水銀燈(図5においてUVゾーンと記載の部位に設置されている。)によって紫外線が照射され、紫外線硬化性樹脂組成物からなるプライマー層が硬化する。プライマー層の硬化により、凹版ロールの凹部内の導電性材料組成物はプライマー層と密着し、その後、出口側のニップロール67によってフィルムが凹版ロール62から剥離され、プライマー層上には導電性材料組成物層すなわち導電体パターン層が転移形成される。このようにして得られた転移フィルムを、110℃の乾燥ゾーンを通過させて銀ペーストの溶剤を蒸発させ、プライマー層上にメッシュパターンからなる導電体パターン層を形成し、透明導電部材を得た。このときの導電体パターン層の厚さ(導電体パターン層が形成されているメッシュパターン部分とそれ以外の部分との厚さの差)は10μmであり、版の凹部内の銀ペーストが高い転移率で転移していた。
また、断線や形状不良も見られなかった。
得られた透明導電部材を希塩酸に30秒浸漬し、水洗後、130℃で乾燥させる電気抵抗低減化工程理を施したところ、室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)で測定した表面抵抗率が該工程前の約1Ω/□から該工程後は0.5Ω/□に低減した。
また、集束イオンビーム/走査電子顕微鏡(FIB−SEM)によりメッシュパターン部の断面観察を行ったところ、図8に示すように部分的な銀粒子の融着が確認された。
【0065】
次いで、このメッシュパターンを有する透明導電部材を、液温23℃、濃度(比重)40°Be(ボーメ)の塩化第二鉄水溶液に30秒浸漬し、水洗して乾燥して、着色工程を施したところ、メッシュパターン部の外観が銀色から黒褐色に変色し、透明導電部材のメッシュ面からの反射率は2%低下した。
また、表面抵抗値は、0.5Ω/□であり、着色工程の前後で変化は見られなかった。
なお、メッシュパターン着色部の反射特性は、JIS Z8722に準拠して測定した全光線反射率(%)を、分光測色計(MINOLTA製、CM−3600d)を反射モードに設定し、光源は標準の光D65、視野2°を用いて、検出器を、反射光のうち、拡散反射光と鏡面反射光の両方を総合した全反射光の(積分)強度を測定するようなSCIモードに設定して、Y値(3刺激値XYZのY)を測定した。全光線反射率は小さいほうが好ましい。
また、メッシュパターン部の外観が銀色から黒褐色に変色したのは、樹脂バインダーが、赤茶色に着色しており、一方、銀粒子は見る角度によって銀白色乃至黒色を呈する。これらが相俟って反射率を低下させていることが確認できた。
【0066】
実施例2
実施例1において、希塩酸に浸漬する電気抵抗低減化処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、液温23℃、濃度(比重)40°Be(ボーメ)の塩化第二鉄水溶液に30秒浸漬し、水洗して乾燥して、着色工程を施したところ、メッシュパターン部の外観が銀色から黒褐色に変色し、透明導電部材のメッシュ面からの光線反射率は、処理前と比較して2%低下した。
実施例2の透明導電部材の表面抵抗率を上記同様の条件、方法にて測定したところ、1.0Ω/□であり、着色工程の前後で変化は無かった。
【0067】
実施例3
実施例1において、着色工程に於ける塩化第二鉄の温度を30℃に上げて30秒浸漬し、その他は同様にしたところ、光線反射率は着色工程の処理前と比較し5%の低下が見られた。また、表面抵抗値は、0.5Ω/□であり、着色工程の前後で変化は無かった。
【0068】
比較例1及び2
実施例1において、着色工程に於ける塩化第二鉄の溶液の温度を50℃にして30秒処理(比較例1)、2時間処理(比較例2)したところ、両比較例共に反射率は実施例3と同程度に低減したが、比較例1では、着色工程後の表面抵抗が0.7Ω/□に増大し、比較例2では、着色工程後の表面抵抗が1.2Ω/□以上で導電性の低下が著しいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の透明導電部材は、解像度のよい細線印刷による、電磁波シールドに十分な抵抗値と、着色によりメッシュパターン側からの光線反射率を低下させたので各種用途に使用可能である。因みに、以上の説明に於いては、主に本発明の透明導電部材がプラズマディスプレイ(PDP)の表面に設置される電磁波遮シールド材を例示して説明したが、本発明の透明導電部材の用途、使用形態はこれにのみ限定される物では無い。
本発明の透明導電部材は、特に、電磁波シールド材として好適であり、各種の、テレビジョン受像装置、測定機器や計器類の表示部、事務用機器や電算機の表示部、医療機器の表示部、電話機の表示部、遊戯機器等の表示部、電子看板等に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管ディスプレイ(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)などの画像表示装置の画面前面に設置する電磁波シールドフィルタや、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽フィルタ用途にも使用可能である。
更に、電磁波シールド材以外の用途としては、携帯電話の送受信用、カーナビゲーションシステム等の車輛、船舶の位置座標乃至航路検知誘導計器に於ける、GPS(地球位置測定系)衛星データ受信用、住宅等建物の窓硝子破損監視装置の破損データ送受信用等に用いられる透明アンテナ、電子計算機等の各種機器のデータ入力用のタッチパネル用基板(電極)等として好適に用いることが出来る。
本発明の透明導電部材の製造方法は、導電体組成物(導電性ペースト)を印刷する工程を経由する透明導電部材の製造において、本製造方法を用いることにより、効率的に精度良く基材上への印刷し、且つ表面反射を抑えるための着色を低コストでできるので、品質の良い透明導電部材を低コストで製造する方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 透明基材
2 透明プライマー層(2'未硬化状透明プライマー層)
3 導電体パターン層(3’導電性材料組成物層)
3P 導電体粒子
3R 樹脂バインダー
5 サイドエッジ
6 着色部
7 電磁波シールドパターン部
8 接地部
9 保護層
10 電磁波シールド材
15 導電性材料組成物
51 グラビアロール
52 バックアップロール
53 樹脂組成物充填容器
54 ドクターブレード
61 ピックアップロール
62 凹版ロール
63 版面
64 凹部
65 ドクターブレード
66 ニップロール
67 ニップロール
68 充填容器
A 導電性材料層が形成されている部分
TA A部の厚さ
B 導電体パターン層が形成されていない部分
TB B部の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材上に形成された透明プライマー層と、該透明プライマー層上に所定のパターンで形成された導電体パターン層を有する透明導電部材であって、
該導電体パターン層は、該透明プライマー層上に形成された導電体粒子と樹脂バインダーを含み、該樹脂バインダーの少なくとも一部が着色されてなる、ことを特徴とする透明導電部材。
【請求項2】
前記透明プライマー層が架橋硬化した樹脂からなり、前記導電体パターン層の樹脂バインダーが非架橋樹脂からなる、請求項1記載の透明導電部材。
【請求項3】
前記透明プライマー層のうち前記導電体パターン層が形成されている部分の厚さは、前記導電体パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚く、且つ該導電体パターン層中の該導電粒子の分布は、相対的に、該透明プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電体パターン層の頂部近傍において密である、請求項1又は2に記載の透明導電部材。
【請求項4】
前記導電体パターン層の横断面内において、複数の導電体粒子が部分的に融合した連なり(経路)の長さが、導電体パターン層幅の1/2を超える連なりを、少なくとも1以上有する、請求項3に記載の透明導電部材。
【請求項5】
透明基材の一方の面に所定のパターンで導電体パターン層が形成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電部材の製造方法であって、
未硬化で流動状態の透明プライマー層が一方の面に形成された透明基材を準備する透明基材準備工程と、
所定のパターンで凹部が形成された版面に、硬化後導電体パターン層を形成できる導電性材料組成物を塗布した後、前記凹部内以外に付着した該導電性材料組成物を掻き取って該凹部内に該導電性材料組成物を充填する充填工程と、
前記透明基材準備工程後の透明基材の透明プライマー層側と前記導電性材料組成物充填工程後の版面の凹部側とを圧着して、前記透明プライマー層と前記凹部内の導電性材料組成物とを空隙無く密着する圧着工程と、
前記圧着工程後に前記透明プライマー層を硬化するプライマー硬化工程と、
前記硬化工程後に前記透明基材を前記版面から剥がして前記凹部内の導電性材料組成物を前記透明プライマー層上に転写する転写工程と、
前記転写工程後或いは前記透明プライマー層硬化工程と同時に、前記透明プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性材料組成物層を硬化させて導電体パターン層を形成する硬化工程と、
前記導電体パターン層を形成する硬化工程後に、着色用処理液に浸漬して、前記導電体パターン層の樹脂バインダーの少なくとも一部を着色する導電体パターン層着色工程を、
有することを特徴とする透明導電部材の製造方法。
【請求項6】
前記導電体パターン層を形成する硬化工程と同時又は硬化工程以降に該導電体パターン層の電気抵抗を低減させる処理を施す電気抵抗低減化処理工程を含む請求項5に記載の透明導電部材の製造方法。
【請求項7】
前記導電体パターン層着色工程において使用する着色用処理液が、塩化第二鉄水溶液である、請求項5〜6のいずれかに記載の透明導電部材の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電部材が電磁波シールド材であることを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項9】
請求項8に記載の電磁波シールド材を前面フィルタに用いてなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−34889(P2011−34889A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181860(P2009−181860)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】